説明

ポリマーコンポーネントを形成する方法

本発明は、ポリマーコンポーネントを形成する方法に関し、ポリマー粒子を抗酸化剤と混合して抗酸化剤がポリマー粒子を被覆している混合物を形成し、ポリマー粒子を放射線照射してその中のポリマー粒子を架橋して、照射した混合物を圧密化したコンポーネントに形成することを含む。本発明は、補綴物のための関節表面およびポリマーの関節の、少なくとも一つの所定の部分に架橋ポリマーの接着部材を備えるベアリング表面を有する補綴物を形成する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーコンポーネントを形成する方法に関する。本発明は、それに限定されるものではないが、特に、股関節面再建術において使用するための寛骨臼カップ補綴物などの補綴物のためのポリマーコンポーネントを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節面再建術は、通常、固体金属から作製されるカップおよび大腿骨コンポーネントを使用して実施される。しかしながら、そのような金属・金属股関節面再建術を受けている患者の約1%に、軟組織腫瘤の形態にある擬似腫瘍または大量の症候性滲出が5年以内に生ずると推定されている。これらの擬似腫瘍の症状には、不快感、自発性脱臼、神経麻痺、顕著な腫瘤および発疹が含まれるが、共通の病理学的特徴は、強度の壊死およびリンパ球性浸潤である。結果として、多くの患者で修正手術とそれに続く従来の股関節全置換術が必要になる。
【0003】
これらの擬似腫瘍の原因は今のところ確認されていないが、それらはベアリングが高度に摩耗した状況で起こることが観察されている。処置中の最適でない温熱治療の結果としてまたは外科医が一つもしくは複数のコンポーネントを不適当に位置決めしたことまたは根底にある骨格の骨のずれ(例えば股関節の発育性異形成)のいずれかによって起こり得るコンポーネントの誤整列の結果である粗悪に摩耗した金属により惹起された可能性がある。寛骨臼コンポーネントのエッジの摩耗が、衝突による大腿骨コンポーネントの過剰な摩耗に伴って観察されたこともある。
【0004】
擬似腫瘍は、事実として、過剰な粒子状の金属摩耗残骸もしくは金属イオンに対する毒性反応または、おそらく、正常量の金属摩耗残骸に対する過敏反応によるものであろうと考えられる。そのためこれらの擬似腫瘍の発生率は経時的に増大し得るという懸念がある。
【0005】
他の材料が、股関節面再建術における使用のために考慮されてきた。例えば、金属の外側カップシェルがポリマー(例えば従来の非架橋ポリエチレン)の内側カップライナーと組み合わされた。しかしながら、これらの例では、ベアリング表面の摩耗が関節の早期の弛緩および大量のポリマー残骸の生成をもたらすので、さらに高い故障率を生じている。このために寛骨臼および大腿骨の骨溶解が生じて、骨貯蔵の損失のために修正手術が困難になる。
【0006】
通常、寛骨臼カップは、プレス嵌め固定用(例えば直径48mmの孔に外径50mmのコンポーネントを押し込むことによる)として構成されている。この結果として、厚い金属シェルが使用されているところでさえ相当の変形(例えば100ミクロンから350ミクロンを超える範囲で)が生ずる可能性があり、そのためカップが大腿骨コンポーネントをグリップして早期の寛骨臼コンポーネント破損に至るリスクがある。そのため、大きい突出する止め釘などの代替の固定機構が使用されることがある。これらのコンポーネントの固定を補助するために、カップの外面にしばしば、多孔質コーティング(例えば、プラズマスプレーによるチタン粒子)を設けて骨の内部成長を促進する。しかしながら、そのようなコーティングは、骨と金属コーティングとの間の接触を限定してしまい、グリップが不十分になる傾向がある。加えて、チタン粒子は容易に排出され得るので、その結果研磨性の残骸として作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、全ての上記の問題の一部を改善することに役立つポリマーコンポーネント(例えば、寛骨臼カップ補綴物などの補綴物用の)を形成する方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様により、
ポリマー粒子を抗酸化剤と混合して抗酸化剤がポリマー粒子を被覆している混合物を形成すること;
ポリマー粒子を放射線照射してその中の分子を架橋すること;および
照射した混合物を圧密化したコンポーネントに形成するすること
を含む、ポリマーコンポーネントを形成する方法が提供される。
【0009】
ポリマー粒子を抗酸化剤と混合する工程は、ポリマー粒子を放射線照射してその中の分子を架橋する工程の前、最中または後に実施することができる。ポリマー粒子を抗酸化剤と混合する工程は、照射した混合物が圧密化したコンポーネントに形成される前に行われることは理解されるであろう。
【0010】
該方法は、ポリマー粒子中または粒子間の酸素の存在を減少させるかまたは実質的に排除する工程をさらに含むことができる。この工程は、照射に先立ってもしくは最中におよび/または照射した混合物を圧密化したコンポーネントに形成するときに実施することができる。
【0011】
ポリマー材料(例えばポリエチレン)の架橋は、棒材または最終製品を圧密化後に照射することにより以前に実施されていた。フリーラジカルはこの工程の望ましくない副生物であり、通常、フリーラジカルを排除するために、架橋したポリマーの再溶融が実施される。しかしながら、再溶融の結果としてポリマーの機械的性質が劣化することが見出されている。
【0012】
ポリテン樹脂(粉末、粒子または薄片)に空気または減圧酸素雰囲気中で照射を行って、架橋中のフリーラジカル形成を最小化して、それにより再溶融の必要性を除くことを試みることも知られている。ポリテン樹脂が架橋された後に、該材料は圧密化され(例えば圧縮成形により)、この工程がさらに、熱および圧力の適用に基づくフリーラジカルを排除することに役立つ。しかしながらこの手法に伴う問題は、ポリエチレン樹脂の表面積が非常に大きいので、たとえ照射が減圧酸素雰囲気中で実施された場合でも、照射中または照射後の材料の酸化が可能であることである。照射中または照射した粒子のその後の成形中の酸化というこの問題の一つの理由は、約5%の酸素が、ポリマー(例えばポリエチレン)粒子内(例えばそれらの間隙中)中に含有され得ることであると考えられる。そのため、照射中に生成するフリーラジカルは、ポリマー粒子中に含有される酸素と化合することができる。生じた酸化されたポリマーは、重度の摩耗および機械的弱化に基づく破断を起こしやすいので、品質が劣る。
【0013】
本発明の実施形態は、上で概説した問題を、照射に先立って、最初にポリマー粒子の酸素を減少させるかまたは排除することにより解決する。これは、ポリマー粒子を、不活性ガス(例えば窒素)雰囲気を提供するコンテナ中にある期間(例えば時間、日または週)貯蔵することにより行うことができる。ポリマー粒子とともにあるコンテナ中の不活性ガスを複数回交換して、ポリマー粒子からの酸素の拡散を促進することができる。あるいは、真空中におけるポリマー粒子の貯蔵も酸素のポリマー粒子から外への拡散を促進することができる。上の方法は、ポリマー粒子中の酸素濃度を減少させることには役立つが、酸素濃度をゼロに減少させることは不可能に近い。おそらく、ポリマー粒子中にゼロでない濃度の酸素が残存するであろうから、抗酸化剤(例えばビタミンE)をポリマー粒子と、照射の前、最中または後に混合して、いかなる残存酸素と架橋する照射の結果として生成したフリーラジカルとの組合せによる酸化も防止または減少させることが本発明のさらなる目的である。ポリマー粒子を抗酸化剤と混合する工程は、抗酸化剤が、全てのポリマー粒子の表面を実質的に被覆するまで実施されることが理解されるであろう。
【0014】
放射線照射した混合物を圧密化したコンポーネントに形成する工程は、直接圧縮成形、ラム押出または圧縮成形の使用を含み得る。
【0015】
圧縮成形または直接圧縮成形において、ポリマー粒子(例えばポリマー粉末)をさらに完全に融合させるためにレプテーションを導入することが知られている。典型的には、成形サイクル中に、圧縮圧力を数回緩和する。通常の処方では、圧力を1分間かけて、次に圧縮圧力を1分間緩和し、次に圧力を1分間かけ、このサイクルを3から6回の間繰り返す。これは、ポリマー粒子間から空気をより完全に排出し、粒子がより緊密に充填されて一緒になり機械的性質が向上することを確実にすることが見出されている。本出願人は、ポリマー粒子間から空気をより完全に排出することを促進してポリマー粒子のより緊密な充填を確実にするために機械的振動またはより好ましくは超音波エネルギーを成形装置に適用する方法を考案した。本出願人は、真空にした室内に成形装置を封入する方法をさらに考案した。目的は、酸化が起こる機会を最小化するために、ポリマー粒子間から排出された空気および酸素を除去することである。
【0016】
公知の技術により、抗酸化剤が混合されたポリマー粉末が熱および圧力により(例えば圧縮成形により)圧密化されれば、抗酸化剤(例えばビタミンE)は、圧密化工程の熱の影響を受けて、ポリマー粉末の表面からポリマーの各分子中に拡散するであろう。ポリエチレンの場合、拡散は、各ポリエチレン分子の疎に形成された非晶質相(各ポリエチレン分子の約50%を占める)中で起こる。結晶性相は、それよりはるかに密に充填されており、物質が内部に拡散することはより困難である。抗酸化剤を含有する圧密化されたポリエチレンが冷えて放射線照射されるとき、抗酸化剤は以下の理由で架橋を妨害する。架橋に大きく関与するのは非晶質相である。放射線照射は、通常は、ポリエチレン分子の鎖の切断を惹起することにより架橋を生ずる。これらの切断は、破断した鎖の末端にフリーラジカルを生ずる。破断端は、他の周囲の分子の鎖端または側面と連結してその結果架橋した構造を生成する傾向がある。しかしながら、抗酸化剤が非晶質相中に存在する場合は、抗酸化剤が破断鎖端のフリーラジカルを中和し、架橋を阻害する。
【0017】
本発明に関して、放射線照射されるのは圧密化したコンポーネントよりもむしろポリマー粒子である。ポリマー粒子と抗酸化剤との混合が照射前に行われる場合は、混合されたポリマーが照射前に加熱されていないので、抗酸化剤は実質的にポリマー粒子の表面上にあるであろう。照射は、そのため、ポリマー粒子内で阻害されない架橋を惹起するであろう。しかしながら、ポリマー粒子の表面において、抗酸化剤は酸化を防止するであろう。
【0018】
本発明の放射線照射された混合物が圧密化されるとき、抗酸化剤は、例えば熱の影響下に各ポリマー分子の非晶質相中に拡散することが可能になる。熱いとき、抗酸化剤(例えばビタミンE)は比較的不活性であることは注目される。加熱中には架橋が切れ、冷却が始まると架橋が再び形成されることも注目される。フリーラジカルは、ポリマー圧密化のこの加熱および冷却相中に根絶されて、フリーラジカルとして残存するのではなく、ポリマー鎖をさらに架橋することに関与する。冷却すると、高度の架橋が個々のポリマー粒子であったものを結びつけて均質な塊にして、その結果融合欠陥を排除する。圧密化されたポリマーが約37度Cに冷却されると、抗酸化剤(例えばビタミンE)は、再び十分活性になるが、ある実施形態においては加熱および冷却の工程が抗酸化剤活性の約50%を消失させることが見出されている。
【0019】
ビタミンEをポリエチレン粉末と混合し、次に熱および圧力により圧密化し、次に周囲温度に冷却する公知の技術を使用して、非晶質相中のビタミンEが、圧密化されたポリマーの放射線照射で誘発された架橋を阻害することは事実である。そのため、架橋の望ましくない副生物として生成するフリーラジカルを中和するのに十分であるが、架橋を阻害するほど高すぎない濃度のビタミンEを提供する際に突き当たる微妙な均衡がある。ビタミンEの濃度が低すぎると、その場合は、ビタミンEが全部、照射の望ましくない副生物として生成したフリーラジカルの中和に消費され得る。この場合、さらなる照射(例えば滅菌工程中)または使用中にストレスにより誘発された架橋破断により生成したフリーラジカルを中和するために利用し得るビタミンEはないであろう。
【0020】
圧密化されたポリマーに放射線照射に先立ってまたは最中に加熱して、照射中に抗酸化剤を実質的に可逆的に不活性化し、放射線照射誘発架橋を可能にすることによって、公知の技術を改良することが可能である。
【0021】
高濃度の抗酸化剤を有することによって架橋が阻害されないことは本発明の大きな利点である。事実として、高濃度の抗酸化剤は、ポリマーの酸化量を大きく減少させることにおいて有利であり得る。さらに、本出願人らは2つの非常に異なった量の抗酸化剤を使用して同じ架橋密度を得ることができることを見出し、ポリマー粒子表面上の高濃度の抗酸化剤は架橋を阻害しないことを確認した。
【0022】
抗酸化剤をポリマー粒子と混合し、続いて照射架橋する、上の方法について不利であり得る点は、抗酸化剤が高線量の放射線照射を受けることである。現状では、抗酸化剤の照射は有害な副生物を生成し得るという懸念がある。しかしながら、本出願人は、驚くべきことに、ポリマー粒子の抗酸化剤との混合は、照射後に、熱および圧力を用いて圧密化された製品に成形する前に実施することができることを見出した。この方法によれば、酸化は防止されるが、抗酸化剤は高線量の架橋のための照射を受けない。圧密化されポリマー製品と混合した抗酸化剤を放射線照射することを完全に(または実質的に)排除するためには、放射線滅菌は、ガスプラズマまたはエチレンオキシド滅菌のいずれかで置き換えるべきである。
【0023】
本出願人は、圧密化に必要とされる熱は全てのフリーラジカルを排除し得るので、抗酸化剤は、圧密化工程の後には必要ないかもしれないとも考える。しかしながら、低線量の照射を圧密化で使用することになれば(例えば、最終コンポーネントを滅菌するために)、フリーラジカルがこの工程中で形成されて、抗酸化剤がこれらのフリーラジカルを中和して使用中の酸化を防止するであろう。さらに、使用における高い接触応力は、若干の架橋の破断およびフリーラジカルの露出を惹起し得る。最終製品中の抗酸化剤は、形成されたいかなるフリーラジカルも中和することによりこの事態における酸化を防止する保護手段として作用し得る。
【0024】
本発明のある実施形態において、抗酸化剤(例えばビタミンE)は、混合物の重量の3%までを占めることができる。特定の実施形態において、抗酸化剤(例えばビタミンE)は混合物の重量の0.1%、0.5%、1%、2%、または3%を占めることができる。
【0025】
照射された混合物を圧密化したコンポーネントに形成する工程は、熱および/または圧力の使用(例えば、熱圧縮成形または冷圧縮成形を実施することにより)を含み得る。熱が圧密化工程で使用される場合、照射した混合物中に存在するいかなるフリーラジカルも排除または最小化され、そのため再溶融またはアニーリングが必要なくなり、圧密化された材料の良好な機械的性質が維持されることは理解されるであろう。さらに、圧密化されたコンポーネントは、抗酸化剤を含有するので、コンポーネントの将来の使用中に発生するいかなるフリーラジカルも抗酸化剤により中和される傾向となろう。
【0026】
ポリマー粒子は、樹脂(例えば粉末、薄片および/または小ペレットを含む)またはヒドロゲル(例えば、水を吸収し得るポリマーを含む)の形態で提供することができる。
【0027】
抗酸化剤は、液体、粉末、溶液または懸濁液の形態で提供することができる。例えば、粉末(または液体)の抗酸化剤は、アルコールなどの溶媒に溶解して抗酸化剤を含有する成分の体積を増し、ポリマー粒子をより容易に被覆することを可能にする。溶媒は、混合後に留去することができる。あるいは、例えば不溶性の抗酸化剤については、抗酸化剤を液体(例えば水)の懸濁液中に入れることにより、抗酸化剤を含有する成分の嵩を増すことができる。
【0028】
ポリマー粒子は複数の分子を含むことができる。
【0029】
ポリマー粒子は、以下のものを含むことができるが、これらに限定されない:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン;または高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、それらのコポリマーおよび混合物を含む任意のポリオレフィン;ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、それらのコポリマーおよび混合物などのヒドロゲル;ヒドロゲルの任意のポリオレフィンとのコポリマーおよび混合物。
【0030】
抗酸化剤は、以下のものを含むことができるが、これらに限定されない:ビタミンE;α−トコフェロール、デルタ−トコフェロール;プロピル、オクチル、またはドデシルガレート;乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸;有機酸およびそれらの塩;オルトリン酸塩;トコフェロール酢酸塩およびIrganox 1010。
【0031】
該方法は、圧密化されたコンポーネントを、例えば、高圧および/または高温結晶化を用いて処理する工程をさらに含むことができる。これは圧密化されたコンポーネントの機械的性質をさらに向上させる利点を有し得る。
【0032】
圧密化されたコンポーネントは、製品、製品の一部、または製品もしくは製品の一部を作製し得る(例えば機械加工して)棒材を形成することができる。製品はベアリングコンポーネント、医療用デバイス、または補綴物により構成することができる。補綴物は、任意の関節、例えば、股、膝、脊柱、頸部、踵、足指、肩、肘、手首、指または親指で使用するために成形することができる。
【0033】
圧密化されたコンポーネントが製品の一部を形成する場合、その部分は製品の表面、特に、摩耗を受けると通常予想される表面(例えばベアリング表面)を形成することができる。該部分は製品の少なくとも一つの表面の一部、例えば補綴物の関節表面などの全体または一部分を構成することができる。
【0034】
したがって、本発明の方法により形成されたコンポーネントは、関節表面の一部を架橋して(本出願において詳細に開示するように)、関節の全表面を架橋して、モジュールのポリマーベアリングインサートの前方および後方の摩耗を減少させるために前方および後方両方の要素で、2方向移動股関節ベアリングのためのインサートの前方および後方両側の摩耗を減少させるために前方および後方両方の要素で、および直接圧縮成形を使用してコンポーネントを形成することにより全コンポーネントを架橋して(材料の優れた機械的性質を活用して)使用することができる。
【0035】
本発明の実施形態において、コンポーネントは、多孔質もしくは非多孔質のシェルまたは裏打ち材料に直接圧縮成形することができる。シェルまたは裏打ち材料は、骨(例えば、金属、セラミックまたはポリマーにより形成することができる)に接触するのに適することができる。シェルまたは裏打ち材料は、例えば、キャスティング、棒材からの鍛造もしくは機械加工により(例えば金属シェルを)、または注入成形または圧縮成形により(例えばポリマーシェルを)形成することができる。
【0036】
本発明の方法は、バルク材料を形成するために使用することができる(即ち、本発明の第1の態様の圧密化されたコンポーネントがバルク材料の形態、例えば大きい圧縮成形された薄板または長いラム押出した棒の形態にある場合)。そのため、バルク材料を形成する工程は、圧縮成形、ラム押出または他の公知の方法によることができる。インプラントなどの製品(またはそのための部品)は、バルク材料から機械加工で作製することができる。
【0037】
本発明のある実施形態においては、ポリマー粉末の放射線照射(混合した抗酸化剤の有りまたは無しで)を、増感ガスまたは液体(例えばアセチレン)の存在下に実施する。
【0038】
本発明の第1の態様による方法は、寛骨臼カップ補綴物のための関節表面(または関節表面の一部)を形成するために構成することができる。その場合、関節表面は、股関節全置換または股関節面再建術のいずれかで使用するための寛骨臼カップ用のライナーとして構成することができる。具体的実施形態において、関節表面は、本発明の第5から第15の態様に関して下で説明する特徴のいずれかを含む寛骨臼カップにおいて使用するために構成することができる。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、
第1のポリマーを含む第1層を形成すること;
第2のポリマーを含み、関節の表面層の全体または一部分を構成する第2層を形成すること;
第1層と第2層とを接合し、関節表面のコンポーネントを形成すること;
第2のポリマーに放射線照射してその中の分子を架橋すること;および
第2層中のフリーラジカルの消費を促進して、それにより第2層の酸化リスクを最小化すること
を含む、補綴物用の関節の表面を形成する方法が提供される。
【0040】
第1のおよび第2のポリマーは、放射線照射工程の前は同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
