説明

ポリマーフィルム

乾燥ベースで、a)澱粉45から90重量%と、b)ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、およびエチレンとビニルアルコールとの共重合体から選択され、 溶融状態の澱粉成分と適合する融点を有する、水溶性ポリマー0.1から15重量%と、c)50〜6000、より好ましくは50〜2500、なおより好ましくは100〜400の範囲の分子量を有し、望ましくは、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、グリセロールトリオレエート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、グリセリルトリアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ポリエチレンオキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される1種または複数の可塑剤5から45重量%とを含むポリマー組成物、および薄手フィルムパッケージの用途へのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ(包装)に使用するフィルムに関する。このフィルムは、水蒸気、二酸化炭素、酸素および窒素等のガスの、パッケージされた製品の中外への移動を防止するのに特に有用でありうる。このことは、固体および液体の食料品のパッケージに特に重要であるが、紙製品、衛生用品、洗濯および台所製品を含む消費者製品等の他の用途にも関連し、ここでは、パッケージされた製品を新鮮でみずみずしい状態に保つこと、または、例えば水分(湿気)を侵入させず乾燥状態に保つことが重要である。パッケージの内容物を乾燥状態に保つことの必要性は、サイレージ(silage)および新聞等の品目の包装にも関連する。多くの場合、パッケージと製品との間の化学的な相互作用の可能性を考慮することも必要である。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる形状、化学的性質および目的を有する製品の、効率的なプラスチック製のパッケージは、重要な課題である。食料および飲料を新鮮に保つことは、特に要求の多い活動分野であり、そこでは、保存期限が製品により幅広く変わりうるし、一盛りの分量は相当に変わりうる。食物および飲料における腐敗の最大原因は、製品の酸化につながる酸素の浸透である。薄手フィルムのパッケージに審美的に適する最も一般的なパッケージ材料は、パッケージされた食物の内外へのガスの移動を停止させる点が非常に不十分である。最近30年にわたって、産業界は、バリヤフィルム層の提供を発展させてきた。これらのフィルムは、水蒸気、O、COおよびN等のガスが食物および飲料の内外に移動するのを止めるために用いられる。
【0003】
プラスチックは、60年以上の間、パッケージ材料として用いられてきており、市場からの要求の増加により、かつ技術的な発展により、発達し続けている。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)およびポリエチレン(PE)等の汎用プラスチックは全て、OおよびHOの出入に対していくつかのバリヤ特性を有する。これらのバリヤ特性は通常、バリヤ層の厚さに比例する。より良好なバリヤ特性をもつプラスチックへのニーズを駆り立てる3つの要因がある:第1に、ガラスおよび錫/アルミニウムからの脱却であり、これは、その重量、コスト、およびガラスの場合にはその壊れやすさのためである;第2に、プラスチック材料をより経済的に作るためのそれらのダウンゲージングである;第3に、より多くの食物をより一層小さな一盛りの分量にパッケージするときに、より長い保存期限が求められることである。
【0004】
これらの要因は、一般的な消費者向けプラスチックパッケージのバリヤ特性を著しく向上させる材料の発達につながった。最初に成功した高性能バリヤ材料は、ポリビニリデンクロライド(PVDC)であった。これはPVCの誘導体であり、したがって、類似の否定的な環境プロファイルを有するとみられている。今日、市場に出ている他の一般的なバリヤ材料は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(例えばMXD6)およびニトリルである。これらは全て、汎用プラスチックにより提供される構造層に加えるバリヤ層として使用される。
【0005】
バリヤ材料として使用することができ、商業化された天然ポリマーは、多くのプラスチック工業の前によく発展したセロハンだけである。酸素に対するそのバリヤ特性は、今日のバリヤ樹脂に比べて高性能であるとは思われず、そのコストは高い。
【0006】
PET(ポリエチレンテレフタレート)飲料瓶の壁面の一般的なバリヤ構造は、高価格バリヤ材料を含有するコア層(単層又は複数の層)の上のPET構造層からなる多層構造である。米国特許第5498662号、第5621026号、第5897960号および第6143384号は、バリヤ層中に、ポリメタクリル酸ポリマーおよび多糖類を使用することを開示している。WO00/49072は、PET吹込成形瓶上にスプレーコートするモンモリロナイト等の粘土をベースにするバリヤコーティングを開示している。米国特許出願2004/0087696は、粘土材料を、メラミン、ホルムアルデヒドおよびホウ酸のバインダー、ならびに多糖類およびセルロース材料等の有機水溶性バインダーと混合した、PET容器のための水ベースのコーティングを開示している。
【0007】
