説明

ポリマーブレンド組成物の製造方法

混和性ポリマーブレンド類および相溶性かつ非混和性ポリマーブレンド類の製造方法が開示される。前記ポリマーブレンド類は成分としてポリイミドを含有する。前記混和性ポリマーブレンド類は単一のガラス転移温度を有している。前記相溶性ポリマーブレンド類は2つのガラス転移温度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーブレンドを含有する組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーブレンド類は多くの分野で使用されている。例えば、金属部品はプラスチック材料(ポリマー組成物)で製造された部品に置き換えられて、軽量で、金属部品と同等もしくはそれを上回る性能を持つ部品が誕生している。自動車のボンネット内部品などの多くの用途においては、耐熱性の高いプラスチック材料が求められている。頻繁に求められてはいるが、耐熱性の高いプラスチック材料では成形が難しい。ポリマー類をブレンドすることは、高耐熱性などの物性と加工性について所望の組み合わせを有するプラスチック材料を実現するための1つの方法である。ポリマーブレンド類には、混和性ポリマー類や非混和性ポリマー類、あるいはこれらの組み合わせがある。非混和性ポリマー類を含むブレンド類は少なくとも2相を有しており、こうしたブレンド類は相溶性かあるいは非相溶性の何れかであろう。非混和性ポリマー類の非相溶性ブレンドでは、ポリマー加工中、特に射出成形中に、層間剥離や皮膜芯構造の形成などに見られるように、相分離が発生しうる。こうした材料で言及される「層間剥離」とは、剥離あるいは半透明紙効果を生じる表面層の視認可能な分離を指す。非相溶性の場合にはまた、機械的特性が低く、表面周縁部の外観が悪くなる(縞模様や真珠光沢の発生など)。非混和性ポリマー類の相溶性ブレンドにおいては通常、層間剥離は生じず、受け入れ可能な最終用途特性を有しうる。
【0003】
一方、混和性ポリマーブレンド類の場合には、所望の最終用途特性が得られ、また混和性組成範囲内にあるそれぞれの成分が持つ特性の中間の製品特性を作り出せるという利点も得られる。混和性ブレンド類では層間剥離が生じることはなく、通常、整合性のある物理的特性が得られる。
【0004】
2つのポリマー類の混和性ブレンドは一般に望ましいものであるにもかかわらず、それを実現するのは難しい。同種あるいは類似の分類に入る2つのポリマー類をブレンドすれば混和性になる可能性が高いと期待されるが、同種の分類に入るポリマー類は非混和性になることが頻繁にあり、多相の組成物を形成する。例えば、ソルベイ(Solvay)社のACUDEL 2000は、PPSUとPSUの2つのポリスルホン類の非混和性ブレンドである。さらに、そうした同種の分類に入るポリマー類の非混和性ブレンドについては、多くの例が文献に示されている。このように、ポリマーの混和性については、同種に分類されるポリマー類であっても、予測困難である。
【0005】
前述の理由から、非剥離性ポリマーブレンド類、すなわち、剥離の生じないブレンド類に対して、混和性ブレンドであるか非混和性ブレンドであるかにかかわらず、相溶性ブレンド類に対するニーズは存在するが、このニーズは満たされていない。より具体的には、高耐熱性を有するポリマーブレンド類の開発と、そうしたポリマーブレンド類の製造方法の開発に対するニーズは満たされていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、非剥離性ポリマーブレンドを含有する熱可塑性樹脂組成物類の製造方法を含んでいる。ある実施形態においては、ポリマーブレンドの製造方法はプレポリマーとポリマーとの溶融混合を含む。前記プレポリマーは、遊離アミン基と遊離無水物基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、また、二無水物とジアミンとから誘導される構造単位を含んでいる。前記ポリマーは、構造基と末端基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含んでいる。前記反応性成分は、前記遊離無水物基、遊離アミン基、またはこれらの組み合わせに対して反応性を有する。該ポリマーブレンドは非剥離性である。
【0007】
一部の実施形態においては、前記方法は、二無水物とジアミンとから誘導される構造単位を含有するポリマーの利用を含む。一部の実施形態においては、前記プレポリマーとポリマーは共通のジアミンあるいは二無水物を含んでいる。前記プレポリマーとポリマーが共通のジアミンあるいは二無水物を含有する場合、前記ポリマーブレンドは、前記プレポリマーとポリマーの量が所定のガラス転移温度を有するブレンドを製造するに十分であれば、1つの所定ガラス転移温度を有するであろう。
【0008】
一部の実施形態においては、前記方法は、異なるジアミン類と二無水物類とから誘導されるプレポリマーとポリマーの利用を含む。前記プレポリマーとポリマーが異なるジアミン類と二無水物類とから誘導される場合、前記ポリマーブレンドは2つ以上の所定ガラス転移温度を有するであろう。
【0009】
一部の実施形態においては、組成物の製造方法は、プレポリマーとポリマーとを溶融混合してポリマーブレンドを製造するステップと、該ポリマーブレンドと追加成分とを溶融混合するステップと、を含む。前記プレポリマーは、遊離アミン基と遊離無水物基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、さらに、二無水物とジアミンとから誘導される構造単位を含んでいる。前記ポリマーは、構造基と末端基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含んでいる。前記反応性成分は、前記遊離無水物基、遊離アミン基、またはこれらの組み合わせに対して反応性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】層間剥離を生じた試料の写真を示す。
【図2】本質的に層間剥離のない試料の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(a)遊離アミン基およびまたは遊離無水物基を含むプレポリマー類と、(b)前記プレポリマーの遊離無水物基およびまたは遊離アミン基と反応性を有する構造基およびまたは末端基を有するポリマー類と、から誘導される非剥離性組成物類が今や製造できるとの予期せぬ発見に基づいている。驚くべきことに、前記組成物類(および該組成物類から誘導される成形品類)においては、非混和性で非相溶性ブレンド類に通常見られる層間剥離の問題が克服されうる。組成物類(および該組成物類から誘導される成形品類)においては混和性を向上させ、混和性ブレンド組成物類の範囲を拡大することもできる。
【0012】
作用例を除き、あるいは別途明示がある場合を除き、明細書および請求項で用いられている成分量や反応条件等を表す数字や表現は、すべての場合について「約」という用語で修飾されるものと理解されたい。本明細書では種々の数値範囲が開示されている。これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本明細書のこうした様々な数値範囲は近似である。
【0013】
本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などや、「第1位の」「第2位の」など、および「(a)」「(b)」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いるものである。単数表現は複数も包含する。「適宜な」あるいは「適宜に」は、後述する事象や状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、関連する説明は事象が起こった場合と事象が起こらなかった場合の両方を包含する。同成分あるいは同特性に係るすべての範囲の終点は、その終点を含んでおり独立に組み合わせることができる。明細書全体において、「1つの実施形態」、[他の実施形態]、「ある実施形態」「一部の実施形態」などは、該実施形態に関連して記載される特定の要素(例えば、特長や構造、特性、およびまたは特徴など)が本明細書の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味しており、これ以外の実施形態に含まれていても含まれていなくてもよい。また、記載された要素(類)は、種々の実施形態で適切に組み合わせられるものと理解されたい。
【0014】
化合物は正式名称を用いて記述される。例えば、示された基によって置換されていない位置は、示された結合あるいは水素原子で飽和する原子価を有するものと理解されたい。2つの文字間あるいは記号間にない「−」は、置換基の結合点を示している。例えば、−CHOはカルボニル基の炭素を経由して結合される。
【0015】
ベンジルプロトンの定義は当分野では周知であり、本発明の観点では、それは、フェニル環あるいはベンゼン環などの少なくとも1つの芳香族環に化学的に直接結合した少なくとも1つの脂肪族炭素原子であって、この炭素原子に直接結合した少なくとも1つのプロトンを有する脂肪族炭素原子を包含する。
【0016】
本明細書において、「実質的にベンジルプロトンを含まない」あるいは「本質的にベンジルプロトンを含まない」とは、例えば、ポリイミドスルホンプレポリマーなどの前記プレポリマーが、含有するベンジルプロトンから誘導される構造単位を約5モル%未満しか含まず、一部の実施形態では約3モル%未満しか含まず、また他の実施形態では約1モル%未満しか含まないことを意味する。ベンジル水素としても周知の「ベンジルプロトンを含まない」とは、前記プレポリマーが、ベンジルプロトンあるいはベンジル水素含有のモノマー類および末端キャップ類から誘導される構造単位を0モル%含むことを意味する。ベンジルプロトンの量は、化学構造に基づいた通常の化学分析によって求められる。ある実施形態においては、前記ポリマーブレンドは本質的にベンジルプロトンを含まない。
【0017】
用語「アルキル」は、指定された数の炭素原子を有するC1−30の分枝鎖および直鎖の不飽和脂肪族炭化水素基類を含むものとする。アルキルには、これに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、n−およびs−ヘキシル、n−およびs−ヘプチル、およびn−およびs−オクチルなどが含まれる。用語「アリール」は、これに限定されないが、指定された炭素数を含む、フェニル、トロポン、インダニル、あるいはナフチルなどの、芳香族部分を意味するものとする。
【0018】
別途明記した場合を除き、ASTM試験はすべて、ASTM標準2003年度版からのものである。
【0019】
本明細書で用いられる「ポリマーブレンド」とは、2種類以上のポリマー類の巨視的に均質な混合物を意味する。「混和性ブレンド」とは、単一のガラス転移温度(T)を有するポリマーブレンドであって、倍率15、000倍の透過型電子顕微鏡で判断される単相樹脂形態のことである。「層間剥離」とは、ポリマー組成物からなる成形品本体から表面層が分離することを指す。層間剥離の有無は、後述するように、0.5m離れた位置からの目視検査(両眼とも視力1.0)で判断することができる。
【0020】
「相溶性」ポリマーブレンドとは、すべての部分において巨視的に均質な物理的特性を示し、2つ以上のガラス転移温度(T)を有し、また、上記の電子顕微鏡で観察して多相系の樹脂微細組織を示すが、層間剥離は生じない非混和性ポリマーブレンドのことである。
【0021】
用語「非剥離性」とは、組成物の特性、あるいは、該組成物から誘導される成形品に言及し、該成形品あるいは組成物は、剥離あるいは半透明紙効果を生じる表面層の視認可能な分離を生じることはない。本明細書では、非剥離性成形品のことを、「本質的に層間剥離がない」とも言う。
【0022】
「本質的に層間剥離がない」とは、目視検査で層間剥離が見られないことである。ある実施形態においては、検査対象試料は射出成形された棒である。層間剥離が見られる試料を図1に示す。本質的に層間剥離が見られない試料を図2に示す。「目視検査」は、0.5m離れた位置から、裸眼(例えば、正常視力に必要な補正レンズを除いていかなる拡大器具も用いずに、両眼とも視力1.0)で判断される。
【0023】
前記「プレポリマー」とは、二無水物とジアミンとから誘導される構造単位を含む、完全にはイミド化が終了していないオリゴマーである。典型的な二無水化物類は式(I)で表わされる構造を有する。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、Vは、炭素原子数が5〜50の、置換または未置換、飽和または不飽和の芳香族単環式および多環式基類と、炭素原子数が1〜30の、置換または未置換のアルキル基類と、炭素原子数が2〜30の置換または未置換のアルケニル基類と、これらのものを少なくとも1つを含む組み合わせと、からなる群から選択される四価のリンカーである。好適な置換基類およびまたはリンカー類には、これに限定されないが、炭素環式基、アリール基、エーテル類、スルホン類、硫化物類、アミド類、エステル類、およびこれらのものを少なくとも1つを含む組み合わせなどが含まれる。典型的なリンカー類は、これに限定されないが、式(II)などで表わされる四価の芳香族基を含む。
【0026】
【化2】