第1層は、さらに抗酸化剤を含むことができる。抗酸化剤は以下のものを含み得るが、これらに限定されない:ビタミンE;α−トコフェロール、デルタ−トコフェロール;プロピル、オクチル、またはドデシルガレート;乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸;有機酸およびそれらの塩;オルトリン酸塩;トコフェロール酢酸塩およびIrganox 1010。第1層は、少なくとも1重量%のビタミンEを含むことができる。第1の実施形態において、第1層は2重量%のビタミンEを含むことができる。第2の実施形態において、第1層は3重量%のビタミンEを含むことができる。第1層に提供される抗酸化剤の量を、第2のポリマーが放射線照射されるときに第1層の架橋を防止するように選択することができることは注目されるであろう。
【0042】
第2層は架橋されることが意図されているので、抗酸化剤はこの層に存在しないことが望ましいかもしれないことは理解されるであろう。しかしながら、それにも拘わらず実際には、第2層における架橋した接着部材の形成を著しく妨げるのに十分でない限り、少量の抗酸化剤がこの層に存在してもよい。したがって、低濃度、例えば0.2%未満の、抗酸化剤(例えばビタミンE)が、第2層中に存在してもよい。例えば、第2層は0.05%または0.1%の抗酸化剤(例えばビタミンE)を含有し得る。
【0043】
第2層におけるフリーラジカルの消費を促進する工程は、第2層中の抗酸化剤の濃度が、放射線照射によるポリマー架橋を可能にする程度に十分低いが、放射線照射の結果として発生したフリーラジカルを消費する程度に十分高いことを確実にすることにより実施することができる。
【0044】
第1層と第2層とを接合して一緒にする工程は、熱および/または圧力の適用を含み得ることは理解されるであろう。したがって、第1層と第2層とは、熱圧縮成形により接合することができる。あるいは、それらは冷圧縮成形することまたは接着的もしくは機械的手段により接合することができる。
【0045】
第2のポリマーは、第2層に形成される前または後に放射線照射され得る。したがって、第2層は、本発明の第1の態様により形成することができる(即ち、第2のポリマーを該ポリマーが放射線照射される前または後に抗酸化剤で被覆し、照射された混合物を第2層に形成することにより)。それに加えてまたは別途に、第2のポリマーは第2層が第1層に接合された後で放射線照射されてもよい。
【0046】
第2層が第1層に接合されるのに先立って、第2のポリマーに放射線照射することが有利であり得るが、それは、このことが、第1層を弱くする第1のポリマーの架橋を防止するために第1のポリマーを変化させる(例えば、それを抗酸化剤と混合することにより)必要をなくすことができるからである。あるいは、第2のポリマーを、第2層が第1層に接合されるのに先立って放射線照射すると、第1層と第2層とが接合された後で、第2層における所望量の架橋を得るために低線量の放射線照射しか必要とされず、放射線照射の結果としての第1層に対する損傷が最小化されることになる。
【0047】
第2のポリマーは、吸収される放射線約100kGyで照射することができる。
【0048】
フリーラジカルの消費を促進する工程は、抗酸化剤が第1層中に存在したときに第2層中に拡散してその中でフリーラジカルを消費することを助長する加熱を含むことができる。この工程は、コンポーネントが融点より下で加熱されるアニーリング工程において考慮することができる。
【0049】
第1層および/または第2層を形成する工程は、成形を含むことができる。成形は圧縮成形を含み得、冷圧縮成形または熱圧縮成形のいずれかの形態であり得る。第1層は、第1のポリマーを含み、且つ任意でさらに抗酸化剤を含む、第1の粉末から成形することができる。第2層は、第2のポリマーを含む第2の粉末から成形することができる。第1のおよび/または第2の粉末は、粒子サイズの混合(例えば微粒子から薄片まで)を含むことができる。
【0050】
あるいは、第1層および/または第2層を形成する工程は、機械加工を含むことができる。第1層は、第1のポリマーおよび抗酸化剤を含む第1の棒材から機械加工することができる。第2層は、第2のポリマーを含む第2の棒材から機械加工することができる。第1のおよび/または第2の棒材は、関連する材料のブロック(例えば、3m×2m×10cmの寸法を有する)を圧縮成形することにより形成することができる。例えば、第1の棒材は、第1のポリマーを含み、且つ任意でさらに抗酸化剤を含む、第1の粉末からの第1のブロックを圧縮成形することにより形成することができ、且つ/または第2の棒材は、第2のポリマーを含む第2の粉末からの第2のブロックを圧縮成形することにより形成することができる。あるいは、第1のおよび/または第2の棒材は、ラム押出により形成することができる。
【0051】
ある実施形態において、第1層を形成する工程は、第1の粉末を鋳型中に入れて、第1の粉末を熱または冷圧縮型打ちして(例えば10トンの圧力で)第1層の所望の形状にすることにより、第1層を圧縮成形することができる。抗酸化剤が存在するとき抗酸化剤は、第1のポリマー粉末中にミックスまたはブレンドすることができる。所望される形状は、意図される摩耗ゾーンに第1層と第2層の間の境界面を拡散させる(diffuse)複数の突出部を含むことができる。
【0052】
ある特定の実施形態において、第2層を形成する工程は、形成された第1層の全体または一部分の上に第2のポリマー粉末を置き、第2の鋳型を適用して熱または冷圧縮型打ちして第2層の所望の形状にすることによる圧縮成形を含むことができる。ある実施形態において、この工程は、そのため、第2の鋳型を適用して圧縮型打ちして第2層の所望の形状にする前に、第1層に創られた突出部の周囲の領域を第2の粉末で満たすことを含むことができる。
【0053】
ある具体的実施形態において、第1のポリマー粉末は、シリンジ様のシュラウド(shroud)を通して第1のピストンを作動させることにより圧縮成形することができる。第1のピストンをその後シュラウドから外し、第2のポリマーをシュラウドに注入し、第2のピストンをシュラウドを通して適用して、第2層を第1層上に圧縮成形する。この技法は、第2の粉末が第1層上の意図したところの外側の領域に誤って堆積しないことを確実にするのにシュラウドが役立つので、第2層が関節の表面層の一部のみを形成する場合に特に有利であることが見出された。
【0054】
あるいは、第2層を形成する工程は、第2の粉末を第2の鋳型中に入れて、第2の粉末を熱または冷圧縮型打ちして第2層の所望の形状にすることにより圧縮成形することを含むことができる。均等な(または所定の)厚さを有する第2層を得るために、第2の粉末を非平坦表面上に均等に堆積させることは困難であるから、この技法は、第2層が平坦でない関節の表面層の全体または一部分を形成する場合に特に有利であると期待される。このように、第2層が寛骨臼カップ補綴物の関節の表面層の全体または一部を形成する場合には、第2の粉末がカップの極部(pole)に蓄積して、それにより意図したよりも厚い架橋したポリマーの層がカップの極部に生成し、またカップの周辺(peryphery)に意図したよりも薄い架橋したポリマー層が生成することがないことを確実にするように、第2層を第1層とは別に形成することが望ましいことがある。
【0055】
上記方法の変法において、第2の粉末は、その濃度が、第2層の架橋を妨げないように十分低いが、架橋工程中に生成するフリーラジカルの酸化効果を中和するように十分高いことが決定されている、所定量の抗酸化剤を含むことができる。上のさらなる変法において、第2の粉末は、第2の粉末が第2層に形成される前に、第2の粉末が放射線照射されて第2の粉末粒子の高度の架橋が惹起される場合に、比較的高濃度のブレンドされた抗酸化剤(例えば2%のビタミンE)を含むことができる。
【0056】
本発明の第2の態様のさらに他の変法において、該方法は、関節の表面層の少なくとも1箇所のさらなる部分および/またはコンポーネントの少なくとも1箇所のさらなる表面を架橋することを含むことができる。これは、本明細書中で記載した方法のいずれかを使用して達成することができる。特定の実施形態において、該方法は、関節表面およびモジュールのポリマーの寛骨臼ベアリングインサート/ライナーの背表面の全体(または一部分)を架橋して、金属の寛骨臼カップシェルに対するポリマーの背表面の摩耗を防止または最小化するために使用することができる。他のモジュールのベアリングインサートは、高度に架橋したそれらの背表面(例えば、膝脛骨コンポーネントのためのモジュールのポリマーベアリングの背表面)を有することによっても利益を得るであろう。他の実施形態において、2つ(またはそれ以上)の表面が関節のベアリング表面(例えば、2方向移動股関節ベアリングにおいて)として役立つことができ、その結果、これらも2箇所以上の領域で架橋することから利益を得るであろう。
【0057】
本発明の第2の態様による方法は、寛骨臼カップ補綴物のために関節表面を形成するために構成することができる。その場合、関節表面は、股関節全置換または股関節面再建術のいずれかにおいて使用するために構成された寛骨臼カップのためのライナーとして構成することができる。具体的実施形態において、関節表面は、本発明の第5から第15の態様に関して下で説明する特徴のいずれかを含む寛骨臼カップにおいて使用するために構成することができる。
【0058】
上記方法の代替法を、本発明の第3の態様として以下に詳述する。補綴物のための関節の表面を形成するこの方法は:
抗酸化剤を含むポリマーコンポーネントを形成すること;
関節の表面層の一部分から、抗酸化剤を全部または一部(wholly or in part)、選択的に除去すること;
コンポーネントを放射線照射して前記一部分において分子を架橋すること;および
前記一部分におけるフリーラジカルの消費を促進し、それにより前記一部分の酸化リスクを最小化すること
を含む。
【0059】
関節の表面層の一部分から抗酸化剤を除去する工程は、界面活性剤を使用して抗酸化剤を溶脱することを含むことができる。
【0060】
本発明の第3の態様の実施形態において、該方法は、関節の表面層の少なくとも一つのさらなる一部分からおよび/またはコンポーネントの少なくとも一つのさらなる表面から、抗酸化剤を全部または一部、選択的に除去することをさらに含むことができる。次に、コンポーネントを放射線照射し、一部分を超えておよび/または表面を超えて分子を架橋することができる。特定の実施形態において、該方法は、関節表面の一部分およびモジュールのポリマー寛骨臼ベアリングインサート/ライナーの背表面の全体(または一部分)を架橋して、金属の寛骨臼カップシェルに対するポリマーの背表面の摩耗を防止または最小化するために使用することができる。他のモジュールのベアリングインサートも、それらの背表面を高度に架橋することにより利益を得るであろう(例えば、膝脛骨コンポーネントのためのモジュールのポリマーベアリングの背表面)。他の実施形態において、2つ(または3つ以上)の表面が関節のベアリング表面として役立つことができ(例えば2方向移動股関節ベアリングにおいて)、したがって、これらも2箇所以上の領域を架橋することから利益を得るであろう。
【0061】
本発明の第4の態様において、補綴物用の関節の表面を形成する方法は:
抗酸化剤を含むポリマーコンポーネントを形成すること;
関節の表面層の全体または一部分で、抗酸化剤を全部または一部(wholly or in part)、選択的に不活性化すること;
コンポーネントを放射線照射して前記関節の表面層中の分子を架橋すること;および
前記関節の表面層中のフリーラジカルの消費を促進し、それにより前記関節の表面層の酸化リスクを最小化すること
を含む。
抗酸化剤を不活性化する工程は、抗酸化剤を太陽光に曝すことを含むことができる。
【0062】
本発明の第4の態様の実施形態において、該方法は、関節の表面層のさらに少なくとも一つの一部分および/またはコンポーネントのさらに少なくとも一つの表面を架橋することを含むことができる。これは本明細書に記載した方法のいずれかを使用して達成することができる。特定の実施形態において、該方法は、関節表面の全体(または一部分)およびモジュールのポリマーの寛骨臼ベアリングインサート/ライナーの背表面の全体(または一部分)を架橋して金属の寛骨臼カップシェルと向き合うポリマーの背表面の摩耗を防止または最小化することに使用することができる。他のモジュールのベアリングインサートもそれらの背表面を高度に架橋することにより利益を得るであろう(例えば、膝脛骨コンポーネント用のモジュールのポリマーベアリングの背表面)。他の実施形態において、2つ(または3つ以上の)表面が関節のベアリング表面として役立つことができ(例えば、2方向移動股関節ベアリングにおいて)、したがってこれらも2箇所以上の領域で架橋することから利益を得るであろう。
【0063】
以下の特徴は、上記の本発明の第3および第4の態様の両方において任意に選択し得る特徴である。
【0064】
抗酸化剤は以下のものを含むことができるがこれらに限定されない:ビタミンE;α−トコフェロール、デルタ−トコフェロール;プロピル、オクチル、またはドデシルガレート;乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸;有機酸およびそれらの塩;オルトリン酸塩;トコフェロール酢酸塩およびIrganox 1010。
【0065】
ポリマーコンポーネントを形成する工程は、成形(例えば熱圧縮成形または冷圧縮成形)および/または機械加工を含むことができる。
【0066】
フリーラジカルの消費を促進する工程は、関節の表面層/一部分中の抗酸化剤の濃度が、放射線照射によるポリマー架橋は可能にするように十分低いが、放射線照射の結果として発生するフリーラジカルを消費するように十分高いことを確実にすることにより実施することができる。あるいは、フリーラジカルの消費を促進する工程は、コンポーネントを加熱し、抗酸化剤がポリマーコンポーネントの残部から関節の表面層/一部分に拡散してその中のフリーラジカルを消費することを助長することにより実施することが可能であり、それにより酸化リスクを最小化する。
【0067】
本発明の第3および第4の態様による方法は、寛骨臼カップ補綴物用の関節の表面を形成するために構成することができる。その場合、関節表面は、股関節全置換または股関節面再建術のいずれかで使用するために構成された寛骨臼カップのためのライナーとして構成することができる。具体的実施形態において、関節表面は、本発明の第5から第15までの態様に関して下に記載した特徴のいずれかを含む寛骨臼カップにおいて使用するために構成することができる。
【0068】
本発明は、本発明の第1から第4までの態様に関して上に記載した方法のいずれかにより製造される製品およびコンポーネントにも関する。
【0069】
本発明の第5の態様により、表面の少なくとも一つの所定の部分に、架橋ポリマーの接着部材(cross-linked polymer bonds)が提供されたポリマー関節のベアリング表面を有する補綴物が提供される。
【0070】
本発明のこの態様の実施形態において、所定の部分は、噛み合う関節表面から最大の摩砕を受けると考えられる領域に対応して配置されるであろう(即ち、所定の部分は、最大量の摩耗を受けやすい区域に対応して選択されるであろう)。当業者は、患者により示された予想される骨格の力を考慮して、ベアリング表面および噛み合う関節表面の幾何学的形状から、摩耗しそうな区域を容易に決定できることは理解されるであろう。
【0071】
未処理の(即ち従来の)ポリエチレンの内部ライナーを有する伝統的寛骨臼カップの場合、摩耗残骸の体積は、使用された大腿骨頭のサイズに比例することが見出されていることは注目される。したがって、例えば、直径22mmの骨頭が一般的に使用される股関節全置換の場合、ポリエチレンライナーからの摩耗残骸の体積は許容されるレベルであり得る。しかしながら、股関節面再建術の場合は、直径が45〜55mmの骨頭を使用することが普通であり、結果として、摩耗残骸の体積は比較的大きく、許容できないレベルの摩耗を生じ、残りの骨部分(bone stock)に損耗が生ずる。そのため、大きい大腿骨頭に対して薄い層で提供されたときでさえ摩耗非常に小さい高強度ポリマーが必要である。
【0072】
上記のように、ポリマー接着部材を架橋することにより、ポリマー(例えばポリエチレン)が、いかなる測定可能な摩耗を示すことも防止することが可能である。これは、成形されたまたはラム押出されたポリマーに放射線照射することにより達成することができる。これは摩耗しにくい架橋ポリマーの接着部材を生ずるが、一方該工程は、フリーラジカルを残し、それが酸素と結合して、その結果、酸化されたポリマーは機械的に弱く、破損しやすい。(酸化を防止するために)フリーラジカルを根絶することは、放射線照射後に材料を再溶融することにより可能である。これは、材料の機械的性質に若干低下を生じさせる(即ち前より弱くする)が、酸化過程ほどの弱化はないことが知られている。この工程はいわゆる第1世代の架橋ポリマーを生ずる。
【0073】
第2世代の架橋したポリマーは、ビタミンEをポリマーの物質に拡散させることにより得ることができる。ビタミンEは、照射架橋後に拡散され、架橋の結果として生成したフリーラジカルはビタミンEにより消費される。より具体的には、架橋したポリエチレンを、液体ビタミンEの温浴中に数時間浸漬すると、ビタミンEが材料中に拡散する。ビタミンEおよび他の抗酸化剤は架橋を妨げることが知られているので、第2世代の架橋は、成形またはラム押出の前に、ポリエチレン粉末中のビタミンEの実質的濃度を有することにより実施することはできないことを注意しておく。
【0074】
第3世代の架橋は、材料の表面のみを架橋することに関する。物質中のビタミンEの濃度を(照射に先立って)増大させると、架橋量が減少し、その結果ビタミンEは、ポリマーの大部分における架橋を防止し、表面層のみ架橋させるのに効果的に使用することができることが見出された。架橋工程から生ずるフリーラジカルを消費して酸化を防止するようにビタミンEを表面層中に拡散させることが望ましい。この場合、バルク材料からのビタミンEは、材料を融点より下で数時間アニールすることにより表面の架橋した層中に拡散するように仕向けられる。
【0075】
本発明のこの態様は、第4世代架橋とみなすことができる部分的表面架橋に関する。要するに、表面の選択された一部分(または複数の部分)のみ架橋して、意図した摩耗ゾーンが摩耗に対して高度に抵抗性であり、一方ポリマー材料の残部の機械的強度を保存することを確実にする。架橋が材料の表面の一部分のみに限定されるという事実は、ポリマーの薄い層のみが使用される場合に特に有利であり、それは、この場合、ポリマー構造物全体の機械的強度が、従来ポリマーの強度を保持するバルク材料および架橋した領域の周囲の材料の表面の機械的強度により大きく決定されるからである。
【0076】
第1、第2および第3世代の架橋したポリマーは、薄い層の股関節面再建術コンポーネントで使用するために必要な強度を欠くと考えられる。しかしながら、第4世代の(即ち一部の表面の)架橋は、股関節面再建術において必要とされる薄い層で使用したとき、特に大きい大腿骨頭が使用されたときでさえ、(従来の非架橋ポリマーに類似した)十分な強度に加えて、関節領域における十分な摩耗耐性を提供するであろうと考えられる。
【0077】
金属上の金属(metal-on-metal)、セラミック上のセラミック(ceramic-on-ceramic)、および架橋したポリマー上の金属(metal-on-cross-linled polymer)のベアリングは、全ていわゆるエッジ荷重に耐えられないことも注目される。エッジ荷重は、コンポーネントの配置不良(通常、外科医のミスによるカップの置き損ない)の結果として、荷重が補綴物の大腿骨頭から補綴物の寛骨臼コンポーネントのエッジの上に移るときに生ずる。金属上金属ベアリングでは、これは、コンポーネント部分の重度の摩耗を生ずる。セラミック上セラミックベアリングでは、これは、セラミックが脆い材料であることにより、補綴物の寛骨臼カップのエッジの破断が生ずる。金属骨頭が十分に架橋したポリエチレン寛骨臼カップライナーに接する場合は、架橋した材料の比較的低い強度が原因で、カップライナーの破断が起こることがある。従来のポリマー(例えばポリエチレン)ベアリングの方が架橋したポリマーベアリングよりもエッジ荷重に関してよりよく機能し、それは、従来のポリマーの方が強くて、エッジ荷重の条件下で破断しない傾向があり、インプラントが外科医による軽微な置き損ないを許容するからであることは注目される。本発明のこの態様の補綴物は、架橋したのは小部分のみで、重要なことであるがコンポーネントのエッジを従来の非架橋ポリマーとして残して構成されるので、補綴物の機械的性質は、従来のポリマーのものにはるかに似ているであろうと考えられ、したがってエッジ荷重は重要な問題ではないであろうと期待される。
【0078】
ある実施形態において、ポリマーは、所定の部分の領域でより厚くすることができる。これは、材料の大部分における機械的性質が所定の部分の表面架橋により影響されないことを確実にすることに役立つであろう。
【0079】