バリヤ材料は、多くの異なるプラスチック構造および工程において用いられ、それらのそれぞれにより、それ自体が必要とする機能性が課せられる。バリヤ構造の最も一般的な用途は、菓子、生鮮食品、ベーカリー製品、ならびに近年市場に現れたフレーバリング(flavorings)および乾燥ソースベース(dehydrated sauce bases)等の、大量の小袋(パウチ)のインスタント食品およびコンビニエンス(手軽な)食品等の食品を包装するための薄手フィルムにおけるものである。これらのフィルムのいくつかは、12層を有することがある非常に複雑な積層体であるにもかかわらず、厚さが50μm未満であることがある。プラスチックの積層はまた、取り組み甲斐のある課題である。これらのフィルムは、一般に同時押出により製造される。WO90/14938は、酸素バリヤ積層体における使用に適する、高アミロース改質澱粉を開示している。米国特許第6569539号および第6692801号は、分散液から塗布される澱粉または改質澱粉の内部バリヤコーティングを伴う、紙および/またはプラスチック積層体を開示している。WO04/052646は、澱粉層と生分解性ポリエステル層とを用いる多層バリヤフィルムを開示している。米国特許出願2002/0187340は、主材料が澱粉であり、材料が分散液から塗布される、ポリビニルアルコールと澱粉とのガスバリヤコーティングを開示している。
【0008】
バリヤは、果汁のための瓶、一部の炭酸清涼飲料、ならびに果物および野菜のジャム等の様々なホットフィル食品(hot fill foods)にも用いられる。瓶は通常、同時射出延伸ブロー成形により形成される。これは、予備成形物への射出成形とそれに次ぐ再融解および、瓶の形状へのブロー成形との両方がなされる材料を必要とする。他の容器は、同時押出ブロー成形されることがあり、ここではパリソン(円筒状の成型材料)が、型壁に対してブローされ、同時押出工程の進行中に所望の形状を達成する。
【0009】
いくつかの容器はさらに、射出成形によって形成される高いガスバリヤの密閉性を必要とする。
【0010】
バリヤ材料は、食肉用トレー等の硬質なパッケージにも用いられるが、ほとんどの用途で、硬質なプラスチック材料は十分なバリヤを提供し、上部の薄手フィルムだけが性能の改良を必要とする。
【0011】
バリヤフィルムは、サイレージ包装、および宅配用の丸めた新聞紙のパッケージ等の種々の用途にも用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
バリヤ技術を広く行き渡らせることを遅らせた問題の1つは、プラスチックの再利用可能性へのそれらの影響である。これは、特に瓶市場に当てはまる。現在、多くのPETボトルは、リサイクルPETと中央のバリヤ層とを有し、外表上に未使用材料を有する、複雑な構造を有する。バリヤ樹脂が、リサイクルシステムに適合しないと、その技術を採用するのに相当な抵抗がありうる。持続可能で再生可能な資源に基づき、および/または生分解性である新材料が、市場に参入しつつある。射出延伸ブロー成形し瓶にする、またはパッケージ用途のための薄手フィルムを形成することができるそのような材料の例は、穀物(corn)から合成されるポリ乳酸(PLA)である。PLAは、ガスバリヤ特性が不十分で、水蒸気バリヤ特性も比較的不十分である。従って、PLAは、生分解性または持続可能性の状態を維持するために、再生可能資源をベースとする生分解性バリヤとともに用いることにより利益を得る。
【0013】
バリヤフィルムの製造における別の問題は、適切な可塑剤の選択および取扱いである。可塑剤は、ポリマー材料に加える物質であり、柔軟性、加工性および伸びを促進する。バリヤフィルムがうまく機能するためには、これらのフィルムは非常に乾燥していなければならない。フィルムを十分に乾燥するために、一般に用いられる温度は、約90〜280℃およびそれ以上でありうる。これらの温度で可塑剤は、組成物中の水が離脱するときに蒸発するか、留去されるかのどちらかである。低分子量の可塑剤は、乾燥時および加工時の温度でかなりの蒸気圧を有するので、特に問題を有する。より高い加工温度では、水分を引き付け保持する湿潤剤の能力が持続しないので、湿潤剤の添加が、常に可塑剤の取扱いを助けるとは限らない。さらなる問題が、加工の間および後でさえ起こりうる。可塑剤が、プラスチックの本体から、フィルムの表面中、または接着層、面材料もしくはその両方等のプラスチックの複合体もしくは積層体の他の部分中に移動するとき、可塑剤のマイグレーション(migration)が起こる。これは、フィルム中の気泡および穴や、面材料中への接着成分のブリードスルー(浸出、にじみ)などの、フィルムの接着上の、加工上の、および外見上の問題を引き起こしうる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態において、
乾燥ベースで、
a)澱粉45から90重量%と、
b)ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、およびエチレンとビニルアルコールとの共重合体とから選択され、溶融状態の前記澱粉成分と適合する融点を有する、水溶性ポリマー0.1から15重量%と、
c)50〜6000、より好ましくは50〜2500、なおより好ましくは100〜400の範囲の分子量を有し、望ましくは、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、グリセロールトリオレエート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、グリセリルトリアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ポリエチレンオキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される1種または複数の可塑剤5から45重量%と、
を含むポリマー組成物を提供する。
【0015】
澱粉は、好ましくは高アミロース澱粉、および/またはヒドロキシルアルキル基、アセテート、もしくは無水ジカルボン酸、またはグラフトポリマーとの反応により改質された澱粉から選択される改質澱粉である。