【0027】
式中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−C2y−(yは1〜20の整数)、および、パーフルオロアルキレン基を含むそれらのハロゲン化誘導体類などの二価部分か、あるいは、−O−または−O−Z−O−基の二価結合が3,3’、3,4’、4,3’、あるいは4,4’の位置にあり、Zは、これに限定されないが、式(III)で表わされる二価部分を含んでいることを特徴とするO−Z−O−基である。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、Qは、これに限定されないが、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−C2y−(yは1〜20の整数)、および、パーフルオロアルキレン基を含むこれらのハロゲン化誘導体類を含む二価部分である。一部の実施形態においては、前記四価のリンカーVは、ハロゲン類を含まない。一部の実施形態においては、生成するプレポリマー(ポリマーブレンドと同様に)が優れた溶融安定性を有しえるように、ベンジルプロトンを含まない基が用いられる。
【0030】
ある実施形態においては、前記二無水物は、芳香族ビス(エーテル無水物)を含んでいる。芳香族ビス(エーテル無水物)の具体例は、例えば、米国特許第3,972,902号や同第4,455,410号に開示されている。芳香族ビス(エーテル無水物)類の例としては、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(ビスフェノール−A二無水物)、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、および、これらのものの少なくとも2つを含む混合物などがある。ある実施形態では、前記二無水物は、オキシジフタル酸無水物類、ビスフェノール−A二無水物類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
前記のビス(エーテル無水物)類は、二極性の非プロトン性溶媒の存在下で、ニトロ置換フェニルジニトリルと二価フェノール化合物の金属塩との反応生成物を加水分解し、その後脱水することにより調製される。
【0032】
二無水物と等価な化学物質を使用してもよい。二無水物の化学的等価物類としては、二無水物を形成する四官能性カルボン酸類と、前記四官能性カルボン酸類のエステルあるいは部分エステル誘導体類などが含まれる。混合酸無水物類または無水物エステル類も前記二無水物の等価物として使用できる。本明細書および特許請求の範囲で使用される「二無水物」は、二無水物類およびそれらの化学的等価物類を指す。
【0033】
有用な二無水物は式(IV)で表わされる構造を有する。
【0034】
【化4】

