説明

ポリ乳酸樹脂組成物

【課題】環境負荷の少ないポリ乳酸樹脂に、難燃剤と環状カルボジイミドを添加することで、作業環境が良好で、耐加水分解性、難燃性に優れる材料を提供する。
【解決手段】(A)ポリ乳酸(A成分)100重量部に対し、(B)カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状構造を含み、環状構造を形成する原子数が8〜50である化合物(B成分)0.001〜10重量部、および(C)リン系難燃剤(C−1成分)、窒素系難燃剤(C−2成分)、金属水酸化物系難燃剤(C−3成分)、金属酸化物系難燃剤(C−4成分)、臭素系難燃剤(C−5成分)からなる群より選ばれる少なくとも一種の難燃剤(C成分)1〜100重量部を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のポリマーであるポリ乳酸樹脂に、難燃剤と環状カルボジイミドを添加することで、難燃性、耐加水分解性、および作業環境が改善された樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇の懸念や、地球温暖化を引き起こす空気中の二酸化炭素の増加の問題から、原料を石油に依存せず、また燃焼させても二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルが成り立つバイオマス資源が大きく注目を集めるようになり、ポリマーの分野においても、バイオマス資源から生産されるバイオマスプラスチックが盛んに開発されている。特にポリ乳酸樹脂は、バイオマスプラスチックの中でも比較的高い耐熱性、機械特性を有するため、食器、包装材料、雑貨などに用途展開が広がりつつあるが、更に、工業材料としての可能性も検討されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸はその耐加水分解性の低さから、エンジニアリングプラスチックに代表されるPC、PBT,PETなどが使われる、電気・電子部品、自動車部品などの工業材料への展開が進んでいない。
【0004】
特許文献1には、ポリ乳酸に末端封鎖剤を添加し、ポリ乳酸のカルボキシル基末端の少なくとも一部を封鎖し、熱水処理による強度低下を抑えているが、工業材料として展開するためには、その耐加水分解性のレベルは不十分である。
【0005】
特許文献2、3には、ポリ乳酸樹脂に対し、カルボジイミド化合物と酸化防止剤を始めとする安定剤を配合する事で耐加水分解性を向上させる技術が示されているが、ここで示されているカルボジイミドは、環状のカルボジイミドではない。このため、カルボジイミド化合物がポリエステルの末端に結合する反応に伴い、イソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっている。
【0006】
特許文献4には、ポリ乳酸樹脂に対し、カルボジイミド化合物と金属水酸化物系の難燃剤を配合する事で、難燃性と耐加水分解性を付与する技術が示されているが、ここで示されているカルボジイミド化合物は環状カルボジイミドでないため、イソシアネート化合物による作業環境の悪化を引き起こすだけでなく、難燃性の悪化も引き起こしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−30208号公報
【特許文献2】特開2008−50584号公報
【特許文献3】特開2005−53870号公報
【特許文献4】特開2005−120119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
環境負荷の少ないポリ乳酸樹脂に、難燃剤と環状カルボジイミドを添加することで、作業環境が良好で、耐加水分解性、難燃性に優れた樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(A)ポリ乳酸(A成分)100重量部に対し、(B)カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状構造を含み、環状構造を形成する原子数が8〜50である化合物(B成分)0.001〜10重量部、および(C)リン系難燃剤(C−1成分)、窒素系難燃剤(C−2成分)、金属水酸化物系難燃剤(C−3成分)、金属酸化物系難燃剤(C−4成分)、および臭素系難燃剤(C−5成分)からなる群より選ばれる少なくとも一種の難燃剤(C成分)1〜100重量部を含有する組成物。更に、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対して、(D)エポキシ化合物、オキサゾリン化合物およびオキサジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の末端封鎖剤(D成分)0.001〜10重量部を含むことが好ましく、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対して、(E)ハイドロタルサイト(E成分)0.01〜0.3重量部を含むことがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
環境負荷の少ないポリ乳酸樹脂に、難燃剤と環状カルボジイミドを添加することで、作業環境が良好で、耐加水分解性、難燃性に優れる樹脂材料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の樹脂組成物における各成分、それらの配合割合、調製方法等について、順次具体的に説明する。
【0012】
<A成分について>
本発明のA成分として用いるポリ乳酸樹脂は、主としてL−乳酸単位からなるポリ−L乳酸、主としてD−乳酸単位からなるポリ−D乳酸、またはその混合物の何れを用いてもよい。
【0013】
本発明のポリ−L乳酸樹脂(A−1成分)、ポリ−D乳酸樹脂(A−2成分)は、式(1)で表されるL‐乳酸単位またはD‐乳酸単位から実質的になる。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明で用いるポリ−L乳酸樹脂もしくはポリ−D乳酸樹脂の光学純度は、90〜100モル%であることが好ましい。光学純度がこれより低いと、ポリ乳酸の結晶性や融点が低下し、高い耐熱性が得られにくい。このため、ポリ−L乳酸樹脂もしくはポリ−D乳酸樹脂の融点は160℃以上である事が好ましく、更に170℃以上である事が好ましく、175℃以上である事が最も好ましい。かかる観点において、ポリマー原料の乳酸、ラクチドの光学純度は、好ましくは96〜100モル%、より好ましくは97.5〜100モル%、さらに好ましくは98.5〜100モル%、とりわけ好ましくは99〜100モル%の範囲が選択される。
【0016】
共重合単位としては、ポリ−L乳酸樹脂であればD−乳酸単位、ポリ−D乳酸樹脂であればL−乳酸単位が挙げられ、また、乳酸単位以外の単位も挙げられる。乳酸単位以外の共重合単位の共重合割合は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。
【0017】
共重合単位としては、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
【0018】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールにエチレンオキシドを付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0019】
ポリL‐乳酸樹脂およびポリD‐乳酸樹脂の重量平均分子量は、本発明組成物の機械物性及び成形性を両立させるため、好ましくは8万〜30万、より好ましくは10万〜25万、さらに好ましくは12万〜23万の範囲が選択される。
【0020】
ポリL‐乳酸樹脂およびポリD‐乳酸樹脂は、従来公知の方法で製造することができ、例えば、L‐ラクチドまたはD‐ラクチドの溶融開環重合法、低分子量のポリ乳酸の固相重合法、さらに、乳酸を脱水縮合させる直接重合法などを例示することができる。重合反応は、従来公知の反応装置で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列にて使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。固相重合法では、プレポリマーは予め結晶化させることが、ペレットの融着防止、生産効率の面から好ましく、固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度以上融点未満の温度範囲の一定温度で、あるいは重合の進行に伴い次第に昇温させ重合を行う。生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。ラクチドの溶融開環重合には、製造効率、ポリマー品質の点より、金属含有触媒を適用することが好ましく、触媒活性、副反応より、好ましくはスズを含有する触媒、なかでも好ましくはII価のスズ化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ等、なかでもオクチル酸スズがFDAにおいて安全性が確認されたとりわけ好ましい剤として例示される。触媒の使用量はラクチド類1kgあたり好ましくは0.1×10−4〜50×10−4モルであり、さらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1×10−4〜30×10−4モルがより好ましく、特に好ましくは2×10−4〜15×10−4モルである。重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどを好適に用いることができる。重合時使用された金属含有触媒は、使用に先立ち従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。かかる失活剤としては、ポリエステル樹脂の重合触媒の失活剤として一般的に使われる失活剤であれば特に制限は無いが、下記一般式(2)で表されるホスホノ脂肪酸エステルが好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
式中R11〜R13は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基である。アリキル基として、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。アリール基として、フェニル基、ナフタレン−イル基が挙げられる。R11〜R13は、これらが全て同一であっても、異なるものがあっても構わない。またn31は1〜3の整数である。式(2)で表される化合物として、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−プロピルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−ブチルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−ヘキシルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−オクチルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−デシルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−ドデシルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−オクタデシルホスホノ酢酸エチル、ジフェニルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸デシル、ジエチルホスホノ酢酸ドデシル、ジエチルホスホノ酢酸オクタデシル、ジエチルホスホノプロピオン酸エチル、ジ−n−プロピルホスホノプロピオン酸エチル、ジ−n−ブチルホスホノプロピオン酸エチル、ジ−n−ヘキシルホスホノプロピオン酸エチル、ジ−n−オクチルホスホノプロピオン酸エチル、ジ−n−デシルホスホノプロピオン酸エチル、ジ−n−ドデシルホスホノプロピオン酸エチル、ジ−n−オクタデシルホスホノプロピオン酸エチル、ジフェニルホスホノプロピオン酸エチル、ジエチルホスホノプロピオン酸デシル、ジエチルホスホノプロピオン酸ドデシル、ジエチルホスホノプロピオン酸オクタデシル、ジエチルホスホノ酪酸エチル、ジ−n−プロピルホスホノ酪酸エチル、ジ−n−ブチルホスホノ酪酸エチル、ジ−n−ヘキシルホスホノ酪酸エチル、ジ−n−オクチルホスホノ酪酸エチル、ジ−n−デシルホスホノ酪酸エチル、ジ−n−ドデシルホスホノ酪酸エチル、ジ−n−オクタデシルホスホノ酪酸エチル、ジフェニルホスホノ酪酸エチル、ジエチルホスホノ酪酸デシル、ジエチルホスホノ酪酸ドデシル、ジエチルホスホノ酪酸オクタデシルが挙げられる。効能や取扱いの容易さを考慮すると、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−プロピルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−ブチルホスホノ酢酸エチル、ジ−n−ヘキシルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸デシル、ジエチルホスホノ酢酸オクタデシルが好ましい。式(2)において、R11〜R13の炭素数が20以下であると、その融点がポリ乳酸や組成物の製造温度よりも低くなるため十分に融解混合し、効率的に金属重合触媒を補足することができる。またホスホノ脂肪酸エステルはホスホン酸ジエステル部位とカルボン酸エステル部位の間に脂肪族炭化水素基を有する。n31が1〜3の整数であれば、ポリ乳酸中の金属重合触媒を効率的に補足することができる。
【0023】
ホスホノ脂肪酸エステルの含有量は、ポリ乳酸100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜0.2重量部である。ホスホノ脂肪酸エステルの含有量が、少なすぎると残留する金属重合触媒の失活効率が極めて悪く、十分な効果が得られない。また、多すぎると成形加工時に使用する金型の汚染が著しくなる。前記重合失活剤は、重合終了時に添加するのが好ましいが、必要に応じて押出、成形の各プロセスにおいて任意に添加する事が出来る。
【0024】
ポリL‐乳酸樹脂(A−1成分)とポリD−乳酸樹脂(A−2成分)の混合物を用いる場合、その重量比(A−1成分/A−2成分)は10:90〜90:10の範囲で含有されることが好ましい。更に、ポリL−乳酸樹脂(A−1成分)とポリD−乳酸樹脂(A−2成分)の混合物に対し、式(3)および/または(4)で表されるリン酸エステル金属塩をポリL‐乳酸樹脂(A−1成分)とポリD‐乳酸樹脂(A−2成分)との合計100重量部あたり好ましくは0.01〜2.0重量部の範囲で含むことにより、高度にステレオコンプレックス結晶が形成されたポリ乳酸樹脂を得る事が出来るため好ましい。リン酸エステル金属塩が0.01重量部より少ないと、ステレオコンプレックス結晶の形成、結晶性の向上に効果が認められないことがあり、また2.0重量部より過剰に適用すると、着色などポリ乳酸成分の分解、異物生成が引き起こされることがある。かかる観点より、リン酸エステル金属塩の適用量は、より好ましくは0.02〜1.0重量部、さらに好ましくは0.03〜1.0重量部に範囲が選択される。
【0025】
【化3】