【0016】
可塑剤は、好ましくは非再結晶可塑剤である。130℃の乾燥温度で、グリセロール、ソルビトール、エリスリトールおよびキシリトールは全て、存在するいくらかの水とともに放出されうる。いくつかの可塑剤は、マイグレーションし、またはブルーミングすることも見出されている。両方の場合において、最適の成果は達成されない。好ましいポリマー組成物の中で、可塑剤は、マルチトール、キシリトールおよびエリスリトールの1種または複数からなる群から選択される。
【0017】
場合によって、このポリマー組成物は乾燥ベースで2.5重量%以下のC12〜22の脂肪酸または塩を含むこともある。このポリマー組成物は、場合によって、1と22との間の親水性・親油性バランス(HLB)値を有する乳化剤を3%以下含むこともある。他の従来の添加剤および充填剤を、このポリマー組成物中に含むこともできる。このような添加剤は、すでに特定したそれら以外の他の加工助剤、増量剤、エポキシ化油、湿潤剤、充填剤、顔料、熱安定剤、変色および劣化に対する抗酸化剤、抗菌剤、UV/光安定剤、潤滑剤、難燃剤、ナノ粒子、ならびにアンチブロッキング剤を含むことができる。
【0018】
この組成物は、少量の結合水を含有しうるが、この水は選択される方法の加工条件下で蒸発しない程度においてのみ含有しうる。
【0019】
このポリマー組成物は、単独でまたは積層構造の一部として使用するための薄手フィルムを、押出、同時押出(共押出)または注型(casting)するのに適する。同時射出または射出成形と、場合によりこれに続くブロー成形(射出ブロー成形および射出延伸ブロー成形)、ブロー成形のためのチューブを含む、押出または同時押出成形(押出ブロー成形)、ならびに後の熱成形のための押出もしくは同時押出および/または積層したシート成形を含む、他の加工方法が用いられることもある。マルチトールは、同時射出工程および同時押出工程において高い加工温度を用いるときに、特に有効な可塑剤であることが見出されている。
【0020】
予想されるように、本発明の組成物から形成されるフィルムのガスバリヤ特性は、澱粉ベースの先行技術の組成物および現行の一般的な市販のバリヤ材料よりも高湿度での性能が優れる。本発明のポリマーから形成されるフィルムは、例えば60%RH(相対湿度)以下の相対湿度で0.1cmmm/m atm以下、および90%RH以下の相対湿度で0.7cmmm/m atm以下の酸素透過係数を特に有する、優れた酸素バリヤ特性を有する。本発明の組成物から形成されるフィルムは、60%RH以下の相対湿度で0.5cmmm/m atm以下、および90%RH以下の相対湿度で0.9cmmm/m atm以下の二酸化炭素透過係数をさらに有する。
【0021】
この組成物から形成されるフィルムは、同時押出、同時射出成形、フィルムブローイングまたは熱積層技術により、PET、PE、(BO)PP、LDPEおよびポリ乳酸等の、他のパッケージポリマーと積層されうる。PETおよびポリ乳酸を有する積層体は、清涼飲料、ビールまたは調味料のための飲料瓶を形成するときの予備成形物として使用するのに適する。他の射出延伸ブロー成形した積層体製品には、スープ、ジュースおよび加工果物用のホットフィルのPETまたはPP容器、ならびに化粧品用瓶が挙げられる。この材料は、酸素およびCOバリヤ用途のための、射出成形のPPキャップまたは密閉に用いることができる。食料および医薬品用途の押出ブロー成形したPE瓶は、本発明の同時押出フィルムを含有することもできる。PE、PP、BO−PPおよびポリ乳酸(PLA)をもつ積層体は、食肉等の製品の改質雰囲気包装用の、軽食の包装または薄手フィルムのふた等の、薄手フィルムパッケージの用途に用いるのに適する。PET等の極性材料との接着に優れるが、PP等の非極性材料との接着のためには一般的な結合層樹脂を使用することが望ましい。適切な結合層材料は、PP、EVA、LDPEまたはLLDPEベースのグラフトポリマーを含む。フィルムを形成した本発明のポリマー組成物を、一時的および恒久的な印刷等の、マーケティング、販売および販促のための材料が塗布されるベースとして用いることができ、このことは、小売の消費者製品を特に対象とするパッケージ工業によるそれらの採用を増加させることにつながり得る。
【0022】
この材料は、型内ラベリング(in-mold labelling)または型内装飾(in-mold decoration)の工程で用いられることがあり、バリヤフィルムを射出成形部分の表面に塗布し、または1回の射出成形ショット(shot)中に、印刷または装飾された部分を作製する。型内装飾の工程のための基材は、従来のプラスチック、または生分解性ポリマーのいずれかであってよい。
【0023】
このフィルムを、射出成形工程中の挿入物として用い、炭酸飲料用の密閉等の、射出成形した部分の内部に封入されたバリヤ層を作製することもできる。
【0024】
本発明のバリヤフィルムは、生分解性であり水溶性であるので、再生利用可能なプラスチックとともに使用するのに適する。例えば、このバリヤフィルムは、PETの再生利用に用いられる苛性洗浄工程で溶解するので、PETとともに用いるのに適する。このバリヤフィルムは、堆肥化でき、少なくともPLAと同じくらい速く生分解するので、PLAとともに用いるのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
改質および/または非改質の澱粉の組成物中の量は、全ての他成分の必要な添加量により制限される。すなわち、澱粉は残部となる。澱粉は、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、米、カラスムギ、アロールートおよびエンドウ豆源に由来することができる。好ましい源の1つは、トウモロコシ(穀物)澱粉である。非改質澱粉は、最終製品のバリヤ特性に寄与しうる再生可能な資源からの、安価な生分解性の原材料であり、したがってこの用途に非常に魅力的である。しかしながら、その使用は、劣化(あるいは老化;retrogradation、脆性につながる結晶化)の発生により制限され、結果的に形成される製品の光学的透明性により制限され、フィルム形成特性により制限され、また、引張の弾性により制限される。全澱粉量の画分としての非改質澱粉の好ましい濃度範囲の1つは、0から50%であるが、100%までの増加も可能でありうる。