【0035】
式中、R10は、炭素原子数が6〜20の芳香族炭化水素部分およびそれらのハロゲン化誘導体類、炭素原子数が2〜20の直鎖または分枝鎖アルキレン部分、炭素原子数が3〜20の環式アルキレン部分、あるいは、一般式(V)で表わされる二価部分、などの置換または未置換二価有機部分である。
【0036】
【化5】

【0037】
式中、Qは上記で定義した通りである。有機ジアミン類の具体例は例えば、米国特許第3,972,902号および同第4,455,410号に開示されている。ジアミン類の例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)スルフィド、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,4−ビス(p−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、および、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどがある。これらの化合物の混合物類を用いてもよい。ある実施形態においては、前記ジアミンは、芳香族ジアミンであり、より具体的には、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、スルホニルジアニリン、および、これらの混合物である。ある実施形態においては、前記ジアミンは、ジアミノジアリールスルホン類、メタフェニレンジアミン類、パラフェニレンジアミン類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0038】
一部の実施形態においては、前記プレポリマーは、オキシジフタル酸無水物(ODPA)とジアミノジアリールスルホン(DAS)とから誘導される構造単位を含むポリエーテルイミドプレポリマーである。オキシジフタル酸無水物は一般式(VI)で表わされる構造を有しており、その誘導体類についてさらに以下に定義する。
【0039】
【化6】

【0040】
式(VI)で表わされる前記オキシジフタル酸無水物類には、4,4’−オキシビスフタル酸無水物、3,4’−オキシビスフタル酸無水物、3,3’−オキシビスフタル酸無水物、およびこれらの任意の混合物類などが含まれる。例えば、式(VI)のオキシジフタル酸無水物は、下記の式(VII)で表わされる構造を有する4,4’−オキシビスフタル酸無水物でもよい。
【0041】
【化7】

【0042】
用語オキシジフタル酸無水物類には、前記プレポリマーの製造にも用いられるオキシジフタル酸無水物類の誘導体類が含まれる。ポリエーテルイミド生成反応における前記オキシジフタル酸無水物の化学的等価物として機能しうるオキシジフタル酸無水物誘導体類には、式(VIII)で表わされるオキシジフタル酸無水物誘導体類が含まれる。
【0043】
【化8】

【0044】
式中、RおよびRは独立に、水素、C1−C8アルキル基、またはアリール基のいずれかである。RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、共に、オキシジフタル酸無水物酸やオキシジフタル酸無水物エステル、オキシジフタル酸無水物酸エステルを生成する。
【0045】
オキシジフタル酸無水物類の誘導体類は、下記式(IX)で表わされるものであってもよい。
【0046】
【化9】

【0047】
式中、R、R、R、および、Rは独立に、水素、C1−C8アルキル基、またはアリール基のいずれかである。R、R、R、およびRは同じであっても異なっていてもよく、共に、オキシジフタル酸やオキシジフタルエステル、オキシジフタル酸エステルを生成する。
【0048】
ジアミノジアリールスルホン(DAS)類は一般式(X)で表わされる構造を有する。
【0049】
【化10】

【0050】
式中、ArおよびArは独立に、単環構造あるいは多環構造を持つアリール基である。数個のアリール環が、例えば、エーテル結合やスルホン結合あるいは2つ以上のスルホン結合などで互いに結合していてもよい。前記アリール環は縮合していてもよい。ある実施形態においては、ArおよびArは独立に、5〜12の炭素原子を含む。ある実施形態では、ArおよびArは共にフェニル基である。
【0051】
ある実施形態においては、前記プレポリマーは、式(XI)で表わされる構造単位を2つ以上、具体的には10〜1000個、より具体的には30〜500個含むODPA/DASポリエーテルイミドである。
【0052】
【化11】

