ポリゴンミラー、光偏向器、光走査装置および画像形成装置
【課題】撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜により、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止する。防音ガラスの透過率特性をポリゴンミラーの反射率特性で相殺して、光源からの光の入射角変化に対して、光利用効率が平坦にする。
【解決手段】光源102からの光を反射する複数の反射面を有し、周辺に傾斜した防音ガラス101が配置され、防音ガラス101を通して光が入出射するポリゴンミラー100。反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、ポリゴンミラー100の回転に伴う光源102からの光の入射角変化に対し、樹脂光学膜の反射率特性が、防音ガラス101の透過率特性と逆になるように設定されている。上記ポリゴンミラーを用いた光偏向器、光走査装置、画像形成装置。
【解決手段】光源102からの光を反射する複数の反射面を有し、周辺に傾斜した防音ガラス101が配置され、防音ガラス101を通して光が入出射するポリゴンミラー100。反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、ポリゴンミラー100の回転に伴う光源102からの光の入射角変化に対し、樹脂光学膜の反射率特性が、防音ガラス101の透過率特性と逆になるように設定されている。上記ポリゴンミラーを用いた光偏向器、光走査装置、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリゴンミラー、これを用いたデジタル書込光学系の光偏向器、さらには、光偏向器を用いた光走査装置、および、デジタル複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる光走査装置では、光偏向器として一般的にポリゴンミラーが用いられている。ポリゴンミラーはこれを回転駆動するモータの発熱により、光偏向器の周辺を中心に温度が上昇し、光走査装置が組み込まれた光学箱内に温度分布(温度の高低差)が発生する。光学箱内の温度上昇、温度分布は、走査レンズ、ミラー等の光学部品の形状あるいは固定位置の変動要因となり、被走査面としての感光体表面における光ビームの結像位置ずれ、画像劣化を生じる。温度上昇が大きいほど、結像位置ずれ、画像劣化が大きくなることから、従来の光走査装置あるいは画像形成装置に関する特許文献を参照すると、光学箱の周りにダクトを設け、ファンによって起こされる気流で空冷する構成が開示されている。しかし、この構成によれば、光学箱の周りにダクトを配置するためのスペースが必要であり、画像形成装置の小型化を阻害し、ファン駆動による消費電力の増加、環境負荷の増大といった問題がある。以下、本願発明に関連のある特許文献記載の発明について説明する。
【0003】
特許文献1記載の発明は、ポリゴンミラーとポリゴンモータからなる偏向走査手段であるポリゴンスキャナを直接筐体に取り付け、筐体の外周面のポリゴンスキャナと対向する箇所に放熱手段を取り付けたものである。また、放熱手段を挟んで対向する壁部を、送風手段たる吸気ファンによる空気の流れ方向に延ばして設けることにより空気の流路を形成している。
【0004】
特許文献2記載の光走査装置は、ポリゴンミラーを覆うカバーの上部の、回転軸の延長方向と対応する位置に空気流入孔を設け、カバーの周面の下部には、ほぼ全周にわたり、回転軸の基部の半径方向と対応する位置に空気流出溝を設けたものである。空気流入孔にはフィルタを取り付け、塵やほこりのカバー内への流入を防止している。
【0005】
特許文献3には、モータにより回転するポリゴンミラーを収容すると共に排気口とフィルタ付きの空気流入口を備えた光学箱を有し、前記ポリゴンミラーの回転停止中は前記排気口を閉塞し、回転中は前記光学箱内の空気圧により撓んで前記排気口を開く可撓性のシート弁を前記排気口に取り付けた光偏光器が開示されている。
【0006】
特許文献4には、反射面に1.45以下の屈折率を有する物質からなる単層膜を有するポリゴンミラーが開示されている。また、反射面に膜を有する多角柱状のポリゴンミラーの製造方法であって、膜を形成する物質を含む溶液を反射面に塗布する塗布工程と、ポリゴンミラーを回転させることにより反射面上に溶液の塗膜を形成する工程とを有し、塗布工程において、反射面と回転軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの回転軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布することを特徴とするポリゴンミラーの製造方法が開示されている。さらに、反射面に膜厚分布を持つ膜を有するポリゴンミラー、このポリゴンミラーを備える光走査装置、電子写真機器の構成が開示されている。
【0007】
特許文献2、特許文献3に記載されているように、ポリゴンミラーの上方にフィルタ付きの空気流入口を、下方に排気口を有する光学箱を備えた光走査装置ないしは光偏向器によれば、十分な冷却効果を得ることができない。その理由を、図13、図14を参照しながら説明する。図13、図14に示すように、ポリゴンミラーが回転するとその周辺で循環流が発生し、十分な外気の流入が得られず、光学箱内の空気圧が高まらないため、光学箱からの空気の排出とそれに伴う冷却効果が十分に得られない。また、光学箱本体とカバーとの隙間から光学箱内に流入した微小な粉塵をフィルタで除去することができない。ガス状の汚染物質がポリゴンミラー周辺で発生する循環流に乗ってポリゴンミラーに付着し、ポリゴンミラー面を曇らせるという問題もある。
【0008】
ポリゴンミラーの曇り、汚れは、図15に示すように、各偏向反射面の回転方向前側部分を中心にして曇り、汚れが発生する。ポリゴンミラーが回転すると、風を切る面すなわち各偏向反射面の回転方向後ろ側部分で空気が外側に押し出され、その偏向反射面の回転方向後ろ側に続く次の偏向反射面の回転方向前側部分が負圧になり、ポリゴンミラーの上下から供給される空気に含まれる粉塵やガス状の汚染物質が上記負圧部分に集まり、ポリゴンミラー面に付着、固化するものと考えられる。
【0009】
最近の画像形成装置では、環境負荷を低減するため、低温でトナーを定着させるものが多くなっているが、トナー中に分散されるワックス微粒子も低温で溶けるものが採用され、気化したワックスが装置内に滞留し、ポリゴンミラー汚れの原因物質となることがある。従来のポリゴンミラーではSiO、あるいはSiO2等の無機膜を保護膜として形成していたが、ワックスが反射面に付着して反射率低下を起こすことがあった。
【0010】
特許文献4には、湿式成膜法により、ポリゴンミラーの反射面に非晶質フッ素樹脂膜を形成する方法が開示されている。しかし、防音ガラスと一緒に用いるポリゴンミラーにおいては、光源からの光の入射角変化に対して、防音ガラスの透過率とポリゴンミラーの反射率の低い部分が重なり、光利用効率が著しく低下する場合があった。さらに湿式成膜法は、液溜りや液の流れによってシミが残り、均一な膜厚が得られないほか、170〜180℃程度での焼成が必要になる。
特許文献5記載の発明のように、軸を焼き嵌めした軸一体型ポリゴンミラーの場合には、湿式成膜工程において焼き嵌め部が緩んでしまうという問題があり、湿式成膜法を採用することはできなかった。
【0011】
【特許文献1】特開2008−33135号公報
【特許文献2】特開平1−196018号公報
【特許文献3】特許第3192271号公報
【特許文献4】特開2002−131682号公報
【特許文献5】特開2008−70658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上説明したような従来技術に鑑みてなされてもので、各請求項記載の発明ごとに以下のような目的を有している。
撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜により、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止する。防音ガラスの透過率特性をポリゴンミラーの反射率特性で相殺して、光源からの光の入射角変化に対して、光利用効率が平坦にする。
【0013】
樹脂光学膜に膜厚分布がなく均一な膜厚で樹脂光学膜を形成し、光の入射角変化に対して、防音ガラスの透過率特性をポリゴンミラーの反射率特性で相殺可能な膜厚範囲に設定する。
【0014】
撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜によりポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止するとともに、膜形成時の焼成工程をなくして、加熱により焼き嵌めされた軸が緩んで面倒れすなわち回転中心軸に対する反射面の傾きが生ずるのを防止する。また、液だれ、塗布むらがなく、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成することができる。
【0015】
樹脂光学膜に膜厚分布がなく、平坦な反射率特性が得られる範囲で、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成する。
膜厚の均一性を確保しつつ、樹脂光学膜形成の量産性を高め、コストの低減を図る。
焼成工程がなくても、樹脂光学膜の密着性を良くする。
撥水、撥油性に優れ、光学的な透明性に優れた樹脂光学膜材料とする。
【0016】
長期にわたり、ポリゴンミラーの曇りが少なく、反射率の低下が小さい光偏向器を提供する。
【0017】
長期にわたり、ポリゴンミラーの反射率の低下、ばらつきが小さく、像高位置の違いによる光利用効率の差が小さい光走査装置を提供する。
帯電性の高い樹脂膜に、静電気により塵埃が吸着されるのを防止することができる光走査装置を提供する。
【0018】
ポリゴンミラー面の曇り、汚染を防止し、偏向反射面の反射率の低下、ばらつきがなく、長期にわたり、像高位置の違いによる画像濃度のむらが発生しない高画質な画像形成装置を提供する。
トナー中に分散され、定着時の加熱により気化して装置内に滞留したワックスが、ポリゴンミラーの反射面に固着して、反射率が部分的に低下するのを防止することができる画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るポリゴンミラーは、光源からの光を反射する複数の反射面を有し、周辺に傾斜した防音ガラスが配置され、この防音ガラスを通して上記光が入出射するポリゴンミラーであって、前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、ポリゴンミラーの回転に伴う光源からの光の入射角変化に対し、前記樹脂光学膜の反射率特性が、前記防音ガラスの透過率特性と逆になるように設定されていることを最も主要な特徴とする。
【0020】
前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、前記光源からの光の波長をλ、前記樹脂光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、次の式
(0.3×λ)/n<t<(0.4×λ)/n ・・・式(1)
を満足するように構成するとよい。
【0021】
本発明に係るポリゴンミラーはまた、光源からの光を反射する複数の反射面を有し、軸受部材である軸が焼き嵌めされた軸一体型のポリゴンミラーにおいて、前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るポリゴンミラーはまた、光源からの光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、前記光源からの光の波長をλ、前記光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、次の式
(0.45×λ)/n<t<(0.55×λ)/n ・・・(2)
を満足することを特徴とする。
【0023】
前記物理気相成長法は抵抗加熱蒸発源を用いた熱蒸着法を用いるとよい。
前記ポリゴンミラーの基材は純アルミニウム系の合金とし、前記樹脂光学膜の下層に、無機光学膜を形成するとよい。
前記樹脂光学膜は非晶質フッ素樹脂膜とするとよい。
【0024】
