説明

ポリシロキサンベースのinsituポリマー混合物−組成物、物品およびその調整方法

ポリシロキサンと有機ポリマーの混合物を含む安定な混合組成物がクレームされる。これらのポリマー混合物は、白色で不透明であり、ミクロンスケールでの相分離の存在を示している。このような混合物は、肉眼で見える相分離の証拠が認められることなく、長期間(数年)保管することができる。ポリマー混合物が、分子量評価のための適切な有機溶媒に容易に溶解するという点から明らなように、これらの安定な混合物は、実質的に架橋なしに得られる。本発明の安定な混合物は、船舶用途のための汚損剥離コーティングとして特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国特許出願
本米国特許出願は、米国特許法第111条(a)による実用新案出願として出願される。
【0002】
関連米国特許出願
本米国特許出願は、2006年7月25日出願の米国仮出願第60/832,971号「Polysiloxane-Based In-situ Polymer Blends(ポリシロキサンベースのin situポリマー混合物)」の優先権を主張する。また、本米国特許出願は、2006年7月25日出願の米国仮出願第60/832,972号「Method for Preparing
Polysiloxane-Based In-situ Polymer Blends(ポリシロキサンベースのin situポリマー混合物の調整方法)」の優先権も主張する。
【0003】
参照援用
本文で引用されている出願および特許の各々のほか、それらの出願および特許の各々で引用されている文献または参考文献の各々(各発行特許の手続き中を含む;「出願引用文献」)、ならびにそれらの出願および特許に対応し、および/またはそれらの優先権を主張するPCTおよび外国出願または特許の各々、ならびに出願引用文献の各々で引用または参照されている文献の各々は、参照によりここに明示的に援用される。より一般的には、本文で(引用文献の一覧、本文中のいずれかにおいて)引用されている文献または参考文献、ならびに、それらの文献または参考文献(「本願引用文献」)の各々のほか、本願引用文献の各々で引用されている文献または参考文献(製造業者の任意の仕様書、取扱説明などを含む)の各々は、参照によりここに明示的に援用される。
【背景技術】
【0004】
淡水または海水中に浸水している船舶、船、ブイ、吸水および排水パイプなどの物体には、フジツボ、イガイ、棲管虫および藻などの水生生物が寄生する。「海洋汚損」の存在は、美観の低下、作業効率の低下などの深刻な問題を引き起こす。このため、このような物体の表面を防汚塗料でコーティングすることが一般的となっている。
【0005】
これまでのところ、これらの防汚塗料には、一般に、有毒なスズ化合物または銅化合物が含まれていた。スズベースのコーティングは、環境への懸念から事実上禁止されている。銅ベースのコーティングは現在広く使用されているものの、スズほど効果はなく、寿命も短く、環境への懸念から圧力が高まっている。
【0006】
近年、船舶用途の防汚コーティング、またはより適切には汚損剥離コーティングとして、ポリシロキサンまたはシリコーン、詳細にはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が検討されている。これらの物質は、毒性のある金属を使用することなく、汚損を最小限に抑える固有の剥離特性を備える。シリコーンエラストマベースの汚損制御コーティングのいくつかが、1970年代の初頭から公知となっている。例えば、シリコーンベースの配合物(formulation)が、米国特許第4,025,693号明細書、第4,080,190号明細書、第4,227,929号明細書などに開示されている。また、特開昭51−96830は、シリコーンオイルと、末端ヒドロキシル基を有するオリゴマー様のシリコーンゴムの混合物を使用する防汚塗料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,025,693号明細書
【特許文献2】米国特許第4,080,190号明細書
【特許文献3】米国特許第4,227,929号明細書
【特許文献4】特開昭51−96830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、シリコーンは、耐久性の問題と、シリコーン層と基体間に強い結合を形成するのが困難であることから、使用が妨げられてきた。
【0009】
本発明は、シリコーンを含む安定したポリマー混合物の調製を記載する。これらの混合物は、良好な防汚特性を有し、米国ニューヨーク州ウォーターフォード所在のGE Siliconesから商業的に入手可能な、別個のジブチル錫ジラウレート触媒と共に提供されるシリコーンエラストマであるRTV11等のシリコーンの剥離コーティングより格段に丈夫で耐久性のあるコーティングの形成に使用することができる。このため、これらの混合物は、丈夫な防汚トップコートとして使用されたり、シリコーントップコートに結合し、改良された靱性と改良された付着抵抗を提供するための結合層またはタイコート層として使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、少なくとも1種類のポリシロキサンポリマーと1種類の有機ポリマーを含み、前記有機ポリマーは、重合して単鎖ポリマーとなるモノマーを含み、前記有機ポリマーは、架橋多官能価モノマーを含まない汚損剥離タイコートポリマー混合物を含む。
【0011】
別の実施形態では、前記タイコートポリマー混合物は、一般的には約50,000〜500,000、より好ましくは約120,000〜160,000の重量平均分子量を有するポリマーを含む。
【0012】
更に別の実施形態では、前記タイコートポリマー混合物の前記ポリシロキサンポリマーは以下の反復単位式を有し、
【化1】

【0013】
式中、RおよびRは、それぞれ独立に置換または非置換のC−Cアルキル、あるいは置換または非置換のアリールであり、前記置換基は、存在する場合、シアノ、ハロゲンまたは別の結合官能価を提供しない別の基から選択される。
【0014】
更に別の実施形態では、前記ポリシロキサンポリマーの少なくとも1つの末端は、末端反応性基を有し;好ましくは、前記末端反応性基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、ハロゲンまたはビニル基であり;より好ましくは、前記ポリシロキサンポリマーは、ヒドロキシル終端ジメチルシロキサンである。
【0015】
別の実施形態では、前記タイコートポリマー混合物は、in situ生成されたフリーラジカルの存在下でフリーラジカル重合を受けることができる有機モノマー;好ましくは、モノオレフィンモノマー;より好ましくは、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、ブテンモノマー、塩化ビニルモノマー、フッ化ビニルモノマー、フルオロアクリレート、酢酸ビニルモノマー、スチレンモノマー、環置換されたスチレンモノマー、ビニルピロリジンモノマー、ビニルナフタレンモノマー、N−ビニルカルバゾルモノマー、N−ビニルピロリドンモノマー、アクリル酸モノマー、メタアクリル酸モノマー、アクリロニトリルモノマー、メタクリロニトリルモノマー、フッ化ビニリジンモノマー、塩化ビニリジンモノマー、アクロレインモノマー、メタクリロレインモノマー、無水マレイン酸モノマー、スチルベンモノマー、インデンモノマー、マレイン酸モノマーまたはフマル酸モノマーを更に含む。
【0016】
更に別の実施形態では、前記有機ポリマーは、スチレン、ブチルアクリレート、他のアルキルアクリレートまたはこれらの混合物である。
【0017】
更に別の実施形態では、前記in situ生成されたフリーラジカルは、ベンゾイルペルオキシドまたはジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびt−ブチルヒドロペルオキシドの添加によって開始される。
【0018】
本発明の別の態様では、前記タイコートポリマー混合物は、表面への適用のために霧化および噴霧を行うことが更に可能である。更に別の態様では、前記タイコートポリマー混合物は、前記混合物の噴霧性を向上させることが可能なシリコーン流体を更に含む。
【0019】
更に別の実施形態では、前記タイコートポリマー混合物は、適用される表面と強固な共有結合マトリックスを形成することが更に可能である。
【0020】
本発明の別の態様では、前記タイコートポリマー混合物は、約25℃で約40,000〜約400,000センチポアズ;好ましくは約25℃で約80,000〜約250,000センチポアズ;より好ましくは約25℃で約95,000〜約150,000センチポアズの粘度を有する。
【0021】
本発明の別の態様では、前記表面コートは、約25℃で約8,000〜約18,000センチポアズ;好ましくは約25℃で約9,000〜約15,000センチポアズ;より好ましくは約25℃で約10,000〜約12,000センチポアズの粘度を有する。
【0022】
本発明の更に別の態様では、硬化剤を更に含む前記タイコートポリマー混合物の前記硬化剤は、スズベースではない触媒、好ましくは、N,N’,N”−トリシクロヘキシル−1−メチルシラントリアミン、白金ベースまたはチタンベースの触媒、あるいは他の非スズベースの触媒または架橋剤CA−40(ワッカーケミー)などの有機ベースの触媒である。
【0023】
別の態様では、本発明は、基体に適用された耐食エポキシ層と、前記エポキシ層に適用されたここに記載のタイコートポリマー混合物と、前記タイコートポリマー混合物に適用されたシリコーン表面コートと、を含み、前記エポキシ層は、第一級または第二級アミンを有するシランカップリング剤を含む汚損剥離系を含む。
【0024】
前記汚損剥離系の一部の態様では、前記タイコートポリマー混合物はシリコーン流体を更に含む。
【0025】
前記汚損剥離系の別の実施形態では、前記基体は、前記第1耐食エポキシ層の適用前にクリーニングされ;好ましくは、前記基体は、前記耐食エポキシ層の適用前にグリットブラスト処理される。
【0026】
前記汚損剥離系の更に別の実施形態では、前記シリコーン表面コートは、剥離オイルを更に含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、基体に適用された第1耐食エポキシ層と、前記第1耐食エポキシ層に適用された第2耐食エポキシ層と、前記第2耐食エポキシ層に適用されたここに記載のタイコートポリマー混合物と、前記タイコートポリマー混合物に適用されたシリコーン表面コートと、を含み、前記第2耐食エポキシ層は、第一級アミンを有するシランカップリング剤を更に含む汚損剥離系を含む。
【0028】
前記汚損剥離系の一部の態様では、前記タイコートポリマー混合物はシリコーン流体を更に含む。
【0029】
前記汚損剥離系の別の実施形態では、前記基体は、前記第1耐食エポキシ層の適用前にクリーニングされ;好ましくは、前記基体は、前記耐食エポキシ層の適用前にグリットブラスト処理される。
【0030】
前記汚損剥離系の更に別の実施形態では、前記シリコーン表面コートは、剥離オイルを更に含む。
【0031】
別の態様では、本発明は、基体に適用された耐食エポキシ層と、前記耐食エポキシ層に適用され、シリコーン表面コート混合物とここに記載のタイコートポリマー混合物とを含む剥離層と、を有し、前記耐食エポキシ層は、第一級アミンを有するシランカップリング剤を含む汚損剥離系を含む。
【0032】
前記汚損剥離系の一部の態様では、前記タイコートポリマー混合物はシリコーン流体を更に含む。
【0033】
前記汚損剥離系の別の実施形態では、前記基体は、前記第1耐食エポキシ層の適用前にクリーニングされ;好ましくは、前記基体は、前記耐食エポキシ層の適用前にグリットブラスト処理される。
【0034】
前記汚損剥離系の更に別の実施形態では、前記シリコーン表面コートは、剥離オイルを更に含む。
【0035】
前記汚損剥離系の更に別の実施形態では、1つの適用された層が、前記タイコートと汚損剥離層の両方の機能を実現する。この単一の適用層、すなわちモノプレックスは、前記タイコート混合物材料と前記トップコート材料の両方を含んでいる。前記モノプレックス中のトップコート混合物樹脂の量は、5%〜99%、または好ましくは50%〜99%、および最も好ましくは75%〜95%である。逆に、前記モノプレックス層に含まれるトップコート樹脂の量は、1%〜95%、または好ましくは1%〜50%、および最も好ましくは5%〜25%である。
【0036】
別の態様では、本発明は、有機ポリシロキサンと1種類の有機ポリマーとを接触させるステップを有し、前記有機ポリマーは、重合して単鎖ポリマーとなるモノマーを含み、前記有機ポリマーは、架橋多官能価モノマーを含まない、組成物の調製方法を含む。
【0037】
一実施形態では、前記方法は、前記有機ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーとフリーラジカル開始剤を接触させるステップを更に有する。
【0038】
一部の実施形態では、前記フリーラジカル開始剤は、アゾ−ビス−アルキルニトリル;好ましくはAIBNである。一部の実施形態では、前記フリーラジカル開始剤は、ペルオキシド;好ましくは、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロゲンペルオキシド、およびt−ブチルヒドロゲンペルオキシドである。
【0039】
更に別の実施形態では、前記ポリシロキサンポリマーは以下の反復単位式を有し、
【化2】

【0040】
式中、RおよびRは、それぞれ独立に置換または非置換のC−Cアルキル、あるいは置換または非置換のアリールであり、前記置換基は、存在する場合、シアノ、ハロゲンまたは別の結合官能価を提供しない別の基から選択される。
【0041】
更に別の実施形態では、前記ポリシロキサンポリマーの少なくとも1つの末端は、末端反応性基を有し;好ましくは、前記末端反応性基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、ハロゲンまたはビニル基であり;より好ましくは、前記ポリシロキサンポリマーは、ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンである。別の実施形態では、前記ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンは、25℃で100センチストーク未満の粘度を有する。更に別の実施形態では、前記ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンは、25℃で2000〜8000センチストークの粘度を有する。更に別の実施形態では、前記ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンは、25℃で10,000〜50,000センチストークの粘度を有する。
【0042】
別の実施形態では、前記タイコートポリマー混合物は、in situ生成されたフリーラジカルの存在下でフリーラジカル重合を受けることができる有機モノマー;好ましくは、モノオレフィンモノマー;より好ましくは、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、ブテンモノマー、塩化ビニルモノマー、フッ化ビニルモノマー、フルオロアクリレート、酢酸ビニルモノマー、スチレンモノマー、環置換されたスチレンモノマー、ビニルピロリジンモノマー、ビニルナフタレンモノマー、N−ビニルカルバゾルモノマー、N−ビニルピロリドンモノマー、アクリル酸モノマー、メタアクリル酸モノマー、アクリロニトリルモノマー、メタクリロニトリルモノマー、フッ化ビニリジンモノマー、塩化ビニリジンモノマー、アクロレインモノマー、メタクリロレインモノマー、無水マレイン酸モノマー、スチルベンモノマー、インデンモノマー、マレイン酸モノマーまたはフマル酸モノマーを含む。