【0053】
式中、ArおよびArは上記で定義した通りである。
【0054】
ある実施形態においては、前記プレポリマーの合計反応性末端基濃度は、0.5〜20モル%である。反応性末端基は、無水物類とその化学的等価物類、およびアミン類と定義される。一部の実施形態においては、プレポリマーの重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定して、1,000〜100,000g/モルである。
【0055】
前記プレポリマーは、炭素(C)原子数と、窒素(N)や酸素(O)、硫黄(S)などの非炭素原子数との比を変えることができる。例えば、ある実施形態においては、前記プレポリマーは、C原子数/N+O+S原子数が2.8〜4.2である。ある実施形態では、酸素原子数が窒素原子数の2.5倍以上である。別の実施形態では、酸素原子数は、窒素原子数の2.5〜5.0倍である。別の実施形態では、酸素原子数は硫黄原子数の7倍以上である。別の実施形態では、酸素原子数は、硫黄原子数の7〜10倍である。
【0056】
前記プレポリマーは、米国特許第4,835,249号に記載された方法などの、任意の好適な方法で製造されてもよい。この方法では、反応物質のモノマー類を溶剤に溶解し、その後ポリマーが溶液から沈殿するまで重合化し、最終的に濾過あるいはその他の関連する分離方法を用いて分離する。
【0057】
前記プレポリマーがODPA/DASプレポリマーの場合には、該プレポリマーは、ジアミンと二無水物とを溶剤中で攪拌しスラリーを作るステップと、前記ジアミンと二無水物が十分反応するように、前記スラリーを、前記二無水物の融点以下、または、前記ジアミンの融点以下、または、前記ジアミンと二無水物の両融点以下に加熱するステップと、前記ジアミンと二無水物とを反応させて、溶剤から沈殿させるに十分な分子量を持つポリエーテルイミドを形成するステップと、を含むスラリー/沈殿法を用いて製造される。
【0058】
上記のプロセスでは、前記ポリマー類が容易に攪拌できる微粉末としてスラリーから沈殿するように、前記反応温度を最小限の溶解性モノマー類の融点以下に保つことが重要である。蒸留やその他の手段で水分や他の揮発性副生成物を反応混合物から取り除くことが有用である。ある実施形態では、水分は共沸蒸留される。一部の実施形態では、水分は、例えば、分子篩を用いた化学吸収で除去できる。他の実施例では、水分は、例えば、反応混合物上または混合物中を通過する窒素などのガス流を用いて除去できる。また、2つ以上の水分除去方法を組み合わせてもよい。
【0059】
ある実施形態では、前記重合は、最小限の溶解性モノマー(類)となる融点を完全に下回る温度で行われる。これは、前記溶剤の沸点と前記最小限の溶解性モノマー(類)の融点が100℃を超える場合に有用であり、これによって、大気圧下の重合反応からの水分除去が可能となる。
【0060】
前記重合を減圧下、例えば、1〜300psi(21.1kgf/cm)、より具体的には、1psi(0.070kgf/cm)〜100psi(7.0kgf/cm)でおこなうことが有用である。これには色々な理由があるが、その1つは、反応温度を上昇させてイミド化の速度を上げるためである。沈殿したポリマーの固着や凝集を防ぐためには、圧力が上昇した場合にも、温度を前記最小限の溶解性モノマー(類)の融点以下に保つことがさらに重要である。一部の実施形態においては、圧力を大気圧に維持しながら、反応系から水分を除去することが有用であろう。一部の実施形態においては、大気圧以上の圧力を用いる多段プロセスで水分を除去することが有用となりうる。
【0061】
一部の実施形態においては、モノマー類の初期充填量の50質量%以上が消費された後に、沈殿したポリマーを分離することが有用となりうる。他の実施形態においては、前記沈殿したポリマーは、初期充填量の90質量%以上が消費された後に分離されてもよい。これは、種々の方法、例えば、濾過法や遠心分離法、浮遊法、凍結乾燥法、および、これらの1つ以上を含む組み合わせなどを用いて行うことができる。一部の実施形態においては、分離された沈殿ポリエーテルイミドの内、その95質量%以上は2mmメッシュスクリーンを通過する。一部の実施形態においては、前記分離された沈殿ポリエーテルイミドは、平均粒径が10〜5000μmの遊離浮遊粉末となる。
【0062】
スラリー製造に用いる前記溶剤は、最初のモノマー類の1つ以上が最小限溶解性となるように選ぶ。「最小限溶解性」とは、反応開始に当たって(初期の反応条件で)該モノマーの1〜50質量%は溶解していないものと定義される。さらに、前記溶剤は、できたポリマーが大部分不溶となるように、すなわち、ポリマーの溶解度が10質量%以下、さらに具体的には、5質量%以下、より具体的には、1質量%以下となるように選択されるべきである。一部の実施形態においては、前記溶剤は非プロトン性の極性溶媒を含んでいる。一部の実施形態においては、前記溶剤は水に不溶であり、すなわち、室温中で同量の水に溶解する量は、溶剤の全量に対して5質量%以下、より具体的には1質量%以下である。一部の実施形態において、前記溶剤は前記製造プロセスおよびその後の分離中の火災の危険性を低減するために、例えば、70℃以上などの高い発火温度を有している。
【0063】
また、窒素原子やリン原子、硫黄原子、あるいはこれらの2つ以上を含む組み合わせなどを含まない溶剤が一部の実施形態においては有用であるかもしれない。これらのより極性の原子を含まない溶剤類では、前記ポリマーからの除去がさらに容易であり、こうしたより効果的でない溶剤であるということは、モノマー類およびポリマー類が最小限の溶解性あるいは不溶性となりやすい。
【0064】
前記のプレポリマー製造に有用な溶剤類としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、およびブロモベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物類;フェネトール、アニソールおよびベラトロールなどのアリールエーテル類;キシレン類およびトルエンなどのアルキル芳香族化合物類;ニトロベンゼンなどのニトロ芳香族化合物類;ナフチレンやアルキル置換の縮合芳香族系類などのポリアリール種;アリールスルホン;鉱油類などの高分子アルカン化合物類;および、これらの溶剤類の1つ以上を含む組み合わせ、などが含まれる。一部の実施形態においては、前記溶剤あるいは溶剤の組み合わせの大気圧沸点は150〜250℃である。
【0065】
前記プレポリマーの製造反応では、反応物質と溶剤とは任意のレベルとすることができる。一部の実施例においては、固体の質量%は、重合反応の開始時において、溶剤に対して反応物質の5〜50質量%とすることができる。他の実施例においては、15〜40質量%が有用であろう。さらに他の実施例では、溶剤に対してさらに高濃度の反応物質を用いて反応炉効率を上げてもよい。
【0066】
ポリエーテルイミドプレポリマーを、おおよそ等モル量の二無水物(あるいは二無水物の化学的等価物)をジアミンと反応させるという促進的なプロセスを用いて製造してもよい。一部の実施形態においては、二無水物とジアミンの量が5モル%未満だけ異なっており、このために、ポリマー類の分子量(Mw)を例えば1,000g/モル以上などと十分なものにすることができ、また、反応媒質から沈殿し、剛性や耐衝撃強度、耐引き裂き性あるいは耐亀裂性などの有用な機械的特性を得ることができる。
【0067】
ポリエーテルイミドポリマー類とプレポリマー類は、重合反応に使われるジアミンと二無水物の量と前記重合反応の完成度とに応じて、アミンと無水物末端基類のレベルを変えてもよい。種々のアミンと無水物、およびカルボン酸やカルボン酸塩、アミド酸、およびアミドカルボン酸塩などの無水物誘導体類は、使用可能な末端基の例である。本明細書で用いられるように、「アミン末端基」は、アミン類と、アミン末端基から誘導される任意の関連末端基類とを含んでいることが理解されるであろう。本明細書で用いられるように、「無水物末端基」は、無水物類と、カルボン酸やカルボン酸塩類、アミド酸類、およびアミドカルボン酸塩類などの無水物誘導体類とを含んでいることも理解されるであろう。これらの末端基の全種類あるいは2種以上、または本質的に1種類が含まれていてもよい。一般に、ポリエーテルイミドの反応性末端基の合計濃度は、0.05〜0.3モル%とすることができる。その一方、プレポリマーの反応性末端基の合計濃度は、0.5〜20モル%とすることができる。本明細書で用いられるように、用語「反応性末端基」とは、溶解処理中に揮発性種を発生させる種々の使用可能な末端基のうちの任意のものを指す。最も反応性の高い末端基は、アミンまたは無水物であろう。ある実施形態では、前記プレポリマーの反応性末端基の合計含有量は1〜10モル%、より具体的には5〜10モル%である。
【0068】
アミンや無水物、関連末端基類の濃度は、当分野で周知の種々の滴定や分光法を用いて分析できる。分光法には、赤外線分光法、核磁気共鳴法、ラマン分光法、および、蛍光分光法などが含まれる。赤外線分光法については、A. Kreuz, et al., and J. Poly. Sci. Part A−1, vol. 4, pp. 2067−2616 (1966)に、その例が記載されている。滴定法については、Y. J. Kim, et al., Macromolecules, vol. 26, pp. 1344−1358 (1993)に、その例が記載されている。例えば、K. P. Chan et al., Macromolecules, vol. 27, p. 6731 (1994) and J. S. Chao, Polymer Bull., vol. 17, p. 397 (1987)に記載されるような種々の方法における測定感度を向上させるために、ポリマー末端基の誘導体類を製造することは有利であろう。
【0069】
該プレポリマーの分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定できる。ここで言う分子量とは、重量平均分子量(Mw)のことである。ある実施形態では、該プレポリマーのゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量は、1,000〜100,000g/モルである。一部の実施形態においては、Mwは2,000〜20,000にすることができる。
【0070】
前記ポリマーは、溶融混合条件下で、無水物やアミン、あるいは、これらの組み合わせと反応性を有する末端基を含んでいる。末端基には、これに限定されないが、アミン、無水物、水酸基、アルコール、アミド、エポキシド、エステル、チオール、酸および活性化芳香族ハロゲン化合物、およびこれらの組み合わせなどが含まれる。典型的なポリマー類には、ポリイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリアミドイミド類、ポリアリールエーテルケトン類、ポリアリールケトン類、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリアリールスルホン類、液晶ポリマー類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリスルホン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリフェニレン類、およびこれらの組み合わせなどが含まれる。前述の典型的なポリマー類としては、例えば、Aurum ポリイミド類(三井化学(株))、ULTEMポリエーテルイミド類(General Electric Company)、PEEK(Victrex plc.)、Radelポリスルホン類(Solvay)、および、Fortron PPS(Ticona)などが市販されている。
【0071】
前記ポリマーは、前記二無水物類およびジアミン類から誘導されるポリエーテルイミドであってもよい。一部の実施形態においては、前記プレポリマーおよびまたはポリマーの製造に使用される前記二無水物(類)は、オキシジフタル酸無水物とビスフェノール−A二無水物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態においては、前記プレポリマーおよびまたはポリマーの製造に使用される前記ジアミン(類)は、ジミノジアリールスルホン類、メタフェニレンジアミン類、パラフェニレンジアミン類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態においては、前記ポリマーは、ビスフェノール−A二無水物(BPADA)およびジアミノジアリールスルホン(DAS)から誘導される構造単位を含むポリエーテルイミドである。ビスフェノール−A二無水物は、下記式(XII)で表わされる構造を有する。
【0072】
【化12】