(式中R14は水素原子、または炭素原子数1〜4のアルキル基を、R15、R16、R17はそれぞれ独立に水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、p32は1または2を、q32はMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子のときは1または2を表す。)
【0026】
【化4】

(式中R18、R19はそれぞれ独立に水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、p33は1または2を、q33はMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子のときは1または2を表す。)
【0027】
こうして作られたポリ乳酸は、高度にステレオコンプレックス結晶が形成されたステレオコンプレックスポリ乳酸となり、示差走査熱量計(DSC)測定の昇温過程におけるポリ乳酸樹脂(A成分)結晶由来の融解エンタルピーを用いて下記式(1)で表されるステレオコンプレックス結晶化度が80%以上であることが好ましい。
ステレオコンプレックス結晶化度=△Hms/(△Hms+△Hmh)×100 (1)
[但し、式(1)中、△Hmhと△Hmsは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において、190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hmh)、および190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hms)である。]
【0028】
なお、上記△Hmhと△Hmsは樹脂組成物を示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定することにより求めた。
ステレオコンプレックス結晶化度が高いほど成形性、耐熱性が高くなり、ステレオコンプレックス結晶化度は、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。ステレオコンプレックス結晶化度が80%より低いと、ポリ−L乳酸樹脂やポリ−D乳酸樹脂に由来するホモポリ乳酸結晶の特徴が表れてしまい、耐熱性が不十分となる。
【0029】
ステレオコンプレックスポリ乳酸の融点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは205℃以上、更に好ましくは210℃以上である。ステレオコンプレックスポリ乳酸の融点が200℃より低いと、その結晶性や融点の低さから耐熱性は不十分である。
融解エンタルピーは、20J/g以上が好ましく、より好ましくは30J/g以上である。融解エンタルピーが20J/gより低いと結晶性が低く、耐熱性は不十分である。
具体的には、ステレオコンプレックス結晶化度が80%以上であり、融点が200℃以上であり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。
【0030】
<B成分について>
本発明において、環状カルボジイミド化合物(B成分)は環状構造を有する。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有する。環状構造中の原子数は8〜50であり、好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20、最も好ましいのは10〜15である。
【0031】
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇することがある。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20、最も好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0032】
環状構造は、下記式(5)で表される構造である。
【化5】

式中、Qは、下記式(5−1)、(5−2)または(5−3)で表される2〜4価の結合基である。
【化6】

式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
【0033】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0034】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0035】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0036】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0037】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0038】
およびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0039】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0040】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0041】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0042】
式(5−1)、(5−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0043】
は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0044】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙
げられる。
【0045】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0046】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0047】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0048】
本発明で用いる環状カルボジイミドとして、下記式(5)、(7)および(8)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
<環状カルボジイミド(2)>
【化7】

式中、Qは、下記式(6−1)、(6−2)または(6−3)で表される2価の結合基である。
【化8】

式中、Ar(aは下付、以下も同様)およびArは各々独立に、2価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2価の炭素数1〜20の脂肪族基、2価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。saは0〜10の整数である。kaは0〜10の整数である。XおよびXは各々独立に、2価の炭素数1〜20の脂肪族基、2価の炭素数3〜20の脂環族基、2価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。Xは、2価の炭素数1〜20の脂肪族基、2価の炭素数3〜20の脂環族基、2価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい。かかる環状カルボジイミド化合物(2)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0050】
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0051】
<環状カルボジイミド(3)>
【化23】

式中、Q(bは下付、以下同様)は、下記式(7−1)、(7−2)または(7−3)で表される3価の結合基であり、Yは環状構造を担持する担体である。
【化24】

式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sbおよびkbは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
【0052】
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(7)で表される構造を形成している。かかる環状カルボジイミド化合物(7)としては、下記化合物が挙げられる。
【0053】
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【0054】
<環状カルボジイミド(4)>
【化29】

式中、Q(cは下付、以下同様)は、下記式(8−1)、(8−2)または(8−3)で表される4価の結合基であり、ZおよびZは環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【化30】

Ar、Ar、R、R、X、X、X、scおよびkcは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0055】
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(8)で表される構造を形成している。かかる環状カルボジイミド化合物(8)としては、下記化合物が挙げられる。
【0056】
【化31】

【化32】

【化33】

【0057】
かかる環状カルボジイミド化合物の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A成分)100重量部に対し、0.001〜10重量部であり、好ましくは、0.01〜7重量部、より好ましくは、0.1重量部〜5重量部である。環状カルボジイミド化合物の含有量が0.001重量部より少ない場合、ポリ乳酸樹脂(A成分)の末端量に対して、環状カルボジイミドのカルボジイミド基の数が少なすぎるために、十分な耐加水分解性向上効果が得られない。また、環状カルボジイミド化合物の添加量が10重量部よりも多い場合は、かえって耐加水分解性を悪化させてしまう。
【0058】
<環状カルボジイミド化合物の製造方法>
環状カルボジイミド化合物は従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0059】
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法を組み合わせ及び改変して製造することができ、製造する化合物によって適切な方法を採用する事が出来る。
【0060】
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,
R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System BocO/DMAP,Pedro Molina etal.
【0061】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール、下記式(a−2)で表されるニトロフェノールおよび下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化34】

【0062】
(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化35】

【0063】
(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化36】

【0064】
(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させる工程により製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0065】
【化37】

(式中、ni−1は1〜6の整数である。)
【化38】

(式中、mi−2およびni−2は各々独立に0〜3の整数である。)
【化39】

(式中、Ri−3およびR’i−3は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基を表す。)
【0066】
<C成分について>
本発明の組成物はリン系難燃剤(C−1成分)、窒素系難燃剤(C−2成分)、金属水酸化物系難燃剤(C−3成分)、金属酸化物系難燃剤(C−4成分)、および臭素系難燃剤(C−5成分)からなる群より選ばれる少なくとも一種の難燃剤(C成分)を含有する。これら難燃剤(C成分)の使用は単独でも2種以上でも良く、各々の種類の中で単数以上の化合物を使用しても構わない。その使用は目的に応じて使い分けることが好ましい。
【0067】
(リン系難燃剤:C−1成分)
リン系難燃剤(C−1成分)としては、(1)リン酸エステル系難燃剤、(2)ホスホニトリル系難燃剤、(3)ホスホネート系難燃剤、(4)ホスフィン酸金属塩系難燃剤、(5)リン酸金属塩系難燃剤が挙げられる。
【0068】
(1)リン酸エステル系難燃剤
本発明で使用できるリン酸エステル系難燃剤としては、リン酸エステル化合物、ホスファフェナントレン化合物などが挙げられる。リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、特に下記式(9)で表される1種または2種以上のリン酸エステル化合物を挙げることができる。
【0069】
【化40】

【0070】
式中X34は、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドから誘導される基である。n34は0〜5の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値である。R21、R22、R23、およびR24はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールから誘導される基である。
【0071】
さらに好ましいものとしては、式中のX34が、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルから誘導される基であり、n34は1〜3の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルのブレンドの場合はその平均値であり、R21、R22、R23、およびR24はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、キシレノールから誘導される基であるものが挙げられる。
【0072】
かかるリン酸エステル系難燃剤の中でも、ホスフェート化合物としてはトリフェニルホスフェート、ホスフェートオリゴマーとしてはレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が耐加水分解性などにも優れるため好ましく使用できる。さらに好ましいのは、耐熱性などの点からレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)である。これらは耐熱性も良好であるためそれらが熱劣化したり揮発するなどの弊害がないためである。
【0073】
(2)ホスホニトリル系難燃剤
本発明で用いられるホスホニトリル系難燃剤は、ホスホニトリル線状ポリマー、ホスホニトリル環状ポリマーなどであり、下記式(10)で表される繰り返し単位を有するオリゴマーないしポリマーであり、その数平均重合度が3以上のものが好ましい。直鎖状、環状のいずれであってもかまわないが、特に環状3量体がより好ましく用いられる。また、直鎖状物、環状物を任意の割合で混合した混合物であってもかまわない。
【0074】
【化41】

【0075】
式中A、Bは各々独立に、O、N、S原子を表わす。R25、R26は各々独立に、炭素数6〜15のアリール基、炭素数6〜15のアルキル基、炭素数6〜15のアラルキル基、または炭素数6〜15のシクロアルキル基である。R25とR26が連結した環状構造でも良い。x35、y35は、0または1である。n35は数平均重合度を意味し、3または3より大きい数値を表わす。
【0076】
かかるホスホニトリル線状ポリマー、ホスホニトリル環状ポリマーは、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、あるいはこれら環状オリゴマーを開環重合して得られるポリ(ジクロロホスファゼン)とアルコール、フェノール、アミン、チオール、グリニャール試薬等の求核試薬とを公知の方法で反応させることにより合成することができる。
【0077】
(3)ホスホネート系難燃剤
ホスホネート系難燃剤は、下記一般式(11)で表されるものが好ましい。
【化42】