【0026】
改質澱粉が存在する場合、その上限はそのコストにより主として決定される。この成分は、良好なフィルム形成特性、良好な光学特性、および劣化に対する耐性を含む、生じる材料への構造上の利益を与えることができる。澱粉の劣化および結晶化は、澱粉ベースのプラスチックの最も重要な実用上の問題の1つに関連しうる。これは、澱粉ベースのプラスチックは、焼いた食品におけるステーリング(老化;staling)過程に類似して、時間と共に脆くなる傾向を有するからである。一般的な改質澱粉には、ヒドロキシルアルキルC2〜6基を有する改質澱粉、または無水ジカルボン酸との反応により改質された澱粉が挙げられる。好ましい改質澱粉の1つは、ヒドロキシプロピル化したアミロースである。他の改質澱粉は、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシブチルで置換されていて、ヒドロキシエーテル置換体を形成するものであることができる。アセテート、または無水酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸もしくは無水オクテニルコハク酸等の酸無水物を用い、エステル誘導体である改質澱粉を製造することができる。置換の程度(置換された単位中のヒドロキシル基の平均数)は、好ましくは0.05から2である。もし改質澱粉を用いるなら、好ましい澱粉の1つは、高アミローストウモロコシ(穀物)澱粉であり、より好ましくはヒドロキシルプロピル化した高アミロース澱粉である。この製品中のヒドロキシプロピル化の最小水準は3.0%であり、より好ましくは6.0%である。一般的な値は、6.1から6.9%である。コスト削減のため、かつ特性最適化のために、この澱粉の一部を、以下のものにより置換することが可能である:
1)より高いまたはより低い水準のヒドロキシプロピル化した澱粉、
2)より高い水準の非改質澱粉(これは、改質澱粉のヒドロキシプロピル化の水準が増加するなら可能でありうる)、
3)より高い疎水性の程度を有する、無水オクテニルコハク酸(OSA;octenyl succinic anhydride)により改質される澱粉(この改質澱粉を添加することにより、置換の程度が増加するとともに、耐水性が増加する。本発明のポリマーから形成されるフィルムが、流動体を含むパッケージ用途にバリヤ層として組み入れられ、この状況における相対湿度が90%以下でありうるときに、これは該当する。このOSA澱粉中のアセチル結合は、水および生物学的活性環境に接近したときに、その材料が生分解性を保持することを保証する。)、または
4)澱粉共重合体、好ましくは澱粉でグラフトしたスチレンブタジエンからなる澱粉共重合体(この材料は、製品の耐衝撃性を改善する。)
【0027】
この組成物のポリマー成分b)は、好ましくは、澱粉に適合し(compatible)、水溶性であり、選択される1種または複数の澱粉の加工温度と適合する融点を有する。ポリビニルアルコールは、好ましいポリマーの1つであるが、エチレンビニルアルコール、エチレンビニルアセテート、またはポリビニルアルコールとの混合物(ブレンド)のポリマーも使用することができる。選択されるポリマーは、好ましくは室温条件で水溶性であるべきではない。PVOHは、優れたフィルム形成およびバインダー特性、良好な弾性および澱粉ベース配合物の加工補助の組合せを提供する。PVOHは、ビニルアセテートモノマーの重合によりなされる、ポリビニルアセテートの加水分解により製造される。完全に加水分解したグレードのものは、ほとんどアセテート基を含まず、あっても残余のものであるが、部分的に加水分解したグレードのものは、いくらかの残余のアセテート基を保持する。完全に加水分解したグレードのものは、熱水(90℃)中に溶解し、室温に冷却するときに溶液中に残存する。PVOHの好ましいグレードのものは、90000〜112000の範囲の重量平均分子量、25〜70mPa・sの範囲の固有粘度、および99.0〜99.8%の範囲の加水分解率を有するものを含む。より分子量の大きいグレードのPVOHは、耐衝撃性を改善し、感水性を低減するものと思われる。PVOHの量を増加させることは、破壊時の伸びを著しく増大させ、ヤング率を著しく減少させる。フィルム形成には、6%以下では難しくなることがある。従って、薄手フィルムのバリヤ材料に好ましい濃度範囲は、4から12%であり、射出ブロー成形瓶に塗布されるバリヤ材料に好ましい濃度範囲は、4から12%である。
【0028】
一連の可塑剤および湿潤剤は、加工を助け、バリヤ材料の機械特性を制御しかつ安定化するために、本発明の組成物中において有用であり、特に水分含有率および相対湿度への依存を低減させるのに有用である。所望の可塑剤含有率は、主に、(同時)押出または(同時)射出の成形工程、およびそれに続くブロー(吹込み)または延伸の工程の間に必要な加工挙動に依存するほかに、最終製品の必要な機械特性にも依存する。コスト、および例えば食物のパッケージにおける使用のため等のフィルムがおかれる目的は、適切な可塑剤の選択において重要な問題である。可塑剤は、3つの役割を果たす:すなわち、それは、押出混合工程および積層工程に適したレオロジーを提供し;製品の機械特性に肯定的な影響を与え;抗劣化剤(anti-retrogradation)または抗結晶化剤として作用しうる。好ましい可塑剤は、50〜6000、より好ましくは50〜2500、なおより好ましくは100〜400の範囲の分子量を有するものであり、望ましくは、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、グリセロールトリオレエート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、グリセリルトリアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ポリエチレンオキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される。この可塑剤は、結晶化しないものが好ましい。OH基の数が増えるほど、その可塑剤は結晶化を低減するのにより有効である。好ましい一実施形態において、可塑剤はマルチトールである。