本発明に係る光偏向器は、ポリゴンミラーを備えた光偏向器であって、前記ポリゴンミラーが本発明に係るポリゴンミラーであることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る光走査装置は、半導体レーザーからのビームを、光偏向器を含む光学系を介して被走査面へ導いて光スポットを形成し、前記光偏向器により前記ビームを偏向させることにより前記光スポットを前記被走査面で走査させる光走査装置であって、前記光偏向器が本発明に係る光偏向器であることを特徴とする。
前記前記光走査装置は、これを組み込んだ光学箱に静電フィルタを設け、この静電フィルタを介して前記光学箱内に空気を流入させるように構成するとよい。
【0026】
本発明に係る画像形成装置は、感光体の感光面に光走査装置による光走査を行って潜像を形成し、上記潜像を可視化して画像を得る画像形成装置であって、感光媒体の感光面の光走査を行う光走査装置として本発明に係る光走査装置を用いたことを特徴とする。
上記画像形成装置に使用されるトナーは、ワックス微粒子が分散されたトナーとするとよい。
【発明の効果】
【0027】
一つの請求項に係る本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜を形成することにより、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止することができる。ポリゴンミラーの近傍に配置した防音ガラスの透過率特性を、ポリゴンミラーの反射率特性で相殺して、光源からの光の入射角変化に対して、光利用効率が平坦にすることができる。
【0028】
他の請求項に係る本発明によれば、樹脂光学膜に膜厚分布がなく均一な膜厚で形成することができ、光の入射角変化に対して、防音ガラスの透過率特性をポリゴンミラーの反射率特性で相殺可能な膜厚範囲に設定することができる。
【0029】
他の請求項に係る本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜を形成することにより、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止することができる。膜形成時の焼成工程をなくして、加熱により焼き嵌めされた軸が緩んで面倒れ(回転中心軸に対する反射面の傾き)が生ずることを防止することができる。また、液だれ、塗布むらがなく、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成することができる。
【0030】
他の請求項に係る本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に形成する樹脂光学膜の膜厚の均一性を確保しつつ、樹脂光学膜形成の量産性を確保して、低コストを図ることができる。焼成工程がなくても、樹脂光学膜の密着性を良くすることができる。
【0031】
本発明に係る光偏向器によれば、本発明にかかるポリゴンミラーを用いることにより、長期に渡り、ポリゴンミラーの曇りが少なく、反射率の低下が小さい光編光器を提供することができる。
【0032】
本発明に係る光走査装置によれば、本発明にかかる光偏向器を用いることにより、長期に渡り、ポリゴンミラーの反射率の低下およびばらつきが小さく、像高位置の違いによる光利用効率の差が小さい光走査装置を提供することができる。また、帯電性が高い樹脂膜に、静電気により塵埃が吸着されるのを防止した光走査装置を提供することができる。
【0033】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明にかかる光走査装置を用いることにより、ポリゴンミラー面の曇りおよび汚染を防止し、ポリゴンミラー反射面の反射率の低下およびばらつきがなく、長期に渡り、像高位置の違いによる画像濃度のむらが発生しない高い品質の画像を形成することができる。
【0034】
他の請求項に係る画像形成装置によれば、トナー中に分散され、定着時の加熱により気化して装置内に滞留するワックスが、ポリゴンミラーの反射面に固着することを防止して、反射率が部分的に低下するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明にかかるポリゴンミラー、光偏向器、光走査装置および画像形成装置の実施例を、図面を参照しながら実施例ごとに説明する。
【実施例1】
【0036】
図1はポリゴンミラー100の近傍ないしは周辺に防音ガラス101を配置してなる光走査装置の例を模式的に示している。半導体レーザーなどからなる光源102から射出された光束は防音ガラス101を透過し、ポリゴンミラー100の偏向反射面によって反射された上記光束は上記防音ガラス101を透過して結像位置すなわち被走査面に向かうように構成されている。ポリゴンミラーの近傍に防音ガラスを配置してなる光走査装置に関しては、例えば特開2007−178511号公報、前記特許文献5などに記載されている。
【0037】
防音ガラス101は、屈折率:1.5、厚さ:1.9mm程度の透明平行平板ガラスが用いられる。防音ガラス101は主走査方向(結像位置での光の走査方向)に対し10〜20度傾き、副走査方向(主走査方向に対し直交する方向であって紙面に鉛直な方向)に対しては1〜2度程度傾いて配置されている。
【0038】
ポリゴンミラー100の反射面には、撥水性、撥油性が高く、汚れが付着し難い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されている。非晶質フッ素樹脂膜材料としては、旭硝子社製「サイトップ」(登録商標)がある。「サイトップ」(登録商標)は、紫外・可視光から近赤外光までの広範囲な波長領域において極めて透明性が高い材料で、光学薄膜として好適である。
【0039】
図1において、例えば反時計回りにポリゴンミラー100が回転するものとすると、回転に伴い光源102からの光の入射角が変化し、結像位置は例えば像高−150mmから像高150mmへ変化する。像高150mmのときを実線で、像高−150mmのときを破線で示している。ポリゴンミラー100の各偏向反射面の反射率特性は防音ガラス101の透過率特性と逆になるように設定されている。すなわち、図1において、入射角が大きい像高−150mm側では、防音ガラス101の透過率は低いが、ポリゴンミラー100の反射率は相対的に高く設定されている。一方、入射角が小さい像高150mm側では、防音ガラス101の透過率は高いが、ポリゴンミラー100の反射率は相対的に低く設定されている。つまり、実施例1に用いられているポリゴンミラー100の各偏向反射面は、像高−150側の反射率が、像高150側の反射率より相対的に高くなるように設定されている。
【0040】
以下に非晶質フッ素樹脂膜の膜厚設定の詳細を示す。図2は、光の波長λ=655nm、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率1.34、下層に屈折率1.7の無機膜(SiO)を形成した場合のポリゴンミラーの反射率分布をシミュレーションにより計算した結果を示す。光学的な膜の厚さとして、無機膜(SiO)はλ/2に設定し、非晶質フッ素樹脂膜は0.2λ〜0.5λの範囲で、均一な膜厚で計算した。図2おいて、光学的な非晶質フッ素樹脂膜の厚さを0.3λ〜0.4λの範囲に設定すれば、像高−150mm側の反射率が像高150mm側の反射率より相対的に高くなる。さらに望ましくは0.35λ〜0.4λに設定するとよい。
【0041】
このとき、機械的な膜厚は光源からの光の波長をλ、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率をn、非晶質フッ素樹脂膜の膜厚をtとするとき、式(1)を満足するように構成すれば良い。
(0.3×λ)/n<t<(0.4×λ)/n ・・・式(1)
光の波長λ=655nm、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率1.34のとき、式(1)より、膜厚tは147〜196nmに設定すると良い。
【0042】
非晶質フッ素樹脂膜を均一な膜厚で形成する方法としては、物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)が好適である。液だれ、塗布むらがなく、湿式成膜法に比べ、膜厚を均一に形成することができる。物理気相成長法には、熱蒸着法、プラズマスパッタ法、イオンビームスパッタリング法等を適用可能であるが、均一な膜厚で形成が可能で、量産性が高く、低コストで膜形成ができる抵抗加熱蒸発源を用いた熱蒸着法が好適である。ポリゴンミラーの基材は一般的には純アルミニウム系の合金から形成されるが、非晶質フッ素樹脂膜の密着性を高めるために、非晶質フッ素樹脂膜の下層に、無機光学膜であるSiO膜、あるいはSiO2膜を形成するとよい。
【0043】
以上のような方法で、均一な膜厚で非晶質フッ素樹脂膜を形成する。これにより、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止し、前記防音ガラス101の透過率特性をポリゴンミラー100の反射率特性で相殺し、入射角変化に対する光利用効率を平坦な特性にすることができる。
【実施例2】
【0044】
実施例2は、特許文献5に記載されているような、軸受部材で回転自在に支持される軸が焼き嵌めによりポリゴンミラーの回転中心に一体に結合された軸一体型ポリゴンミラーの実施例であって、これを図3に示す。図3において、軸一体型ポリゴンミラー105は、各偏向反射面105aに樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜を形成することができる。軸一体型ポリゴンミラー105は、焼き嵌めにより直径2〜3mmの軸120がポリゴンミラー105に形成された中心孔に固定されている。焼き嵌めの孔は軸120の径より、数μm〜10μm程度小さく形成されるため、余裕を持って軸が挿入できるように、ポリゴンミラー105を200〜300℃に加熱し、軸120の焼き嵌めをする。常温まで冷却されたときの焼き嵌め代としては、3〜10μm程度で、120℃〜160℃程度に再加熱されると焼き嵌め代が0の状態になり、軸120と孔の固定は緩んでしまう。
【0045】
前記特許文献4には、非晶質フッ素樹脂膜を湿式成膜法により形成する方法が開示されているが、湿式成膜法では170〜180℃程度での焼成が必要になる。非晶質フッ素樹脂膜を湿式成膜法により形成すると、ポリゴンミラーが170〜180℃程度で再加熱されるため軸が緩んでしまうことになる。軸一体型ポリゴンミラーは、焼き嵌めにより軸を固定した後、回転軸に対する反射面の傾き(面倒れ)が均一になるように反射面を形成している。軸が緩んでしまうと、面倒れが大きくなってしまい、光学特性を満足できなくなるため、170〜180℃の加熱を行う湿式成膜法で形成することはできない。
【0046】
よって、前述のような軸一体型ポリゴンミラー105の場合、樹脂光学膜は前記物理気相成長法である熱蒸着法により形成するのが好適である。熱蒸着法は、蒸発源となるフッ素樹脂は加熱され、ポリゴンミラー105も、蒸発源の加熱による影響で多少、温度は上昇するが、大きく加熱されることはなく、焼き嵌めされた軸120が緩むことはない。また、湿式成膜法のように、液だれ、塗布むらがなく、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成することができる。非晶質フッ素樹脂膜材料としては、実施例1について説明したものと同じものを用いることができ、これにより同様の効果を得ることができる。ポリゴンミラー105の基材も、非晶質フッ素樹脂膜の良好な密着性を得るために、非晶質フッ素樹脂膜の下層に、無機光学膜であるSiO膜、あるいはSiO2膜を形成するとよい。
【0047】
上記軸120は、円筒状の軸受ホルダ108内に嵌められた軸受107によって回転自在に支持されている。ポリゴンミラー105の下部は円筒形に形成されてポリゴンモータのロータハウジング105gとなっていて、このロータハウジング105gの内周面にはリング状のロータマグネット106が固着されている。軸受ホルダ108の外周にはステータコア109が嵌められて固定され、ステータコア109が有する複数の突極には駆動コイル109aが巻き回されている。上記各突極の外端面とロータマグネット106の内周面は適宜の間隙をおいて対向している。このようにしてポリゴンモータが構成され、ロータマグネット106の回転位置に応じて各駆動コイル109aへの駆動電流を切り換えることにより、ポリゴンミラー105を高速度で回転駆動するようになっている。
【実施例3】
