説明

ポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物

ポリ(ヒドロキシアルカン酸)とアルキルアクリレートおよび任意選択的にコモノマーに由来する繰り返し単位を有する耐衝撃性改良剤とを含む組成物が開示される。この組成物およびこの組成物を含む物品の製造方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性改良剤を含むポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物におよびこの組成物を含む透明な物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(PLA)などのポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)は、細菌発酵法により生産することができる再生可能なモノマーを含む樹脂かまたはトウモロコシ、サトウダイコン、もしくはサツマイモを含む植物から単離される樹脂である。この樹脂は、コップ、トレイ、およびクラムシェルなどの無色透明な熱成形包装品を製造するために使用することができる。一般に、この樹脂は先ず非晶質シートへ押し出され、ガラス転移温度より上で非晶質または半結晶性のしかし透明な完成品へ成形される。
【0003】
しかしながら、脆さなどの物理的制限は、多くの用途向けに受け入れることができる程度の強靱性を有する物品へのPHAの容易な熱成形、または射出成形を妨げるかもしれない。押し出された非晶質シーティングはまた、エッジ−トリミングまたはピン止め中などに切断なしに連続移動装置で取り扱うためには余りにも脆いかもしれない。
【0004】
強靱化PLA物品を製造するための耐衝撃性改良剤には、米国特許第6,417,294号明細書、同第6,803,443号明細書、同第6,943,214号明細書、および特開平9−316310号公報に開示されているものが含まれる。その生分解性および原材料のその持続性という環境上の価値のために、受け入れることができるレベルの強靱性と光学的無色透明性とを持った様々な物品へ加工することができるPHA組成物を改良する必要性は絶えず存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
物品は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)と1つ以上の耐衝撃性改良剤とを含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる組成物であって、この改良剤がアルキルアクリレートおよびコモノマーに由来する繰り返し単位を含む組成物を含むかまたはそれから製造される。
【0006】
方法は、PHA組成物またはPHAを耐衝撃性改良剤と接触させて配合物を生成する工程と;この配合物をPHAのガラス転移温度(Tg)と融点(Tmelt)との平均の約15℃下からTgとTmeltとの平均の約20℃上までの温度で金型中へ熱成形して熱成形品を製造する工程と;任意選択的にこの物品をTgより上の温度で寸法的に拘束されたやり方で保持することによって物品をヒートセットする工程と;この物品をTgより下に冷却する工程と;熱成形品を回収する工程とを含む。
【0007】
PHA組成物は、2〜15個、2〜10個、2〜7個、または2〜5個の炭素原子を有する1つ以上のヒドロキシアルカン酸に由来する繰り返し単位を含むポリマーを含む。例には、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、2−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、4−ヒドロキシバレレート、5−ヒドロキシバレレート、6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。ポリマーの例には、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、または2つ以上のPHAポリマーのブレンド物(例えば、PHBとPCLとのブレンド物)をはじめとする、それらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、それらは非晶質でないことが望ましい。
【0008】
PHAは、バルク重合によって製造することができる。PHAは、ヒドロキシアルカン酸の脱水−重縮合によって合成されてもよい。PHAはまた、ポリグリコール酸のアルキルエステルの脱アルコール−重縮合によってか、または相当するラクトンもしくは環状二量体エステルなどの環状誘導体の開環重合によって合成されてもよい。バルク重合は、2つの製造プロセス、すなわち連続プロセスおよびバッチプロセスによって実施することができる。特開平3−502115号公報は、環状エステルのバルク重合が二軸スクリュー押出機で実施される方法を開示している。特開平7−26001号公報は、ヒドロキシカルボン酸の二分子環状エステルおよび1つ以上のラクトンが開環重合のためにスタティックミキサーを有する連続反応装置に連続的に供給される生分解性ポリマーの重合方法を開示している。特開平7−53684号公報は、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体が触媒とともに初期重合工程に供給され、次に多軸混練機からなる後期重合工程に連続的に供給される、脂肪族ポリエステルの連続重合方法を開示している。米国特許第2,668,162号明細書および同第3,297,033号明細書はバッチプロセスを開示している。
【0009】