【0078】
式中R27およびR28は各々独立に、炭素数1〜24の分岐もしくは分岐していないアルキレン基、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリーレン基、炭素数6〜30の置換もしくは非置換のアラルキレン(aralkylene)基、または炭素数6〜30の置換もしくは非置換のアルカリーレン(alkarylene)基である。
29は、水素原子、炭素数1〜24の分岐若しくは分岐していないアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基、炭素数6〜30の置換もしくは非置換のアラルキル基、または炭素数6〜30の置換もしくは非置換のアルカリール(alkaryl)基である。x36およびy36はそれぞれ独立して1〜50の数である。
【0079】
(4)ホスフィン酸金属塩系難燃剤
有機ホスフィン酸金属塩としては、特に下記一般式(12)、(13)で示される1種または2種以上が挙げられる。
【化43】

【化44】

【0080】
式中、R31、R32、R33、R34は各々独立に、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基である。R35は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアルキレンアリーレン基、または炭素数7〜20のシクロアルキレンアリーレン基である。M、Mは、Mg、Ca、Al、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kまたはプロトン化した窒素塩基である。X38は1または2であり、m37、m38は2または3であり、n38は1または3である。
【0081】
31、R32、R33、R34は難燃剤中のリン含有量を適正に保持し、難燃性を好適に発現すると同時に、組成物の結晶性を好適に発現するため、炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20アラルキル基が好適に選択される。なかでも炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基、炭素数6〜20のアリール基が好適に選択される。
具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基あるいはフェニル基が好適に例示される。
【0082】
35は難燃剤中のリン含有量を適正に保持し、難燃性を好適に発現すると同時に、組成物の結晶性を好適に発現するため、炭素数が1〜10の範囲にある直鎖または分岐アルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアルキレンアリーレン基、炭素数7〜20のシクロアルキレンアリーレン基が好適に選択される。
【0083】
具体的には例えばメチレン基、エチレン基、メチルエタン‐1,3‐ジイル基、プロパン‐1,3‐ジイル基、2,2‐ジメチルプロパン‐1,3‐ジイル基、ブタン‐1,4‐ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、フェニレン基、ナフチレン基、エチルフェニレン基、tert−ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、フェニレンプロピレン基、フェニレンブチレン基等が例示される。
【0084】
、MはMg、Ca、Al、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよびプロトン化した窒素塩基より選択される少なくとも一種であり、プロトン化した窒素塩基としては例えばアミド基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基あるいはメラミン由来の基が挙げられる。
【0085】
本発明組成物の難燃性、結晶性、成形性等を向上させるため、M、MはMg、Ca、Al、Zn、並びにアミド基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基あるいはメラミン由来の基からなる群より選択される一種であることが好ましい。中でもがAlがもっとも好適に選択される。
式(12)及び(13)で表されるホスフィン酸塩を併用する場合、(12)/(13)の重量比は10/90から30/70の範囲が好適に選択される。
【0086】
本発明で使用するホスフィン酸金属塩系難燃剤は、耐湿性を向上させるため、表面を被覆処理して用いてもよく、熱硬化性樹脂などにより被覆してもよい。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、これら1種または2種以上を用いてもよい。
【0087】
本発明で使用するホスフィン酸金属塩系難燃剤は、ベース樹脂との密着性を向上させるため、表面処理剤などにより表面処理して用いてもよい。このような表面処理剤としては、官能性化合物(例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物など)などが使用できる。
【0088】
(5)リン酸金属塩系難燃剤
リン酸金属塩としては、アルミニウムを含有する、下記一般式(14)で表される亜リン酸アルミニウム、下記一般式(15)で表される第一リン酸アルミニウム、下記一般式(16)で表される第三リン酸アルミニウムが好ましい。
【0089】
【化45】

【化46】

【化47】

【0090】
一般式(14)〜(16)で表される難燃剤のうち、ポリ乳酸樹脂組成物の熱安定性、難燃性の面から一般式(14)および(15)で表される難燃剤が好ましく、一般式(14)で表される亜リン酸アルミニウムが熱安定性、難燃性の面から特に好ましく、発泡性の亜リン酸アルミニウムが難燃性の面から最も好ましい。
【0091】
発泡性の亜リン酸アルミニウム塩は、リン酸又は亜リン酸成分と、アルミニウム化合物と、更に必要に応じて塩基成分を用いて反応させることにより得られる。アルミニウム化合物及び塩基成分に代えて、塩基性のアルミニウム化合物(水酸化アルミニウムなど)を用いても良い。このような発泡性の亜リン酸アルミニウムは、例えば、商品名「APAシリーズ(APA−100など)」などとして太平化学産業(株)から入手できる。
発泡性の亜リン酸アルミニウムは、通常380℃〜480℃の温度で、好ましくは10〜70倍、より好ましくは20〜50倍、さらに好ましくは30〜40倍程度に発泡可能である。
【0092】
最も好ましいリン酸金属塩である亜リン酸アルミニウム中のアルミニウム含有量は好ましくは5〜25重量%、より好ましくは8〜20重量%程度である。また、リン含有量は好ましくは15〜35重量%、より好ましくは16〜35重量%、更に好ましくは17〜33重量%程度である。亜リン酸アルミニウムを5重量%の濃度で含有する水分散液のpHは好ましくは3.5〜8.5、より好ましくは4〜8、更に好ましくは4.5〜7.5程度を示す。亜リン酸アルミニウムは、通常、粒状体で使用できる。粒子状の亜リン酸アルミニウムの平均粒径は好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.1〜50μm程度である。亜リン酸アルミニウムの吸油量は好ましくは15〜50mL/100g、より好ましくは20〜40mL/100g、さらに好ましくは25〜30mL/100g程度である。亜リン酸アルミニウムのBET比表面積は、好ましくは0.3〜2m/g、より好ましくは0.5〜1.5m/g、さらに好ましくは0.8〜1.2m/g程度である。このような金属塩は、安全性に優れるため、環境負荷が少なく、経済的にも有利であるだけでなく、ポリ乳酸樹脂組成物に添加した場合、熱安定性、耐熱性、成形性に優れた材料となる。
【0093】
本発明で使用するリン酸金属塩系難燃剤は、耐湿性を向上させるため、表面を被覆処理して用いてもよく、熱硬化性樹脂などにより被覆してもよい。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、これら1種または2種以上を用いてもよい。
【0094】
本発明で使用するリン酸金属塩系難燃剤は、ベース樹脂との密着性を向上させるため、表面処理剤などにより表面処理して用いてもよい。このような表面処理剤としては、官能性化合物(例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物など)などが使用できる。
【0095】
(窒素系難燃剤:C−2成分)
本発明で使用する窒素系難燃剤としてはメラミン系化合物、メラミン系化合物とポリリン酸との反応生成物およびメラミンの縮合体とポリリン酸との反応生成物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく用いられ、式(17)もしくは(18)で表される難燃剤からなる群より選択される少なくとも一種が特に好ましい。
【0096】
【化48】

