説明

ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)インヒビターとしてのイミダゾロピリミジン及びイミダゾロトリアジン誘導体

本発明は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビターであり、したがって、癌、炎症性疾患、再潅流傷害、虚血性症状、脳卒中、腎不全、心血管系疾患、心血管系疾患以外の脈管系疾患、糖尿病、神経変性疾患、レトロウイルス感染、網膜傷害、皮膚老化、又はUV誘発皮膚傷害の治療、及び癌治療のための化学的又は放射線増感剤として有用である、式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩若しくは互変異性体に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(ADP−リボース)シンターゼ及びポリ(ADP−リボシル)トランスフェラーゼとして以前に知られていた酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビターである、イミダゾロピラジン及びイミダゾロトリアジン誘導体に関する。本発明化合物は、DNA修復経路に特異的な欠陥をもつ腫瘍の単一治療剤として、また、抗癌剤及び放射線療法などのある種のDNA損傷剤のエンハンサーとして有用である。さらに、本発明化合物は、細胞壊死(脳卒中と心筋梗塞における)の低下、炎症と組織傷害のダウンレギュレーション、レトロウイルス感染の治療、及び化学療法毒性に対する予防のために有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、PARP触媒ドメインを含む18種のタンパク質のスーパーファミリーを構成する(Bioessays(2004)26:1148)。これらのタンパク質は、PARP−1、PARP−2、PARP−3、タンキラーゼ−1、タンキラーゼ−2、ヴォウルトPARP、及びTiPARPである。基本メンバーであるPARP−1は、3つの主要ドメイン、すなわち、2つの亜鉛フィンガーを含むアミノ(N)−末端DNA結合ドメイン(DBD)、自己修飾ドメイン、及びカルボキシ(C)−末端触媒ドメインから構成される。
【0003】
PARPは、NADをニコチンアミドとADP−リボースに切断し、標的タンパク質上に長鎖分枝ADP−リボースポリマーを形成する、核及び細胞質酵素であり、トポイソメラーゼ、ヒストン、及びPARPそれ自体を含む(Biochem.Biophys.Res.Commun.(1998)245:1−10)。
【0004】
ポリ(ADP−リボシル)化は、DNA修復、遺伝子転写、細胞周期進行、細胞死、クロマチン機能、及びゲノム安定性を含む数種の生物プロセスに関与している。
【0005】
これまでの大多数のPARPインヒビターは、該酵素のニコチンアミド結合ドメインと相互作用し、NADに関して競合的インヒビターとして挙動する(Expert Opin.Ther.Patents(2004)14:1531−1551)。ベンズアミド及び誘導体など、ニコチンアミドの構造類似体は、PARPインヒビターとして検討すべき最初の化合物の中にあった。しかし、これらの分子は阻害活性が弱く、PARP阻害とは無関係の他の作用を有する。したがって、PARP酵素の強力なインヒビターを提供する必要がある。
【0006】
Biorg.Med.Chem.Lett.(1997)7:89−94は、ホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビターとしてのフェニル置換イミダゾトリアジノンについて記載している。
【0007】
この度、驚くべきことに、本発明のイミダゾロピラジン及びイミダゾロトリアジン誘導体が、PARPの活性を高レベルで阻害することが見出された。
【発明の概要】
【0008】
本発明化合物は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害に有用である。それらはPARP−1及び/又はPARP−2のインヒビターとして特に有用である。本発明は、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、
aは、0又は1であり;
bは、0、1、2、又は3であり;
cは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
dは、0又は1であり;
eは、0又は1であり;
fは、0又は1であり;
gは、0又は1であり;
hは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
iは、0又は1であり;
jは、0又は1であり;
【0011】
Xは、N又はCHであり;
Yは、C6−10アリール、O、N、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員の不飽和ヘテロ環、又は1、2、3、若しくは4個の窒素原子を含む、6員の不飽和ヘテロ環であり;
Zは、C又はSOであり;
【0012】
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、又はハロC1−6アルコキシであり;
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、又はハロC1−6アルコキシであり;
は、水素又はC1−6アルキルであり:
は、水素又はC1−6アルキルであり;
【0013】
は、水素、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、ハロゲン、C1−6アルキル、C2−10アルケニル、ハロC1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、ニトロ、又は環(該環はC6−10アリール;C6−10アリールオキシ;C6−10アリールカルボニル;C3−10シクロアルキル;アゼチジニル;1、2、若しくは3個のN原子及び0個若しくは1個のO原子を含む、5、6、若しくは7員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環;N、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員のヘテロ芳香環;1、2、若しくは3個の窒素原子を含む、6員のヘテロ芳香環;又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の不飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環であり;その環のいずれもがA−(CHから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい)であり;
【0014】
Aは、それぞれ独立して、単結合、O、C=O、(C=O)NR、NR(C=O)、(C=O)O、O(C=O)、(C=S)NR、NR、S(O)、又はNR(S(O))であり;
qは、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり;
rは、0、1、又は2であり;
【0015】
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、C1−6アルキル、C2−10アルケニル、ハロC1−6アルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、又は環(該環はC3−10シクロアルキル;C6−10アリール;アゼチジニル;1、2、若しくは3個のN原子及び0個若しくは1個のO原子を含む、5、6、若しくは7員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環;N、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員のヘテロ芳香環;1、2、若しくは3個の窒素原子を含む、6員のヘテロ芳香環;又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の不飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環であり;その環のいずれもがRから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい)であり;
【0016】
は、水素又はRであり;及び
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−10アルケニル、ハロC1−6アルキル、ハロC1−6アルコキシ、−O(C=O)C1−6アルキル、−(C=O)OC1−6アルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリール;N、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員のヘテロ芳香環;又は1、2、若しくは3個の窒素原子を含む6員のヘテロ芳香環である]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体を提供する。
【0017】
一実施態様において:
Aは、それぞれ独立して、単結合、O、C=O、(C=O)NR、NR(C=O)、(C=O)O、O(C=O)、(C=S)NR、NR、又はS(O)であり;
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、C1−6アルキル、C2−10アルケニル、ハロC1−6アルキル、又は環(該環は、C6−10アリール;アゼチジニル;1、2、若しくは3個のN原子及び0個又は1個のO原子を含む、5、6、若しくは7員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環;N、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員のヘテロ芳香環;1、2、若しくは3個の窒素原子を含む、6員のヘテロ芳香環;又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の不飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環であり;その環のいずれもがRから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい)である。
【0018】
一実施態様において、aは1である。
一実施態様において、bは0又は1である。
一実施態様において、cは0である。
一実施態様において、dは0である。別の実施態様において、dは1である。
一実施態様において、eは0である。別の実施態様において、eは1である。
一実施態様において、fは0である。
一実施態様において、gは0である。
一実施態様において、hは0、1、又は2である。別の実施態様において、hは0である。
一実施態様において、iは0である。
一実施態様において、XはNである。
一実施態様において、jは1である。
一実施態様において、a及びjのそれぞれは1である。
【0019】
一実施態様において、Yは、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、フラニル、又はチエニルである。特定のY基はフェニルである。
一実施態様において、Rはそれぞれ独立して、ハロC1−6アルキル又はハロゲンである。
特定のR基は、ハロゲン、例えば、塩素又は臭素である。
一実施態様において、Rは、ハロC1−6アルキル又はハロゲンである。
特定のR基は、ハロゲン、例えば、フッ素である。
一実施態様において、Rは、水素又はC1−2アルキルである。特定のR基はメチルである。
【0020】
一実施態様において、Rは、水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、又は環(該環はC6−10アリール、アゼチジニル、又は1、2、若しくは3個のN原子及び0個若しくは1個のO原子を含む、5、6、若しくは7員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環であり、その環のいずれもがA−(CHから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい)である。
一実施態様において、Rは水素ではない。
【0021】
一実施態様において、Rは、アゼチジニル、1、2、若しくは3個のN原子及び0個又は1個のO原子を含む、5員若しくは6員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環、又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環であり;A−(CHから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0022】
一実施態様において、Rは、ジアゼパニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ジアゾニアスピロ[3.5]ノナニル、オクタヒドロピロロピロリル、ジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、又はテトラヒドロトリアゾロピラジニルであり;A−(CHから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0023】
一実施態様において、Rが環である場合、該環はA(CHから独立して選択される1、2、又は3個の基により置換されていてもよい。別の実施態様において、該R環は、置換されていない。
一実施態様において、Aは単結合又はNR(SO)である。別の実施態様において、Aは単結合である。
【0024】
特定のA基は、単結合及びN(シクロプロピル)SOである。
一実施態様において、qは、0、1、又は2である。別の実施態様において、qは0である。
一実施態様において、Rは水素、C1−6アルキル又はC3−7シクロアルキルである。
一実施態様において、Rは水素である。別の実施態様において、RはC3−6シクロアルキル、特に、シクロプロピルである。
【0025】
一実施態様において、Rが環である場合、該環はRから独立して選択される1、2、又は3個の基により置換されていてもよい。
一実施態様において、Rは、ヒドロキシ、C1−6アルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、又は環であり、該環は、ピリミジニル、イソキノリニル、ピロリジニル、トリアゾリル、又はフェニルであり、そのいずれの環もC1−6アルキル、ハロゲン、又はハロC1−6アルキルから独立して選択される1、2、又は3個の基により置換されていてもよい。
一実施態様において、Rはそれぞれ独立して、C1−6アルキル又はC6−10アリールである。
【0026】
特定のR基は、ピリミジニル、メチル、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、イソキノリニル、ピロリジニル、トリアゾリル、フェニル、又はトリフルオロメチルを包含する。
具体的なR基は、4−ピリミジン−2−イル、メチル、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、イソキノリン−3−イル、イソキノリン−1−イル、ピロリジン−1−イル、1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル、フェニル、又はトリフルオロメチルを包含する。
【0027】
特定のR基は、水素及びジアゼパニルである。さらに特定のR基は、ピリミジニルジアゼパニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ジアゾニアスピロ[3.5]ノナニル、オクタヒドロピロロ[3,4−b]ピロリル、オクタヒドロピロロ[3,2−b]ピロリル、ジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、メチルジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、(ヒドロキシメチル)オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロリル、オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロリル、ピロリジニル、[(ジメチルアミノ)エチル](オキソ)ジアゼパニル、イソキノリニルピペラジニル、ピロリジニルピペリジニル、トリアゾリルピペリジニル、テトラゾリルピペリジニル、[(シクロプロピル)(フェニルスルホニル)アミノ]ピペリジニル、及び(トリフルオロメチル)テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジニルを包含する。
【0028】
具体的なR基は、水素及び1,4−ジアゼパン−1−イルである。さらに具体的R基は、4−ピリミジン−2−イル−1,4−ジアゼパン−1−イル、2−アザ−8−アゾニアスピロ[4.5]デカン−2−イル、7−アザ−2−アゾニアスピロ[3.5]ノナン−7−イル、7−アザ−1−アゾニアスピロ[3.5]ノナン−7−イル、オクタヒドロピロロ[3,4−b]ピロール−l−イル、オクタヒドロピロロ[3,2−b]ピロール−4−イル、(1S,4S)−5−アザ−2−アゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル、2−メチル−5−アザ−2−アゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル、1−(ヒドロキシメチル)オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−5−イル、オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−5−イル、8−アザ−2−アゾニアスピロ[4.5]デカン−8−イル、ピロリジン−1−イル、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−イル、4−イソキノリン−3−イルピペラジン−1−イル、4−イソキノリン−1−イルピペラジン−1−イル、4−ピロリジン−1−イルピペリジン−1−イル、4−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル、4−(1H−テトラゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル、4−[(シクロプロピル)(フェニルスルホニル)アミノ]ピペリジン−1−イル、及び3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7−イルを包含する。
【0029】
本発明はまた、式(II):
【0030】
【化2】

【0031】
[式中、a、b、d、e、h、j、R、R、R、R、及びXは、上記定義のとおりである]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体を提供する。
【0032】
本発明はまた、式(III):
【0033】
【化3】

【0034】
[式中、
a、b、j、q、A、R、R、R、X、及びYは、上記定義のとおりであり;
tは、0、1、2、又は3であり;
tが0の場合、BはCHであり;
tが1、2、又は3である場合、BはCH、NH、又はOであり;
wは、0、1、2、又は3である]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体を提供する。
【0035】
一実施態様において、tは3である。
一実施態様において、BはNHである。
一実施態様において、wは0又は1である。
【0036】
本発明はまた、式(IV):
【0037】
【化4】

【0038】
[式中、
a、b、j、q、A、R、R、R、及びXは、上記定義のとおりであり;
wは、0、1、2、又は3であり;
Cは、アゼチジニル、1、2、若しくは3個のN原子及び0個若しくは1個のO原子を含む、5員若しくは6員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環、又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環である]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体を提供する。
【0039】
疑いを避けるために、A−(CHは、置換可能な位置でB含有環に結合していてもよい。式(IV)の化合物のC環についても同様である。
式(II)、(III)、及び(IV)に関する好適な実体は、式(I)に必要な変更を加えて、先に定義したとおりである。
一実施態様において、wは0又は1である。
【0040】
一実施態様において、Cは、ジアゼパニル、ジアゾニアスピロデカニル、ジアゾニアスピロノナニル、オクタヒドロピロロピロリル、ジアゾニアビシクロヘプタニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、又はテトラヒドロトリアゾロピラジニルである。
一実施態様において、Cは、ジアゼパニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ジアゾニアスピロ[3.5]ノナニル、オクタヒドロピロロピロリル、ジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、又はテトラヒドロトリアゾロピラジニルである。
【0041】
また、本発明はその範囲内に、上記式(I)の化合物のN−オキシドを包含する。一般に、かかるN−オキシドは任意の利用可能な窒素原子上で形成してもよい。該N−オキシドは常套の手段により、例えば、含水アルミナの存在下に式(I)の化合物とオキソンとの反応により形成してもよい。
【0042】
本発明はその範囲内に、上記式(I)の化合物のプロドラッグを包含する。一般に、かかるプロドラッグは、インビボで式(I)で示される所望の化合物に容易に変換され得る式(I)の化合物の機能的誘導体である。適切なプロドラッグ誘導体の選択と調製のための常套的な手法は、例えば、“Design of Prodrugs(プロドラッグの設計)”,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載されている。
【0043】
プロドラッグとは、生物学的に活性な物質(“親薬物”又は“親分子”)の薬理学的に不活性な誘導体であってもよく、このプロドラッグは活性な薬物を放出するために、体内での変換を必要とし、親の薬物分子よりも改善された送達性を有するものである。インビボでの変換は、例えば、カルボン酸、リン酸、若しくは硫酸エステルの化学的若しくは酵素的水解、又は影響を受け易い官能基の還元若しくは酸化など、一部の代謝過程の結果としてのものであってもよい。
【0044】
本発明はその範囲内に、式(I)の化合物及びその塩の溶媒和物、例えば、水和物を包含する。
【0045】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸、及びキラル面を有してもよく(記載例:E.L.Eliel and S.H. Wilen,Stereochemistry of Carbon Compounds(炭素化合物の立体化学),John Wiley & Sons,New York,1994,pages 1119−1190)、ラセミ体、ラセミ混合物として、また個々のジアステレオマーとして存在し、すべての可能な異性体及びその混合物と共に、光学異性体を含め、かかる立体異性体のすべてが本発明に包含される。
【0046】
本明細書に開示した化合物は互変異性体として存在可能であり、仮に一方の互変異性体構造のみが描出されているとしても、両方の互変異性体の形態が本発明の範囲に包含されるものとする。例えば、式(I)で示される化合物は、互変異性化して以下の構造の化合物としてもよい。
【0047】
【化5】