本出願人は、架橋したポリマー(例えばポリエチレン)部分と非架橋ポリマーとで結晶化度における相違があることに注目している。その結果として、2つのタイプのポリマーの間の境目のはっきりした境界面が、境界面における層間剥離の高いリスクを生ずる懸念がある。本出願人は、そのため、この境界面における層間剥離のリスクを回避しまたは最小化するために、複数の突出部を、ポリマーの架橋した部分とポリマーの残部との間の境界面に設けることができることを提案する。突出部は、峰または指の形態で、例えばスパイクの形状でであってよく、またはそれらは2つのタイプのポリマーの間の境界面における凹凸を導入することにより設けることができる。突出部を設けることから生ずる材料の鉗合は、2つのタイプのポリマー間の急激な変移をなくすことに役立ち、その結果、2種の機械的に相違するポリマー(例えばポリエチレン)の間の円滑な移行を提供することが理解されるであろう。
【0080】
補綴物は寛骨臼カップとして構成することができる。寛骨臼カップは、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを含むことができ、その内側表面は、架橋ポリマーの接着部材を用いて設けた前記所定部分を有する関節のベアリング表面となる。
【0081】
本発明の第1から第4までの態様に関して上で述べた種々の特徴は、本発明の第5の態様に関して上で述べた特徴のいずれとも組み合わせることができ、逆も成り立つことが理解されるであろう。
【0082】
補綴物は、全膝置換術において使用するための大腿骨コンポーネントまたは脛骨コンポーネントとして構成することができる。特に、関節のベアリング表面は、脛骨コンポーネント上に設けた関節丘ベアリング表面により構成することができる。それに加えてまたは別法では、関節のベアリング表面を、カム及びペグの従動子(cam and peg follower)の一方のまたは両方の噛み合う表面により構成することができ、ここで一方は大腿骨コンポーネント上に設けられ、他方は脛骨コンポーネント上に設けられる。
【0083】
本発明の第6の態様により、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを含む寛骨臼カップ補綴物が提供され、その場合、内側ライナーを外側シェルに結合して複合一体型カップを形成するために機械的手段が提供される。
【0084】
本発明の第6の態様は、金属シェルと大腿骨コンポーネントとの間にポリマー層を使用することにより、上で述べた金属カップの不利点の幾つか(金属に対する極端な患者のアレルギー疾患、および長期の影響が可能な患者の血液中の過剰の金属イオンをもたらす金属の摩耗など)を克服することに役立つ。ポリマー層を金属シェルに機械的に取り付けることの利点は、カップを、その個々のコンポーネント部分より強く且つ耐久性が優れた一体型デバイスとして取り扱って挿入することができることである。そのため、挿入時のカップの変形の起こりやすさは減少する。
【0085】
本発明のこの態様の金属シェルが、最初は離散的コンポーネントとして形成された金属の固体の部品により構成されることは理解されるであろう。
【0086】
ある実施形態においては、金属の外側シェルを比較的薄く、ポリマーの内側ライナーを比較的厚くすることができる。これは、金属残骸のリスクを低下させるのに役立ち、一方同時に(大腿骨頭により及ぼされる力から)ポリマー中に発生する応力がより厚いポリマー層でより容易に吸収されることを確実にすることに役立つ。
【0087】
金属シェルは、約0.5mmから6mmの厚さを有することができる。ある実施形態において、金属シェルは、約1mmという最小厚さを有することができる。金属シェルの厚さは、例えば、そのエッジからその極部へと変化することができる。
【0088】
ポリマーライナーは、約0.5mm〜10mmの厚さを有することができる。ある実施形態において、ポリマーライナーは、所定の摩耗ゾーンにおいて約4mmという最小厚さ、および他の領域において1mmの厚さを有することができる。したがって、ポリマーライナーの厚さは、例えば、そのエッジからその極部へと変化することができる。
機械的手段は、金属シェル中に少なくとも一つの穿孔、開口部、溝孔、凹所または陥凹部を含み、その中にポリマーライナーが広がってその内側と外側シェルとを噛み合わせて一緒にすることができる。
【0089】
ある実施形態においては、機械的手段は、金属シェルの内側表面に設けられた複数の球状陥凹部により構成され、またはそれを含む。この場合、ポリマーライナーは、金属陥凹部により保持される複数のポリマー小塊を形成するように、金属シェル上に圧縮成形することができる。この実施形態は、内側および外側シェルを一緒に確保するために特に効果的である。複数の球状陥凹部(およびそれぞれのポリマー小塊)は金属シェルの実質的部分の上に設けることができ、且つ金属がその領域で比較的薄い場合でさえ金属シェルのエッジ近くに設けることができる。さらに、球状陥凹部の各々のサイズは、特定の位置における金属の厚さに依存して変わり得る。
【0090】
幾つかの実施形態において、機械的手段は、内側ライナーを外側シェルに綴じ付けることを含むことができる。綴じ付けはカップエッジの全体または一部分に沿って提供することができる。特定の実施形態において、外側シェルには、カップエッジの全体または一部分の付近にリムを設けることができる。リムには、複数の孔が穿孔されており、その孔を通ってポリマーの内側ライナーが広がってライナーとシェルとを綴じ付けて一緒にすることができる。リムは、外側シェルの外側の表面から嵌め込み、ポリマーの内側ライナーの一部分が、カップの輪郭の中でリムの外側表面に沿って広がるかまたはそれを包み込むことを可能にすることができる。ポリマーライナーが外側シェル中に成形される(例えば直接圧縮成形される(DCM))実施形態においては、ポリマーの繊条がリム中の孔を通して押し込まれ、次にリム周囲に提供されたポリマーに成形され、それによりライナーのエッジをシェルに綴じ付ける。この技法を使用する利点は、上記の陥凹部よりも製作が容易であることである。綴じ付けも、それは、それがなければライナーをシェルから外すように働いたかもしれない力がかけられたときでさえ、ライナーをシェル内に保持することに役立ち得るので、下に記載する本発明の他の態様に関連しても有利であり得る。
【0091】
上のことに加えて、機械的手段は、金属シェルの内部の極部に設けた(比較的大きい)ねじ山を切った孔を含むことができる。その孔は、盲孔であってもよく、作製中の金属シェルの取り扱いで使用することができる。ポリマーライナーが外側シェル中に成形される(例えば直接圧縮成形される(DCM))実施形態においては、ねじ山を切った孔がマクロ固定(macro-fixation)を提供することができる。それに加えて、いつかカップを患者から取り出さなければならない場合があれば、孔の中のポリマーは掘削して出すことができ、シェルはねじ山を切った棒を、ねじ山を切った孔に挿入することによりグリップすることができる。
【0092】
あるいは、またはそれに加えて、機械的手段は、ポリマーライナーのミクロ取り付け(micro-attachment)のために外側シェルの全体または一部分に設けた粗な内部表面を含むことができる。
【0093】
接着剤はそれだけでは内側ライナーと外側シェルとの層間剥離を防止しそうもないが、上記の機械的手段のいずれかとの組合せで有利に使用することができることが注目される。
【0094】
ポリマーライナーは、ポリイミド、ポリウレタン、hylamer、炭素繊維強化「PEEK」(ポリエーテルエーテルケトン)または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の一つまたは複数を含むことができる。
【0095】
金属シェルは、チタン、チタン合金またはコバルトクロムの一つまたは複数を含むことができる。
【0096】
内側ライナーおよび外側シェルが両方とも比較的薄い場合、変形のリスクがあるのでボディー内のプレス嵌め固定に頼ることは推奨されないことは理解されるであろう。そのため、手術中の固定の代わりの形態およびカップを取り扱って挿入するための適当な手段を考慮することが重要である。そのため、本発明のこれらの態様を、下で詳細に論ずることにする。
【0097】
本発明の第5の態様に関して上で述べた種々の特徴は、本発明の第6の態様に関して上で述べた特徴のいずれかと組み合わせることができること、および逆も成り立つことは理解されるであろう。
【0098】
本発明の第7の態様により、所定の摩耗ゾーンにおける増大したカップ厚さに備えるために内側表面の中心が外側表面に関してずれており、且つ内側表面のずれを補償するためにカップの内側エッジに切り欠きが用意されている、外側表面および内側表面を含む寛骨臼カップ補綴物が提供される。
【0099】
現行の股関節面再建術では、耐久力の大きい寛骨臼カップ補綴物に無理のないサイズの大腿骨頭を適応させるように、カップの内径と外径の差を6mmにすることが必要と一般的に感じられる。しかしながら、擬腫瘍が小柄な患者(特に女性)においてより一般的であることが見出されている。そのため、本出願人らは本発明を、(即ち、ずれた内側表面を与えることにより)増大された大腿骨頭サイズを許容するが、一方外側カップの直径は維持するものとして提案する。これは、関節がより安定で大きい接触表面積を有し、それによりかかる荷重を分散させて摩耗をより効果的に減少させることを確実にして、一方カップの空洞から切除する骨の追加がないことを保証するであろう。
【0100】
内側表面を外側表面に対してずらすことにより、内径と外径との差をより小さくすることができることが理解されるであろう。内側の切り欠きの提供は、内側エッジではカップの厚さが必要ではないので、内径のサイズを最大化することにも役立つ。
【0101】
カップは、単一のコンポーネント(即ちモノブロック)により構成することができ、または2つ以上コンポーネント(例えば外側シェルおよび内側ライナーを有し、外側表面は外側シェルにより提供され、内側表面は内側ライナーにより提供される)により構成することができる。
【0102】
コンポーネント(または複数のコンポーネント)は、金属、セラミック、ポリマー、またはそれらの複合体から形成することができる。
【0103】
したがって、カップは、単一の金属、セラミック、ポリマーまたは複合体のコンポーネントを含むことができる。
【0104】
あるいは、カップは、金属、セラミック、ポリマーまたは複合体のシェルおよび少なくとも一つの金属、セラミック、ポリマーまたは複合体のライナーを含むことができる。シェル材料およびライナー材料の任意の組合せが可能である。したがって、シェルおよびライナーは同じかまたは異なる材料を含むことができる。
【0105】
外側表面(例えば、単一のコンポーネントまたはシェルの)は、多孔質コーティングを含むことができる。多孔質コーティングは、(真空または非真空)プラズマスプレー金属(例えばチタン)コーティングにより構成することができる。多孔質コーティングの適用に先立って、外側表面を彫って一連の突出部(例えばスパイク)および/または刻み目(例えば孔)を創り出すことができる。これは、公知のレーザまたは電子ビーム彫刻技法の使用、(例えば先端の尖った表面を用いた)キャスティング、表面の鍛造、または表面の機械加工により達成することができる。他の実施形態において、多孔質コーティングは、焼結により形成することができ、または別途に形成した後にカップの外側表面に取り付けることができる(例えば接着または溶接に適した製作所において)。さらなる実施形態において、多孔質コーティングは、カップの外側表面と一体で形成することができる(例えば、蝋型技法を使用することによりその外側表面に一体型の格子(integral lattice)を有するシェルをキャストする)。
【0106】
内側表面の中心(即ち、関節の中心)は、外側表面の外の方におよび/またはその下方にずらすことができる。
【0107】
内側表面は、外方向に3.5mmだけずらして所定の(即ち意図した)摩耗ゾーンで厚さを増すことができる。
【0108】
他の実施形態においては、内側表面は、外方向に7mmだけおよび下方に2mmだけずらすことができる。56mmの外径を有するカップにおいて、このずれは、54mm内径を提供し、標準的な直径50mmの骨頭(通常56mm外径カップで使用されるはずのもの。伝統的にそのようなカップの内径は直径50mmの骨頭にのみ適合するため)ではなく直径54mmの大腿骨頭の使用を可能にするであろう。
【0109】
所定の摩耗ゾーンはカップのほぼ中心に位置することもできるが、カップの内側表面の極領域および/または上方領域付近に位置する方が普通であることは理解されるであろう。
【0110】
カップは、その外側表面に一つまたは複数の強化リブ(rib)を含むことができる。強化リブは、カップの外周エッジに隣接する領域に配置することができる。強化リブは外側表面の極部に向かって縦方向に伸びることができる。強化リブは、極部の手前で、例えば、カップの厚さが所定の値に達したときに止まることができる。
【0111】
外側表面が多孔質コーティングを含む実施形態において、強化リブは、成形具にぶつかるように備えることができ、したがってリブの間の多孔質コーティングのつぶれを防止する。
【0112】
本発明の第5、第6のおよび第8から第15までの態様に関して記載した種々の特徴は、本発明の第7の態様に関して上に記載した特徴のいずれかと組み合わせることが可能であり、その逆も成り立つことは理解されるであろう。
【0113】
本発明の第8の態様により、ポリマーの内側ライナーの中心が金属の外側シェルに対してずれていて所定の摩耗ゾーンにおける増大したカップ厚さを許容し、且つカップの下方エッジに切り欠きが設けられて内側ライナーのずれを補償する、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを含む寛骨臼カップ補綴物が提供される。
【0114】
従来の股関節置換においては、寛骨臼コンポーネントの厚さに制約がない。寛骨臼コンポーネントは、所定の場所にプレス嵌めされて、大腿骨頭および大腿頸部の一部が切除されるので、補綴物の大腿骨頭は生来の大腿骨頭の直径よりはるかに小さい直径で使用される。典型的には、これは、そのような寛骨臼コンポーネントの外径と内径との間に約18mmの差を生ずるであろう(例えばカップはその外周エッジ付近に約9mmの厚さを有することがある)。しかしながら、股関節面再建術の目的は、表面層のみを置き換えることによりできるだけ多くの骨を保存することである。そのため、外径と内径の差をもっと小さくすることが望ましく、本発明の出願人は、骨を保存し、同時に耐久力のある股関節面再建術カップの挿入を許容するためのある状況においては、約6mmの差が最適であり得ると考える。
【0115】
内径と外径の差を約6mmにするために(例えば、外径50mmの骨頭で使用するのに外径56mmのカップを許容するために)、厚さ1mmの金属シェルおよび厚さ2mmのポリマーライナーを有し、したがってカップの全厚さが全面で3mmになるカップを設計することは可能である。しかしながら、本出願人は、所定の摩耗ゾーンにおいて(即ち、大腿骨頭から最大圧力を受けると考えられる領域において)ポリマーが2mmしかないということは、この領域においてポリマーが受ける高い内部応力により層間剥離および摩耗が起こるので、理想的ではないことを見出した。そのため、本出願人は、骨をそれ以上除去する必要なしにカップの厚さを増すことができるように、ポリマーライナーの中心をずらすこと(即ちオフセット)を提案する。
【0116】
内側ライナーの中心(即ち、関節の中心)は、金属シェルの外方向におよび/またはその下方にずらすことができる。
【0117】
一様な1mmの厚さの金属シェルを有する半球形のカップ(即ち、切り欠きがない)の場合を考慮すれば、カップの上方の面で4mm以上のポリマーを提供するように(1mmの金属シェルに加えて)内側ライナーの中心がずれた場合、内側と外径との差を6mmに保つことを望めば、カップの背中合わせの下方エッジでポリマーを少しでも提供することは(1mm金属シェルに加えて)可能でないことに気づくであろう。したがって、本出願人は、カップの下方エッジに切り欠きを入れてこの問題をなくし、最高の摩耗領域における最高のカップ厚さを可能にしながら、一方で金属およびポリマーの最小厚さがカップの全表面にわたって提供されることを確実にすることを提案する。それに加えて、切り欠きは、外科医がカップを正しい位置に置くことを助ける(例えばカップが上下逆さに挿入されないことを確実にする)。
【0118】
上記事項に照らして、1mmの厚さの金属シェルに、所定の(即ち意図した)摩耗ゾーンで厚さが4mmおよび下方エッジで厚さが1mmのポリマーライナーを提供するように、内側ライナーをずらすことができる。
所定の摩耗ゾーンはカップのほぼ中心に位置することもあるが、内側ライナーの極領域の付近および/またはカップの上方の領域に位置する方が普通であることは理解されるであろう。
【0119】
ある実施形態において、金属シェルは、所定の摩耗ゾーンに隣接する領域においてその下方エッジより厚くすることができる。例えば、金属シェルは、この領域において2から4mmの厚さの内方向に出っ張る隆起(例えば凸面受け皿の形態)を含むことができる。この構造の利点は、下でより詳細に説明するように、追加の金属が極領域において強度および剛性を向上させること、さらに、それがカップの外側表面に固定手段を取り付けることおよび/または支持することをを可能にすることである。カップの極部でシェルを厚くするさらなる利点は、補綴物の関節の回転中心が横方向におよび従来の股関節面再建術補綴物のカップで普通に観察されるより正常に近い位置にずれることである。
【0120】
金属の厚さが所定の摩耗ゾーンに隣接する領域において増大する実施形態において、ポリマーライナーの厚さは、同じ領域で減少してもしなくてもよく、それは外側と内径との所望の差を、両方の場合とも関節表面の横方向のずれを考慮に入れて維持することができるからであることは注目されるであろう。
【0121】
金属シェルは、カップの全外周エッジの付近で薄く(例えば1mmの厚さ)することができる。
【0122】
金属シェルは、その外側表面に一つまたは複数の強化リブを備えることができる。強化リブは、カップの外周エッジに隣接する領域に配置することができる。強化リブは、シェルの極部に向かって縦方向に伸びることができる。強化リブは、極部の手前、例えば、金属および/またはポリマーライナーの厚さが所定の値に達したときに止まることができる。
【0123】
ある実施形態において、カップの外側表面は、多孔質コーティングを含むことができるので、強化リブが成形具にぶつかるように備えることができ、したがってリブの間の多孔質コーティングのつぶれを防止することができる。
金属シェルは、面取りしたエッジを含むことができる。面取りしたエッジは、内方向に傾くことができる。この特徴は、所望の内径を維持しながら、カップのエッジの付近のポリマーライナーの厚さを最大化することに役立つ。
【0124】
ポリマーライナーは、丸めたエッジを有し得る。丸めたエッジは、金属シェルのエッジの上に広がり得、鋭い金属エッジが患者または外科医に露出しないこと、および、特に、望ましくない亜脱臼または脱臼の起こったときに鋭いエッジが大腿骨頭を掻爬するこを防止することを確実にする。
【0125】
あるいは、ポリマーライナーは、外径が金属シェルと等しい金属シェルのエッジを超えて広がることができて、連続的な広がりを提供する。ポリマーライナーのエッジは、外方向に傾斜することができて、関節表面積を最大化する。
【0126】
本発明の第8の態様に関して上に記載した種々の特徴は、本発明の第5から第7までの態様に関して記載した特徴のいずれかと組み合わせることができ、逆も成り立つことは理解されるであろう。
【0127】
本発明の第9の態様により、ポリマーライナーからまたはそれを通して突き出た、患者にカップを挿入するために構成された導入器にカップを取り付けるための取り付け手段を備えた、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを含む寛骨臼カップ補綴物が提供される。
【0128】
本発明のこの態様の利点は、いかなるコンポーネントも最初に(正しく)取り付ける必要はなく、カップを取り扱って定置するために、取り付け手段を容易に利用することができることである。それに加えて、取り付け手段がポリマーライナーからまたはそれを通して突き出ているという事実は、それらが金属シェルの湾曲した外側表面から突き出ることはできないことを意味する。したがって、それらは寛骨臼の用意された骨中におけるカップの配置に干渉しない。換言すれば、寛骨臼は、カップの外側シェルのサイズおよび形状を考慮に入れるだけで、正常なものとして用意することができる。取り付け手段を適応させるために切り欠きを追加する必要はない。さらに、取り付け手段の周囲のポリマーは、導入器が取り付けられたときにカップと導入器の間の境界面でクッションとして役立つことができる。
【0129】
取り付け手段は、ポリマーライナーの角から、または角を通して、突き出ていてもよい。取り付け手段は、角からまたはそれを通して角の面に一般的に垂直な方向に突き出ることができる。ある実施形態において、取り付け手段は、カップの中心に向かって内方向に傾斜または湾曲することができる。例えば、取り付け手段は、角からまたはそれを通して垂直方向から内方向に例えば、5、10、または20度の角度で突き出ることができる。あるいは、取り付け手段は、湾曲したポリマーライナーの内側表面からまたはそれを通して突き出ていてもよい。