【化49】

[式中、R41〜R46 は、各々独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜16のシクロアルキル基、(これらは置換されていないか、水酸基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基によって置換されている。)、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、炭素数6〜12のアリール基、−O−RA、−N(RA)(RB)で表される基である。なお、RA及びRB は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜16のシクロアルキル基( これらは置換されていないか、ヒドロキシル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル官能基によって置換されている。)、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アシル基またはアシルオキシ基、炭素数6〜12のアリール基である。但し、R41〜R46 の全てが同時に水素原子であることはなく、かつ式(17)、(18)においてR41〜R46 の全てが同時に−NHであることはない。X43は、メラミンまたはトリアジン化合物と付加物を形成することができる酸であり、s43、t43は各々独立に1または2である。]
【0097】
かかる(17)、(18)で表されるとしては、例えばジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メレムポリホスフェート、メラムポリホスフェート、メロンポリホスフェートなどが好適に例示される。
本発明においては、トリアジン骨格を有する窒素系難燃剤に付加的に下記式(19)〜(22)で表される化合物の少なくとも一種を併用することにより本発明の組成物の難燃性を向上させることができる。
【0098】
【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【0099】
式中、R47〜R49、R51〜R59、およびR61〜R64は各々独立にR41〜R46で記載した官能基が好適に例示される。例えばトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アランイン、グリコールウリル、尿素.シアヌレートなどが好適に例示される。かかる剤はトリアジン骨格を含む窒素系難燃剤を基準にして10〜50重量%の範囲で適用される。
【0100】
(金属水酸化物系難燃剤:C−3成分)
本特許で使用できる金属水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化珪素、水酸化チタン、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化ナトリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素、水酸化マンガン、水酸化リチウムなどを挙げることができる。特に、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムが、分子量あたりの水酸基濃度が高いために難燃効果が高く、また毒性が低くしかも安価であるなどの理由で望ましい。
【0101】
本発明で使用する金属水酸化物系難燃剤は、組成物の熱安定性の向上のため、純度が高いものが好ましく、特に純度が99.5%以上であるものが好ましい。金属水酸化物系難燃剤の純度は公知の方法で測定することができる。例えば、金属水酸化物系難燃剤に含まれている不純物の含有量を公知の方法で測定し、全体量から前記不純物の含有量を減じれば、金属水酸化物系難燃剤の純度を得ることができる。例えば水酸化アルミニウムの場合、不純物としてはFe、SiO、T−NaO、S−NaO等が挙げられる。Feの含有量は炭酸ナトリウム−ホウ酸液に融解後、O−フェナントロリン吸光光度法(JISH 1901)により求められる。SiOの含有量は炭酸ナトリウム−ホウ酸液に融解後、モリブテン青吸光光度法(JISH 1901)により求められる。T−NaOの含有量は硫酸に融解後、フレーム光度測定法で、S−NaOは温水抽出後、フレーム光度測定法で求められる。上記により求められた含有量を水酸化アルミニウムの重量より減じることにより水酸化物の純度を得ることができる。もちろん異なる複数種の金属水酸化物系難燃剤を組み合わせて用いることができることは言うまでもない。
【0102】
本発明で用いる金属水酸化物系難燃剤の形状は特に限定されないが、粒状であることが好ましい。その粒子径は、レーザー回折法により求められる平均粒子径が約100μm以下であることが好ましい。なお、この場合において粒度分布は問わない。成形プロセスにおける射出成形性や混練時の分散性の観点から、平均粒子径は上記範囲が好ましく、上記範囲の中でもより小さい方がより好ましい。なお、もちろん組成物への充填率を高めるために平均粒子径の異なる複数種の金属水酸化物系難燃剤を組み合わせて用いることができる。
【0103】
さらに、窒素ガス吸着法により求められるBET比表面積が約5.0m/g以下の粒子を用いることが好ましい。もちろん組成物への充填率を高めるためにBET比表面積の異なる複数種の金属水酸化物系難燃剤を組み合わせて用いることができる。成形性の観点から、BET比表面積は上記範囲が好ましく、上記範囲の中でもより小さい方がより好ましい。
【0104】
本発明で使用する金属水酸化物系難燃剤は、耐湿性を向上させるため、表面を被覆処理して用いてもよく、熱硬化性樹脂などにより被覆してもよい。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、これら1種または2種以上を用いてもよい。
【0105】
本発明で使用する金属水酸化物系難燃剤は、ベース樹脂との密着性を向上させるため、表面処理剤などにより表面処理して用いてもよい。このような表面処理剤としては、官能性化合物(例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物など)などが使用できる。
【0106】
(C−4成分:金属酸化物系難燃剤)
本特許で使用できる金属酸化物系難燃剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化カリウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ナトリウム、酸化ニッケル、酸化ホウ素、酸化マンガン、酸化リチウム、酸化アンチモンなどを挙げることができる。
【0107】
本発明で用いる金属酸化物系難燃剤の形状は特に限定されないが、粒状であることが好ましい。その粒子径は、レーザー回折法により求められる平均粒子径が約100μm以下であることが好ましい。なお、この場合において粒度分布は問わない。成形プロセスにおける射出成形性や混練時の分散性の観点から、平均粒子径は上記範囲が好ましく、上記範囲の中でもより小さい方がより好ましい。なお、もちろん組成物への充填率を高めるために平均粒子径の異なる複数種の金属酸化物系難燃剤を組み合わせて用いることができる。
【0108】
さらに、窒素ガス吸着法により求められるBET比表面積が約5.0m/g以下の粒子を用いることが好ましい。もちろん組成物への充填率を高めるためにBET比表面積の異なる複数種の金属酸化物系難燃剤を組み合わせて用いることができる。成形性の観点から、BET比表面積は上記範囲が好ましく、上記範囲の中でもより小さい方がより好ましい。
【0109】
本発明で使用する金属酸化物系難燃剤は、耐湿性を向上させるため、表面を被覆処理して用いてもよく、熱硬化性樹脂などにより被覆してもよい。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、これら1種または2種以上を用いてもよい。
【0110】
本発明で使用する金属酸化物系難燃剤は、ベース樹脂との密着性を向上させるため、表面処理剤などにより表面処理して用いてもよい。このような表面処理剤としては、官能性化合物(例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物など)などが使用できる。
かかる金属酸化物系難燃剤は、それぞれ単独で用いることも出来るが、リン系難燃剤や窒素系難燃剤、臭素系難燃剤と併用して用いる事で、特に高い難燃効果が得られるため好ましい。
【0111】
(臭素系難燃剤:C−5成分)
本発明において用いる臭素系難燃剤としては、例えば臭素含有率20重量%以上の臭素化ビスフェノールA型ポリカーボネート難燃剤、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはその末端グリシジル基の一部または全部を封鎖した変性物、臭素化ジフェニルエーテル難燃剤、臭素化イミド難燃剤、臭素化ポリスチレン難燃剤等を挙げることができる。
【0112】
具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1‐スルホニル[3,5‐ジブロモ‐4‐(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノールS、トリス(2,3‐ジブロモプロピル‐1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA誘導体、テトラブロムビスフェノールA‐エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノールA‐カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA‐ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA‐ビス(2,3‐ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA‐ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N′‐エチレン‐ビス‐テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノールA−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノールA−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
【0113】
リン系難燃剤(C−1成分)、窒素系難燃剤(C−2成分)、金属水酸化物系難燃剤(C−3成分)、金属酸化物系難燃剤(C−4成分)および臭素系難燃剤(C−5成分)から選ばれる1種以上の難燃剤(C成分)の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対して、1〜100重量部、より好ましくは3〜90重量部、さらに好ましくは5〜80重量部である。含有量が1重量部未満では難燃剤の添加量が少なすぎ、難燃性が得られず、100重量部を超えると耐熱性が悪化して離型性が低下するため、好ましくない。
【0114】
<D成分について>
D成分の末端封鎖剤とは、ポリ乳酸(A成分)のカルボキシル基末端の一部または全部と反応して封鎖する働きを示すものであり、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、およびオキサジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である。ここで、B成分の環状カルボジイミドは、末端封鎖剤(D成分)には含まれない。付加反応型の化合物を用いれば、例えば、アルコールとカルボキシル基の脱水縮合反応による末端封鎖のように余分な副生成物を反応系外に排出する必要がない。従って、付加反応型の末端封鎖剤を添加・混合・反応させることにより、副生成物による樹脂の分解を抑制しつつ、十分なカルボキシル基末端封鎖効果を得ることができ、実用的に十分な耐加水分解性を備えた樹脂組成物、および該樹脂組成物からなる成形品を得ることができる。
【0115】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちエポキシ化合物の例としては、例えば、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、3−(2−キセニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、α−クレシルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジメチルジグリシジルエステル、フェニレンジグリシジルエーテル、エチレンジグリシジルエーテル、トリメチレンジグリシジルエーテル、テトラメチレンジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシドなどが挙げられる。さらに、本発明では、エポキシ基を含有する重合体を使用する事ができ、ポリ乳酸との相溶性からアクリル系重合体が好ましく使用できる。このような重合体として、例えばエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単量体同士の重合体、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合体、エポキシ基を有するアクリル酸エステル単量体同士の重合体、エポキシ基を有するアクリル酸エステル単量体とアクリル酸エステル単量体の共重合体、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とアクリル酸エステル単量体との共重合体、エポキシ基を有するアクリル酸エステル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合体等が挙げられる。また、エポキシ基を有するアクリル−スチレン系共重合体としては、スチレン単量体とエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合体、スチレン単量体とエポキシ基を有するアクリル酸エステル単量体の共重合体が挙げられる。これらのエポキシ化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸単位のカルボキシル末端を封鎖すればよいが、反応性の点でエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが好ましい。
【0116】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちオキサゾリン化合物の例としては、例えば、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物など、例えばスチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体などが挙げられる。これらのオキサゾリン化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸単位のカルボキシル末端を封鎖すればよい。
【0117】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちオキサジン化合物の例としては、例えば、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−エトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−プロポキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ブトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘプチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−オクチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ノニルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−メタアリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−プロピレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ブチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−P,P′−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサジン化合物などが挙げられる。これらのオキサジン化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸単位のカルボキシル末端を封鎖すればよい。
【0118】
更には、既に例示したオキサゾリン化合物および上述のオキサジン化合物などの中から1種または2種以上の化合物を任意に選択し併用してポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端を封鎖してもよいが、耐熱性および反応性やポリ乳酸樹脂との親和性の点で2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)や2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)が好ましい。
【0119】
また、本発明に用いることのできる末端封鎖剤として上述したエポキシ化合物、オキサゾリン化合物、およびオキサジン化合物のうち、2種以上の化合物を末端封鎖剤として併用することもできる。
【0120】
具体的なカルボキシル基末端封鎖の程度としてはポリ乳酸樹脂のカルボキシル基末端の濃度が10当量/10 kg以下であることが耐加水分解性向上の点から好ましく、6当量/10 kg以下であることがさらに好ましい。
【0121】
ポリ乳酸(A成分)のカルボキシル基末端を封鎖する方法としては、末端封鎖剤を反応させればよく、付加反応によりカルボキシル基末端を封鎖する方法としては、ポリ乳酸の溶融状態でエポキシ化合物、オキサゾリン化合物、およびオキサジン化合物などの末端封鎖剤を適量反応させることで得ることができ、ポリマーの重合反応終了後に末端封鎖剤を添加・反応させることが可能である。
【0122】
この末端封鎖剤(D成分)の含有量はポリ乳酸成分(A成分)100重量部あたり、0.001〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。含有量が0.001重量部未満ではカルボキシル末端に対する末端封鎖剤の添加量が少なすぎ、十分な耐加水分解性が得られず、10重量部を超えるとゲル化などを起し、流動性が著しく低下する。
【0123】
<E成分について>
本発明ではハイドロタルサイト(E成分)を含むことができる。本発明で使用するハイドロタルサイト(E成分)は、下記一般式(23)で表される合成ハイドロタルサイトが好ましい。
【0124】
【化54】