【0048】
該化合物は異なる異性体の形態で存在してもよく、そのすべてが本発明に包含される。
該化合物は多数の異なる多形の形態で存在してもよい。
【0049】
いずれかの変数(例えば、R及びRなど)が、いずれかの構成要件中に一度ならず出現する場合、各出現に際しての定義は、その出現ごとに独立したものである。また、置換基と変数の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。置換基から環系に引いた線は、そこに示した結合が置換可能な任意の環原子に結合してもよいことを表す。
【0050】
本発明化合物上の置換基と置換パターンは、当業者が選択し、化学的に安定で、また容易に入手し得る出発物質から、当該技術分野における技術上既知の方法並びに下記に提示する方法により容易に合成し得る化合物を提供してもよいものであると理解される。置換基がそれ自体1個を超える基により置換されている場合、安定な構造が結果として生じる限り、それら複数の基は同じ炭素上にあってもよいし、異なる炭素上にあってもよいと理解される。“置換されていてもよい”という文言は、“未置換であるか、又は1個以上の置換基により置換されている”という文言と同等であると解釈すべきであり、そのような場合、好適な実施態様では、0ないし3個の置換基を有する。さらに特定すると、0ないし2個の置換基が存在する。飽和、部分的飽和、又は不飽和のヘテロ環上の置換基は、任意の置換可能な位置に付着してもよい。
【0051】
本明細書にて使用する場合、「アルキル」は特定数の炭素原子を有する分枝、直鎖及び環状の飽和脂肪族炭化水素基を含むものとする。例えば、「C1−6アルキル」は、直線状、分枝状、又は環状の配列の1、2、3、4、5、又は6個の炭素を有する基を包含すると定義する。例えば、「C1−6アルキル」は、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルなどである。好適なアルキル基はメチル及びエチルである。用語「シクロアルキル」は特定数の炭素原子を有する単環式、二環式、又は多環式の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C3−7シクロアルキル」は、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシルなどを包含する。本発明の一実施態様において、「シクロアルキル」という用語は直前に記載した基を含み、さらに単環式不飽和の脂肪族炭化水素基を含む。例えば、本実施態様に定義した「シクロアルキル」は、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロブテニル、7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルなどを包含する。好適なシクロアルキル基はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルである。
【0052】
本明細書にて使用する場合、「C2−6アルケニル」という用語は、2ないし6個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む直鎖又は分枝の非芳香族炭化水素基をいう。好ましくは、1つの炭素−炭素二重結合が存在し、また4つまでの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在してもよい。アルケニル基は、エテニル、プロペニル、ブテニル、及び2−メチルブテニルを含む。好適なアルケニル基は、エテニル及びプロペニルである。
【0053】
本明細書にて使用する場合、「C2−6アルキニル」という用語は、2ないし6個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む直鎖又は分枝の炭化水素基をいう。3個までの炭素−炭素三重結合が存在してもよい。アルキニル基はエチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニルなどを包含する。好適なアルキニル基は、エチニル及びプロピニルを含む。
【0054】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して結合する指定した炭素原子数のアルキル基を表す。したがって、「アルコキシ」は上記のアルキルの定義を包含する。適切なアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、及びシクロペンチルオキシである。好適なアルコキシ基は、メトキシ及びエトキシである。「C6−10アリールオキシ」という用語は、同様の仕方で説明してもよい。好適なかかる基はフェノキシである。
【0055】
用語「ハロC1−6アルキル」及び「ハロC1−6アルコキシ」は、1個以上(特に、1ないし3個)の水素原子がハロゲン原子、とりわけフッ素若しくは塩素原子と置換わっているC1−6アルキル又はC1−6アルコキシを意味する。好適なのは、フルオロC1−6アルキル及びフルオロC1−6アルコキシ基、特にフルオロC1−3アルキル、及びC1−3アルコキシ基、例えば、CF、CHF、CHF、CHCHF、CHCHF、CHCF、OCF、OCHF、OCHF、OCHCHF、OCHCHF、又はOCHCF、及びとりわけ、CF、OCF、及びOCHFである。
【0056】
本明細書にて使用する場合、用語「ヒドロキシC1−6アルキル」は、1個以上(特に、1ないし3個)の水素原子がヒドロキシ基と置換わっているC1−6アルキルを意味する。好適なのは、CHOH、CHCHOH、及びCHOHCHである。
【0057】
本明細書にて使用する場合、用語「C1−6アルキルカルボニル」又は「C1−6アルコキシカルボニル」は、それぞれカルボニル(C=O)基を介して結合するC1−6アルキル又はC−Cアルコキシ基を意味する。C1−6アルキルカルボニル基の適切な例は、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、及びtert−ブチルカルボニルである。C1−6アルコキシカルボニルの例は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、及びtert−ブトキシカルボニルである。「C6−10アリールカルボニル」という用語は、同様に説明してもよく、この基の例はベンゾイルである。
【0058】
本明細書にて使用する場合、「C6−10アリール」とは、6ないし10個の原子の任意の安定な単環式又は二環式炭素環を意味するものとし、その場合、少なくとも1つの環は芳香環である。かかるアリール要素の例は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、及びテトラヒドロベンゾ[7]アヌレンである。好適なアリール基は、フェニル又はナフチル、とりわけフェニルである。
【0059】
本発明の特定のヘテロ環の例は、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフランジオニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾロニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、エポキシジル、フリル、フラザニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリニル、イソオキサゾリニル、オキセタニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、テトラジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、キノリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、ジヒドロイソクロメニル、ジヒドロクロメニル、ジヒドロイミダゾロニル、ジヒドロトリアゾロニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、ジヒドロイミダゾピラジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリジノニル、イミダゾロニル、イソインドリノニル、オクタヒドロキノリジニル、オクタヒドロイソインドリル、イミダゾピリジニル、アザビシクロヘプタニル、クロメノニル、トリアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾオキサジニル、チアゾロトリアゾリル、アゾニアビシクロヘプタニル、アゾニアビシクロオクタニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、ジヒドロキナゾリニル、ジヒドロフタラジニル、ベンズイソキサゾリル、テトラヒドロナフチリジニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ジヒドロベンゾチアゾリル、イミダゾチアゾリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンゾチエニル、ヘキサヒドロナフチリジニル、テトラヒドロイミダゾピリジニル、テトラヒドロイミダゾピラジニル、ピロロピリジニル、ジアゼパニル、及びそのN−オキシドである。
【0060】
さらなる特定のヘテロ環は、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ジアゾニアスピロ[3.5]ノナニル、オクタヒドロピロロピロリル、ジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、テトラヒドロトリアゾロピラジニル、オクタヒドロインドリジニル、1’2’−ジヒドロスピロシクロヘキサン−1,3’−インドリル、アゾニアビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、ジアゾニアスピロ[4.4]ノナニル、ヘキサヒドロピロロ[3,4−b]ピロリル、オキサアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアゾニアスピロ[3.3]ヘプタニル、オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロリル、オクタヒドロピロロ[3,4−b]ピロリル、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロリル、ジヒドロインドリル、アゾニアスピロ[4.5]デカニル、ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタニル、ジアゾニアビシクロ[3.2.1]オクタニル、アゾニアビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、テトラヒドロチオフェニル、オキサアゾニアスピロ[4.5]デカニル、オキサゼパニル、ジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプチル、オクタヒドロピロロ[1,2−a]ピラジニル、ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジニル、ジアゾニアビシクロ[4.2.1]ノナニル、テトラヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジニル、ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジニル、ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル、ジアザスピロ[3.3]ヘプタニル、トリアザスピロ[4.5]デカニル、ヘキサヒドロピリド[4,3−b]インドリル、イミダゾリジニル、ジヒドロピロロ[3,4−d]ピリミジニル、テトラヒドロピリド[3,4−d]ピリミジニル、スピロ[アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン]ピロリジニル、テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジニル、テトラヒドロ[1,2,3]トリアゾロ[4,5−c]ピリジニル、ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジニル、アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタニル、オクタヒドロピロロピロリル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、テトラヒドロトリアゾロピラジニル、及びそのN−オキシドである。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介して、又はヘテロ原子を介して起こってもよい。
【0061】
好適な5員又は6員の飽和又は部分的飽和のヘテロ環は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラン、及びチオモルホリニルである。
好適な7員の飽和ヘテロ環はジアゼパニルである。
好適な5員のヘテロ芳香環は、チエニル、チアゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、及びピロリルである。
好適な6員のヘテロ芳香環は、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、及びピラジニルである。
【0062】
好適な7〜10員の部分的飽和又は不飽和のヘテロ環状環は、テトラヒドロキノリニル、キノリニル、インドリル、イミダゾピリジニル、ベンゾチアゾリル、キノキサリニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロインドリル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイソチアゾリル、ジヒドロイミダゾピラジニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサジアゾリル、チアゾロトリアゾリル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾオキサジニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロキナゾリニル、ジヒドロフタラジニル、インダゾリル、ベンズイソキサゾリル、テトラヒドロナフチリジニル、トリアゾロピリミジニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ナフチリジニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソクロメニル、ジヒドロクロメニル、ジヒドロベンゾチアゾリル、イミダゾチアゾリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンゾチエニル、ヘキサヒドロナフチリジニル、テトラヒドロイミダゾピリジニル、テトラヒドロイミダゾピラジニル、ピロロピリジニル、キナゾリニル、及びインドリジニルである。さらなるヘテロ環は、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ジアゾニアスピロ[3.5]ノナニル、オクタヒドロピロロピロリル、ジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、及びテトラヒドロトリアゾロピラジニルである。
【0063】
本明細書にて使用する場合、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素をいい、その内、フッ素と塩素が好適である。
本発明の範囲内の特定化合物は以下のとおりである:
トリフルオロ酢酸4−{2−フルオロ−5−[(1−オキソ−1,2−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−4−イル)メチル]ベンゾイル}−1,4−ジアゼパン−1−イウム
塩化4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−1,4−ジアゼパン−1−イウム
及びその他の薬学的に許容される塩、遊離塩基、及び互変異性体。
【0064】
本発明の範囲内のさらなる特定化合物は以下のとおりである:
トリフルオロ酢酸4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−1−ピリミジン−2−イル−1,4−ジアゼパン−1−イウム;
トリフルオロ酢酸2−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−2−アザ−8−アゾニアスピロ[4.5]デカン;
トリフルオロ酢酸7−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−7−アザ−2−アゾニアスピロ[3.5]ノナン;
トリフルオロ酢酸7−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−7−アザ−1−アゾニアスピロ[3.5]ノナン;
トリフルオロ酢酸1−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}オクタヒドロピロロ[3,4−b]ピロール−5−イウム;
トリフルオロ酢酸4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}オクタヒドロピロロ[3,2−b]ピロール−1−イウム;
トリフルオロ酢酸(1S,4S)−5−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−5−アザ−2−アゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタン;
トリフルオロ酢酸5−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−2−メチル−5−アザ−2−アゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタン;
トリフルオロ酢酸5−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−1−(ヒドロキシメチル)オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−イウム;
トリフルオロ酢酸5−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−イウム;
【0065】
トリフルオロ酢酸8−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−8−アザ−2−アゾニアスピロ[4.5]デカン;
トリフルオロ酢酸1−{2−[{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}(メチル)アミノ]エチル}ピロリジニウム;
トリフルオロ酢酸2−(4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−7−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−イル)−N,N−ジメチルエタナミニウム;
トリフルオロ酢酸4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−1−イソキノリン−3−イルピペラジン−1−イウム;
トリフルオロ酢酸4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−1−イソキノリン−1−イルピペラジン−1−イウム;
トリフルオロ酢酸1−(1−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}ピペリジン−4−イル)ピロリジニウム;
トリフルオロ酢酸1−(1−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イウム;
2,3−ジクロロ−8−(4−フルオロ−3−{[4−(1H−テトラゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル]カルボニル}ベンジル)イミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−5(6H)−オン;
N−シクロプロピル−N−(1−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}ピペリジン−4−イル)ベンゼンスルホンアミド;
トリフルオロ酢酸7−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−1−イウム;
及びその他の薬学的に許容される塩、遊離塩基、及び互変異性体。
【0066】
本発明に包含されるのは、式(I)で示される化合物の遊離塩基、並びに薬学的に許容されるその塩及び立体異性体である。本発明化合物は、アミン及び/又はN−含有へテロ環部分のN原子でプロトン化されて、塩を形成してもよい。用語「遊離塩基」は非塩形態のアミン化合物をいう。包含される薬学的に許容される塩は、本明細書に記載した具体的化合物の例示塩を包含するのみならず、式(I)の化合物の遊離形態の代表的な薬学的に許容される塩をも包含する。記載された具体的塩化合物の遊離の形態は、当該技術分野における技術上既知の方法により単離してもよい。例えば、該遊離の形態は、該塩を適当な希釈水性塩基溶液、例えば、希釈水性NaOH、炭酸カリウム、アンモニア、及び重炭酸ナトリウムなどで処理することにより再生させてもよい。該遊離の形態は、特定の物理的性質、例えば、極性溶媒における溶解性などにおいて、それぞれの塩の形態と幾分異なってもよいが、その酸及び塩基の塩は、本発明の目的上、そのそれぞれの遊離の形態と、他はともかく、医薬的には等価である。
【0067】
本発明化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含む本発明化合物から、常套の化学的方法により合成してもよい。一般に、塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによるか、又は遊離の塩基と化学当量の、若しくは過剰量の所望の塩形成無機酸若しくは有機酸と、適切な溶媒若しくは種々溶媒の組み合わせ中、反応させることにより調製する。同様に、酸性化合物の塩は、適切な無機塩基又は有機塩基と反応させることにより形成する。
【0068】
したがって、本発明化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性の当該化合物と無機、有機の酸又はポリマー酸とを反応させることにより形成される場合の本発明化合物の常套の非毒性塩を包含する。例えば、常套の非毒性塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、スルファミン酸、リン酸、亜リン酸、硝酸などから誘導される塩、並びに有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、パルミチン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、フェニル酢酸、アスパラギン酸、桂皮酸、ピルビン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、吉草酸、トリフルオロ酢酸などから調製される塩を包含する。適切なポリマー酸塩の例は、タンニン酸、カルボキシメチルセルロースなどのポリマー酸から誘導される塩である。好ましくは、本発明の薬学的に許容される塩は、1当量の式(I)で示される化合物及び1、2、又は3当量の無機酸又は有機酸を含有する。より詳しくは、本発明の薬学的に許容される塩は、トリフルオロ酢酸塩又は塩化物塩、とりわけトリフルオロ酢酸塩である。
【0069】
本発明化合物が酸性である場合、適当な「薬学的に許容される塩」は、無機塩基及び有機塩基を含む薬学的に許容される非毒性塩基から調製される塩をいう。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、亜マンガン塩、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を包含する。特に好適な塩は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムの塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩は、一級、二級、及び三級のアミン、天然産置換アミンなどの置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、リジン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、トロメタミンなどの塩を包含する。
【0070】
上記の薬学的に許容される塩、及びその他の典型的な薬学的に許容される塩の調製については、文献(Berg et al.(1977)J.Pharm.Sci.,“Pharmaceutical Salts(医薬用塩),”66:1−19)により詳しい記載がある。
【0071】
本発明化合物は、生理条件下で、当該化合物の脱プロトンされた酸性基(例えば、カルボキシル基)がアニオン性であってもよいし、またこの電荷が、プロトン化若しくはアルキル化された塩基性基(例えば、四級窒素原子など)のカチオン性電荷に対してバランスを欠く可能性があるため、潜在的に内部塩又は両性イオンであることも銘記されよう。
【0072】
本発明化合物は治療によりヒト又は動物の身体を治療する方法に使用してもよい。
本発明はポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害により改善され得る症状の治療又は予防に使用する化合物を提供する(参照例:Nature Review Drug Discovery(2005)4:421−440)。
したがって、本発明はポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害により改善され得る症状の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
【0073】
本発明はまた、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害により改善され得る症状の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
本発明のPARPインヒビターは、国際特許出願WO2005/082368号明細書に特定されている疾患の処置に有用である。
【0074】