【0073】
オキシジフタル酸無水物に関する上記の議論と同様、用語「ビスフェノール−A二無水物」は、ポリエーテルイミド生成反応におけるビスフェノール−A二無水物に対する化学等価物として機能しうる無水物官能性の化学的誘導体類を含む。
【0074】
ある実施形態においては、前記ジアミノジアリールスルホンは、ジアミノジフェニルスルホンである。
【0075】
ある実施形態においては、前記ポリマーは、式(XIII)で表わされる構造単位を2個以上、具体的には10〜1000個、より具体的には30〜500個含むBPADA/DASポリエーテルイミドである。
【0076】
【化13】

【0077】
前記ポリエーテルイミドの重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定して5,000〜100,000g/モルとすることができる。一部の実施形態においては、Mwは10,000〜80,000とすることができる。
【0078】
一部の実施形態においては、前記ポリマーは、ビスフェノール−A二無水物(BPADA)とフェニレンジアミン(PD)とから誘導されるポリエーテルイミド(BPADA/PDポリエーテルイミド)である。より具体的には、該構造単位は、ビスフェノール−A二無水物(BPADA)とメタフェニレンジアミン(MPD)から、あるいはBPADAとパラフェニレンジアミン(PPD)から、またはこれらの組み合わせから誘導されうる。
【0079】
メタフェニレンジアミン(MPD)は、下記式(IX)で表される構造を有する。
【0080】
【化14】

【0081】
パラフェニレンジアミン(PPD)は、下記式(XI)で表される構造を有する。
【0082】
【化15】

【0083】
前記BPADA/PDポリエーテルイミドは、式(X)で表される構造単位、あるいは式(XII)で表される構造単位、またはこれらの組み合わせの構造単位を、2個以上、具体的には10〜1000個、より具体的には30〜500個含んでいる。
【0084】
【化16】