【0043】
更に別の実施形態では、前記有機ポリマーは、スチレン、ブチルアクリレート、他のアルキルアクリレートまたはこれらの混合物を含む。
【0044】
別の実施形態では、前記方法の前記ポリマーは、一般的には約80,000〜250,000、より好ましくは約120,000〜160,000の重量平均分子量を有する。
【0045】
更に別の実施形態では、前記方法は、窒素噴霧雰囲気で実施される。
【0046】
別の実施形態では、前記方法は、二官能価つなぎ剤と接触させるステップを更に有し:好ましくは、前記二官能価つなぎ剤は、第一級および/または第二級アミン官能基およびシロキサン様の官能基を有する。
【0047】
更に別の実施形態では、前記方法の前記開始剤は、前記有機ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーに複数回で添加される。更に別の実施形態では、前記方法の前記開始剤は、前記有機ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーに1回で添加される。
【0048】
別の実施形態では、前記方法は、硬化剤と接触させるステップを更に有し、前記硬化剤は、スズベースの触媒ではない。
【0049】
更に別の実施形態では、前記タイコートポリマー混合物を形成するための重合中の考察される剪断速度は、一般的には約10min−1〜約1,500min−1;より好ましくは約100min−1〜約1,000min−1の範囲にある。
【0050】
更に別の実施形態では、前記方法によって生成される生成物は、細長い、ミクロ相分離されたポリマーモルフォロジを有さない。
【0051】
更に別の実施形態では、前記方法は水を添加するステップを更に有する。
【0052】
別の態様では、本発明は、ここに記載の汚損剥離タイコートポリマー混合物を表面に適用するステップを有する汚損剥離特性を有する表面の準備方法を含む。
【0053】
別の態様では、本発明は、ここに記載の汚損剥離系を表面に適用するステップを有する汚損剥離特性を有する表面の準備方法を含む。
【0054】
前記表面の準備方法の一実施形態では、前記表面は、耐食エポキシを有する基体である。
【0055】
前記表面の準備方法の一実施形態では、前記方法は、表面コート;好ましくはシリコーン表面コートを適用するステップを更に有する。
【0056】
別の態様では、本発明は、有機ポリシロキサンと1種類の有機ポリマーとを接触させるプロセスから生成される生成物であって、前記有機ポリマーは、重合して単鎖ポリマーとなるモノマーを含み、前記有機ポリマーは、架橋多官能価モノマーを含まない生成物を含む。一実施形態では、前記生成物は、前記有機ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーとフリーラジカル開始剤を接触させるステップを更に有するプロセスから生成される。別の実施形態では、前記生成物は、前記接触が窒素噴霧雰囲気で実施されるプロセスから生成される。
【0057】
更に別の実施形態では、前記生成物は、水の添加を更に有するプロセスから生成される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1耐食エポキシ層と第2耐食エポキシ層を有するデュプレックス汚損剥離系の模式図を示す。前記第2エポキシ層はタイコートポリマー混合物に結合され、これが次にシリコーン表面コートでコーティングされる。
【図2】単一の耐食エポキシ層を有するデュプレックス汚損剥離系の模式図を示す。前記層はタイコートポリマー混合物に結合され、これが次にシリコーン表面コートでコーティングされる。
【図3】従来のシリコーン処理でコーティングされた基体に対する、デュプレックスシリコーン表面でコーティングされた基体の剥離試験形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
定義
本発明をより容易に理解できるよう、便宜上のために、特定の用語を最初に定義し、ここに収集する。その他の定義は、本願全体にわたる文脈で登場する。
【0060】
本開示において、「備える(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」等は、米国特許法で規定されている意味を持つことができ、「備える(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」等を意味することができる。「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」または「本質的に含む(consists essentially)」も、同様に米国特許法で規定されている意味を持ち、その用語は開放型(open−ended)であり、記載内容以外の存在によって、記載内容の基本的または新規な性質が変わらない限り、記載内容以外の存在を認めるものであるが、先行技術の態様は含まない。
【0061】
本明細書で使用されるように、「防汚(anti−fouling、antifouling)」、「汚損剥離(fouling release、foulant release)」、および「汚損生物の剥離(release of fouling organisms)」との用語は、交換可能に使用され、水に浸っている構造物、特に船体への微生物、植物、藻、および動物の堆積を除去するか、またはその望ましくない堆積の堆積を阻止する処理を指す。
【0062】
「汚損剥離タイコートポリマー混合物」または「タイコートポリマー混合物」との用語は、靱性および/または剛性を提供し、海洋汚損物質の付着を妨げるか、海洋汚損物に曝露された場合に、および/または海洋汚損物質の堆積を阻止するために、基体または他の表面に結合することができるポリマー混合物を意味する。ここで「汚損剥離系」という用語は、汚損剥離特性を有するために、さまざまな層でコーティングされた表面を意味する。その例としては、限定されないが、第1耐食エポキシ層と第2耐食エポキシ層であって、前記第2エポキシ層がタイコートポリマー混合物に結合され、これが表面コートでコーティングされる層;エポキシシーラントおよびつなぎ剤を含むエポキシバリア、タイコートポリマー混合物および表面コート;またはつなぎ剤を含むエポキシバリア、タイコートポリマー混合物および表面コートが挙げられる。
【0063】
「多官能価モノマーの架橋」との用語は、ホモポリマー化されたときに、架橋ポリマー鎖を形成することができるモノマーを意味する。
【0064】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」との用語は、1〜50の炭素原子を含む直鎖または分枝の炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、およびn−ペンチルがあるが、これらに限定されない。アルキル基は、1つ以上の置換基で任意に置換されてもよい。
【0066】
「C−Cアルキル」との用語は、炭素原子と水素原子のみを含み、1〜3の範囲の炭素原子を含み、単結合によって残りの分子に付着されている直鎖または分枝の炭化水素鎖基を意味し、その例としては、メチル、エチル、n−プロピル、および1−メチルエチル(イソプロピル)が挙げられる。
【0067】
「アリール」という用語は、炭化水素の単環、二環または三環の芳香族環構造を意味する。アリール基は、1つ以上の置換基で任意に置換されてもよい。一実施形態では、アリール基の各環の0、1、2、3、4、5または6の原子が置換基で置換されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニルなどが挙げられる。更に、「アリール」との用語は、少なくとも1つの環が芳香属である炭化水素の単環、二環または三環の架橋された環構造も指す。
【0068】
「アルコキシ」との用語は、−O−アルキル基を意味する。「アリールオキシ」との用語は、−O−アリール基を意味する。「アミド」は−C(O)NH−である。
【0069】
本明細書中で使用される場合、「置換基」または「置換された」との用語は、化合物または基(例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクリル基)にある水素基が、化合物の安定性に実質的に悪影響を与えない任意の所望の基で置換されることを指す。置換基の例としては、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、チオ、イミノ、ホルミル、カルバミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、メルカプトアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリルなどが挙げられ、アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アルコキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクリル、およびヘテロシクリルは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)またはイミノ(=NR)によって任意選択で置換されるが、これらに限定されない。
【0070】
「末端反応性基」との用語は、別の化合物または近くの反応性基との化学反応を受けることが更にできる、ポリシロキサンポリマーの末端に結合された基を意味する。末端反応性基としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、ハロゲンまたはビニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
「in situ生成されたフリーラジカルの存在下でフリーラジカル重合を受けることができる有機モノマー」との用語は、外部のフリーラジカル発生源との反応によってではなく、モノマー自体によって生成されたラジカルとの反応によってポリマーを形成することができる有機モノマーから形成されるポリマーを意味する。
【0072】
「モノオレフィン」との用語は、反応性の炭素−炭素二重結合を1つだけ有するモノマーを意味する。本発明に関していえば、1つの反応性の炭素−炭素二重結合は、2つの隣接するモノマーに結合することができるため、実際には二官能価である。モノオレフィンモノマーとしては、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、ブチレンモノマー、塩化ビニルモノマー、フッ化ビニルモノマー、フルオロアクリレート、酢酸ビニルモノマー、スチレンモノマー、環置換されたスチレンモノマー、ビニルピリジンモノマー、ビニルナフタレンモノマー、N−ビニルカルバゾルモノマー、N−ビニルピロリドンモノマー、アクリル酸モノマー、メタアクリル酸モノマー、アクリロニトリルモノマー、メタクリロニトリルモノマー、フッ化ビニリジンモノマー、塩化ビニリジンモノマー、アクロレインモノマー、メタクリロレインモノマー、無水マレイン酸モノマー、スチルベンモノマー、インデンモノマー、マレイン酸モノマーまたはフマル酸モノマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
「二官能価つなぎ剤」という用語は、タイコートとエポキシ層間に、共有結合によって分子架橋を形成するために使用される1以上の化合物を意味する。特定の実施形態では、二官能価つなぎ剤は、第一級および/または第二級アミン官能性とシロキサン様の官能性の組み合わせを含む。「シロキサン様の官能性」との用語は、通常、トリエトキシシランおよびトリメトキシシランを意味する。
【0074】
「細長いモルフォロジ」という用語は、相分離またはミクロ相分離された物質中に、ロッド様またはニードル様の形態学的特徴を有することを意味する。
【0075】
「シリコーン流体」との用語は、ポリマーに添加されると、前記ポリマーの粘性を低減させ、スプレーノズルによって表面に強制的に噴霧される能力を向上させ、汚損剥離特性も改善するシリコーンベースの液体または流動性物質を意味する。シリコーン流体は、SF69およびSF1147を含むが、これらに限定されない。
【0076】
「硬化剤」という用語は、末端のSi−OH基との反応によってタイコート樹脂を硬化することができる有機または無機の触媒あるいはその他の物質を意味する。硬化剤は、N,N’,N”トリシクロヘキシル−1−メチルシラントリアミン(silanetriamine)、スズベースの触媒、白金ベースの触媒または他の非スズベースの触媒を含むが、これらに限定されない。
【0077】
「耐食エポキシ層」という用語は、エポキシドとアミン官能性の反応によって硬化し、金属、コンクリートバリアまたは水侵入バリアに防食性を与え、特に腐食(発錆)耐性が重要である金属表面への船舶用塗料の付着を改善するプライマとして更に使用することができる熱硬化性ポリマーを意味する。
【0078】
「基体」および「表面」との用語は、ここでは交換可能に使用され、さまざまな表面を意味し、これには、船、船舶、潜水艦、発電所、セメントパイプ、下水および地下パイプ、法規(law)スプリンクラーシステム、および送電線および風車の着氷防止が含まれるが、これらに限定されない。このような表面には、船舶および発電所の冷却水吸水口の用途を含め、船舶および工業の環境が含まれる。別の用途として、環境からの水が工業プロセスに使用される用途がある。より詳細には、表面には、艇体、内外機式エンジン、舵およびトリムタブが含まれる。このような表面としては、ファイバーグラス、ブリスターファイバーグラス、木、木造船体、既存の塗料、スチール、スチールの船体、アルミニウム、および水中金属部品を含む金属部品が挙げられるが、これらに限定されない。他の基体には、建物、屋根、浄水システム、および脱塩システムが挙げられる。
【0079】
「剥離オイル」との用語は、ポリマー樹脂またはシリコーン表面に取り込まれると、時間の経過に伴いゆっくりと拡散するか、表面にとどまり、これにより材料の汚損剥離特性を向上させる物質を意味する。剥離オイルは、低分子量のシリコーンベースのオイル、SF1147、SF1154、DMSC15、およびDBE224を含むが、これらに限定されない。
【0080】
なお、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態の記載のみを目的として使用しているものであり、限定を意図するものではない。また、文脈から明らかに別の意味が示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される単数形表現「1つの」、「この」、「前記」には複数形が含まれる。このため、例えば、「ペプチド」には複数のペプチドが含まれ、「スペーサ」には2つ以上のスペーサが含まれる。
【0081】
特段に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は全て、本発明の属する技術分野の当業者が共通に理解している意味と同じ意味をもつ。矛盾が存在する場合には、定義を含め本明細書の記載が優先する。ここにおいて引用される全ての刊行物、特許出願、特許および他の文献は、参照により援用される。
【0082】
タイコート組成物
本発明のタイコート組成物は、重合して1つの鎖状ポリマーとなるモノマーを含み、架橋多官能価モノマーは含まない。このようなタイコートは、単純なグラフトポリマーではなく、ポリマー混合物を含む安定なグラフトポリマーおよびコポリマー(グラフトコポリマーによって安定化される)である。
【0083】
