説明

ポリ乳酸系樹脂組成物、その製造方法、およびそれより得られる発泡体

【課題】優れた耐熱性と耐久性(耐加水分解性)をともに有するポリ乳酸系樹脂発泡体を製造することができるポリ乳酸系樹脂組成物、およびその製造方法、それより得られる発泡体を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)により架橋され、カルボキシル末端基濃度が0〜5mol/tonであるポリ乳酸樹脂とポリテトラフルオロエチレンを主成分とする発泡核剤(E)とを含有する樹脂組成物であって、荷重2.16kgf、温度190℃にて測定したメルトフローレートの値が4〜20g/10分であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での使用に耐えうる耐熱性を有し、かつ長期使用や高温高湿度下での使用に耐えうる耐久性(耐加水分解性)を有するポリ乳酸系樹脂発泡体を製造できるポリ乳酸系樹脂組成物、その製造方法、およびそれより得られる発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、生分解性や植物由来という特長を有する脂肪族ポリエステルが注目されている。脂肪族ポリエステルの中でもポリ乳酸は機械的特性が優れていることに加え、デンプンやトウモロコシを原料としており大量生産可能であるため、コストが低く特に注目されている。さらに、発泡剤により発泡させたポリ乳酸系樹脂発泡体は、その軽量性、緩衝性、消音性、断熱性などを活かして、従来の石油原料由来の発泡成形体と同様に緩衝材、包装材、消音材、建材などに使用できる。
【0003】
ポリ乳酸樹脂は加水分解しやすく、長期使用時の耐久性が低いという欠点がある。特に高温高湿度下においてはこの傾向が非常に顕著である。ポリ乳酸樹脂の加水分解反応は、分子鎖末端のカルボキシル基を触媒として進行し、特に高温高湿度下ではそれが加速度的に進行する。このため、ポリ乳酸樹脂のみを用いた発泡成形体は、長期使用や高温高湿度下での使用においては加水分解による劣化や強度低下、分子量低下などが大きな問題となり、実用上の使用に耐えられなかった。さらに、ひび割れ、ブリードアウト、粉ふき、変形などの問題も発生し、耐久性の面においても実用に耐えうるものではなかった。
【0004】
ポリ乳酸樹脂の耐久性を向上させる方法として、ポリ乳酸の分子鎖末端のカルボキシル基を特定のカルボジイミド化合物で封鎖することで、耐加水分解性および耐久性を向上させる技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【0005】
本出願人は、特許文献2において光学純度の高い結晶性ポリ乳酸を用いた発泡用ポリ乳酸樹脂組成物の製造技術を開示している。該樹脂組成物は高い結晶化速度と高い結晶化度を有しているため、得られる発泡成形体は結晶化度が高く、耐熱性に優れている。
また、微細で均一な気泡を有する外観の優れた発泡体を作製するためには、気泡調整剤あるいは発泡核剤の添加が不可欠である。ポリ乳酸系樹脂において、タルク、カオリン、クレー等の無機微粒子の添加が一般的であり、これら気泡調整剤の多くはポリ乳酸樹脂の結晶核剤としても作用し、結晶化速度を高める効果を発揮する。特許文献2においても結晶核剤としてタルクを使用している。
【0006】
この特許文献2記載の製造技術を用いて、耐熱性に加えて耐久性(耐加水分解性)を有する発泡体を得る目的で、該樹脂組成物のカルボキシル基末端をカルボジイミド化合物等で封鎖した場合、該樹脂組成物から得られる発泡体は結晶化度が低いものとなり、耐熱性が低下するという問題があった。このため、耐熱性と耐久性の両方の性能を満足するポリ乳酸樹脂発泡体はこれまでなかった。
【0007】
また、特許文献3には、ポリテトラフルオロエチレン粉末を気泡調整剤として用いたポリ乳酸系樹脂発泡粒子が記載されている。しかしながら、特許文献3記載の発明は、発泡体を得る際に使用する押出機中にこの気泡調整剤を供給して発泡させるものであって、該気泡調整剤は、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性の改質を促進し、ポリ乳酸系樹脂の押出発泡性をより向上させる目的と、成形加工性をより向上させる目的のために用いられるものであった。そして、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は耐熱性と機械的強度には優れているものの、耐久性は有していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−261797号公報
【特許文献2】特開2003−128901号公報
【特許文献3】特開2008−222987号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであり、優れた耐熱性と耐久性(耐加水分解性)をともに有するポリ乳酸系樹脂発泡体を製造することができるポリ乳酸系樹脂組成物、およびその製造方法、それより得られる発泡体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)により架橋され、カルボキシル末端基濃度が0〜5mol/tonであるポリ乳酸樹脂と発泡核剤(E)とを含有する樹脂組成物であって、荷重2.16kgf、温度190℃にて測定したメルトフローレートの値が4〜20g/10分となるように調整されたポリ乳酸系樹脂組成物は、結晶化速度と結晶化度のバランスが良いため、耐熱性を損なうことなく耐加水分解性を有し、耐熱性と耐久性ともに優れた発泡成形体を得ることが可能となることを見出し、かかる知見に基づき本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)により架橋され、カルボキシル末端基濃度が0〜5mol/tonであるポリ乳酸樹脂とポリテトラフルオロエチレンを主成分とする発泡核剤(E)とを含有する樹脂組成物であって、荷重2.16kgf、温度190℃にて測定したメルトフローレートの値が4〜20g/10分であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)ポリ乳酸樹脂が、D体含有量が8モル%以下であるか、またはD体含有量が92モル%以上である(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(3)ポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)、過酸化物(C)、末端封鎖剤(D)、発泡核剤(E)を溶融混練してなる(1)又は(2)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(4)エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(F)を含有する(1)〜(3)いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法であって、押出機にポリ乳酸樹脂(A)100質量部と(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜10質量部、過酸化物(C)0.01〜10質量部、末端封鎖剤(D)0.1〜10質量部、発泡核剤(E)0.01〜10質量部とを供給し、溶融混練することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