【0130】
取り付け手段は、ポリマーライナーと一体化した部分として(例えば注入または圧縮成形により)形成することができる。
【0131】
あるいは、取り付け手段は、金属シェルの一体化した部分として形成することができる。この場合、ポリマーライナーは、そこから取り付け手段が突き出るように取り付け手段の付近に成形することができる。
【0132】
ある実施形態において、取り付け手段は、金属またはポリマーライナーに、溶融によりまたは接着によりまたは小さいループなどの機械的手段により接合することができる。
【0133】
取り付け手段は、第1の末端および第2の末端がカップに固定された一つまたは複数のループを含むことができる。ループは、それらの第1のおよび第2の末端が、これらの接合をより強く支持し得るよう最も太くてもよい。ある実施形態においては、カップの各サイドに一つずつ、2つのループが提供される。ループは、ポリマーライナーと一体成形することができる。カップを患者に挿入後、(例えば第1のおよび第2の末端をポリマーライナーから切り離すことにより)ループを除去してポリマーライナーを比較的平坦、平滑な表面で残す。
【0134】
取り付け手段は、鋸歯状の表面を有する一つまたは複数の突出を含んでもよい。あるいは、取り付け手段は、鋸歯状の表面に嵌まり込むように構成されたデバイスを有する一つまたは複数の突出を含むことができる。デバイスは、隣接する2つの鋸歯状の刻み目の間に位置するように配列した峰を有する開口部を含むことができる。デバイスは、(鋸歯状の表面がその中に挿入されることを可能にするように)鋸歯状の表面を容易に受け入れつつ鋸歯状の表面がそのグラスプから外れることを防止するように構成することができる。
【0135】
換言すれば、デバイスは、鋸歯状の表面がそれを通して一方向に通過することを可能にするが、鋸歯状の表面がそれを通して反対方向に通過することを防止するように構成することができる。したがって、これらの実施形態における取り付け手段は、ケーブルの結び目の形態をとることができ、鋸歯状の表面または鋸歯状の表面に嵌まるデバイスのいずれかが取り付け手段としてカップ上に設けられ、および他の鋸歯状の表面または鋸歯状の表面に嵌まるデバイスが導入器に設けられる。
【0136】
さらなる実施形態において、取り付け手段は、一つまたは複数の突出部を含むことができる。突出部は、指またはストラップの形態であってよい。突出部は平滑な外側表面を有することもできる。この場合、導入器は、突出部の上でグリップするためのグリップ手段を含み得る。グリップ手段は、突出部中にくい込むように配列した歯を有し得る。
【0137】
取り付け手段は、一つまたは複数のロッドを含んでもよい。ロッドは、その自由末端に導入器がグリップするために構成された拡大部分を備えることができる。拡大部分は球形であってもよい。ある実施形態において、拡大部分は、一般的に円錐形であり、ロッドの自由末端のその先端で向きを合わせることができる。ある実施形態においては、拡大部分は、先端が全てロッドの自由末端に向かう積み重なった2つ以上の円錐形部分を含むことができる。ロッドは、内側および外側シェルに対するロッドの回転がロッドに頸部で剪断変形を受けさせるように構成された頸部を含むことができる。ある実施形態においては、ロッドは、ポリマーライナーの延長であってもよく、この場合、頸部の位置は各ロッドの基部に近くにすることができる。他の実施形態において、ロッドは金属シェルの延長であってもよく、この場合、頸部の位置はそれを通過して延びているポリマーライナーの高さより下にあり得る。この実施形態は、カップが挿入された後に残る金属ロッドの部分による損傷からポリマーライナーが周囲の組織を保護することに役立つことができるので、特に有利である。
【0138】
本発明の第5から第8の態様に関する上記の種々の特徴は、本発明の第9の態様に関する上記の特徴のいずれかと組み合わせることができ、逆も成り立つことは理解されるであろう。
本発明の第10の態様により、前記寛骨臼カップの内側を満たすように構成された膨れた外側表面を含む、寛骨臼カップ補綴物のためのインパクターカップ、およびカップの外側エッジの付近に広がって、前記膨れた表面がカップ内側を満たしたときにその上に落ち着くように構成されたフランジが提供される。
【0139】
本発明のこの態様は、寛骨臼カップとぴったり完全に噛み合い、カップに強度を付与することに役立ち、その結果、用意された患者の骨に押し込まれるときに変形し難いことが期待されるデバイスを提供する。カップの骨中においては隙間のない、安定した嵌合を有することが望ましいため、外科医がハンマーまたは同様な道具でカップを所定の場所に叩き込むことは普通である。しかしながら、股関節面再建術の場合には、壁の薄いカップを使用することが普通であり、そのため、そのようなカップを直接叩いて挿入することは、カップを損傷および/または変形させる可能性が高いことが理解されるであろう。本発明のこの態様は、このリスクを最小化することに役立つ。
【0140】
インパクターカップは、カップに対して特定の一方向に差し出された場合のみ、カップ中に完全に挿入することが可能であるように構成することができる。これは、外科医がカップを患者中に正しい方向付けで挿入することを確実にすることに役立ち得る。
【0141】
ある実施形態においては、寛骨臼カップ補綴物には、下方の切り欠きが設けられ、インパクターカップのフランジは、そのため、前記切り欠きを含むように形づくられるであろう。
【0142】
位置選定手段は、導入器をインパクターカップに取り付けるために提供することができる。位置選定手段は、それがインパクターカップ(およびそのためカップ)に対して特定の一方向に差し出された場合のみ、インパクターカップに正しく取り付けることが可能であるように構成することができる。
【0143】
ある実施形態において、位置選定手段は、回転が束縛された凹所により構成することができる。他の実施形態において、位置選定手段は、回転が束縛された突出部により構成することができる。
【0144】
本発明の第11の態様により、一方向でのみカップと噛み合うように構成されたカップと噛み合うための噛み合わせ手段、カップを導入器にしっかり固定するためのグリップ手段、および挿入のためにカップの位置を操作するための取っ手を備える、寛骨臼カップ補綴物のための導入器が提供される。
【0145】
カップが不適当に挿入されることは珍しくないので、上記のように、本発明のこの態様は、外科医がカップを患者に正しい方向で挿入することを確実にすることに役立つ。
【0146】
噛み合わせ手段は、上で規定したものなどのカップまたはインパクターカップの、連携して束縛されている部分で位置選定するために構成された、回転が束縛された凹所または突出部により構成することができる。
【0147】
ある実施形態においては、噛み合わせ手段は、本発明の第10の態様の実施形態によるインパクターカップにより構成することができる。換言すれば、インパクターカップは、導入器の一体化した部分(an integral part of the introducer)を形成することができる。
【0148】
グリップ手段は、本発明の第9の態様に関して上で規定したものなどのカップの取り付け手段と共働するように構成することができる。したがって、グリップ手段は、一つまたは複数のフック、クランプ、鋸歯状の表面を有する突出部または鋸歯状の表面に嵌まるデバイスを含むことができる。グリップ手段は、カップを導入器にさらにしっかり固定するように、取り付け手段上のグリップを締めるための張力をかける手段をさらに含むことができる。
【0149】
取っ手は、カップを所定位置に挿入するときに、患者の体の一部分の周りを案内するキンクを含むことができる。カップ、インパクターカップおよび導入器が全て一緒に固定されている場合、外科医がカップを上下逆さに挿入することは可能でなく、それは導入器の取っ手中のキンクが物理的にそれを防止するからであることは理解されるであろう。取っ手は、ハンマーまたは同様な道具でカップを所定の位置に叩き込むのに適した末端を備えることができる。末端は、カップの極部の軸に垂直であるように配置して、それにかける力をカップの軸を通して伝達することができる。カップの内径がカップの外径に対してずれる場合、この例では、カップの軸は、カップの外側表面に関するものとする。
【0150】
本発明の第12の態様により、初期固定を助けるための粗な外側を備える外側表面、成長中の骨のための多孔質構造、および骨が表面に固着することを可能にする複数の陥凹部を有する補綴物が提供される。
【0151】
股関節面再建術のために必要なものなど壁の薄い寛骨臼カップ補綴物の場合、伝統的な、強引な(例えば2mm押し分けの)プレス嵌め技法は、カップの壁がこの例で適用される圧縮力に耐えるほど強くないので、不適当であることが見出されている。したがって、カップを所定の位置に固定するために、他の機構を使用することが必要である。
【0152】
本発明のこの態様は、骨床における良好な初期固定を提供することができる粗な(例えば鋭いエッジの付いた)外側表面を含み、生体に受容され骨が補綴物の表面および陥凹部の上および内に成長することを可能にする多孔質構造を含むことにより、補綴物のための適当な固定手段を提供し、その結果、成長中の骨がこれらの領域中に広がってインプラント上の機械的固着を強化することができる。
【0153】
多孔質の外側表面を設けることは、補綴物の固定を助けるために以前に使用されたことがある一つの技法である。そのような多孔質表面は、補綴物のワックス/ポリマーの複製の表面にワックス/ポリマーのビーズを接着して、生じたワックス/ポリマーの複製の付近に固体セラミックのケースを創り、ワックス/ポリマーを溶融してセラミックから除去し、生じた空洞中に溶融金属を注入し、溶融金属を固化させて次にセラミックのケースを壊し(かつ金属の陥凹部中のセラミックを該材料を強アルカリ中で浸出させることにより溶解し)、ビーズの付いた外側表面を有する固体金属インプラントを解放する、いわゆる蝋型法を使用することにより得られていた。そのようなビーズ付き表面は、成長中の骨が(時が経つにつれて)隣接するビーズ間に侵入して補綴物上に付い固着し得ることが見出されているが、事実として、ビーズは一般的に球形であり、そのため挿入手段上の周囲の骨と単一の平滑な接触点しか有しないので、インプラントを所定の場所に保持する摩擦抵抗が不足である。本発明のこの態様は、補綴物と周囲の骨との間の摩擦抵抗を増してインプラントの初期固定に役立つ粗な(例えば鋭い)表面を含むことにより、この問題に対応する。
【0154】
多孔質表面を創り出す既知の代替法は、スポンジ様構造の層(例えば厚さ2mmの網状ポリウレタンフォーム片)を補綴物のワックス/ポリマー複製に接着し、上記の蝋型法を使用して成長中の骨のためにスポンジ様表面層を有する金属キャスティングを創り出すことを含む。しかしながら、この技法では、スポンジ様構造が少なくとも2mmの厚さを有し構造の完全性を提供することが必要である。その結果として、補綴物の固体金属の厚さがそのような厚い多孔質層に適応するようにより薄く作製されることが必要とされ、それにより全体として金属構造が弱くなる。それに加えて、スポンジ様構造の相互連結「繊維」が比較的細くなることがあり、溶融金属の充填が不完全な領域が生じてその結果多孔質コーティングに欠陥が生ずることが観察されている。この問題を回避するために、溶融金属は、溶融温度を上げることにより、通常より粘稠度を下げなければならない。しかしながら、この温度上昇の欠点は、生じた鋳造金属の粒子サイズが大きくなり、それが材料を弱めて使用中に疲労故障および破断に至り得ることである。そのためこれらの問題を改善することが本発明の目的である。
【0155】
本発明のこの態様の多孔質構造は、電子ビームまたは粉末化した金属(例えばチタン、チタン合金またはコバルトクロム)のレーザ焼結により形成することができる。これらの技法は、本質的に層中に構造を造り、顕微鏡的サイズを有する形体を形成するために使用することができる。
【0156】
あるいは、本発明のこの態様の多孔質構造は、金属の蝋型キャスティングまたは遠心キャスティングを使用して形成することができる。そのようなキャスティング技法は、上記の焼結技法よりも、大規模製造における費用効果が優れ得る。
【0157】
多孔質構造は、格子により構成することができる。格子という用語は、本明細書全体を通じて、それらの間に間隙を含む一連の相互連結または接触部を表すために使用することは理解されるであろう。格子は相互連結した成分の反復パターンとして形成することができる。この実施形態は、全面で同様な性質を有する均質な表面を提供する利点を有する。そのため、これで、上記のような、先行技術の補綴物で遭遇する不利点、例えば、金属キャスティングを形成するために離散的なワックス/ポリマービーズが補綴物のワックス/ポリマー複製に個々に接着することが必要とされ、そのため、ビーズ付き表面の均質性がビーズを適用する人の技量に依存するなどの不利点が克服される。それに加えて、格子の相互接続または接触構造は、曲げに対する機械的耐性を付与しそれにより補綴物の強度を増強することができる。これは、少なくともカップの外周エッジの壁厚が約lmmの股関節面再建術カップなどの壁の薄いコンポーネントで使用するときに特に有利である。
【0158】
ある実施形態において、格子の厚さは0.25〜1mm、例えば、0.5mmであってよい。格子が比較的薄いという特性は、補綴物の本体の価値ある構造の支持厚さが多孔質構造を収容するために犠牲にされる必要がないことを確実にするのに役立つであろう。
【0159】
格子は、補綴物の外側表面から放射状に伸びて一連の相互連結するブリッジ要素を支持する複数の杭を含むことができる。各々異なった横向きの断面を有する2つ以上タイプの杭を提供することができる。ある実施形態においては、杭の第1のセットは、円形断面を有し、杭の第2のセットは複数のローブの断面(例えば三つ葉型断面)を有することができる。杭の第1のセット中の各杭は複数のブリッジ要素の接合端を支持するように配列することができる。ある実施形態においては、杭の第1のセット中の各杭は、6つのブリッジ要素の接合端を支持するように配列することができる。各ブリッジ要素は、第1の杭から杭第2のセットの一つのローブに放射状に伸びることができる。杭の第2のセットの各々は、一つがそのローブの各々から伸びている複数のブリッジ要素の接合端を支持するように配列することができる。したがって、各円形杭が6つのブリッジ要素を支持し、ローブの付いた各杭が3つのブリッジ要素を支持する実施形態においては、ブリッジ要素間に形成する4片のダイヤ型の間隙(即ち空洞)のあるモザイクパターン(tessellating pattern)が創り出される。格子は、ダイヤ型の孔が、0.1から1.0mm、例えば、0.5mmの幅を有し得るように構成することができる。しかしながら、本発明の前記態様により、多くの異なった格子の構成を考えることができることは理解されるであろう。
【0160】
上記の支持された格子構造は、成長中の骨がブリッジ要素間の間隙(例えばダイヤ型の孔)を通るだけでなく、杭間のブリッジ要素の下の領域に陥凹部を提供し、骨がその中に成長して所定の場所にインプラントを機械的に固定することができることは理解されるであろう。
【0161】
上記の格子構造は、柔軟なプラスチックで射出成形することができ、その後で杭を補綴物のワックス/ポリマー複製の外側表面に接着した。次に上記の蝋型法を使用して、金属が杭を通って流れてブリッジ要素になり外側表面に格子を含む金属キャスティングを創ることができた。
【0162】
具体的実施形態において、杭は直径が0.5から1.5mm、例えば、1.0mmであってよい。これらの比較的幅の広い成分は、キャスティング工程中に、材料が格子中に容易に流れることを可能にして、鋳型の完全な充填を通常のキャスティング温度で(即ち、材料鋳物の弱体化を生ずる通常を超える溶融温度を必要とせずに)達成することができるであろう。
【0163】
ブリッジ要素は、比較的厚い断面(例えば、幅0.5から1.5mmおよび厚さ0.2から0.5mm)を上記と同じ理由で有することもできる。特定の実施形態において、ブリッジ要素は、0.7mmの幅および0.3mmの厚さを有することができる。
【0164】
粗な外側は、ブリッジ要素の外側表面に切り欠きを含むことにより格子上に設けることができる。例えば、複数の鋭いエッジがインプラントの初期固定のために骨に提供されるように、ダイヤ型またはピラミッド形の切り欠きを設けることができる。切り欠きは格子のための射出成形器中に所望の形状を含めることにより創り得る。
【0165】
あるいは、射出成形器にプラズマスプレーコーティングを適用するか、または射出成形器にサンドブラスティングを適用することにより、格子に、したがって最終成形インプラントに、粗な外側表面を与えることができる。
【0166】
他の実施形態において、格子は、複数の接触している頭を切られたビーズを含むことができる。ビーズの頭を切ることの利点は、用意された骨の空洞に対する初期接触のためにより大きい表面積が提供されることである。各ビーズは、その中心を通って水平に頭を切られ、その結果その最大の表面積を骨に提供することができる。各ビーズの頭を切られた表面は、約0.2mm〜2mmの直径を有し得る。
【0167】
各ビーズの頭を切られた表面には、複数のマイクロスパイクを設けて粗な外側を補綴物に提供することができる。これらのマイクロスパイクは、挿入時に骨のよりよいグリップを可能にして、それにより壁の薄いコンポーネントでの使用に不適当なプレス嵌め固定に対する必要性を減少するであろう。
【0168】
各マイクロスパイクは、約0.5mm以下の直径を有することができる。
【0169】
ある実施形態において、各ビーズには、3から50個のマイクロスパイク(各ビーズおよび各マイクロスパイクのサイズに応じて)を設けることができる。ある実施形態においては、各ビーズには7個のマイクロスパイクが設けられる。
【0170】
補綴物の外側表面は、金属で形成することができる。多孔質構造、陥凹部および粗な外側も、金属で形成することができ、且つ補綴物の外側表面と一体で形成することができる。
【0171】
補綴物は、寛骨臼カップとして構成することができる。寛骨臼カップは、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを備えることができ、その場合当該補綴物の外側表面は金属の外側シェルの外側表面により構成される。
【0172】
一体化した多孔質コーティングを含む金属シェルをキャストするための上記の方法に加えて、一体化した多孔質層を含むセラミック成形シェルを、バルクのインプラントおよび一体化した多孔質表面層を含むセラミックで鋳物が直接造られるバーチャルパターンキャスティング(Virtual Pattern Casting)により作製することも可能である。次に、該鋳物は遠心キャスティングを使用して(好ましくは圧力下で)充填することが可能であるが、他のキャスト法も場合によって使用することができる。
【0173】
本発明の実施形態において、(真空または非真空)プラズマスプレーされた金属(例えばチタン)コーティングを使用して、成長中の骨のための多孔質構造および/または陥凹部(金属粒子間の)を提供し、骨がその表面に固着することを可能にすることができる。しかしながら、そのようなコーティングは、(真空プラズマスプレーコーティングでは起こりにくいと考えられているものの)ずれる可能性があることが発見されており、またこの技法で真に粗な表面を得ることは困難である。したがって、ある実施形態において、本出願人は、補綴物の外側表面を彫刻を使用して(例えばレーザまたは電子ビーム)、比較的鋭くすることが可能であり、補綴物の初期固定に適した粗な表面を提供することができる複数のスパイクを創った後で、(真空または非真空)プラズマスプレーした金属コーティングを適用し、成長中の骨のための陥凹部および適当な孔のサイズを提供することを提案する。
【0174】
金属表面のレーザおよび電子ビーム彫刻は公知である(例えば、それらのいわゆるSurfi−Sculpt(登録商標)技法に関してThe Welding Institute(TWI)のウェブサイトに記載されているような)。本質的には、彫刻は、レーザ/電子ビームを使用して金属の小液滴を表面上で溶融することにより実施される。レーザ/電子ビームは、次に横向きの方向に(金属表面にほぼ平行に)少しの距離だけ動かして、金属の液滴を溶融プールから押し出し、固化するに任せて高さが約0.5mmであり得る突き出たスパイクにする。
【0175】
本発明の実施形態のさらなる利点は、プラズマスプレーの前にスパイクのある表面を創ることにより、スプレーした金属粒子の結合を改善することが可能なことであると考えられる。これは、通常の状況(即ちプラズマスプレーコーティングがスパイクなしで使用されるとき)では、補綴物が患者中にプレス嵌めされるときに金属粒子が剪断されて補綴物から離れることが普通であることが観察されているからである。しかしながら、スプレーコーティングの下に彫刻された(即ちスパイクを付けた)表面が存在することにより、以前は粒子のずれを引き起こした剪断力が圧縮力に変換されて粒子をはるかにずれにくくすると期待される。