本発明のタイコートは、既に開示されている(例えば、米国特許第5,449,553号明細書および米国特許第5,593,732号明細書参照)細長いモルフォロジを持たない。本発明のタイコートは、高靱性モルフォロジのための高い剪断力は必要ではなく、重合のための出発物質を均質に混合させるために十分な剪断力があればよい。タイコート配合物において観察される構造は、船の運転や他の摩耗のある環境中で機械的傷害を吸収し、表面とタイコート(シリコン、ブチルアクリレートおよびポリスチレン−ブロックコポリマー)間の化学結合によってこの靱性を表面コートに付与するために、同等または高いレベルの靱性を実現する小さな楕円体粒子のモルフォロジ(電子顕微鏡写真によって観察)である。タイコートは、シリコントップコートの汚損剥離特性を弱めることなく、シリコン表面コートに靱性を付与するために、強固な共有結合性マトリックスを形成する。トップシリコンコートの屈曲または他の汚損剥離の機構は損なわれない一方で、動物と表面間の結合の硬化または完全な硬化の有無に関わらず、この結合が弱くなるように、動物によって放出されるペプチドまたは他の付着性物質(glue)の粘着特性が弱められることが理解されよう。
【0084】
本発明のタイコートまたはタイコートを使用する系によって得られる利点として、性能信頼性(優れた剥離能、および船舶に使用された場合の省燃費);重金属と殺生剤を含まないことによる無毒性;環境安全性(廃棄物は危険がなく、船体または他の装置から除去したのちに廃棄物埋立地への廃棄が可能となる);噴射水またはセルフクリーニングによる汚損剥離を含む、優れた剥離特性;適用の迅速さ(シリコーンスプレーラインを使用する従来のエアレススプレー装置を使用して適用できる);使用耐久性と層の付着性が挙げられる。
【0085】
シリコーン−シリコーン結合を形成するためのつなぎ剤を含む耐食エポキシコート
本発明の別の態様では、耐食エポキシ層は、第一級および/または第二級アミンなどのアミンを有するシランカップリング剤を更に含む。例えば、SCM501Cとして知られる化合物がエポキシ層に添加される(複数のエポキシ層が使用される場合、SCM501Cは最も外側の層または最後に適用される層に添加される)。米国特許第6,391,464号明細書「Epoxy Coatings and Surfaces Coated Therewith(エポキシコーティング、およびこれによりコーティングされた表面)」を参照のこと。本発明者らは、実質的に少ない物質を使用しつつ、他の数種類の物質が、シリコーン−シリコーン結合によってこの結合を改善するということをその後発見した。このような新しい物質には、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびシクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
表面への適用
特定の実施形態では、タイコートは、スプレー適用を非常に容易にし、最終生成物に取り込まれるシリコーン流体を含む。この流体は、約1%〜約30%、特定の実施形態では15%の体積で取り込まれうる。
【0087】
一実施形態では、タイコートが、表面コートに結合される。本発明のタイコートは、タイコートと表面コート間のシリコーン架橋によって表面コートに結合する。この結合は、性質上共有結合性であり、極めて強力である。この結合の性質は、2層間を「一体化」させる。この「一体化」により、タイコートから表面コートに靱性が伝えられ、系全体が、従来のシリコーンコーティングには存在しない靱性を実現することが可能となる。表面コートは、標準的なシリコーン汚損剥離材料と比較して弾性の遙かに高い表面を提供するこのような靱性を有する一方で、必要な汚損剥離特性を保つ。これにより、破損抵抗、剥離抵抗および耐用寿命の優れたコーティングが得られる。
【0088】
別の実施形態では、本発明は、エポキシに結合されたタイコートを提供する。タイコートは、物理的手段/機械的手段の両方に加えて、化学的手段でエポキシに結合する。更に、分子の一端にアミン官能基を有し、他端にシロキサン様の官能基を有する二官能価つなぎ剤が添加される。シリコーンは低エネルギーの表面を形成するため、シロキサン官能基の一部がエポキシ化合物の表面に上昇(ここでは「自己集合」と呼ぶ)し、タイコートのシリコーン官能基と結合する準備を整える。アミン官能基がエポキシ層中のエポキシド官能基と結合する一方で、エポキシ層の空気表面側に自己集合したシリコーン分子は、タイコート中のシリコーン分子と結合する。本発明によって考察される二官能価つなぎ剤の例には、SCM501C、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびシクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシランが含まれる。下記の表1を参照のこと。
【0089】
更に本発明によって、基体に結合されたエポキシに結合されたタイコート、基体に結合されたエポキシに結合されたタイコートに結合されたトップコートが考察される。
【0090】
ポリシロキサン
このプロセスで使用されるポリシロキサンは、以下の一般反復単位式に従うポリマーである。
【化3】

【0091】
式中、RおよびRは有機基であり、特に1〜3の炭素原子のアルキル基であり、これらは置換されてもよく、同じであっても異なってもよく、これらの最も単純な場合がメチル基である(ポリ(ジメチルシロキサン)、PDMS)。RおよびR基は、他の一価のアルキルまたはアリール基であっても、または、例えばハロゲン置換基またはシアノ基によって置換されてもよい。ポリシロキサン鎖の末端には、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、ハロおよびビニルなどの末端反応性基が存在する。これらの末端基は、ポリシロキサン混合物の凝固または硬化の際、および/またはこれらの構造を含む層をポリシロキサンのトップコート(例えばRTV11またはつなぎ剤)と結合する際に使用される。
【0092】
本発明の安定なポリマー混合物の形成において有用である適切な末端官能基を有するポリシロキサンの例は、ヒドロキシル終端シリコーン流体である。有用な流体の粘度は、25℃で、約500〜50,000cps、より好ましくは、1,000〜20,000cpsの範囲をとりうる。
【0093】
フリーラジカルによって重合可能なモノマーは、任意の重合可能なモノオレフィンモノマーであってもよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、環置換されたスチレン、ビニルピリジン、ビニルナフタレン、N−ビニルカルバゾル、N−ビニルピロリドン、アクリル酸およびメタアクリル酸、塩、エステルおよびアミドを含むこれらの誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フッ化ビニリジン、塩化ビニリデン(vinylidene chloride)、アクロレイン、メタクリロレイン、無水マレイン酸、スチルベン、インデン、マレイン酸およびフマル酸、およびこれらの誘導体、ならびにブタジエンおよびイソプレン共役ジエンなどである。特定の実施形態では、モノマーは、上に挙げたモノマーのフッ素化された(fluoriated)類似体を含んでもよい。これらのモノマーは、ポリシロキサンとフリーラジカル源の存在下で、1種類で重合しても、または2種類以上の組み合わせで重合してもよい。本発明において、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどの多官能価の「架橋モノマー」が、非常に少量(モノオレフィンモノマーの重量に基づき約5%未満、最も好ましくは1%未満)使用されてもよいが、ゲル化を防ぐ一方で、ワンポットプロセスにおいて、反応物にフリーラジカル開始剤を単一バッチで添加できるように、重合可能なオレフィン
【0094】
使用する有機ポリシロキサンの割合は広い範囲内で変えることができるが、好ましくは反応物の25〜60重量%である。
【0095】
フリーラジカル開始プロセスには、ペルオキシドまたはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、レドックス開始剤、光重合開始剤などの一般的なフリーラジカル開始剤か、あるいは熱処理または電離放射の使用によるラジカルの生成が用いられうる。好ましい開始剤は、AIBNのほか、ROOR、ROOHおよびRCOOOR(ここで各Rは、それぞれ独立にアルキルまたはアリールである)の式のペルオキシドおよびヒドロペルオキシドであり、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエートなどである。
【0096】
使用するフリーラジカル開始剤の量は、通常、有機ポリシロキサンおよびモノマーの合計重量に基づき0.005%〜2%の範囲にある。一般には1種類の開始剤が使用されるが、2種類以上の開始剤が使用されてもよい。通常、開始剤は、重合プロセスの開始時に単一バッチで添加されるが、開始剤を徐々に添加していくことも可能である。
【0097】
フリーラジカル重合のための温度は、重要ではないが、選択した開始剤の分解に適した温度が得られるように変えなければならない。一般に、この温度は、50〜150℃
の範囲にある。
【0098】
フリーラジカル重合は、好ましくは、50〜150℃の範囲で沸騰する液体の存在下で、不活性雰囲気下で撹拌させて行われる。この液体は鎖移動定数が低く、進行中の化学反応への関与が低くなければならない。好ましくは、水は、ポリシロキサンまたはビニルモノマーの大半を溶解させないものの、この目的に使用することができる。
【0099】
一般に、「相互貫通ポリマー網目構造」タイプの安定なポリマー混合物を生成するには、架橋が必要であると考えられてきた。ここで「安定な」とは、保管時に分離しないポリマー混合物を意味する。このことは、グリフィスによる、同様の有機ポリシロキサンベースの剥離層の調製における「polyfunctional(crosslinking) monomer(多官能価(架橋)モノマー)」(米国特許第5,449,553号明細書、その内容が参照により援用される)の使用を説明する。本例では、予め形成されたポリシロキサンとフリーラジカルによって生成されたポリマーの混合物を安定化するための巨大分子サーファクタントとして機能する、in situ生成されたグラフトコポリマーによって安定化された非架橋ポリマー混合物を生成することができる。反応中、生成されるフリーラジカルは、ポリシロキサン主鎖と、ポリシロキサンへの連鎖移動反応により、フリーラジカルによって重合されたモノマーの側鎖から構成されるグラフトコポリマーを生成しうる。しかし、フリーラジカルプロセスの生成物は、相分離のマイクロメートル長のスケールによって示されるように、相分離されたグラフトコポリマーではなく、明らかにポリマー混合物である。グラフトコポリマーのマイクロ相は、数〜百ナノメートルのスケールで分離するのに対し、ポリマー混合物は、コポリマーサーファクタントによって安定化された場合でも、ミクロンスケール以上の相分離を示す。ここに報告するプロセスの生成物が不透明な(白い)外観を有するということは、マイクロメートル長のスケールでポリマー混合物が生成されているという強力な証拠であり、このため、支配的な生成物としてグラフトコポリマーよりもむしろ、光を散乱させることが可能である。
【0100】
本発明の驚くべき態様は、架橋のない状態での新しいポリマー混合物の長期間の安定性にある。不適合なポリマーの混合物は、保管時に相分離し、ブロックコポリマーを添加しても、通常は、添加したブロックコポリマーの大半がミセルを形成するため、これらの安定化にむしろ無駄となる。しかし、本例では、生成されたポリマー混合物は、適切な溶媒に完全に溶解させることができ、架橋が存在しないことを示しており、2年を越える期間、肉眼で相分離が観察されないまま保管されている。
【0101】
一実施形態では、タイコートは、その化学的構造、物理的特性およびモルフォロジにより、トップコートに機械的強度および靱性を与える。タイコートの例としては、n−ブチルアクリレート(butylacryate)とスチレンのランダムコポリマーによって部分的にグラフトされたヒドロキシ終端ポリ(ジメチルシロキサン)が含まれる。このような構造を下記に示す。
【化4】

【0102】
タイコートの例示的な成分は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)主鎖と、ポリ(スチレン−コ−n−ブチルアクリレート)のグラフトされた鎖を有するグラフトコポリマーである。これらの化学種は、シリコーン官能基とスチレン/アクリルポリマー基間の共有結合を提供し、グラフトコポリマーは、タイコート中の異なる成分を安定化させ、これらが肉眼で見える相分離を起こさないように阻止するように作用する。遊離ヒドロキシル基は、つなぎ剤のほかに、シリコーンゴムのトップコートとエポキシ基体の両方に結合できるようにする。更に、遊離ヒドロキシル基により、エポキシ保護コーティングに添加されるシランカップリング剤との反応が可能となり、エポキシベースコートとタイコート間に強力な付着が得られる。更に、ヒドロキシル基は、反応してリンクし、トップコートの架橋された網目構造を形成することができる。このような結合により、2層間の応力伝達の効率化が得られ、材料が強化される。
【0103】
シリコーンゴムの表面コートのガラス転移温度Tは、約−150℃〜約−60℃の範囲、好ましくは−120℃位であり、柔らかい表面コートが得られる。しかし、本発明のタイコートは、ポリ(スチレン−コ−n−ブチルアクリレート)コポリマーなどのスチレンベースのポリマーを含み、Tが−50℃〜約0℃、好ましくは−20℃位と、格段に高いn−ブチルアクリレートを約75重量%含む。高いガラス転移温度により材料が靱化され、これにより、材料が衝撃およびひっかきの機械的エネルギーを吸収できるようになる。タイコートに結合されたシリコーン官能基は、脆弱なトップコートからタイコートへの機械的エネルギーの移動を最大化し、機械的エネルギーはタイコートで吸収されて消散する。
【0104】
単層汚損剥離系
本発明の別の態様は、ここに記載する汚損剥離組成物の下地の基体(例えば船体、トンネル、ホースまたはパイプの表面、風車の表面、送電線など)への結合を改善するモノプレックス系である。モノプレックス系は、下地の基体(船体または公共取水トンネルなど)への汚損剥離コーティングの結合を改善する。
【0105】
モノプレックス系は、「自己集合」するタイコートおよび表面コートの化学物質の独特な配合物を含む。このモノプレックス系は、組み立てられて硬化されると、極めて有効な汚損剥離特性と共に、表面汚損剥離化学物質の下に集合しているタイコートの化学物質が寄与する耐久性を備える滑らかなポリシロキサンRTV様の表面コートを与える。
【0106】
モノプレックス系の混合層は、自己集合し、単一の適用層内に、必要とするタイコートとトップ表面の官能基を有する。表面に適用されると、トップコート成分は表面に上がり、タイコート成分は下地のエポキシに移動する。モノプレックス系は、硬化中にこの自己集合プロセスが起こった後でも、はっきりと分かれた層を持たない。下部はタイコート材料に富み、上部は表面コート材料に富み、組成が層の下部から層の上部(自己集合)に段階的に変化している。この自己集合する剥離コーティングにより、適用およびメンテナンスが極めて容易となる。
【0107】
一態様では、モノプレックス系は、基体に適用された耐食エポキシ層と、前記耐食エポキシ層に適用され、シリコーン表面コート材料とタイコート材料の混合物を含むモノプレックス層とを含む。別の態様では、耐食エポキシ層は、第一級および第二級アミンなどのアミンを有するシランカップリング剤を更に含む。例えば、SCM501Cとして知られる材料がエポキシ層に添加される(複数のエポキシ層が使用される場合、SCM501Cは最も外側の層または最後に適用される層に添加される)。米国特許第6,391,464号明細書「Epoxy Coatings and Surfaces Coated Therewith(エポキシコーティング、およびこれによりコーティングされた表面)」を参照のこと。本発明者らは、実質的に少ない物質を使用しつつ、他の数種類の物質がこの結合を改善するということをその後発見した。このような新しい物質には、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびシクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