【0085】
【化17】

【0086】
前記ポリマーがポリエーテルイミドである実施形態では、該ポリエーテルイミドを、当分野で既知の任意の方法を用いて製造してもよい。ある実施形態においては、反応物質であるモノマー類と生成ポリマー類の両方を溶解する高い極性を持つ溶剤を用いる方法が使用されうる。ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶剤類は、この方法に使用されうる。生成するポリマー類は完全に溶解するが、フィルムキャスティングやその他の蒸発プロセスの一部として溶剤を除去することにより、あるいは、メタノールなどの抗溶剤を用いた沈殿などによって、該ポリマー類を溶液から分離できる。
【0087】
本明細書で記載の組成物類には、充填材や強化材、添加剤、あるいはこれらの組み合わせなどが含まれていてもよい。典型的な充填材および強化材は、ガラス繊維やミルドガラス、ガラス玉、フレークなどである。タルクや珪灰石、雲母、カオリンまたはモンモリロナイト粘土、シリカ、石英、バライト、およびこれらの2つ以上の組み合わせなどの鉱物を加えてもよい。前記組成物類には、例えば、炭素繊維やナノチューブ、および金属繊維類、金属粉末類、導電性カーボン、ナノスケールの補強材類を含むその他の添加剤類、およびこれらの組み合わせなどの無機系充填材類が含まれうる。
【0088】
他の添加剤類としては、紫外線吸収剤、光安定剤やその他の安定剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、起泡剤、発泡剤、金属不活性剤、およびこれらを1つ以上含む組み合わせなどがある。酸化防止剤類は、亜リン酸塩類や亜ホスホン酸エステル類、およびヒンダードフェノールやこれらの混合物などの化合物類でありうる。トリアリール亜リン酸塩およびアリールホスホン酸塩を含むリン含有安定剤類は、有用な添加剤として注目される。二官能性リン含有化合物も用いられる。安定剤類の分子量は300以上であってもよい。一部の実施形態においては、分子量が500以上のリン含有安定剤類は有用である。リン含有安定剤類は、組成物中に通常0.05〜0.5質量%存在する。流動性改良剤類および離型剤類も考慮される。
【0089】
別の実施形態においては、該組成物はさらに、第2のポリマーを含んでいてもよい。そうしたポリマー類には、これに限定されないが、PPSU(ポリフェニレンスルホン)、PEI(ポリ(エーテルイミド))、PSU(ポリスルホン)、PC(ポリカーボネート)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、MFA(TFE(テトラフルオロエチレン)とPFVE(パーフルオロビニルエーテル)との共重合体)、FEP(フッ素化エチレンプロピレンポリマ類)、PPS(ポリ(フェニレンスルフィド))、PEK(ポリ(エーテルケトン))、PEEK(ポリ(エーテル−エーテルケトン))、ECTFE(エチレンクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフッ化物)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)、PA(ポリアミド)、UHMW−PE(超高分子ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PAI(ポリ(アミド−イミド))、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(アリールスルホン)、ポリフェニレン類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、およびこれらのブレンド類および共重合体類などが含まれる。
【0090】
組成物類は、任意の方法を用いて製造されてもよい。例えば、前プレポリマーと前記ポリマー、および任意に添加剤類を、二軸スクリュ押出機などの適切な装置内で、適切な温度、例えば250℃〜450℃で溶融混合して組成物を製造できる。溶融混合は、前記プレポリマーとポリマーを溶融状態に維持するに十分な温度で前記の組成物を混合して行われる。該温度は、前記プレポリマーとポリマーの分解温度未満である。一部の実施形態においては、溶融混合に押出機が利用される。該押出機には任意に吸引孔を設けることができる。一部の実施形態においては、前記プレポリマーとポリマーを溶融混合して前記のポリマーブレンドを製造し、追加成分をこのポリマーブレンドに添加する。前記ポリマーブレンドをペレット化して追加成分と混合してもよく、あるいはペレット化せずに、追加成分を前記ポリマーブレンドに添加してもよい。
【0091】
前記プレポリマーの量は、プレポリマーとポリマーの合計質量に対して、1〜99質量%、より具体的には10〜90質量%、さらに具体的には20〜80質量%であってもよい。前記ポリマーは、同じく2つの合計質量に対して、1〜99質量%、より具体的には10〜90質量%、さらに具体的には20〜80質量%であってもよい。
【0092】
本発明の組成物は、任意の数の方法により成形品に成形できる。好適な方法には、例えば、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、異形押出し、シートまたはフィルム押出し成形、焼結法、ガスアシスト成形、構造用フォーム成形、および熱成形などが含まれる。フィルムおよびシート押出成形プロセスには、これに限定されないが、メルトキャスティング、インフレーションフィルム押出、およびカレンダ成形などが含まれる。こうした成形品の例としては、これに限定されないが、フィルム類、膜類、管類、複合材類、半導体処理具類、ワイヤーコーティング類およびジャケッティング類、流体取扱部品類、調理器具類、フードサービス用品類、医療器具類、トレー類、プレート類、ハンドル類、ヘルメット類、動物檻類、電気コネクタ類、電気設備筐体類、エンジン部品類、自動車エンジン部品類、ベアリング類、照明ソケット類およびリフレクタ類、電動機部品類、配電設備、通信設備、コンピュータ類、およびスナップ式コネクタに成形された器具を含めたその他の成形品がある。前記ブレンド類は繊維類としても使用され、また、パウダーコーティングなどのコーティングとしても使用されうる。
【0093】
フィルム類の厚さは、一部の例では0.1〜1000μmである。共押出やラミネーション法を用いて複合多層フィルム類やシート類を製造してもよい。単層あるいは複層基材に単層あるいは複層コーティングを行って、引っ掻き抵抗性や耐紫外線性、美的訴求力などの特性を追加的に付与してもよい。ローリングやスプレー、ディッピング、刷毛塗り、あるいはフローコーティングなどの標準的な塗装方法を用いてコーテンィングしてもよい。代替法として、適当な溶剤における前記組成物の溶液や懸濁液を基材やベルトあるいはロールにキャスティングし、次にこの溶剤を除去してフィルムやシートを製造してもよい。スパッタや真空蒸着、および箔成層法などの標準的なプロセスを用いて、フィルム類を金属化してもよい。