本発明化合物は以下の炎症性疾患の処置に有用である:臓器移植拒絶反応から生じる症状、例えば、関節の慢性炎症性疾患など、例示として、関節炎、リウマチ様関節炎、骨関節症、及び上昇した骨再吸収と関連する骨の疾患;炎症性腸疾患、例えば、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バーレット症候群、及びクローン病;炎症性肺疾患、例えば、喘息、成人呼吸促迫症候群、及び慢性閉塞性気道疾患;眼の炎症性疾患、例示として、角膜ジストロフィー、トラコーマ、回旋糸状虫症、ブドウ膜炎、交感神経系眼炎、及び眼内炎;歯肉の慢性炎症性疾患、例示として、歯肉炎、及び歯周炎;結核;ハンセン氏病;腎臓の炎症性疾患、例示として、尿毒症合併症、糸球体腎炎、及び腎炎;炎症性皮膚疾患、例示として、硬化性皮膚炎、乾癬、及び湿疹;中枢神経系の炎症性疾患、例示として、神経系の慢性脱髄性疾患、多発性硬化症、AIDS−関連神経変性とアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、及びウイルス性又は自己免疫性脳炎;糖尿病合併症、限定されるものではないが、例示として、免疫複合体脈管炎、全身性紅斑性狼瘡(SLE);心臓の炎症性疾患、例えば、心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、及びアテローム性動脈硬化症;並びに有意の炎症性成分を有し得る種々の他の疾患、例示として、子癇前症、慢性肝不全、脳と脊髄外傷、及び多発性臓器機能不全症候群(MODS)(多発性臓器不全(MOF))。炎症性疾患はまた身体の全身性炎症であり、その例として、グラム陽性若しくはグラム陰性ショック、出血性若しくはアナフィラキシーショック、又は前炎症性サイトカインに応答する癌化学療法により誘発されるショック、例えば、前炎症性サイトカインと関連するショックが示される。かかるショックは例えば、癌の治療のために投与される化学療法剤により誘発される可能性がある。
【0075】
したがって、本発明は炎症性疾患の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、炎症性疾患の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0076】
本発明化合物は再潅流傷害の治療又は予防においても有用であってよい;該再潅流傷害は本来存在するエピソードから、及び外科的手技に際して生じるもの、例えば、腸再潅流傷害;心筋再潅流傷害;心肺バイパス外科手術、大動脈瘤修復手術、頚動脈血管内膜切除手術、又は出血性ショックから生じる再潅流傷害;及び心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、腸、及び角膜などの臓器の移植から生じる再酸素化傷害である。
【0077】
したがって、本発明は再潅流傷害の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、再潅流傷害の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0078】
本発明化合物は、臓器移植から生じる虚血症状などの虚血症状、例えば、安定狭心症、不安定狭心症、心筋虚血、肝臓虚血、腸間膜動脈虚血、腸虚血、危機的四肢虚血、慢性危機的四肢虚血、脳虚血、急性心虚血、虚血性腎疾患、虚血性肝疾患、虚血性網膜障害、敗血症ショック、及び中枢神経系の虚血性疾患(例えば、脳卒中又は脳虚血)などの治療又は予防にも有用であってもよい。
【0079】
したがって、本発明は虚血症状の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、虚血症状の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0080】
本発明は脳卒中の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、脳卒中の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0081】
本発明化合物はまた慢性又は急性の腎不全の治療又は予防のためにも有用であってもよい。
したがって、本発明は腎不全の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、腎不全の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0082】
本発明化合物はまた、心血管系疾患以外の脈管系疾患、例えば、末梢動脈閉塞、閉塞性血栓性脈管炎、レイノー病と現象、先端チアノーゼ、皮膚紅痛症、静脈血栓症、静脈瘤、動静脈瘻、リンパ水腫、及び脂肪性浮腫などの治療又は予防に有用であってもよい。
【0083】
したがって、本発明は心血管系の疾患以外の脈管系疾患の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、心血管系の疾患以外の脈管系疾患の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0084】
本発明化合物はまた、心血管系の疾患、例えば、慢性心不全、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、循環系ショック、心筋症、心臓移植、心筋梗塞、及び心臓不整脈(例えば、心房細動、上心室性頻脈、心房粗動、及び発作性心房性頻脈など)の治療又は予防に有用であってもよい。
【0085】
したがって、本発明は心血管系疾患の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、心血管系疾患の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0086】
本発明の化合物はまた、以下の糖尿病の治療及び予防のために有用であってもよい:I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、妊娠糖尿病、自己免疫性糖尿病、異常インスリン症、膵臓疾患による糖尿病、他の内分泌系疾患と関連する糖尿病(例えば、クッシング症候群、先端巨大症、褐色細胞種、グルカゴノーマ、原発性アルドステロン症、又はソマトスタチノーマなど)、A型インスリン耐性症候群、B型インスリン耐性症候群、脂肪組織萎縮性糖尿病、及び(3−細胞毒素が誘発する糖尿病。本発明の化合物はまた、以下の糖尿病合併症の治療及び予防のためにも有用であってもよい:糖尿病性白内障、緑内障、網膜症、腎症、(例えば、微量アルブミン尿及び進行性糖尿病性腎症)、ポリニューロパシー、脚部壊疽、アテローム性冠状動脈疾患、末梢動脈疾患、非ケトン性高血糖性昏睡、単発神経障害、自律神経性ニューロパシー、脚部潰瘍、関節の問題、及び皮膚又は粘膜の合併症(例えば、感染症、脛斑点、カンジダ感染、又は糖尿病性リポイド類壊死症など)、高脂血症、高血圧症、インスリン耐性症候群、冠状動脈疾患、網膜症、糖尿病性ニューロパシー、ポリニューロパシー、モノニューロパシー、自律神経ニューロパシー、脚部潰瘍、関節問題、真菌感染、細菌感染、及び心筋症。
【0087】
したがって、本発明は糖尿病の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、糖尿病の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0088】
本発明の化合物はまた、以下の癌の治療又は予防のために有用であってもよい:固形腫瘍、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、血管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、すい臓癌、骨癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、口腔癌、鼻癌、咽頭癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウイルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、睾丸癌、小細胞肺癌、膀胱癌、肺癌、上皮癌、皮膚癌、メラノーマ、神経芽腫、及び網膜芽腫など;血液由来癌、例えば、急性リンパ性白血病(“ALL”)、急性リンパ芽球B細胞白血病、急性リンパ芽球T細胞白血病、急性骨髄性白血病(“AML”)、急性前骨髄球性白血病(“APL”)、急性単芽球性白血病、急性赤白血病性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ球性白血病、急性未分化細胞性白血病、慢性骨髄性白血病(“CML”)、慢性リンパ性白血病(“CLL”)、毛髪細胞白血病及び多発性骨髄腫など;急性及び慢性白血病、例えば、リンパ芽球性、骨髄性、リンパ性、骨髄性白血病など;リンパ腫、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、及び真性赤血球増加症;CNS及び脳癌、例えば、グリオーマ、毛様細胞性星状細胞腫、星状細胞腫、未分化星状細胞腫、多形グリア芽細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳質上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、稀突起神経膠腫、髄膜腫、前庭神経鞘腫、アデノーマ、転移性脳腫瘍、髄膜腫、脊髄腫瘍、及び髄芽細胞腫など。
【0089】
したがって、本発明は癌の治療又は予防用の医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、癌の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0090】
本発明化合物はまた、相同性組換え(HR)依存性DNA DSB修復活性を欠損する癌の治療に使用してもよい(参照:国際特許出願WO2006/021801号明細書)。
HR依存性DNA DSB修復経路は、連続的なDNAへリックスを再形成するために、相同性メカニズムを介してDNAの二本鎖切断を修復する(Nat.Genet.(2001)27(3):247−254)。HR依存性DNA DSB修復経路の成分は、限定されるものではないが、ATM(NM−000051)、RAD51(NM−002875)、RAD51L1(NM−002877)、RAD51C(NM−002876)、RAD51L3(NM−002878)、DMCl(NM−007068)、XRCC2(NM7005431)、XRCC3(NM−005432)、RAD52(NM−002879)、RAD54L(NM−003579)、RAD54B(NM−012415)、BRCA−l(NM−007295)、BRCA−2(NM−000059)、RAD5O(NM−005732)、MREI1A(NM−005590)、NBSl(NM−002485)、ADPRT(PARP−1)、ADPRTL2(PARP−2)、CTPS、RPA、RPA1、RPA2、RPA3、XPD、ERCC1、XPF、MMS19、RAD51p、RAD51D、DMC1、XRCCR、RAD50、MRE11、NB51、WRN、BLMKU70、RU80、ATRCHK1、CHK2、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、RAD1、及びRAD9を含む。HR依存性DNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質は、EMSYなどの調節因子を含む(Cell(2003)115:523−535)。
【0091】
HR依存性DNA・DSB修復を欠く癌は、正常細胞に比較して、当該経路を経由するDNA・DSBの修復能力が低下しているか、又は消滅している一つ以上の癌細胞を含んでなるか、又はそれにより構成されていてもよい;すなわち、HR依存性DNA・DSB修復経路の活性が1つ以上の癌細胞において低下しているか、又は廃止されていてもよい。
【0092】
HR依存性DNA・DSB修復経路の1つ以上の成分の活性は、HR依存性DNA・DSB修復能を欠く癌を有する個体の1つ以上の癌細胞において、消滅していてもよい。HR依存性DNA・DSB修復経路の成分は、当該技術分野において十分な性格付けがなされており(参照例:Science(2001)291:1284−1289)、上記に列挙した成分を含んでいる。
【0093】
本発明は、HR依存性DNA・DSB修復活性を欠く癌の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、HR依存性DNA・DSB修復活性を欠く癌の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0094】
一実施態様において、該癌細胞は以下から選択される1種以上の表現型のHR依存性DNA・DSB修復活性を欠いている:ATM(NM−000051)、RAD51(NM−002875)、RAD51L1(NM−002877)、RAD51C(NM−002876)、RAD51L3(NM−002878)、DMCl(NM−007068)、XRCC2(NM7005431)、XRCC3(NM−005432)、RAD52(NM−002879)、RAD54L(NM−003579)、RAD54B(NM−012415)、BRCA−l(NM−007295)、BRCA−2(NM−000059)、RAD5O(NM−005732)、MREI1A(NM−005590)、NBSl(NM−002485)、ADPRT(PARP−1)、ADPRTL2(PARP−2)、CTPS、RPA、RPA1、RPA2、RPA3、XPD、ERCC1、XPF、MMS19、RAD51p、RAD51D、DMC1、XRCCR、RAD50、MRE11、NB51、WRN、BLMKU70、RU80、ATRCHK1、CHK2、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、RAD1、及びRAD9。
【0095】
別の実施態様において、該癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2欠失表現型を有する。この表現型を有する癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2を欠失していてもよい;すなわち、BRCA1及び/又はBRCA2の発現及び/又は活性が、例えば、エンコードする核酸の突然変異又は多形により、又は調節因子をエンコードする遺伝子、例えば、BRCA2調節因子をエンコードするEMSY遺伝子における増幅、突然変異又は多形により、癌細胞中で低下しているか、又は廃止されていてもよい(Cell(2003)115:523−535)。
【0096】
BRCA−1及びBRCA−2は既知の腫瘍サプレッサーであり、その野生型対立遺伝子は、ヘテロ接合キャリヤーの腫瘍ではしばしば失われている(Oncogene,(2002)21(58):8981−93; Trends Mol Med.,(2002)8(12):571−6)。BRCA−1及び/又はBRCA−2の突然変異と乳癌との関連性が十分に性格付けされている(Exp Clin Cancer Res.,(2002)21(3Suppl):9−12)。BRCA−2結合因子をエンコードするEMSY遺伝子の増幅も、乳癌と卵巣癌とに関係することが示されている。BRCA−1及び/又はBRCA−2に突然変異のあるキャリヤーはまた、卵巣、前立腺、及び膵臓の癌のリスクが上昇している。BRCA−1及びBRCA−2における変異の検出は、当該技術分野にて周知であり、例えば、欧州特許EP699 754、EP705 903各明細書、Genet.Test(1992)1:75−83;Cancer Treat Res(2002)107:29−59;Neoplasm(2003)50(4):246−50;Ceska Gynekol(2003)68(1):11−16)に記載されている。BRCA−2結合因子EMSYの増幅の測定はCell,115:523−535に記載されている。PARPインヒビターはBRCA−1及びBRCA−2欠失腫瘍の特異的殺滅に有用であることが証明されている(Nature(2005)434:913−916及び917−920)。
【0097】
したがって、本発明はBRCA−1又はBRCA−2を欠失する腫瘍の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、BRCA−1又はBRCA−2を欠失する腫瘍の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
一実施態様において、本発明のPARPインヒビターは、BRCA2−欠失細胞除去のための予防的治療に使用してもよい(参照:Cancer Res.(2005)65:10145)。
【0098】
本発明化合物は以下の神経変性疾患の治療又は予防に有用であってもよい:ポリグルタミン−膨張−関連神経変性、ハンチントン病、ケネディー病、脊髄小脳性運動失調、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、タンパク質凝集関連神経変性、マチャド−ジョセフ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、海綿様脳症、プリオン−関連疾患、及び多発性硬化症(MS)。
【0099】
したがって、本発明は神経変性疾患の治療又は予防のための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
本発明はまた、神経変性疾患の治療又は予防方法を提供する;当該方法は、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0100】
本発明化合物はまた、レトロウイルス感染(米国特許第5652260号明細書)、網膜傷害(Curr.Eye Res.(2004),29:403)、皮膚老化、及びUV誘発皮膚傷害(米国特許第5589483号明細書及びBiochem.Pharmacol(2002)63:921)の治療又は予防に有用であってもよい。
本発明化合物は、早熟加齢、及び年齢関連細胞機能不全の発症を遅延させる治療又は予防に有用である(Pharmacological Research(2005)52:93−99)。
【0101】
本発明化合物は、哺乳動物に、好ましくは、ヒトに、単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤と組み合わせて、標準的薬学のプラクティスにしたがって、医薬組成物として投与してもよい。
【0102】
本発明化合物は、対象に対し、常套のいずれかの投与経路により、全身的/末梢的に、又は所望の作用部位に、例えば、限定されるものではないが、経口(例えば、経口摂取);局所(例えば、経皮、鼻腔内、眼内、口腔内、及び舌下など);肺経由(例えば、エーロゾルなどを用いる、経口又は経鼻の吸入又は空気吸入により);直腸;膣;非経口(例えば、注射、例示として、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、鞘内、脊髄内、包内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、及び胸骨内など);及び貯留物移植(例えば、皮下に又は筋肉内に)により投与してもよい。
【0103】
対象は、真核細胞、動物、脊椎動物、哺乳動物、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(例えば、マウス)、犬類(例えば、イヌ)、猫類(例えば、ネコ)、馬類(例えば、ウマ)、霊長類、猿類(例えば、サル又は類人猿)、サル(例えば、キヌザル、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ギボン)、又はヒトでもよい。
【0104】
本発明はまた1種以上の本発明化合物及び薬学的に許容される担体を含有してなる医薬組成物を提供する。有効成分を含有する医薬組成物は、経口使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルジョン、ハード若しくはソフトカプセル、又はシロップ若しくはエリキシルであってもよい。経口使用を企図する組成物は医薬組成物の製造上、当該分野で技術的に既知の方法にしたがって調製してもよい;また、かかる組成物は製剤上形のよい口に違和感のない製剤とするために、甘味剤、芳香剤、着色剤、及び保存剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を含有してもよい。錠剤は有効成分と、錠剤の製造に適する非毒性の薬学的に許容される賦形剤とを混合して含有する。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム);顆粒化剤及び崩壊剤(例えば、微結晶性セルロース、ナトリウム・クロスカルメロース、コーンスターチ、又はアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドン、又はアラビアゴム);及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルク)などであってもよい。錠剤は未被覆であってもよいし、又は薬物の不快な味をマスクするために、若しくは胃腸管での分解と吸収を遅延させて、それによって長時間作用を持続させるために、既知の技術的方法により被覆してもよい。例えば、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性味遮蔽物質又はエチルセルロース、酢酸酪酸セルロースなどの時間遅延物質を用いてもよい。
【0105】
経口使用の剤形はハードゼラチンカプセルとしても提供してもよいが、その場合、有効成分は不活性の固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンなどと混合する;あるいはソフトゼラチンカプセルとして提供してもよいが、その場合、有効成分はポリエチレングリコールなどの水溶性担体、又は油性媒体、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油と混合する。
【0106】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する賦形剤と一緒に活性物質を含有する。かかる賦形剤は懸濁化剤、例えば、ナトリウム・カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、及びアラビアゴムなどである;分散剤又は湿潤剤は天然産のホスファチド(例えば、レシチン)、又はアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合産物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合産物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合産物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)でよい。水性懸濁液はさらに1種以上の保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル若しくはn−プロピル)、1種以上の着色剤、1種以上の芳香剤、及び1種以上の甘味剤(例えば、スクロース、サッカリン、若しくはアスパルテーム)などを含有してもよい。
【0107】
油性懸濁液は、有効成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはヤシ油)、又は鉱油(例えば、流動パラフィン)などに懸濁することにより製剤化してもよい。この油性懸濁液は増粘剤(例えば、ミツロウ、硬パラフィン、若しくはセチルアルコールなど)を含有してもよい。口当たりのよい経口製剤とするために、上記のような甘味剤及び芳香剤を添加してもよい。これらの組成物はブチル化ヒドロキシアニソール又はアルファ−トコフェロールなどの抗酸化剤を添加して保存してもよい。
【0108】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末及び顆粒として、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1種以上の保存剤と混合した有効成分が提供される。適当な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、すでに上記したものにより例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味剤、芳香剤、及び着色剤も存在してもよい。これらの組成物はアスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存してもよい。
【0109】
本発明の医薬組成物は水中油型のエマルジョンの形態でもよい。油相は植物油(例えば、オリーブ油若しくはラッカセイ油)、又は鉱油(例えば、流動パラフィン)、又はそれらの混合物でもよい。適当な乳化剤は天然産のホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、及び脂肪酸とヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)、及び当該部分エステルとエチレンオキシドの縮合産物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)でよい。該エマルジョンは甘味剤、芳香剤、保存剤、及び抗酸化剤をも含んでよい。
【0110】
シロップ及びエリキシルは甘味剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、又はスクロース)により製剤化してもよい。かかる製剤は粘滑剤、保存剤、芳香、及び着色剤及び抗酸化剤をも含んでよい。
該医薬組成物は無菌の注射用水溶液の形態でもよい。使用され得る許容される媒体と溶媒は、とりわけ、水、リンゲル溶液、及び等張性塩化ナトリウム溶液である。
【0111】
無菌の注射用製剤は、有効成分を油相に溶かした、無菌の注射用水中油型マイクロエマルジョンでもよい。例えば、有効成分を先ずダイズ油とレシチンの混合物に溶かしてもよい。次いで、その油溶液を水とグリセロールの混合物中に導入し、加工処理してマイクロエマルジョンとする。
【0112】
注射用溶液又はマイクロエマルジョンは、局所のボーラス注射により患者の血流中に導入してもよい。あるいは、当該化合物の一定の循環濃度を維持するような方法で、溶液又はマイクロエマルジョンを投与することが有利であるだろう。かかる一定濃度を維持するためには、連続静脈内送達装置を利用してもよい。かかる装置の一例は、デルテック・カッド−プラス(CADD−PLUSTM)モデル5400静脈内用ポンプである。
【0113】