【0048】
図4、図5に、第3実施例を示す。図4、図5において、レーザー発生器1から出射したレーザービームLはポリゴンミラー2で反射され、結像レンズ群3を通過した後に感光体ドラム4上に結像する。ポリゴンミラー2はモータ5により回転駆動され、各偏向反射面でレーザービームLを等角速度的に偏向反射する。偏向されたレーザービームLは、結像レンズ群3のfθ機能によって感光体ドラム4の表面上を等速度的に走査する。レーザービームLの一部は反射ミラー6により検出器7に導かれ、レーザービームLの1走査毎の書き出しタイミングが検出される。
【0049】
図5に示すように、モータ5は、ロータ8、回転軸、モータ基板10、軸受ハウジング11等から構成され、モータ基板10上には駆動用IC12が配置されている。なお、ポリゴンミラー2は押えばねによってロータ8および上記回転軸に固定されている。モータ5は光学箱14内に収容され、光学箱14にはカバー15が爪15aによって固定され、光学箱14の外部の塵埃等が内部に侵入しないようにされている。ポリゴンミラー2の上方には、ポリゴンミラー2に近接して略円筒状の外気誘導整流部材20が設けられている。外気誘導整流部材20は、上端部の外気の流入口側がカバー15に固定され、下端部がポリゴンミラー2に近接して配置されている。外気誘導整流部材20がポリゴンミラー2と対向する面は、略リング状の平面で形成されている。
【0050】
図6に示すように、外気誘導整流部材20の外径D1は、ポリゴンミラー2の各反射面で形成される内接円直径D2よりも大きく形成されている。外気誘導整流部材20の中心部の空気流入孔には、活性炭フィルタ21が設けられ、このフィルタ21を通って空気が流入するようになっている。図7はフィルタ21の拡大図である。活性炭21cがシート状の静電フィルタ21a、21bで挟まれた構造となっている。符号21dはシート状の静電フィルタ21a、21b間に介在して活性炭21cの保持空間を形成する構造材である。フィルタ21は両面テープやねじ等を用いて交換可能に取り付けられている。交換を容易とするため、バネ部材等を用いて、フィルタ21を弾性的に固定する構成としても良い。
【0051】
図5では、ポリゴンミラー2が回転したときに発生する空気の流れを模式的に矢印で示している。ポリゴンミラー2が回転することで、ポリゴンミラー2の反射面で押出される空気を補うように、ポリゴンミラー2の上下から空気が流れ込む。ポリゴンミラー2の上方から外気誘導流路である外気誘導整流部材20の内側へと順次負圧が伝達され、外気が光学箱14の内側に誘導される。このとき、外気は図7に示す活性炭フィルタ21cを通ることで、塵埃、ガス状の汚染物質がフィルタ21cに吸着され、ポリゴンミラー2の周辺には清浄化された空気が供給される。塵埃は主にシート状の静電フィルタ21a、21bに吸着され、ガス状の汚染物質は活性炭に吸着される。
【0052】
外気誘導整流部材20は、ポリゴンミラー2の周辺における循環流を防止し、ポリゴンミラー2周辺には清浄化された空気を供給して、空気流によるエアーカーテンを形成し、ポリゴンミラー2の偏向反射面の曇り、汚染を防止する。外気の誘導効果を高め、ポリゴンミラー2周辺の循環流を防止するには、外気誘導整流部材20の外径D1を、ポリゴンミラー2の各反射面で形成される内接円直径と同等かそれよりも大きく形成すると良い。外気誘導整流部材20の外径D1をポリゴンミラー2の頂点(偏向反射面が6面の場合6角形の頂点)で形成される外接円の直径D3よりも大きくすれば、さらに好適である。また、外気誘導整流部材20の端面と、これに対向するポリゴンミラー2の上端面とのギャップGは3〜5mm以下にすると良い。ギャップGを小さくするほど外気の誘導効果が大きくなるが、ポリゴンミラー2の回転による気流で騒音が発生しないように、1〜5mm程度の範囲で適切なギャップに設定する。
【0053】
光学箱14には、特別に排気口は設けていないが、完全にシールされているものではないため、外気の誘導により光学箱内の圧力が高まると、光学箱14とカバー15の合わせ目のすきまから外部に空気が流れ出す。ポリゴンミラー2の回転に伴うモータ5や軸受部の発熱、ポリゴンミラー2自身の空気との摩擦熱により光学箱14内が加熱され、光学箱14内の空気が外部に押出され、相対的に温度が低い外気がポリゴンミラー2の周辺に誘導される。その結果、発熱源であるポリゴンスキャナの冷却効果が高まるとともに、光学箱14内に配置された結像レンズ群3などの光学部品への熱の伝達量が小さくなり、光学箱14内および光学部品内の温度偏差が小さくなる。
【0054】
以上のように構成されたポリゴンミラー2の少なくとも各偏向反射面には、樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が、物理気相成長法(PVD)である熱蒸着法で形成されている。非晶質フッ素樹脂膜材料としては、前述の材料を用いることができ、これによって前述の効果を得ることができる。ポリゴンミラーの基材に関しても、前述の材料を用いることができ、これによって前述の効果を得ることができる。
【0055】
実施例3では、外気誘導による気流が流れやすいように構成して冷却効率を高めるため、ポリゴンミラー2の近傍の防音ガラスは設けていない。防音ガラスを設けない場合には、前記光源からの光の波長をλ、前記非晶質フッ素樹脂膜の屈折率をn、非晶質フッ素樹脂膜の膜厚をtとするとき、式(2)を満足するように、構成すると良い。
(0.45×λ)/n<t<(0.55×λ)/n ・・・(2)
光の波長λ=655nm、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率1.34のとき、式(2)より、膜厚tは220〜269nmに設定すると良い。平坦な反射率特性が得られる範囲は非常に小さく、中心値0.5λ±0.05λ程度の範囲になる。従来の湿式成膜法では、非晶質フッ素樹脂膜のばらつきが大きく膜厚制御が困難であったが、物理気相成長法(PVD)である熱蒸着法により形成すれば、膜厚制御が容易で、均一な膜厚を形成することができる。
【0056】
以上のように、ポリゴンミラー周辺に外気を誘導するように構成した光走査装置の上記ポリゴンミラーに、撥水、撥油性が高く、汚れが付着し難い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜を形成すれば、フィルタ特性として圧力損失の小さいフィルタを使用することが可能となる。その結果、外気誘導による冷却効果を高めることができる。非晶質フッ素樹脂膜は帯電性が高いため、回転による空気との摩擦で静電気が発生するが、外気誘導部に静電フィルタを設けることで、塵埃の吸着を防止することができる。なお、静電フィルタの効果は外気誘導タイプの光走査装置に限定されるものではなく、ほかのタイプの光走査装置においてもポリゴンミラーの周辺に静電フィルタを設ければ、反射面への塵埃の付着を防止できる。
【0057】
以上のように構成されたポリゴンミラーおよび光走査装置によれば、ポリゴンミラー周辺を中心とする温度上昇が抑制され、光学箱内の温度分布すなわち温度の高低差が低減されて、感光体上の光ビームの結像位置ずれ、画像劣化が低減される。また、活性炭フィルタにより、光学箱内に塵埃、ガス状の汚染物質を除去した外気を誘導し、ポリゴンミラーの周りには常に清浄化された空気を供給することで、ポリゴンミラー面の曇りや汚染を防止できる。フィルタで除去することができなかった汚染物質があったとしても、撥水、撥油性が高い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されているため、ポリゴンミラーの反射面が汚れ、あるいは曇ることはない。その結果、ポリゴンミラーの偏向反射面の反射率の低下やばらつきがなく、かかるポリゴンミラーおよびこれを用いた光走査装置を画像形成装置に適用することにより、画像劣化が無く高い品質の画像を形成することができる。また、光学箱の外側にダクトを設け、かつファンによる気流で光学箱内を空冷する必要が無く、光学箱およびその周辺が小型化され、ファン駆動による消費電力を低減することができる。
【実施例4】
【0058】
図8に、第4実施例を示す。図8において、軸方向の2段に形成されたポリゴンミラー140aとこのポリゴンミラーを回転駆動するポリゴンモータからなるポリゴンスキャナ140はコア筐体700内に収容されている。コア筐体700はサブ筐体710内の底板に取り付けられている。サブ筐体710は光学箱となっていて、サブ筐体710の開放した上端にはカバー711が被せられて固定され、光学箱の外部から塵埃等が内部に侵入しないように構成されている。光束を射出する光源部、走査レンズ等は前述の実施例と同様に構成することができるため、これらの部材の図示は省略されている。
【0059】
ポリゴンスキャナ140の上方には、ポリゴンスキャナ140に近接して外形が円柱形状の外気誘導整流部材30が設けられている。外気誘導整流部材30は外気の流入口側がカバー711に固定され、空気の出口側がポリゴンミラー140aに近接して配置されている。外気誘導整流部材30がポリゴンミラー140aと対向する面は、略リング状の平面で形成されている。外気の誘導流路となる外気誘導整流部材30の内側は、外気側からポリゴンミラー140aに向かって拡がる略円錐状に形成されている。図9に示すように、外気誘導整流部材30の外径D3は、ポリゴンミラー140aの頂点(反射面が6面の場合6角形の頂点)で形成される外接円の直径D4よりも大きい直径で形成されている。外気誘導整流部材30の空気流入口には、フィルタ31が設けられている。
【0060】
図10にフィルタ31の拡大図を示す。フィルタ31は、活性炭フィルタ31cがシート状の静電フィルタ31a、31bで挟まれた構造となっている。符号31dは、シート状の静電フィルタ31a、31b間に活性炭フィルタ31cを保持するための空間を確保するための構造材であってスペーサの役目をしている。活性炭フィルタ31cは、前述のような、活性炭素繊維が吸着材として働くものや、ガス状の化学物質を除去する活性炭シートと粉塵を取るエレクトレットフィルターを組み合わせたものなどを使用することができる。
【0061】
ポリゴンミラーが小型で、回転によって発生する風量が小さい場合は、図11に示すように、活性炭ペーパーを片段ボール積層法により、ハニカム状に成形加工したものをフィルタとして使用することもできる。かかる構造のフィルタを使用すると、フィルタの圧力損失が小さく、図8に示す実施例におけるフィルタとして好適である。上記フィルタ31は両面テープやねじ等を用いて交換可能に取り付けられている。交換を容易とするため、バネ部材等を用いて、フィルタ31を弾性的に固定する構成としても良い。
【0062】
図8では、ポリゴンミラー140aが回転したときに発生する空気の流れを模式的に矢印で示している。ポリゴンミラー140aが回転することで、ポリゴンミラー140aの反射面で押出される空気を補うように、ポリゴンミラー140aの上下から空気が流れ込む。ポリゴンミラー140aの上方から外気誘導整流部材30の内側の順に負圧が伝達され、外気が光学箱であるサブ筐体710の内側に誘導される。このとき、外気はシート状の静電フィルタ31a、31b活性炭フィルタ31cを通ることで、塵、ガス状の汚染物質がこれらのフィルタで吸着され、ポリゴンミラー140aの周辺には清浄化された空気が供給される。
【0063】
外気誘導整流部材30の外径D3は、ポリゴンミラー140aの頂点で形成される外接円直径D4よりも大きい直径で形成されているため、ポリゴンミラー140a周辺で空気が循環して流れることが防止され、ポリゴンミラー周辺には常に清浄化された空気が供給されて、空気流によるエアーカーテンが形成され、ポリゴンミラー面の曇り、汚染が防止される。外気誘導整流部材30の外径D3を、ポリゴンミラー140aの各反射面で形成される内接円直径よりも大きく形成すれば、ポリゴンミラー面の曇り、汚染防止効果が得られるが、ポリゴンミラーの外接円直径D4よりも大きい直径で形成することで、より大きな効果が得られる。
【0064】
また、ポリゴンミラー140aに近接して設けられる外気誘導整流部材30の端面とのギャップGは3〜5mm以下にすると良い。ギャップを小さくするほど外気の誘導効果が大きくなるが、ポリゴンミラーの回転による気流で騒音が発生しないように、1〜5mm程度の範囲で適切なギャップに設定するとよい。
【0065】