PHAはまた、ポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレート(PHB/V)コポリマーおよびグリコール酸と乳酸とのコポリマー(PGA/LA)などの、2つ以上のPHAを含むコポリマーを含む。コポリマーは、ポリヒドロキシアルカン酸もしくは誘導体と1つ以上の環状エステルおよび/または二量体環状エステルとの共重合によって製造することができる。かかるコモノマーには、グリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、グリコール酸の二量体環状エステル;ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン);α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパン酸の環状エステル;β−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ酪酸の環状エステル;δ−バレロラクトン、5−ヒドロキシペンタン酸の環状エステル;ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸の環状エステル、および2−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、4−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3,3,5−トリメチル−6−ヒドロキシヘキサン酸などのようなそのメチル置換誘導体のラクトン;12−ヒドロキシドデカン酸の環状エステル;2−p−ジオキサノン;ならびに2−(2−ヒドロキシエチル)−グリコール酸の環状エステル、またはそれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0010】
PHA組成物はまた、1つ以上のPHAモノマーまたは誘導体と、コハク酸、アジピン酸、およびテレフタル酸ならびにエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールなどの脂肪族および芳香族二酸およびジオールモノマーを含む、他のコモノマーとのコポリマーを含む。約100の異なるコモノマーがPHAコポリマー中へ組み入れられてきた。一般に、コポリマーがより多くのモルのコモノマーを組み込まれると、生じたコポリマーは結晶化する可能性がより少ない。
【0011】
PHAポリマーおよびコポリマーはまた、生物によって製造されてもまたは植物から単離されてもよく、アゾトバクター(Azotobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes latus)、コマモナス・テストステロン(Comamonas testosterone)および遺伝子操作された大腸菌(E.coli)ならびにクレブシエラ属(Klebsiella)を含む。米国特許第6,323,010号明細書は、遺伝子組み換えの生物から製造された多くのPHAコポリマーを開示している。
【0012】
PLAは、3000〜1000000、10000〜700000、または20000〜300000の数平均分子量を有する、ポリ(乳酸)ホモポリマーおよび少なくとも50モル%(50%コモノマーはいかなる条件であっても、結晶化する可能性が最も少ないコポリマー組成物を生成する)の乳酸またはその誘導体(それの混合物)に由来する繰り返し単位を含有する乳酸と非異性体または光学的異性体(立体異性体)のどちらかとのコポリマーを含む。PLAは、少なくとも70モル%の乳酸またはその誘導体に由来する(例えば、それらによって製造される)繰り返し単位を含有してもよい。PLAホモポリマーおよび光学コポリマー用の乳酸モノマーは、d−乳酸、l−乳酸、またはそれらの組み合わせに由来することができる。2つ以上のPLAポリマーの組み合わせを使用することができる。PLAは、「ラクチド」としばしばよばれる、乳酸の二量体環状エステルの触媒開環重合によって製造されてもよい。結果として、PLAはまた「ポリラクチド」ともよばれる。
【0013】
PLAはまた、乳酸またはラクチドの異なる立体異性体の特別クラスのコポリマーおよびブレンド物を含む。d−乳酸またはd−ラクチドから重合させられたPLAとl−乳酸またはl−ラクチドから重合させられたPLAとの溶融ブレンド物は、50/50比で2つの立体純粋PLA間のステレオ−コンプレックスを生成することができる。ステレオ−コンプレックスの結晶はそれ自体、2つのPLA成分のいずれよりもはるかに高い融点を有する。同様に、ステレオ−ブロックPLAは、低分子量ステレオ−コンプレックスPLAから固相重合させることができる。
【0014】
乳酸のコポリマーは典型的には、乳酸、ラクチドまたは別の乳酸誘導体と上記のような1つ以上の環状エステルおよび/または二量体環状エステルとの触媒共重合によって製造される。
【0015】
PHAは、使用されるPHAと改良剤との総量を基準として、組成物の約99.8重量%までを構成してもよい。例えば、PHAは、下限約96重量%から100重量%までの範囲で存在してもよい。
【0016】
PHA組成物は、組成物の重量を基準にして、約0.1〜約50%、約0.5〜約40%、約1〜約30%、約2〜約30%、約3〜約20%、または約5〜約10%の耐衝撃性改良剤を含んでもよい。この改良剤は、アルキルアクリレートおよびコモノマーに由来する繰り返し単位を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる。アルキルアクリレートおよびコモノマーに由来する繰り返し単位はそれぞれ、改良剤の重量を基準にして、約5、10、20、40または50%〜約50、60、80、90または95%を構成してもよい。このアルキルは、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、第二ブチルアクリレート、アミルアクリレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの基当たり1〜約10個または2〜約10個の炭素原子を含むことができる。コモノマーは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレート)、一酸化炭素、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むことができる。改良剤の酸部分、またはその一部は、Na、K、Mg、Zn、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの金属イオンで中和することができる。
【0017】