該医薬組成物は、筋肉内、及び皮下投与用の無菌注射用水性又は油脂性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は既知の技術に従い、上記の適当な分散若しくは湿潤剤及び懸濁化剤を用いて製剤化してもよい。無菌の注射用製剤は、非毒性の非経口投与可能な希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液)でもよい。さらに、無菌の固定油を従来、溶媒又は懸濁媒体として用いている。この目的のためには、合成のモノ−又はジグリセリドを含む刺激のない、いずれの固定油を採用してもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射用製剤に使用してもよい。
【0114】
式(I)で示される化合物は、薬物を直腸投与する坐剤の形態でも投与してもよい。これらの組成物は、適当な非刺激性の賦形剤であって、常温では固体であるが、直腸温度では液体であり、その結果、直腸内で融解して薬物を放出するような賦形剤と薬物を混合することにより調製してもよい。かかる物質はカカオ脂、グリセリン化ゼラチン、硬化植物油、種々分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコールの脂肪酸エステルとの混合物を包含する。
局所での使用には、式(I)で示される化合物を含有するクリーム、軟膏、ジェリー、溶液、又は懸濁液などが用いられる。(この適用の目的には、局所適用剤としてうがい薬及び含嗽剤も包含するものとする)。
【0115】
本発明化合物は鼻腔内用の形態で、適当な鼻腔内媒体と送達装置を局所的に使用するか、又は当業者周知の皮膚透過性皮膚パッチの形態で、経皮経路により投与してもよい。経皮送達システムの形態で投与するには、勿論、用量の投与を用法用量全般で断続的であるよりもむしろ連続的であるようにする。本発明化合物はカカオ脂、グリセリン化ゼラチン、硬化植物油、種々分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコールの脂肪酸エステルとの混合物などの基剤を用いる坐剤としても送達してもよい。
【0116】
本発明による化合物を対象に投与する場合、選択される用量レベルは、様々の因子、例えば、限定されるものではないが、特定化合物の活性、個々の症候の重篤度、投与ルート、投与時期、該化合物の排泄速度、治療期間、組み合わせて使用する他の薬物、化合物、及び/又は物質、及び患者の年齢、性別、体重、症状、全身の健康、及びこれまでの医療歴などに左右される。化合物の量及び投与ルートは、最終的に医師が自由に裁量するものであるが、一般に、その用量は実質的に害を及ぼす又は有害な副作用を惹き起こさずに、所望の作用を達成する作用部位での局所濃度を達成するものである。
【0117】
インビボでの投与は、治療の全コースを通じて、単回投与、連続的に、又は断続的(例えば、適切な間隔で分割投与)に実施し得る。投与の最も有効な手段及び用量を決定する方法は、当業者周知であり、治療に使用する剤形、治療目的、処置すべき標的細胞、処置すべき対象によって変わる。単回又は多数回投与は、治療する医師が選択する投与レベル及びパターンで実施してもよい。
【0118】
一般に、活性化合物の適切な用量は、1日あたり、対象の体重1kgにつき、約100μgないし約250mgの範囲である。活性化合物が、塩、エステル、プロドラッグなどである場合、その投与量は親化合物に基づいて計算し、そのため、使用する実際の重量はそれに比例して上昇する。
【0119】
本発明化合物はまた、抗癌剤又は化学療法剤との組み合わせでも有用である。
本発明の化合物は、癌治療のための化学的−及び放射線増感剤として有用であるだろう。それらは以前に癌治療を受けたことのある、又は現在受けている哺乳動物の治療に有用である。かかる以前の治療は、先の化学療法、放射線療法、外科手術、又は癌ワクチンなどの免疫療法である。
【0120】
したがって、本発明は同時に、別個に又は連続的に投与するための、式(I)で示される化合物と抗癌剤との組み合わせを提供する。
本発明はまた癌治療において添加剤として使用するか、又は腫瘍細胞に対し電離放射線若しくは化学療法剤での治療を可能とするための医薬の製造において使用する式(I)で示される化合物を提供する。
【0121】
本発明はまた化学療法又は放射線療法を提供する;該方法は電離放射線若しくは化学療法剤と組み合わせで、式(I)で示される化合物又は式(I)で示される化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする。
【0122】
併用療法において、本発明化合物は、それを必要とする対象に、他の抗癌剤の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、投与と同時に、又は投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与してもよい。様々な実施態様において、本化合物及び別の抗癌剤は、1分離して、10分離して、30分離して、1時間未満離して、1時間ないし2時間離して、2時間ないし3時間離して、3時間ないし4時間離して、4時間ないし5時間離して、5時間ないし6時間離して、6時間ないし7時間離して、7時間ないし8時間離して、8時間ないし9時間離して、9時間ないし10時間離して、10時間ないし11時間離して、11時間ないし12時間離して、長くても24時間離して、又は長くても48時間離して投与する。
【0123】
本発明化合物と他の抗癌剤とは、相加的に又は相乗的に作用してもよい。本発明化合物と他の抗癌剤との相乗的組み合わせは、これら薬剤の一方又は双方の用量を低下させ得るし、及び/又は当該化合物と他の抗癌剤の一方又は双方の投与頻度を少なくさせ得るし、及び/又は少ない回数で薬剤を投与することは、癌治療において薬剤の効力を低下させずに、対象に該薬剤を投与することと関連する毒性の低下を可能にする。さらに、相乗的効果は癌の治療における効力を改善することにつながり、及び/又はいずれかの薬剤を単独で使用した場合に生じ得る有害な、又は不所望の副作用を低下させることにつながり得る。
【0124】
本発明化合物と組み合わせて使用する抗癌剤又は化学療法剤の例は、文献(Cancer Principles and Practice of Oncology,V.T.Devita and S.Hellman(編集者)第6版(2001年2月15日)、Lippincott Williams & Wilkins Publishers)に見出すことができる。当業者は薬剤のどの組み合わせが有用であるか、関与する癌と薬の個々の特性にもとづいて確認し得よう。かかる抗癌剤は、限定されるものではないが、以下のとおりである:HDACインヒビター、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、HMG−CoAリダクターゼインヒビター、HIVプロテアーゼインヒビター、逆転写酵素インヒビター、及び他の血管新生インヒビター、細胞増殖と生存シグナル伝達のインヒビター、アポトーシス誘発剤、及び細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤。本発明化合物は放射線療法と同時投与するときに、特に有用である。
【0125】
「HDACインヒビター」の例は、スベロイルアニリド・ヒドロキサム酸(SAHA)、LAQ824、LBH589、PXD101、MS275、FK228、バルプロン酸、酪酸、及びCI−994である。
「エストロゲン受容体モジュレーター」とは、メカニズムの如何を問わず、その受容体に対するエストロゲンの結合を干渉又は阻害する化合物をいう。エストロゲン受容体モジュレーターの例は、限定されるものではないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン(toremifene)、フルベストラント(fulvestrant)、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、及びSH646などである。
【0126】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とは、メカニズムの如何を問わず、その受容体に対するアンドロゲンの結合を干渉又は阻害する化合物をいう。アンドロゲン受容体モジュレーターの例は、フィナステリドと他の5α−リダクターゼ・インヒビター、ニルタミド(nilutamide)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、リアロゾール(liarozole)、及び酢酸アビラテロン(abiraterone acetate)などである。
【0127】
「レチノイド受容体モジュレーター」とは、メカニズムの如何を問わず、その受容体に対するレチノイドの結合を干渉又は阻害する化合物をいう。かかるレチノイド受容体モジュレーターの例は、ベキサロテン(bexarotene)、トレチノイン(tretinoin)、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド、及びN−4−カルボキシフェニルレチナミドなどである。
【0128】
「細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤」とは、細胞死を惹き起こすか、又は細胞の機能化に直接干渉して細胞増殖を主として阻害するか、又は細胞の減数分裂を阻害又は干渉する化合物をいい、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレート剤、低酸素症活性化化合物、微小管インヒビター/微小管安定化剤、有糸分裂キネシンインヒビター、有糸分裂進行に関与するキナーゼのインヒビター、代謝拮抗剤、生物応答修飾因子、ホルモン/抗ホルモン治療剤、造血成長因子、モノクローナル抗体標的化治療剤、トポイソメラーゼインヒビター、プロテオソームインヒビター、及びユビキチンリガーゼインヒビターを包含する。
【0129】
細胞傷害剤の例は、限定されるものではないが、シクロホスファミド、クロランブシル カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ブスルファン、トレオスルファン、セルテネフ(sertenef)、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン(altretamine)、プレドニムスチン(prednimustine)、ジブロモズルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン(fotemustine)、ネダプラチン、アロプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド(temozolomide)、メタンスルホン酸メチル、プロカルバジン、ダカルバジン、ヘプタプラチン、エストラムスチン(estramustine)、イムプロスルファン・トシレート(improsulfan tosilate)、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ(pumitepa)、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド、GPX100、(トランス、トランス、トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン(diarizidinylspermine)、三酸化砒素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、及び4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(参照:国際特許出願WO00/50032号明細書)などである。
【0130】
一実施態様において、本発明の化合物はアルキル化剤と組み合わせて使用してもよい。
アルキル化剤の例は、限定されるものではないが、ナイトロジェンマスタード;シクロホスファミド;イホスファミド;トロフォスファミド、及びクロランブシル;ニトロソウレア;カルムスチン(BCNU)、及びロムスチン(CCNU);スルホン酸アルキル;ブスルファン、及びトレオスルファン;トリアゼネス;ダカルバジン、プロカルバジン、及びテモゾロミド;白金含有複合体:シスプラチン、カルボプラチン、アロプラチン、及びオキサリプラチンである。
【0131】
一実施態様において、アルキル化剤はデカルバジンである。デカルバジンは約150mg/m2(対象の体表面積)ないし約250mg/m2の範囲の用量で対象に投与してもよい。別の実施態様において、デカルバジンは約150mg/m2ないし約250mg/m2の範囲の用量で、1日1回、連続5日間、対象に静脈内投与する。
【0132】
一実施態様において、アルキル化剤はプロカルバジンである。プロカルバジンは約50mg/m2(対象の体表面積)ないし約100mg/m2の範囲の用量で対象に投与してもよい。別の実施態様において、プロカルバジンは1日1回、連続5日間、約50mg/m2ないし約100mg/m2の範囲の用量で対象に静脈内投与するる。
【0133】
一実施態様において、アルキル化剤はテモゾロアミドである。テモゾロアミドは約150mg/m2(対象の体表面積)ないし約200mg/m2の範囲の用量で対象に投与してもよい。別の実施態様において、テモゾロミドは1日1回、連続5日間、約150mg/m2ないし約200mg/m2の範囲の用量で動物に経口投与する。
【0134】
抗有糸分裂剤の例は、アロコルヒチン、ハリコンドリンB、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドルスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、チオコルヒチン、及びトリチルシステインである。
低酸素症活性化化合物の例は、チラパザミン(tirapazamine)である。
プロテオソームインヒビターの例は、限定されるものではないが、ラクタシスチン(lactacystin)、ボルテゾミブ(bortezomib)、エポキソマイシン、及びMG132、MG115、及びPSIなどのペプチドアルデヒドである。
【0135】
微小管インヒビター/微小管安定化剤の例は、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、ミボブリンイセチオネート(mivobulin isethionate)、オーリスタチン(auristatin)、セマドチン(cemadotin)、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン類(epothilones)(参照例:米国特許第6,284,781及び6,288,237号明細書)及びBMS188797などである。
【0136】
トポイソメラーゼインヒビターの一部の例は、トポテカン、ハイカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、エキサテカン、ギメテカン、ジフロモテカン、シリル−カンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、カンプトテシン、クリスナトール、マイトマイシンC、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートロイシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパナミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ラートテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナンスリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、及びジメスナ(dimesna)など;非カンプトテシン・トポイソメラーゼ−1インヒビター、例えば、インドロカルバゾール;及び二重トポイソメラーゼ−IとIIインヒビター、例えば、ベンゾフェナジン、XR20 11576lMLN576、及びベンゾピリドインドールである。
【0137】
一実施態様において、トポイソメラーゼインヒビターはイリノテカンである。イリノテカンは約50mg/m2(対象の体表面積)ないし約150mg/m2の範囲の用量で対象に投与してもよい。別の実施態様において、イリノテカンは、1日1回、連続5日間、第1〜5日目に、約50mg/m2ないし約150mg/m2の範囲の用量で対象に静脈内投与し、次いで、1日1回、連続5日間、第28〜32日目に、約50mg/m2ないし約150mg/m2の範囲の用量で静脈内投与し、次いで、1日1回、連続5日間、第55〜59日目に、約50mg/m2ないし約150mg/m2の範囲の用量で再び静脈内投与する。
【0138】
有糸分裂キネシン、とりわけヒトの有糸分裂キネシンKSPのインヒビターの例は、国際特許出願WO01/30768、WO01/98278、WO02/056,880、WO03/050,064、WO03/050,122、WO03/049,527、WO03/049,679、WO03/049,678、及びWO03/039460、WO03/079973、WO03/099211、WO2004/039774、WO03/105855、WO03/106417、WO2004/087050、WO2004/058700、WO2004/058148、及びWO2004/037171号各明細書及び米国特許出願US2004/132830及びUS2004/132719号明細書に記載されている。一実施態様において、有糸分裂キネシンのインヒビターは、限定されるものではないが、KSPのインヒビター、MKLP1のインヒビター、CENP−Eのインヒビター、MCAKのインヒビター、Kif14のインヒビター、Mphosph1のインヒビター、及びRab6−KIFLのインヒビターである。
【0139】
「有糸分裂の進行に関わるキナーゼのインヒビター」は、限定されるものではないが、オーロラ・キナーゼのインヒビター、ポロ様キナーゼ(PLK)のインヒビター(とりわけPLK−1のインヒビター)、バブ−1のインヒビター、及びバブ−R1のインヒビターを包含する。
【0140】
「抗増殖剤」は、アンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド、例えば、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、及びINX3001、及び代謝拮抗剤、例えば、エノシタビン、カルモフル、テガフル、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、ガロシタビン(galocitabine)、シタラビン・オクホスフェート(cytarabine ocfosfate)、ホステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフル、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン(nelzarabine)、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン(ecteinascidin)、トロキサシタビン(troxacitabine)、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン(swainsonine)、ロメトレキソール、デキスラゾキサン(dexrazoxane)、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、及び3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒド・チオセミカルバゾンなどである。
【0141】
モノクローナル抗体標的化治療剤の例は、癌細胞特異的又は標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合した細胞傷害剤又は放射性同位体を有する治療薬である。その例はベクサール(Bexxar)である。
【0142】
「HMG−CoAリダクターゼインヒビター」は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAリダクターゼのインヒビターをいう。使用してもよいHMG−CoAリダクターゼインヒビターの例は、限定されるものではないが、ロバスタチン(メバコール(MEVACOR;登録商標);参照;米国特許第4,231,938、4,294,926及び4,319,039号各明細書)、シンバスタチン(ゾコール(ZOCOR;登録商標);参照:米国特許第4,444,784、4,820,850及び4,916,239号各明細書)、プラバスタチン(プラバコール(PRAVACHOL;登録商標);参照:米国特許第4,346,227、4,537,859、4,410,629、5,030,447及び5,180,589号各明細書)、フルバスタチン(レスコール(LESCOL;登録商標);参照:米国特許第5,354,772、4,911,165、4,929,437、5,189,164、5,118,853、5,290,946、及び5,356,896号各明細書)及びアトルバスタチン(リピトール(LIPITOR;登録商標);参照:米国特許第5,273,995、4,681,893、5,489,691、及び5,342,952号各明細書)を包含する。本方法に使用してもよいこれら及びさらなるHMG−CoAリダクターゼインヒビターの構造式については、文献(M.Yalpani,Cholesterol Lowering Drugs(コレステロール低下剤)”,Chemistry & Industry,pp.85−89(1996年2月5日))の87ページ及び米国特許第4,782,084及び4,885,314号明細書に記載がある。本明細書にて使用する場合の用語HMG−CoAリダクターゼインヒビターとは、HMG−CoAリダクターゼ阻害活性を有する化合物の薬学的に許容されるラクトン及び開環酸型(すなわち、ラクトン環が開いて遊離の酸を形成する場合)のもの、並びに塩及びエステル型のものをすべて包含し、したがって、かかる塩、エステル、開環酸、及びラクトン型の使用が本発明の範囲に包含される。
【0143】
「プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター」は、任意の1種類の又は任意の組み合わせたプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ酵素を阻害する化合物をいい、該酵素はファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ(FPTアーゼ)、ゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTアーゼ−I)、及びゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTアーゼ−II、ラブGGPTアーゼともいう)などである。
【0144】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビターの例は、以下の公開出願及び特許に見出し得る:国際特許出願WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987号各明細書;米国特許第5,420,245号、米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510号、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号各明細書;欧州特許公開0 618 221号、欧州特許公開0 675 112号、欧州特許公開0 604 181号、欧州特許公開0 696 593号各明細書;国際特許出願WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514号各明細書;米国特許第5,661,152号明細書;国際特許出願WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736号各明細書;米国特許第5,571,792号明細書;国際特許出願WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436号各明細書;及び米国特許第5,532,359号明細書。血管新生に対するプレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビターの役割の例については、文献(European J.of Cancer,Vol.35,No.9,pp.1394−1401(1999))を参照されたい。
【0145】
「血管新生インヒビター」とは、メカニズムに関係なく、新しい血管の生成を阻害する化合物をいう。血管新生インヒビターの例は、限定されるものではないが、チロシンキナーゼインヒビター、例えば、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)のインヒビター、表皮由来、線維芽細胞由来、若しくは血小板由来増殖因子のインヒビター、MMP(マトリックス・メタロプロテアーゼ)インヒビター、インテグリン・ブロッカー、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリ硫酸、シクロオキシゲナーゼインヒビター(アスピリン及びイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、並びにセレコキシブ及びロフェコキシブなどの選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター(PNAS,Vol.89,p.7384(1992);JNCI,Vol.69,p.475(1982);Arch.Opthalmol.,Vol.108,p.573(1990);Anat.Rec.,Vol.238,p.68(1994);FEBS Letters,Vol.372,p.83(1995);Clin,Orthop.,Vol.313,p.76(1995); J.Mol.Endocrinol.,Vol.16,p.107(1996);Jpn.J.Pharmacol.,Vol.75,p.105(1997);Cancer Res.,Vol.57,p.1625(1997);Cell,Vol.93,p.705(1998);Intl.J.Mol.Med.,Vol.2,p.715(1998);J.Biol.Chem.,Vol.274,p.9116(1999))、ステロイド系抗炎症剤(コルチコステロイド、ミネラロコルチコイド、デキサメタゾン、プレドニソン、プレドニソロン、メチルプレッド、ベタメサゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(参照:J.Lab.Clin.Med.,105:141−145(1985))、及びVEGFに対する抗体(参照:Nature Biotechnology,Vol.17,pp.963−968(1999);Kim et al,Nature,362,841−844(1993);国際特許出願WO00/44777及びWO00/61186号明細書)である。