光学箱であるサブ筐体710には、特別に排気口は設けていないが、完全にシールされているものではないため、サブ筐体710の内側の圧力が高まると、サブ筐体710とカバー711の合わせ目のすきまから外部に空気が流れ出す。ポリゴンミラー140aの回転駆動に伴うポリゴンモータや軸受部分の発熱、ポリゴンミラー140a自身の空気との摩擦熱により光学箱が加熱され、温度が高くなった光学箱内の空気が外部に押出され、相対的に温度が低い外気がポリゴンミラー周辺に誘導される。その結果、発熱源であるポリゴンスキャナの冷却効果が高まるとともに、光学箱内に配置された結像レンズ群などの光学部品への熱の伝達量が少なくなり、光学箱内および光学部品内の温度偏差が小さくなる。
【0066】
本実施例においても、ポリゴンミラーの樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜の材料、その成膜方法、ポリゴンミラーの基材の材質、その下層膜の材質等は、前記実施例のものと同様とすることができ、これにより前記実施例における作用、効果と同様の作用、効果を得ることができる。
【0067】
第4の実施例によれば、ポリゴンミラー周辺を中心とする温度上昇が抑制され、光学箱内の温度分布(温度の高低差)が低減されて、感光体上の光ビームの結像位置ずれ、形成される画像の劣化が低減される。また、活性炭フィルタにより塵埃、ガス状の汚染物質を除去した外気を誘導し、ポリゴンミラーの周りには常に清浄化された空気を供給することで、ポリゴンミラー面の曇り、汚染を防止できる。フィルタで除去することができなかった汚染物質があったとしても、撥水、撥油性が高い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されているため、ポリゴンミラーの反射面が汚れ、あるいは曇ることはない。その結果、ポリゴンミラーの反射面の反射率の低下やばらつきがなく、高い品質の画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
【0068】
外気誘導路を空気流入口側からポリゴンミラーに向かって拡がる略円錐状に形成することで、外気誘導流路での気流の乱れが少なく、光偏向器の回転むらや騒音の発生を防止することができる。また、フィルタを交換可能な構成にしているので、経年変化により、フィルタが目詰まり状態になった場合は、フィルタを交換することで誘導外気の風量低下による冷却効果の低下を防止することができる。
【0069】
さらに、光学箱の外側にダクトを設けてファンによる気流で空冷する必要が無く、光学箱およびその周辺が小型化され、ファン駆動による消費電力を低減することができる。
【実施例5】
【0070】
次に、第5実施例として、本発明にかかるポリゴンミラーおよびこれを用いた光走査装置を組み込んだ画像形成装置の実施例について図12を参照しながら説明する。図12は、これまで説明してきた光走査装置を用いたカラー画像形成装置の例を示す。図12に示すカラー画像形成装置は、複数の感光体53Y,53M,53C,53Kを並列に配置したタンデム型のカラー画像形成装置の例である。画像形成装置の上部から順に光走査装置50、現像装置56、ドラム形感光体53、中間転写ベルト52、定着装置57、給紙カセット51がレイアウトされている。
【0071】
対をなすローラ52a,52bともう一つのローラ52c間に上面が水平になるように掛け渡された中間転写ベルト52の上方には、各色に対応した上記感光体53Y、53M、53C、53Kが、上記ベルと52の移動方向に沿い順にかつ上記ベルト2の上面に近接して等間隔で配設されている。感光体53Y,53M,53C,53Kは同一径に形成され、それらの周囲には電子写真プロセスを順に実行するためのプロセス装置が、各感光体の回転方向に順に配設されている。感光体53Yを例に説明すると、帯電チャージャ(図示されず)、光走査装置50から出射された画像信号に基づくレーザービームL1が走査される露光部、現像装置56Y、転写チャージャ(図示されず)、クリーニング装置(図示されず)等が順に配設されている。他の感光体53M,53C,53Kに対しても同様である。図12に示す画像形成装置の実施形態では、感光体53Y,53M,53C,53Kを色毎に設定された被走査面とするもので、光走査装置50から出射するレーザービームL1、L2,L3、L4がそれぞれに対応する各感光体表面を走査するように設けられている。
【0072】
各感光体における画像形成プロセスおよびカラー画像形成プロセスは以下の通りである。まず、各感光体を代表して感光体53Yにおける画像形成プロセスを説明する。帯電チャージャにより一様に帯電された感光体53Yは、光走査装置50からのレーザービームL1の走査によって主走査が行われ、また、感光体53Yが矢印方向に回転することによって副走査が行われ、感光体53Y上に静電潜像が形成される。また、光走査装置50によるレーザービームL1の照射位置よりも感光体53の回転方向下流側には、感光体53Yにトナーを供給する現像器56Yが配設され、イエローのトナーが供給される。現像器56Yから供給されたトナーは、静電潜像が形成された部分に付着し、トナー像が形成される。同様に感光体53M,53C,53Kには、それぞれM、Y、Kの単色トナー像が形成される。
【0073】
各感光体53Yの現像器56Yの配設位置よりもさらに感光体53Yの回転方向下流側には、中間転写ベルト52の上面が位置している。中間転写ベルト52は、複数のローラ52a、52b、52cに巻付けられ、図示しないモータの駆動により矢印B方向に移動するようになっている。中間転写ベルト52は感光体53Y、53M、53C、53Kの順に移動し、各感光体53Y,53M,53C,53Kで現像された単色画像を順次重ねあわせて転写し、中間転写ベルト52上にカラー画像を形成するようになっている。その後、給紙トレイ51から転写紙が矢印C方向に搬送され、中間転写ベルト52上のカラー画像が転写紙に転写される。カラー画像が形成された転写紙は、定着器57により定着処理後排紙される。画像を転写した後の各感光体および転写ベルト52の残留トナーはクリーニング装置によって除去される。
【0074】
なお、前記実施例4は、2段のポリゴンミラーで構成される光走査装置であるが、実施例3のように1段のポリゴンミラーで構成される光走査装置も本願発明にかかる画像形成装置に適用可能である。また、ポリゴンミラーを上下2段に設けてなる光走査装置を用いて本願にかかる画像形成装置を構成することも可能であり、ポリゴンミラーを用いて構成されるすべての光走査装置、画像形成装置に適用可能である。
【0075】
本発明にかかる画像形成装置によれば、光学箱の周りにダクトを設けてファンによる気流で空冷する必要が無いため、小型化され、ファン駆動による消費電力の増加がない。ポリゴンミラー周辺を中心とする温度上昇が抑制され、光学箱内の温度分布(温度の高低差)が低減され、感光体上の光ビームの結像位置ずれ、画像劣化が低減される。清浄化された空気流によるエアーカーテンが形成されることによって、ポリゴンミラー面の曇り、汚染を防止できる。フィルタで取りきれなかった汚染物質があったとしても、撥水、撥油性が高い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されているため、ポリゴンミラーの反射面が汚れ、曇ることはない。ポリゴンミラーの反射面の反射率の低下およびばらつきがなく、画像劣化の無い高画質の画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。本願発明にかかる画像形成装置によれば、ワックス微粒子が分散されたトナーを使用するものであっても、定着により気化し、装置内に滞留したトナー中のワックス分散微粒子がポリゴンミラー面に固着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る光走査装置の第1の実施例を模式的に示す平面図である。
【図2】上記実施例におけるポリゴンミラーの反射率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図3】本発明に係る光走査装置の第2の実施例を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る光走査装置の第3の実施例を示す平面図である。
【図5】上記実施例の一部断面正面図である。
【図6】上記実施例中のポリゴンスキャナ部分を示す分解斜視図である。
【図7】上記実施例中のフィルタを示す拡大断面図である。
【図8】本発明に係る光走査装置の第4の実施例を示す縦断面図である。
【図9】上記実施例中のポリゴンスキャナ部分を示す分解斜視図である。
【図10】上記実施例中のフィルタを示す拡大断面図である。
【図11】上記実施例に適用可能な活性炭ペーパーフィルタの例を模式的に示す斜視図である。
【図12】本発明に係る画像形成装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【図13】従来の光走査装置の一例を示す縦断面図である。
【図14】従来のポリゴンスキャナの例を示す縦断面図である。
【図15】従来のポリゴンミラーにおける曇り、汚れの例を示す斜視図である。
【図16】上記ポリゴンミラーの反射面における負圧と汚れの関係を示す正面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 光源
2 ポリゴンミラー
3 走査レンズ
4 感光体
21 活性炭フィルタ
31 フィルタ
100 ポリゴンミラー
101 防音ガラス
102 光源
105 ポリゴンミラー
140 ポリゴンスキャナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリゴンミラー、これを用いたデジタル書込光学系の光偏向器、さらには、光偏向器を用いた光走査装置、および、デジタル複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる光走査装置では、光偏向器として一般的にポリゴンミラーが用いられている。ポリゴンミラーはこれを回転駆動するモータの発熱により、光偏向器の周辺を中心に温度が上昇し、光走査装置が組み込まれた光学箱内に温度分布(温度の高低差)が発生する。光学箱内の温度上昇、温度分布は、走査レンズ、ミラー等の光学部品の形状あるいは固定位置の変動要因となり、被走査面としての感光体表面における光ビームの結像位置ずれ、画像劣化を生じる。温度上昇が大きいほど、結像位置ずれ、画像劣化が大きくなることから、従来の光走査装置あるいは画像形成装置に関する特許文献を参照すると、光学箱の周りにダクトを設け、ファンによって起こされる気流で空冷する構成が開示されている。しかし、この構成によれば、光学箱の周りにダクトを配置するためのスペースが必要であり、画像形成装置の小型化を阻害し、ファン駆動による消費電力の増加、環境負荷の増大といった問題がある。以下、本願発明に関連のある特許文献記載の発明について説明する。
【0003】
特許文献1記載の発明は、ポリゴンミラーとポリゴンモータからなる偏向走査手段であるポリゴンスキャナを直接筐体に取り付け、筐体の外周面のポリゴンスキャナと対向する箇所に放熱手段を取り付けたものである。また、放熱手段を挟んで対向する壁部を、送風手段たる吸気ファンによる空気の流れ方向に延ばして設けることにより空気の流路を形成している。
【0004】
特許文献2記載の光走査装置は、ポリゴンミラーを覆うカバーの上部の、回転軸の延長方向と対応する位置に空気流入孔を設け、カバーの周面の下部には、ほぼ全周にわたり、回転軸の基部の半径方向と対応する位置に空気流出溝を設けたものである。空気流入孔にはフィルタを取り付け、塵やほこりのカバー内への流入を防止している。
【0005】
特許文献3には、モータにより回転するポリゴンミラーを収容すると共に排気口とフィルタ付きの空気流入口を備えた光学箱を有し、前記ポリゴンミラーの回転停止中は前記排気口を閉塞し、回転中は前記光学箱内の空気圧により撓んで前記排気口を開く可撓性のシート弁を前記排気口に取り付けた光偏光器が開示されている。
【0006】
特許文献4には、反射面に1.45以下の屈折率を有する物質からなる単層膜を有するポリゴンミラーが開示されている。また、反射面に膜を有する多角柱状のポリゴンミラーの製造方法であって、膜を形成する物質を含む溶液を反射面に塗布する塗布工程と、ポリゴンミラーを回転させることにより反射面上に溶液の塗膜を形成する工程とを有し、塗布工程において、反射面と回転軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの回転軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布することを特徴とするポリゴンミラーの製造方法が開示されている。さらに、反射面に膜厚分布を持つ膜を有するポリゴンミラー、このポリゴンミラーを備える光走査装置、電子写真機器の構成が開示されている。