【0029】
1つの好ましい可塑剤含有率は、特定の用途、および同時押出または積層工程に応じて、10〜40%である。
【0030】
ソルビトール、マルチトールおよびキシリトールは、特に良好な湿潤剤としても機能する。グリセロールは、加工中にPVOHを溶解することを助ける。いくつかのポリオール(特にソルビトールおよびグリセロール)は、ソルビトールの場合に不透明な結晶質フィルムが形成されうるか、グリセロールの場合に油状のフィルムが形成されうるかのいずれかである、フィルムの表面へのマイグレーション(migration)を示すことがある。様々なポリオールの混合は、様々な程度でこの効果を抑制する。ポリオールは、機械特性を高めることにつながる塩との相乗効果を有することがあると知られている。
【0031】
PEG化合物を、乳化剤、可塑剤または湿潤剤として用いることができる。ポリエチレンオキシドおよびポリエチレングリコールは、互いに代えて、または一緒に、耐水性の増加を提供し、多層構造(MLS;multi-layer structures)中の剥離につながりうる膨潤を防ぐこともできる。
【0032】
トリブチルシトレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートおよびアセチルトリエチルシトレートを含む、PVC工業においてより一般的に用いられる他の可塑剤もまた適することがある。
【0033】
0から20%の湿潤剤または水結合剤、あるいはゲル化剤を(補助)可塑剤((co)plasticizer)として作用させるために用いることができる。適する例は、カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、ゼラチン、糖またはグルコースである。一般的に食品中で増粘剤として用いられ、冷水中では部分的に可溶であるが熱水には完全に可溶である、カラギーナン等のバイオポリマーは、機械特性を調整するのに適することがある。水を結合することにより、これらの成分は著しい可塑化機能を有することがある。機械特性を改善し、感水性(感湿性)を低減するために、ゼラチンを加えることがある。キサンタンガムは、高い保水力を有し、乳化剤としても作用し、澱粉組成物中では抗劣化効果を有する。アラビアゴムは、テクスチャライザ(texturiser)およびフィルム形成剤としても使用されることがあり、親水性の炭水化物と疎水性のタンパク質とは、親水コロイドを乳化しおよび安定化する特性を有効にする。グアーガムは、澱粉組成物中で類似の抗結晶化効果を有する。別の適切な湿潤剤は、グリセリルトリアセテートである。可塑化および湿潤剤の効果は、塩化ナトリウムおよび水酸化ナトリウム等の塩によって得られまたは促進されることもある。カリウム塩、酢酸カリウム、酸化カルシウムおよびヨウ化ナトリウムも適している。カルシウム塩は、押出された澱粉材料の剛性およびサイズ安定性を改善し、さらにゲル化を助けるカラギーナンと組合わせて用いられることがある。
【0034】
ステアリン酸等の脂肪酸および脂肪酸塩を組成物中での潤滑剤として用いることもできる。これは、例えばワックスよりも、澱粉とのより良好な適合性を示しているからである。ステアリン酸は疎水性であり、したがって、澱粉ベースの材料の感水性(感湿性)を改善しうる。ステアリン酸と同様に、ステアリン酸カルシウム等の塩を用いることができる。乳化剤の脂肪酸部分の飽和の程度は必要とされるように機能するための能力を制限し、より飽和した脂肪酸が好ましい。ステアリン酸は、加工助剤として特に有用であるが、PEOまたはPEGの存在下では、それは必要でないことがある。ステアリン酸の好ましい量は、0.5%から1.5%である。ステアリン酸のナトリウム塩およびカリウム塩が用いられることもある。再び、コストは、この成分のこの選択における要因になりうるが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸およびベヘン酸は全て適する。適切な加工助剤の選択は、MLS中での剥離に対する必要な耐性により主として制限される。
【0035】
亜硫酸塩剤(二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムおよびカリウムの重亜硫酸塩、およびメタ重亜硫酸塩)を、酵素的および非酵素的な褐変を防止するために多くの食物に加えると、本発明の組成物中で抗酸化剤または還元剤として作用する。亜硫酸塩は、カルボニル中間体との反応により非酵素的褐変を抑制し、それにより褐色の色素を形成する、そのさらなる反応を防止する。クエン酸は、しばしばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムと合わせて、酵素的褐変の化学的阻害剤として長く用いられてきた。褐変が望ましくない用途のための重亜硫酸カリウムの1つの好ましい濃度は、2%以下であってよく、2%以下のアスコルビン酸と合わせることもできる。クエン酸は、1%超の量では利益をもたらさないことが示されている。フィルムが高温の加工に曝される場合には、2重量%以下の量の、ビタミンEまたはヒンダードフェノール等の熱安定剤が適している。
【0036】