(6)(1)〜(4)いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を発泡して得られる発泡体。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は発泡適性を有し、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル基末端が封鎖されているため、耐加水分解性に優れ、長期使用や高温高湿度下での使用に耐えうる耐久性を有する発泡体を得ることができる。さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物はポリ乳酸樹脂が架橋されており、特定の発泡核剤を含有し、特定のメルトフローレート値を有するものであるため、結晶化速度と結晶化度のバランスに優れており、末端封鎖剤が含有されていても結晶化度が高く、耐熱性に優れた発泡体を得ることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法によれば、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を生産性よく得ることが可能となる。
そして、本発明の発泡体は、高温での使用に耐えうる耐熱性を有し、かつ長期使用や高温高湿度下での使用に耐えうる耐久性(耐加水分解性)を有するものであり、各種の用途、例えば緩衝材、包装材、消音材、建材などに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】屈曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と屈曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1、ひずみ硬化係数)を求める際の伸長時間と伸長粘度の模式図である。
【図2】130℃等温過程において現れる結晶化ピークの、130℃等温開始からピークトップまでの時間の求め方を示す模式図である。
【図3】130℃→200℃(+20℃/分)昇温過程において現れる結晶融解ピークの熱量の求め方を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)により架橋され、カルボキシル末端基濃度が0〜5mol/tonであるポリ乳酸樹脂とポリテトラフルオロエチレンを主成分とする発泡核剤(E)とを含有する樹脂組成物である。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、環境負荷低減の観点から、ポリ乳酸樹脂を40質量%以上含むことが好ましい。ポリ乳酸樹脂を60質量%以上含むと、植物由来度が高くなりより好ましく、さらには80質量%以上含むことが好ましい。
【0015】
まず、ポリ乳酸樹脂について説明する。ポリ乳酸樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)により架橋されているものであり、架橋構造を有することによって耐熱性および発泡に適したレオロジー特性が向上する。
【0016】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)としては、ポリ乳酸樹脂との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ、毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。
具体的な化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチレングリコールジメタクリレート、トリメチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
【0017】
そして、ポリ乳酸樹脂と(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)との架橋反応を促進させるために、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)とともに過酸化物(C)を添加することが好ましい。過酸化物(C)は、中でも分散性が良好な有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等を用いることができる。
【0018】
ポリ乳酸樹脂が(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)により架橋されていないと、耐熱性に劣るとともに、後述する発泡に適したレオロジー特性を満足しない樹脂組成物となり、発泡体を得ることが困難となる。
【0019】
なお、ポリ乳酸樹脂が(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)と過酸化物(C)は、ポリ乳酸樹脂の架橋反応により消費され、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には含有されていない場合もある。
【0020】
また、ポリ乳酸樹脂は、末端封鎖剤によってカルボキシル基末端が封鎖されているものであり、カルボキシル末端基濃度が0〜5mol/tonであり、中でも0〜3mol/tonが好ましく、さらには、0〜2mol/tonが好ましい。
カルボキシル基末端が封鎖され、カルボキシル末端基濃度が上記範囲を満足することにより、ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性(耐久性)を向上させることができ、得られる発泡体は耐加水分解性に優れたものとなる。
なお、末端封鎖剤は、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端基を封鎖するだけの当量よりも多い量を樹脂組成物中に含有していると、耐加水分解性(耐久性)がさらに向上して好ましい。
【0021】
本発明で用いられる末端封鎖剤(D)としては、ポリ乳酸のカルボキシル基末端に対し封鎖効果のあるカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等が好ましく、中でも、末端封鎖効果の高いカルボジイミド化合物が好ましい。
【0022】
さらには、より厳しい高温高湿度下条件での耐加水分解性(耐久性)の効果が向上するという点では、同一分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミド化合物がより好ましい。モノカルボジイミド化合物の具体例としては、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリルカルボジイミド、p−フェニレンービス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロへキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロへキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N´−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N´−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N´−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N´−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N´−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N´−トリルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミドなどが挙げられる。これらの末端封鎖剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