【0007】
特許文献2、特許文献3に記載されているように、ポリゴンミラーの上方にフィルタ付きの空気流入口を、下方に排気口を有する光学箱を備えた光走査装置ないしは光偏向器によれば、十分な冷却効果を得ることができない。その理由を、図13、図14を参照しながら説明する。図13、図14に示すように、ポリゴンミラーが回転するとその周辺で循環流が発生し、十分な外気の流入が得られず、光学箱内の空気圧が高まらないため、光学箱からの空気の排出とそれに伴う冷却効果が十分に得られない。また、光学箱本体とカバーとの隙間から光学箱内に流入した微小な粉塵をフィルタで除去することができない。ガス状の汚染物質がポリゴンミラー周辺で発生する循環流に乗ってポリゴンミラーに付着し、ポリゴンミラー面を曇らせるという問題もある。
【0008】
ポリゴンミラーの曇り、汚れは、図15に示すように、各偏向反射面の回転方向前側部分を中心にして曇り、汚れが発生する。ポリゴンミラーが回転すると、風を切る面すなわち各偏向反射面の回転方向後ろ側部分で空気が外側に押し出され、その偏向反射面の回転方向後ろ側に続く次の偏向反射面の回転方向前側部分が負圧になり、ポリゴンミラーの上下から供給される空気に含まれる粉塵やガス状の汚染物質が上記負圧部分に集まり、ポリゴンミラー面に付着、固化するものと考えられる。
【0009】
最近の画像形成装置では、環境負荷を低減するため、低温でトナーを定着させるものが多くなっているが、トナー中に分散されるワックス微粒子も低温で溶けるものが採用され、気化したワックスが装置内に滞留し、ポリゴンミラー汚れの原因物質となることがある。従来のポリゴンミラーではSiO、あるいはSiO2等の無機膜を保護膜として形成していたが、ワックスが反射面に付着して反射率低下を起こすことがあった。
【0010】
特許文献4には、湿式成膜法により、ポリゴンミラーの反射面に非晶質フッ素樹脂膜を形成する方法が開示されている。しかし、防音ガラスと一緒に用いるポリゴンミラーにおいては、光源からの光の入射角変化に対して、防音ガラスの透過率とポリゴンミラーの反射率の低い部分が重なり、光利用効率が著しく低下する場合があった。さらに湿式成膜法は、液溜りや液の流れによってシミが残り、均一な膜厚が得られないほか、170〜180℃程度での焼成が必要になる。
特許文献5記載の発明のように、軸を焼き嵌めした軸一体型ポリゴンミラーの場合には、湿式成膜工程において焼き嵌め部が緩んでしまうという問題があり、湿式成膜法を採用することはできなかった。
【0011】
【特許文献1】特開2008−33135号公報
【特許文献2】特開平1−196018号公報
【特許文献3】特許第3192271号公報
【特許文献4】特開2002−131682号公報
【特許文献5】特開2008−70658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上説明したような従来技術に鑑みてなされてもので、各請求項記載の発明ごとに以下のような目的を有している。
撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜により、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止する。防音ガラスの透過率特性をポリゴンミラーの反射率特性で相殺して、光源からの光の入射角変化に対して、光利用効率が平坦にする。
【0013】
樹脂光学膜に膜厚分布がなく均一な膜厚で樹脂光学膜を形成し、光の入射角変化に対して、防音ガラスの透過率特性をポリゴンミラーの反射率特性で相殺可能な膜厚範囲に設定する。
【0014】
撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜によりポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止するとともに、膜形成時の焼成工程をなくして、加熱により焼き嵌めされた軸が緩んで面倒れすなわち回転中心軸に対する反射面の傾きが生ずるのを防止する。また、液だれ、塗布むらがなく、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成することができる。
【0015】
樹脂光学膜に膜厚分布がなく、平坦な反射率特性が得られる範囲で、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成する。
膜厚の均一性を確保しつつ、樹脂光学膜形成の量産性を高め、コストの低減を図る。
焼成工程がなくても、樹脂光学膜の密着性を良くする。
撥水、撥油性に優れ、光学的な透明性に優れた樹脂光学膜材料とする。
【0016】
長期にわたり、ポリゴンミラーの曇りが少なく、反射率の低下が小さい光偏向器を提供する。
【0017】
長期にわたり、ポリゴンミラーの反射率の低下、ばらつきが小さく、像高位置の違いによる光利用効率の差が小さい光走査装置を提供する。
帯電性の高い樹脂膜に、静電気により塵埃が吸着されるのを防止することができる光走査装置を提供する。
【0018】
ポリゴンミラー面の曇り、汚染を防止し、偏向反射面の反射率の低下、ばらつきがなく、長期にわたり、像高位置の違いによる画像濃度のむらが発生しない高画質な画像形成装置を提供する。
トナー中に分散され、定着時の加熱により気化して装置内に滞留したワックスが、ポリゴンミラーの反射面に固着して、反射率が部分的に低下するのを防止することができる画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るポリゴンミラーは、光源からの光を反射する複数の反射面を有し、周辺に傾斜した防音ガラスが配置され、この防音ガラスを通して上記光が入出射するポリゴンミラーであって、前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、ポリゴンミラーの回転に伴う光源からの光の入射角変化に対し、前記樹脂光学膜の反射率特性が、前記防音ガラスの透過率特性と逆になるように設定されていることを最も主要な特徴とする。
【0020】
前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、前記光源からの光の波長をλ、前記樹脂光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、次の式
(0.3×λ)/n<t<(0.4×λ)/n ・・・式(1)
を満足するように構成するとよい。
【0021】
本発明に係るポリゴンミラーはまた、光源からの光を反射する複数の反射面を有し、軸受部材である軸が焼き嵌めされた軸一体型のポリゴンミラーにおいて、前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るポリゴンミラーはまた、光源からの光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、前記光源からの光の波長をλ、前記光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、次の式
(0.45×λ)/n<t<(0.55×λ)/n ・・・(2)
を満足することを特徴とする。
【0023】
前記物理気相成長法は抵抗加熱蒸発源を用いた熱蒸着法を用いるとよい。
前記ポリゴンミラーの基材は純アルミニウム系の合金とし、前記樹脂光学膜の下層に、無機光学膜を形成するとよい。
前記樹脂光学膜は非晶質フッ素樹脂膜とするとよい。
【0024】
本発明に係る光偏向器は、ポリゴンミラーを備えた光偏向器であって、前記ポリゴンミラーが本発明に係るポリゴンミラーであることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る光走査装置は、半導体レーザーからのビームを、光偏向器を含む光学系を介して被走査面へ導いて光スポットを形成し、前記光偏向器により前記ビームを偏向させることにより前記光スポットを前記被走査面で走査させる光走査装置であって、前記光偏向器が本発明に係る光偏向器であることを特徴とする。
前記前記光走査装置は、これを組み込んだ光学箱に静電フィルタを設け、この静電フィルタを介して前記光学箱内に空気を流入させるように構成するとよい。
【0026】
本発明に係る画像形成装置は、感光体の感光面に光走査装置による光走査を行って潜像を形成し、上記潜像を可視化して画像を得る画像形成装置であって、感光媒体の感光面の光走査を行う光走査装置として本発明に係る光走査装置を用いたことを特徴とする。
上記画像形成装置に使用されるトナーは、ワックス微粒子が分散されたトナーとするとよい。
【発明の効果】
【0027】
一つの請求項に係る本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜を形成することにより、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止することができる。ポリゴンミラーの近傍に配置した防音ガラスの透過率特性を、ポリゴンミラーの反射率特性で相殺して、光源からの光の入射角変化に対して、光利用効率が平坦にすることができる。
【0028】
他の請求項に係る本発明によれば、樹脂光学膜に膜厚分布がなく均一な膜厚で形成することができ、光の入射角変化に対して、防音ガラスの透過率特性をポリゴンミラーの反射率特性で相殺可能な膜厚範囲に設定することができる。
【0029】
他の請求項に係る本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に撥水、撥油性に優れた樹脂光学膜を形成することにより、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止することができる。膜形成時の焼成工程をなくして、加熱により焼き嵌めされた軸が緩んで面倒れ(回転中心軸に対する反射面の傾き)が生ずることを防止することができる。また、液だれ、塗布むらがなく、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成することができる。
【0030】
他の請求項に係る本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に形成する樹脂光学膜の膜厚の均一性を確保しつつ、樹脂光学膜形成の量産性を確保して、低コストを図ることができる。焼成工程がなくても、樹脂光学膜の密着性を良くすることができる。
【0031】
本発明に係る光偏向器によれば、本発明にかかるポリゴンミラーを用いることにより、長期に渡り、ポリゴンミラーの曇りが少なく、反射率の低下が小さい光編光器を提供することができる。
【0032】
本発明に係る光走査装置によれば、本発明にかかる光偏向器を用いることにより、長期に渡り、ポリゴンミラーの反射率の低下およびばらつきが小さく、像高位置の違いによる光利用効率の差が小さい光走査装置を提供することができる。また、帯電性が高い樹脂膜に、静電気により塵埃が吸着されるのを防止した光走査装置を提供することができる。
【0033】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明にかかる光走査装置を用いることにより、ポリゴンミラー面の曇りおよび汚染を防止し、ポリゴンミラー反射面の反射率の低下およびばらつきがなく、長期に渡り、像高位置の違いによる画像濃度のむらが発生しない高い品質の画像を形成することができる。
【0034】
他の請求項に係る画像形成装置によれば、トナー中に分散され、定着時の加熱により気化して装置内に滞留するワックスが、ポリゴンミラーの反射面に固着することを防止して、反射率が部分的に低下するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明にかかるポリゴンミラー、光偏向器、光走査装置および画像形成装置の実施例を、図面を参照しながら実施例ごとに説明する。
【実施例1】
【0036】
図1はポリゴンミラー100の近傍ないしは周辺に防音ガラス101を配置してなる光走査装置の例を模式的に示している。半導体レーザーなどからなる光源102から射出された光束は防音ガラス101を透過し、ポリゴンミラー100の偏向反射面によって反射された上記光束は上記防音ガラス101を透過して結像位置すなわち被走査面に向かうように構成されている。ポリゴンミラーの近傍に防音ガラスを配置してなる光走査装置に関しては、例えば特開2007−178511号公報、前記特許文献5などに記載されている。