改良剤は、商業的に入手可能である(例えば、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin))かまたはラジカル重合などの当業者に公知の任意の方法によって製造することができる。例えば、耐衝撃性改良剤は、上に開示された重量%範囲のアルキルアクリレートおよびコモノマーを、任意の好適な容器または反応器中で、任意選択的に溶液または懸濁液を生成するための溶媒中で約0.1〜約10重量%の重合開始剤および下に開示される任意の添加剤の存在下に、ポリマーを生成するのに十分な時間(例えば、1分〜20時間)25℃〜約250℃の温度で大気圧からこの温度を提供する任意の圧力で混合することによって製造することができる。溶媒の例には、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、または酸が挙げられる。開始剤の例には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ジクミルペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジ−イソプロピルベンゼン、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。開始剤が光開始剤である場合、UV光を用いることができる。生成したポリマーは、熱または硬化剤によってなど当業者に公知の任意の手段によって硬化させられてもよい。これらの方法はよく知られているので、その説明は簡潔さのために省略される。
【0018】
PHA組成物は、組成物の重量を基準にして、0.01〜約4%、約0.1〜約3%、約0.5〜約2%の、7個の炭素〜22個の炭素の長さの脂肪族ラジカルの酸、エステル、アミド、もしくはアルコール、またはそれらの2つ以上の組み合わせをはじめとする核剤を含んでもよいし、あるいは芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸)、脂肪族カルボン酸(オレイン酸、ステアリン酸、およびベヘン酸)、酸誘導体(ステアリルアルコール、ブチルステアレート、ステアルアミド、およびベヘンアミド)、ポリカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどのカルボン酸またはその誘導体を含むことができる。カルボン酸は、それの脂肪族一官能性(飽和、不飽和、または多不飽和)カルボン酸であることができる。酸は、1分子当たり約10〜約30個の、約12〜約28個の、約16〜約26個の、または18〜22個の炭素原子を有してもよい。GRAS(一般に安全と認められる)としてUS Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)(FDA)リストにある酸が特に興味深い。非公式のGRAS酸の例には、乳酸、リノール酸、リンゴ酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの、幾つかのモノカルボン酸および幾つかのポリカルボン酸が挙げられる。
【0019】
組成物はまた、組成物の約0.01〜約30重量%、約0.1〜約20重量%、約0.2〜約10重量%の、エチレンコポリマー、コア−シェルポリマー、またはそれらの組み合わせなどの他の任意の公知の耐衝撃性改良剤を含むことができる。
【0020】
エチレンコポリマーは、(a)エチレン;(b)式CH2=C(R3)CO24(ここで、R3は水素またはメチルなどの、1〜6個の炭素原子のアルキル基であり;R4はグリシジルである)の1つ以上のオレフィン;および任意選択的に(c)式CH2=C(R1)CO22(ここで、R1は水素または1〜8個の炭素原子のアルキル基であり、R2は、メチル、エチル、またはブチルなどの、1〜8個の炭素原子のアルキル基である)の1つ以上のオレフィン、または一酸化炭素に由来する繰り返し単位を含んでもよい。モノマー(a)に由来する繰り返し単位は、コポリマー重量を基準として、約20、40または50%から約80、90または95%を構成してもよい。モノマー(b)に由来する繰り返し単位は、コポリマー重量を基準として、約0.5、2または3%から約17、20または25%を構成してもよい。エチレンとグリシジルメタクリレートとから誘導されるエチレンコポリマーの例は、EGMAとよばれる。任意のモノマー(c)はブチルアクリレートまたはCOであることができる。n−ブチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、および第二ブチルアクリレートの1つ以上が使用されてもよい。エチレンコポリマーの例は、エチレンと、ブチルアクリレートと、グリシジルメタクリレート(EBAGMA)とから誘導される。モノマー(c)に由来する繰り返し単位は、存在するとき、コポリマー重量を基準として、約3、15または20%から約35、40または70%を構成してもよい。
【0021】
エチレングリシジルメタクリレートコポリマーが組成物中に存在する場合、カルボン酸はアルキルエステルまたはアルキルアミド(ここで、アルキル基は4〜約30個または10〜約20個の炭素原子を有する)の形態にあることができる。
【0022】
コア/シェルポリマーは好ましくは、PHAのそれの0.1単位内の可視領域での屈折率を持ったシェルを有し;コアは、ポリアルキルアクリレートを含んでも、任意選択的に架橋していてもよい1つ以上のエラストマーを含み;シェルは、ポリメチルメタクリレートを含んでも、任意選択的にエポキシ、カルボン酸、またはアミンをはじめとする官能基を含有してもよい非エラストマーポリマーを含む。
【0023】
コア−シェルポリマーはまた、米国特許第4,180,529号明細書に記載されているタイプの多段階逐次重合技法によって製造された、多層で構成されてもよい。各逐次段階は、前に重合した段階の存在下に重合させられる。このように、各層は、直前段階の上部上に層として重合させられる。
【0024】
本PHA組成物は、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料もしくは顔料、フィラー、難燃剤、滑剤、フレークなどの強化剤、加工助剤、粘着防止剤、剥離剤、および/またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む1つ以上の添加剤を含むことができる。望ましくは、光学的透明度を保つために、添加剤は、興味のある波長でPHAの屈折率とマッチするべきである。PLA屈折率は630nm〜900nmで1.453であり;それ故、ペンタンジアミンはその屈折率とマッチする0.1単位内である。
【0025】
これらの添加剤は、0.01〜7重量%、または0.1〜2重量%で組成物中に存在してもよい。例えば、組成物は、約1〜約5%の可塑剤;約0.1〜約0.5%の酸化防止剤および安定剤;約1〜約10%の他の固体添加剤;および/または約1〜約20%の難燃剤を含有してもよい。不透明ではあるが、好適な他の固体添加剤の例には、二酸化チタンなどの顔料、カーボンまたはグラファイトなどのマイクロ波サセプタ、鋼粉末または遷移金属酸化物などの誘導加熱金属、および高周波ヒートシーリングサセプタが挙げられる。
【0026】