本発明の第5から第11までの態様に関する種々の上記の特徴は、本発明の第12の態様に関する上記の特徴のいずれかと組み合わせることができ、逆も成り立つことは理解されるであろう。
【0176】
本発明の記載された態様のいずれかで規定された金属シェルの厚さは、シェル自体の厚さおよびそのシェル上に設けられた外側表面の厚さ(本発明の態様の多孔質構造、陥凹部および粗な外側を含む)の両方を含むと解することができる。
【0177】
金属の外側シェルの外側表面が本発明の前記態様により構成され、金属の外側シェルをポリマーの内側ライナーに取り付ける機械的手段は、金属シェルの内側表面に設けられて多孔質構造の固体部分中に及ぶ複数の球状陥凹部の形態にある、本発明の第6の態様のさらなる実施形態が予想される。したがって、ポリマーを取り付けるための球状陥凹部は、杭または上で定義した格子の多孔質構造のビーズ中に及ぶように構成することができる。この構成は、その完全性および強度を維持しながら金属シェルの厚さを最小化するのに特に有利である。
【0178】
本発明のこの態様の実施形態において、多孔質構造、陥凹部および粗な外側が補綴物の外側表面積全体にわたって広がらなくてもよいことは注目されるであろう。特に、固体金属のリムは、金属が最も薄いであろう金属シェルのエッジの付近に設けることができる。固体金属のこのリムは、シェルのエッジの付近で幅を変えることができる。特に、リムはシェルの上外側のエッジ(しばしば、上方のエッジまたは外側のエッジのいずれかで呼称される)の付近で最も広く(例えば3〜4mm)、およびシェルの下方のエッジの付近で最も狭く(例えばl〜2mm)することができる。この追加のリム幅は、(例えば40から45度の傾きで)カップの上外側のエッジを覆う骨を有しないことが普通なので、支持のために有利である。
【0179】
さらに、補綴物の外側表面は、多孔質構造が金属シェル内に含まれて、粗な外側が、粗な外側を含まない任意の部分、例えば上で定義したリムならびに本発明の第7および第8の態様に関して定義した強化リブなどと実質的に同一平面にあるように構成することができる。
【0180】
ある実施形態において、強化リブは、成形器具にぶつかってリブ間の多孔質構造をつぶすことを防止するために、カップの外側表面上に設けることができる。
【0181】
本発明のこの態様の補綴物は、股関節面再建術の大腿骨コンポーネント、または股関節全置換において使用する大腿骨ステムとして構成することができる。
【0182】
他の実施形態において、本発明のこの態様の補綴物は、膝置換術において使用する大腿骨コンポーネントまたは脛骨コンポーネントとして構成することができる。
【0183】
さらなる実施形態において、本発明のこの態様の補綴物は、肩、脊柱、肘、手首、指、踵または足指インプラントなどのセメントで結合されてない任意のインプラントとして構成することができる。
【0184】
本発明の第13の態様により、用意された骨空洞中に入り込むように構成された固定スパイクの配列を設けた外側表面を有する補綴物が提供される。
【0185】
固定スパイクは、2mm付近の深さにまで骨に入り込むように構成することができる。注意すべきこととして、スパイクを収容するように、それらの挿入に先立って骨空洞に孔が切り込まれていないことが望ましい。スパイクは、補綴物を詰め込むときだけ骨に入り込むように構成される。したがって、固定スパイクは、変形、特に壁の薄いコンポーネントの変形を引き起こし得る補綴物の強引なプレス嵌めの必要をなくす初期固定手段として機能し得る。
【0186】
前記配列は10〜500個の固定スパイク、例えば、100または200個を含むことができる。
【0187】
前記配列は、補綴物の外側表面に一体化された部分として形成することができる。
各固定スパイクは約2mmの高さを有することができる。幾つかの実施形態において、固定スパイクの高さは変化することができる。例えば、配列のエッジにある固定スパイクは、最小の高さ(例えば0.5mm)であってよく、固定スパイクの高さは配列の中心に向かって徐々に増加する。中心ではスパイクは2mmの高さであってよい。
【0188】
スパイクは、形状が鋭い点で終わる円錐形であることができる。
【0189】
補綴物は、寛骨臼カップとして構成することができる。寛骨臼カップは金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを備えることができて、補綴物の外側表面は金属の外側シェルの外側表面により構成される。
【0190】
該配列は、挿入に備えて方向付けしたときに、カップの最も近接の領域(患者の体に対して決まる)に位置することができる。したがって、詰め込むときにスパイクは骨に接触するカップの最初の部分であり、そのため、それらは、カップの残部が骨の空洞に接触する前に骨中に押し込まれて、いかなるそれ以上の侵入も防止することができる。
【0191】
各固定スパイクは、カップの下側から見たとき、カップの極部の軸に平行に、およびカップを骨に挿入する軸に平行に向くことができる。
【0192】
本発明の第5のから第12の態様に関する種々の上記の特徴は、本発明の第13の態様に関する上記の特徴のいずれかと組み合わせることができ、逆も成り立つことは理解されるであろう。
【0193】
金属の外側シェルの外側表面が本発明の前記態様により構成され、固定スパイクが金属シェルのより厚い領域(所定の摩耗ゾーンに隣接する)に設けられる、本発明の第8の態様のさらなる実施形態が予想される。
【0194】
本発明の第14の態様により、モジュールの止め釘を外側に取り付けるために構成された少なくとも一つの固定手段を設けた外側表面を有する補綴物が提供される。
【0195】
したがって、本発明のこの態様は、止め釘を補綴物にその外側から選択的に取り付ける手段を提供する。止め釘をカップの内側表面を通して差し込んで所定の位置に止め釘をねじ込むことにより、止め釘を寛骨臼カップなどの補綴物に提供することは公知である。しかしながら、本発明のこの態様の実施形態は、金属の外側シェルをポリマーの内側ライナーにメカニカルに接続した寛骨臼カップ補綴物の形態にあるので、止め釘を補綴物に取り付けることは、カップの内側からは可能でないことが予見される。
【0196】
補綴物から突き出た止め釘の存在は補綴物の最終的位置を限定し、そのため、止め釘を受け入れるように骨中に用意された孔が正しい位置にあることが重要であることは理解されるであろう。通常、止め釘に必要な任意の孔の位置は、カップのために創られた空洞が正しいサイズであることを確認するためにも使用されるテスト用寛骨臼カップなどのテスト用補綴物を使用して、決定されるであろう。一般的に、テスト用カップは骨空洞内にぴったり嵌まる(または非常に軽微なプレス嵌めがなされる)ように構成される。それらには平滑な外側表面も提供されるので、空洞から比較的容易に(即ち、大きい摩擦抵抗なしで)取り出すことができる。テスト用カップは、寛骨臼におけるきついプレス嵌め(tight press-fit)ではないので、トレールカップ(trail cup)をナビゲーションデバイスまたは位置合わせデバイス(本出願人の同時係属出願US−2008−0269757−A1に記載のものなど)に取り付けることが可能である。テスト用カップの正しい位置が得られたら、1本または複数の止め釘のための孔を穿つ。これらの孔が、完成したカップでの位置合わせまたはナビゲーションデバイスの使用を必要とせずに、完成したインプラント上の止め釘を完璧な位置に達するように導く。
【0197】
空洞がテスト用カップに対してよく合っていることが決定されたら、外科医は、追加の固定のためにモジュールの止め釘が必要ではないことを決定することができるので、補綴物はモジュールの止め釘を取り付けずに挿入することができる。これは理想的な状況である。しかしながら、テスト用カップがそのような良好な適合を提供しないと判定された場合、外科医は追加固定が必要であると決定することができ、その場合、医師は、1本または複数のモジュールの止め釘を補綴物に取り付けて、トレールカップに設けた対応する孔を通して必要な孔を穿孔することを選択することができる。
【0198】
固定手段は、雌ねじ山を有する空洞により構成することができる。その場合、モジュールの止め釘は、相補性の雄ねじ山を有する基部を備えるであろう。空洞は閉末端を有し、補綴物の外側表面を通過して内部損傷を惹起する残骸または組織を防止することができる。内側のポリマーライナーが設けられるとき、閉末端は、この領域では薄いであろうポリマー層を支持することにも役立つであろう。それに加えて、閉末端は、骨溶解をもたらし得るポリマー残骸が、少しでも患者の寛骨臼の骨中に移行することを防止するであろう。
【0199】
モジュールの止め釘の必要がない場合、固定手段の空洞を実質的に満たすように充填物を提供することができる。充填物は、固定手段のねじ山と噛み合う雄ねじ山と、充填物を選択的に除去するための道具(ドライバーまたはAllenキーなど)の位置決めのためにその上部表面にある比較的小さい凹所を有する無頭ねじの形態であってよい。
【0200】
各モジュールの止め釘の形状は、丸めた先端で終わる円錐形であってもよい。
【0201】
モジュールの止め釘は、それらを固定手段に取り付けるときにグリップを助ける一つまたは複数の鋸歯形の刻みを含むことができる。
【0202】
特定の実施形態において、2つの固定手段およびモジュールの止め釘が提供される。
【0203】
補綴物は、寛骨臼カップとして構成することができる。寛骨臼カップは、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを備えることができ、ここで補綴物の外側表面は、金属の外側シェルの外側表面により構成される。
【0204】
モジュールの止め釘(したがって、それらの固定手段)は、挿入に備えて方向付けられたときにカップの(患者の体に対して決まる)最も近接した領域に位置することができる。
【0205】
モジュールの止め釘は、カップの外側表面に対して垂直方向に突き出ることができる。これは、モジュールの止め釘を固定手段にしっかり固定するためのカップの(例えば、カップの金属シェルの)最大厚さを許容することにおいて有利である。しかしながら、2本以上の止め釘がカップのカーブした表面に垂直の方向に出ている場合、それらが効果的に散開して用意された骨中への挿入をなすことは、止め釘の外側母線が平行であるかまたは収束するかのいずれかでない限り、不可能であることは理解されるであろう。したがって、円錐形の止め釘を、挿入の容易さから使用することができる。
【0206】
2本の円錐形モジュールの止め釘が設けられている場合、それらはそれらの外側エッジの各々が平行であるかまたは収束するように構成することができる。この場合、円錐の形状は、たとえ止め釘が(例えば下方のエッジから見たときに)発散する長軸を有していても、カップ(およびそのため止め釘)が、直線で挿入可能であることを意味する。
【0207】
本発明の第5から第13の態様に関する種々の上記の特徴は、本発明の第14の態様に関する上記の特徴のいずれかと組み合わせることができ、逆も成り立つことは理解されるであろう。
【0208】
金属の外側シェルの外側表面が本発明の前記態様により構成され且つモジュールの止め釘が金属シェルのより厚い領域(所定の摩耗ゾーンに隣接する)に設けられる、本発明の第8の態様のさらなる実施形態が予想される。
【0209】
本発明の第15の態様により、少なくとも一つの永久的止め釘が差し込まれた外側表面を有する補綴物が提供される。
【0210】
したがって、本発明のこの態様は、その外側表面に永久的に固定された止め釘を有する補綴物を提供する。このことは本発明において可能であり、それは、テスト用カップが止め釘(単数または複数)の正確な位置を決定するのに使用されるので、トレールカップを用いて正しい位置に創られた孔に入る止め釘(単数または複数)の位置は、さらなる位置合わせを必要とせずに、補綴物を正しい位置に導くであろうことが予見されるためである。
【0211】
少なくとも1本の止め釘を、補綴物の他の部分とは別個に形成した上でそれに(例えば、接着または溶接により)永久的に固定することができる。あるいは、少なくとも1本の止め釘は、補綴物と一体で形成することができる。
各止め釘の形状は、丸めた先端で止まる円錐形であってもよい。
【0212】
特定の実施形態においては2本の止め釘が設けられる。
【0213】
補綴物は、寛骨臼カップとして構成することができる。寛骨臼カップは、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを備えることができ、ここで補綴物の外側表面は金属の外側シェルの外側表面により構成される。
【0214】
少なくとも1本の止め釘が、挿入に備えて方向付けされたときにカップの(患者の体に対して決まる)最も近接した領域に位置することができる。
【0215】
少なくとも1本の止め釘が、カップの外側表面に垂直の方向に突き出ることができる。これは、固定手段に止め釘をしっかり固定するためのカップの(例えばカップの金属シェルの)最大の厚さを可能にする点で有利である。しかしながら、2本以上の止め釘がカップのカーブした表面に垂直の方向に出ている場合、それらは事実上発散して、用意された骨中への挿入をなすことは、止め釘の外側母線が平行であるかまたは収束するかのいずれかでない限り不可能であることは理解されるであろう。したがって、円錐形の止め釘を、挿入の容易さから使用することができる。
【0216】
2本の円錐形止め釘が設けられている場合、それらは、それらの外側エッジの各々が平行であるかまたは収束するかのいずれかであるように構成することができる。この場合、円錐の形状は、カップ(およびそのために止め釘)が、たとえ止め釘が(例えば、下方のエッジから見たときに)発散する長軸を有していても直線で挿入可能であることを意味する。
【0217】
本発明の第5から第13の態様に関する種々の上記の特徴は、本発明の第15の態様に関する上記の特徴のいずれかと組み合わせることができ、逆も成り立つことは理解されるであろう。
【0218】
金属の外側シェルの外側表面が本発明の前記態様により構成されて、少なくとも1本の止め釘が金属シェルのより厚い(所定の摩耗ゾーンに隣接する)領域に設けられている、本発明の第8の態様のさらなる実施形態が予想される。
【図面の簡単な説明】
【0219】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図1】図1は、比較的薄い金属の外側シェルおよび比較的厚いポリマーの内側ライナーを有する、提案される寛骨臼カップ補綴物の断面を図式的に例示する。
【図2】図2は、図1と同様であるが、ポリマーの内側ライナーの中心が金属の外側シェルに対してずれることで、所定の摩耗ゾーンにおいてカップ厚さが増大している、本発明の第1の実施形態に従う図を示す。
【図3】図3は、図2と同様であるが、内側ライナーのずれを補償するために、カップの下方エッジに切り欠きを設けた図を示す。
【図4】図4は、図3と同様であるが、ポリマーライナーの関節のベアリング表面の所定の摩耗ゾーンに架橋ポリマーの接着部材を設けた図を示す。
【図5】図5は、図4と同様であるが、架橋ポリマーの接着部材を設けたポリマーライナーの部分と架橋ポリマーの接着部材を設けていない部分との間に互いに入り込んだ境界面がある図を示す。
【図6A】図6Aは、本発明の他の実施形態によるインパクターを嵌め込んだ、本発明の一実施形態による寛骨臼カップ補綴物の第1の側からの透視図を示す。
【図6B】図6Bは、図6Aの寛骨臼カップおよびインパクターカップの側方の立面図を示す。
【図6C】図6Cは、図6Aの寛骨臼カップおよびインパクターカップの第2の側からの部分透視図を示す。
【図6D】図6Dは、図6Aの寛骨臼カップおよびインパクターカップの部分透視図を示し、カップエッジおよび導入器取り付けループの最初の部分の精密な観察を示す。
【図7】図7は、インパクターカップなしで、図6Aから6Dまでに示した寛骨臼カップの部分透視図を示しており、1本の導入器取り付けループの基部を詳細に示す。
【図8】図8は、鋸歯状の導入器取り付け要素を含む、さらなる本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物の側面部分の透視図を示す。
【図9】図9は、図8と同様であるが、カップに嵌め込んだインパクターカップ付きの図を示す。
【図10】図10は、突出した金属ロッドの形態を有する導入器取り付け要素を含む、他の本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物の金属シェルの側面部分透視図を示す。
【図11】図11は、図10と同様であるが、金属シェル中および金属ロッド付近に成形されたポリマーライナーを含む図を示す。
【図12】図12は、図11と同様であるが、カップに嵌め込まれたインパクターカップを含む図を示す。
【図13】図13は、図12と同様であるが、金属ロッドの末端に円錐形先端部分が付いたものの図を示す。
【図14A】図14Aは、図6A〜6D、9、12および13に示したインパクターカップの上部の透視図を示す。
【図14B】図14Bは、図14Aのインパクターカップの底面の透視図を示す。
【図14C】図14Cは、図14Aのインパクターカップの第1の側からの底面の透視図を示す。
【図14D】図14Dは、図14Aのインパクターカップの第2の側からの底面の透視図を示す。
【図15A】図15Aは、本発明の実施形態による導入器の透視図を示す。
【図15B】図15Bは、図15Aに示した導入器の末端の立面図を示す。
【図15C】図15Cは、図15Aに示した導入器の側方の立面図を示す。
【図15D】図15Dは、図14A〜Dに示したものなどのインパクターカップに取り付けるように構成された、図15Aに示した導入器の末端の部分透視図を示す。
【図16A】図16Aは、図6A〜Dに示したものと同様な寛骨臼カップ補綴物に提供された、図14A〜Dに示したものと同様なインパクターカップ中に挿入された図15A〜Dに示した導入器の側方の立面図を示す。
【図16B】図16Bは、寛骨臼カップをしっかり取り付けるために、導入器により張力をかけられた後の図16Aの装置を示す。
【図17】図17は、本発明の一実施形態による寛骨臼カップの外側部分の部分透視図を示す。
【図18】図18は、本発明の一実施形態による寛骨臼カップの外側表面の拡大した部分の図式的例示を示す。
【図19】図19は、本発明の実施形態の寛骨臼カップ補綴物の金属シェルの内側を示し、ポリマーの内側ライナーの機械的取り付け(mechanical attachment)のための切り欠きの分布を示す。
【図20】図20は、本発明の実施形態の寛骨臼カップ補綴物のエッジ部分の断面図を示す。金属の外側シェルの内側表面に設けられた球形の切り欠き中には、ポリマーの内側ライナーが機械的に取り付けられ、金属の外側シェルの外側表面上には、頭を切られた複数のビーズが含まれている。
【図21】図21は、図20の寛骨臼カップ上に設けられた頭を切られたビーズの拡大図を示す。
【図22】図22は、特定の本発明の実施形態による、内側表面からその中へ突き出る球形の切り欠きを有する頭を切られたビーズを図式的に例示する。
【図23】図23は、特定の本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物のエッジ部分の部分断面図を示す。金属の外側シェルの内側表面に設けられた球形の切り欠き中には、ポリマーの内側ライナーが機械的に取り付けられ、金属の外側シェルの外側表面には、頭を切られた複数のビーズが含まれ、その中に前記球形の切り欠きが突き出ている。しかしながら、断面がビーズの中点を通っていないので、それらはこの図では接触していないように見える。
【図24A】図24Aは、図17の寛骨臼カップのための金属シェルの外側表面の部分底面平面図を示し、これは骨床への初期の固定のためのモジュールの止め釘のための固定手段および固定スパイクを含むが、頭を切られたビーズはまだ含んでいない。
【図24B】図24Bは、図24Aに示したものと同様であるが、固定手段中に充填物が提供されている図を示す。
【図24C】図24Cは、図24Aのものと同様の、180°回転し、且つ固定手段に差し込んだモジュールの止め釘を示す図を示す。
【図25A】図25Aは、カップの下方末端からの立面図における図24Cの構成を示す。
【図25B】図25Bは、カップの上方の末端の中心の上から見た図24Cの構成を示す。
【図25C】図25Cは、カップの上方の末端の側の上から見た図24Cの構成を示す。
【図25D】図25Dは、カップの一方の側からの立面図における図24Cの構成を示す。
【図26】図26は、図24Cのモジュールの止め釘を通る部分断面図を示す。
【図27】図27は、図26に示したものと同様であるが、寛骨臼カップの、ポリマー取り付けのための内部切り欠きを含む金属シェル全体を示す断面図を示す。
【図28A】図28Aは、本発明の一実施形態の寛骨臼カップ補綴物などの補綴物の外側表面に取り付けるための多孔質格子構造の拡大底面平面図を示す。
【図28B】図28Bは、図28Aに示した格子構造の一部分のさらに拡大した透視図を示す。
【図29A】図29Aは、図28Aに示した格子構造の上部平面図を示す。