また、120℃を超える高温雰囲気下でも使用可能な耐熱性を有する発泡体を得るために、ポリ乳酸樹脂は結晶性のものとすることが好ましい。中でもポリ乳酸樹脂は、D体含有量が8モル%以下であるか、またはD体含有量が92モル%以上であることが好ましい。D体含有量がこれらの範囲のものであると、融点が高く、また結晶化が進行しやすくなるため、耐熱性が向上する。耐加水分解性(耐久性)については、前述したように主に末端封鎖剤(D)を含有することにより向上する効果であるが、D体含有量がこの範囲のポリ乳酸樹脂を用いると、さらに耐加水分解性も向上する。ポリ乳酸樹脂のD体含有量が8モル%を超える、または92モル%未満であると、結晶化速度が著しく低く実質的に結晶化が起こらないため、耐熱温度がガラス転移点に支配され、耐熱性が不十分となりやすい。
【0024】
ポリ乳酸樹脂は、さらに好ましくはD体含有量が4モル%以下であるか、またはD体含有量が96モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、D体含有量が2モル%以下であるか、またはD体含有量が98モル%以上である。中でもより好ましくは、D体含有量が1モル%以下であるか、またはD体含有量が99モル%以上であり、特に好ましくは、D体含有量が0.6モル%以下であるか、またはD体含有量が99.4モル%以上である。
【0025】
本発明において、ポリ乳酸樹脂のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂の場合、このポリ乳酸樹脂は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
【0026】
なお、本発明においては、ポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂のD体含有量を測定する際には、以下のようにして測定するものである。
得られた樹脂組成物を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取る。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜる。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定する。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂のD体含有量(モル%)とする。
【0027】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする発泡核剤(E)が含有されている。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、発泡体を得るために好適なものであり、発泡核剤(E)を添加することにより、微細な気泡が多数生じ、発泡倍率の高い、外観の優れた発泡体を得ることが可能となるものである。
【0028】
ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする発泡核剤(E)の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレンや、アクリル系樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。ポリテトラフルオロエチレンの形状は微粉末が好ましく、0.01〜100μmの粒径であることが好ましい。アクリル系樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレンの形状は、フィブリル状が好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物中の発泡核剤(E)の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部とすることが好ましく、中でも0.1〜5質量部が好ましく、特に好ましくは0.2〜3質量部である。0.01質量部未満であると、得られる発泡体は発泡核剤を添加した効果が現れずに気泡が粗大となり、十分に発泡が行われないものとなる。一方、10質量部を超えると、得られる発泡体は発泡が過剰となり、破泡が生じやすくなり、外観が損なわれる。また過剰に添加した場合、ポリ乳酸の結晶化速度を過度に増加させ発泡成形性が損なわれる場合がある。
【0030】
前記したような、タルク、カオリン、クレー等の一般的に使用される無機系の発泡核剤は、発泡核剤としての効果は十分優れているが、得られる樹脂組成物は結晶化速度と結晶化度のバランスに劣るものとなるため好ましくない。つまり、無機系の発泡核剤を用いると、樹脂組成物の結晶化速度を過度に増加させ、ひいては発泡体の結晶化度を十分に高めることができない傾向がある。
本発明においては、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする発泡核剤(E)を用いることにより、ポリ乳酸樹脂が末端封鎖剤によりカルボキシル基末端が封鎖されていても、結晶化度の高い発泡体を得ることが可能な樹脂組成物となる。
【0031】
さらに、本発明の樹脂組成物は、添加剤として、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(F)を含有していることが好ましい。
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムは、シリコーンとアクリルからなる複合ゴムであり、表層にエポキシ基を有している。ポリ乳酸系樹脂組成物が、末端封鎖剤とともにエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有することで、末端封鎖剤のみを含有するときに比べて、耐久性(耐加水分解性)をさらに向上させることができる。つまり、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有すると、シリコーン・アクリルゴム成分がポリ乳酸樹脂と相溶性があると考えられ、また、エポキシ基が少量含有されていることで、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル基末端に反応するので、末端封鎖剤とともにカルボキシル基を封鎖する、または末端封鎖剤による封鎖を助長すると考えられ、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐加水分解性が大幅に向上する。
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(F)の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく、中でも1〜6質量部が好ましく、特に好ましくは2〜6質量部である。0.1質量部未満であると、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(F)を含有する効果がほとんど発現しない。一方、10質量部を超えると、ポリ乳酸系樹脂組成物のレオロジー特性が変化して発泡体を得ることが困難となる。