熱成形プロセスは、配合物を生成するためにPHA組成物またはPHAを改良剤と接触させる工程を含む。この接触工程は、PHAと改良剤(および、存在する場合、任意の他の原料)とを、改良剤が実質的にまたはさらには均一に分散させられるまで混合することを含むことができる。任意の他の公知の耐衝撃性改良剤(例えば、アイオノマー、グラフト化剤)および添加剤もまた、組成物中に分散させられてもよい。当該技術分野で公知の任意の混合方法が用いられてもよい。例えば、成分原材料は、樹脂組成物を生成するために、単軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、Buss Kneader、二重螺旋Atlanticミキサー、Banburyミキサー、ロールミキサーなどのメルト−ミキサーを用いて実質的に分散するかまたは均質になるまで混合されてもよい。
【0027】
接触は、周囲圧力でまたは0〜約70MPaまたは0〜約34MPaの範囲で、約100℃〜約350℃、約130℃〜約275℃、または特に約180℃〜約230℃の、PHAの軟化点より上およびPHAの解重合温度より下の範囲の溶融混合温度を含むことができる。この条件は、改良剤を小粒子へ分散させ、かつ、それらを溶融PHA中に一様に分散させるのに十分に高い剪断履歴と、PHA分子量の過度の損失およびその脆化を回避するのに十分に低い剪断履歴とを生み出す。剪断履歴は、継続時間にわたる剪断の量の概念である。溶融物は、それが高い剪断を短時間経験するときよりもそれが高い剪断を長時間経験するときにより多くの剪断履歴を経験する。同様に溶融物は、それが中程度の剪断をある時間経験するときに、それが低い剪断を同じ継続時間経験するときよりも多くの剪断履歴を経験する。プラスチック加工装置の剪断履歴は、装置内での、例えば、ペレットを製造するサイズスクリュー押出機での異なる剪断速度および継続時間によって複雑化されるかもしれず、スクリューは、スクリューのチャネル内では低い剪断速度および長い経過時間を有するが、スクリューと押出機の壁との間では高い剪断速度および短い経過時間を有する。一般に、十分に高い剪断履歴は、共回転または反転であってもよいローター翼ミキサーを用いる加熱回分式双翼ミキサー中へ周囲温度原料の導入から約2分の混合の使用か、または混練ブロックか後進エレメントかのいずれかである10%未満の長さのスクリューエレメントを含有し、残りが前方搬送セクションであるスクリューを用いる、約10:1の長さ対直径比の三ツ葉状の共回転二軸スクリュー押出機の使用によって達成される。例えば、十分に高い剪断履歴は、回分式装置での少なくとも3分および連続装置での少なくとも20:1のL:D(長さ対直径)比の使用によって生じ得るし、過度に高い剪断履歴は、回分式装置での40分超または連続装置での50:1のL:D比から生じるかもしれない。単軸スクリュー押出機、反転二軸スクリュー押出機、またはロールミルなどの、他の加工装置を溶融混合のために用いることができる。同様に有用な加工機は、スクリューの終わりに混合トーピード付きの双葉状二軸スクリュー押出機および単軸スクリュー押出機を含むかもしれない。さらに、PHAとマッチしない屈折率を有する任意の改良剤粒子のサイズは、低い曇り度のために約500nm未満、約300nm未満、または80nm未満さえであるかもしれない。改良剤を150nm未満などの小サイズに分散させることの困難さは、使用される改良剤の量およびPHAへのその溶解性と共に増大するかもしれない。一般に、PHA中のマッチしない屈折率を有する約2%超の改良剤は、過度の曇ったブレンド物につながるかもしれない。例えば、3%超または約5%超は、用いられる混合のタイプにかかわらず、余りにも高いレベルの曇り度を生じるかもしれない。
【0028】
あるいはまた、成分原材料の一部をメルト−ミキサーでプレミックスしてマスターバッチを形成し、成分原材料の残りをその後添加し、実質的に分散するまたは均質になるまでさらに溶融混合することができる。
【0029】
組成物は、完成品への加工が非晶質物品を達成するためのまたは半結晶化度と一緒に低い曇り度を達成するための方法で行われるという条件で、PHAに好適な任意の溶融加工技法を用いて物品へ成形されてもよい。低い曇り度および結晶化度を達成するための当該技術分野で公知の普通に用いられる溶融成形法は、冷たい金型へ射出成形して非晶質プレフォームを形成する工程、引き続きブロー成形工程または延伸工程を含むことができる。組成物はまた、非晶質キャストフィルムを製造するために押出またはカレンダー掛けによって冷たい急冷表面上へフィルムに溶融成形されてもよい。非晶質であるそれらのキャストフィルムは、物品および構造物へさらに熱成形されてもまたは延伸されてもよい。
【0030】
組成物はまた、未延伸で半結晶性であってもよい、曇り度を有するフィルム、棒、異形材、シート、繊維およびフィラメント、または透明である未延伸で非晶質の半完成品、またはブローンフィルムなどの溶融物からの透明であるまたは射出延伸ブローン成形もしくは熱成形によるなどのほぼ非晶質の半完成の射出成形品もしくはキャスト品を加熱することによって後段階で延伸される延伸半結晶性品を形成するために使用されてもよい。
【0031】
組成物は、キャストフィルムもしくはシートを製造するための冷たい急冷表面上へのスロットダイか、ブローンフィルムもしくはシートを製造するための冷却エアリングを有する輪状ダイかのどちらかを通しての押出、引き続き溶融物からもしくは組成物の加工における後段階で延伸される物品および構造物への熱成形によってフィルムもしくはシートへ成形されてもよい。
【0032】
完全無色明透明度および改良剤の強靱性利益を達成するために、任意の非晶質の半完成品の製造は、約1%超の過度の結晶化度を望ましくは回避し、完成品の製造は、透明性を重んじる物品のそれらの部分について約5%より上の高い結晶化度か、約100nmより上のPHAの過度に大きい結晶かのどちらかを望ましくは回避する。
【0033】
組成物は次に、約30℃〜約250℃、約60℃〜約150℃、約65℃〜約100℃、または約65℃〜約90℃であることかできるTgより上およびTmelt(ポリマーが溶融する温度)より下に予熱されることによって金型で熱成形して熱成形品を製造することができる。金型は、トレイ、コップ、キャップ、ボウル、または蓋などの当業者に公知の任意の金型であることができる。例えば、金型はアルミニウムで製造することができ、金型の最上部を覆うPHAの加熱されたシートへの金型の内側からの真空の適用によって伸張(延伸)のために用いることができる。完了するとすぐに、熱成形品、特にPHAが改良剤で改質されているものは、加熱金型中に約1〜約20秒、約1〜約15秒、約1〜約10秒、約1〜約5秒、または約2〜約4秒保持して成形品をヒートセットすることができる。