【0146】
血管新生を調節又は阻害し、本発明化合物と組み合わせて使用してもよい他の治療薬は、凝固系及び繊維素溶解系を調節又は阻害する薬剤である(参照概説:Clin.Chem.La.Med.38:679−692(2000))。凝固及び繊維素溶解経路を調節又は阻害するかかる薬剤の例は、限定されるものではないが、ヘパリン(参照:Thromb.Haemost.80:10−23(1998))、低分子量ヘパリン及びカルボキシペプチダーゼUインヒビター(活性トロンビンを活性化し得る繊維素溶解インヒビター(TAFIa)のインヒビターとしても知られる)(参照:Thrombosis Res.101:329−354(2001))などを包含する。TAFIaインヒビターは国際特許出願WO03/013,526号明細書及び米国特許出願USP60/349,925号明細書(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0147】
「細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達するタンパク質キナーゼを阻害し、それによってDNA傷害剤に対し癌細胞を増感する化合物をいう。かかる薬剤は、ATR、ATM、Chk1、及びChk2キナーゼのインヒビター、及びcdkとcdcキナーゼインヒビターを含み、具体的には7−ヒドロキシスタウロスポリン、スタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(シクラセル(Cyclacel))、及びBMS−387032などである。
【0148】
「細胞増殖と生存シグナル伝達経路のインヒビター」とは、細胞表面受容体及び細胞表面受容体の下流にあるシグナル伝達カスケードを阻害する薬剤類をいう。かかる薬剤は、EGFRのインヒビター(例えば、ゲフィチニブ及びエルロチニブ)、ERB−2のインヒビター(例えば、トラスツズマブ)、IGFRのインヒビター(例えば、国際特許出願WO03/059951号明細書に開示されたもの)、サイトカイン受容体のインヒビター、METのインヒビター、PI3Kのインヒビター(例えば、LY294002)、セリン/スレオニンキナーゼ(限定されるものではないが、下記に記載されているAktインヒビターを含む:国際特許出願WO03/086404、WO03/086403、WO03/086394、WO03/086279、WO02/083675、WO02/083139、WO02/083140、及びWO02/083138号各明細書)、Rafキナーゼのインヒビター(例えば、BAY−43−9006)、MEKのインヒビター(例えば、CI−1040及びPD−098059)、及びmTORのインヒビター(例えば、ワイスCCI−779及びアリアッドAP23573)を含む。かかる薬剤は、小分子インヒビター化合物及び抗体アンタゴニストを含む。
「アポトーシス誘発剤」はTNF受容体ファミリーメンバーの活性化因子を含む(TRAIL受容体を包含する)。
【0149】
また本発明は選択的COX−2インヒビターであるNSAIDとの組み合わせをも包含する。本明細書の目的上、選択的COX−2インヒビターであるNSAIDは、細胞又はミクロソームアッセイにより評価されるCOX−1のIC50に対するCOX−2のIC50の比で測定して、COX−1よりもCOX−2を少なくとも100倍阻害する特異性を有するものと定義される。かかる化合物は、限定されるものではないが、米国特許第5,474,995号、米国特許第5,861,419号、米国特許第6,001,843号、米国特許第6,020,343号、米国特許第5,409,944号、米国特許第5,436,265号、米国特許第5,536,752号、米国特許第5,550,142号、米国特許第5,604,260号、米国特許第5,698,584号、米国特許第5,710,140号各明細書;国際特許出願公開WO94/15932号明細書、米国特許第5,344,991号、米国特許第5,134,142号、米国特許第5,380,738号、米国特許第5,393,790号、米国特許第5,466,823号、米国特許第5,633,272号、及び米国特許第5,932,598号各明細書(これらはすべて参照により本明細書の一部とする)に開示された化合物である。
【0150】
本治療方法において特に有用なCOX−2インヒビターは、5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン又はその薬学的に許容される塩である。
COX−2の特異的インヒビターとして記載されており、したがって、本発明において有用である化合物は、限定されるものではないが、以下のものである:パレコキシブ(parecoxib)、セレブレックス(CELEBREX;登録商標)、及びベクストラ(BEXTRA;登録商標)又は薬学的に許容されるその塩。
【0151】
血管新生インヒビターのその他の例は、限定されるものではないが、エンドスタチン、ウクライン(ukrain)、ランピルナーゼ(ranpirnase)、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン(squalamine)、コンブレタスタチン(combretastatin)、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースリン酸、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)である。
【0152】
上記で使用される「インテグリン・ブロッカー」とは、生理的リガンドがαvβ3インテグリンに結合するのを選択的に拮抗、阻害、又は反作用する化合物、生理的リガンドがαvβ5インテグリンに結合するのを選択的に拮抗、阻害、又は反作用する化合物、生理的リガンドがαvβ3インテグリンとαvβ5インテグリンの両方に結合するのを選択的に拮抗、阻害、又は反作用する化合物、及び毛細血管内皮細胞で発現される特定インテグリンの活性を拮抗、阻害、又は反作用する化合物をいう。この用語はまたαvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1、及びα6β4インテグリンのアンタゴニストをいう。この用語はまたαvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、β5α1、α6β1、及びα6β4インテグリンの任意の組み合わせのアンタゴニストについてもいう。
【0153】
チロシン・キナーゼインヒビターの一部の具体例は、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン(genistein)、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジナミン、及びEMD121974である。
【0154】
一実施態様において、本発明化合物は、MeOSO(CH)−レキシトロプシン(Me−Lex)などの選択的N3−アデニン・メチル化剤が誘発する壊死の出現を治療又は予防するために有用である。
【0155】
抗癌化合物以外の化合物との組み合わせもまた本方法に包含される。例えば、本出願の請求項に記載された化合物とPPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組み合わせは、ある種悪性腫瘍の治療に有用である。PPAR−γ及びPPAR−δは核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ及びδである。PPAR−γの内皮細胞における発現及び血管新生におけるその関与については文献(参照:J.Cardiovasc.Pharmacol.1998;31:909−913;J.Biol.Chem.1999;274:9116−9121;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000;41:2309−2317)に報告されている。つい最近、PPAR−γアゴニストがインビトロでVEGFに対する血管新生応答を阻害することが示されている;トログリタゾン(troglitazone)及びマレイン酸ロシグリタゾン(rosiglitazone maleate)両方が、マウスにおいて網膜新生血管形成の進展を阻害する(Arch.Ophthamol.2001;119:709−717)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの例は、限定されるものではないが、チアゾリジンジオン類(例えば、DRF2725、CS−011、トログリタゾン(troglitazone)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、及びピオグリタゾン(pioglitazone))、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンズイソオキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(米国特許出願USSN09/782,856号明細書に開示)、及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(米国特許出願USSN60/235,708号及び60/244,697号明細書に開示)などを包含する。
【0156】
本発明の別の実施態様は、ここに開示されている化合物と、抗ウイルス剤(例えば、癌治療用のガンシクロビルなどのヌクレオシド類似体など)とを組み合わせて使用することである。参照:国際特許出願WO98/04290号明細書。
【0157】
本発明の別の実施態様は、癌治療のための遺伝子療法と組み合わせて、本明細書に開示した化合物を使用することである。癌治療の遺伝子戦略の概観については:ホールら(Hall et al,Am.J.Hum.Genet.61:785−789,1997)及びクーフら(Kufe et al,Cancer Medicine,第5版,pp876−889,BC Decker,Hamilton,2000)を参照。遺伝子療法は腫瘍抑制遺伝子を送達するために使用してもよい。かかる遺伝子の例は、限定されるものではないが、p53(この遺伝子は組換えウイルス媒介遺伝子伝達を介して送達される)(例えば、米国特許第6,069,134号明細書参照)、uPA/uPARアンタゴニスト(“uPA/uPARアンタゴニストのアデノウイルス媒介送達は、マウスにおいて血管新生依存性腫瘍増殖及び拡散を抑制する”,Gene Therapy,1998年8月;5(8):1105−13)、及びインターフェロン−ガンマ(J.Immunol.2000;164:217−222)などを包含する。
【0158】
本発明化合物はまた本来多剤耐性(MDR)のインヒビター、とりわけ輸送体タンパク質の高レベル発現と関係するMDRのインヒビターと組み合わせて投与してもよい。かかるMDRインヒビターは、p−糖タンパク質(P−gp)のインヒビター、例えば、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853、ベラパミル(verapamil)、及びPSC833(バルスポダール(valspodar))を包含する。
【0159】
本発明化合物は、本発明化合物の単独使用又は放射線療法との併用から生じ得る急性、遅延型、後期、及び予測性の嘔吐などの悪心又は嘔吐を治療するために、抗嘔吐剤とともに使用してもよい。嘔吐の予防又は治療のために、本発明化合物は他の抗嘔吐剤、とりわけ、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、例えば、オンダンセトロン(ondansetron)、グラニセトロン(granisetron)、トロピセトロン(tropisetron)、及びザチセトロン(zatisetron)など、GABAB受容体アゴニスト、例えば、バクロフェンなど、コルチコステロイド、例えば、デカドロン(デキサメタゾン)など、ケナログ(Kenalog)、アリストコルト(Aristocort)、ナサリド(Nasalide)、プレフェリド(Preferid)、ベネコルテン(Benecorten)、又は米国特許第2,789,118、2,990,401、3,048,581、3,126,375、3,929,768、3,996,359、3,928,326、及び3,749,712号各明細書に開示されたその他のもの、抗ドーパミン作動性薬、例えば、フェノチアジン類(例:プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン、及びメソリダジン)、メトクロプラミド、又はドロナビノールなどと共に使用してもよい。一実施態様においては、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、及びコルチコステロイドから選択される抗嘔吐剤が、本発明化合物の投与により生じ得る嘔吐の治療又は予防のために、アジュバントとして投与される。
【0160】
本発明化合物と組み合わせて使用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストについては、例えば、以下に詳しく記載されている:米国特許第5,162,339、5,232,929、5,242,930、5,373,003、5,387,595、5,459,270、5,494,926、5,496,833、5,637,699、5,719,147号各明細書;欧州特許公開EP0 360 390、0 394 989、0 428 434、0 429 366、0 430 771、0 436 334、0 443 132、0 482 539、0 498 069、0 499 313、0 512 901、0 512 902、0 514 273、0 514 274、0 514 275、0 514 276、0 515 681、0 517 589、0 520 555、0 522 808、0 528 495、0 532 456、0 533 280、0 536 817、0 545 478、0 558 156、0 577 394、0 585 913、0 590 152、0 599 538、0 610 793、0 634 402、0 686 629、0 693 489、0 694 535、0 699 655、0 699 674、0 707 006、0 708 101、0 709 375、0 709 376、0 714 891、0 723 959、0 733 632、及び0 776 893号各明細書;国際特許公開WO90/05525、90/05729、91/09844、91/18899、92/01688、92/06079、92/12151、92/15585、92/17449、92/20661、92/20676、92/21677、92/22569、93/00330、93/00331、93/01159、93/01165、93/01169、93/01170、93/06099、93/09116、93/10073、93/14084、93/14113、93/18023、93/19064、93/21155、93/21181、93/23380、93/24465、94/00440、94/01402、94/02461、94/02595、94/03429、94/03445、94/04494、94/04496、94/05625、94/07843、94/08997、94/10165、94/10167、94/10168、94/10170、94/11368、94/13639、94/13663、94/14767、94/15903、94/19320、94/19323、94/20500、94/26735、94/26740、94/29309、95/02595、95/04040、95/04042、95/06645、95/07886、95/07908、95/08549、95/11880、95/14017、95/15311、95/16679、95/17382、95/18124、95/18129、95/19344、95/20575、95/21819、95/22525、95/23798、95/26338、95/28418、95/30674、95/30687、95/33744、96/05181、96/05193、96/05203、96/06094、96/07649、96/10562、96/16939、96/18643、96/20197、96/21661、96/29304、96/29317、96/29326、96/29328、96/31214、96/32385、96/37489、97/01553、97/01554、97/03066、97/08144、97/14671、97/17362、97/18206、97/19084、97/19942、及び97/21702号各明細書;及び英国特許公開PB−A2 266 529、2 268 931、2 269 170、2 269 590、2 271 774、2 292 144、2 293 168、2 293 169、及び2 302 689号各明細書。かかる化合物の調製については、上記の特許及び出願公開に詳しく記載されている;これらを参照により本明細書の一部とする。
【0161】
一実施態様において、本発明化合物と組み合わせて使用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、米国特許第5,719,147号明細書に開示されている2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、又はその薬学的に許容される塩から選択される。
本発明化合物は貧血の治療に有用な薬剤と共に投与してもよい。かかる貧血治療の薬剤は、例えば、連続的赤血球形成受容体活性化因子(例えば、エポエチンアルファなど)である。
【0162】
本発明化合物は好中球減少症の治療に有用な薬剤と共に投与してもよい。かかる好中球減少症治療の薬剤は、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの好中球の産生と機能を調節する造血成長因子である。G−CSFの例はフィルグラスチム(filgrastim)である。
本発明化合物はまた免疫増強剤、例えば、レバミゾール、イソプリノシン(isoprinosine)、及びザダキシン(Zadaxin)などと共に投与してもよい。
【0163】
本発明化合物はまたビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホネート、ビスホスホン酸、及びジホスホン酸などを含むと理解される)と組み合わせて、骨癌などの癌の治療又は予防に有用であってよい。ビスホスホネートの例は、限定されるものではないが、エチドロネート(ジドロネル(Didronel))、パミドロネート(アレジア(Aredia))、アレンドロネート(ホサマックス(Fosamax))、リセンドロネート(アクトネル(Actonel))、ゾレドロネート(ゾメタ(Zometa))、イバンドロネート(ボニバ(Boniva))、インカドロネート(incadronate)、若しくはシマドロネート(cimadronate)、クロドロネート(clodronate)、EB−1053、ミノドロネート(minodronate)、ネリドロネート(neridronate)、ピリドロネート(piridronate)、及びチルドロネート(tiludronate)、並びに任意の、及びすべての薬学的に許容される塩、誘導体、水和物、及びその混合物である。
【0164】
したがって、本発明の範囲は当該化合物と、電離放射線との組み合わせで、及び/又はHDACインヒビター、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、HMG−CoAリダクターゼインヒビター、血管新生インヒビター、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、抗ウイルス剤、本来多剤耐性のインヒビター、抗嘔吐剤、貧血治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強剤、細胞増殖と生存シグナル伝達のインヒビター、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、アポトーシス誘発剤、及びビスホスホネートなどから選択される第2の化合物と組み合わせて使用することを包含する。
【0165】
本発明化合物に関連して、用語「投与」及びその変化(例えば、化合物を「投与する」)は、治療を必要とする動物の系に該化合物又は該化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明化合物又はそのプロドラッグを1種以上の他の活性剤(例えば、細胞傷害剤など)との組み合わせで提供する場合、「投与」又はその変化は、それぞれ該化合物又はそのプロドラッグ及び他の薬剤の同時及び連続的導入を含むものと理解される。
【0166】
本明細書にて使用する場合、「組成物」という用語は、指定された量の特定した成分を含有してなる産物並びに指定された量の特定した成分の組み合わせから直接的又は間接的に生じる産物を包含するものとする。
「治療有効量」という用語は、本明細書にて使用する場合、研究者、獣医師、医師、又はその他の臨床医が求める、組織、系、動物、又はヒトにおいて、生物学的又は医学的応答を惹き出す活性化合物又は医薬品のその量を意味する。
【0167】
用語「治療」とは、病理学的症状に罹患する哺乳動物の治療をいい、また癌性細胞を死滅させることによる該症状を緩和する作用をいうが、該症状の進行を阻害する作用をもいい、進行速度の減速、進行速度の停止、症状の改善、及び症状の治癒を包含する。予防的手段としての治療(すなわち、予防)も包含される。
【0168】
本明細書にて使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、信頼できる医学的判断の範囲内で、対象(例えば、ヒト)の組織との接触使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わず、理に適った有用性/リスク比の釣り合っている化合物、物質、組成物、及び/又は用量形態に関わる。
【0169】
用語「補助手段」とは、既知の治療手段と組み合わせた化合物の使用をいう。かかる手段は、異なる癌のタイプの治療に使用する場合の薬物の細胞傷害性療法及び/又は電離放射線法を含む。とりわけ、該活性化合物は多くの癌の化学療法治療の作用を増強することが知られており、そのものには、癌の治療に使用されるトポイソメラーゼクラスの毒物(例えば、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン)、殆どの既知のアルキル化剤(例えば、DTIC、テモゾラミド)及び白金に基づく薬物(例えば、カルボプラチン、シスプラチン)が包含される。
【0170】
一実施態様において、第二の化合物として使用するべき血管新生インヒビターは、チロシンキナーゼインヒビター、上皮由来増殖因子のインヒビター、線維芽細胞由来増殖因子のインヒビター、血小板由来増殖因子のインヒビター、MMP(マトリックス・メタロプロテアーゼ)インヒビター、インテグリン・ブロッカー、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサン・ポリ硫酸、シクロオキシゲナーゼ・インヒビター、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−(クロロアセチルカルボニル)フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、又はVEGFに対する抗体から選択される。一実施態様において、エストロゲン受容体モジュレーターは、タモキシフェン又はラロキシフェンである。
【0171】
請求項の範囲には、式(I)で示される化合物の治療有効量を、放射線療法との組み合わせで、及び/又はHDACインヒビター、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、HMG−CoAリダクターゼインヒビター、血管新生インヒビター、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、抗ウイルス剤、本来多剤耐性のインヒビター、抗嘔吐剤、貧血治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強剤、細胞増殖と生存シグナル伝達のインヒビター、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、アポトーシス誘発剤、及びビスホスホネートから選択される化合物との組み合わせで投与することからなる癌の治療方法が包含される。
【0172】
また本発明のなお別の実施態様は、式(I)で示される化合物の治療有効量を、パクリタキセル又はトラスツズマブと組み合わせて投与することからなる癌の治療方法である。
本発明はさらに式(I)で示される化合物の治療有効量をCOX−2インヒビターと組み合わせて投与することからなる癌の治療又は予防方法を包含する。
【0173】
本発明はまた式(I)で示される化合物の治療有効量と、HDACインヒビター、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、HMG−CoAリダクターゼインヒビター、HIVプロテアーゼインヒビター、逆転写酵素インヒビター、血管新生インヒビター、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、抗ウイルス剤、細胞増殖と生存シグナル伝達のインヒビター、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、アポトーシス誘発剤、及びビスホスホネートから選択される化合物とを含有してなる癌の治療又は予防に有用な医薬組成物を包含する。
本発明のこれら諸々の態様は、本明細書に含まれる教示から明瞭である。
【0174】
化学上の記述及び実施例にて使用する略号は以下のとおりである:
ACN(アセトニトリル);DCM(ジクロロメタン);DIEA(ジイソプロピルエチルアミン);DMA(N,N−ジメチルアセトアミド);DMF(ジメチルホルムアミド);DMP(デス−マーチン・ペルヨーディナン);DMSO(ジメチルスルホキシド);eq.(当量);EtOAc(酢酸エチル);EtOH(エタノール);HBTU(O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−ホスフェート);MeCN(アセトニトリル);MeOH(メタノール);MS(質量スペクトル);MW(マイクロ波);NMR(核磁気共鳴);PE(石油エーテル);RP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー);RT(室温);sat.aq.(飽和水性);SEM−Cl(塩化2−トリメチルシリル)エトキシエチル);TEA(トリエチルアミン);TFA(トリフルオロ酢酸);及びTHF(テトラヒドロフラン)。
【0175】
XがNである場合の式(I)で示される化合物は、式(IA)の化合物と式(IB)の化合物とを縮合させることにより調製してもよい:
【0176】
【化6】