モノプレックス単一層の実施形態では、表面コート樹脂と共に混合物に含まれるタイコート樹脂の量は、5%〜99%、または好ましくは50%〜99%、および最も好ましくは75%〜95%である。逆に、混合された単一層に含まれる表面コート樹脂の量は、1%〜95%、または好ましくは1%〜50%、および最も好ましくは5%〜25%である。特定の実施形態では、タイコート樹脂の量は85%程度であり、表面コートの量は約15%程度である。
【0109】
剥離オイルが、デュプレックス系の表面コートに取り込まれるのと同様に、モノプレックス系にも取り込まれうる。剥離オイルは、SF1147、SF1154、DMSC15およびDBE224を含む。これらは、タイ材料と表面コート材料の混合物の量に基づいて、0.1%〜40%の範囲の量でモノプレックス内に存在しうる。特定の実施形態では、モノプレックスコーティングの噴霧性を補助するためにシリコーン流体が添加される。更に別の態様では、シリコーン流体は、SF69およびSF1147から選択される。
【0110】
別の態様では、過フッ化アクリレートまたはメタクリレート(または他の何らかのフッ化モノマー)を取り込むようにタイコートポリマー混合物が変更される。タイコートにフルオロポリマーが取り込まれることで、タイコートの汚損剥離特性が改善され、タイコートを表面コートとして使用できるようになる。
【0111】
更に、ガラス繊維入りのファイバーグラスに適用されると、タイコートは極めて強固に結合する。カップリング剤も表面処理も不要である。これは、他の表面(例えばポリウレタンまたはアクリル樹脂など)にも応用することができる。このように、一部の態様では、モノプレックス系の混合層は、耐食エポキシ層が存在しない場合でも、直接基体に適用することができる。
【0112】
デュプレックス汚損剥離系
本発明の別の態様は、ここに記載する汚損剥離組成物の下地の基体(例えば船体、トンネル、ホースまたはパイプの表面、風車の表面、送電線など)への結合を改善するデュプレックス系である。デュプレックス系は、下地の基体(船体または公共取水トンネルなど)への汚損剥離コーティングの結合を改善する。
【0113】
SCM501Cとして知られる化合物が第2エポキシ層に添加される(1層のエポキシ層のみが使用される場合、501Cはこの層に添加される)。米国特許第6,391,464号明細書「Epoxy Coatings and Surfaces Coated Therewith(エポキシコーティング、およびこれによりコーティングされた表面)」を参照のこと。本発明者らは、実質的に少ない物質を使用しつつ、他の数種類の物質がこの結合を改善するということをその後発見した。このような新しい物質には、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびシクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
これらの物質は、その二官能価の性質により、以下の独特な機構によって作用する。
1.シラン官能基のため、物質は、エポキシの表面にブルームし、これにより、タイコートとの共有結合のためのシラン官能基が露出される。特定の実施形態では、後からブルーミングがエポキシ内で発生し、多官能価の物質が不要となる。エポキシが架橋される。
2.アミン官能基は、共有結合によりエポキシ層のエポキシド官能基と結合する。
3.これらの物質は、1%以下という低濃度で存在しても、強固な結合が得られることもある。本発明者らは、30%もの濃度でテストし、良好な結果を得たが、1%の低濃度は、大きなコスト上の利点がある。
【0115】
更に、タイコートは、ガラス繊維入りのファイバーグラスまたはビニルエステルに適用されると、極めて強固に結合する。カップリング剤もエポキシ層も表面処理も不要である。これは、他の表面(例えばポリウレタンまたはアクリル樹脂など)にも応用することができる。このように、一部の態様では、デュプレックス系は、耐食エポキシ層が存在しない場合でも、直接基体に適用することができる。ファイバーグラスまたはビニルエステルにタイコートを直接結合させる上述の場合、タイコートの付着性は、標準的なデュプレックス系における、つなぎ剤を含む後の第2のエポキシへのタイコートの付着性と少なくとも同程度である。
【0116】
デュプレックス系は、潅漑、防火、建物内の水輸送や他の類似の用途に使用されるパイプなどの細いパイプの用途;屋根;風力タービン/風車;航空機;配線(高圧電線、電話線、電気コンジットワイヤ);建物および基礎(塩浸食阻害剤);発電所の効率;ドックの表面;油田掘削装置(汚損のため、杭の強度を「過度に高める」必要がある);屋根、風車、航空機の翼、船舶および油掘削装置のレールおよび段差なし表面(除氷または除雪が使用されるあらゆる場所)を含む「防氷」の用途に特に適している。
【0117】
更に、デュプレックス汚損剥離系は、高い電気絶縁性と良好な耐熱性特性を有する。このため、系の用途は、絶縁および難燃の用途にも適しうる。
【0118】
物品およびコーティング
表面コートのシリコーンの粘度は、粘度を10,000〜12,000センチポアズに下げると、噴霧特性の改善に寄与する。この範囲で、本明細書の組成物は、噴霧性とコーティング膜厚の実現とがバランスされた望ましい噴霧特性を備える。約18,000センチポアズの範囲の粘度は、噴霧が困難となり、噴霧性を得るために、多量の溶媒を添加する必要がある。多量の溶媒を使用すると、必要なコーティング膜厚(構造)を得ることが困難となり、余分な溶媒は、揮発性有機溶媒(VOC)の濃度のため、規制の遵守の問題を生み出す。本明細書の組成物は、大規模設備(大型船舶および電力用トンネル)に表面コートを適用し、必要な膜厚を得るための改良された能力を提供する。これにより、デュプレックス系およびモノプレックス系が極めて使い勝手の良いものとなり、一貫した適用プロセスが得られる。
【0119】
リペアキット
特定の実施形態では、タイコートおよび汚損剥離系は、すでに導入されている汚損剥離系の補修または修理に用いられるリペアキットとして提供することができる。このようなキットには、以下が含まれうる。
【0120】
1種類以上の船舶用エポキシ腐食バリア。これには、Ameron 235(PPG Inc.)、Ameron 400(PPG Inc.)、SeaGuard 5000(シャーウィンウィリアムス)、SeaGuard 6000(シャーウィンウィリアムス)が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
1種類以上のつなぎ剤を含む1種類以上の船舶用エポキシ化合物。これには、SCM501Cまたはアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシランまたはN−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
噴霧性および汚損剥離のためのSF69(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)などのシリコーンオイルと、接着改良剤GF−91(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)と、CA−40(ワッカーケミーAG)などの硬化剤とを含むタイコート。
【0123】
汚損剥離特性および噴霧性のためのSF1147(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)などのシリコーン剥離オイルと、DBT、ジブチル錫ジラウレート(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)またはその均等物などの硬化剤とを含む表面コート。
【0124】
第2エポキシ層に使用されるつなぎ剤の適切な組み合わせは、下記の表1に示すものを含むが、これらに限定されない。
【0125】
表1:第2エポキシ層に使用されるつなぎ剤の例
【表1】

【0126】
本発明のリペアキットは、任意の適切な方法で使用することができる。スチール、アルミニウム、他の金属、ファイバーグラス、木、および他の無孔材料または少孔材料などの材料には、以下の方法を使用することができる。
【0127】
最初に、表面をクリーニングし、好ましくはばらばらの材料が露出していない状態に準備する。剥がれた領域については、ナイフなどの適切な工具により、コーティングをひっかき、剥がれた材料を除去して完全なコーティングに戻すことで、剥がれた材料を除去することができる。
【0128】
コーティングの剥がれが基体表面に広がっている場合、船舶用エポキシの第1コートを、クリーンで乾燥した、露出した基体に適用してもよい。コーティングする面積が約100〜200平方フィート未満と狭い場合、ブラシまたはローラーによる手適用が適切である。コーティング層の全ては、手で、あるいはエアレスまたは他の適切な噴霧装置を使用することによって適用でき、適用者の好みに応じて適用することができる。リペアキットの多くの適用では、エポキシのこの第1コートは、6〜9mM(塗膜厚)の厚さに、手または噴霧によって適用する。
【0129】
船舶用エポキシの第1コートが、表面が粘着していても、例えば、指の裏をエポキシに押し付け、指を放し、指にエポキシ塗料が付かないことで評価される「ドライタック」の段階になれば、つなぎ剤を含むエポキシの第2コートを適用する。リペアキットの一部の用途では、粘着性が消えてから、最長で数日、好ましくは24時間以内に、エポキシの第2コートの適用を良好に行うことができる。つなぎ剤を含むこのエポキシの第2層は、手で、あるいはエアレスまたは他の適切な噴霧装置を使用することによって適用でき、適用者の好みに応じて適用することができる。リペアキットの多くの用途では、エポキシのこの第2コートは、6〜9mM(塗膜厚)の厚さに、手または噴霧によって適用する。
【0130】
つなぎ剤を含むエポキシの第2コートを適用し、前述のようにエポキシの第2コートが「ドライタック」の状態になれば、タイコートを適用することができる。別の実施形態では、つなぎ部分が移動して、第2のエポキシの表面にとどまり、タイコートに結合する準備ができるように、24時間以上置いてからタイコートを適用してもよい。タイコートは、10〜16mM(塗膜厚)の厚さに適用する。タイコートは、ブラシまたはローラーにより手で、あるいはグラコのプレミアスプレー器(45:1以上の圧力増加)などの高圧エアレススプレー装置によって適用することができる。
【0131】
タイコートがドライタックになれば、約1〜2時間で、表面コートを適用することができる。別の実施形態では、2層のコーティング層間の結合は、タイコートと表面コート間に存在するシリコーン−シリコーンの相互作用によって行われるため、24時間置いてから表面コートを適用してもよい。表面コートは、16〜20mM(塗膜厚)の厚さに適用する。表面コートは、ブラシまたはローラーにより手で、あるいはグラコのプレミアスプレー器(56:1の圧力増加)などの高圧エアレススプレー装置によって適用することができる。
【0132】
最後に、表面コートが乾燥したら(温度および湿度に応じて1〜数時間)、表面が浸水可能となる。リペアキットの一部の用途では、硬化の初期段階での破損を防止するために、系全体が1〜3日間硬化される。
【0133】
コンクリートおよび他の非常に多孔質の材料などの材料では、船舶用バリアエポキシ化合物の第1コートの代わりに、コンクリートシーラー(例えばAmeron NuKlad 105 Aまたはその同等品)のコートが使用されうる。このコンクリートシーラーは、ブラシまたはローラーを使用して手で適用しても、別法では、標準またはエアレスのスプレー装置を使用して適用してもよい。
【0134】
合成方法
既に開示されているタイコートは、反応器内の高剪断速度を利用して生成される細長いモルフォロジを有して製造される。タイコートの細長いモルフォロジは、相当するレベルまたは同等のレベルの強度および耐久性を提供するタイコートを得るためには必要ないことがわかっている。これによる製造方法は、既に開示されているものよりも単純であり、これにより原価が削減でき、製造の負担を軽減できる。得られるモルフォロジは、細長くなく、安定性が高い。
【0135】
製造の一実施形態では、タイコートの合成中に熱を除去するために水が使用される。反応で熱が発生するため、タイコートの製造プロセスにより発熱が生じる。次第に上昇する熱の制御方法には、溶媒の使用または非混和性流体の使用など、いくつかの方法がある。水の2つの特性はこのプロセスに理想的である。第1の特性は、水の沸点が100℃であることにある。本発明者らは、生成中のポリマーを過熱させることなく完全に反応させるために、反応容器の温度を100℃近傍に維持しようとした。更に、本発明者らは、環境に優しく安価な冷却流体を使用しようとした。本発明者らは、水が、反応および反応容器を制御する上で極めて良好に機能することを発見した。反応完了後、水の大部分がデカントされ、残りの水を除去するために材料が100℃に加熱される。
【0136】
別の実施形態では、ベンゾイルペルオキシドなどのラジカル開始剤が、グラフト反応のために使用された。開始剤を反応液に添加するには、以下の2通りの方法がある。
(i)開始剤を徐々に添加。一般に、この方法は、反応を精密に制御するために使用されるが、反応の進行中に、経時に伴う開始剤の正確な量を測定するために、慎重な監視と装置を必要とする。
(ii)開始剤を一度に添加。この開始剤の添加方法は、反応の制御がさほど厳密ではなく、ポリマーの鎖長と一貫性が適切に制御されない。しかし、大規模製造では簡便な方法である。
【0137】
別の実施形態では、細長いモルフォロジおよび剪断速度が、本発明のタイコートに悪影響を与えなかったことがわかっている。
【0138】
タイコートの表面への結合
本発明のタイコートおよび系は、環境的および生態学的な摩耗および攻撃(すなわち、汚損、生物膜、藻、細菌)に曝されるさまざまな表面および構造に使用することができ、これには、船、船舶、潜水艦、ドック、埠頭、杭、漁網、装置および関連する他の構造を含む発電所および淡水化プラント、セメントパイプ、下水および地下パイプ、法規スプリンクラーシステム、屋根、建物、タービン、ならびに送電線、風車、および航空機の着氷防止があるが、これらに限定されない。このような表面には、船舶および発電所の冷却水吸水口の用途を含め、船舶および工業の環境が含まれる。他の用途として、環境からの水が、工業用、商業用、娯楽用のプロセスにおいて使用されるか、または装置または構造と接触する用途がある。
【0139】
より詳細には、本発明のこのようなタイコートは、艇体、内外機式エンジン、舵およびトリムタブに使用することができる。このような表面としては、ファイバーグラス、ブリスターファイバーグラス、木、木造船体、既存の塗料、スチール、スチールの船体、アルミニウム、および水中金属部品を含む金属部品が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のタイコートは、表面に結合し、この場合、タイコート中のシリコーンポリマー主鎖と炭化水素ポリマーグラフト間の共有結合が、ポリマー混合物の反応の適合性(reactive compatibilization)の鍵を握る。一実施形態では、エポキシ層をタイコートに結合するために、シランカップリング剤が使用される。シランカップリング剤の例として、エポキシコート中のエポキシ基に結合する第一級アミン基を有し、タイコート中のシリコーン末端基(ヒドロキシル)に結合するシリコーン官能基を有するSCM501C(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)が挙げられる。更に、タイコート中のSi−OH基が、表面コート中のシリコーン末端基に結合して、層間の結合に影響する。
【0140】