【図29B】図29Bは、図29Aに示した格子構造の一部分の拡大上部平面図を示す。
【図29C】図29Cは、図29Bに示した格子構造の一部分の拡大透視図を示す。
【図29D】図29Dは、図29Cに示した格子構造の第1の部分のさらに拡大した透視図を示す。
【図29E】図29Eは、図29Cに示した格子構造の第2の部分のさらに拡大した透視図を示す。および
【図30A】図30Aは、ポリマーライナーの第1層は成形された後であるが、カップの関節の表面層の一部分を形成する第2層がまだ成形されていない、本発明の一実施形態の寛骨臼カップ補綴物の透視図を示す。
【図30B】図30Bは、第1層中に第2層を成形して寛骨臼カップの関節の表面層の一部分を形成した後の図30Aのカップの透視図を示す。
【図31】図31は、ポリマーライナーの第2層(カップの関節の表面層の一部分を形成する)が、ポリマーライナーの第1層と別に成形されて、第2層を第1層中に挿入する直前の、さらなる本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物の透視図を示す。
【図32】図32は、ポリマーライナー(カップの関節の表面層全体を形成する)の第2層がポリマーライナーの第1層と別に成形されて、第2層を第1層中に挿入する直前の、他の本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物の透視図を示す。
【図33】図33は、標準的ポリマーコンポーネントの酸化レベルを本発明の実施形態に従って形成したものと比較するための3つの試験試料についてのバルク酸化指数(BOI)のグラフを示す。また
【図34A】図34Aは、内側表面の中心が外側表面に対してずれおり、且つ切り欠きを下方エッジに設けた、本発明の一実施形態の一体型寛骨臼カップ補綴物の側面透視図を示す。
【図34B】図34Bは、図34Aの一体型寛骨臼カップ補綴物を通る断面図を示す。
【図35A】図35Aは、本発明の一実施形態による、シェルのエッジのリムを通る一連の孔を示す金属の寛骨臼カップシェルを通る断面図を示す。
【図35B】図35Bは、断面が孔の一つを通して取られたことを示す、図35Bの金属シェルのエッジ部分の拡大図を示す。
【図36A】図36Aは、ポリマーライナーがその中に圧縮成形された後の図35Aおよび35Bのシェルの断面図を示す。
【図36B】図36Bは、金属シェル中の露出した孔を通って広がるポリマーライナーを示す、図36Aのカップのエッジ部分の拡大図を示す。
【図37A】図37Aは、本発明の一実施形態による、金属カップシェルの外側表面に創り出されたスパイクの拡大断面図を示す。および
【図37B】図37Bは、図37Aと同様であるが、真空プラズマスプレーの金属コーティングがスパイクのある表面に適用された後の図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0220】
図1を参照すると、比較的薄い(例えば1mm)半球形の金属の外側シェル12および同心性の比較的厚い(例えば2mm)半球形のポリマーの内側ライナー14を有する提案した寛骨臼カップ補綴物10の中央断面が例示されている。この場合、ポリマーの内側ライナーまたはシェル14は、接着剤により(図示せず)金属の外側シェル12の内側表面に接着される。各側で厚さが3mmのカップ10の内径と外径との差は6mmであることが注目されるであろう。
【0221】
そのような壁の薄い寛骨臼カップ補綴物は、股関節面再建術(その場合、インプラントを適応させるために最小量の骨しか除去されない)にとって望ましいが、伝統的な2mmプレス嵌め技法を使用するカップの挿入は、カップに対して制御されない歪みおよび損傷をもたらすことが提示されている。そのため、本発明の種々の態様は、この問題と取り組むことを目的とする。
【0222】
図2は、図1に示すものと同様であるが、ポリマーライナー24の中心が金属シェル22に対して外方向におよび下方に(即ち遠位におよび下方に)ずれた寛骨臼カップ補綴物20の中央断面を示す。これは、ポリマーライナー24が、一般的にカップ20の中心の少し下からカップ20の上外側のエッジ26に向かって広がる最高摩耗の領域に(即ち、意図した摩耗ゾーンに)おいてより厚くなるようにするものである。
【0223】
本発明の目的の一つは、できるだけ多くの骨を保存することなので、意図した摩耗ゾーンにおけるポリマーライナー24を厚くした結果として寛骨臼カップ20の内径と外径の差を大きくしないことが望ましい。したがって、提示したように、1mmの厚さの金属シェル22をそのままにしてポリマーライナー24をずらして上外側のエッジ26における厚さを4mmにすると、下方エッジ28における厚さがゼロのポリマーライナー24を生ずることがわかる。そのため、本出願人は、この問題を解消するためにカップ20の下方エッジ28に沿って切り欠き30を入れることを提案する。後で示す図で例示するように、切り欠き30はカップ20の一方の側から他方の側に伸びる円弧の形状である。切り欠き30は、適切な厚さのポリマーライナー24が金属シェル22の内側の関節表面を覆い、使用中における金属シェル22の摩耗を防止することを保証する。それに加えて、切り欠き30は、外科医にとって有用な基準点を提供し、(例えば、カップを上下逆さに挿入しないことを確実にするために)正しい配置のためのカップの方向付けに役立つ。
【0224】
図3は、本発明の実施形態によるカップ40を示す。カップ40は、図2に示したものと同様であるが、切り欠き30が下方のエッジ28から除去されている。それに加えて、カップ40の金属シェル22は内方向に斜めに面取りしたエッジ42を備え、且つポリマーライナー24は金属シェル22のエッジ42を覆って広がる丸めたエッジ44を備えて患者または外科医に曝される鋭いエッジがないことを保証する。さらに、金属エッジ42をポリマーエッジ44で覆い、使用時に、特に不注意による亜脱臼または脱臼の事象において、金属シェル22が大腿骨頭を掻爬することを防止することが有利である。
【0225】
図4は、他の本発明の実施形態によるカップ50を示す。カップ50は図3に示したものと同様であるが、ポリマーライナー24の所定の摩耗ゾーン52に架橋ポリマーの接着部材が設けられる。上で論じたように、摩耗ゾーン52はポリマーライナー24の最大厚さの領域に設けられ、その区域はカップの50の中心の少し下から一般的にカップ50の上外側のエッジ26に向かって広がる。例示したように、架橋ポリマーの接着部材は、厚さがその中心で最大であり、且つゆるやかに外方向に薄くなり、そのエッジで最小厚さになる部分的球形のディスクの形状でポリマーライナー24に入り込むことができる。カップ50の関節のベアリング表面の部分のみ(即ち摩耗ゾーンにおいて)架橋していて、ポリマーライナー24の表面の他の部分は架橋していないことが重要である。これは、従来のポリマー(この場合、ポリエチレン)の強度を、ポリマーライナー24の大部分にわたって、特に最も薄いおよびそのためポリマーライナー24のより脆弱な領域において維持することに役立ち、同時に、摩耗ゾーンが架橋した接着部材により改質されて摩耗のリスクが減少することを保証する。
【0226】
本発明の実施形態のカップ50のポリマーライナー24は、2%のビタミンEを含むポリエチレン粉末の第1層を冷圧縮してバルク層を形成し、0.2%未満のビタミンEを含むポリエチレン粉末の第2層を冷圧縮することにより摩耗ゾーンを形成することにより形成される。次に第1層と第2層の粉末は、熱圧縮成形により溶融され単一の固体コンポーネントに形成される。
【0227】
次に、コンポーネントを放射線照射して(約100kGyの吸収された放射線照射を提供して)第2層中の分子を架橋した。第1層中の分子はビタミンEの濃度がより高いので架橋が防止される。最後に、コンポーネントはその融点未満で加熱することによりアニールして第1層中のビタミンEが第2層中に拡散することを促進して、その中のフリーラジカルを消費し、それにより第2層の酸化リスクを最小化する。
【0228】
図5は、さらなる本発明の実施形態によるカップ60を示す。カップ60は、図4に示したものと同様であるが、摩耗ゾーン52とも称されるポリマーライナー24の架橋ポリマーの接着部材を設けた部分と架橋ポリマーの接着部材を含まない部分との間に設けられた互いに入り込んだ境界面62がある。互いに入り込んだ境界面62には、非架橋ポリマー中の対応する凹所に突き出る架橋ポリマー52の一連のスパイク64が設けられている。スパイク64の目的は、2つのタイプのポリマー間の急激な移行を解消して、ポリマーの2つの機械的性質の間の円滑な移行を提供し、それにより境界面62における層間剥離のリスクを減少させることである。
【0229】
カップ60のポリマーライナー24は、図4のカップ50に関して上で記載したのと同様な方法で形成することができる。しかしながら、今回、ポリマーの第1層を冷圧縮する工程は摩耗ゾーンの領域で第1層に凹所を型打ちすることを含み、ポリマーの第2層を冷圧縮する工程は、カップ60の関節表面の形状を型打ちする前に、第2層のために凹所を粉末で満たすことを含む。
【0230】
図6Aから6Dまでは、本発明の他の実施形態によるインパクターカップ72を嵌め込んだ特定の本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物70の種々の図を示す。寛骨臼カップ70は、図4に示したものと本質的に同様であるが、用意された骨空洞における固定を改良するために、金属シェル22の外側表面にさらなる特徴を有する。金属シェル22の外側表面は、図17にさらに明確に例示してあるので、後でより詳細に説明する。それに加えて、図6Aから6Dまでに示したカップ70は、ポリマーライナーのエッジ24から伸びる2本の比較的大きいポリマーループ74を含む。
これらのループ74は、患者にカップ70を挿入するために構成された導入器にカップ70を取り付けるための手段として構成されている。適当な導入器の幾つかの例を後で図15Aから15Dまでならびに図16AおよびBに示し、より詳細に説明する。
【0231】
図6Aから6Dまでに示した実施形態において、各ループ74は、ポリマーライナー24と一体で成形されている。それに加えて、各ループ74は、カップ70の下方末端28(即ち、切り欠きの領域に)に位置する第1の末端76、および背中合わせのカップ70の上外側の末端26に位置する第2の末端78を有する。注目すべきこととして、ループ74は、これらの接合をより強く支持するように、それらの第1のおよび第2の末端76、78で最も太い。
【0232】
カップ70を患者に挿入後、ループ74は、ポリマーライナー24を比較的平坦、平滑な表面で残すように、第1のおよび第2の末端76、78を切ることによりポリマーライナー24から除去することは理解されるであろう。
【0233】
図6Aから6Dまでのインパクターカップ72は、図14Aから14Dまでにより詳細に示してある。しかしながら、これらの図でわかるように、インパクターカップ72は、カップ70内に嵌め込むように設計されており、その周エッジ付近でポリマーライナー24のエッジ44に収まるように成形されているフランジ80を有する。したがって、インパクターカップ72は、カップ70の下方エッジ28における切り欠きを考慮に入れて成形されている。フランジは、ループ74の第1のおよび第2の末端76、78の各々の付近に一つずつ4つの半円形の切り欠き82も備え、ループ74がポリマーライナー24のエッジ44から外方向に突き出ることを可能にする。それに加えて、インパクターカップ72は、協働する突出部が凹所84で一つの向きでのみ受け入れられ得るように成形された凹所84の形態の位置選定手段を含む。この実施形態において、凹所84は、直線の側86および曲線の側88を含み、それらは一緒になって大文字Dの輪郭を形成する。下でより詳細に説明するように、凹所84は、外科医が導入器をカップ70に正しい方向でのみ取り付けることが可能であるように設けられる。
【0234】
図7は、インパクターカップ72を入れていないカップ70の一部分の拡大図を示す。より具体的に、図7は、この領域において増大した厚さを示す1本のループ74の第1の末端76の拡大図を示す。このように、この実施形態において、第1の末端76(および第2の末端78、図示せず)がその基部で最も太い円錐台形の形態を有することを見ることができる。
【0235】
図8は、ポリマーライナーのエッジ24から突き出た4つのポリマーバンド92の形態にある代替的取り付け手段を有する寛骨臼カップ補綴物90を示す。該バンドはポリマーライナー24と一体で形成されて、それらの自由末端に向かう鋸歯状の外側表面94を含む。鋸歯状の表面94の各々は鋸歯状の刻み目に嵌まり込むように構成されたデバイスで使用するように構成されており、伝統的な結束バンドの形態に非常に類似していることが理解されるであろう。鋸歯状の刻み目に嵌め込むためのデバイスは、カップ90で使用するように構成された導入器に設けられるであろう。デバイスは、鋸歯状の表面94が一方向にそれを通過することを許容するが、鋸歯状の表面94が反対方向に通過するのを防止するように構成されることが理想的である。前のように、カップ94が配置されると、バンド92はポリマーライナー24から切り取られて平滑な外側表面を残すであろう。
【0236】
図9は、上記のように、インパクターカップ72を嵌め込んだ図8のカップ90を示す。この図から、インパクターカップ72は、カップ90上にカップ90の下方エッジにある切り欠きに適応するフランジ80の角度に合わせて一方向にのみ嵌まり込むであろうことが明らかである。上記のように、フランジ80中の4つの半円形の切り欠き82は、取り付け手段(この場合バンド92)がポリマーライナー24のエッジ44から外方向に突き出ることを可能にする。
【0237】
他の本発明の実施形態によるさらなる寛骨臼カップ100におけるさらなる取り付け手段を、図10から12に示す。この場合、取り付け手段は、4本の金属ロッド102の形態にある。金属ロッド102は、図10に示すように金属シェル22と一体で形成することができる。各ロッド102は、その自由末端に据え付けた大きい球形のボール106を有するシャフト104を含む。ロッド102と金属シェル22との間の境界近くに、シャフト104の他の部分より細い頸部108が設けられている。頸部108は、カップ100が患者に挿入された後で、ロッド102を捻って頸部108を壊し、それによりロッド102のぶらさがった部分を除去することが可能になるように設けられている。図示していないが、カップ100は、球形のボール106をしっかりグリップしてそれによりカップ100をしっかり固定する導入器を用いて使用するように構成されていることが理解されるであろう。
【0238】
図10から金属シェル22の内側表面には複数の小さい球形の切り欠き(cut-out)110が設けられていることも理解されよう。これらは、図21Aを参照してさらに詳細に説明するように、ポリマーライナー24を金属シェル22に機械的に固定するために設けられている。
【0239】
図11は、図10のものと同様であるが、金属シェル22に取り付けたポリマーライナー24を有する図を示す。したがって、ポリマーライナー24は、ロッド102がポリマーライナー24から突き出るようにロッド102の基部の付近に形成されることを見ることができる。頸部108はポリマーライナー24の表面より下にあるので、ロッド102が除去されたときに、シャフト104の残存する部分がポリマーライナー24によりカプセル化されて、これらの部分により周囲の組織を損傷から保護することになることは注目すべきである。
【0240】
カップ100を図12にインパクターカップ72が嵌まった状態で示す。前の場合と同様に、フランジ80中の4つの半円形の切り欠き82により、取り付け手段(この場合ロッド102)がポリマーライナー24のエッジ44から外方向に突き出ることが可能になる。
【0241】
図13は、本発明の実施形態によるやはりインパクターカップ72が嵌まった他の寛骨臼カップ補綴物112を示す。この場合、取り付け手段は、図10から12に示したものと、各シャフト104の末端の球形のボール106が全体として円錐形構造114により置き換えられたことを除き同一である。円錐形構造114は、先端をロッドの自由末端102に向けて重ねた一連の3つの円錐形部分116で構成され、各円錐形部分116はロッドの自由末端102に向かってサイズが小さくなる。
【0242】
代替的実施形態においては、頸部108をロッド102に設けなくてもよく、ロッド102は、それらが除去されるときに、ポリマーライナー24の付近で簡単に切ることができる。
【0243】
図14Aから14Dまでは、図6Aに関して最初に紹介したインパクターカップ72の種々の図を示す。このように、インパクターカップ72が、その下側に、ポリマーライナー24の内側表面の形状に正確に合致するように成形された、大きい膨れた外側表面89を含むことを見ることができる。したがって、インパクターカップ72は、種々の本発明の実施形態により上記したような任意の壁の薄い寛骨臼カップの強度を増して、軽微なプレス嵌めが必要とされる場合でも、用意された骨空洞中にそれがしっかり固定されて、カップの形状を維持するのに役立つ。
【0244】
図15Aから15Dまでは、本発明の一実施形態による導入器120の種々の図を示す。導入器120は、上記のもの等の寛骨臼カップ中にインパクターカップ72が挿入されたときに、その凹所84中に嵌め込むように構成された突出部122の形態にある噛み合わせ手段を含む。したがって突出部122は、凹所84の直線の側86と噛み合うように構成された直線の側124、および凹所84の曲線の側88に噛み合うように構成された曲線の側126を有する。したがって、導入器120はインパクターカップ72を一方向に向けて取り付けることのみが可能である。上で説明したように、インパクターカップ72はそれ自体、一方向にだけカップに取り付けが可能であるので、カップが、患者中に正しい方向で挿入されるように、導入器120上に常に保持されることが確実となる。
【0245】
突出部122は、導入器120の、それ自体取っ手130の末端に据え付けられている頭部128から、張り出している。取っ手130には、挿入中における患者の体との衝突を避けるために屈曲部132が設けられている。取っ手130には、カップを所定の位置に押し込むためのハンマーまたは同様な道具で叩くのに適した末端136を有する円筒状グリップ134も設けてある。グリップはカップの軸と一直線に合わせられているので、末端136はそれらに直交し、カップの軸を通してそれにかかる力を伝達するように構成されている。
【0246】
導入器120も、カップの取り付け手段に嵌まってそれを導入器にしっかり固定するためのグリップして締める手段を備える。この手段は、図15AからDでは簡明にするために省略されているが、下記の図16AおよびBに示してある。
別の実施形態において、図示していないが、インパクターカップ72は導入器120の頭部122と一体で形成することができる。
【0247】
図16Aは、インパクターカップ72に挿入された導入器120の側方の立面図を示し、インパクターカップ72は順送りで、図6A〜Dに示したものと同様であるがさらに図17に関して下でより詳細に説明するモジュールの止め釘140を含む寛骨臼カップ補綴物70中に挿入されている。より具体的には、導入器120の突出部122はインパクターカップ72の凹所84内に位置しており、インパクターカップ72の膨れた表面はカップ70の内側のポリマーライナー24と接触して入れられる。インパクターカップ72のフランジ80は、ポリマーライナー24のエッジ44に位置し、ループ74は導入器120の頭部128のいずれかの側を通り過ぎて伸びるように配置される。
【0248】
図16AおよびBに示すように、導入器は、カップ70のループ74に固定するためのグリップして締める手段142を含む。手段142は、背中合わせにある2本の足143を備え、各足には、突き出た耳144が配置され、耳144の周りに各ループ74を巻いてその耳にループ74を保持することができる。手段142は、図16Bに示すように、蝶ねじ148の回転で足143および耳144を頭部128から後へ引き離す、締める機構146をさらに備える。耳144を引くことはそれに引っかけられたループ74も引くことになり、カップ70と導入器120との間に上記の張力がかかるので、その上にカップ70をしっかり保持することになることは理解されるであろう。
【0249】
図16Bは、張力がかけられた後のカップ70の患者への挿入が準備された組立品を例示する。上記のように、カップ70は、用意された骨の中に導入器120の末端136を叩くことにより詰め込むことができる。所定の位置に入れば、外科医は、蝶ねじ148を緩めることにより張力を解放して足143を下げるであろう。これは、順送りでループ74上の張力を解放し、それらを耳144から外すことが可能になるであろう。次に、導入器120およびインパクターカップ72が、カップ70からは外されて、ループ74がポリマーのエッジ44の近くで切られるであろう。
【0250】