【0032】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、上記のようなポリ乳酸樹脂と発泡核剤(E)が含有するとともに、発泡に適したレオロジー特性として、メルトフローレート(MFR)の値が4〜20g/10分であるという特性を満足することが必要である。
なお、MFRは、JIS K7210に従い、附属書A表1のDの条件(試験温度19
0℃、荷重2.16kgf)にて、メルトインデクサー(東洋精機製作所製「F−B01」)を用いて測定するものである。
本発明においては、樹脂組成物のMFRを上記範囲のものとすることで、結晶化速度と結晶化度のバランスに優れた樹脂組成物となり、ひいては得られる発泡体の耐熱性が向上する。すなわち、本発明者らは、樹脂組成物のMFRが上記範囲であると、樹脂組成物の結晶化速度が過度に高くなることなく、適度な速さとなるとともに、最終的に得られる発泡体の結晶化度は高いものとなり、これによって、十分な耐熱性を有する発泡体となるのではないかと推測している。
【0033】
MFRが4g/10分未満であると、結晶化速度が高くなりすぎ、得られる発泡体は十分な結晶化度に到達せずに、耐熱性に劣るものとなる。一方、MFRが20g/10分を超えると、結晶化速度が低くなり、得られる発泡体は十分な結晶化度に到達せずに、耐熱性に劣るものとなる。また、発泡に適したレオロジー特性の1つである溶融張力も低いものとなり、得られる発泡体は発泡倍率の低いものとなりやすい。
MFRは中でも5〜15g/10分が好ましく、6〜10g/10分が特に好ましい。本発明の樹脂組成物のMFRをこのような範囲のものにするには、後述する本発明の樹脂組成物の製造方法に記載の各成分の添加量の範囲を満足するとともに、ポリ乳酸樹脂の種類によりこれらの各成分の添加量をさらに調整することにより可能となる。
【0034】
そして、本発明の樹脂組成物の結晶化速度を示す指標として、後述する昇温時結晶化速度指数を採用し、結晶化度を示す指標として、後述する結晶融解熱量を採用することが好ましい。
これらの値はポリ乳酸樹脂のD体含有量によっても変化するが、例えばポリ乳酸樹脂のD体含有量が1.4モル%の場合(実施例で使用しているポリ乳酸樹脂A1の場合)、昇温時結晶化速度指数は0.4〜1.5分であることが好ましく、結晶融解熱量は40〜50J/gであることが好ましい。
まず、本発明の樹脂組成物を示差走査熱量計「DSC−7」を用い、(1)20℃→20
0℃(+500℃/分)で昇温し、(2)200℃で5分間保持し、(3)200℃→0℃(−500℃/分)で降温し、(4)0℃で5分間保持し、(5)0℃→130℃(+500℃/分)で昇温後、(6)130℃で10分間保持し、(7)130℃→200℃(+20℃/分)で昇温する。
昇温時等温結晶化速度指数(単位:分)は、図2に示すように、(6)において現れる結
晶化ピーク(発熱)の130℃等温開始からピークトップに至るまでの時間をいうものである。昇温時等温結晶化速度指数が小さいほど、130℃における結晶化速度が高いことを意味する。
結晶融解熱量は、図3に示すように、(7)において現れる結晶融解ピーク(吸熱)から
結晶融解熱量(単位:J/g)を求めるものである。結晶融解熱量が高いほど、130℃での等温結晶化において到達した結晶化度が高いことを意味する。
【0035】
さらに、本発明の樹脂組成物は、発泡に適したレオロジー特性として、ひずみ硬化性、溶融張力などの指標が以下のような数値範囲を満足することが好ましいものである。
ひずみ硬化性については、樹脂組成物の融点より10℃高い温度での伸長粘度測定で得られる時間−伸長粘度曲線(図1参照)において、屈曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と、屈曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1;ひずみ硬化係数)が、1.05以上、50未満であることが好ましい。
【0036】
ひずみ硬化性は以下のような方法で測定される。ポリ乳酸系樹脂組成物を210℃でプレス成形することにより厚み1mmのシートを作製し、60mm×7mmのサイズに切断して試験片を得る。伸長粘度測定装置(レオメトリック社製「RME」)を用い、得られた試験片の両端を金属ベルトクランプにより支持する。次いで、樹脂組成物の融点よりも10℃高い温度で、ひずみ速度0.1sec−1で測定サンプルに伸長変形を加え、変形中にピンチローラにかかる応力(単位:Pa)を検出し、伸長粘度(単位:Pa・s)を求める。さらに、伸長時間と伸長粘度の両対数プロットにおいて、屈曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と屈曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1)を算出する。
【0037】
また、溶融張力は30〜500mNであることが好ましく、中でも40〜400mNであることが好ましく、さらには50〜300mNであることが好ましい。
溶融張力は以下のような方法で測定される。あらかじめ乾燥させたペレット状の樹脂組成物を、190℃に設定したキャピラリレオメータ(東洋精機製作所社製、「キャピログラフ 1C」)のシリンダー内に充填し、シリンダーの上にピストンを載せて5分間予熱する。その後シリンダーの下部のダイ(1mmφ×10mm長)から、10mm/分のピストン速度で押し出したストランドを、初期速度1mm/分で引き取り、張力計で張力を検出する。引取速度を徐々に上げていきストランドが破断したときの張力を、溶融張力(mN)の値とする。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性に優れることから、融点は140〜190℃であることが好ましく、より好ましくは160〜190℃である。
【0039】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)、過酸化物(C)、末端封鎖剤(D)、発泡核剤(E)を溶融混練してなるものであることが好ましい。
【0040】
ポリ乳酸樹脂(A)としては、耐熱性および結晶化度向上の観点から、融点は140〜190℃であることが好ましく、より好ましくは160〜190℃である。
【0041】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、前述したメルトフローレートの値を有するものであるが、この特性を満足するために通常よりも低分子量のポリ乳酸樹脂(A)を用いるものである。すなわち、ポリ乳酸樹脂(A)の分子量としては、重量平均分子量が1万以上、30万未満であることが好ましく、中でも2万以上、15万未満であることが好ましい。重量平均分子量が1万未満である場合には、(メタ)アクリル酸エステル化合物による架橋を施したとしても発泡に適正なレオロジー特性を付与することができないので好ましくない。一方、30万を超える場合には、得られる樹脂組成物の発泡成形性が低下するので好ましくない。
【0042】
そして、ポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)、過酸化物(C)、末端封鎖剤(D)、発泡核剤(E)の配合量は以下のとおりとすることが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、中でも0.05〜5質量部であることが好ましい。0.01質量部未満では、ポリ乳酸樹脂が十分に架橋されず、目的とする耐熱性および発泡に適したレオロジー特性を得ることが困難となる。一方、10質量部を超えると、架橋の度合いが強すぎて、混練時の操業性が低下しやすくなる