(式中のM2+はマグネシウムイオン、亜鉛イオン等の2価の金属イオン、N3+はアルミニウムイオン、クロムイオン等の3価の金属イオン、An−はn価の層間陰イオンを表し、xは0<x≦0.33、mは0≦m<2であり、nは1≦n≦5の整数である。)
【0125】
式(23)中の[M2+1−X3+(OH)]は水酸化物シートで、金属イオンを6つのOHが取り囲んで形成する八面体が互いに陵を共有することによって作られる。この水酸化物シートが重なって層状構造を形成している。式中(23)中の[An−x/n・mHO]は、水酸化物シートの間に入るn価の陰イオンと結晶水を表す。
2+は2価の金属イオンであれば特に限定されないが、一般的にマグネシウムイオンが好ましく使われている。また、N3+は3価の金属イオンであれば特に限定されないが、一般的にアルミニウムイオンが好ましく使われており、An−は炭酸イオンが好ましく使われている。
【0126】
ハイドロタルサイトがポリ乳酸の耐加水分解性を向上させるメカニズムは定かでは無いが、熱分解及び加水分解によって発生した乳酸など、ポリ乳酸の加水分解反応の触媒となる酸を吸着するためと考えられる。
【0127】
本発明で使用するハイドロタルサイトは、焼成による脱水処理がなされていることが好ましい。焼成処理する温度は、ハイドロタルサイトの化学構造に応じて任意に選ぶことができる。例えば、M2+がマグネシウムイオン、N3+がアルミニウムイオン、An−が炭酸イオンであり、マグネシウムイオン:アルミニウムイオン=2:1(x=0.33)であった場合、結晶水の脱水温度は210℃であることから、この温度以上で焼成処理することで脱水する事ができ、xが0.33より小さくなるにつれて、結晶水の脱水温度は低くなる。脱水処理されたハイドロタルサイトを使用することで、押出や成形などの工程での樹脂の分解を防ぐ事が出来るため、より耐加水分解性に優れた樹脂組成物を得ることが出来る。従って、式(23)におけるmの範囲は0≦m<0.5が好ましく0≦m<0.1が最も好ましい。
【0128】
また、本発明で使用するハイドロタルサイトは、表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸塩、合成樹脂などが挙げられ、特にポリ乳酸と馴染みのよい脂肪酸、脂肪酸塩が好適に用いられる。ハイドロタルサイトを表面処理することにより、押出や成形などの工程でのポリ乳酸の分解を防ぐことが出来るだけでなく、ハイドロタルサイトのポリ乳酸中への分散が上がり、効果的に酸の吸着が行われ、より耐加水分解性にすぐれた樹脂組成物を得る事ができる。
【0129】
表面処理に使用する脂肪酸は、脂肪酸であれば特に限定されないが、沸点の比較的高い炭素数12以上の高級脂肪酸が好ましい。具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などが挙げられる。また、表面処理に使用する脂肪酸塩は、脂肪酸塩であれば特に限定されないが、沸点の比較的高い炭素数12以上の高級脂肪酸塩が好ましい。具体例としては、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレイン酸塩などが挙げられる。高級脂肪酸塩に使用される塩としては、ナトリウム、カリウム、亜鉛などの無機化合物が好ましい。
【0130】
本発明は、脱水処理、表面処理のされていないハイドロタルサイト、脱水処理、表面処理のいずれかをしたハイドロタルサイト、脱水処理、表面処理の両方をしたハイドロタルサイトのいずれも使用することが出来るが、好ましくは、脱水処理、表面処理のいずれかをしたハイドロタルサイト、より好ましくは、脱水処理、表面処理の両方をしたハイドロタルサイトを使用することが出来る。
【0131】
脱水処理、表面処理のされていないハイドロタルサイトとしては、DHT−6(協和化学工業(株)製)、脱水処理のみされているハイドロタルサイトとしては、DHT−4C(協和化学工業(株)製)、表面処理のみされているハイドロタルサイトとしては、DHT−4A(協和化学工業(株)製)、脱水処理、表面処理の両方がされているハイドロタルサイトとしては、DHT−4A−2(協和化学工業(株)製)がそれぞれ市販品として入手することが出来る。
【0132】
ハイドロタルサイト(E成分)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A成分)100重量部に対し、0.01〜0.3重量部が好ましく、0.03〜0.2重量部がより好ましく、0.05〜0.2重量部が最も好ましい。ハイドロタルサイトの添加量が0.01重量部以下では、耐加水分解性向上の効果が得られず、ハイドロタルサイトの添加量が0.3重量部以上では、ポリ乳酸樹脂の熱分解などを引き起し、かえって耐加水分解性が悪化する。
【0133】
<F成分について>
本発明の組成物は、難燃助剤(F成分)を含有してもよい。本発明で使用する難燃助剤(F成分)としては、芳香族樹脂および、またはフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーが好ましく用いられる。
芳香族樹脂として、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂、芳香族エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、及び芳香族ポリエステルアミド系樹脂などが挙げられ、特に燃焼時の炭化促進効率の高い、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂、芳香族エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂が好ましい。本発明のポリフェニレンエーテル樹脂とは、フェニレンエーテル構造を有するフェノールの重合体または共重合体である。
【0134】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、ポリ(オキシ−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシ−2,6−ジメチルフェニレン−1,4−ジイル)、 ポリ(オキシ−2−メチル−6−エチルフェニレン−1,4−ジイル)、ポリ(オキシ−2 ,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイル)、ポリ(オキシ−2−エチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−ジイル)、ポリ(オキシ−2,6−ジ(n−プロピル)フェニレン−1,4−ジイル)、ポリ(オキシ−2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−ジイル)、ポリ(オキシ−2−エチル−6−イソプロピルフェニレン−1,4−ジイル)、ポリ(オキシ−2−メチル−6−ヒドロキシエチルフェニレン−1,4−ジイル)、ポリ(オキシ−2−メチル−6−クロロエチルフェニレン−1,4−ジイル)等が挙げられる。この中で、ポリ(オキシ‐2,6‐ジメチルフェニレン‐1,4‐ジイル)が特に好ましい。
【0135】
フェニレンエーテル構造を有する共重合体としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo‐クレゾールとの共重合体等が例示される。上記のポリフェニレンエーテル重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば米国特許4788277号明細書に記載されている方法等に従って、酸化カップリング重合により製造することができる。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は、例えば分子量パラメーターとして、(0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃)還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.30〜0.55dl/gの範囲がより好ましい。
【0136】
また、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。かかる構造としては、例えば特願昭63−12698号公報、特開昭63−301222号公報などに記載されている、オキシ−2−(N、N−ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレン−1,4−ジイルユニットやオキシ−2−( N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレン−1,4−ジイルユニット等が挙げられる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0137】
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂には、α,β‐不飽和カルボン酸またはその無水物等のエチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル樹脂も含むことができる。かかる変性ポリフェニレンエーテル樹脂を用いた場合には、ビニル化合物重合体との混合性に優れ、相剥離等のない成形体を提供できる。α,β‐不飽和カルボン酸またはその無水物の例として、特公昭49−2343号公報、特公平3−52486号公報等に記載される無水マレイン酸、フタル酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水ハイミツク酸、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸、あるいはマレイン酸、フマル酸等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0138】
ポリフェニレンエーテル樹脂は上記エチレン性不飽和化合物により、有機過酸化物の存在下、または非存在下、ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度以上の温度まで加熱することによって変性することができる。本発明において、あらかじめ上記エチレン性不飽和化合物により変成されたポリフェニレンエーテル樹脂を用いてもよい。また、本発明組成物を製造する際に同時に、上記エチレン性不飽和化合物を添加することによりポリフェニレンエーテル重合体と反応させることもできる。
【0139】
本発明で使用するフェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは、硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で非反応性であるフェノールノボラック樹脂が難燃性、耐衝撃性、経済性の点で好ましい。また、形状は特に限定されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状など何れも使用できる。上記フェノール樹脂は必要に応じて1種または2種以上の混合物として使用することができる。フェノール樹脂は特に限定するものではなく、一般に市販されているものを使用することができる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるように反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後に加熱、還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去することにより得られる。これらの樹脂は複数の原料成分を用いることにより、共縮合フェノール樹脂を得ることができ、これについても同様に使用することができる。また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるように反応槽に仕込み、さらに水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の操作を行うことによって得ることができる。ここで、フェノール類とはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。一方、アルデヒド類とは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類についても必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。フェノール樹脂の分子量についても、特に限定されるものではないが、好ましくは数平均分子量200〜2,000、さらに好ましくは400〜1,500の範囲のものが機械的物性、成形加工性、経済性に優れ好ましい。
【0140】
本発明で使用する芳香族系エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂とは、芳香族ポリオールとエピハロゲノヒドリンより合成されるエポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂である。これらの中でも特にビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により形成されるエポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂が好ましく、またかかる平均分子量としては10,000〜50,000が好ましく、より好ましくは10,000〜40,000のものを使用することができる。芳香族系エポキシ樹脂の具体例としては、東都化成(株)製エポトート YDシリーズ等があり、フェノキシ樹脂の具体例としては、東都化成(株)フェノトート等があり、これらは市場で容易に入手できる。
芳香族樹脂の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部当り、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜25重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。
【0141】
本発明で使用するフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることかできるが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0142】
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(フィブリル化PTFE)は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その数平均分子量は、好ましくは150万〜数千万の範囲である。かかる下限はより好ましくは300万である。かかる数平均分子量は、特開平6−145520号公報に開示されているとおり、380℃でのポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度に基づき算出される。即ち、フィブリル化PTFEは、かかる公報に記載された方法で測定される380℃における溶融粘度が10〜1013poiseの範囲が好ましく、より好ましくは10〜1012poiseの範囲である。
【0143】
かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。また、特開平6−145520号公報に開示されているとおり、かかるフィブリル化PTFEを芯とし、低分子量のポリテトラフルオロエチレンを殻とした構造を有するものも好ましく利用される。
【0144】
フィブリル化PTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。フィブリル化PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
【0145】
混合形態のフィブリル化PTFEとしては、(1)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)フィブリル化PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)フィブリル化PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のフィブリル化PTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3800」(商品名)、GEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)およびPacific Interchem Corporation社製「POLY TS AD001」(商品名)などが例示される。混合形態におけるフィブリル化PTFEの割合としては、かかる混合物100重量%中、フィブリル化PTFEが10〜80重量%が好ましく、より好ましくは15〜75重量%である。フィブリル化PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、フィブリル化PTFEの良好な分散性を達成することができる。
【0146】
フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーの含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部を基準として、0.01〜3重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1.5重量部である。
なお、使用、目的に応じて、前記芳香族樹脂とフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを組み合わせて使用してもよい。
【0147】
<G成分について>
本発明の組成物は、無機充填剤(G成分)を含有してもよい。無機充填剤を含有することにより、機械特性、耐熱性、成形性の優れた組成物を得ることができる。本発明で使用する無機充填剤としては、通常の熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粉末状のものを用いることができる。
【0148】
具体的には例えば、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、イモゴライト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ.アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維およびホウ素繊維等の繊維状無機充填剤、層状珪酸塩、有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、粉末珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシクム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土フラーレンなどのカーボンナノ粒子等の板状や粒子状の無機充填剤が挙げられる。
【0149】
層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロサイト、カネマイト、ケニヤイト等の各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、LI型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられる。これらは天然のものであっても合成のものであって良い。これらのなかでモンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物やLi型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母が好ましい。
【0150】
これらの無機充填剤のなかでは繊維状もしくは板状の無機充填剤が好ましく、特にガラス繊維、ワラステナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、マイカ、およびカオリン、陽イオン交換された層状珪酸塩が好ましい。また繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上でありことがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
【0151】
かかる充填剤はエチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆または収束処理されていてもよく、またアミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤で処理されていても良い。
【0152】
無機充填剤(G成分)の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.05〜150重量部、より好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは1〜70重量部、特に好ましくは1〜50重量部、最も好ましくは1〜30重量部である。かかる配合量が0.05重量部より小さい場合には、補強効果が十分でなく、また150重量部を超えると、成形品外観の悪化や押出時のストランド切れなどを起こすため好ましくない。
【0153】
<その他の成分について>
〈光安定剤〉
本発明の組成物は光安定剤を含有していてもよい。光安定剤としては、具体的には例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等を挙げることができる。
【0154】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0155】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4’−オクトキシ−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0156】
芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のアルキルフェニルサリシレート類が挙げられる。
【0157】
蓚酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。
【0158】
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0159】
ヒンダードアミン系化合物としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−「2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジメタノールとの縮合物等を挙げることができる。
【0160】
光安定剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
【0161】
〈結晶化促進剤〉
本発明の組成物は結晶化促進剤を含有していてもよい。結晶化促進剤を含有することで、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
即ち結晶化促進剤の適用により、ポリ乳酸(A成分)の成形性、結晶性が向上し、通常の射出成形においても十分に結晶化し耐熱性、耐湿熱安定性に優れた成形品を得ることができる。加えて、成形品を製造する製造時間を大幅に短縮でき、その経済的効果は大きい。
【0162】
結晶化促進剤として、無機系の結晶化核剤および有機系の結晶化核剤のいずれをも使用することができる。
無機系の結晶化核剤として、タルク、カオリン、シリカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、モンモリロナイト、酸化ネオジム、酸化アルミニウム、フェニルフォスフォネート金属塩等が挙げられる。これらの無機系の結晶化核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01〜0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
【0163】
有機系の結晶化核剤としては、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、蓚酸カルシウム、テレフタル酸ジナトリウム、テレフタル酸ジリチウム、テレフタル酸ジカリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、オクタコ酸ナトリウム、オクタコ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、β−ナフトエ酸カリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸金属塩が挙げられる。
【0164】
また、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(tert−ブチルアミド)等の有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸、エチレン−アクリル酸コポマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、例えばジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0165】
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明で使用する結晶化核剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部である。
【0166】
〈有機充填剤〉
本発明の組成物は、有機充填剤を含有することができる。有機充填剤を含有することで、機械的特性、耐熱性および成形性に優れた組成物を得ることができる。
有機充填剤として、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維等の繊維状のもの、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、紙粉、木粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉等の粉末状のものが挙げられる。成形性の観点から紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉等の粉末状のものが好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末が好ましい。紙粉、木粉がより好ましい。特に紙粉が好ましい。
【0167】
これら有機充填剤は天然物から直接採取したものを使用してもよいが、古紙、廃材木および古衣等の廃材をリサイクルしたものを使用してもよい。また木材として、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリ等の広葉樹材等が好ましい。