図17は、本発明の実施形態による寛骨臼カップ150の外側の上外側の部分の部分透視図を示す。カップ150は、図6Aから6Dまでおよび図7から13までに示したものと同様である。したがって、それは金属の外側シェル22およびポリマーの内側ライナー24を含む。金属シェル22の外側表面には壁の薄いカップ150を用意された骨空洞に固定することを助けるための多くの造作が設けてある。表面の大部分は、骨の空洞の表面に位置するようにデザインされた頭を切られたビーズ格子152で覆われている。格子152は、骨とカップ150との間の摩擦抵抗を増大させることにより初期固定を助けるように構成された複数のマイクロスパイク154により提供された粗な外面を備える。格子152は成長中の骨のための多孔質構造も提供し、複数の陥凹部は骨がカップ150に嵌まることを可能にする。これらの特徴の各々は、後の図でさらに詳細に示すことにする。金属カップ22の表面には、骨中に約2mm入り込んでそのような壁の薄いカップ150では不可能な強いプレス嵌めなしで固定することを助けるように構成された円錐形固定スパイク156の配列も設けられている。該配列は、カップ150の、患者の体に対して決まる最も近い領域の全域帯に設けられている。したがって、詰め込むときに、スパイク156は、格子152が空洞の表面に接触する前に骨中に入り込む。カップ150にも、必要があればさらに固定を増すべく、金属シェル22の外面に選択的に取り付けるように構成された、2本の任意選択のモジュールの止め釘158が設けられることがある。モジュールの止め釘158は、固定スパイク156の配列の中心のいずれの側にも設けられている。各モジュールの止め釘158は円錐形であり、丸めた先端を有する。モジュールの止め釘は、金属シェル22の外側表面に垂直に突き出る。
【0251】
図17に見られるように、金属シェル22の外側表面には、カップ150の外周エッジの付近に、上記の固定用の造作が全てないリム160が設けてある。これは、カップ150の外周エッジの付近、特に金属シェル22とポリマーライナー24の両方が薄い下方領域で強度を最高にするに有利である。さらに、一連の強化リブ162が、カップ150の外周エッジに隣接する領域に設けられている。強化リブ162は、金属シェル22の極部に向かう縦方向に伸びて、カップ150の厚さが最大の領域(即ち、摩耗ゾーンと背中合わせのカップの表面)に設けられている固定スパイク156の配列近くで止まる。リム160および強化リブ162は、金属シェル22および/またはポリマーシェル24が最も薄いところで金属シェル22を硬化するのに役立つ。この特定の実施形態において、金属シェル22は、リムの付近および強化リブ162の領域で厚さが約1mmであるが、意図した摩耗ゾーンに隣接する領域で厚さが約3mmに厚くなるように構成されている。この厚さが増すことで、固定スパイク156およびモジュールの止め釘158の支持がさらに大きくなる。格子152が存在するところでは、金属シェル22と格子152とを合わせた厚さが約1mmである。
【0252】
図18は、図17に示したものと同様の、特定の頭を切られたビーズ格子152のセクションを示す。このように、各ビーズ164は頭を切られて複数の円錐形マイクロスパイク154が設けられた大きい上部表面層を提供することがわかる。各ビーズ164はその最も近い隣のビーズに触れるように配列されており、その結果、ビーズ164にかかる力は格子152により分散され得ることは注目される。ビーズ164の間の隙間は成長中の骨のための多孔質構造を形成し、ビーズ164の丸めた側は骨がその中に成長させる陥凹部(undercut)を提供し、それにより骨は適時にカップ150に固定される。
【0253】
図19は、カップ150の金属シェル22の内側の図を示す。この図は、ポリマーライナー24を取り付けるために金属シェル22に設けられた球形の陥凹部110の分布を示す。したがって、陥凹部110は金属シェル22が最も薄いカップ150の外周エッジの付近で最も小さく、金属シェル22が最も厚いカップ150の中心に向かって大きくなることがわかる。それに加えて、陥凹部110は、これらの領域における金属の強度を保持するために、強化リブ162の背中合わせの領域166には設けられていない。さらに、陥凹部110はモジュールの止め釘158の位置と背中合わせの領域168にも設けられていない。この理由は、後の図の考察で明らかになるであろう。
【0254】
図20は、図17に示したものと同様のさらなる本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物170の上外側のエッジ部分の部分断面図の簡略化した図式的図を示す。この場合、金属シェル22はその中心に向かって徐々に厚さを増し、一方、ポリマーライナー24は、カップ170のこの側でその最大の厚さを有し、カップ170の下側に向かって厚さが減少する(図示せず)。球形の陥凹部110は、ポリマーライナー24がその中に圧縮成形されて、そのコンポーネントと機械的に結合して一緒になる金属シェル22の内側表面内に設けられている。上記のように、陥凹部110は、金属シェル22のエッジで最小であり、金属シェル22の厚さが増大するにつれて大きくなる。ポリマーライナー24が金属シェル22の末端からの拡張として設けられること、およびポリマーライナー24のエッジ172が外方向に傾斜してそうでなければ内側ライナー24の金属シェル22に対するずれにより減少するはずの関節表面積を最大化することも図20から理解されるであろう。
【0255】
マイクロスパイク154を含む頭を切られた複数のビーズ164は、上記のように金属シェル22の外側表面に設けられている。図20に示したビーズ164は、例示にすぎないことに注意されたい。実際には非常に多くのビーズ164が触れ合う関係で設けられて格子を形成する。
【0256】
頭を切られたビーズ164の拡大図を、その切断に先立つビーズ164の破線で描いた球形の輪郭をつけて図21に示す。
【0257】
図22は、他の本発明の実施形態による、金属シェル22の内側表面からその中に突き出る球形の切り欠き110を有する、他の頭を切られたビーズ164’を図式的に例示する。
【0258】
図23は、さらなる本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物180の上外側のエッジ部分の他の部分断面図を示す。この場合、金属シェル22中の球形の切り欠き110がその中に突き出た、図22に示したものと同様なビーズ164’が設けられている。したがって、ポリマーライナー24は球形の切り欠き110内に位置するポリマー小塊182により金属シェル22に機械的に取り付けられている。この実施形態において、ポリマーライナー24のエッジ44は丸めてある。
【0259】
図24A、BおよびCは、図17の寛骨臼カップ150について金属シェル22の外側表面の部分底面平面図を示し、図には、骨床への最初の固定のためのモジュールの止め釘158および固定スパイク156のための固定手段190が含まれるが、頭を切られたビーズ格子152はまだ含まれていない。これらの各図から、固定スパイク156の帯状の部分は馬蹄形を形成し、モジュールの止め釘158はその馬蹄形により包まれているように見える。上記のように、固定スパイク156は、困難なプレス嵌め(例えば、カップの外側の直径に比較して2mmだけ口径の広がりが小さい寛骨臼による)により厚い壁のカップ中で普通に得られる固定をせずに済むように設けられる。壁の薄いカップが提供される本発明の実施形態においては、口径の広がりは好ましくはカップ外径と丁度(line-to-line)合うかまたは、最大で1mmのプレス嵌めを適用することができる。いずれの場合も、固定スパイク156は、カップ外径を越えて突き出るように配置され、その結果、それらは、カップを詰め込むときに寛骨臼の口径を広げた表面に必然的に押しやられる。図24A、BおよびCで見られるように、固定スパイク156は、カップ150の中心を通る軸と全て並列になっており、モジュールの止め釘158の間の中間地点を通る。
【0260】
モジュールの止め釘158のための固定手段190は、各々雌ねじ山194を設けた盲孔192を含む比較的厚い金属支持環を含む。図示していないが、各モジュールの止め釘158の下側は、ねじ山194と相補性の連結をするための雄ねじ山が設けられた突出部を有することは理解されるであろう。固定手段190は、金属シェル22の耐久性の形体でありおよびそれと一体で形成することができる。
【0261】
外科医が追加の固定が必要ないと決定すれば、モジュールの止め釘158は使用されず、その代わりに、固定手段190の孔192に充填物196が提供されるであろう。充填物196は、雄ねじ山を備え、したがってそれらは固定手段190およびAllenキーの位置のための六角形の切り欠き198の中にねじ込むことができ、したがってそれらは選択的に(例えば、モジュールの止め釘158を取り付けるために)除去することができる。
【0262】
図24Cは、図24Aの固定手段中にねじ込まれた2本のモジュールの止め釘158を示す。図24Cに示したモジュールの止め釘158は、図17に関して記載したように大きい。しかしながら、図24Cに示し特定の実施形態において、モジュールの止め釘158には、モジュールの止め釘158を固定手段190にねじ込むかまたはそれから緩めて抜くときにグリップが容易なように均等に間を置いた4つの凹所200を設けてある。
【0263】
図25AからDは図24Cに示した構成のさらなる図を示すが、凹所200は簡明化のため省略してある。より具体的には、図25Aは、カップ150の下側からの図であり、各固定スパイク156がカップ150の上下の軸に平行に向き、一方各モジュールの止め釘158は金属シェル22の外側表面に垂直に向いていることを示す。上記のように、図25Bは、固定スパイク156が、カップ150の中心を通りモジュールの止め釘158の間の中間地点を通る軸と全て並列になっていることを示す。図25Cは、固定スパイク156のさらなる整列を示す。図25Dは、カップ150の側面図であり、固定スパイク156がモジュールの止め釘158の長軸と平行であることを示す。固定スパイク156およびモジュールの止め釘158の両方ともカップを骨に挿入する軸に平行に向いていることも、図25Dから明らかである。さらに、図25Dは、金属シェル22の外周エッジの付近のリム160の幅がカップ150の下側の面202で比較的狭く(僅か1.5〜2mmの厚さ)、カップ150の上外側の面204の付近で比較的広い(3〜4mm)ことを示す。この追加のリム幅は、カップ150の上外側の面204を覆う骨はないのが普通であるから、支持に有利である。
【0264】
図26は、図24Cのモジュールの止め釘158を通る部分断面図を示す。したがって、固定手段190中の盲孔192が、金属シェル22(それは、摩耗ゾーンと背中合わせのこの領域で最も厚くなっている)の厚さの大部分を通して伸びるが、全体を通して侵入せずに止まることがわかる。これで固定手段190に隣接するポリマーライナー24(図示せず)を保護する。示したように、各モジュールの止め釘158は、固定手段190の雌ねじ山194と噛み合う雄ねじ山を設けた突出部206を備える。球形の陥凹部110(ポリマー取り付けのため)が固定手段190と正反対の金属シェル22中に設けられていないことも図26から明らかである。
【0265】
図27は、図26に示したものと同様であるが、ポリマー取り付けのための数個の球形の切り欠き110を含む、寛骨臼カップ150の金属シェル22全体を示す断面図を示す(例示目的のためにのみ配列した)。この図は、金属シェル22の厚さがカップ150の中心で最大でありカップ150の外周エッジに向かって薄くなっていくことを明確に示す。図27は、各モジュールの止め釘158の長軸が他方に対して逸れることも示す。この配列が選択された理由は、一部は、止め釘を平行にするためにはカップの厚さを増大させないことが望ましいことおよび一部は、方向が逸れる止め釘は骨中において優れた固定を提供することである。しかしながら、逸れる止め釘が円筒状であれば、それらを骨中にしっかりと挿入することは可能でない(これは陥凹部を必要とするので)ということは理解されるであろう。しかしながら、示したように、円錐形の止め釘158では、陥凹部を必要とせずにカップを直線で挿入することが可能である。本発明の実施形態において、円錐形の止め釘158は、それる長軸を有しているが、各円錐形の最外母線が平行から4度だけ内方向の角度になっているように配置されている。
【0266】
本発明の他の実施形態において(図示せず)、補綴物のカップは、上に記載しおよび図17に示したように、頭を切られたビーズ格子152を備えることができるが、いかなる固定手段またはモジュールの止め釘も用いない。この場合上記のように固定スパイク156の配列も設けられるが、この場合配列中のスパイクは、高さが変化して配列のエッジの方で最小であり、配列の中心で最大になるように徐々に増大する。この実施形態における配列は、一般的に、意図した摩耗ゾーンと背中合わせに位置する(即ちカップの上外側半分に)円形ディスク形状のものである。さらに、この実施形態において、金属シェルの内側表面には、上記のように、球形の切り欠き110が設けられている。この場合球形の切り欠きは、全て同様なサイズであって、金属シェルのエッジの付近の環および金属シェルの他の部分の大部分の上に均等に分布しているが、シェルのリムと背中合わせの領域または固定スパイクの配列と背中合わせの領域には設けられていない。これらの領域には、これらの領域における強度を増大させるために切り欠きが設けられていない。
【0267】
上記の頭を切られたビーズ格子152を代替する格子構造は、本発明の実施形態により予見される。図28Aから29Eまでは、カップなどの補綴物の金属シェルの外側表面に設けることができる一つのそのような格子構造230の例示である。前と同様に、格子230は初期固定を助ける粗な外側の表面、成長中の骨のための多孔質構造および骨が表面にはまりこむことを可能にする複数の陥凹部を提供するように構成される。
【0268】
より具体的には、図28AおよびBは、格子230の拡大底面図を示す。格子230は、円形断面を有する第1のシリーズの杭232および三つ葉型断面を有する第2のシリーズの杭234を含む。補綴物の外側表面に設けられたとき、杭232および234は表面に垂直に伸びて多数のブリッジ要素236の接合端(図示せず)を支持するであろう。この実施形態において、円形杭232は、6つのブリッジ要素236の接合端を支持する。各ブリッジ要素236は、円形杭232から放射状に三つ葉型杭234の一つのローブ238に伸びる。三つ葉型の杭234の各々は、ローブ238の各々から伸びる3つのブリッジ要素236の接合端を支持するように配列されている。したがって、この実施形態において、各円形杭232が6つのブリッジ要素236を支持し、各三つ葉型杭234が3つのブリッジ要素236を支持し、モザイクパターンがブリッジ要素236の間に設けられたダイヤ型の間隙240で創り出される。図28Bで最もよく見られるように、杭232、234およびブリッジ要素236は全て比較的厚い断面を有し、その結果格子230の作製中に溶融金属が構造中に容易に流れることが可能になる。
【0269】
上記の格子230は、成長中の骨がブリッジ要素236の間の間隙240を通ることを可能にするのみならず、ブリッジ要素236の下、杭232、234の間の、骨が成長して入り込みインプラントを適当な場所に機械的に固定することができる領域に陥凹部242も提供することが理解されるであろう。
【0270】
図29Aから29Eまでは、図28AおよびBの格子230の上部の平面図を示す。これらの図では杭232、234を明確に見ることはできないが、円形杭232は、6つのブリッジ要素236が出合うところにはどこでも設けられており、三つ葉型の杭234は、3つのブリッジ要素236が出合うところにはどこでも設けられていることが理解されるであろう。これらの図に示すように、粗な外面は、ブリッジ要素236の外側表面におけるダイヤ型およびピラミッド形の切り欠き242の提供により格子230上に設けられている。これらの切り欠き242は、使用中に骨に提供されてインプラントの最初の固定を助けることができる複数の鋭いエッジを創り出す。
【0271】
図30Aは、さらなる本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物250の透視図を示す。カップ250は、金属の外側シェル252およびポリマーの内側ライナー254を備える。ポリマーの内側ライナー254は、ビタミンEを含むポリマー粉末を金属の外側シェル252(外側鋳型空洞として役立つ)に入れて、粉末を冷圧縮型打ちして第1層256の所望の形状にすることにより形成される第1層256を含む。この実施形態において、第1層256は図30Bに示したポリマー粉末の第2層260を受け入れるように構成された凹所を設けた空洞258を含んで形成されることが注目されるであろう。第1層256を成形した後、ポリマー粉末(ビタミンEを含まない)を空洞258に入れて、第2の鋳型を使用してポリマー粉末を第2層260に冷圧縮し、カップ250の関節の表面層の部分を形成する。第1層256と第2層260を、次に熱圧縮成形して単一の固体カップ250を形成した後、放射線照射して第2層260中の分子を架橋する。次に、カップ250を、その融点未満で加熱して、第1層256中のビタミンEが第2層260中に拡散してその中のフリーラジカルを消費することを助長し、それにより第2層260の酸化リスクを最小化する。したがって、カップ250は、意図した摩耗ゾーンにおいて、使用中のカップ250の摩耗耐性を向上させることが期待される部分的に架橋した表面層260を含んで形成される。
【0272】
図31は、他の本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物260の透視図を示す。カップ260は、図30Aおよび30Bに関する上記の各コンポーネントを含む。同様な参照番号が適宜使用され得る。図30Aおよび30Bのカップ250と本発明のカップ260との唯一の相違は、図31に示すように、第2層260が、凹所258中に挿入される前にカップ260とは独立に成形されることである。第1層256と第2層260とを熱圧縮成形する工程は、この実施形態においてもなお、上記の後続の工程とともに実施されることは理解されるであろう。
【0273】
図32は、さらなる本発明の実施形態による寛骨臼カップ補綴物270の透視図を示す。カップ270は、本質的には図31に関して上記したようにして形成される。しかしながら、この場合、第2層272は、ポリマーライナー254の関節の表面層の全体を形成するように構成される。したがって、この実施形態における第1層274は、凹所をそのようには含まなくて、第2層272を収容するように、むしろ所望のポリマーライナー254の厚さより薄いように整えられる。
【0274】
図31および32に関して上に記載した方法を使用する利点は、それらが第2層のポリマー粉末がカップの極部に蓄積して、極部において、架橋ポリマーの意図した層より厚い層を、およびカップの外周エッジにおいて(即ち、意図した摩耗ゾーンにおいて)、架橋ポリマーの意図した層より薄い層を生ずることがないことを保証することであることが理解されるであろう。
本発明のさらなる実施形態において、ポリマーコンポーネントを、Ticona GUR 1020のポリエチレン樹脂粉末と量を換えたビタミンE(DSMのdl−α−トコフェロール)の形態の抗酸化剤とを混合することにより形成した。比較のために、第1の試料はビタミンEなしで創り、第2の試料は0.1重量%のビタミンEで被覆し、第3の試料は2.0重量%のビタミンEで被覆した。
【0275】
3つの試料を全て、PETフィルム、アルミニウム箔、接着性層およびポリエチレンフィルムから作製した特別のパケットに梱包して試料を雰囲気(atmosphere)から分離して保管した。試料を充填した後各パケットの内部から酸素を真空ラインにより除去し、窒素ガスを流し、真空にして最後にパケットを封じた。各試料の放射線照射を、Isotron UKで1時間当たり5kGy未満の線量率でのγ線照射により実施して、全線量100kGyを照射した。各試料の圧密化されたブロックへの圧縮成形は、Orthoplastics UKにおいて特注の鋳型を使用して230度Cで実施した。圧密化されたブロックは23度Cで24時間コンディショニングした後、FRM−PRD−003にしたがってブロックから試験片を機械加工した。圧密化され試験片における酸化は、ASTM F2102−01(2001)にしたがって赤外分光法を使用して測定した。結果のグラフを図33に示す。
【0276】
図33から、抗酸化剤を被覆せずに放射線照射されたポリエチレン樹脂は、照射が酸素の減少した環境で実施されたにもかかわらず、バルクで圧密化され材料の有意の酸化を生じた(0.15%を超える)ことがわかる。整形外科業界においては、0.1%を超える酸化のレベル(即ち、BOIにおいて0.100を超える)は整形外科のインプラントとしての使用を許容されないとみなされる。0.1%のビタミンEをポリエチレンに添加すると、バルク酸化指数は約0.07%という許容されるレベルに減少する。2.0%のビタミンEを混合して入れると酸化指数は、さらになお、約0.015%に減少する。したがって、本発明の方法を使用して、許容される酸化レベルの架橋したポリマーコンポーネントを製造することが可能であることがわかる。
【0277】