【0177】
[式中、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、R、R、R、R、R、Y、及びZは、上記定義のとおりであり、RはC1−6アルキル、例えば、エチルである]
反応は一般に、DMFなどの溶媒中、約100ないし160℃で実施する。
【0178】
式(IA)で示される化合物は、式(IC)の化合物を酸化することにより調製してもよい:
【0179】
【化7】

【0180】
[式中、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、R、R、R、R、R、Y、及びZは、上記定義のとおりであり、PはSEMなどの保護基である]
標準的な酸化方法、つまりDCMなどの溶媒中、DMPなどの酸化剤と室温付近で反応させるなどを使用してもよい。
【0181】
引き続き、保護基Pは標準的方法により除去してもよい。例えば、PがSEMである場合、脱保護は、EtOHなどの溶媒中、約80℃でHClなどの酸を加えることにより実施してもよい。
【0182】
式(IC)で示される化合物は、式(ID)の化合物と式(IE)の化合物とを反応させることにより調製してもよい:
【0183】
【化8】

【0184】
[式中、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、R、R、R、R、R、Y、Z、及びPは、上記定義のとおりであり、Lはハロゲン、例えば、臭素であり、Rは水素である]
式(ID)の化合物は、先ず、n−BuLiなどの強塩基により、一般的にTHFなどの溶媒中で約−78℃で処理し、ハロゲン−リチウム交換を受け得るようにする。それにより形成され、得られる有機リチウム種は、引き続き式(IE)の求電子体で失活させる。
【0185】
別法として、式(IA)で示される化合物は、式(ID)の化合物と式(IE)の化合物(式中、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、R、R、R、R、R、Y、Z、P、及びLは、上記定義のとおりであり、Rは塩素などのハロゲン、又はNMe−OMeである)とを、一般的にTHFなどの溶媒中、約−78℃で反応させることにより調製してもよい。
【0186】
式(I)において、cが0であり、dが1である場合の化合物は、式(IF)の化合物と式(IG)で示される化合物とを縮合させることにより調製してもよい:
【0187】
【化9】