紙粉は成形性の観点から接着剤、取り分け紙を加工する際に通常使用される酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョン等のエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリアミド系接着剤等のホットメルト接着剤等を含むものが好ましく例示される。
【0168】
本発明において有機充填剤の含有量は、成形性および耐熱性の観点から、ポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは5〜200重量部、さらに好ましくは10〜150重量部、特に好ましくは15〜100重量部である。
【0169】
〈離型剤〉
本発明の組成物は離型剤を含有していてもよい。離型剤として具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変性シリコーン等を挙げることができる。これらを配合することで機械特性、成形性、耐熱性に優れたポリ乳酸成形品を得ることができる。
【0170】
脂肪酸としては炭素数6〜40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、モンタン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ(土類)金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、等が挙げられる。
【0171】
オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステリン酸、等が挙げられる。パラフィンとしては炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
【0172】
低分子量のポリオレフィンとしては例えば分子量5000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0173】
アルキレンビス脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪族ケトンとしては炭素数6以上のものが好ましく、高級脂肪族ケトン等が挙げられる。
【0174】
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0175】
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジミリステート、ペンタエリスルトールモノステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリトリメチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0176】
変性シリコーンとしてはポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0177】
そのうち脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、が好ましく、脂肪酸部分鹸化エステル、アルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでもモンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックス、酸価ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0178】
離型剤は、1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。離型剤の含有量は、ポリ乳酸100重量部に対し、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
【0179】
〈帯電防止剤〉
本発明の組成物は帯電防止剤を含有していてもよい。帯電防止剤として、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
帯電防止剤は1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。帯電防止剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0180】
〈可塑剤〉
本発明の組成物は可塑剤を含有していてもよい。可塑剤として、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の酸成分とエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸または単官能アルコールで末端封止されていても良い。
【0181】
グルセリン系可塑剤として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
【0182】
多価カルボン酸系可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸イソデシル、アジピン酸−n−デシル−n−オクチル等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のセバシン酸エステルが挙げられる。
【0183】
リン酸エステル系可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0184】
ポリアルキレングリコール系可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド.プロピレンオキシド)ブロックおよびまたはランダム共重合体、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物等の末端封止剤化合物等が挙げられる。
【0185】
エポキシ系可塑剤として、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド、およびビスフェノールAとエピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂が挙げられる。
【0186】
その他の可塑剤の具体的な例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール−ビス(2−エチルブチレート)等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類等が挙げられる。
【0187】
可塑剤として、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレン系可塑剤から選択された少なくとも1種よりなるものが好ましく使用でき、1種のみでも良くまた2種以上を併用することもできる。
【0188】
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。本発明においては結晶化核剤と可塑剤を各々単独で使用してもよいし、両者を併用して使用することがさらに好ましい。
【0189】
〈その他〉
また本発明においては、本発明の趣旨に反しない範囲において、メラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。また有機、無機系の染料、顔料を含む着色剤、例えば、二酸化チタン等の酸化物、アルミナホワイト等の水酸化物、硫化亜鉛等の硫化物、紺青等のフェロシアン化物、ジンククロメート等のクロム酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、群青等の珪酸塩、マンガンバイオレット等のリン酸塩、カーボンブラック等の炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉等の金属着色剤等を含有させても良い。また、ナフトールグリーンB等のニトロソ系、ナフトールイエローS等のニトロ系、ナフトールレッド、クロモフタルイエローどのアゾ系、フタロシアニンブルーやファストスカイブルー等のフタロシアニン系、インダントロンブルー等の縮合多環系着色剤等、グラファイト、フッソ樹脂等の摺動性改良剤等の添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は単独であるいは2種以上を併用することもできる。
【0190】
<樹脂組成物の製造方法について>
i)共存組成物の調製
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A成分)としてポリ−L乳酸樹脂(A−1成分)、ポリ−D乳酸樹脂(A−2成分)との混合物を用いる場合、他の添加剤成分と溶融混合する前に、式(3)および/または式(4)で表される燐酸エステル金属塩、ポリ−L乳酸樹脂(A−1成分)並びにポリ−D乳酸樹脂(A−2成分)を予め共存させておくのが好ましい。共存させる方法としては、ポリ−L乳酸樹脂(A−1成分)と、ポリ−D乳酸樹脂(A−2成分)とをできるだけ均一に混合させる方法が、それらを熱処理したときにステレオコンプレックス結晶を効率的に生成させることが可能となるため好ましい。かかる共存組成物の調製は、それらが熱処理されたときに均一に混合される方法であれば、いかなる方法をもとることができ、溶媒の存在下で行う方法、溶媒の非存在下で行う方法などが例示される。
上記共存組成物の調製を溶媒の存在下で行う方法としては、溶液に溶解した状態からの再沈殿により共存組成物を得る方法、加熱によって溶媒を除去することにより共存組成物を得る方法などが好適に挙げられる。
【0191】
溶媒の存在下で再沈殿してかかる共存組成物を得る場合には、まず最初に、ポリ−L乳酸樹脂(A−1成分)と、ポリ−D乳酸樹脂(A−2成分)との共存組成物を再沈殿にて調製する。ここでA−1成分とA−2成分とは、別々に溶媒に溶解した溶液を調整して混合するか、または両者を一緒に溶媒に溶解させ混合することにより行うことが好ましい。ここで、ポリ−L乳酸樹脂(A−1成分)と、ポリ−D乳酸樹脂(A−2成分)との重量比(A−1成分/A−2成分)は、10/90〜90/10の範囲になるように調製することが、本発明の樹脂組成物中でポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)のステレオコンプレックス結晶を効率的に生成させる上で好ましい。A−1成分とA−2成分との重量比は、25/75〜75/25がさらに好ましく、40/60〜60/40が特に好ましい。溶媒は、ポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)が溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、フェノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ブチロラクトン、トリオキサン、ヘキサフルオロイソプロパノール等の単独あるいは2種以上混合したものが好ましい。
式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩は、上記溶媒に不溶であるか、または溶媒に溶解しても再沈殿後に溶媒中に残存する場合があるために、再沈殿によって得られたポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)混合物と、式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩は、別途混合して共存組成物を調製する必要がある。ポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)混合物と、式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩の共存組成物を得る方法は、それらが均一に混合されれば特に限定されるものではなく、粉体での混合、溶融混合などのいかなる方法をもとることができる。
【0192】
次に、溶媒の存在下から溶媒を除去する方法によって、ポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)並びに、式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩の共存組成物を一度に調製する場合には、A−1成分およびA−2成分、並びに式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩を、各々別個に溶媒に溶解または分散させた分散液を調製して混合するか、または全成分を一緒に溶媒に溶解または分散させた分散液を調製して混合し、然る後に加熱により溶媒を蒸発させることによって行うことができる。溶媒は、ポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)並びに、式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩が溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、フェノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ブチロラクトン、トリオキサン、ヘキサフルオロイソプロパノール等の単独あるいは2種以上混合したものが好ましい。溶媒の蒸発後(熱処理)の昇温速度は、長時間、熱処理をすると分解する可能性があるので短時間で行うのが好ましいが特に限定されるものではない。
【0193】
ポリ乳酸樹脂(A−1成分、A−2成分)並びに、式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩の共存組成物の調製は、溶媒の非存在下でも行うことができる。即ち、あらかじめ粉体化またはチップ化されたA−1成分とA−2成分、および式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩を、所定量混合した後に溶融して混合する方法、または、A−1成分とA−2成分のいずれか一方を溶融させた後に、残る成分を加えて混合する方法などを採用することができる。ここで上記の粉体あるいはチップの大きさは、各ポリ乳酸単位(A−1成分、A−2成分)の粉体あるいはチップが均一に混合されれば特に限定されるものではないが、3mm以下が好ましく、さらには1から0.25mmのサイズであることが好ましい。溶融混合する場合、大きさに関係なく、ステレオコンプレックス結晶を形成するが、粉体あるいはチップを均一に混合した後に単に溶融する場合、粉体あるいはチップの直径が3mm以上の大きさになると、混合が不均一となり、ホモポリ乳酸結晶が析出しやすくなるので好ましくない。また上記粉体あるいはチップを均一に混合するために用いる混合装置としては、溶融によって混合する場合にはバッチ式の攪拌翼がついた反応器、連続式の反応器のほか、二軸あるいは一軸のエクストルーダー、粉体で混合する場合にはタンブラー式の粉体混合器、連続式の粉体混合器、各種のミリング装置などを好適に用いることができる。
【0194】
さらにかかる共存組成物を調製する際には、環状カルボジイミド(B成分)、難燃剤(C成分)、末端封鎖剤(D成分)、ハイドロタルサイト(E成分)、難燃助剤(F成分)、無機充填剤(G成分)およびそれ以外の添加剤として、無機充填材折れ抑制剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、流動改質剤、着色剤、光拡散剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、抗菌剤、結晶核剤、可塑剤等、各種添加剤を共存させておくこともできる。
特に環状カルボジイミド(B成分)や末端封鎖剤(D成分)を共存組成物の調製の段階で添加しておくことは、末端封鎖剤とポリ乳酸(A成分)との混合がより均一となることで、ポリ乳酸の酸性末端がより効率的に封鎖されるために、得られた最終樹脂組成物の耐加水分解性を向上させる上で好ましい。
【0195】
ii)共存組成物の熱処理
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A成分)としてポリ−L乳酸樹脂(A−1成分)、ポリ−D乳酸樹脂(A−2成分)との混合物を用いる場合、他の添加剤成分と溶融混合する前に、ポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)と式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩の共存組成物を熱処理するのが好ましい。かかる熱処理とは、その組成物を240〜300℃の温度領域で一定時間保持することをいう。熱処理の温度は好ましくは250〜300℃、より好ましくは260〜290℃である。300℃を超えると、分解反応を抑制するのが難しくなるので好ましくなく、240℃未満の温度では熱処理による均一混合が進まず、ステレオコンプレックス結晶が効率的に生成しにくくなるので好ましくない。熱処理の時間は特に限定されるものではないが、0.2〜60分、好ましくは1〜20分である。熱処理時の雰囲気は、常圧の不活性雰囲気下、または減圧のいずれも適用可能である。熱処理に用いる装置、方法としては、雰囲気調整を行いながら加熱できる装置、方法であればいかなる方法をも用いることができるが、たとえば、バッチ式の反応器、連続式の反応器、二軸あるいは一軸のエクストルーダーなど、またはプレス機、流管式の押出機を用いて、成形しながら処理する方法をとることも出来る。ここで、ポリ乳酸(A−1成分、A−2成分)並びに、式(3)または式(4)で表される燐酸エステル金属塩の共存組成物の調製を、溶媒の非存在下にて溶融混合する方法により行う場合には、かかる共存組成物の調製と同時に、該共存組成物の熱処理をも達成できる。
【0196】
iii)樹脂組成物の調製
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A成分)(前記熱処理された共存組成物を含む)、環状カルボジイミド(B成分)、難燃剤(C成分)、末端封鎖剤(D成分)、ハイドロタルサイト(E成分)、難燃助剤(F成分)、無機充填剤(G成分)並びにその他添加剤成分を混合することによって製造される。(ただし、共存組成物中に含有されている成分は除く。)
その他添加剤成分としては、無機充填材折れ抑制剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、流動改質剤、着色剤、光拡散剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、抗菌剤、結晶核剤、可塑剤等、任意の添加剤成分が挙げられる。
【0197】
かかる本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばポリ乳酸樹脂(A成分)並びに他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式二軸押出機が好ましい。他に、各成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法を取ることもできる。
【0198】
<成形品の製造について>
本発明の樹脂組成物は、通常前記方法で製造されたペレットとして得られ、これを原料として射出成形、押出成形など、各種成形方法による製品を製造することができる。
射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、ホットランナー方式の成形法も可能である。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。
【0199】
押出成形においては、各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの製品を得ることができる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。
本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形などに供することにより、中空成形品を得ることも可能である。
【0200】
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、例えば電気・電子部品、OA機器や家電製品の外装材に好適であり、例えばパソコン、ノートパソコン、ゲーム機(家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、パチンコ、およびスロットマシーンなど)、ディスプレー装置(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクタ、および有機ELなど)、マウス、並びにプリンター、コピー機、スキャナーおよびファックス(これらの複合機を含む)などの外装材や電気・電子部品、キーボードのキーや各種スイッチなどのスイッチ成形品が例示される。さらに本発明の成形品は、その他幅広い用途に有用であり、例えば、携帯情報端末(いわゆるPDA)、携帯電話、携帯書籍(辞書類等)、携帯テレビ、記録媒体(CD、MD、DVD、次世代高密度ディスク、ハードディスクなど)のドライブ、記録媒体(ICカード、スマートメディア、メモリースティックなど)の読取装置、光学カメラ、デジタルカメラ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、およびタイプライターなど電気・電子機器を挙げることができ、これらの外装材などの各種部品に本発明の成形品を適用することができる。また各種容器、カバー、筆記具本体、装飾品などの各種雑貨においても好適である。さらにはランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピュータ部品などの車両用部品を挙げることができる。
【0201】
さらに本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、表面改質を施すことによりさらに他の機能を付与することが可能である。ここでいう表面改質とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、印刷等の樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常の樹脂成形品に用いられる方法が適用できる。
【実施例】
【0202】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0203】
1.ポリ乳酸樹脂の製造
下記の製造例に示す方法により、ポリ乳酸樹脂の製造を行った。また製造例中における各値は下記の方法で求めた。
(1)ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、検出器として、示差屈折計島津RID−6Aを用い、カラムとして東ソ−TSKgelG3000HXLを使用した。測定は、クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入することにより行った。
(2)カルボキシル基濃度
試料を精製o−クレゾールに窒素気流下で溶解した後、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
(3)ステレオコンプレックス結晶化度
DSC(TAインスルメント社製 TA−2920)測定の昇温過程におけるポリ乳酸樹脂(A成分)結晶由来の融解エンタルピーを用いて、下記式(1)より、ステレオコンプレックス結晶化度のパラメーターを評価した。
ステレオコンプレックス結晶化度=△Hms/(△Hms+△Hmh)×100 (1)
[但し、式(1)中、△Hmhと△Hmsは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において、190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hmh)、および190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hms)である。]
なお、上記△Hmhと△Hmsは樹脂組成物を示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定することにより求めた。
本発明の実施例、比較例においては、以下の材料を使用した。
【0204】
[A−1成分:ポリL−乳酸樹脂(PLLA)]
[製造例1−1]
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応機にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し1.2倍当量の燐酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリL−乳酸樹脂を得た。
得られたポリL−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.2万、融解エンタルピー(ΔHmh)は49J/g、融点(Tmh)は175℃、ガラス転移点(Tg)55℃、カルボキシル基含有量は14eq/tonであった。
【0205】
[A−2成分:ポリD−乳酸樹脂の製造(PDLA)]
[製造例1−2]
製造例1−1のL−ラクチドのかわりにD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)を使用する以外は製造例1−1と同様の操作を行い、ポリD−乳酸樹脂を得た。得られたポリD−乳酸樹脂の重量平均分子量は15.1万、融解エンタルピー(ΔHmh)は48J/g、融点(Tmh)は175℃、ガラス転移点(Tg)55℃、カルボキシル基含有量は15eq/ton、であった。
【0206】
[A−3成分:ステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂の製造(scPLA)]
[製造例1−3]
製造例1−1および1−2で得られたPLLA,PDLAの各50重量部よりなるポリ乳酸樹脂計100重量部並びに燐酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブNA−11:(株)ADEKA製)0.1重量部をブレンダーで混合後、110℃で5時間乾燥し、径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]に供給し、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量9kg/h、およびベント減圧度3kPaで溶融押出してペレット化し、ポリ乳酸樹脂1を得た。得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は13万、融解エンタルピー(ΔHms)は56J/g、融点(Tms)は220℃、ガラス転移点(Tg)58℃、カルボキシル基含有量は17eq/ton、式(1)を用いて算出したステレオコンプレックス結晶化度は、100%であった。
結果をまとめて表1中に記載する。なお、表1中のΔHmsは、190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピーであり、ΔHmhは、190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピーである。Tmsは、190℃以上250℃未満に現れる結晶融点であり、Tmhは、190℃未満に現れる結晶融点である。
【0207】
【表1】