図34Aおよび34Bは、さらなる本発明の実施形態による、内側表面302の中心が外側表面304に対してずれており且つ切り欠き306が下方エッジに設けられた金属の一体型寛骨臼カップ補綴物300を示す。
【0278】
この特定の実施形態において、内側中心は、外方向に7mmおよび下方向に(即ち下方に)2mmずれている。これは、54mmの内径(標準的な外径56mmのカップと連結する通常の50mmの内径の代わりに)を可能にする。したがって、内径と外径との差2mmを達成することが可能であり、その結果、通常より大きい大腿骨頭(例えば、50mmよりむしろ54mm)を、カップ300のサイズを増大させずに使用することができる。このことは、いかなる追加の骨の除去も必要とせずに、よりよい摩耗および荷重特性を確保することに役立つ。
【0279】
図35Aおよび35Bは、カップエッジ全体の付近にリム312を有する金属寛骨臼カップシェル310を示す。リム312にはそれを通る複数の孔314が貫通している。図35Bに明確に示されているように、リム312はシェル310の外側表面316から嵌め込まれている。シェル310は、内側表面320でカップの極部に位置するねじ山を切った盲孔318も含む。
【0280】
図36Aおよび36Bに示すように、ポリマーの内側ライナー322はシェル310内に圧縮成形され、その結果、ポリマーライナー322のねじ山324がリム312中の孔314を通して形成され、次にリム312を包むように配置されたポリマー中に成形され、それによりライナー322のエッジをシェル310に綴じ付ける。それに加えて、ポリマーライナー322は、シェル310のねじ山を切った孔31/8の中にも成形されてマクロの固定手段を提供し、シェル310の内側表面320はポリマーライナー322のミクロ取り付けのために粗くしてある。
【0281】
図37Aは、本発明の実施形態による金属寛骨臼カップシェルの外側表面332に創り出されたスパイク330の拡大断面図を示す。スパイク330は電子ビーム彫刻を使用して創られる。電子ビームは最初に焦点を合わせて表面332上に金属の小液滴を溶融し、次に電子ビームを表面332に沿って少しの距離だけ移動して、金属の液滴を溶融プール334から押し出して隣接するスパイク330を形成する。この工程をシェルの表面332上の異なった位置で多数回繰り返して、一連のスパイク330を創り初期固定のための粗な外側を形成する。
【0282】
ある実施形態においては、次に真空プラズマスプレーしたチタンコーティング336をスパイクのある表面332に適用して、図37Bに例示したように表面332を実質的に覆う。チタンコーティング336は表面332に陥凹部および適当な孔サイズを提供して、長期固定のための骨の成長を助長することが理解されるであろう。
【0283】
スパイク330の提供は、コーティング336のチタン粒子が、カップを患者中に挿入するときに剪断力によってずれないことを確実にすることに役立つことも注目される。
【0284】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記実施形態に種々の改変を施すことができることは、当業者により認識されるであろう。特に、第1の実施形態からの一つまたは複数の特徴は、第2のまたは後続の実施形態からの一つまたは複数の特徴と混合および組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0285】
10 寛骨臼カップ補綴物、カップ
12 金属の外側シェル
14 ポリマーの内側ライナー
20 図2のカップ、寛骨臼カップ
22 金属シェル
24 図2のポリマーライナー
26 カップ20の上外側のエッジ、カップ70の上外側の末端
28 カップの下方のエッジ、カップ70の下方の末端
30 切り欠き
40 図3のカップ
42 金属シェルの内方向に斜めに面取りしたエッジ
44 ポリマーライナー24の丸めたエッジ
50 図4のカップ
52 摩耗ゾーン
60 図5のカップ
62 互いに入り込んだ境界面
64 ポリマー52のスパイク
70 図6の寛骨臼カップ補綴物
72 インパクターカップ
74 ポリマーループ
76 ループの第1の末端
78 ループの第2の末端
80 フランジ
82 半円形の切り欠き
84 凹所
86 凹所の直線の側
88 凹所の曲線の側
89 大きい膨れた外側表面
90 代替的取り付け手段を有する寛骨臼カップ補綴物
92 ポリマーバンド、取り付け手段
94 鋸歯状の表面
100 さらなる寛骨臼カップ
102 金属ロッド
104 シャフト
106 球形のボール
108 頸部
110 小さい球形の切り欠き(図10)、陥凹部(図19)
112 他の寛骨臼カップ補綴物
114 円錐形構造
116 円錐形部分
120 導入器
122 突出部
124 突出部の直線の側
126 突出部の曲線の側
128 導入器120の頭部
130 取っ手
132 屈曲部
134 円筒状グリップ
136 叩くのに適した末端
140 モジュールの止め釘
142 グリップして締める手段
143 足
144 耳
146 締める機構
148 蝶ねじ
150 図17の寛骨臼カップ
152 ビーズ格子
154 マイクロスパイク
156 スパイク
158 止め釘
160 リム
162 強化リブ
164 頭を切られたビーズ
164’ 他の頭を切られたビーズ
166 強化リブ162の背中合わせの領域
168 止め釘158の位置の背中合わせの領域
170 図20の寛骨臼カップ補綴物
172 ポリマーライナーのエッジ(図20)
180 図23の寛骨臼カップ補綴物
182 ポリマー小塊
190 固定手段
192 盲孔
194 雌ねじ山
196 充填物
198 六角形の切り欠き
200 凹所
202 カップ150の下側の面
204 カップ150の上外側の面
206 雄ねじ山を設けた突出部
230 格子構造
232 第1のシリーズの杭、円形杭
234 第2のシリーズの杭、三つ葉型杭
236 ブリッジ要素
238 三つ葉型杭234の一つのローブ
240 ダイヤ型の間隙
242 陥凹部
250 図30Aおよび30Bの寛骨臼カップ補綴物
252 図30Aおよび30Bの金属の外側シェル
254 図30Aおよび30Bのポリマーの内側ライナー
256 図31の第1層
258 凹所を設けた空洞
260 図31のポリマー粉末の第2層
260 図31のカップ
270 図32の寛骨臼カップ補綴物
272 図32の第2層
274 図32の第1層
300 図34Aおよび34Bの金属の一体型寛骨臼カップ補綴物
302 図34Aおよび34Bの内側表面
図34Aおよび34B の304 外側表面
306 図34Aおよび34Bの切り欠き
310 図35Aおよび35Bの金属寛骨臼カップシェル
312 図35Aおよび35Bのリム
314 図35Aおよび35Bの孔
316 図35Aおよび35Bの外側表面
318図35Aおよび35Bの盲孔
320 図35Aの内側表面
322 図36Aおよび36Bのポリマーの内側ライナー
324 図36Bのねじ山
330 図37Aのスパイク
332 図37Aの金属寛骨臼カップシェルの外側表面
334 溶融プール
336 真空プラズマスプレーしたチタンコーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー粒子を抗酸化剤と混合して抗酸化剤がポリマー粒子を被覆している混合物を形成すること;
ポリマー粒子に放射線照射してその中の分子を架橋すること;および
放射線照射した混合物を圧密化したコンポーネントに形成すること
を含むポリマーコンポーネントを形成する方法。
【請求項2】
ポリマー粒子を抗酸化剤と混合する工程を、ポリマー粒子を放射線照射してその中の分子を架橋する工程の前または後に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放射線照射に先立ってポリマー粒子内または粒子間の酸素の存在を減少または実質的に除去する工程をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抗酸化剤が混合物の重量の0.1%、0.5%、1%、2%、または3%を占めるビタミンEを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
放射線照射された混合物を圧密化されたコンポーネントへと形成する工程が熱および/または圧力の使用を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー粒子が樹脂またはヒドロゲルの形態で提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
抗酸化剤が液体、粉末、溶液または懸濁液の形態で提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
圧密化されたコンポーネントを、高圧および/または高温結晶化を使用して処理する工程をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
圧密化されたコンポーネントが、製品、製品の一部、または製品もしくは製品の一部をそれから作製可能である棒材を形成する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
製品が、ベアリングコンポーネント、医療用デバイス、または補綴物により構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
補綴物が、股関節、膝、脊柱、頸部、踵、足指、肩、肘、手首、指または親指における使用のために構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記一部が、製品の少なくとも一つの表面の全体または一部分を構成する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記一部が寛骨臼カップ補綴物のための関節表面の全体または一部分を構成し、任意でさらに、前記補綴物が、一つもしくは複数のさらに架橋された表面および/または表面の一つもしくは複数のさらに架橋された部分を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のポリマーを含む第1層を形成すること;
関節の表面層の全体または一部分を構成する、第2のポリマーを含む第2層を形成すること;
第1層と第2層とを接合して関節表面のコンポーネントを形成すること;
第2のポリマーに放射線照射してその中の分子を架橋すること;および
第2層におけるフリーラジカルの消費を促進し、それにより第2層の酸化リスクを最小化すること
を含む、補綴物のための関節表面を形成する方法。
【請求項15】
第1のポリマーと第2のポリマーとが放射線照射工程の前には同じである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1層が抗酸化剤をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
抗酸化剤がビタミンEを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第2層におけるフリーラジカルの消費を促進する工程が、第2層が、放射線照射によるポリマー架橋を可能にするように十分低いが、放射線照射の結果発生するフリーラジカルを消費するように十分高い抗酸化剤濃度を有することを確実にすることにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
フリーラジカルの消費を促進する工程が、コンポーネントを加熱して第1層中の抗酸化剤が第2層中に拡散してその中のフリーラジカルを消費することを助長することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
フリーラジカルの消費を促進する工程において、コンポーネントがその融点未満で加熱される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1層と第2層とを接合する工程が熱圧縮成形を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
第2のポリマーが、第2層へと形成される前または後に放射線照射される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
第2のポリマーが、第2層を第1層に接合した後で放射線照射される、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
第1層および/または第2層を形成する工程が成形を含み得る、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
成形が熱圧縮成形または冷圧縮成形を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1層を、第1のポリマーを含む第1の粉末から成形する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
第2層を、第2のポリマーを含む第2の粉末から成形する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
第1層および/または第2層を形成する工程が機械加工を含み得る、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
第1層を、第1のポリマーを含む第1の棒材から機械加工で作製する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第2層を、第2のポリマーを含む第2の棒材から機械加工で作製する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
第1層を形成する工程が、抗酸化剤を含む第1の粉末を鋳型に入れ、粉末を圧縮型打ちして第1層の所望の形状にすることにより、第1層を圧縮成形することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
第1層と第2層との間の境界面が拡散するように、所望の形状が意図した摩耗ゾーンに複数の突出部を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第2層を形成する工程が、形成された第1層の全体または一部分の上に第2の粉末を置いて第2の鋳型を適用し、圧縮型打ちして第2層の所望の形状にすることにより圧縮成形することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
シリンジ様シュラウドを通して第1のピストンを適用することにより第1層を圧縮成形する、請求項14に記載の方法。
【請求項35】
その後第1のピストンをシュラウドから外し、第2のポリマーをシュラウドに注入し、第2のピストンをシュラウドを通して適用して、第2層を第1層上に圧縮成形する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第2層を形成する工程が、第2のポリマーを第2の鋳型に入れ、熱圧縮型打または冷圧縮型打ちして、第2のポリマーを第2層の所望の形状にすることにより圧縮成形することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項37】
関節表面コンポーネントを寛骨臼カップ補綴物で使用するために構成し、任意でさらに、補綴物が一つもしくは複数のさらに架橋された表面および/または表面の一つもしくは複数のさらに架橋された部分を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項38】
抗酸化剤を含むポリマーコンポーネントを形成すること;
関節の表面層の部分から、抗酸化剤を全部または一部、選択的に除去すること;
コンポーネントを放射線照射して、前記部分中の分子を架橋すること;および
前記部分におけるフリーラジカルの消費を促進して、それにより前記部分の酸化リスクを最小化すること
を含む、補綴物のための関節表面を形成する方法。
【請求項39】
関節の表面層の部分から抗酸化剤を除去する工程が、界面活性剤を使用して抗酸化剤を溶脱させて除去することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
抗酸化剤を含むポリマーコンポーネントを形成すること;
関節の表面層の全体または一部分で、抗酸化剤を全部または一部、選択的に不活性化すること;
コンポーネントを放射線照射して前記関節の表面層中の分子を架橋すること;および
前記関節の表面層におけるフリーラジカルの消費を促進して、それにより前記関節の表面層の酸化リスクを最小化すること
を含む、補綴物のための関節表面を形成する方法。
【請求項41】
抗酸化剤がビタミンEを含む、請求項38または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ポリマーコンポーネントを形成する工程が、成形および/または機械加工を含む、請求項38または請求項40に記載の方法。
【請求項43】
フリーラジカルの消費を促進するする工程が、前記部分/関節の表面層が、放射線照射によるポリマー架橋を可能にするように十分低いが、放射線照射の結果発生するフリーラジカルを消費するように十分高い抗酸化剤の濃度を有することを確実にすることにより実施される、請求項38または請求項40に記載の方法。
【請求項44】
フリーラジカルの消費を促進する工程が、コンポーネントを加熱してポリマーコンポーネントの残部中の抗酸化剤が前記部分/関節の表面層に拡散してその中のフリーラジカルを消費することを助長することを含む、請求項38または請求項40に記載の方法。
【請求項45】
関節表面を、寛骨臼カップ補綴物で使用するために構成し、任意でさらに、補綴物が一つもしくは複数のさらに架橋された表面および/または表面の一つもしくは複数のさらに架橋された部分を含む、請求項38または請求項40に記載の方法。
【請求項46】
ベアリング表面の少なくとも一つの所定の部分が架橋ポリマーの接着部材を備える、ポリマー関節ベアリング表面を有する補綴物。
【請求項47】
所定の部分が所定の摩耗ゾーンに対応する、請求項46に記載の補綴物。
【請求項48】
ポリマーが所定の部分の領域において比較的厚い、請求項46に記載の補綴物。
【請求項49】
複数の突出部がポリマーの架橋した部分とポリマーの他の部分との間の境界面に設けられる、請求項46に記載の補綴物。
【請求項50】
突出部が峰または指の形態である、請求項49に記載の補綴物。
【請求項51】
突出部が2つのタイプのポリマー間の境界面に粗さを導入することにより設けられる、請求項49に記載の補綴物。
【請求項52】
補綴物が寛骨臼カップとして構成される、請求項46に記載の補綴物。
【請求項53】
寛骨臼カップが、金属の外側シェルおよびポリマーの内側ライナーを含み、内側ライナーの内側表面が、架橋ポリマーの接着部材を備えた前記所定部分を有する関節のベアリング表面を構成する、請求項52に記載の補綴物。
【請求項54】
補綴物が、膝全置換術で使用するための大腿骨コンポーネントまたは脛骨コンポーネントとして構成される、請求項46に記載の補綴物。
【請求項55】
関節のベアリング表面が、脛骨コンポーネント上に設けられる関節丘ベアリング表面により構成される、請求項54に記載の補綴物。
【請求項56】
関節のベアリング表面が、カム及びペグ従動子の一方または両方の噛み合う表面により構成され、その一方は大腿骨コンポーネント上に設けられ、他方は脛骨コンポーネント上に設けられる、請求項54に記載の補綴物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図29D】
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【図29E】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35A−35B】
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【図36A−36B】
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【図37A】
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【図37B】
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【公表番号】特表2013−514848(P2013−514848A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545427(P2012−545427)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002292
【国際公開番号】WO2011/077074
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512163439)
【Fターム(参考)】