【0188】
[式中、a、b、e、f、g、h、i、j、R、R、R、R、R、X、Y、及びZは、上記定義のとおりである]
反応は一般にHBTU及びDIEAなどのカップリング試薬の存在下に、DMAなどの溶媒中、室温付近で実施する。
【0189】
式(IF)で示される化合物は、式(IH)の化合物を加水分解することにより調製してもよい:
【0190】
【化10】

【0191】
[式中、a、b、j、R、R、X、及びYは、上記定義のとおりである]
標準的な加水分解条件、つまりNaOHなどの塩基の存在下、水性溶媒中、約90℃などを使用してもよい。
中間体と出発物質の合成について記載がない場合、これらの化合物は市販品として入手可能であるか、又は市販品として入手可能な化合物から標準的な方法により、若しくは本明細書にて合成、工程図、及び実施例に記載した化学の延長上で調製してもよい。
式(I)で示される化合物は、既知の方法により、又は実施例に記載した方法により、式(I)で示される他の化合物に変換してもよい。
【0192】
本発明に記載した任意の合成経路に際して、任意の関与する分子上の感受性の、若しくは反応性の基を保護することが必要であるか、及び/又は望ましいことであろう。この保護は常套の保護基によって、例えば、Protecting Groups in Organic Synthesis(有機合成における保護基),第3版,Greene,T.W.andWuts,P.G.M.;Wiley Interscience,1999年;及びKocienski,P.J.,Protecting Groups(保護基),Thieme,1994年に記載された保護基により達成してもよい。当該保護基は当該技術分野において既知の方法により都合のよい引き続く段階で除去してもよい。
【0193】
本発明化合物は以下の反応工程図にしたがって調製した。式中の変数はすべて上記定義のとおりである。
【0194】
反応工程図1
本明細書に記載した化合物は、以下に記載の方法により調製してもよい。官能化2−ブロモ−イミダゾールはその窒素の1個を保護してもよい。この保護されたイミダゾールは、次いで、ハロゲン−リチウム交換反応に付してカルボアニオン(carbanion)を形成してもよく、これを次いで、例えば、アリール又はヘテロアリール基が置換したアセトアルデヒドなどの求電子体と反応させてもよい。形成したアルコールはDMPなどの標準的な酸化剤により酸化してもよく、イミダゾール保護基を、例えば、エタノール中、HClにより80℃で処理することにより切断除去してもよい。得られるケトンは、熱条件下に先ず100℃に加熱し、次いで電子レンジ中で160℃に加熱することにより、エチルカルバジドとの環形成反応に付してもよい。
【0195】
【化11】

【0196】
反応工程図2
特定の条件下で、(ヘテロ)芳香族基はさらに巧みに操作して他の誘導体を得るために機能的な基を担持してもよい。例えば、(ヘテロ)芳香族ニトリルは該合成経路を介して実施してもよい。この官能基は加水分解して対応するカルボン酸としてもよい。次に、これを種々のアミンとカップル結合させ、所望のPARPインヒビターとしてもよい(反応工程図2)。
【0197】
【化12】