別の実施形態では、剥離オイルが、表面コートに物理的に混入され、時間の経過に伴ってゆっくりと拡散していく。剥離オイルは、SF1147、SF1154、DMSC15およびDBE224を含む。一実施形態では、表面コートの表面張力は、約20〜25ダイン/cmと極めて低い。別の実施形態では、コートの膜厚は、約8〜約16ミル、好ましくは約10〜約14ミルの範囲にある。
【0141】
特定の実施形態では、タイコートの噴霧性を補助するためにシリコーン流体が添加される。更に別の態様では、シリコーン流体は、SF69およびSF1147から選択される。
【0142】
別の実施形態では、樹脂の粘度が塗料の噴霧のしやすさを決定する。本発明者らは、表面コートのシリコーンの粘度は、粘度を10,000〜12,000センチポアズに下げると、噴霧特性を大幅に改善することを発見した。約18,000センチポアズの範囲の粘度は、噴霧が困難となり、噴霧性を得るために、多量の溶媒を添加する必要があった。多量の溶媒を使用したところ、必要なコーティング膜厚(構造)を得ることが困難となり、余分な溶媒は、揮発性有機溶媒(VOC)の濃度のため、規制の遵守の問題を生み出す。この発見は、大規模設備(大型船舶および電力用トンネル)に表面コートを適用し、必要な膜厚を得るための改良された能力を提供した。
【0143】
自己集合−シリコーン−シリコーン結合
本発明者らは、化学反応または機構の特定の理論に制限されることは望まないが、タイコート中にクロスリンカーが存在しない場合、本発明のコーティングはシリコーン部分の自己集合を行うと考えられる。タイコートの基体として機能するエポキシ層は、SCM501Cなどのカップリング剤を含み、これは、上記のように、アミンとシロキサンの官能基を含む。SCM501Cがエポキシと混合され、基体にコーティングされると、シリコーン表面のエネルギーが低いため、混合物中のシリコーン部分の一部が表面に移動する一方、アミン基が混合物中のエポキシ官能基に結合する傾向がある。このエポキシ層の表面のこれらのシリコーン基は、その後、タイコート配合物に存在する−Si−OH基の一部と化学結合を形成することができる。これは、エポキシ層とタイコート層間に強力な界面結合を与える。タイコート層内のシリコーン官能基の一部がエポキシ層の表面のつなぎ剤と反応するが、本発明者らは、タイコート層の硬化中にも自己集合(シリコーンの表面への移動)する傾向があるという証拠を持っている(XPS実験により、タイコート表面がシリコーンに富むことが明らかとなった)。この場合も、シリコーン表面の表面エネルギーの低さが原動力となっており、タイコートポリマー混合物に架橋が存在しないことで促進される。一般に、本発明によるタイコート中のシリコーン部分と、つなぎ剤を含んで調製されたエポキシコートは、コートの空気面側に自己集合する傾向があり、(a)適用されると、層間の表面エネルギーと界面張力を低下させ、(b)つなぎ剤のシリコーン官能基間とタイコートのシリコーン官能基間に化学結合を形成すると考察される。この自己集合の特徴の結果、タイコートに結合しているエポキシコートは、炭化水素結合とファンデルワールス分子間引力が生じている単なる明白な集合体に限られず、本発明によるこの自己集合の特徴のため、つなぎ剤を含むエポキシコートとタイコート間、およびタイコートと表面コート間にシリコーン−シリコーン結合を独特に含むと考察される。
【0144】
本発明のコーティングまたは複合材、特につなぎ剤を含むエポキシコート、タイコートおよび表面コートは、表面エネルギーが低いコーティングであり、その内部に天然の自由空間を有するシリコーンポリマーマトリックスを含む。このマトリックスの内部には、シリコーンオイルが存在しており、表面コートの空気表面側におけるわずかな勾配のため、そこから極めてゆっくりと拡散するという点に留意すべきである。
【0145】
更に、本発明によって、本発明のコーティングまたは複合材(例えば表面コート中の自由空間)には、有効量の防汚剤、抗藻剤、抗菌剤(殺菌剤および静菌剤)、生物膜形成阻止剤、殺生物剤、生物静力学的および他の同様の薬剤剤(防汚剤)が注入されてもよいことが考察される。これらの薬剤は、米国特許第7,087,106号明細書「Materials and Methods for Inhibiting Fouling of Surfaces Exposed to Aquatic Environments(水中環境に露出される表面の汚損を阻害するための材料および方法)」、米国特許第5,314,932号明細書「Antifouling Coating and Method for Using Same(防汚コーティングおよびその使用方法)」、米国特許第5,259,701号明細書「Antifouling Coating Composition Comprising Furan Compounds, Method for Protecting Aquatic Structures, and Articles Protected against Fouling Organisms(フラン化合物を含む防汚コーティング組成物、水中構造物を保護するための方法、および汚損生物から保護された物品)」、米国特許第5,252,630号明細書「Antifouling Coating and Method for Using Same(防汚コーティングおよびその使用方法)」、米国特許第5,248,221号明細書「Antifouling Coating Composition Comprising Lactone
Compounds, Method for Protecting Aquatic Structures, and Articles Protected Against Fouling Organisms(ラクトン化合物を含む防汚コーティング組成物、水中構造物を保護するための方法、および汚損生物から保護された物品)」、米国特許出願公開第2006/0110456号明細書「Method for Biocidal and/or Biostatic Treatment and Compositions therefore(殺生物および/または生物静力的処置、およびそのための方法)」、米国特許出願公開第2005/0159454号明細書「Materials and Methods for Inhibiting Fouling of Surfaces Exposed to Aquatic Environments(水中環境に露出される表面の汚損を阻害するための材料および方法)」、米国特許出願公開第2004/0235901号明細書「Materials and Methods for Inhibiting Fouling of Surfaces Exposed to Aquatic Environments(水中環境に露出される表面の汚損を阻害するための材料および方法)」、Life on the Ocean, Life on the Ocean Wave、Poseidon
Ocean Sciences Inc.のCEOのDr. Jonathan R. Matiasに報告されているPoseidon Ocean Sciences Inc.のNB17およびNB16化合物を含む、Poseidonの天然のバイオ生成物(NB)(http://www.poseidonsciences.com/oceanwavejppcj.html)、Rittschof, D. 1999, Fouling and natural product antifoulants. In: Recent Advances in Marine Biotechnology, Vol. II. M. Fingerman, R. Nagabhushanam、およびM.−F. Thompson (eds), pp. xx. New Delhi: Oxford and IBH Publishing, and Rittschof, D. 1999, Natural product antifoulants: One perspective on the challenges related to coatings development. Biofouling(特別号)に開示されている。
【0146】
適用時間
本発明の組成物は、適用が優れて容易であるという特性を備える。この組成物は従来のエポキシ塗料と同程度に容易に噴霧されるため、この組成物はスプレー法によって適用することができる。このため、本発明の組成物は、噴霧プロセス中に容易に噴霧され、この結果、均一なスプレー適用と、必要な構造膜厚を実現する改良された能力が得られる。つなぎ剤によって、タイコートを後から適用するための24時間以上の長い時間枠が得られ、このため適用の選択肢が広がる。更に別の利点として、エポキシの「活性化」コートまたは他のエポキシミストコートを噴霧することによる再活性化が不要である点が挙げられる。
【0147】
硬化時間
本発明の組成物は、例えば、指の裏をエポキシに押し付け、指を放し、指にエポキシ塗料が付かないことで評価される「ドライタック」段階となったら各層に積層することができる。別の実施形態として、各層を、第2層の適用の前に、最大で数日間、硬化させてもよい。大抵の場合、組成物層(composion layers)を硬化させるのは、適用の24時間以内である。
【0148】
コーティング膜厚
本発明の組成物は、さまざまな膜厚に適用することができる。各コートは、手で、あるいはエアレスまたは他の適切な噴霧装置を使用することによって適用でき、適用者の好みに応じて適用することができる。一般に、各コートは、約2〜約30ミル、好ましくは約4〜約25ミル、より好ましくは約6〜約20ミルの塗膜厚で適用される。更に、エポキシ層は、一般に約2〜約12ミル、好ましくは約4〜約10ミル、より好ましくは約6〜約9ミルの塗膜厚で適用される。汚損剥離タイコートおよび表面コート層は、一般に約10〜約30ミル、好ましくは約13〜約25ミル、より好ましくは約16〜約20ミルの塗膜厚で適用される。最も好ましくは、タイコートは約12〜約14ミルの塗膜厚で、表面コートは約16〜約20ミルの塗膜厚で適用される。
【0149】
2層のエポキシ層を含む本発明の汚損剥離系の塗膜厚の合計は、一般に約8〜約90ミル、好ましくは約9〜約75ミル、より好ましくは約20〜約60ミルである。
【0150】
他の利点
本発明のタイコート系およびコーティングは、汚損剥離コーティングに対して、耐久性の向上;環境への優しさ(重金属または殺生剤を含まない);環境安全性(VOC準拠、廃棄物埋立地への廃棄、FIFRA下でのEPA報告がない点);適用が容易である点(シリコーンスプレーを使用する従来のエアレススプレーラインを使用できる);保守コストの削減(労働集約的な削り、クリーニング工程を効率化できる);優れた剥離性(通常圧力の噴射水または7フィート/秒もの低い定水流により自己洗浄によって除去できる);剥離効率の高さ(12ノットまたは8ノットの低速);省燃費(約6%〜約10%);温度使用によるが、3〜5年以上の長寿命(現在のコーティングが18ヵ月で効力を失うため、乾ドック時間を半分に短縮できる)という利点を提供する。
【実施例】
【0151】
本発明をより詳細に理解できるように、以下の実施例を示す。これらの実施例は例示を目的としており、本発明をいかなる形であれ限定するものと解釈されてはならないことを理解すべきである。このため、本発明を、以下の限定しない実施例によって更に説明する。
【0152】
分析方法
本発明のさまざまな実施形態の構造と、さまざまな基体への汚損物質および他の付着性汚染物質に対するその効果を決定するために、以下の方法を使用できる。
【0153】
サイズ排除クロマトグラフィまたはゲル透過クロマトグラフィ
タイコートの分子量および多分散性は、移動相(mobile hase)としてテトラヒドロフランを使用し、30℃におけるテトラヒドロフラン中のSEC/GPCで求めた。較正は、線状ポリスチレンを標準物質として使用することにより行った。
【0154】
粘度
タイコート樹脂の粘度は、Brookfield RTV粘度計および大型スピンドルを使用して測定した。
【0155】
物理的外見
本発明のポリマーは、色および透過性などの物理的外見を用いて特定することができる。当業者は、サンプルと標準物質間の物理的外見の差を容易に認め、識別のために この情報を使用することができるであろう。
【0156】
元素分析
元素分析は、米国テネシー州ノックスヴィル所在のガルブレイスラボラトリーズ(Galbraith Laboratories)によって実施された。
【0157】
剥離試験分析
剥離試験は、系内のさまざまな層間の付着の強度(エネルギー)の計測値を与える。この試験は、第2エポキシ層(つなぎ剤を含む)とタイコート間の付着の強度を測定するために、ここに記載される。ナイロンメッシュ(乾式壁に使用されるタイプ)の幅5インチのストリップを、粘着しているエポキシ層に置き、タイコートを塗布し、その後トップコートを適用して、第2エポキシ層とタイコート間の界面にこのメッシュを埋め込んだ。8インチの長さのメッシュストリップを界面からタイルの端に飛び出させて、引っ張り試験の把持用とした。
【0158】
タイルを、インストロン引張試験機のベースに固締して、ダクトテープとクランプで補強したメッシュのストリップを、インストロンによって引き上げる。インストロンは、及ぼされた力と引っ張られた距離を同時に測定する。力に対する移動曲線の面積の積分を、メッシュストリップの面積で割った値から、単位面積あたりの界面エネルギーが得られ、これがこの試験によって求められる値である。
【0159】
以下の表は、行った全試験についてのJ/m単位のエネルギー/面積(E/A)の結果を示す。サンプルの各組について、平均E/A値と標準偏差を計算した。
【0160】
表2:引っ張り試験結果の表
【表2】

【0161】
SCM501Cをそれぞれ30%、15%含むサンプル1および2は、それぞれ極めて良好であり、統計的差異はみられなかった。5%のSCM501Cを含むサンプル3は、界面エネルギーが低い、すなわち統計学的に有意な差異によって、さほど良好ではなかった。
【0162】
代替のつなぎ添加剤のうち、サンプル6(1%アミノプロピルトリエトキシシラン)およびサンプル9(1%アミノプロピルトリメトキシシラン)は、結果が最もよく、実験誤差は、サンプル1および2(501C30%および15%)と同じであった。サンプル12および15の代替の物質も同様に良好ではなかった。サンプル18の代替のつなぎ剤は、エネルギー/面積の結果が最も高いが、試験に成功したのが3サンプルしかなく、このデータの組の誤差が極めて高い。このため、サンプル18に対する結論を導き出すことが困難である。
【0163】
汚損物質−外観検査
試験面積を、本発明の汚損剥離系でコーティングして、外観検査を使用して未処理の試験面積と比較することができる。試験できる面積には、コンクリートパイプまたは移動する海水に露出された他の材料、淀んだ海水に置かれたファイバーグラスのプレート、および水に曝され、水が通る船体上の他の基体材料が含まれるが、これらに限定されない。試験期間と水の速度を、当業者が容易に変更可能なようにさまざまに変更した後に、外観検査を行うことができる。
【0164】
以下の実施例は、例示のみを目的として示すものであり、本発明の趣旨または範囲から逸脱しない、本発明または本発明の数多くの明白な変更の限定事項であるとみなすべきではない。
【0165】
表面粗さ分析
原子間力顕微鏡(AFM)は、極めて微細なスタイラスの先端をサンプルの表面を通過させ、そのトポグラフィを測定する技術である。この技術により、表面粗さのトポグラフィ画像を作成することができ、表面粗さの平均測定値を提供することができる。その2つの数値は、Z範囲およびRMSと呼ばれる。Z範囲は、スキャンした領域における表面の最高点から最低点までの垂直距離である。RMSは、画像全体にわたる二乗平均の平均粗さである。AFM試験の結果、デュプレックス汚損剥離系は、約0.5〜約70ミクロンの範囲、より好ましくは約1.2ミクロンのZ範囲と、約40nm〜約1ミクロンの範囲、より好ましくは約80nmのRMS粗さ範囲を有することが示された。