【0034】
理論によって制約されることを意図しないが、金型温度はポリマーのTgより高い、そうでなければ分子はどんなに時間をかけても金型中で動かないであろう。温度の低下は、必要とされる時間を増加させる。例えば、55℃のTgおよび150℃の融点を有するPHAについては、80℃で30秒間さえの保持は、高い収縮をもたらすかもしれない。従って、金型温度は望ましくはTgとTmeltとの中間の15℃下より高い。金型温度はまた、物品が金型から取り出されるときに変形しないようにTgとTmeltとの中間の約15℃上より低い。完全無欠な最高温度はTmeltであろう。成形品は従って、約90℃〜約135℃、95℃〜約120℃、95℃〜約110℃、約100℃、約110℃、約120℃、または約135℃などのTgとTmeltとの中間の約15℃下より高い温度で、約1〜約30秒、約1〜約20秒、約1〜約15秒、約1〜約10秒、約1〜約5秒、または約2〜約4秒間ヒートセットすることができる。
【0035】
望ましい生じた物品は次にTgに急冷される。厚い異形材については、異形材の内部の冷却速度は、物品の外部上で実用的な最寒温度の使用によって恩恵を受けるかもしれない。当該温度は望ましくはPHAのガラス転移温度より下である。例えば、約50℃のガラス転移温度を有するPHAについては、約700μのシーティング厚さは、10℃の片側急冷温度の使用から恩恵を受けるかもしれないが、500μシートは、20℃の片側急冷条件を使用して非晶質にすることができる。約40℃より上の急冷温度は、ガラス転移温度が約40℃である場合、かかる表面と接触する溶融物は余りにもゆっくり冷え得るおよび/またはかかる表面に対して縮み得るので有用なものではないかもしれない。正確な最低温度は、結晶化が本質的により遅いPHAが使用されるとき、またはより少量の改良剤が使用されるとき、または物品が片側に対して全側から冷却されるかもしくは急冷されるとき、またはPHAのTgがより低いときには下がるかもしれない。
【0036】
非晶質の半完成品を透明な結晶化シートへ加工する際に、非晶質物品は先ず伝導、対流、または放射加熱によって加熱されてもよい。放射加熱では、物品は、200℃〜約700℃の範囲の黒体放射温度に曝される。230℃黒体放射体での時間は、両側から加熱される600μ厚さの異形材については約10〜約70秒、または20〜60秒、または30〜50秒の範囲であってもよい。次工程で結晶化度および透明度を達成するための半完成品についての最適温度は、使用される特定のPHAについてのガラス転移点と融点とのほぼ中間である。
【0037】
加熱された非晶質の半完成品を完成した透明な結晶性物品へ成形する際に、半完成品は、結晶化をもたらし、そしてそれらの結晶子が曇りをもたらさないほど十分に小さいものであり得るのに十分に高速でおよび高延伸比で延伸されてもよい。延伸比は、1秒当たり約10%〜約1000%、または1秒当たり20%〜1秒当たり600%であってもよい。延伸比は、約20%(ポスト延伸長さはプレ延伸寸法の150%である)〜約800%、または50%〜700%、または100%〜300%であってもよい。理論によって制約されることを意図しないが、遅い延伸速度は、曇りまたは不完全に成形された物品を生成するかもしれず、余りにも高い延伸速度は、ガラス転移温度より上で不十分な寸法安定性を有する完成品をもたらす不十分に高い結晶化度を生じるかもしれない。低い延伸比は、熱成形プロセスの短い時間内に十分な結晶化度を誘導しないか、または完成品に曇りを引き起こすかもしれないし、余りにも高い延伸比は、物品の過度の薄化または引裂を引き起こすかもしれない。正確な延伸比は、不平衡のもしくは一次元延伸の物品、または真空、加圧支援の、もしくは物理的「プラグ支援」なしの場合などの延伸操作中に冷却されない物品についてはより高いかもしれない。さもなければ、延伸操作中に冷却される物品のそれらの部品は、曇りまたは不十分な寸法安定性を経験するかもしれない。製造された物品は望ましくは、30ミル厚さ当たり約2%曇り度〜約20%、または約5〜約15%曇り度の曇り度を有する。物品には、物品フィルム、シート、繊維、フィラメント、蓋材用フィルム、ブローンフィルム、またはそれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0038】
フィルムは、PHA組成物の単層(単分子層シート)かまたはPHA組成物の層と異なる材料を含む少なくとも1つの追加の層とを含む多層フィルムもしくはシートであってもよい。
【0039】
包装用途向けには、多層フィルムは、最外構造化層すなわち露出層、内層または内部バリア層、およびパッケージの意図される内容物と接触し、それらと相溶性で、かつ、任意の必要なシールを形成することができる最内層をはじめとする3つ以上の層を含んでもよい。他の層もまた、これらの層を結び付けるのに役立つ接着層としての機能を果たすために存在してもよい。各層の厚さは約10〜約200μmの範囲であることができる。
【0040】
最外構造層または露出層は、本PHA組成物から製造されてもよい。追加の構造層は、延伸ポリエステルまたは延伸ポリプロピレンを含んでもよいが、延伸ポリアミド(ナイロン)をまた含むことができる。構造層は、例えば、グラビア法を用いる裏刷によって印刷することができる。
【0041】
内層は、その内部の製品に影響を及ぼす可能性のある水、酸素、二酸化炭素、紫外線などの電磁放射線、およびメタノールなどの試剤による層を通っての透過速度を下げるための1つ以上のバリア層を含むことができる。バリア層は、プリント層、酸化ケイ素(SiOx)、酸化アルミニウム、芳香族ナイロン、それらの関連コポリマーだけでなく同じもののブレンド物または複合材料まで通読するためなどのPHAの光学的価値を妨げないように配置された、例えば、金属化ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アルミ箔を含むことができる。
【0042】
パッケージの最内層はシーラントであることができ、最外層の溶融温度より実質的に下の温度でそれ自体にまたは他のフィルムもしくは基材に接合する(密封する)ことができるポリマー層もしくはコーティングであることができる。シーラントはよく知られており、E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont)(Wilmington,Delaware)から商業的に入手可能であることができる。基材は、箔、紙または不織繊維材料を含むことができる。
【0043】