【0037】
防音ガラス101は、屈折率:1.5、厚さ:1.9mm程度の透明平行平板ガラスが用いられる。防音ガラス101は主走査方向(結像位置での光の走査方向)に対し10〜20度傾き、副走査方向(主走査方向に対し直交する方向であって紙面に鉛直な方向)に対しては1〜2度程度傾いて配置されている。
【0038】
ポリゴンミラー100の反射面には、撥水性、撥油性が高く、汚れが付着し難い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されている。非晶質フッ素樹脂膜材料としては、旭硝子社製「サイトップ」(登録商標)がある。「サイトップ」(登録商標)は、紫外・可視光から近赤外光までの広範囲な波長領域において極めて透明性が高い材料で、光学薄膜として好適である。
【0039】
図1において、例えば反時計回りにポリゴンミラー100が回転するものとすると、回転に伴い光源102からの光の入射角が変化し、結像位置は例えば像高−150mmから像高150mmへ変化する。像高150mmのときを実線で、像高−150mmのときを破線で示している。ポリゴンミラー100の各偏向反射面の反射率特性は防音ガラス101の透過率特性と逆になるように設定されている。すなわち、図1において、入射角が大きい像高−150mm側では、防音ガラス101の透過率は低いが、ポリゴンミラー100の反射率は相対的に高く設定されている。一方、入射角が小さい像高150mm側では、防音ガラス101の透過率は高いが、ポリゴンミラー100の反射率は相対的に低く設定されている。つまり、実施例1に用いられているポリゴンミラー100の各偏向反射面は、像高−150側の反射率が、像高150側の反射率より相対的に高くなるように設定されている。
【0040】
以下に非晶質フッ素樹脂膜の膜厚設定の詳細を示す。図2は、光の波長λ=655nm、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率1.34、下層に屈折率1.7の無機膜(SiO)を形成した場合のポリゴンミラーの反射率分布をシミュレーションにより計算した結果を示す。光学的な膜の厚さとして、無機膜(SiO)はλ/2に設定し、非晶質フッ素樹脂膜は0.2λ〜0.5λの範囲で、均一な膜厚で計算した。図2おいて、光学的な非晶質フッ素樹脂膜の厚さを0.3λ〜0.4λの範囲に設定すれば、像高−150mm側の反射率が像高150mm側の反射率より相対的に高くなる。さらに望ましくは0.35λ〜0.4λに設定するとよい。
【0041】
このとき、機械的な膜厚は光源からの光の波長をλ、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率をn、非晶質フッ素樹脂膜の膜厚をtとするとき、式(1)を満足するように構成すれば良い。
(0.3×λ)/n<t<(0.4×λ)/n ・・・式(1)
光の波長λ=655nm、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率1.34のとき、式(1)より、膜厚tは147〜196nmに設定すると良い。
【0042】
非晶質フッ素樹脂膜を均一な膜厚で形成する方法としては、物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)が好適である。液だれ、塗布むらがなく、湿式成膜法に比べ、膜厚を均一に形成することができる。物理気相成長法には、熱蒸着法、プラズマスパッタ法、イオンビームスパッタリング法等を適用可能であるが、均一な膜厚で形成が可能で、量産性が高く、低コストで膜形成ができる抵抗加熱蒸発源を用いた熱蒸着法が好適である。ポリゴンミラーの基材は一般的には純アルミニウム系の合金から形成されるが、非晶質フッ素樹脂膜の密着性を高めるために、非晶質フッ素樹脂膜の下層に、無機光学膜であるSiO膜、あるいはSiO2膜を形成するとよい。
【0043】
以上のような方法で、均一な膜厚で非晶質フッ素樹脂膜を形成する。これにより、ポリゴンミラーの反射面の汚れ、部分的な反射率低下を防止し、前記防音ガラス101の透過率特性をポリゴンミラー100の反射率特性で相殺し、入射角変化に対する光利用効率を平坦な特性にすることができる。
【実施例2】
【0044】
実施例2は、特許文献5に記載されているような、軸受部材で回転自在に支持される軸が焼き嵌めによりポリゴンミラーの回転中心に一体に結合された軸一体型ポリゴンミラーの実施例であって、これを図3に示す。図3において、軸一体型ポリゴンミラー105は、各偏向反射面105aに樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜を形成することができる。軸一体型ポリゴンミラー105は、焼き嵌めにより直径2〜3mmの軸120がポリゴンミラー105に形成された中心孔に固定されている。焼き嵌めの孔は軸120の径より、数μm〜10μm程度小さく形成されるため、余裕を持って軸が挿入できるように、ポリゴンミラー105を200〜300℃に加熱し、軸120の焼き嵌めをする。常温まで冷却されたときの焼き嵌め代としては、3〜10μm程度で、120℃〜160℃程度に再加熱されると焼き嵌め代が0の状態になり、軸120と孔の固定は緩んでしまう。
【0045】
前記特許文献4には、非晶質フッ素樹脂膜を湿式成膜法により形成する方法が開示されているが、湿式成膜法では170〜180℃程度での焼成が必要になる。非晶質フッ素樹脂膜を湿式成膜法により形成すると、ポリゴンミラーが170〜180℃程度で再加熱されるため軸が緩んでしまうことになる。軸一体型ポリゴンミラーは、焼き嵌めにより軸を固定した後、回転軸に対する反射面の傾き(面倒れ)が均一になるように反射面を形成している。軸が緩んでしまうと、面倒れが大きくなってしまい、光学特性を満足できなくなるため、170〜180℃の加熱を行う湿式成膜法で形成することはできない。
【0046】
よって、前述のような軸一体型ポリゴンミラー105の場合、樹脂光学膜は前記物理気相成長法である熱蒸着法により形成するのが好適である。熱蒸着法は、蒸発源となるフッ素樹脂は加熱され、ポリゴンミラー105も、蒸発源の加熱による影響で多少、温度は上昇するが、大きく加熱されることはなく、焼き嵌めされた軸120が緩むことはない。また、湿式成膜法のように、液だれ、塗布むらがなく、均一な膜厚で樹脂光学膜を形成することができる。非晶質フッ素樹脂膜材料としては、実施例1について説明したものと同じものを用いることができ、これにより同様の効果を得ることができる。ポリゴンミラー105の基材も、非晶質フッ素樹脂膜の良好な密着性を得るために、非晶質フッ素樹脂膜の下層に、無機光学膜であるSiO膜、あるいはSiO2膜を形成するとよい。
【0047】
上記軸120は、円筒状の軸受ホルダ108内に嵌められた軸受107によって回転自在に支持されている。ポリゴンミラー105の下部は円筒形に形成されてポリゴンモータのロータハウジング105gとなっていて、このロータハウジング105gの内周面にはリング状のロータマグネット106が固着されている。軸受ホルダ108の外周にはステータコア109が嵌められて固定され、ステータコア109が有する複数の突極には駆動コイル109aが巻き回されている。上記各突極の外端面とロータマグネット106の内周面は適宜の間隙をおいて対向している。このようにしてポリゴンモータが構成され、ロータマグネット106の回転位置に応じて各駆動コイル109aへの駆動電流を切り換えることにより、ポリゴンミラー105を高速度で回転駆動するようになっている。
【実施例3】
【0048】
図4、図5に、第3実施例を示す。図4、図5において、レーザー発生器1から出射したレーザービームLはポリゴンミラー2で反射され、結像レンズ群3を通過した後に感光体ドラム4上に結像する。ポリゴンミラー2はモータ5により回転駆動され、各偏向反射面でレーザービームLを等角速度的に偏向反射する。偏向されたレーザービームLは、結像レンズ群3のfθ機能によって感光体ドラム4の表面上を等速度的に走査する。レーザービームLの一部は反射ミラー6により検出器7に導かれ、レーザービームLの1走査毎の書き出しタイミングが検出される。
【0049】
図5に示すように、モータ5は、ロータ8、回転軸、モータ基板10、軸受ハウジング11等から構成され、モータ基板10上には駆動用IC12が配置されている。なお、ポリゴンミラー2は押えばねによってロータ8および上記回転軸に固定されている。モータ5は光学箱14内に収容され、光学箱14にはカバー15が爪15aによって固定され、光学箱14の外部の塵埃等が内部に侵入しないようにされている。ポリゴンミラー2の上方には、ポリゴンミラー2に近接して略円筒状の外気誘導整流部材20が設けられている。外気誘導整流部材20は、上端部の外気の流入口側がカバー15に固定され、下端部がポリゴンミラー2に近接して配置されている。外気誘導整流部材20がポリゴンミラー2と対向する面は、略リング状の平面で形成されている。
【0050】
図6に示すように、外気誘導整流部材20の外径D1は、ポリゴンミラー2の各反射面で形成される内接円直径D2よりも大きく形成されている。外気誘導整流部材20の中心部の空気流入孔には、活性炭フィルタ21が設けられ、このフィルタ21を通って空気が流入するようになっている。図7はフィルタ21の拡大図である。活性炭21cがシート状の静電フィルタ21a、21bで挟まれた構造となっている。符号21dはシート状の静電フィルタ21a、21b間に介在して活性炭21cの保持空間を形成する構造材である。フィルタ21は両面テープやねじ等を用いて交換可能に取り付けられている。交換を容易とするため、バネ部材等を用いて、フィルタ21を弾性的に固定する構成としても良い。
【0051】
図5では、ポリゴンミラー2が回転したときに発生する空気の流れを模式的に矢印で示している。ポリゴンミラー2が回転することで、ポリゴンミラー2の反射面で押出される空気を補うように、ポリゴンミラー2の上下から空気が流れ込む。ポリゴンミラー2の上方から外気誘導流路である外気誘導整流部材20の内側へと順次負圧が伝達され、外気が光学箱14の内側に誘導される。このとき、外気は図7に示す活性炭フィルタ21cを通ることで、塵埃、ガス状の汚染物質がフィルタ21cに吸着され、ポリゴンミラー2の周辺には清浄化された空気が供給される。塵埃は主にシート状の静電フィルタ21a、21bに吸着され、ガス状の汚染物質は活性炭に吸着される。
【0052】
外気誘導整流部材20は、ポリゴンミラー2の周辺における循環流を防止し、ポリゴンミラー2周辺には清浄化された空気を供給して、空気流によるエアーカーテンを形成し、ポリゴンミラー2の偏向反射面の曇り、汚染を防止する。外気の誘導効果を高め、ポリゴンミラー2周辺の循環流を防止するには、外気誘導整流部材20の外径D1を、ポリゴンミラー2の各反射面で形成される内接円直径と同等かそれよりも大きく形成すると良い。外気誘導整流部材20の外径D1をポリゴンミラー2の頂点(偏向反射面が6面の場合6角形の頂点)で形成される外接円の直径D3よりも大きくすれば、さらに好適である。また、外気誘導整流部材20の端面と、これに対向するポリゴンミラー2の上端面とのギャップGは3〜5mm以下にすると良い。ギャップGを小さくするほど外気の誘導効果が大きくなるが、ポリゴンミラー2の回転による気流で騒音が発生しないように、1〜5mm程度の範囲で適切なギャップに設定する。
【0053】
光学箱14には、特別に排気口は設けていないが、完全にシールされているものではないため、外気の誘導により光学箱内の圧力が高まると、光学箱14とカバー15の合わせ目のすきまから外部に空気が流れ出す。ポリゴンミラー2の回転に伴うモータ5や軸受部の発熱、ポリゴンミラー2自身の空気との摩擦熱により光学箱14内が加熱され、光学箱14内の空気が外部に押出され、相対的に温度が低い外気がポリゴンミラー2の周辺に誘導される。その結果、発熱源であるポリゴンスキャナの冷却効果が高まるとともに、光学箱14内に配置された結像レンズ群3などの光学部品への熱の伝達量が小さくなり、光学箱14内および光学部品内の温度偏差が小さくなる。
【0054】
以上のように構成されたポリゴンミラー2の少なくとも各偏向反射面には、樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が、物理気相成長法(PVD)である熱蒸着法で形成されている。非晶質フッ素樹脂膜材料としては、前述の材料を用いることができ、これによって前述の効果を得ることができる。ポリゴンミラーの基材に関しても、前述の材料を用いることができ、これによって前述の効果を得ることができる。