組成物中に乳化剤が存在し、フィルムの用途が食物のパッケージである場合では、好ましい乳化剤は、食物グレードの乳化剤である。一般的に、乳化剤の選択は、そのHLB値に基づく。好ましい乳化剤は、1と22との間のHLB値をもつ食物グレードの乳化剤から選択され、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールトリオレエート、グリセロールモノステアレート、アセチル化モノグリセリド(ステアレート)、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、カルシウムステアロイル−2−ラクチレート、グリセロールモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、大豆レシチン、モノグリセリドのジアセチル化酒石酸エステル、ナトリウムステアロイルラクチレート(ステアロイル乳酸ナトリウム;sodium stearoyl lactylate)、ソルビタンモノラウレートが挙げられる。ナトリウムステアロイルラクチレート(ステアロイル乳酸ナトリウム)およびグリセロールモノステアレートは、澱粉系において一般に用いられる。
【0037】
【表1】

【0038】
グリセロールモノステアレートは、親油性の非イオン性界面活性剤であり、これは澱粉組成物中で消泡効果および抗劣化効果を有するので、この用途に特に適する。1〜1.5%からの範囲の量で加えられたグリセロールモノステアレートは、乳化剤として作用し、機械特性を安定化し混合物(ブレンド)の均一性を増大させる。0.25%から1.5%のステアロイル乳酸ナトリウム(ナトリウムステアロイルラクチレート)を可塑剤系に加えて、機械特性を安定化し、混合物の均一性を増大させることができる。ステアロイル乳酸(ナトリウムまたはカルシウムの塩として)は、生地強化剤(dough strengthener)としても一般的に用いられ、そのため抗劣化剤として作用することができる。グリセロールモノステアレートとステアロイル乳酸ナトリウムとを組み合わせることは、特性のより速い安定化につながる。HLB値は、加成則に従い、SSLおよびGMSの適切な混合物について、好ましくは約4から10である。
【0039】
水は、澱粉を「ゼラチン化(gelatinising)」(分解または融解とも呼ばれる)し、ポリマーゲル構造にする目的で加えられる。水は、最終製品中で可塑剤のように作用し、その中で材料を柔軟にする、あるいは剛性率を低減することもできる。バリヤ材料の水分含有率は、30%以下または75%超の水分活性すなわち相対湿度(RH)で変化しうる。多くのバリヤフィルムおよびバリヤ瓶の用途において、バリヤ材料が曝される局所的な相対湿度は、90%までもの値に達することがある。機械特性、積層特性およびバリヤ特性を安定にするため、かつ全温度で加工を容易にするために、非揮発性の可塑剤が好ましい。そのため、いくらかまたは全ての水が、混合段階の間もしくは後、および/またはその後の射出成形もしくはフィルム形成の供給段階中に乾燥される(蒸発する)ことがある。これは、押出機の容器に通気孔を設ける、および/またはペレットの運転中乾燥により達成され得る。いくらかの残存する水が、湿潤剤の補助と適切に結合されて、工程中の発泡、または使用中の機械特性の著しい変化を回避する。10%の低さの自由水濃度で、無可塑化組成物の押出加工は可能であり、ポリオール可塑剤との配合物は、射出成形前に自由水0%(パーキンエルマー製により測定した130℃での水分バランス)にまで乾燥することができる。好ましい自由水含有率は、水分脱離実験により測定されるように、最終製品の使用中のRH範囲での配合物の平衡含水率である。これは、この配合物の特定の組成に依存するが、0〜1%の範囲、より好ましくはこの範囲の低い方の下端の値であってよい。
【0040】
フィルム形成組成物中に組み込まれ得る充填物には、炭酸カルシウム、カオリン、粘土、二酸化チタン、滑石(タルク)、天然繊維および合成繊維が挙げられ、組成物の目的に従って選択することができる。
【実施例】
【0041】
本発明のバリヤ材料は、表2に提示する配合の澱粉ポリマー組成物から形成されうる。
選択した、一般的なパッケージ材料、およびパッケージ目的のバリヤフィルムの酸素透過性を、表3に比較の手段として示す。選択した、一般的なパッケージ材料、およびパッケージ目的のバリヤフィルムの二酸化酸素透過性を、表4に比較の手段として示す。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
本発明の組成物のバリヤ性能に寄与する主な成分は、澱粉およびPVOHである。ポリオール可塑剤もまたバリヤ特性に寄与する。これらの成分および押出工程中にこれらの成分により形成されうる全ての複合体の相乗効果は、本発明のポリマー材料の酸素バリヤを著しく促進することを助けることができる。
【0045】
【表4】

【0046】
本発明のバリヤ層は透明であり、製品を認知できるようにする多層パッケージの品々に理想的に適している。本発明のバリヤ材料の光学特性を、250マイクロメートルのシートで測定し、8〜10%の曇り(ASTM D1003−00)、85〜95%の光透過率(ASTM D1746−92)および84.7%の60°鏡面光沢度(ASTM D2457−97)という結果を得た。試験したフィルムは、塗布したバリヤ層の10倍の厚さであったので、このバリヤ材料は、PET清涼飲料瓶において20〜40マイクロメートル厚のバリヤ層に必要な光学特性、すなわち90%超の光透過率、3%未満の曇り、2未満を示すlab bを特徴とする黄変を達成している。15マイクロメートル厚の層のEVOH−Fは1.5%の曇りを有し、12〜14マイクロメートルのPETは2.5〜3.9%の曇りを有し、20〜22マイクロメートルのPPは2.2〜3.5%の曇りを有する。
【0047】
製造方法:
この材料は、同方向または逆方向の回転の2軸スクリュー押出機または選択した設計の1軸スクリュー押出機を用いて押出混合することにより製造される。好ましい工程は、少なくとも10barの押出圧力で、少なくとも100RPMのスクリュー速度での2軸スクリュー同方向回転混合である。他の可塑剤の量および性質によって、この工程(可塑剤と一緒の液体注入により)に水を加えることができる。押出物ストランドについての、対流乾燥、接触加熱、IR加熱もしくはマイクロ波乾燥、粒状物についての遠心分離および流動層、または容器の通気、あるいはこれらの組合せにより、水の除去を行うことができる。水中ペレット製造、ダイフェースカット、またはストランドの冷却およびカットにより、粒状物を得ることができる。
【0048】
PETを伴う同時射出延伸ブロー成形:
同時射出(Co-injection)
ホットランナーシステムまたはコールドランナーシステムで行われる、従来のスクリュー駆動工程または射出駆動工程を用いて、この組成物を射出成形することができる。本発明の組成物は、高温での同時射出成形のためのPETと適合するように設計されている。本発明の組成物は、業界標準の予備成形同時射出機でうまく同時射出成形されることが見込まれている。予備成形の型の冷たい半分(cold half)は標準的な設計であることが見込まれ、熱い半分(hot half)は特別な設計でありうる。2つの材料を、分離したマニホールド(多岐管、連結管)に運び、ノズル中で合わせ、環状の流れパターンを形成することができる。それぞれのマニホールドの温度制御を、良好な熱的分離により別々にすることができる。このノズルは、両方の材料流れが同一の温度でなくてはならない、マニホールドシステムの唯一の部分である。この温度は一般に、PETの要件に適合する約250〜280℃である。1/2リットル瓶のための、典型的な予備成形体28gのための加工条件を表5に示す。
標準的な工業用脱湿乾燥機中で、材料の必要な乾燥をすることができる。
【0049】
【表5】

【0050】
瓶のブロー(Bottle blowing)
本発明の組成物を、従来の延伸ブロー成形ラインで、瓶中に容易にブローすることができる。予備成形温度は100から120℃の範囲であってよく、35から45barのブロー成形圧力が使用されるであろう。
【0051】
接着(Adhesion)
50dyne/cmを超える表面張力を有するバリヤ材料の極性のため、かつ結晶化度に関連した収縮がないために、PETとの接着が優れていることが見込まれている。
【0052】
機械特性
バリヤ層は、一般に多層構造の全層厚さの約5〜20%を構成する。そのため、その機械特性は、最終製品の機械特性に幾分寄与するであろう。バリヤ材料の機械特性が低いときには、何らかの埋め合わせが必要とされ得る。すなわち、容器の壁の厚さをわずかに増加させることにより(しかしながら、バリヤ層の厚さを上回らず、したがって最大10%増で)、従来のバリヤ材料に比べて削減したコストで優れたバリヤ特性を得られるという利点により、このことは相殺される。また、瓶ブロー工程において、軸方向延伸が、約1.5×から3.5×であり、フープ延伸が、約3.5×から5×であるとき、伸び挙動が重要である。この延伸は、加熱形状中で生じ、バリヤ層は、マトリックス(母材)により支持される。表6で本発明に係るバリヤ材料の機械特性を、射出延伸ブロー成形用の市販の材料と比較している。
【0053】
【表6】

【0054】
フィルム押出注型(Cast film extrusion):
本発明のバリヤ材料を、光学印刷およびワニスとともに、単層の製品として用いることもできる。この材料は熱成形加工にも理想的に適するため、生じるフィルムは、菓子類の棒状物もしくは袋(パウチ)のために薄く、または熱成形用途のために厚くすることができた。
本発明の配合物は、薄手フィルムの押出注型(extrusion casting)に適する。当業者は、適切な可塑剤量を選択することができ、必要な用途のための、必要な溶融強度および機械特性を得ることができる。
本発明において用いられる好ましい組成物は、低温封止および熱封止が可能である。
【0055】
2軸配向フィルムの押出:
本発明のバリヤ材料は、積層体に同時押出し(共押出し)することができ、または、別個の積層段階で、従来のフィルムポリマー(例えば2軸配向PP)と合わせることができる。他の材料は、適切な、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)等のパッケージポリマー、またはポリ乳酸(PLA)もしくは他のポリエステル等の生分解性ポリマーでありうる。
【0056】
追加的な結合層および保護コーティングが必要と考えられるならば、本発明のバリヤ材料は、好ましくは、3層積層体または5〜7層製品の中での中間層として用いられる。
加えて、耐水性が片側のみで必要とされ、または水蒸気バリヤがパッケージされた製品に必要でないならば、2層パッケージ包装の内部または外部の層にもなることができる。当業者は、適切な可塑剤量を選択し、所望のポリマーの組合せに適合する必要な粘度を得ることができる。ほとんどの場合では、フィードブロック(feed block)が様々な材料層の制御に適しており、他の場合では、マルチマニホールドダイがより望ましいことがある。
【0057】
多層の適合性(Multilayer compatibility)
本発明のフィルムは、PET等の極性材料との接着に優れるが、一般的な結合層樹脂であるBO−PP等の非極性材料との接着も示されている。
【0058】