【0044】
過酸化物(C)の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、中でも0.05〜5質量部であることが好ましい。0.01質量部未満では、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)との架橋反応を十分に促進させることができず、一方、10質量部を超えると、前記の効果が飽和し、コスト的に不利となる。
【0045】
末端封鎖剤(D)の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、中でも0.3〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜6質量部であり、さらには1〜4質量部であることが好ましい。0.1質量部未満では、耐加水分解性(耐久性)の向上効果が得られず、一方、10質量部を超えると、過剰に添加された末端封鎖剤(D)がブリードアウトし、強度が低下するなどの他の物性に悪影響を及ぼす。
【0046】
発泡核剤(E)の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部とすることが好ましく、中でも0.1〜5質量部が好ましく、特に好ましくは0.2〜3質量部である。0.01質量部未満であると、得られる発泡体は発泡核剤を添加した効果が現れずに気泡が粗大となり、十分に発泡が行われないものとなる。一方、10質量部を超えると、得られる発泡体は発泡が過剰となり、破泡が生じやすくなり、外観が損なわれる。また過剰に添加した場合、ポリ乳酸の結晶化速度を過度に増加させ発泡成形性が損なわれる場合がある。
【0047】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、前記したように、ポリ乳酸樹脂を40質量%以上含有するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の樹脂成分を含有していてもよい。ポリ乳酸樹脂以外の樹脂成分としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸以外のヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、およびポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸と芳香族多価カルボン酸との重縮合物等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、添加剤を添加することができる。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、架橋剤、鎖延長剤、充填材、難燃剤等が挙げられる。これらの添加剤は、一般的には溶融混練時、押出発泡時、または重合時に加えられる。
【0049】
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ホスファイト系有機化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0050】
分散剤としては、流動パラフィン、ミネラルオイル、クレオソート油、潤滑油、シリコーンオイルなどの工業用オイル;コーン油、大豆油、菜種油、パーム油、亜麻仁油、ホホバ油などの植物油;イオン性またはノニオン性の界面活性剤などが挙げられる。
【0051】
充填材としては、無機充填材、有機充填材が挙げられる。無機充填材としては、タルク、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
【0052】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、イオウ系難燃剤、酸系難燃剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられてもよいし2種類以上組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
そして、本発明の発泡体は、上記した本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を発泡させることにより得られるものである。つまり、発泡方法は特に限定されるものではなく、押出法やビーズ法等の一般的な発泡方法を採用して発泡させた発泡体であって、形状も限定されるものではない。
【0054】
また、本発明の発泡体は、押出法によりストランド形状やシート形状に発泡(1次発泡)させた発泡体をカットすることにより発泡粒子とし、この発泡粒子を型内発泡に供して2次発泡させた発泡体であってもよい。
【0055】
本発明の発泡体は、軽量性、耐熱性、断熱性、耐衝撃性、クッション性、遮音性に優れるものであり、包装材、梱包剤、緩衝材、断熱材、保温材、保冷材、消音材、吸音材、防音材、制振材、建材、クッション材、資材、容器等に利用することができる。その具体例としては、ソファ、ベッドマット、椅子、寝具、マットレス、電灯カバー、ぬいぐるみ、スリッパ、クッション、ヘルメット、カーペット、枕、靴、ポーチ、マット、クラッシュパッド、スポンジ、文具、玩具、DIY用品、パネル、畳芯材、マネキン、自動車内装部材、クッション、カーシート、デットニング、ドアトリム、サンバイザー、自動車用制振材、吸音材、スポーツ用マット、フィットネス用品、スポーツ用プロテクター、ビート板、グラウンドフェンス、レジャーシート、医療用マットレス、医療用品、介護用品、リハビリ用品、建築用断熱材、建築目地材、面戸材、建築養生材、反射材、工業用トレー、チューブ、パイプカバー、エアコン断熱配管、ガスケット芯材、コンクリート型枠、土木目地、つらら防止パネル、保護材、軽量土、盛土、人口土壌、梱包材・包装資材、梱包資材、ラッピング、生鮮品・野菜・果物等の梱包材・包装材、電子機器等の梱包材・緩衝包装材、生鮮品・野菜・果物等の保温・保冷箱、カップラーメン・弁当箱等の食品容器、食用トレー、飲料容器、農業用資材、発泡模型、スピーカ用振動板等が挙げられる。
【0056】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法としては、ポリ乳酸樹脂(A)と全ての添加剤(B)〜(E)を溶融混練(1段階で溶融混練)する方法と、ポリ乳酸樹脂(A)といずれかの添加剤を先に溶融混練した後に、残りの添加剤を添加して溶融混練(2段階で溶融混練)する方法が挙げられるが、中でも、1段階で溶融混練する方法が好ましい。そして、1段階で溶融混練する方法の中でも(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)を媒体に溶解又は分散して添加する方法(以下に詳述する(a)、(b)の方法)が特に好ましい。
【0057】
まず、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法は、押出機にポリ乳酸樹脂(A)100質量部と(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜10質量部、過酸化物(C)0.01〜10質量部、末端封鎖剤(D)0.1〜10質量部、発泡核剤(E)0.01〜10質量部とを供給し、溶融混練するものである。
【0058】