【0055】
実施例3では、外気誘導による気流が流れやすいように構成して冷却効率を高めるため、ポリゴンミラー2の近傍の防音ガラスは設けていない。防音ガラスを設けない場合には、前記光源からの光の波長をλ、前記非晶質フッ素樹脂膜の屈折率をn、非晶質フッ素樹脂膜の膜厚をtとするとき、式(2)を満足するように、構成すると良い。
(0.45×λ)/n<t<(0.55×λ)/n ・・・(2)
光の波長λ=655nm、非晶質フッ素樹脂膜の屈折率1.34のとき、式(2)より、膜厚tは220〜269nmに設定すると良い。平坦な反射率特性が得られる範囲は非常に小さく、中心値0.5λ±0.05λ程度の範囲になる。従来の湿式成膜法では、非晶質フッ素樹脂膜のばらつきが大きく膜厚制御が困難であったが、物理気相成長法(PVD)である熱蒸着法により形成すれば、膜厚制御が容易で、均一な膜厚を形成することができる。
【0056】
以上のように、ポリゴンミラー周辺に外気を誘導するように構成した光走査装置の上記ポリゴンミラーに、撥水、撥油性が高く、汚れが付着し難い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜を形成すれば、フィルタ特性として圧力損失の小さいフィルタを使用することが可能となる。その結果、外気誘導による冷却効果を高めることができる。非晶質フッ素樹脂膜は帯電性が高いため、回転による空気との摩擦で静電気が発生するが、外気誘導部に静電フィルタを設けることで、塵埃の吸着を防止することができる。なお、静電フィルタの効果は外気誘導タイプの光走査装置に限定されるものではなく、ほかのタイプの光走査装置においてもポリゴンミラーの周辺に静電フィルタを設ければ、反射面への塵埃の付着を防止できる。
【0057】
以上のように構成されたポリゴンミラーおよび光走査装置によれば、ポリゴンミラー周辺を中心とする温度上昇が抑制され、光学箱内の温度分布すなわち温度の高低差が低減されて、感光体上の光ビームの結像位置ずれ、画像劣化が低減される。また、活性炭フィルタにより、光学箱内に塵埃、ガス状の汚染物質を除去した外気を誘導し、ポリゴンミラーの周りには常に清浄化された空気を供給することで、ポリゴンミラー面の曇りや汚染を防止できる。フィルタで除去することができなかった汚染物質があったとしても、撥水、撥油性が高い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されているため、ポリゴンミラーの反射面が汚れ、あるいは曇ることはない。その結果、ポリゴンミラーの偏向反射面の反射率の低下やばらつきがなく、かかるポリゴンミラーおよびこれを用いた光走査装置を画像形成装置に適用することにより、画像劣化が無く高い品質の画像を形成することができる。また、光学箱の外側にダクトを設け、かつファンによる気流で光学箱内を空冷する必要が無く、光学箱およびその周辺が小型化され、ファン駆動による消費電力を低減することができる。
【実施例4】
【0058】
図8に、第4実施例を示す。図8において、軸方向の2段に形成されたポリゴンミラー140aとこのポリゴンミラーを回転駆動するポリゴンモータからなるポリゴンスキャナ140はコア筐体700内に収容されている。コア筐体700はサブ筐体710内の底板に取り付けられている。サブ筐体710は光学箱となっていて、サブ筐体710の開放した上端にはカバー711が被せられて固定され、光学箱の外部から塵埃等が内部に侵入しないように構成されている。光束を射出する光源部、走査レンズ等は前述の実施例と同様に構成することができるため、これらの部材の図示は省略されている。
【0059】
ポリゴンスキャナ140の上方には、ポリゴンスキャナ140に近接して外形が円柱形状の外気誘導整流部材30が設けられている。外気誘導整流部材30は外気の流入口側がカバー711に固定され、空気の出口側がポリゴンミラー140aに近接して配置されている。外気誘導整流部材30がポリゴンミラー140aと対向する面は、略リング状の平面で形成されている。外気の誘導流路となる外気誘導整流部材30の内側は、外気側からポリゴンミラー140aに向かって拡がる略円錐状に形成されている。図9に示すように、外気誘導整流部材30の外径D3は、ポリゴンミラー140aの頂点(反射面が6面の場合6角形の頂点)で形成される外接円の直径D4よりも大きい直径で形成されている。外気誘導整流部材30の空気流入口には、フィルタ31が設けられている。
【0060】
図10にフィルタ31の拡大図を示す。フィルタ31は、活性炭フィルタ31cがシート状の静電フィルタ31a、31bで挟まれた構造となっている。符号31dは、シート状の静電フィルタ31a、31b間に活性炭フィルタ31cを保持するための空間を確保するための構造材であってスペーサの役目をしている。活性炭フィルタ31cは、前述のような、活性炭素繊維が吸着材として働くものや、ガス状の化学物質を除去する活性炭シートと粉塵を取るエレクトレットフィルターを組み合わせたものなどを使用することができる。
【0061】
ポリゴンミラーが小型で、回転によって発生する風量が小さい場合は、図11に示すように、活性炭ペーパーを片段ボール積層法により、ハニカム状に成形加工したものをフィルタとして使用することもできる。かかる構造のフィルタを使用すると、フィルタの圧力損失が小さく、図8に示す実施例におけるフィルタとして好適である。上記フィルタ31は両面テープやねじ等を用いて交換可能に取り付けられている。交換を容易とするため、バネ部材等を用いて、フィルタ31を弾性的に固定する構成としても良い。
【0062】
図8では、ポリゴンミラー140aが回転したときに発生する空気の流れを模式的に矢印で示している。ポリゴンミラー140aが回転することで、ポリゴンミラー140aの反射面で押出される空気を補うように、ポリゴンミラー140aの上下から空気が流れ込む。ポリゴンミラー140aの上方から外気誘導整流部材30の内側の順に負圧が伝達され、外気が光学箱であるサブ筐体710の内側に誘導される。このとき、外気はシート状の静電フィルタ31a、31b活性炭フィルタ31cを通ることで、塵、ガス状の汚染物質がこれらのフィルタで吸着され、ポリゴンミラー140aの周辺には清浄化された空気が供給される。
【0063】
外気誘導整流部材30の外径D3は、ポリゴンミラー140aの頂点で形成される外接円直径D4よりも大きい直径で形成されているため、ポリゴンミラー140a周辺で空気が循環して流れることが防止され、ポリゴンミラー周辺には常に清浄化された空気が供給されて、空気流によるエアーカーテンが形成され、ポリゴンミラー面の曇り、汚染が防止される。外気誘導整流部材30の外径D3を、ポリゴンミラー140aの各反射面で形成される内接円直径よりも大きく形成すれば、ポリゴンミラー面の曇り、汚染防止効果が得られるが、ポリゴンミラーの外接円直径D4よりも大きい直径で形成することで、より大きな効果が得られる。
【0064】
また、ポリゴンミラー140aに近接して設けられる外気誘導整流部材30の端面とのギャップGは3〜5mm以下にすると良い。ギャップを小さくするほど外気の誘導効果が大きくなるが、ポリゴンミラーの回転による気流で騒音が発生しないように、1〜5mm程度の範囲で適切なギャップに設定するとよい。
【0065】
光学箱であるサブ筐体710には、特別に排気口は設けていないが、完全にシールされているものではないため、サブ筐体710の内側の圧力が高まると、サブ筐体710とカバー711の合わせ目のすきまから外部に空気が流れ出す。ポリゴンミラー140aの回転駆動に伴うポリゴンモータや軸受部分の発熱、ポリゴンミラー140a自身の空気との摩擦熱により光学箱が加熱され、温度が高くなった光学箱内の空気が外部に押出され、相対的に温度が低い外気がポリゴンミラー周辺に誘導される。その結果、発熱源であるポリゴンスキャナの冷却効果が高まるとともに、光学箱内に配置された結像レンズ群などの光学部品への熱の伝達量が少なくなり、光学箱内および光学部品内の温度偏差が小さくなる。
【0066】
本実施例においても、ポリゴンミラーの樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜の材料、その成膜方法、ポリゴンミラーの基材の材質、その下層膜の材質等は、前記実施例のものと同様とすることができ、これにより前記実施例における作用、効果と同様の作用、効果を得ることができる。
【0067】
第4の実施例によれば、ポリゴンミラー周辺を中心とする温度上昇が抑制され、光学箱内の温度分布(温度の高低差)が低減されて、感光体上の光ビームの結像位置ずれ、形成される画像の劣化が低減される。また、活性炭フィルタにより塵埃、ガス状の汚染物質を除去した外気を誘導し、ポリゴンミラーの周りには常に清浄化された空気を供給することで、ポリゴンミラー面の曇り、汚染を防止できる。フィルタで除去することができなかった汚染物質があったとしても、撥水、撥油性が高い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されているため、ポリゴンミラーの反射面が汚れ、あるいは曇ることはない。その結果、ポリゴンミラーの反射面の反射率の低下やばらつきがなく、高い品質の画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
【0068】
外気誘導路を空気流入口側からポリゴンミラーに向かって拡がる略円錐状に形成することで、外気誘導流路での気流の乱れが少なく、光偏向器の回転むらや騒音の発生を防止することができる。また、フィルタを交換可能な構成にしているので、経年変化により、フィルタが目詰まり状態になった場合は、フィルタを交換することで誘導外気の風量低下による冷却効果の低下を防止することができる。
【0069】
さらに、光学箱の外側にダクトを設けてファンによる気流で空冷する必要が無く、光学箱およびその周辺が小型化され、ファン駆動による消費電力を低減することができる。
【実施例5】
【0070】
次に、第5実施例として、本発明にかかるポリゴンミラーおよびこれを用いた光走査装置を組み込んだ画像形成装置の実施例について図12を参照しながら説明する。図12は、これまで説明してきた光走査装置を用いたカラー画像形成装置の例を示す。図12に示すカラー画像形成装置は、複数の感光体53Y,53M,53C,53Kを並列に配置したタンデム型のカラー画像形成装置の例である。画像形成装置の上部から順に光走査装置50、現像装置56、ドラム形感光体53、中間転写ベルト52、定着装置57、給紙カセット51がレイアウトされている。
【0071】
対をなすローラ52a,52bともう一つのローラ52c間に上面が水平になるように掛け渡された中間転写ベルト52の上方には、各色に対応した上記感光体53Y、53M、53C、53Kが、上記ベルと52の移動方向に沿い順にかつ上記ベルト2の上面に近接して等間隔で配設されている。感光体53Y,53M,53C,53Kは同一径に形成され、それらの周囲には電子写真プロセスを順に実行するためのプロセス装置が、各感光体の回転方向に順に配設されている。感光体53Yを例に説明すると、帯電チャージャ(図示されず)、光走査装置50から出射された画像信号に基づくレーザービームL1が走査される露光部、現像装置56Y、転写チャージャ(図示されず)、クリーニング装置(図示されず)等が順に配設されている。他の感光体53M,53C,53Kに対しても同様である。図12に示す画像形成装置の実施形態では、感光体53Y,53M,53C,53Kを色毎に設定された被走査面とするもので、光走査装置50から出射するレーザービームL1、L2,L3、L4がそれぞれに対応する各感光体表面を走査するように設けられている。
【0072】
各感光体における画像形成プロセスおよびカラー画像形成プロセスは以下の通りである。まず、各感光体を代表して感光体53Yにおける画像形成プロセスを説明する。帯電チャージャにより一様に帯電された感光体53Yは、光走査装置50からのレーザービームL1の走査によって主走査が行われ、また、感光体53Yが矢印方向に回転することによって副走査が行われ、感光体53Y上に静電潜像が形成される。また、光走査装置50によるレーザービームL1の照射位置よりも感光体53の回転方向下流側には、感光体53Yにトナーを供給する現像器56Yが配設され、イエローのトナーが供給される。現像器56Yから供給されたトナーは、静電潜像が形成された部分に付着し、トナー像が形成される。同様に感光体53M,53C,53Kには、それぞれM、Y、Kの単色トナー像が形成される。