適切な結合層材料には、PP、EVA、LDPEまたはLLDPEベースのグラフトポリマーが挙げられる。PPへの接着について、Atofina製のOrevac PPCが透明の用途に適し、Atofina製のOrevac 18729または18910が不透明の用途に適する。他の適切な結合層には、EVA共重合体、アクリル系の共重合体および三元重合体、イオノマー、メタロセンPE、エチレンアクリル酸エステル三元重合体、ならびにエチレンビニルアセテート三元重合体が挙げられる。無水物改質ポリマー(DuPont Bynel CXA50E662等)は、本発明の乾燥配合物にも適する。このバリヤ材料は、本質的に帯電防止性であり、全ての標準的な印刷技術により印刷またはコーティングされ得る。テープ剥離試験(tape peel test)により測定したところ、インクおよびコーティングとの接着は、溶媒ベースのインクについて優れている。引裂伝播抵抗は、200〜400Nm(ASTM D 1938)であり、動摩擦係数は、0.1〜0.3(ASTM D 1434)である。
【0059】
フィルムブロー(Film blowing)
多層2軸配向フィルム押出についての上述の原理によく従いながら、このバリヤ材料を、必要であれば類似の結合層の原理を用いて、ブローしたフィルムに同時押出(共押出)することができる。
著しくより低いコストで、最も一般的に用いられる材料(例えばMXD6)よりも良好なバリヤ性を提供するバリヤ材料の中でも、本発明の組成物は他に類を見ず、層の厚さ、および化合物の価格の点の両方で、コスト削減が可能である。
このバリヤ材料の成分の性質は、オイルベースのポリマーと比べてその価格安定性を、MXD6と比べて価格競争性を保証する。これらは一般に、MXD6の価格の80%で有利に入手できる。
さらに、この組成物の水溶性は、このバリヤが合わされるマトリックス(母材)材料に優れた再生利用可能性を提供する。この材料は、単層構造バリヤパッケージとして用いられると、さらに肥料にでき生分解性であり、かつ環境温度でごみとして崩壊し生分解する。これらの他に類を見ない特性は、配合中における化合物の組合せによるものである。
【0060】
当業者は、本発明の本質的な教示から外れることなく、本発明が様々な方法で実施されうることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ベースで、
a)澱粉45から90重量%;
b)ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、およびエチレンとビニルアルコールとの共重合体から選択され、溶融状態の前記澱粉成分と適合する融点を有する、水溶性ポリマー0.1から15重量%;および
c)50〜6000、より好ましくは50〜2500、なおより好ましくは100〜400の範囲の分子量を有し、望ましくは、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、グリセロールトリオレエート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、グリセリルトリアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ポリエチレンオキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される1種または複数の可塑剤5から45重量%;
を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記澱粉が、高アミロース澱粉および/または、ヒドロキシルアルキル基、アセテート、もしくは無水ジカルボン酸、またはグラフトポリマーとの反応により改質された澱粉から選択される改質澱粉である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記可塑剤が、マルチトール、キシリトールおよびエリスリトールからなる群から選択される1種または複数である、請求項1から2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
乾燥ベースで2.5重量%以下のC12〜22の脂肪酸または塩を追加的に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1と22との間の親水性・親油性バランス(HLB)値を有する乳化剤を3%以下で追加的に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分b)がポリビニルアルコールである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリエチレンテレフタレートまたはポリ乳酸と請求項1に記載の組成物との同時射出成形積層体。
【請求項8】
印刷またはラベリングされた射出成形部分を製造するために型内ラベリング工程中で使用するための、請求項1に記載の組成物の同時押出または単層のフィルム。
【請求項9】
型内ラベリングおよび/または型内装飾の工程中でのバリヤ層として使用するための、請求項1に記載の組成物の、同時押出または単層。
【請求項10】
飲料瓶にブロー成形するための、請求項7に記載の同時射出成形積層体の予備成形物。
【請求項11】
ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ乳酸の、請求項1のいずれか一項に記載の組成物との同時押出積層体。
【請求項12】
薄手フィルムパッケージの用途のための、請求項1に記載の組成物の単層。
【請求項13】
薄手フィルムパッケージの用途のための、請求項11に記載の同時押出積層体。

【公表番号】特表2009−533538(P2009−533538A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505678(P2009−505678)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000495
【国際公開番号】WO2007/118280
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(502247341)プランティック・テクノロジーズ・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】