【0094】
延伸フィルムは、インフレーションフィルム押出あるいは、キャスティングまたはカレンダ掛けされたフィルムを熱変形温度近傍で従来の延伸技術を用いて延伸する方法により製造されてもよい。例えば、放射状延伸パンタグラフ法を多軸での同時延伸に適用したり、x−y方向延伸パンタグラフ法を面内x−y方向同時延伸あるいは遂次延伸に適用することができる。流れ方向への延伸を行うスピードの異なるロール部と横方向への延伸を行うテンタ枠部とを備えた機械などの、遂次式の一軸延伸部を備えた装置も、一軸延伸および二軸延伸を実現するものとして用いられる。
【0095】
本明細書で議論する組成物類は、第1の側と第2の側を有する第1のシートであって、前記第1のシートは熱可塑性のポリマーを含み、前記第1のシートの前記第1の側は複数のリブの第1の側上に配置されることを特徴とする第1のシートと、第1の側と第2の側を有する第2のシートであって、前記第2のシートは熱可塑性のポリマーを含み、前記第2のシートの前記第1の側は上記複数のリブの第2の側上に配置されることを特徴とする第2のシートと、を備え、前記複数のリブの前記第1の側は、前記複数のリブの前記第2の側に対向することを特徴とする多層シートに変えることができる。
【0096】
前記のフィルム類およびシート類はさらに、これに限定されないが、熱成形、真空成形、圧力成形、射出成形および圧縮成形などを含む成形加工方法により熱可塑的に加工されて成形品にされてもよい。多層成形品は、下記の単層あるいは多層のフィルムあるいはシート基材に、熱可塑性樹脂を射出成形して製造されてもよい。1)例えば、転写染料をスクリーン印刷して、任意に単色または複数色を表面に有する、単層または多層の熱可塑性基板を製造する。2)基板を成形して3次元形状にトリミングし、該基板の3次元形状に適合する表面を有する金型に該基板を取りつける方法などにより、前記基板を型構造に適合させる。3)前記基板と前記金型との間隙に熱可塑性樹脂を射出して、(i)一体的に永久接着した3次元製品を製造、あるいは、(ii)印刷基板から前記射出樹脂に模様や美的効果を転写し、その後該印刷基板を取り除いて、美的効果を成形樹脂に付与する。
【0097】
当業者であれば、該成形品の外観を変えたり機能を付加するために、これに限定されないが、熱固定や模様付け、エンボス加工、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、および真空蒸着などの通常の硬化処理と表面改質処理が行えることは理解するであろう。従って、本発明の別の実施形態は、前記の組成物から製造される成形品類、シート類およびフィルム類に関する。
【0098】
前記組成物類の物性および該組成物類から誘導される成形品類の物性は有用であり、変えることができる。例えば、前記プレポリマーおよびポリマーが共通のジアミンを含有する実施形態においては、前記ポリマーブレンドは単一のガラス転移温度を有しうる。
【0099】
前記ポリマーブレンドが単一のガラス転移温度を有する場合は、該転移温度は100℃以上、より具体的には125℃以上、さらに具体的には150℃以上とすることができる。該ガラス転移温度は600℃以下とすることができる。
【0100】
前記プレポリマーおよびポリマーが共通のモノマーを含有しない実施形態においては、前記相溶性ポリマーブレンドは、2つ以上のガラス転移温度を有する。一部の実施形態においては、該組成物は2つのガラス転移温度を有する。一部の実施形態においては、最小のガラス転移温度が50℃以上、より具体的には75℃以上、さらに具体的には100℃以上である。前記最小のガラス転移温度は600℃以下とすることができる。
【0101】
一部の実施形態においては、前記ポリマーブレンドの溶融粘度は、ASTM D3835に準拠し、せん断速度を100〜10,000sec−1としたキャピラリーレオメータにより測定して、380℃において、50〜20,000Pa・秒である。この範囲内において該溶融粘度を100Pa・秒以上、より具体的には200Pa・秒以上にできる。またこの範囲内において、該粘度を15,000Pa・秒以下、より具体的には10,000Pa・秒以下にできる。
【0102】
別の実施形態においては、前記組成物(およびそれから誘導される成形品類)のASTM D648に準拠した熱変形温度は100℃以上にすることができる。ある実施形態においては、組成物類のASTM D648に準拠した熱変形温度は100〜400℃とすることができる。別の実施形態においては、前記組成物類およびそれから誘導される成形品類のASTM D638に準拠した引張強度は、70MPa以上とすることができる。ある実施形態においては、それらの引張強度は70〜500MPaとすることができる。該組成物類の熱膨張係数は変えることができる。ある実施形態では、熱膨張係数は、昇温速度を5℃/分とした熱機械分析で測定して、温度30〜200℃において100ppm/℃未満である。別の実施形態においては、熱膨張係数は、昇温速度を5℃/分とした熱機械分析で測定して、温度30〜200℃において5〜100ppm/℃である。
【0103】
また、組成物類および該組成物類から誘導される成形品類は好都合な熱エイジング特性を示す。例えば、ある実施形態においては、組成物(およびそれから誘導される成形品類)の連続使用温度は150℃以上である。組成物の連続使用温度を150〜400℃とすることもできる。
【0104】
好都合なことに、本明細書に記載の組成物類は、以前には利用できなかった組成物類と成形品類とを提供する。例えば、前記組成物類は、非混和性で非相溶性のブレンドにおける層間剥離の問題を克服して、非常に有用な応用分野を持つという、非混和性でありながら相溶性であるブレンドの特徴を示すことができる。前記組成物類は、さらに広範囲の混和性ブレンド組成物類を提供できる。本発明の組成物類は、改良された外観透明性を示すことができる。こうしたブレンド類の混和性の範囲を拡大することは、実際的に非常に重要である。単一のガラス転移温度(Tg)と所定の透明性を有する広範囲のブレンド組成物類を製造することが今や可能である。
【0105】
下記の実施例は、当業者に追加的な指針を提供するものである。提供される実施例は単に代表的なものであり、添付の特許請求の範囲に定義される本発明を、いかなる方法でも限定するものではない。
【0106】
(実施例)
実施例で用いる材料を表1に示す。実施例に記載の量は、使用した第1および第2のポリマーの合計質量に対する質量%である。
【0107】
【表1】