【0198】
本明細書に記載した例示化合物は、以下に記載のアッセイ法により試験した結果、それらが5μM未満のIC50値を有することが判明した。
【0199】
PARP−1 SPAアッセイ
作用試薬
アッセイバッファー:100mMトリス pH8、4mM MgCl、4mMスペルミン、200mM KCl、0.04%ノニデットP−40。
酵素混合物:アッセイバッファー(12.5μl)、100mM DTT(0.5μl)、PARP−1(5nM、トレビゲン4668−500−01)、HO(35μlまで)。
ニコチンアミド−アデニン・ジヌクレオチド(NAD)/DNA混合物:[H−NAD](250μCi/ml、0.4μl、パーキン−エルマーNET−443H)、NAD(1.5mM、0.05μl、シグマN−1511)、ビオチニル化NAD(250μM、0.03μl、トレビゲン4670−500−01)、活性化子牛胸腺(1mg/ml、0.05μl、アマーシャムバイオサイエンス27−4575)、HO(10μlまで)。
顕色混合物:ストレプトアビジンSPAビーズ(5mg/ml、アマーシャムバイオサイエンスRPNQ0007)500mM EDTAに溶解。
【0200】
実験設計
反応は最終容量50μL/ウエルの96穴マイクロプレート中で実施する。5%DMSO/化合物溶液5μlを加え、酵素混合物(35μl)を加え、NAD/DNA混合物(10μL)を加えて反応開始させ、RTで2時間インキュベートする。顕色混合物(25μl)を加えて反応を停止し、RTで15分間インキュベートする。パッカード・トップカウント装置により測定する。
【実施例1】
【0201】
8−ベンジル−2,3−ジブロモイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−5(6H)−オン(A5)
工程1:N−(2,4,5−トリブロモ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール(A1)
THF中、2,4,5−トリブロモ−イミダゾールの溶液に、水素化ナトリウム(1eq.)を分割添加した。この混合物を20分間RTで攪拌し、SEM−Cl(1eq.)を加えた。この混合物をRTで16時間攪拌放置した。EtOで希釈した後、懸濁液を濾過し、澄明な溶液を減圧下に濃縮乾固した。油状残渣をPE/5%EtOAcに溶解し、シリカゲルカラムに加えた。PE/5%EtOAcで洗浄した後、生成物をPE/10%EtOAcで溶出した。真空下に溶媒を除去し、標題化合物を白色固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:5.31(s,2H),3.59(t,J=7.8Hz,2H),0.92(t,J=7.8Hz,2H),0.01(s,9H)。
【0202】
工程2:1−(4,5−ジブロモ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)−2−フェニルエタノール(A2)
工程1からのA1をTHFに溶かし、n−BuLi(1eq.、1.6Mヘキサン溶液)を−78℃で加えた。この混合物を45分間攪拌し、フェニルアセトアルデヒド(1.3eq.)を加えた。さらに40分間−78℃とした後、その混合物を冷却浴なしに10分間攪拌し、次いで、NHClにて反応停止した。この混合物をHOとEtOAcに分配した。有機相を濃縮し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、PE/EtOAcで溶出して精製し、標題化合物を無色油として得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ:7.14−7.34(m,5H),5.28(d,J=11.3Hz,1H),5.12(d,J=11.3Hz,1H),4.99(m,1H),3.44−3.57(m,2H),3.18−3.34(m,2H),2.59(d,J=6.2Hz,1H),0.75−0.98(m,2H),0.02(s,9H)。
【0203】
工程3:1−(4,5−ジブロモ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)−2−フェニルエタノン(A3)
DCM中、工程2からのA2の溶液に、DMP(1eq.)を加え、その混合物をRTで1時間攪拌した。混合物をEtOで希釈し、飽和水性NaHCO及び5%NaSの1:1混合物で洗浄した。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、濾過、濃縮乾固して標題化合物を無色固体として得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ:7.16−7.38(m,5H),5.80(s,2H),4.36(s,2H),3.42−3.59(m,2H),0.75−0.96(m,2H),−0.02(s,5),−0.09(s,4H)。
【0204】
工程4:1−(4,5−ジブロモ−1H−イミダゾール−2−イル)−2−フェニルエタノン(A4)
工程3からのA3をエタノール及び2M−HCl水(出発物質に関しては0.1M)の1:1混合物に懸濁した。この混合物を攪拌し、85℃で1時間加熱した。RTに冷却した後、混合物をEtOAcで希釈し、水性飽和NaHCOで洗った。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、濾過、減圧下に濃縮乾固した。標題化合物を無色固体として得た。MS(ES)C11BrO 要求値:344,実測値:345(M+H)
【0205】
工程5:8−ベンジル−2,3−ジブロモイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−5(6H)−オン(A5)
工程4からのA4、エチル・カルバゼート(1.8eq.)及びトシルスルホン酸(0.08eq.)をトルエン(出発物質に関しては0.36M)中で攪拌還流した。2時間還流した後、この混合物を電子レンジ中で30分間160℃に加熱した。RTに冷却した後、減圧下に溶媒を除去し、生成物を分取用RP−HPLCにより、HO/ACN(0.1%TFA)を溶出液として単離した。プールした生成物フラクションを凍結乾燥した後、生成物を淡黄色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ:12.28(s,1H),7.18−7.35(m,5H),4.11(s,2H).MS(ES)C12BrO 要求値:384,実測値:385(M+H)
【実施例2】
【0206】
塩化4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−1,4−ジアゼパン−1−イウム(B9)
工程1:N−(2−ブロモ−4,5−ジクロロ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール(B1)
THF中、2−ブロモ−4,5−ジクロロ−イミダゾールの溶液に、NaHを分割添加した。この混合物を20分間RTで攪拌し、SEM−Clを加えた。この混合物をRTで16時間攪拌放置した。EtOで希釈した後、懸濁液を濾過し、澄明な溶液を濃縮乾固した。残渣をPE/5%EtOAcに溶解し、シリカゲルカラムに加えた。PE/5%EtOAcで洗浄した後、生成物をPE/10%EtOAcで溶出した。真空下に溶媒を除去し、標題化合物を黄色固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:5.27(s,2H),3.65−3.53(m,2H),0.96−0.88(m,2H),0.07(s,9H)。
【0207】
工程2:2−フルオロ−5−[(E,Z)−2−メトキシビニル]ベンゾニトリル(B2)
アルゴン下、無水エーテル及びTHF(1:1)中、塩化(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム(2−フルオロ−5−ホルミルベンゾニトリルに関して1.25eq.;下記参照)の懸濁液(0.22M)に、t−BuOK(1.25eq.、1M/乾燥THF)の溶液を−78℃で5分間を要して滴下した。混合物を−78℃で30分間攪拌し、次いで、0℃で30分間攪拌し、再度−78℃に冷却した。乾燥THF中、2−フルオロ−5−ホルミルベンゾニトリル(1eq.)の溶液(0.4M)を加え、得られた溶液をRTで一夜攪拌した。この混合物をHOとDCMに分配した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過、濃縮乾固した。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、(例えば、PE/EtOAc3〜20%で)溶出して精製し、標題化合物を無色油として得た;このものはRTに放置すると固化した。H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.92−7.85(m,0.6H),7.69−7.62(m,0.6H),7.43−7.36(m,0.8H),7.12−7.03(m,1H),6.98(d,J=12.9Hz,0.4H),6.20(d,J=6.8Hz,0.6H),5.71(d,J=12.9Hz,0.4H),5.14(d,J=6.8Hz,0.6H),3.80(s,1.8H),3.68(s,1.2H)。
【0208】
工程3:2−フルオロ−5−(2−オキソエチル)ベンゾニトリル(B3)
工程2からのB2を2M−HCl/EtO(出発物質に関して0.13M)に溶かした。その混合物をRTで90分間攪拌し、激しく攪拌しながら固形のNaHCOを分割添加して、pH5に中和した。NaSOを加え、5分間攪拌を続けた。塩を濾去し、溶液をモルシーブA3で乾燥した。減圧下に溶媒を除去した。粗標題化合物を無色油として得て、さらに精製することなく次工程で使用した。H NMR(300MHz,CDCl)δ:9.80(s,1H),7.53−7.15(m,3H),3.78(s,2H)。
【0209】
工程4:5−[2−(4,5−ジクロロ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)−2−ヒドロキシエチル]−2−フルオロベンゾニトリル(B4)
工程1からのB1をTHFに溶解し(0.14M)、n−BuLi(1eq.)を−78℃で加えた。混合物を45分間攪拌し、工程3からの粗B3(1.3eq.)を加えた。さらに40分間−78℃とした後、混合物を冷却浴なしに10分間攪拌し、次いで、飽和NHCl水溶液を加えて反応停止した。混合物をHOとEtOAcに分配した。有機相を濃縮し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、PE/EtOAc(8〜50%)で溶出して精製し、標題化合物を無色油として得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ:7.55−7.45(m,2H),7.19−7.06(m,1H),5.40−5.22(m,2H),4.95−4.84(m,1H),4.14−4.04(m,1H),3.61−3.46(m,2H),3.34−3.14(m,2H),0.92−0.80(m,2H),0.00(s,9H)。MS(ES)C1822ClFNSi 要求値:429,実測値:452(M+Na)
【0210】
工程5:5−[2−(4,5−ジクロロ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)−2−オキソエチル]−2−フルオロベンゾニトリル(B5)
DCM中、工程4からのB4の溶液に、DMP(1eq.)を加え、その混合物をRTで1時間攪拌した。混合物をEtOで希釈し、飽和水性NaHCOと5%NaSの1:1混合物で洗浄した。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、濾過、濃縮乾固し、標題化合物を淡黄色固体として得た。MS(ES)C1820ClFNSi 要求値:427,実測値:450(M+Na)
【0211】
工程6:5−[2−(4,5−ジクロロ−1H−イミダゾール−2−イル)−2−オキソエチル]−2−フルオロベンゾニトリル(B6)
工程5からのB5をエタノールと2M−HCl水の1:1混合物に懸濁した(出発物質に関しては0.04M)。混合物を攪拌し、85℃で90分間加熱した。RTに冷却した後、混合物をEtOAcで希釈し、食塩水で洗った。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、濾過、減圧下に濃縮乾固した。標題化合物は淡黄色固体として得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ:7.88−7.35(m,3H),4.41(s,2H)。 MS(ES)C12l2FNO 要求値:297,実測値:298(M+H)
【0212】
工程7:5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾニトリル(B7)
工程6からのB6及びエチル・カルバゼート(1.25eq.)をDMF中(出発物質に関しては1.4M)攪拌、100℃に加熱した。25分後、混合物を3倍容量のDMFに希釈し、電子レンジ中で30分間160℃に加熱した。RTに冷却した後、混合物をEtOAcで希釈し、飽和水性NHClで洗った。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、濾過、減圧下に濃縮乾固した。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、EtOAc/PE(12〜100%)で溶出して精製し、生成物を黄色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ:12.87(s,1H),7.90−7.72(m,2H),7.54−7.42(m,1H),4.19(s,2H)。MS(ES)C13l2FNO 要求値:337,実測値:338(M+H)
【0213】
工程8:5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロ安息香酸(B8)
水性NaOH中、工程7からのB7の懸濁液(20%)を攪拌し、25分間90℃に加熱した。この懸濁液を1N−HClで酸性とし、形成された黄色沈殿を濾取し、高真空下で乾燥した。H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ:13.01(s,br,1H),12.83(s,1H),7.85−7.78(m,1H),7.63−7.52(m,1H),7.30−7.18(m,1H),4.16(s,2H)。MS(ES)C13l2FN 要求値:356,実測値:357(M+H)
【0214】
工程9:塩化4−{5−[(2,3−ジクロロ−5−オキソ−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−d][1,2,4]トリアジン−8−イル)メチル]−2−フルオロベンゾイル}−1,4−ジアゼパン−1−イウム(B9)
工程8からのB8をDMFに溶解した(出発物質に関しては0.3M)。DIEA(1eq.)及びHBTU(1eq.)を加え、混合物を5分間攪拌した。1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(1eq.)を加え、45分間攪拌を続けた。この混合物をEtOAcで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液で洗った。有機相をNaSOで乾燥し、濾過、濃縮乾固した。残存する油状残渣を6M−HCl水とEtOHの3:1混合物に懸濁し、混合物を室温で1時間攪拌した。混合物に水性飽和NaHCOを加えて反応停止させ、DMFとHOで希釈した。濾過後、生成物を分取用RP−HPLC(溶出液:ACN、HO、共に0.1%TFA)により単離した。プールした生成物フラクションをSCXカートリッジに添加した。カートリッジをHOで洗い、生成物を2Mアンモニア/MeOHで溶出した。減圧下に溶媒を除去し、残渣をACN/HO(1:1)に溶かした。1当量のHCl(1N−HCl水)を加え、その溶液を凍結乾燥して標題化合物を白色粉末として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ:12.88(s,1H),9.00(s,2H),7.48−7.21(m,3H),4.33−4.12(m,2H),3.90−3.41(m,4H),3.39−3.08(m,4H),2.09−1.85(m,2H)。MS(ES)C1817ClFN 要求値:438,実測値:439(M+H)
【0215】
以下の実施例化合物は上記の実施例にしたがって調製した。
【0216】
【化13−1】

【0217】
【化13−2】

【0218】
【化13−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
aは、0又は1であり;
bは、0、1、2、又は3であり;
cは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
dは、0又は1であり;
eは、0又は1であり;
fは、0又は1であり;
gは、0又は1であり;
hは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
iは、0又は1であり;
jは、0又は1であり;
Xは、N又はCHであり;
Yは、C6−10アリール、O、N、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員の不飽和ヘテロ環、又は1、2、3、若しくは4個の窒素原子を含む、6員の不飽和ヘテロ環であり;
Zは、C又はSOであり;
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、又はハロC1−6アルコキシであり;
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、又はハロC1−6アルコキシであり;
は、水素又はC1−6アルキルであり:
は、水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、ハロゲン、C1−6アルキル、C2−10アルケニル、ハロC1−6アルキル、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、ニトロ、又は環(該環はC6−10アリール;C6−10アリールオキシ;C6−10アリールカルボニル;C3−10シクロアルキル;アゼチジニル;1、2、若しくは3個のN原子及び0個若しくは1個のO原子を含む、5、6、若しくは7員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環;N、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員のヘテロ芳香環;1、2、若しくは3個の窒素原子を含む、6員のヘテロ芳香環;又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の不飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環であり;その環のいずれもがA−(CHから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい)であり;
Aは、それぞれ独立して、単結合、O、C=O、(C=O)NR、NR(C=O)、(C=O)O、O(C=O)、(C=S)NR、NR、S(O)、又はNR(S(O))であり;
qは、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり;
rは、0、1、又は2であり;
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、C1−6アルキル、C2−10アルケニル、ハロC1−6アルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、又は環(該環はC3−10シクロアルキル;C6−10アリール;アゼチジニル;1、2、若しくは3個のN原子及び0個若しくは1個のO原子を含む、5、6、若しくは7員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環;N、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員のヘテロ芳香環;1、2、若しくは3個の窒素原子を含む、6員のヘテロ芳香環;又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の不飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環であり;その環のいずれもがRから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい)であり;
は、水素又はRであり;また
は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−10アルケニル、ハロC1−6アルキル、ハロC1−6アルコキシ、−O(C=O)C1−6アルキル、−(C=O)OC1−6アルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリール;N、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含むが、O又はSについては1個を超えない、5員のヘテロ芳香環;又は1、2、若しくは3個の窒素原子を含む、6員のヘテロ芳香環である]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体
【請求項2】
式(II):
【化2】

[式中、a、b、d、e、h、j、R、R、R、R、及びXは、請求項1に定義のとおりである]
で示される請求項1の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項3】
式(III):
【化3】

[式中、
a、b、j、q、A、R、R、R、X、及びYは、請求項1に定義のとおりであり;
tは、0、1、2、又は3であり;
tが0の場合、BはCHであり;
tが1、2、又は3である場合、BはCH、NH、又はOであり;
wは、0、1、2、又は3である]
で示される請求項1の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項4】
式(IV):
【化4】

[式中、
a、b、j、q、A、R、R、R、及びXは、請求項1に定義のとおりであり;
wは、0、1、2、又は3であり;
Cは、アゼチジニル、1、2、若しくは3個のN原子及び0個若しくは1個のO原子を含む、5員若しくは6員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環、又はN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、若しくは4個のヘテロ原子を含む、7〜10員の飽和若しくは部分的飽和へテロ環状環である]
で示される請求項1の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項5】
が、A−(CHから独立して選択される1個以上の基により置換されていてもよい、ジアゼパニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ジアゾニアスピロ[3.5]ノナニル、オクタヒドロピロロピロリル、ジアゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアゾニアスピロ[4.5]デカニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、又はテトラヒドロトリアゾロピラジニルである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
が、それぞれ独立して、ハロC1−6アルキル又はハロゲンである、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
bが、1であり、Rが、ハロゲンである、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記請求項のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体を薬学的に許容される担体と共に含有してなる医薬組成物。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体と抗癌剤とからなる、同時に、別個に、又は連続して投与するための併用剤。
【請求項10】
治療に使用するための請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項11】
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害により改善し得る症状の治療又は予防用医薬の製造のための、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体の使用。
【請求項12】
癌、炎症性疾患、再潅流傷害、虚血性症状、脳卒中、腎不全、心血管系疾患、心血管系疾患以外の脈管系疾患、糖尿病、神経変性疾患、レトロウイルス感染、網膜傷害、皮膚老化、又はUV誘発皮膚傷害の治療又は予防用医薬の製造のための請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体の使用。
【請求項13】
癌治療のための化学的−又は放射線−増感剤としての請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体の使用。
【請求項14】
癌、炎症性疾患、再潅流傷害、虚血性症状、脳卒中、腎不全、心血管系疾患、心血管系疾患以外の脈管系疾患、糖尿病、神経変性疾患、レトロウイルス感染、網膜傷害、皮膚老化、又はUV誘発皮膚傷害の治療又は予防方法であって、請求項1記載の化合物又は請求項1記載の化合物を含有してなる組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを特徴とする前記方法。

【公表番号】特表2010−509198(P2010−509198A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535136(P2009−535136)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050678
【国際公開番号】WO2008/056187
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】