【0073】
各感光体53Yの現像器56Yの配設位置よりもさらに感光体53Yの回転方向下流側には、中間転写ベルト52の上面が位置している。中間転写ベルト52は、複数のローラ52a、52b、52cに巻付けられ、図示しないモータの駆動により矢印B方向に移動するようになっている。中間転写ベルト52は感光体53Y、53M、53C、53Kの順に移動し、各感光体53Y,53M,53C,53Kで現像された単色画像を順次重ねあわせて転写し、中間転写ベルト52上にカラー画像を形成するようになっている。その後、給紙トレイ51から転写紙が矢印C方向に搬送され、中間転写ベルト52上のカラー画像が転写紙に転写される。カラー画像が形成された転写紙は、定着器57により定着処理後排紙される。画像を転写した後の各感光体および転写ベルト52の残留トナーはクリーニング装置によって除去される。
【0074】
なお、前記実施例4は、2段のポリゴンミラーで構成される光走査装置であるが、実施例3のように1段のポリゴンミラーで構成される光走査装置も本願発明にかかる画像形成装置に適用可能である。また、ポリゴンミラーを上下2段に設けてなる光走査装置を用いて本願にかかる画像形成装置を構成することも可能であり、ポリゴンミラーを用いて構成されるすべての光走査装置、画像形成装置に適用可能である。
【0075】
本発明にかかる画像形成装置によれば、光学箱の周りにダクトを設けてファンによる気流で空冷する必要が無いため、小型化され、ファン駆動による消費電力の増加がない。ポリゴンミラー周辺を中心とする温度上昇が抑制され、光学箱内の温度分布(温度の高低差)が低減され、感光体上の光ビームの結像位置ずれ、画像劣化が低減される。清浄化された空気流によるエアーカーテンが形成されることによって、ポリゴンミラー面の曇り、汚染を防止できる。フィルタで取りきれなかった汚染物質があったとしても、撥水、撥油性が高い樹脂光学膜である非晶質フッ素樹脂膜が形成されているため、ポリゴンミラーの反射面が汚れ、曇ることはない。ポリゴンミラーの反射面の反射率の低下およびばらつきがなく、画像劣化の無い高画質の画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。本願発明にかかる画像形成装置によれば、ワックス微粒子が分散されたトナーを使用するものであっても、定着により気化し、装置内に滞留したトナー中のワックス分散微粒子がポリゴンミラー面に固着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る光走査装置の第1の実施例を模式的に示す平面図である。
【図2】上記実施例におけるポリゴンミラーの反射率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図3】本発明に係る光走査装置の第2の実施例を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る光走査装置の第3の実施例を示す平面図である。
【図5】上記実施例の一部断面正面図である。
【図6】上記実施例中のポリゴンスキャナ部分を示す分解斜視図である。
【図7】上記実施例中のフィルタを示す拡大断面図である。
【図8】本発明に係る光走査装置の第4の実施例を示す縦断面図である。
【図9】上記実施例中のポリゴンスキャナ部分を示す分解斜視図である。
【図10】上記実施例中のフィルタを示す拡大断面図である。
【図11】上記実施例に適用可能な活性炭ペーパーフィルタの例を模式的に示す斜視図である。
【図12】本発明に係る画像形成装置の実施例を模式的に示す正面図である。
【図13】従来の光走査装置の一例を示す縦断面図である。
【図14】従来のポリゴンスキャナの例を示す縦断面図である。
【図15】従来のポリゴンミラーにおける曇り、汚れの例を示す斜視図である。
【図16】上記ポリゴンミラーの反射面における負圧と汚れの関係を示す正面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 光源
2 ポリゴンミラー
3 走査レンズ
4 感光体
21 活性炭フィルタ
31 フィルタ
100 ポリゴンミラー
101 防音ガラス
102 光源
105 ポリゴンミラー
140 ポリゴンスキャナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を反射する複数の反射面を有し、近傍に傾斜した防音ガラスが配置され、この防音ガラスを通して上記光が入出射するポリゴンミラーであって、
前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、
ポリゴンミラーの回転に伴う光源からの光の入射角変化に対し、前記樹脂光学膜の反射率特性が、前記防音ガラスの透過率特性と逆になるように設定されていることを特徴とするポリゴンミラー。
【請求項2】
前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、前記光源からの光の波長をλ、前記樹脂光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、式(1)を満足することを特徴とする請求項1記載のポリゴンミラー。
(0.3×λ)/n<t<(0.4×λ)/n ・・・式(1)
【請求項3】
光源からの光を反射する複数の反射面を有し、軸受部材である軸が焼き嵌めされた軸一体型のポリゴンミラーにおいて、
前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、
前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成されていることを特徴とするポリゴンミラー。
【請求項4】
光源からの光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、
前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、
前記光源からの光の波長をλ、前記光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、式(2)を満足することを特徴とするポリゴンミラー。
(0.45×λ)/n<t<(0.55×λ)/n ・・・(2)
【請求項5】
前記物理気相成長法は抵抗加熱蒸発源を用いた熱蒸着法であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリゴンミラー。
【請求項6】
前記ポリゴンミラーの基材は純アルミニウム系の合金からなり、前記樹脂光学膜の下層に、無機光学膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリゴンミラー。
【請求項7】
前記樹脂光学膜は非晶質フッ素樹脂膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリゴンミラー。
【請求項8】
ポリゴンミラーと一体の回転体が軸受に支持されてなる光偏向器において、前記ポリゴンミラーは請求項1〜7のいずれかに記載のポリゴンミラーであることを特徴とする光偏向器。
【請求項9】
半導体レーザからのビームを、光偏向器を含む光学系を介して被走査面へ導いて光スポットを形成し、前記光偏向器により前記ビームを偏向させることにより前記光スポットを前記被走査面で走査させる光走査装置において、前記光偏向器は請求項8記載の光偏向器である光走査装置。
【請求項10】
前記光走査装置を組み込んだ光学箱に静電フィルタを設け、この静電フィルタを介して前記光学箱内に空気を流入させることを特徴とする請求項9記載の光走査装置。
【請求項11】
感光体の感光面に光走査装置による光走査を行って潜像を形成し、上記潜像を可視化して画像を得る画像形成装置であって、感光媒体の感光面の光走査を行う光走査装置として、請求項9〜10のいずれかに記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成装置に使用されるトナーは、ワックス微粒子が分散されたトナーであることを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【請求項1】
光源からの光を反射する複数の反射面を有し、近傍に傾斜した防音ガラスが配置され、この防音ガラスを通して上記光が入出射するポリゴンミラーであって、
前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、
ポリゴンミラーの回転に伴う光源からの光の入射角変化に対し、前記樹脂光学膜の反射率特性が、前記防音ガラスの透過率特性と逆になるように設定されていることを特徴とするポリゴンミラー。
【請求項2】
前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、前記光源からの光の波長をλ、前記樹脂光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、式(1)を満足することを特徴とする請求項1記載のポリゴンミラー。
(0.3×λ)/n<t<(0.4×λ)/n ・・・式(1)
【請求項3】
光源からの光を反射する複数の反射面を有し、軸受部材である軸が焼き嵌めされた軸一体型のポリゴンミラーにおいて、
前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が形成され、
前記樹脂光学膜が物理気相成長法により形成されていることを特徴とするポリゴンミラー。
【請求項4】
光源からの光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、
前記反射面には撥水、撥油性の樹脂光学膜が物理気相成長法により形成され、
前記光源からの光の波長をλ、前記光学膜の屈折率をn、膜厚をtとするとき、式(2)を満足することを特徴とするポリゴンミラー。
(0.45×λ)/n<t<(0.55×λ)/n ・・・(2)
【請求項5】
前記物理気相成長法は抵抗加熱蒸発源を用いた熱蒸着法であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリゴンミラー。
【請求項6】
前記ポリゴンミラーの基材は純アルミニウム系の合金からなり、前記樹脂光学膜の下層に、無機光学膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリゴンミラー。
【請求項7】
前記樹脂光学膜は非晶質フッ素樹脂膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリゴンミラー。
【請求項8】
ポリゴンミラーと一体の回転体が軸受に支持されてなる光偏向器において、前記ポリゴンミラーは請求項1〜7のいずれかに記載のポリゴンミラーであることを特徴とする光偏向器。
【請求項9】
半導体レーザからのビームを、光偏向器を含む光学系を介して被走査面へ導いて光スポットを形成し、前記光偏向器により前記ビームを偏向させることにより前記光スポットを前記被走査面で走査させる光走査装置において、前記光偏向器は請求項8記載の光偏向器である光走査装置。
【請求項10】
前記光走査装置を組み込んだ光学箱に静電フィルタを設け、この静電フィルタを介して前記光学箱内に空気を流入させることを特徴とする請求項9記載の光走査装置。
【請求項11】
感光体の感光面に光走査装置による光走査を行って潜像を形成し、上記潜像を可視化して画像を得る画像形成装置であって、感光媒体の感光面の光走査を行う光走査装置として、請求項9〜10のいずれかに記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成装置に使用されるトナーは、ワックス微粒子が分散されたトナーであることを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−60769(P2010−60769A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225600(P2008−225600)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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