多層フィルムは、例えば、共押出などの当業者に周知の任意の方法によって製造することができ、1つ以上の他の層または基材上へ積層することができる。他の好適な変換技術は、例えば、ブローンフィルム(共)押出および押出コーティングである。
【0044】
フィルムは、容器などの包装材料、パウチおよび蓋、風船、ラベル、不正開封防止バンド、またはフィラメント、テープおよび革ひもなどのエンジニアリング品を製造するために使用することができる。
【0045】
本開示は、例としてフィルムを使用し、フィルムより厚いシートにも適用できる。
【0046】
物品は、造形品または成形品などの他の形態にあることができる。容器および包装材料は、真空または加圧成形によってシートから製造されたトレイ、コップ、キャップ、ボウル、または蓋をはじめとする様々な形状のものであることができる。他の形状には、未延伸シートの深絞り(すなわち、熱成形)によって、押出ブロー成形もしくは二軸延伸ブローイングパリソン(射出延伸ブロー成形)によって、射出成形、圧縮成形もしくは他の成形法によって製造されたもの;異形材押出品;カートン;スクイーズチューブ、パウチまたはボトル;容器の部品;ワインなどの液体、医療用流体、粉ミルクを小分けする硬質容器内のバッグまたはパウチ;クラムシェル、およびブリスターパックが含まれる。
【0047】
熱成形品は、当業者に公知の任意の方法によって回収することができる。
【0048】
フィルムもしくはシートは、トレイ、コップ、缶、バケツ、タブ、押出キャストチューブ、クラムシェル、皿、プレート、蓋、箱、またはボウルなどの凹面表面を製造するために熱成形することができよう。熱成形品は、蓋としての機能を果たす熱成形品にシールされるほぼ平面のフィルム(蓋材用フィルム)などの、追加の要素と組み合わせられてもよい。
【0049】
包装することができる製品には、飲料(例えば、炭酸飲料、オレンジジュース、アップルジュース、グレープジュース、他のフルーツジュースおよびミルク)、固形食品(例えば、肉類、チーズ、魚、鶏肉、ナッツ、コーヒー、アップルソースまたは他のソース、シチュー、乾燥果物、食品ペースト、スープおよびスープ濃縮物ならびに他の食用品目)、スパイス、香辛料(例えば、ケチャップ、マスタード、およびマヨネーズ)、ペットフード、化粧品、パーソナルケア製品(例えば、練り歯磨き、髭剃りクリーム、石鹸、シャンプー、ローションなど)、医薬品、香料、電子部品、工業化学薬品または家庭化学薬品(例えば、洗濯洗剤、柔軟剤)、農薬、医療機器および装置、薬液、燃料、ならびに生物学的物質を含む食品および非食品品目が含まれる。
【0050】
フィルムはまた、分解性縫合糸として用いるためのスリットフィルム繊維を提供するために切断されて狭いテープにされ、さらに延伸されてもよい。
【0051】
以下の実施例は例示的であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0052】
実施例は、熱成形コップの製造で本発明を例示する。
【0053】
原材料
10〜55ppmのMEHQ(モノメチルエーテルヒドロキノン)で重合抑制された、n−ブチルアクリレート、Dow Chemical(Midland,Michigan)、試薬グレード;10〜55ppmのMEHQで重合抑制された、イソブチルアクリレート(BASF)、試薬グレード;10〜20ppmのMEHQで重合抑制された、Aldrich(Milwaukee,Wisconsin)によって製造された、エチルアクリレート、99%純度;75〜100ppmのMEHQで重合抑制された、グリシジルメタクリレート(Dow Chemical)、試薬グレード;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184;光開始剤;Ciba Specialty Chemical Company(Tarrytown,New York));ならびにPLA2002Dペレット(NatureWorks LLC(Minnetonka,Minnesota)、溶融粘度約1500Pa・s(190℃および100s-1);Tg、55℃を有する)。
【0054】
方法
UV源は、「365nm」と標示された8ワット電球のModel UVELMS 8 Unit(Entela(Dover,Ohio))であった。
【0055】
回分式ブレンダーは、装置を目標溶融温度に予熱し、次にローターを作動させ、速度計をスタートさせ、約55gの原料を約15秒間内に装入し、蓋を閉め、そして5分間混合することによって運転される、125rpmでローラー翼ローターおよび55g混合室を用いるHaake Rheocord 90であった。完了したとき溶融マスを冷たい容器上へ排出し、周囲温度まで冷却し、容器詰めした。
【0056】
耐衝撃性改良剤を、10g回分サイズのモノマー溶液をベースとして重合させた。所望のポリマーのパーセント組成に基づいて、モノマーを20mlのシンチレーションバイアルに量り取った。0.31g(最終3重量%)の量と同じであるIrgacure 184を10gのモノマー溶液に加え、Irgacure 184が溶解するまで溶液を旋回させた。FEP(フッ素化エチレンプロピレン)フィルムの切断部分を折り畳み、ボートを構成した。側面をステープルで結び付けた。ボートを5.5インチ直径のPyrexペトリ皿へ入れ、モノマー溶液をボートに注ぎ込んだ。蓋をペトリ皿一面に置き、ダクトテープを使用して蓋をサンプル一面にしっかりと押し下げた。ペトリ皿を小さい実験室ジャッキ上に置き、このジャッキをEntela 8ワット365nm紫外光下に置いた。サンプルを、それがランプの底部から1.5インチであるようにジャッキで上げた。ランプを15時間の期間つけてモノマー溶液を重合させた。15時間のソーク時間後に、硬化したポリマーをFEPボートから取り出し、その後のPLA組成物に使用した。重合抑制剤がモノマーから除去された場合、硬化時間は大幅に削減されたであろう。
【0057】
個々のポリマーとのPLAブレンドをFarrel 2ロールミルで調製した。このミルは、長さがそれぞれ6インチである3インチ直径のロールを有した。フロントロールを125℃に、バックロールを165℃に設定した。75gの回分サイズを用い、全処理時間は7分であった。配合は標準技術に従って行った。このミルは、第1ロール(フロントロール)について37RPMおよび第2ロール(バックロール)について26.4RPMの速度をもたらす、1.4:1の固定ギア比を有した。実施例Aならびに比較例A、BおよびCは、Haakeミキサーで調製した。残りのサンプルは、ロールミルで製造した。ポリマーの物理的特性は、異なる調製方法を用いることによって影響を受けるようには見えなかった。