【実施例1】
【0166】
ポリシロキサンベースのin situポリマー混合物の合成
混合反応は、蒸留器(condenser)およびメカニカルスタラーを備えた3首丸底フラスコを使用してドラフト内で実施し、窒素で連続的にパージする。例えば、25℃で8,000センチストークの粘度を有する32mLのヒドロキシ終端ポリジメチルシロキサンと、0.386gのベンゾイルペルオキシドを反応容器に加え、混合物を20分間激しく撹拌する。12.3mLのスチレンと35.4mLのnブチルアクリレートを反応容器に加え、混合物を20分間絶えず撹拌する。20mLの脱イオン水を加え、系を20分撹拌する。その後、反応容器を、温度100℃の水浴に浸漬する。10分以内に色が薄い白に変わり、色および粘性が反応全体で絶えず濃くなっていく。2〜3時間後に反応が完了する。最後の15分間は、水の大部分を除去するために蒸留器を取り外す。白い粘性のポリマーを回収し、真空オーブンで更に乾燥する。
【実施例2】
【0167】
ポリシロキサンベースのin situポリマー混合物の合成
上記の反応を実施するが、25℃で20,000センチストークの粘度を有する32mLのヒドロキシ終端ポリシロキサンを、18.5mLのスチレン、52.6mLのn−ブチルアクリレート、0.836gのベンゾイルペルオキシド、および20mLの脱イオン水と共に使用する。実施例1および2はさまざまな溶媒中で実施することができ、これには、トルエン、エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、ジクロロメタン、およびヘキサンが含まれるが、これらに限定されない。ポリシロキサンの粘度は、25℃で約10〜約100センチストーク、25℃で約2000〜約8000センチストーク、および25℃で約10,000〜約50,000センチストークの範囲をとりうる。特定の実施形態では、ポリシロキサンの粘度は、3500センチストークである。更に、開始剤は、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、AIBN、アゾ−ビス−アルキルニトリル、およびジ−tert−ブチルペルオキシドを含むが、これらに限定されない。
【実施例3】
【0168】
例示的なタイコートおよびトップコート配合物
本明細書に記載するタイコートおよびトップコートの例示的な配合物を、下記の表3に示すが、これらに限定されない。各コートにおいて、材料は、混合前は2液(AおよびBに分けられている。
【0169】
表3:タイコートおよびトップコート配合物(メートル単位系のAおよびBの配合物)
【表3】

【実施例4】
【0170】
水輸送トンネルへのデュプレックスタイコートの適用
この実施例は、海から発電所に冷却水を輸送するために使用されるトンネル内の試験パッチである、コンクリート表面への本発明のデュプレックス汚損剥離系の適用について記載する。
【0171】
コンクリートを、Americoat Amerlock2液型エポキシコンクリートシーラーによってシールする。シーラーを、1/4インチのナップローラーで圧延する。シーラーの適用条件は、T=60℃、相対湿度60%である。コンクリート表面をシールしてから18時間後、白色のコーティングである、2液型エポキシAmerlock 400船舶用塗料を、1/4インチナップローラーによって表面に適用する。この耐食エポキシ船舶用塗料を24時間硬化させる。
【0172】
靱化用タイ層樹脂を次のように調製する。実施例1に従って調製した2リットルの反応安定化有機ポリシロキサン混合物と、1.5リットルのヘキサンを、有機ポリシロキサンの粘性がかなり低下するまで混合する。10分後、500mlのワッカーのCA40(硬化剤)を添加し、材料を混合する。タイコートを、1/4インチのナップローラーで表面に適用する。タイ層の適用が完了してから約2時間後、タイ層の上に剥離層を適用する。4リットルのモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズのRTV−11シリコーン剥離層材料を、スズベースの触媒と混合し、直ちに適用する。
【0173】
適用物を2日間硬化させてから、トンネルを海水に浸水させた。トンネルを定期的に排液して、試験パッチを検査する。試験パッチにより、水生汚損生物が付着していないことがわかり、それ以外の残りのトンネル表面には寄生していた。コーティングは、2年、3年の時点で、各検査で優れた物理的状態にある。
【実施例5】
【0174】
水輸送トンネルへのモノプレックスタイコートの適用
この実施例は、海から発電所に冷却水を輸送するために使用されるトンネル内の試験パッチである、コンクリート表面への本発明のモノプレックス汚損剥離系の適用について記載する。
【0175】
コンクリートは、Americoat Amerlock2液型エポキシコンクリートシーラーによって封止される。シーラーを、1/4インチのナップローラーで圧延する。シーラーの適用条件は、T=60℃、相対湿度60%である。コンクリート表面をシールしてから18時間後、白色のコーティングである、2液型エポキシAmerlock 400船舶用塗料を、1/4インチナップローラーによって表面に適用する。この耐食エポキシ船舶用塗料を24時間硬化させる。
【0176】
複合靱化用タイ層/表面コート樹脂を次のように調製する。実施例1に従って調製した4リットルの反応安定化有機ポリシロキサン混合物と、1.5リットルのヘキサンを、有機ポリシロキサンの粘性がかなり低下するまで混合する。1リットルのモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズのRTV−11シリコーン剥離層材料を更に添加して、10分間撹拌する。10分後、500mlのワッカーのCA40(硬化剤)を添加し、材料を混合する。CA40は、モノプレックス系の2成分の両方の硬化に使用してもよい。あるいは、DBT(表面コートの硬化剤)も、モノプレックス系の2成分の両方を硬化する作用がある。特定の実施形態では、系は、DBTで硬化させると、若干改善される。加圧スプレーディスペンサによってタイ層/表面コート樹脂を表面に適用する。
【0177】
適用物を2日間硬化させてから、トンネルを海水に浸水させた。トンネルを定期的に排液して、試験パッチを検査する。
【実施例6】
【0178】
本発明のタイコートで表面をコーティングする方法
表面にコーティングする前に、以下の準備を行なう必要がある。試験パッチまたは完全なコーティング系;現場の訪問、塗布対象の物品の状態の検査、基体が木、スチール、ファイバーグラスであるか、表面の準備が完了しているか、何らかの修理が必要であるかの確認;隔離または換気の要否の調査;圧力洗浄、研摩材ブラストまたはソーダブラストの要否の調査;平方フィート数の調査および必要な塗料の量の見積もり;特殊なアクセス要件の要否の決定;必要な装置および材料の記録;必要な試験装置のリストアップおよび動作チェック、試験パネルのコーティング;エポキシ、タイコート、表面コートの塗布ポンプ(paint pumps);十分なスプレーライン、スプレーガン、チップおよびスペア部品の決定;乾燥および塗り直しの時間を確保するのに十分なスケジュールのチェック;気象予報のチェック;塗料が現場にあるかどうかのチェック、量およびロット番号のチェック;適用作業者との適用スケジュールの話し合い;ならびにエポキシ、タイおよび表面コートに使用される専用のスプレーポンプおよびラインの分離。
【0179】
1日目に、環境条件(温度、露点、湿度、表面温度および気象予報をチェックする。適用フォームにデータを記録する。起こりうるオーバースプレー問題のため隣接する領域をチェックする。コーティングしない表面積をテープで覆う。装置を準備する。送気管を設置し、ペイントラインをレイアウトする。適用するコートのための塗料およびシンナーを準備する(stage)。修理が完了しているかどうかを決定する(コンクリートはシーラーが必要なことがある)。表面がクリーンで、コーティングを施せる準備が整っているかどうかを決定する(溶媒で拭くか、引き飛ばす)。必ず、ポンプ、スプレーライン、およびガンを掃除するために適切な溶媒があるようにする。エポキシコーティング材料を製造業者が推奨するように混合し、必要に応じて粘度をチェックする。必要に応じて(鋭い縁、コーナ、狭い領域)、コートにストライプを付ける(stripe)。コーティングを適用して、wft(塗膜厚)をチェックして、均一なパターンおよびクロスを適用する。流れ、垂れをブラシまたはロールで払う。塗り落ちをタッチアップする。
【0180】
直ちにスプレー装置を掃除する。推奨された乾燥/再コート時間でコーティングをチェックする。乾燥膜厚測定を行ない、記録する。(5〜7ミル)コーティングが多少柔らかい場合、プラスチックのシムを使用する(必ず測定値からシム厚を引く)。コーティングが指触乾燥している場合、環境条件が許せば、次のコートを開始する。コート2(エポキシ−つなぎ剤)では、適切な量のつなぎ剤をエポキシと混合する。成分を完全に混合し、適用の前に10〜15分置く(allow 10−15 minutes sweat)。コーティングする表面がクリーンかどうかを(視覚)チェックする。必要に応じてクリーニングする。前のコートの上にコーティングを適用する。乾燥/再コート時間は、つなぎ剤の添加により長くなることがある。塗膜厚の測定値をチェックする。作業の進行に伴い、流れ、垂れをブラシで払い、塗り落ちをタッチアップする。装置をクリーニングする。エポキシの第1コートと第2コートは、一般に、同日に適用することができる。タイコートを翌日適用できない場合、つなぎ剤を含む追加のエポキシを適用する。
【0181】
2日目に、環境条件をチェックおよび記録し、コーティングの硬化をチェックして、表面がクリーンかどうかを(視覚)チェックする。装置を準備する。コート剤を準備する。タイコートの場合、タイコート成分を混合し、粘度カップおよびストップウォッチでコーティングの粘度をチェック(一般に5番のザーンカップで20〜25秒)する。このコートでは希薄は不要である。進行に伴い、スプレーによってコートの鋭い縁、コーナおよび狭い領域にストライプを付ける。必要なパス数を求めるために、塗膜厚(10〜14dft)をチェックする。必要に応じて塗り落ちをチェックしてタッチアップする。流れ、垂れが発生した場合には、そっとブラシで除去する。直ちにスプレーポンプ、ラインおよびスプレーガンをクリーニングする。コーティングをスプレーライン内に放置しないこと(set
up)。高温ではコーティングが速く固化する。
【0182】
1〜2時間乾燥時間を置いてから表面コートを適用する。表面コート適用の前にはコーティングは指触乾燥していなければならない。環境条件をチェックして記録する。表面がクリーンかどうかを(視覚)チェックする。タイコートの乾燥膜厚をチェックし、記録する(プラスチックシム法を使用)。装置を準備する。コート剤を準備する。表面コートでは、A部の表面コートを事前に混合しておく。5番のザーンカップで40〜45秒を得るために、適宜シンナーを添加する。約15%である。適切な粘度が得られたら、B部(硬化剤)を添加する。進行に伴い、スプレーによってコートの鋭い縁、コーナおよび狭い領域にストライプを付ける。垂れ、流れが発生した場合には、そっとブラシで除去する。周囲温度が高いと、硬化時間が早くなる。必要なパス数を求めるために、塗膜厚(12〜14dft)をチェックする。直ちにスプレーポンプ、ラインおよびスプレーガンをクリーニングする。コーティングをスプレーライン内に放置しないこと(set up)。全ての塗料の廃棄分を、適切に廃棄するために収集する。
【0183】
コーティングを最低でも1日硬化させてからマスキング材を取り除く。除去する前にテープの線に沿ってそっと切り込みを入れる。基体を切らないこと。適切な乾燥時間(2日)を置いてから、ジャッキスタンドを移動する。完全な4コーティング系を使用してジャッキスタンド位置をタッチアップする。必要に応じて基体を溶媒で拭く。スプレーによる表面コートが好ましい。コーティングする際に、スタンドの周りにコーティングを段階的にかけることが好ましい。エポキシ、エポキシ+つなぎ剤およびタイコートは、既存のコーティングまで適用する必要があり、重ならないようにする。表面コートは、既存の表面コートにわずかに重なるようにする。
【実施例7】
【0184】
適用:デュプレックス汚損剥離系の船体全体への適用、スプレー適用
船:ヒンクリーのピクニックボート−長さ:36フィート:ビーム長:12フィート
デュプレックス汚損剥離系(DFR)を、ヒンクリーの36フィートピクニックボートに適用する。このプレジャーヨットは、ウォータージェットエンジンによって駆動される。船体は、カーボンファイバ/ケブラー/エポキシ/eガラス複合材から構成される。この船は、既存の銅の剥離防汚を施した底部の性能を測定するために、海上試験を行った後に、銅の剥離塗料をはがし、デュプレックス汚損剥離系を導入する。DFRSによるコーティング前の最大達成可能速度は、2ヵ月経った銅の底部では約27.4ノットである。
【0185】
DFRSを、船舶用塗装の当業者に公知の標準的なスプレー適用方法を使用して適用する。適用は次の通りである。
【0186】
船を牽引し、屋外の保護された造船所空間に配置し、キールに支持させ、3基のジャッキスタンド各ポートおよび右舷(each port and starboard)によって直立に保持する。DFRSの全層を、本明細書に記載のようにクロスハッチングされた適用スプレー法を使用してエアレススプレー装置によって適用する。
【0187】
銅の剥離船底ペイントを、重炭酸ナトリウムのグリットブラストを使用して除去する。喫水線までの底部を、複合材の表面が露出するまで落とす。
【0188】
エポキシの第1層を、DFRSの導入の1日目に適用する。天候は晴れて乾燥しており、気温は70°F後半〜80°F前半の範囲にあり、湿度は約50%である。エポキシの第1層は、シャーウィンウィリアムスのSea Guard 5000を含む。この層は、60psiで作動させた36:1エアレススプレー(グラコ)によって適用する。エポキシの第1コートを、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約4時間置く。
【0189】
エポキシの第2層は、シャーウィンウィリアムスのSea Guard 5000を含み、約15体積%のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSCM501Cを含む。この層は、同じ圧力で作動させた同じ36:1エアレススプレー(グラコ)によって適用する。このエポキシの層を、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、一晩放置してから、翌朝、DFRSタイコートを適用する。注:エポキシのこの第2層を、タイコートの適用前に約4時間、ドライタック状態にさせてもよい。この適用では、適用作業者の便宜のためにタイコートを翌日適用する。
【0190】
タイコートは、DFRSの導入の2日目に適用する。天候は晴れて乾燥しており、気温は70°F後半〜80°F前半の範囲にあり、湿度は約50%である。この層は、約60psiで作動させた54:1エアレススプレー(グラコ)によって適用する。タイコートを、約15分適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約1.5時間置く。
【0191】
DFRSの導入の2日目に、タイコートがドライタック状態となったら、表面コートを適用する。この層は、約75psiで作動させた54:1エアレススプレー(グラコ)によって適用する。表面コートは、約15分適用する。
【0192】
表面コートの適用の2日後、ジャッキスタンドを移動し、。ジャッキスタンドの元の位置によって覆われていた未処理の領域をDFRSリペア系を使用してコーティングする。リペア系は、以下のように適用した。
【0193】
a.Sea Guard 5000船舶用エポキシを、ブラシ適用を使用して手で船体のクリーンな部分に適用する。エポキシのこの第1コートを、約9ミルの塗膜厚に適用し、ドライタックまで乾燥させる。乾燥時間は、約3時間である。