【0208】
2.環状カルボジイミドの製造
下記の製造例に示す方法により、環状カルボジイミドの製造を行った。また製造例中における各値は下記の方法で求めた。
(1)環状カルボジイミド構造のNMRによる同定
合成した環状カルボジイミド化合物のNMRによる同定は、日本電子(株)製JNR−EX270を使用し、H−NMR、13C−NMRによって確認した。尚、溶媒は重クロロホルムを用いた。
(2)環状カルボジイミドのカルボジイミド骨格のIRによる同定
合成した環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格の同定は、ニコレー(株)製Magna−750を使用し、FT−IRよってカルボジイミドに特徴的な2100〜2200cm−1の吸収ピークを確認することで行った。
【0209】
本発明の実施例において、以下の材料を使用した。
[B−1成分:環状カルボジイミドの製造]
[製造例2]
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、B−1成分を得た。B−1成分の構造はNMR、IRにより確認した。
【0210】
【化55】

【0211】
3.ポリ乳酸樹脂ペレットの製造および評価
下記の実施例、比較例に示す方法により、ポリ乳酸樹脂(A成分)と添加剤との樹脂組成物ペレットの製造を行った。また実施例中における各値は下記の方法で求めた。
(1)作業環境の良否
押出・成形作業時に、作業者がイソシアネートガス由来の刺激臭を感じたかを官能評価し、刺激臭を感じた場合を×とし、刺激臭を感じなかった場合と○とした。
(2)GC/MSによるイソシアネートガスの定性・定量
樹脂組成物ペレットを、230℃で5分間加熱し、熱分解GC/MS分析により定性・定量した。尚、定量はイソシアネートで作成した検量線を用いて行った。GC/MSは日本電子(株)製GC/MS Jms Q1000GC K9を使用した。
(3)耐加水分解性
ポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)を使用して、シリンダー温度230℃、金型温度120℃、成形サイクル70秒にて、厚さ4mmのISO測定用の成形片を作成した。次に、この成形片を80℃×95%RH条件にて200h、湿熱処理を行った。ISO527−1、ISO527−2に準拠して、引張試験を実施し、湿熱処理前の引張最大応力と湿熱処理後の引張最大応力から保持率[(湿熱処理後の引張最大応力/湿熱処理前の引張最大応力)×100]を算出した。
その他原料としては、以下のものを使用した。
(4)難燃性
米国アンダーライターラボラトリー社の定める方法(UL94)により、試験片厚さ1.5mmにおける難燃性を評価した。
【0212】
なお、A成分としては上記記載のA−1〜A−3成分、B成分としては上記記載のB−1成分を用いた。その他原料としては、以下のものを使用した。
<B’成分>
B’−1:日清紡(株)製 カルボジライトLA−1 [脂肪族ポリカルボジイミド]
B’−2:ラインケミージャパン(株)製 stabaxol−P[芳香族ポリカルボジイミド]
<C成分>
C−1−1:大八化学工業(株)製 PX−200[レゾルシノールビス(ジー2,6−キシリルホスフェート)]
C−1−2:三光(株)製 ME−P8 [2−(9,10−ジヒロロキシ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステル重合体]
C−1−3:(株)伏見製薬所製 FP−100 [フェノキシホスファゼンオリゴマー]
C−1−4:クラリアントジャパン(株) Exolit OP1240 [ジエチルホスフィン酸アルミニウム]
C−1−5:太平化学産業(株) APA−100 [亜リン酸アルミニウム]
C−2−1:チバスペシャリティケミカルズ(株)製 MELAPUR200[ポリリン酸メラミン]
C−2−2:日産化学(株)製 MC610 [メラミンイソシアヌレート]
C−3−1:神島化学(株)製 EP−1 [水酸化マグネシウム]
C−3−2:石塚硝子工業(株)製 パイロライザーHG [水酸化アルミニウム]
C−4−1:日本精鉱(株)製 PATOX−K [三酸化アンチモン]
C−5−1:大日本インキ化学工業(株)製 EP−100 [臭素化エポキシ樹脂]
<D成分>
D−1:BASFジャパン(株)製 ADR−4368CS [エポキシ基含有アクリル
−スチレン共重合体]
D−2:竹本油脂(株)製 BOX−210[2,2−(1,3フェニレン)ビス−2−オキサゾリン]
<E成分>
E−1:協和化学工業(株)製 DHT−4A−2[焼成ハイドロタルサイト]
<F成分>
F−1:SABICイノベーティブプラスチックスジャパン製 SA−120[ポリフェニレンエーテルオリゴマー]
F−2:ダイキン工業(株)製 FA−500C [テトラフロロエチレン]
<G成分>
G−1:日東紡(株)製 3PE−937S(平均径13μm、カット長3mmのチョップドストランド)
【0213】
<実施例1>
ポリ乳酸樹脂として製造例1−1で製造したポリ乳酸樹脂A−1成分を用いて、表2の組成をドライブレンドにて均一に予備混合した後、かかる予備混合物を第1供給口より供給し、溶融押出してペレット化した。ここで、第一供給口とは根元の供給口のことである。溶融押出は、サイドスクリューを備えた径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]を用い実施した。また、押出温度は、C1/C2〜C5/C6/C7〜C11/D=10℃/240℃/230℃/220℃/220℃とし、メインスクリュー回転数は150rpm、サイドスクリュー回転数は50rpm、吐出量は20kg/h、ベント減圧度は3kPaとした。
得られたペレットを100℃で5時間、熱風循環式乾燥機により乾燥し、射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)にて成形を実施し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0214】
<実施例2>
ポリ乳酸樹脂として製造例1−2で製造したポリ乳酸樹脂A−2成分を用いた以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、その評価を実施した。結果を表2に示す。
【0215】
<実施例3〜20、比較例1〜19>
ポリ乳酸樹脂として製造例1−3で製造したポリ乳酸樹脂A−3成分を用いた以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、その評価を実施した。なお、F−2を使用する組成においては、F−2を除く組成をドライブレンドにて均一に予備混合した後、かかる予備混合物を第1供給口より供給し、F−2成分を第2供給口から供給した。なお、ここで、第2供給口とはサイドスクリュウに備え付けた供給口のことである。結果を表2〜表5に示す。なお、表中の耐加水分解性の測定不可とは、湿熱処理後に成形品が原形を留めておらず、引張試験を実施できなかったことを表す。
【0216】
【表2】