【0058】
伸びは、0.18インチ(0.46cm)での「w」、0.5インチ(1.27cm)での「L」、および1.5インチ(0.38cm)での「L0」のミクロ引張試験片ASTM D−638タイプIV形状を使用してInstron Series IX機器(Instron Corp(Norwood,MA))で行った。5つのサンプルを試験し、はるかにより低い伸びを有するいかなるサンプルも廃棄した。
【0059】
曇り度は、Gardner「Haze Gard plus」を用いて評価した(ASTM D1003 92年改訂)。曇り度は「全曇り度」として報告した。改質PLAを190℃で0.03インチ厚さのプラークへ圧縮成形し、7分の期間にわたってゆっくり冷却して非晶質プラークを生成した。曇り度データは対応する厚さと共に報告する。
【0060】
実施例A
液体nBA(n−ブチルアクリレート;9g)を、100mlネジ蓋付きガラスジャー中でGMA(グリシジルメタクリレート;1g)と手動混合し、引き続きこれに3%のIrgacure 184(0.31g)を加えた。上に開示されたように生成した(10gのモノマー溶液を基準にして)3%のIrgacure入りの、n−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート溶液を、上に開示された5.5インチ直径のガラスペトリ(Petri)皿中にある、FEPから折り畳まれた上に開示されたボートに注ぎ込んだ。この皿を上方から、1.5インチ離してUV源に15時間露光して、流体ではない、かつ、非常に粘着性のあるポリ(90%ブチルアクリレート/10%グリシジルメタクリレート)を生成した。
【0061】
PLA2002D(52.3g)を、5分間205℃のメルト温度でポリ(90%ブチルアクリレート/10%グリシジルメタクリレート)(2.7g)と混合してPLA組成物を生成し、それを23℃に冷却した。冷却したPLA組成物を、30ミル厚さの3インチ×4インチ型板を用いて190℃で圧縮成形した。滑面を得るために改質PLAサンプルを2つのFEPシート、10ミル厚さの間に挟んだ。型板をFEPサンドイッチおよびPLAサンプルと一緒に、2つの8インチ×8インチ×1/4インチ厚さの鋼板の間に置き、それらを順繰りに、圧盤を190℃の温度に予熱した実験室水圧プレス中に置いた。わずかな圧力がサンプルアセンブリにかけられるように圧盤を上昇させた。この位置を4分の期間保ち、その時点で25トンの力を1分間圧盤にかけた。冷却水を、圧盤を通して循環させてそれらを7分の期間にわたって25℃に冷却した。改質PLAサンプルは、サンプル型板から取り外され、制御したゆっくりした冷却期間によって決定されるように非晶質であった。冷却したプラークを、ミクロ引張試験片へダイカットした(ASTM D−638)。
【0062】
破断伸びは、周囲条件(約25℃)で1インチ/分でドッグボーンのInstron引張りによって測定した。全曇り度は、シートサンプルを試験することによって測定した。
【0063】
比較例A
改良剤は、100%のnBAからスタートしたことを除いて実施例Aと同様に製造された、ポリブチルアクリレートであった。10%の改良剤と90%のPLA2002Dとのブレンドを実施例Aと同様に調製し、同じように試験した。
【0064】
比較例B
改良剤は、100%のエチルアクリレートからスタートしたことを除いて実施例Aと同様に製造された、ポリエチルアクリレートであった。5%の改良剤とPLA2002Dとのブレンドを調製し、試験した。
【0065】
実施例B
改良剤は、ポリエチルアクリレート−グリシジルメタクリレートであり、この実施例は上記のようなロールミルで調製した。この改良剤組成物は、95%のエチルアクリレートおよび5%のGMAであった。5%の改良剤と95%のPLA2002Dとのブレンドを調製し、試験した。
【0066】
実施例C
改良剤は、90%のエチルアクリレートおよび10%のGMAを使用したことを除いて実施例Bと同様に製造された、ポリ(エチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)であった。この改良剤は−21℃のTgを有し、実施例Aのそれよりも粘着性が少なかった。5%の改良剤と95%のPLA2002Dとのブレンドを調製し、試験した。
【0067】
実施例D
改良剤は、90%のエチルアクリレートおよび10%のGMAを使用したことを除いて実施例Bと同様に製造された、ポリ(エチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)であった。この改良剤は−21℃のTgを有し、実施例Aのそれよりも粘着性が少なかった。10%の改良剤と90%のPLA2002Dとのブレンドを調製し、試験した。
【0068】
比較例C
改良剤は、100%のイソブチルアクリレートを使用したことを除いて実施例Aと同様に製造された、ポリイソブチルアクリレートであった。10%の改良剤と90%のPLA2002Dとのブレンドを調製し、試験した。
【0069】
実施例E
改良剤は、90%のイソブチルアクリレートおよび5%のGMAを使用したことを除いて実施例Bと同様に製造された、ポリ(イソブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)であった。この改良剤は−40℃のTgを有した。5%の改良剤と95%のPLA2002Dとのブレンドを調製し、試験した。
【0070】
実施例F
改良剤は、90%のイソブチルアクリレートおよび10%のGMAを使用したことを除いて実施例Bと同様に製造された、ポリ(イソブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)であった。この改良剤は−34℃のTgを有した。5%の改良剤と95%のPLA2002Dとのブレンドを調製し、試験した。
【0071】
実施例G
PLA2002Dとの10%のブレンドを除いて実施例Fと同じ改良剤を製造した。
【0072】
比較例D
改良剤は、高圧反応器で標準技術に従って製造された、エチレン(40%)、メチルアクリレート(55%)、およびグリシジルメタクリレート(5%)のコポリマーであった。5%の改良剤と95%のPLA2002Dとのブレンドを実施例Bと同様に調製し、試験した。
【0073】
比較例E
PLA2002Dとの10%のブレンドを除いて比較例Fと同じ改良剤を製造した。
【0074】
比較例F
改良剤は、高圧反応器で標準技術に従って製造された、エチレン(38%)、メチルアクリレート(55%)、およびグリシジルメタクリレート(7%)のコポリマーであった。5%の改良剤と95%のPLA2002Dとのブレンドを実施例Bと同様に調製し、試験した。