b.15%のSCM501Cを含むSea Guard 5000を、エポキシの第1層(上記のセクション(a)に記載)に手で適用する。エポキシのこの第2コートを、約9ミルの塗膜厚に適用し、ドライタックまで乾燥させる。乾燥時間は、約3時間である。
c.DFRSタイコートを、ブラシ適用を使用してエポキシの第2コートに手で適用する。このタイコートを、約16ミルの塗膜厚に適用し、ドライタックまで乾燥させる。乾燥時間は、約1.5時間である。
d.DFRS表面コートを、ブラシ適用を使用してタイコートの表面に手で適用する。この表面コートを、約18ミルの塗膜厚に適用し、乾燥させる。
【0194】
DFRSが導入されているヒンクリーのピクニックボートを、修理キットの適用の2日後に進水させる。
【0195】
デュプレックス汚損剥離系が導入されているヒンクリーのピクニックボートに対し、船の進水後に海上試験を行う。2007年6月および7月の間に、30日間、チェサピーク湾で船に硬い汚損が付着しなかった。この時期は、銅の剥離コーティングが施された船で、同じ期間に硬い汚損が認められる生物付着の極めて多い時期である。更に、ヒンクリーのピクニックボートは、DFRSの適用後、繰り返し30.5ノットの速度を達成する。これは、新しい銅の剥離コーティングと比較して船体速度の11.3%の向上である。
【実施例8】
【0196】
適用:試験パッチ、手適用によるミストコートを含むデュプレックス汚損剥離系
船:San Juan Jax Bridge、試験:約150平方フィートのパッチ
約8ノットで進む700フィートのバージ船の喫水線で、デュプレックス汚損剥離系(DFRS)を、左舷船首部に適用する。これは、米国フロリダ州ジャクソンビルとプエルトリコのサンフアン間の通商路を往復運航している船である。船体はスチールである。この適用は、12ノット以下で進む船に対するDFRSの性能を評価するために選択される。
【0197】
DFRSを、船舶用塗装の当業者に公知の標準的な手による適用法を使用して適用する。適用は次の通りである。
【0198】
船を乾ドックに配置してから、喫水線からキールまで、DFRS試験パッチを除いた船体全体への標準的な銅剥離防汚コーティングの適用を含む大がかりな修理を行う。DFRSの全層を、ローラー塗布法で適用する。
【0199】
船体は、グリットブラストによって標準白色仕上げに準備される。DFRS系全体を、1日で適用する。
【0200】
エポキシの第1層を午後1時頃に適用する。天候は晴れて乾燥しており、気温は90°F中頃の範囲にあり、湿度は約85〜90%である。エポキシの第1層は、Ameron 235(Ameron Corporation)を含む。このエポキシの第1コートを、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約2時間置く。
【0201】
エポキシの第2層は、Ameron 235(Ameron Corporation)を含む。このエポキシの層を、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約2時間置く。
【0202】
第2エポキシコートがドライタック状態となったら、ミストコートを適用する。ミストコートを、約15分適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約30分置く。
【0203】
ミストコートがドライタック状態となったら、タイコートを適用する。タイコートを、約15分適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約1時間置く。
【0204】
タイコートがドライタック状態となったら、表面コートを適用する。表面コートは、約15分適用する。
【0205】
船体への他の修理が完了したら、船を進水させる(DFRS試験パッチの導入後、1週間を超える)。
【0206】
デュプレックス汚損剥離系試験パッチが導入されているSan Juan Jax Bridgeを、適用の翌年、数回検査する。進水直後、船は、メキシコのベラクルズで更に修理を受けている間、ほぼ1ヵ月埠頭側に置かれる。この期間に、予想通り、硬い汚損がDFRS試験パッチに付着する。また、この期間に、船は、埠頭側で暴風に遭遇し、DFRS試験パッチの領域を含む右舷側にひどいすり傷を受ける。フロリダ州ジャクソンビルでの一ヵ月後の検査では、DFRS試験パッチは軽微なひっかき傷の破損を受けただけで済んだが、DFRS試験パッチの両側の銅の剥離コーティングは、剥がれてスチール船体が剥き出しになっていることが認められる。このことは、衝撃損傷に対するDFRSの極めて高い弾力性を示している。
【0207】
更に、フロリダ州ジャクソンビルからプエルトリコのサンフアンとその復路の往復後、DFRS試験パッチの硬い汚損は、船の通行により剥離されたのみである。これは、約8ノットの範囲の船速でのDFRSの有効な汚損剥離を示している。DFRS試験パッチは、1年を越える使用の中間の期間に、損傷を受けておらず、硬い汚損のない状態のままである。
【実施例9】
【0208】
適用:デュプレックス汚損剥離系、試験パッチ(約200平方フィート)、手によるローラー適用
船:El Moro−長さ:700フィート、ビーム:60フィート
デュプレックス汚損剥離系(DFRS)を、海洋貨物運搬船に適用する。船体はスチールを含む。
【0209】
DFRSの全層を、船舶用塗装の当業者に公知の標準的なローラー適用法を使用して適用する。適用は次の通りである。
【0210】
船を、屋外の乾ドックに配置する。
【0211】
銅の剥離船底ペイントを、グリットブラストを使用して除去する。喫水線までの底部を、スチールの表面が露出するまで落とす。
【0212】
エポキシの第1層を、DFRSの導入の1日目に適用する。天候は曇りで乾燥しており、気温は80〜90°Fの範囲にあり、湿度は約70〜80%である。エポキシの第1層は、Ameron 235(Ameron Corporation、現在のPPG, Inc)を含む。エポキシの第1コートを、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約4時間置く。
【0213】
エポキシの第2層(第1のエポキシがドライタック状態になったら1日目に適用)は、Ameron 235(Ameron Corporation)を含み、約15体積%のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSCM501Cを含む。この層を、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、一晩放置してから、翌朝、DFRSタイコートを適用する。注:エポキシのこの第2層を、タイコートの適用前に約4時間、ドライタック状態にさせてもよい。この適用では、適用作業者の便宜のためにタイコートを翌日適用する。
【0214】
タイコートは、DFRSの導入の2日目に適用する。天候は晴れて乾燥しており、気温は80°F90°F前半の範囲にあり、湿度は約80%である。タイコートを、約15分適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約1.5時間置く。
【0215】
DFRSの導入の2日目に、タイコートがドライタック状態となったら、表面コートを適用する。表面コートは、約15分適用する。この船を、適用の数日後に浸水する。
【0216】
DFRSを適用したら、船を進水させる前に3日間硬化させることが推奨される。
【0217】
出願日時点で、El Moroは、検査を行う港に到達していない。この時点での性能に関するコメントはない。
【実施例10】
【0218】
電力用冷却水取水トンネル:オランダのエームスハーフェン(Eemshaven)
適用:試験パッチ、手適用によるミストコートを含むデュプレックス汚損剥離系
【0219】
デュプレックス汚損剥離系(DFRS)を、オランダのエームスハーフェンのElectrabel Power Generating Stationにおいて、第6トンネルの一部に適用する。この適用は、北海からの水(冷水環境)を使用し、アジアのカキおよび北海からの他の硬い汚損種からの汚損に曝されるコンクリートの冷却液ユニットトンネルに対するDFRSの性能を評価するために選択される。更に、このトンネルに対して、汚損時期に月単位で温水(43℃)の防汚処理が行われる。
【0220】
DFRSは、船舶用塗装の当業者に公知の標準的な手による適用法を使用して適用される。適用は次の通りである。
【0221】
トンネルを脱水して、既存の汚損生物を高圧水洗浄により除去する。DFRSの全層を、ローラー塗布法で適用する。
【0222】
トンネル壁は、ばらばらの破片を除去するために、ワイヤブラシ処理を行う。
【0223】
第1層である、エポキシコンクリートシーラーのNuKlad 105(Ameron Corporation)を適用する。適用時のトンネル内の環境条件は、気温約60°F、湿度約50%である。トンネル壁は乾燥しているが、多少の残存水がトンネルの床に存在している。このエポキシの第1コートを、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、一晩乾燥させる。
【0224】
DFRSの適用の2日目に、Ameron 235(Ameron Corporation)を含むエポキシの層を適用する。このエポキシ層を、約15分(8〜9ミルの塗膜厚)適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約3時間置く。
【0225】
第2エポキシコートがドライタック状態となったら、ミストコートを適用する。ミストコートを、約15分適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約30分置く。
【0226】
ミストコートがドライタック状態となったら、タイコートを適用する。タイコートを、約15分適用し、ドライタックまで乾燥させ、再適用状態になるまでに約1時間置く。
【0227】
タイコートがドライタック状態になったら、表面コートを適用する。表面コートは、約15分適用した。
【0228】
トンネルを、DFRSの導入後、約1週間で使用開始する。
【0229】
DFRS試験パッチを、導入後3年間で2回検査する。DFRSは、この3年の間、損傷を受けず、硬い汚損のない状態のままであり、みつけられる摩耗がなく、アジアのカキおよび他の北海の硬い汚損生物による汚損から極めて堅固に保護している。更に、温水による日常的な処理が、コーティングの耐用寿命または汚損剥離特性を低下させることはない。トンネルのコーティングを施さなかった部分は、直径が最大で約6インチ以上のアジアのカキを含む広い範囲の汚損が全体に認められる。
【実施例11】
【0230】
シマウマイガイの汚損剥離調査用のタイル
20×20cm、厚さ1/4インチのABSプラスチックタイル70枚を、汚損剥離試験のためのデュプレックスおよびモノプレックスの防汚配合物でコーティングする。
1.デュプレックス系/スズ硬化/剥離オイル含有(標準的な系)
2.デュプレックス系/スズ硬化/剥離オイル含有/顔料含有
3.デュプレックス系/スズ硬化/オイルなし
4.デュプレックス系/スズ硬化/オイルなし/顔料含有
5.デュプレックス系/スズなし/剥離オイル含有
6.デュプレックス系/スズなし/オイルなし
7.モノプレックス(85%タイ/15%トップ)/スズ硬化/剥離オイル含有
8.モノプレックス(85%タイ/15%トップ)/スズ硬化/オイルなし
9.モノプレックス(85%タイ/15%トップ)/スズなし/剥離オイル含有
10.モノプレックス(85%タイ/15%トップ)/スズなし/オイルなし
11.モノプレックス(95%タイ/5%トップ)/スズなし/剥離オイル含有
12.対照/タイコートのみ/剥離オイル含有
13.対照/タイコートのみ/オイルなし
14.対照/船舶用エポキシのみ
【0231】
「スズなし」と記した系では、タイコートおよびトップコートの両方をCA−40を使用して硬化する。「モノプレックス」と記した系では、記載の体積パーセントのトップコートとタイコート(例えば85%のタイコート材料と15%のトップコート)を混合し、単層として適用し、スズ触媒(7および8)またはCA−40(9〜11)のいずれかにより硬化する。
【0232】
タイコートの凝集は、ヘキサン(この同じ溶媒をタイコート樹脂の希釈にも使用)でCA−40硬化剤を予め希釈して、この希釈した硬化剤をタイコート樹脂に添加する際に、電動ドリル駆動の高剪断力ミキサーを使用することで、事実上除去される。タイコート樹脂およびCA−40の2成分の混合前にこれらに添加されたヘキサンの総量は、純の(neat)タイコート樹脂と体積が等しい。
【0233】
パネルを、夏から秋の汚損時期の間、オンタリオ湖に隣接するバーリントン湾に沈める。最大10マイル/時の流水中でのイガイ除去を観察することで、汚損剥離特性の評価を行う。標準的なデュプレックス系およびモノプレックスの配合物の両方は、対照(サンプル12、13および14)に比べて、シマウマイガイの寄生量を低減させる。デュプレックスおよびモノプレックスのパネルに存在するシマウマイガイは、毎時10マイル以下の流水速度によって容易に除去される。対照サンプルに付着したシマウマイガイは、この最大流水速度によって除去することができない。デュプレックスまたはモノプレックスのトップコート中に剥離オイル(SF1147)が含まれることで、シマウマイガイの寄生量を更に低減させることと、シマウマイガイを除去するのに必要な速度を2マイル/時も下げることとにより、コーティングの効果が増強される。
【0234】
均等物
当業者は、日常的な実験以上のものを用いなくても、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態に多くの同等物があることを認め、または確認することが可能であろう。このような均等物は、以下の請求項に含まれることが意図される。このため、本発明を、実施形態および実施例を採り上げて記載したが、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の変更および変形をその中で行うことができることは、当業者に容易に明らかであろう。したがって、本発明は、実施形態および実施例の前述の説明の詳細に限定されることは意図されず、本明細書に添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲のみによって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のポリシロキサンポリマーと、
1種類の有機ポリマーとを含み、
前記有機ポリマーは、重合して単鎖ポリマーとなるモノマーを含み、前記有機ポリマーは、架橋多官能価モノマーを含まない汚損剥離タイコートポリマー混合物。
【請求項2】
前記ポリマーは約50,000〜500,000の重量平均分子量を有する請求項1に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項3】
前記ポリシロキサンポリマーは以下の反復単位式を有し、
【化1】

式中、RおよびRは、それぞれ独立に置換または非置換のC−Cアルキル、あるいは置換または非置換のアリールであり、これらの各々は、シアノ、ハロゲンまたは別の結合官能価を提供しない別の基によって置換されうる請求項1に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項4】
前記ポリシロキサンポリマーの少なくとも1つの末端は、末端反応性基を有する請求項3に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項5】
前記末端反応性基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、ハロゲンまたはビニル基である請求項4に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項6】