押出機としては、混練状態を良くするために二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は(樹脂組成物の融点+5℃)〜(樹脂組成物の融点+60℃)の範囲が好ましく、また混練時間は20秒〜20分が好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不十分となり、一方、高温や長時間であると分解や着色が生じることがある。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)の添加量は、中でも0.05〜5質量部であることが好ましい。0.01質量部未満では、ポリ乳酸樹脂(A)が十分に架橋されず、耐熱性を向上させることが困難となる。一方、10質量部を超えると、架橋の度合いが強すぎて、混練時の操業性が低下しやすくなる。
過酸化物(C)の添加量は、中でも0.05〜5質量部であることが好ましい。0.01質量部未満では、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)との反応を十分に促進させることができず、一方、10質量部を超えると、前記の効果が飽和し、コスト的に不利となる。
末端封鎖剤(D)の添加量は、中でも0.5〜8質量部が好ましく、より好ましくは1〜6質量部である。0.1質量部未満では、ポリ乳酸樹脂(A)の耐加水分解性(耐久性)の向上効果が得られず、一方、10質量部を超えると、過剰に添加された末端封鎖剤(D)がブリードアウトし、強度が低下するなどの他の物性に悪影響を及ぼす。
発泡核剤(E)の添加量は、中でも0.1〜5質量部が好ましく、特に好ましくは0.2〜3質量部である。0.01質量部未満であると、本発明の樹脂組成物から得られる発泡体は発泡核剤を添加した効果が現れずに気泡が粗大となり、十分に発泡が行われないものとなる。一方、10質量部を超えると、得られる発泡体は発泡が過剰となり、破泡が生じやすくなり、外観が損なわれる。また過剰に添加した場合、ポリ乳酸の結晶化速度を過度に増加させ発泡成形性が損なわれる場合がある。
【0060】
そして、本発明の製造方法(a)は、押出機にポリ乳酸樹脂(A)100質量部と末端封鎖剤(D)0.1〜10質量部と発泡核剤(E)0.01〜10質量部を供給し、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜10質量部と過酸化物(C)0.01〜10質量部を含有する溶解液または分散液を押出機の途中から注入して溶融混練する方法である。
方法(b)は、押出機にポリ乳酸樹脂(A)100質量部と過酸化物(C)0.01〜10質量部と末端封鎖剤(D)0.1〜10質量部と発泡核剤(E)0.01〜10質量部を供給し、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜10質量部を含有する溶解液または分散液を押出機の途中から注入して溶融混練する方法である。
【0061】
上記方法(a)、(b)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)や、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)と過酸化物(C)とを媒体に溶解した溶解液、又は媒体に分散させた分散液として押出機に注入し、溶融混練する方法であるが、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)や過酸化物(C)を溶解液や分散液とすることにより溶融混練の作業性が格段に向上し、架橋ムラの少ない樹脂組成物が得られることとなる。つまり、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)や過酸化物(C)は、反応性が高い化合物であるため、(B)単独、(C)単独、あるいは(B)と(C)の混合液を押出機に注入する場合、押出機の熱で固化して連続注入が困難になったり、ポリ乳酸樹脂の架橋反応が急激に進行して架橋ムラが生じたりする問題が起こる場合がある。このため、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)や過酸化物(C)を溶解液や分散液の形で押出機に注入することで、樹脂組成物の連続生産が可能となり、架橋ムラの少ない樹脂組成物が得られることとなる。
そして、これらの溶解液や分散液は、加圧ポンプを用いて、押出機の途中から注入することが好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)や(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)と過酸化物(C)を溶解または分散させる媒体としては、一般的なものを用いることができるが、ポリ乳酸樹脂(A)との相溶性に優れた可塑剤が好ましい。例えば、脂肪族多価カルボン酸エステル誘導体、脂肪族多価アルコールエステル誘導体、脂肪族オキシエステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体、脂肪族ポリエーテル多価カルボン酸エステル誘導体などから選ばれた1種以上の可塑剤などが挙げられる。具体的な化合物としては、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、トリエチレングリコールジアセテート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルトリブチルクエン酸、ポリエチレングリコール、ジブチルジグリコールサクシネートなどが挙げられる。
【0063】
これらの可塑剤の使用量としては、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、中でも0.1〜15質量部が好ましい。
なお、これらの可塑剤は、溶融混練時に揮発することがあるため、得られた樹脂組成物中に含有されていない場合もある。
【0064】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物から発泡体を製造する際の発泡方法には、押出法やビーズ法など一般的な発泡方法全てを適用することができる。押出法では、押出機を用いて、樹脂にあらかじめ樹脂の溶融温度で分解する熱分解型化学発泡剤をブレンドしておき、スリット状ノズルから押出してシート状にしたり、丸形ノズルから押出してストランド形状にしたりすることができる。熱分解型化学発泡剤の例としては、アゾジカルボンアミドやバリウムアゾジカルボキシレートに代表されるアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンに代表されるニトロソ化合物、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)やヒドラジカルボンアミドに代表されるヒドラジン化合物、あるいは炭酸水素ナトリウムなどの無機系の発泡剤などを挙げることができる。また、押出機途中から揮発型物理発泡剤を注入して発泡することも可能である。この場合の発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、水等の無機化合物や、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどの各種炭化水素、フロン化合物、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、エタノールやメタノール等の各種アルコール類に代表される有機溶媒などを挙げることができる。
【0065】