【0075】
試験の結果を次の表1に示し、表1は、全ての発明実施例が比較例より低い曇り度(より良好な光学的無色透明性)および高い伸びを有したことを示す。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と、耐衝撃性改良剤とを含むかまたはそれらから製造された組成物であって、前記組成物は核剤を含んでいてもよく、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせに由来する繰り返し単位を含み;
前記改良剤が、前記組成物の重量を基準にして、約0.1〜約50%で前記組成物中に存在し、そしてアルキルアクリレートおよびコモノマーに由来する繰り返し単位を含み;
前記アルキルが基当たり1〜約10個の炭素原子を含むことができ;そして
前記コモノマーが(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、一酸化炭素、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む
組成物。
【請求項2】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が5個以下の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸に由来する繰り返し単位を含み;
前記改良剤が約0.5%〜約30%で前記組成物中に存在し;
前記アルキルグループがエチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、第二ブチルアクリレート、アミルアクリレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み;前記コモノマーがグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、またはそれらの組み合わせを含み;そして
前記改良剤の酸部分、またはその一部が金属イオンで中和されていてもよい
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)がグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、またはそれらの2つ以上の組み合わせに由来する繰り返し単位を含み;
前記改良剤が約0.5〜約30%で前記組成物中に存在し、そして前記コモノマーに由来する繰り返し単位を含み;
前記アルキルグループがエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み;そして
前記核剤が脂肪酸、脂肪酸誘導体、ポリアセタール、ポリアセタールコポリマー、またはベースポリ(ヒドロキシアルカン酸)の融点より30℃以上高い融点を有するポリ(ヒドロキシアルカン酸)異性体もしくはコポリマーを含む
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、酸、エステル、アミド、もしくはアルコール、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む0.01〜4%の前記核剤を含み;
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)がポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ−ブチレート−バレレート)コポリマー、グリコール酸と乳酸、ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸とのコポリマー、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み;
前記改良剤が約0.5〜約20%で前記組成物中に存在し;
前記アルキルグループがエチルアクリレートまたはn−ブチルアクリレートを含み;そして
前記コモノマーがグリシジルメタクリレートである
請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)がポリ(乳酸)を含み、前記改良剤がポリ(ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、そして前記核剤がステアリン酸、ベヘン酸、ベヘンアミド、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記改良剤がポリ(ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記改良剤がポリ(エチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記改良剤がポリ(イソブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載されたようなものである組成物を含むかまたはそれから製造された物品。
【請求項10】
フィルム、シート、繊維、フィラメント、蓋材用フィルム、またはそれらの2つ以上の組み合わせである請求項9に記載の物品。
【請求項11】
トレイ、コップ、缶、バケツ、タブ、箱、ボウル、蓋、延伸チューブ、押出キャストチューブ、ブローンチューブ、クラムシェル、皿、プレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせである請求項9に記載の物品。
【請求項12】
組成物を生成するのに有効な条件下にポリ(ヒドロキシアルカン酸)を耐衝撃性改良剤と接触させる工程と、前記組成物を熱成形または射出成形して物品を製造する工程とを含む方法であって、前記組成物が請求項1〜8のいずれか一項に記載されたようなものであり、そして前記物品が30ミル厚さ当たり約2%曇り度〜30ミル厚さ当たり約20%曇り度の曇り度を有する方法。

【公表番号】特表2011−505433(P2011−505433A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532223(P2010−532223)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/081663
【国際公開番号】WO2009/058920
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】