前記ポリシロキサンポリマーは、ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンである請求項5に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項7】
in situ生成されたフリーラジカルの存在下でフリーラジカル重合を受けることができる有機モノマーまたは複数のモノマーを更に含む請求項1に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項8】
前記有機ポリマーはモノオレフィンモノマーを含む請求項7に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項9】
前記モノオレフィンモノマーは、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、ブテンモノマー、塩化ビニルモノマー、フッ化ビニルモノマー、フルオロアクリレート、酢酸ビニルモノマー、スチレンモノマー、環置換されたスチレンモノマー、ビニルピロリジンモノマー、ビニルナフタレンモノマー、N−ビニルカルバゾルモノマー、N−ビニルピロリドンモノマー、アクリル酸モノマー、メタアクリル酸モノマー、アクリロニトリルモノマー、メタクリロニトリルモノマー、フッ化ビニリジンモノマー、塩化ビニリジンモノマー、アクロレインモノマー、メタクリロレインモノマー、無水マレイン酸モノマー、スチルベンモノマー、インデンモノマー、マレイン酸モノマーまたはフマル酸モノマーである請求項8に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項10】
前記有機ポリマーは、スチレン、ブチルアクリレート、他のアルキルアクリレートまたはこれらの混合物を含む請求項9に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項11】
前記in situ生成されたフリーラジカルは、ベンゾイルペルオキシドまたはジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびt−ブチルヒドロペルオキシドの添加によって開始される請求項7に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項12】
表面への適用のために霧化および噴霧を行うことが更に可能である請求項1に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項13】
前記混合物の噴霧性を向上させることが可能なシリコーン流体を更に含む請求項12に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項14】
適用される表面と強固な共有結合マトリックスを形成することが更に可能である請求項1に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項15】
25℃で約40,000〜約400,000センチポアズの粘度を有する請求項1に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項16】
25℃で約80,000〜約250,000センチポアズの粘度を有する請求項15に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項17】
25℃で約95,000〜約150,000センチポアズの粘度を有する請求項16に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項18】
硬化剤を更に含み、前記硬化剤は、スズベースの触媒ではない請求項1に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項19】
前記硬化剤は、N,N’,N”−トリシクロヘキシル−1−メチルシラントリアミン、スズベース、白金ベースまたはチタンベースの触媒、あるいは他の非スズベースの触媒または有機ベースの触媒である請求項18に記載のタイコートポリマー混合物。
【請求項20】
基体に適用された耐食エポキシ層と、
前記エポキシ層に適用された請求項1に記載のタイコートポリマー混合物と、
前記タイコートポリマー混合物に適用されたシリコーン表面コートと、を含み、
前記エポキシ層は、第一級アミンを有するシランカップリング剤を含む汚損剥離系。
【請求項21】
前記タイコートポリマー混合物は、シリコーン流体を更に含む請求項20に記載の汚損剥離ポリマー系。
【請求項22】
前記基体は、前記耐食エポキシ層の適用前にクリーニングされる請求項20に記載の汚損剥離系。
【請求項23】
前記基体は、前記耐食エポキシ層の適用前にグリットブラスト処理される請求項22に記載の汚損剥離系。
【請求項24】
前記シリコーン表面コートは、剥離オイルを更に含む請求項20に記載の汚損剥離系。
【請求項25】
基体に適用された第1耐食エポキシ層と、
前記第1耐食エポキシ層に適用された第2耐食エポキシ層と、
前記第2耐食エポキシ層に適用された請求項1に記載のタイコートポリマー混合物と、
前記タイコートポリマー混合物に適用されたシリコーン表面コートと、を含み、
前記第2耐食エポキシ層は、第一級および/または第二級アミンを有するシランカップリング剤を更に含む汚損剥離系。
【請求項26】
前記タイコートポリマー混合物は、シリコーン流体を更に含む請求項25に記載の汚損剥離系。
【請求項27】
前記基体は、前記第1耐食エポキシ層の適用前にクリーニングされる請求項25に記載の汚損剥離系。
【請求項28】
前記基体は、前記第1耐食エポキシ層の適用前にグリットブラスト処理される請求項27に記載の汚損剥離系。
【請求項29】
前記シリコーン表面コートは、剥離オイルを更に含む請求項25に記載の汚損剥離系。
【請求項30】
基体に適用された耐食エポキシ層と、
前記耐食エポキシ層に適用され、1つの層内でタイコートと剥離層を組み合わせた機能を有する単一層と、を含み、
前記単一層は、シリコーン表面コート材料と請求項1に記載のタイコート材料との混合物を含み、
前記耐食エポキシ層は、第一級および/または第二級アミンを有するシランカップリング剤を更に含む汚損剥離系。
【請求項31】
前記タイコートポリマー混合物は、シリコーン流体を更に含む請求項30に記載の汚損剥離系。
【請求項32】
前記基体は、前記第1耐食エポキシ層の適用前にクリーニングされる請求項30に記載の汚損剥離系。
【請求項33】
前記基体は、前記第1耐食エポキシ層の適用前にグリットブラスト処理される請求項32に記載の汚損剥離系。
【請求項34】
タイコートポリマー混合物は、前記混合層の約5%〜約99重量%である請求項30に記載の汚損剥離系。
【請求項35】
タイコートポリマー混合物は、前記混合層の約50%〜約99重量%である請求項34に記載の汚損剥離系。
【請求項36】
タイコートポリマー混合物は、前記混合層の約75%〜約95重量%である請求項35に記載の汚損剥離系。
【請求項37】
前記シリコーン表面コートは、剥離オイルを更に含む請求項30に記載の汚損剥離系。
【請求項38】
有機ポリシロキサンと1種類の有機ポリマーとを接触させるステップを有し、前記有機ポリマーは、重合して単鎖ポリマーとなるモノマーを含み、前記有機ポリマーは、架橋多官能価モノマーを含まない、組成物の調製方法。
【請求項39】
前記有機ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーとフリーラジカル開始剤を接触させるステップを更に有する請求項39に記載の方法。
【請求項40】
前記フリーラジカル開始剤は、アゾ−ビス−アルキルニトリルである請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記フリーラジカル開始剤は、AIBNである請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記フリーラジカル開始剤は、ペルオキシドである請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記フリーラジカル開始剤は、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびt−ブチルヒドロペルオキシドである請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリシロキサンポリマーは、以下の反復単位式を有し、
【化2】

式中、RおよびRは、それぞれ独立に置換または非置換のC−Cアルキル、あるいは置換または非置換のアリールであり、前記置換基は、存在する場合、シアノ、ハロゲンまたは別の結合官能価を提供しない別の基から選択される請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリシロキサンポリマーの少なくとも1つの末端は、末端反応性基を有する請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記末端反応性基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、ハロゲンまたはビニル基である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリシロキサンポリマーは、ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンである請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンは、25℃で100センチストーク未満である請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンは、25℃で2000〜8000センチストークである請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記ヒドロキシル終端ポリジメチルシロキサンは、25℃で10,000〜50,000センチストークである請求項47に記載の方法。
【請求項51】
in situ生成されたフリーラジカルの存在下でフリーラジカル重合を受けることができる有機モノマーを更に含む請求項38に記載の方法。
【請求項52】
前記有機ポリマーはモノオレフィンモノマーを含む請求項38に記載の方法。
【請求項53】
前記モノオレフィンモノマーは、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、ブテンモノマー、塩化ビニルモノマー、フッ化ビニルモノマー、フルオロアクリレート、酢酸ビニルモノマー、スチレンモノマー、環置換されたスチレンモノマー、ビニルピロリジンモノマー、ビニルナフタレンモノマー、N−ビニルカルバゾルモノマー、N−ビニルピロリドンモノマー、アクリル酸モノマー、メタアクリル酸モノマー、アクリロニトリルモノマー、メタクリロニトリルモノマー、フッ化ビニリジンモノマー、塩化ビニリジンモノマー、アクロレインモノマー、メタクリロレインモノマー、無水マレイン酸モノマー、スチルベンモノマー、インデンモノマー、マレイン酸モノマーまたはフマル酸モノマーである請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記有機ポリマーは、スチレン、ブチルアクリレート、他のアルキルアクリレートまたはこれらの混合物である請求項38に記載の方法。
【請求項55】
前記ポリマーは約50,000〜500,000の重量平均分子量を有する請求項38に記載の方法。
【請求項56】
前記接触は、窒素噴霧雰囲気で実施される請求項38または39に記載の方法。
【請求項57】
二官能価つなぎ剤と接触させるステップを更に有する請求項38に記載の方法。
【請求項58】
前記二官能価つなぎ剤は、アミン官能基およびシロキサン様の官能基を有する請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記開始剤は、前記有機ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーに複数回で添加される請求項39に記載の方法。
【請求項60】
前記開始剤は、前記有機ポリシロキサンおよび/または有機ポリマーに1回で添加される請求項39に記載の方法。
【請求項61】
硬化剤と接触させるステップを更に有し、前記硬化剤は、スズベースの触媒ではない請求項38に記載の方法。
【請求項62】
重合中に使用される剪断速度は、約10min−1〜約1500min−1である請求項38に記載の方法。
【請求項63】
生成される生成物は、細長い、相分離またはミクロ相分離されたポリマーモルフォロジを有さない請求項38に記載の方法。
【請求項64】
水を添加するステップを更に有する請求項38に記載の方法。
【請求項65】
表面に請求項1の組成物を適用するステップを有する汚損剥離特性を有する表面の準備方法。
【請求項66】
前記表面は、耐食エポキシを有する基体である請求項65に記載の方法。
【請求項67】
表面に請求項20の組成物を適用するステップを有する汚損剥離特性を有する表面の準備方法。
【請求項68】
前記表面は、耐食エポキシを有する基体である請求項67に記載の方法。
【請求項69】
表面コートを適用するステップを更に有する請求項65または67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記表面コートは、シリコーン表面コートである請求項69に記載の方法。
【請求項71】
有機ポリシロキサンと1種類の有機ポリマーとを接触させるプロセスから生成される生成物であって、
前記有機ポリマーは、重合して単鎖ポリマーとなるモノマーを含み、前記有機ポリマーは、架橋多官能価モノマーを含まず、前記有機ポリマーは、前記ポリジメチルシロキサンの存在下でin situ生成されたフリーラジカルに曝露させて調製される生成物。
【請求項72】
前記有機ポリシロキサンおよび有機モノマーとフリーラジカル開始剤を接触させるステップを更に有する請求項71に記載の生成物。
【請求項73】
前記接触は、窒素噴霧雰囲気で実施される請求項71に記載の生成物。
【請求項74】
前記プロセスは水の添加を更に有する請求項71に記載の生成物。
【請求項75】
前記エポキシコートはつなぎ剤を含み、前記タイコートは架橋剤を含まない請求項20、25または30のいずれか1項に記載の汚損剥離系。
【請求項76】
前記エポキシコートおよび前記タイコートは自己集合する請求項20、25または30のいずれか1項に記載の汚損剥離系。
【請求項77】
前記自己集合は、シリコーン−シリコーン相互作用によって生じる請求項76に記載の系。
【請求項78】
前記表面コートおよび前記タイコートは自己集合する請求項20、25または30のいずれか1項に記載の汚損剥離系。
【請求項79】
前記自己集合は、シリコーン−シリコーン相互作用によって生じる請求項78に記載の系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−544807(P2009−544807A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521806(P2009−521806)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/016671
【国際公開番号】WO2008/013825
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(509018683)フジフィルム ハント スマート サーフェイシーズ,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】