【0217】
【表3】

【0218】
【表4】

【0219】
【表5】

【0220】
<実施例1〜10>
実施例1〜10は、作業環境が良好で、イソシアネートガスの発生も無く、耐加水分解性に優れ、難燃性1.5mm V−2を満足する優れた材料であった。
【0221】
<比較例1>
比較例1は、作業環境は良好で、イソシアネートガスの発生も無く、難燃性1.5mmV−2を満足するが、環状カルボジイミドを含んでいないため、実施例3に比べ耐加水分解性が大幅に悪くなった。
【0222】
<比較例2>
比較例2は、環状カルボジイミドを多く含有しすぎており、実施例3、5および6に比べ耐加水分解性がかえって悪くなっていた。
【0223】
<比較例3〜6>
環状でないカルボジイミドを含む比較例3〜6は、刺激臭によって作業環境が悪化し、
GC/MSからもイソシアネートガスの発生が観測されただけでなく、環状カルボジイミ
ドを使用した場合に比べ、難燃性も劣る結果となった。
【0224】
<比較例7>
比較例7は、作業環境は良好で、耐加水分解性にも優れるが、難燃剤(C成分)の添加量が少なすぎるために、難燃性はNot−Vであった。
【0225】
<比較例8>
比較例8は、作業環境は良好で、難燃性も1.5mmV−2を満足するが、難燃剤の添加量が多すぎるために、耐加水分解性に劣る結果となった。
【0226】
<比較例9>
環状カルボジイミドを含まず、末端封鎖剤(D成分)とハイドロタルサイト(E成分)だけを含む場合は、耐加水分解性に劣る結果となった。
【0227】
<実施例11〜20と比較例10〜19>
難燃剤の種類を変えていった場合でも、環状カルボジイミドを添加した場合は、作業環
境が良好で、イソシアネートガスの発生も無く、耐加水分解性、難燃性に優れた材料で
あったのに対し、環状でないカルボジイミドを添加した場合は、刺激臭によって作業環境
が悪化し、GC/MSからもイソシアネートガスの発生が観測されただけでなく、難燃性
にも劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸(A成分)100重量部に対し、(B)カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状構造を含み、環状構造を形成する原子数が8〜50である化合物(B成分)0.001〜10重量部、および(C)リン系難燃剤(C−1成分)、窒素系難燃剤(C−2成分)、金属水酸化物系難燃剤(C−3成分)、金属酸化物系難燃剤(C−4成分)、および臭素系難燃剤(C−5成分)からなる群より選ばれる少なくとも一種の難燃剤(C成分)1〜100重量部を含有する組成物。
【化1】

(式中、Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である。)
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項2】
式(1)中のQが下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である請求項1に記載の組成物。
【化3】

(式中、Ar(aは下付、以下同様)およびArは各々独立に、2価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2価の炭素数1〜20の脂肪族基、2価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。saは0〜10の整数である。kaは0〜10の整数である。XおよびXは各々独立に、2価の炭素数1〜20の脂肪族基、2価の炭素数3〜20の脂環族基、2価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。Xは、2価の炭素数1〜20の脂肪族基、2価の炭素数3〜20の脂環族基、2価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項3】
環状構造を含む化合物であるB成分が下記式(3)で表される化合物である請求項1に記載の組成物。
【化4】

(式中、Q(bは下付、以下同様)は下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であり、Yは環状構造を担持する担体であり、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。)
【化5】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sbおよびkbは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sbおよびkbと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
【請求項4】
環状構造を含む化合物であるB成分が下記式(4)で表される請求項1に記載の組成物。
【化6】

(式中、Q(cは下付、以下同様)は下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であり、ZおよびZは、環状構造を担持する担体であり、各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである。)
【化7】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、scおよびkcは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、scおよびkcと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項5】
リン系難燃剤(C−1成分)が、リン酸エステル系難燃剤、ホスホニトリル系難燃剤、ホスホネート系難燃剤、ホスフィン酸金属塩系難燃剤およびリン酸金属塩系難燃剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
窒素系難燃剤(C−2成分)が、メラミン系化合物、メラミン系化合物とポリリン酸との反応生成物およびメラミンの縮合体とポリリン酸との反応生成物からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリ乳酸(A成分)100重量部に対して、(D)エポキシ化合物、オキサゾリン化合物およびオキサジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の末端封鎖剤(D成分)0.001〜10重量部を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリ乳酸(A成分)100重量部に対して、(E)ハイドロタルサイト(E成分)0.01〜0.3重量部を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリ乳酸(A成分)は、(A−1)主としてL−乳酸単位からなるポリ−L乳酸(A−1成分)および、(A−2)主としてD−乳酸単位からなるポリ−D乳酸(A−2成分)を含有し、A−1成分とA−2成分との重量比が10:90〜90:10の範囲にある請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ポリ−L乳酸(A−1成分)はL−乳酸単位を90モル%以上含有し、ポリ−D乳酸(A−2成分)はD−乳酸単位を90モル%以上含有する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリ乳酸(A成分)は、示差走査熱量計(DSC)測定の昇温過程における融解エンタルピーを用いて下記式(5)で表されるステレオコンプレックス結晶化度が80%以上である請求項9または10に記載の組成物。
ステレオコンプレックス結晶化度=△Hms/(△Hms+△Hmh)×100 (5)
[但し、式(5)中、△Hmhと△Hmsは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において、190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hmh)、および190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hms)である。]
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物からなる成形品。
【請求項13】
射出成形、押出成形、熱成形、ブロー成形または発泡成形により成形した請求項12に記載の成形品。
【請求項14】
自動車部品、電気・電子部品、電気機器外装部品、OA外装部品である請求項12または13に記載の成形品。

【公開番号】特開2011−162651(P2011−162651A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26537(P2010−26537)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】