また、ビーズ法では、あらかじめ樹脂組成物の微粒子を作製し炭化水素、有機溶媒、水など上記に示した発泡剤を加圧下にて含浸させた後、温度や圧力の変化で発泡させて発泡粒子を作製する方法も適用できる。発泡粒子から、さらに型内発泡成形により発泡成形体を得ることができる。あるいは押出法により作製した発泡ストランドを切断して発泡粒子とし、型内発泡成形に供する融合法も適用できる。
【0066】
発泡倍率の向上を目的として発泡助剤を添加してもよい。発泡助剤としては、特に限定されず、例えば、低級アルコール、ケトン類、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例中の特性値の測定および評価は以下のように行った。
(i)融点
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「DSC−7」)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(ii)カルボキシル末端基濃度
ポリ乳酸系樹脂組成物を塩化メチレンに溶解し、指示薬としてフェノールレッドを加えた。0.1N水酸化カリウムで滴定し、カルボキシル末端基濃度を測定した。
(iii)メルトフローレート(MFR)
前記の方法で測定した。
(iv)ひずみ硬化係数(a2/a1)(図1参照)
前記の方法で測定した。
(v)溶融張力
前記の方法で測定した。
(vi)昇温時結晶化速度指数(図2および図3参照)
前記の方法で測定した。
(vii)発泡倍率
ポリ乳酸系樹脂組成物および発泡体(型内発泡成形後の発泡体)の質量を測定し、次いでそれらの見かけ体積を、湿式電子比重計(アルファ・ミラージュ社製「EW−300SG」)を用いて測定した。質量と見かけ体積から見かけ密度を算出した。そして、発泡倍率を以下の式より求めた。
・発泡体の発泡倍率=(ポリ乳酸系樹脂組成物の見かけ密度)/(発泡体の見かけ密度)(viii)型内発泡成形性の評価
型内発泡成形時の発泡粒子同士の融着性を、目視にて確認し、以下の基準で評価した。○:良好に融着している。
△:一部融着しているが、形を維持できない。
×:融着せず、形をなしていない。
(ix)加熱寸法安定性
得られた発泡体(型内発泡成形後の発泡体)を、120℃で24時間、熱風乾燥機により加熱処理した。加熱処理前後の体積変化率を以下の式により算出し、下記の2段階の基準で評価した。なお、X:加熱前の発泡体の体積、Y:加熱後の発泡体の体積とする。
体積変化率(%)=(Y−X)/X×100
◎:体積変化率が±1%未満である
○:体積変化率が±3%未満である
×:体積変化率が±3%以上である
(x)耐加水分解性(耐久性)
得られた発泡体(型内発泡成形後の発泡体)を50×50×25mmの大きさに切断して試験片とした。恒温恒湿器(ヤマト科学社製「IG400」)を用い、試験片を温度80℃、相対湿度40%の環境下に保存することにより湿熱処理を施した。0時間、100時間、500時間、1000時間、1500時間、2000時間の湿熱処理時間において、試験片を回収し、JIS K7220に基づき、変形速度2.5mm/分で荷重をかけ、10%変形圧縮強度を測定した。
以下の式に基づいて、圧縮強度保持率を算出した。
圧縮強度保持率(%)=(湿熱処理後の10%変形圧縮強度)/(湿熱処理前の10%変形圧縮強度)×100
また、湿熱処理後の試験片の表面状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:変化なし
○:表面の一部が変色
△:表面から粉がふいている
×:脆くなって、ポロポロしている
【0068】
実施例および比較例において用いた各種原料を示す。
〔ポリ乳酸樹脂(A)〕
A1:結晶性ポリ乳酸(NatureWorks社製、「6251D」)
融点:169℃、D体含有量:1.4モル%、溶融張力:8mN、MFR:28g/10分
A2:結晶性ポリ乳酸(NatureWorks社製、「6201D」)
融点:168℃、D体含有量:1.4モル%、溶融張力:10mN、MFR:8.2g/10分
A3:結晶性ポリ乳酸(トヨタ自動車社製、「A−2」)
融点:171℃、D体含有量:0.5モル%、溶融張力:11mN、MFR:6.5g/10分
A4:結晶性ポリ乳酸(トヨタ自動車社製、「S−17」)
融点:176℃、D体含有量:0.1モル%、溶融張力:10mN、MFR:11g/10分
〔(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)〕
GM:グリシジルメタクリレート(日油社製「ブレンマーGS」)
EGDM:エチレングリコールジメタクリレート(日油社製「ブレンマーPDE−50」)
〔過酸化物(C)〕
DTBP:ジ−t−ブチルパーオキサイド(日油社製「パーブチルD」)
DBPH:2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3の40%希釈粉体(日油社製「パーヘキシン25B−40」)
〔末端封鎖剤(D)〕
D1:芳香族モノカルボジイミド(松本油脂社製「EN160」)
構造名:N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド
D2:芳香族モノカルボジイミド(ラインケミー社製「Stabaxol I LF」)
構造名:N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド
D3:脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル社製「LA−1」)
〔発泡核剤(E)〕
E1:PTFE粉末(AGC社製「Fluon ルブリカント L169E」)
平均粒径:17μm
E2:アクリル樹脂変性PTFE(三菱レイヨン社製「メタブレン A3800」)
E3:微粉タルク(林化成社製「MW-HST」)
平均粒径:2.7μm
〔可塑剤〕
ATBC:アセチルトリブチルクエン酸(田岡化学工業社製)
〔他の添加剤〕
F:エポキシ変性シリコーン/アクリルゴム(三菱レイヨン社製「メタブレン S−2200」)
〔物理発泡剤〕
二酸化炭素
〔化学発泡剤〕
ADCA:アゾジカルボンアミド(永和化成工業社製「ビニホール AC#1C」)
分解温度:199℃、メジアン径:7μm
【0069】
実施例1
二軸混練押出機(池貝社製「PCM−30」、スクリュー径:29mm、L/D:30、ノズル直径:4mm、孔数:3孔、温度:210℃)を用い、ドライブレンドしたポリ乳酸樹脂A1:100質量部、末端封鎖剤D1:4質量部、発泡核剤E1:1質量部とを供給した。(メタ)アクリル酸エステル化合物EGDMと過酸化物DTBPを可塑剤ATBCで希釈した溶液をEGDM:0.2質量部、DTBP:0.4質量部、ATBC:1.4質量部となる量を混練機途中からポンプを用いて注入した。これらを溶融混練した後、吐出速度6kg/hで押し出し、ペレット状に加工し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
二軸押出発泡機(「PCM−30」、ノズル直径:1.0mm、孔数:30孔、溶融ゾーン温度:210℃、冷却ゾーン温度:135〜160℃、ダイス出口温度:155℃)を用い、得られたポリ乳酸系樹脂組成物100質量部と化学発泡剤ADCA0.5質量部をドライブレンドして供給した。液化炭酸ガス注入装置(昭和炭酸社製)を用いて押出機途中から二酸化炭素(物理発泡剤)を添加濃度0.3質量%となるように注入しながら、吐出速度12kg/hで押し出し、ノズルから押出発泡させてストランド形状の発泡体を製造した。ストランド形状の発泡体を水に浸して冷却した後、ペレタイザにより粒子状に加工し、直径2mmの発泡粒子を得た。