【0108】
(実施例1〜9)
これらの実施例の目的は、反応性プレポリマーとブレンドすることにより、非混和性かつ非相溶性ブレンドにおける層間剥離の問題を克服できることを示すことである。これらの実施例はまた、反応性プレポリマーとのブレンドにより、非混和性でありながら相溶性のブレンドにおける混和性を改良でき、非常に広範囲の混和性ブレンド組成物類を生成できることを示している。これらの実施例はまた、外観性がいかに向上するかも示している。
【0109】
(調製方法)
表2の組成物類を、吸引孔付きの二軸スクリュ内で、温度300〜430℃で該成分を溶融混合して調製した。スクリュ速度を、通常100〜350RPM/分の範囲で変えた。
(試験方法)
【0110】
示差走査熱量分析(DSC)を用いて組成物類のガラス転移温度を測定した。射出成形したASTM引張試験用棒を用い、目視検査にて形態観察を行った。前記引張試験用棒は280℃×240時間養生し、層間剥離の有無を目視検査にてチェックした。目視検査は、0.5m離れた位置から、正常な視力(例えば、正常視力に必要な補正レンズを除き、いかなる拡大器具も用いずに、両眼とも視力1.0)で判断される。結果を表2および3に示す。
(結果)
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
(考察)
比較実施例4(これはプレポリマーをベースにしたものではない)と比較して実施例1〜3(これらはプレポリマーをベースにしている)は、プレポリマーを用いてブレンドを製造した場合に、ポリエーテルイミドブレンド類の意外な挙動を示している。PEI1とPEI3のブレンド類では、PEI3のレベルが低くても(15質量%)、2相の形態と層間剥離が見られた。対照的に、プレポリマーとPEI3のブレンドでは、前記の2相の樹脂形態が見られたにもかかわらず、40質量%であっても、280度×240時間の熱エイジング後に層間剥離は見られなかった。驚くべきことに、反応性プレポリマーとの溶融混合で、非混和性かつ非相溶性ブレンドにおける層間剥離の問題が克服され、実際的に重要な、非混和性ながらも相溶性のブレンドを生成した。
【0114】
比較実施例8および9(これらはプレポリマーをベースにしたものではない)と比較して実施例5〜7(これらはポリプレマーをベースにしている)は、プレポリマーを用いてブレンドを製造した場合に、ポリエーテルイミドブレンド類の意外な挙動を示している。PEI1とPEI2のブレンド類では、PEI2のレベルが低い(15質量%)場合には2相の形態が見られた。多相樹脂形態にもかかわらず、PEI1とPEI2のブレンドでは、なんの層間剥離も見られなかった。対照的に、プレポリマーとPEI2のブレンドでは、PEI2が同レベル(15質量%)の場合には、また高レベル(40質量%)であっても、単一のTgを持つ単相形態を示した。これらのブレンドの何れにも、280℃×240時間の熱エイジング後に層間剥離は見られなかった。
【0115】
実施例7のブレンドも優れた物性を示した。より具体的には、このブレンドの引張強度は120MPa、曲げ強度は170MPa、1.8MPaの応力下での熱変形温度は240℃、温度30〜200℃における熱膨張係数は45ppm/℃であった。
【0116】
このように実施例5〜7によって、反応性プレポリマーとブレンドすることによって、非混和性でありながら相溶性のブレンドの非混和性が改良され、非常に広範囲の混和性ブレンド組成物類が生成されることが示された。外観についても半透明から透明へと改良された。こうしたブレンドの混和性の範囲が拡大されることは、単一のTgと透明性を有するブレンドがいまや広範囲に設計できうるために、実際的に大きな重要性を持っている。
【0117】
いくつかの実施形態を基に本発明を説明したが、当業者には、本発明の範囲を逸脱することなしに種々の変更が可能であり、本発明の要素は等価なもので置換可能であることは理解されるであろう。さらに、特定の状況や材料を本発明が教示するものに適応させるために、本発明の本質的な範囲を逸脱することなしに、多くの修正が可能である。従って、本発明は、発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されることなく、添付の請求項の範囲に入るすべての実施形態を含むものと意図される。本明細書において番号で特定した特許のすべては、参照によりその全体が援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)遊離アミン基と遊離無水物基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、さらに、二無水物とジアミンとから誘導される構造単位を含むプレポリマーと、
(b)構造基と末端基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含むポリマーと、
を溶融混合するステップを含むポリマーブレンドの製造方法であって、
前記反応性成分は、前記遊離無水物基、遊離アミン基、またはこれらの組み合わせに対して反応性を有しており、
前記ポリマーブレンドは、非剥離性であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記二無水物はオキシジフタル酸無水物であり、前記ジアミンはジアミノジアリールスルホンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーは、ポリイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリアミドイミド類、ポリアリールエーテルケトン類、ポリアリールケトン類、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリアリールスルホン類、液晶ポリマー類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリスルホン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリフェニレン類、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は1〜99質量%であり、前記ポリマーの量は1〜99質量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は10〜90質量%であり、前記ポリマーの量は10〜90質量%であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は20〜80質量%であり、前記ポリマーの量は20〜80質量%であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プレポリマーは、(窒素原子数+酸素原子数+硫黄原子数)に対する炭素原子数の割合が2.8〜4.2であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)遊離アミン基と遊離無水物基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、さらに、第1の二無水物と第1のジアミンとから誘導される構造単位を含むプレポリマーと、
(b)構造基と末端基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含み、さらに、第2の二無水物と第2のジアミンとから誘導される構造単位を含むポリマーと、
を溶融混合するステップであって、
前記第1の二無水物が前記第2の二無水物と同じであるか、あるいは前記第1のジアミンが前記第2のジアミンと同じであることを特徴とするステップを含むポリマーブレンドの製造方法。
【請求項9】
前記第1の二無水物あるいは前記第2の二無水物は、オキシジフタル酸無水物類、ビスフェノール−A二無水物類およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のジアミンあるいは前記第2のジアミンは、ジアミノジアリールスルホン類、メタフェニレンジアミン類、パラフェニレンジアミン類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は1〜99質量%であり、前記ポリマーの量は1〜99質量%であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は10〜90質量%であり、前記ポリマーの量は10〜90質量%であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は20〜80質量%であり、前記ポリマーの量は20〜80質量%であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記プレポリマーは、オキシジフタル酸無水物類とジアミノジアリールスルホン類とから誘導される構造単位を含み、前記ポリマーは、ビスフェノール−A二無水物類とジアミノジアリールスルホン類とから誘導される構造単位を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記プレポリマーは、(窒素原子数+酸素原子数+硫黄原子数)に対する炭素原子数の割合が2.8〜4.2であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項16】
(a)遊離アミン基と遊離無水物基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、さらに、第1の二無水物と第1のジアミンとから誘導される構造単位を含むプレポリマーと、
(b)構造基と末端基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含み、さらに、第2の二無水物と第2のジアミンとから誘導される構造単位を含むポリマーと、
を溶融混合するステップであって、
前記第1の二無水物は前記第2の二無水物とは異なっており、また前記第1のジアミンは前記第2のジアミンとは異なっていることを特徴とするステップを含むポリマーブレンドの製造方法。
【請求項17】
前記第1の二無水物あるいは前記第2の二無水物は、オキシジフタル酸無水物類、ビスフェノール−A二無水物類およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のジアミンあるいは前記第2のジアミンは、ジアミノジアリールスルホン類、メタフェニレンジアミン類、パラフェニレンジアミン類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は1〜99質量%であり、前記ポリマーの量は1〜99質量%であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は10〜90質量%であり、前記ポリマーの量は10〜90質量%であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記プレポリマーと前記ポリマーの合計質量に対して、前記プレポリマーの量は20〜80質量%であり、前記ポリマーの量は20〜80質量%であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記プレポリマーは、(窒素原子数+酸素原子数+硫黄原子数)に対する炭素原子数の割合が2.8〜4.2であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項23】
単一の所定ガラス転移温度を有するポリイミドポリマーブレンドの製造方法であって、
前記ブレンドのガラス転移温度を選択するステップと、
プレポリマーとポリマーとを溶融混合するステップと、
を含み、
前記プレポリマーとポリマーの量は、前記の選択されたガラス転移温度を有する前記ブレンドを提供するに十分な量であり、
前記プレポリマーは、遊離アミン基と遊離無水物基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、さらに、第1の二無水物と第1のジアミンとから誘導される構造単位を含んでおり、
前記ポリマーは、構造基と末端基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含み、この反応性成分は、前記遊離無水物基、遊離アミン基、またはこれらの組み合わせに対して反応性を有しており、
前記ポリマーは、第2の二無水物および第2のジアミンとから誘導される構造単位を含んでおり、
前記第1の二無水物は前記第2の二無水物と同じであるか、あるいは前記第1のジアミンは前記第2のジアミンと同じである、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項24】
前記プレポリマーは、(窒素原子数+酸素原子数+硫黄原子数)に対する炭素原子数の割合が2.8〜4.2であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
2つ以上の所定のガラス転移温度を有するポリイミドポリマーブレンドの製造方法であって、
前記ブレンドのガラス転移温度を選択するステップと、
プレポリマーとポリマーとを溶融混合するステップと、
を含み、
前記プレポリマーは、遊離アミン基と遊離無水物基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、さらに、第1の二無水物と第1のジアミンとから誘導される構造単位を含んでおり、
前記ポリマーは、構造基と末端基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含み、この反応性成分は、前記遊離無水物基、遊離アミン基、またはこれらの組み合わせに対して反応性を有しており、
前記ポリマーは、第2の二無水物および第2のジアミンとから誘導される構造単位を含んでおり、
前記第1の二無水物は前記第2の二無水物とは異なっており、また前記第1のジアミンは前記第2のジアミンとは異なっている、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項26】
前記プレポリマーは、(窒素原子数+酸素原子数+硫黄原子数)に対する炭素原子数の割合が2.8〜4.2であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(a)遊離アミン基と遊離無水物基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含み、さらに、二無水物とジアミンとから誘導される構造単位を含むプレポリマーと、
(b)構造基と末端基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性成分を含むポリマーと、
を溶融混合してポリマーブレンドを製造するステップであって、
前記反応性成分は、前記遊離無水物基、遊離アミン基、またはこれらの組み合わせに対して反応性を有しており、前記ポリマーブレンドは非剥離性であることを特徴とするステップと、
前記ポリマーブレンドを追加成分と溶融混合するステップと、
を含むことを特徴とする組成物の製造方法。
【請求項28】
前記追加成分は、第2のポリマーを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2のポリマーは、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、パーフルオロアルコキシアルカンポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテルとの共重合体、フッ素化エチレンプロピレンポリマー、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテル−エーテルケトン)、エチレンクロロトリフルオロエチレンポリマー、ポリビニリデンフッ化物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリ(アミド−イミド)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(アリールスルホン)、ポリフェニレン類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、およびこれらのブレンド類および共重合体類からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記追加成分は、充填材や強化材、添加剤、あるいはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記プレポリマーは、(窒素原子数+酸素原子数+硫黄原子数)に対する炭素原子数の割合が2.8〜4.2であることを特徴とする請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−510377(P2010−510377A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538432(P2009−538432)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/075812
【国際公開番号】WO2008/066974
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】