得られた発泡粒子を圧力容器に入れて、二酸化炭素を0.5MPaとなるように充填し、30℃にて1時間内圧付与した。圧力容器から取り出した発泡粒子を直ちに金型内に充填し、120℃の水蒸気で加熱して型内発泡成形を行い、発泡体を得た。
【0070】
実施例2〜9、12及び13、比較例1〜11
ポリ乳酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル化合物、過酸化物、末端封鎖剤および発泡核剤をそれぞれ表1に示す種類と添加量に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして押出発泡、次いで型内発泡成形を行い、発泡体を得た。
【0071】
実施例10
他の添加剤として、エポキシ変性シリコーン/アクリルゴム(F)(ポリ乳酸100質量部に対して、5質量部)を押出機途中からサイドフィードして添加した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして押出発泡、次いで型内発泡成形を行い、発泡体を得た。
【0072】
実施例11
実施例1と同様の二軸混練押出機を用い、ドライブレンドしたポリ乳酸樹脂A1:100質量部、過酸化物DBPH:1.0質量部、末端封鎖剤D1:4質量部、発泡核剤E1:1質量部とを供給した。(メタ)アクリル酸エステル化合物EGDMを可塑剤ATBCで希釈した溶液をEGDM:1.0質量部、ATBC:1.4質量部となる量を混練機途中からポンプを用いて注入した。これらを溶融混練した後、吐出速度6kg/hで押し出し、ペレット状に加工し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして押出発泡、次いで型内発泡成形を行い、発泡体を得た。
【0073】
実施例14
他の添加剤として、エポキシ変性シリコーン/アクリルゴム(F)(ポリ乳酸100質量部に対して、5質量部)を押出機途中からサイドフィードして添加した以外は実施例12と同様にして樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして押出発泡、次いで型内発泡成形を行い、発泡体を得た。
【0074】
実施例1〜14、比較例1〜11で得られた樹脂組成物及び発泡体の特性値と評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、実施例1〜14において得られた樹脂組成物は、MFRが4〜20の範囲内にあり、発泡適性に優れていた。このため、該樹脂組成物から得られた発泡体は、発泡倍率が高く、型内発泡成形性に優れたものであり、さらには、耐熱性、耐加水分解性(耐久性)ともに優れていた。実施例10の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(F)を含有するものであったため、得られた発泡体は、耐熱性を損なうことなく、実施例1の発泡体よりもさらに耐加水分解性に優れていた。また、実施例12〜14の樹脂組成物は、D体含有量が少ないポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物であったため、結晶融解熱量が高く(結晶化度が高く)、得られた発泡体は実施例1の発泡体よりもさらに耐加水分解性能に優れており、かつ加熱寸法安定性も優れていた。
一方、比較例1の樹脂組成物は、実施例1の樹脂組成物よりも(メタ)アクリル酸エステル化合物、過酸化物、可塑剤の含有量が多かったため、MFRが4未満となった。このため、結晶化速度指数が低く(結晶化速度が高く)、結晶融解熱量が低く(結晶化度が低く)、得られた発泡体は耐熱性に劣るものであった。
比較例2の樹脂組成物は、実施例1の樹脂組成物よりも(メタ)アクリル酸エステル化合物、過酸化物、可塑剤の含有量が少なかったため、MFRが20を超えるものとなった。このため、結晶化速度指数が高く(結晶化速度が低い)、結晶融解熱量が低く(結晶化度が低く)、溶融張力も低いものとなり、得られた発泡体は発泡倍率が低く、耐熱性に劣るものであった。
比較例3の樹脂組成物は、発泡核剤としてタルクを用いたため、結晶化速度指数が低く(結晶化速度が高く)、結晶融解熱量が低い(結晶化度が低い)ものであった。このため、得られた発泡体は耐熱性に劣るものであった。
比較例4〜5の樹脂組成物は、末端封鎖剤を含有しておらず、比較例6の樹脂組成物は、末端封鎖剤の含有量が少なく、いずれもポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端基濃度が高いものであったため、得られた発泡体は耐加水分解性能に劣るものであった。
比較例7の樹脂組成物は、発泡核剤を含有していないため、得られたストランド形状の発泡体は気泡が粗大で外観が悪かった。そして、型内発泡成形では発泡粒子が十分に発泡せず、発泡体を得ることができなかった。
比較例8の樹脂組成物は、発泡核剤の量が多すぎるため、結晶化速度指数が低い(結晶化速度が高い)ものとなり、破泡が多く、型内発泡成形では発泡粒子が十分に発泡せず、発泡体を得ることができなかった。
比較例9の樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有しておらず、ポリ乳酸樹脂が架橋されていなかったため、発泡に適した特性を有していない樹脂組成物となり、ストランド形状の発泡体を得ることができなかった。
比較例10、11では、ポリ乳酸樹脂(A)のみを用いたものであるが、いずれも発泡に適した特性を有しておらず、ストランド形状の発泡体を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)により架橋され、カルボキシル末端基濃度が0〜5mol/tonであるポリ乳酸樹脂とポリテトラフルオロエチレンを主成分とする発泡核剤(E)とを含有する樹脂組成物であって、荷重2.16kgf、温度190℃にて測定したメルトフローレートの値が4〜20g/10分であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ乳酸樹脂が、D体含有量が8モル%以下であるか、またはD体含有量が92モル%以上である請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項3】
ポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)、過酸化物(C)、末端封鎖剤(D)、発泡核剤(E)を溶融混練してなる請求項1又は2記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(F)を含有する請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法であって、押出機にポリ乳酸樹脂(A)100質量部と(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜10質量部、過酸化物(C)0.01〜10質量部、末端封鎖剤(D)0.1〜10質量部、発泡核剤(E)0.01〜10質量部とを供給し、溶融混練することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を発泡して得られる発泡体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−116949(P2011−116949A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230583(P2010−230583)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】