説明

ポンプ装置および動力伝達装置並びに車両

【課題】電磁ポンプの始動性の向上を図る。
【解決手段】機械式オイルポンプ42が作動している最中には、切替バルブ60により、機械式オイルポンプ42から入力ポート62g,出力ポート62h,電磁弁100の吸入ポート123a,吸入用逆止弁,ポンプ室,吐出用逆止弁,吐出ポート123b,切替バルブ60の入力ポート62d,ドレンポート62fを順に介して作動油が循環するよう循環回路を形成する。これにより、電磁弁100を電磁ポンプに代えて調圧バルブとして機能させているときにポンプ室内のエア溜まりを抑制することができる。次に、電磁ポンプとして機能させたときに迅速に始動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室を有しピストンの往復動により作動流体を圧送する第1のポンプを備えるポンプ装置およびポンプ装置を備え摩擦係合要素を介して原動機からの動力を伝達する動力伝達装置並びにこれを搭載する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動力伝達装置としては、エンジンからの動力により駆動する油圧ポンプ(機械式ポンプ)と、シフト操作に連動するマニュアルシフトバルブと、油圧ポンプにマニュアルシフトバルブを介して入力ポートが接続されたソレノイドバルブと、ソレノイドバルブの出力ポートと摩擦係合装置(クラッチ)とを接続する油路に介在しこの油路を連通する第1のポジションと油路を遮断する第2のポジションとを選択する2ポジションの電磁弁として構成された選択バルブと、クラッチに吐出圧を直接に供給する電磁ポンプと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−180303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電磁ポンプを機械式ポンプの補助的な使用を考えると、電磁ポンプは駆動と停止とが間欠的に行なわれるため、電磁ポンプを停止したときにポンプ室内にエア溜まりが発生することがある。この場合、次に、電磁ポンプを始動しようとしたときに油圧が発生するまでに時間を要するから、迅速にクラッチに油圧を供給することができない。
【0005】
本発明のポンプ装置および動力伝達装置並びに車両は、ポンプ室を有しピストンの往復動により作動流体を圧送するポンプを備えるものにおいて、ポンプの始動性をより向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポンプ装置および動力伝達装置並びに車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のポンプ装置は、
吸入用の第1の開閉弁と吐出用の第2の開閉弁との間の空間をポンプ室として用いて、ピストンの往復動により作動流体を圧送する第1のポンプと、
前記第1のポンプの作動に伴って供給元からの作動流体を前記第1の開閉弁と前記ポンプ室と前記第2の開閉弁とを介して作動対象に供給する第1の流路と、
前記第1のポンプとは異なる第2のポンプから圧送された作動流体を前記ポンプ室に供給する第2の流路と、
前記第1の流路と前記第2の流路のいずれかを選択する選択器と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のポンプ装置では、第1のポンプの作動に伴って供給元からの作動流体を第1の開閉弁とポンプ室と第2の開閉弁とを介して作動対象に供給する第1の流路と、第1のポンプとは異なる第2のポンプから圧送された作動流体をポンプ室に供給する第2の流路とを設け、選択器により第1の流路と第2の流路のいずれかを選択する。これにより、第2のポンプから圧送された作動流体によりポンプ室のエア溜まりを排出することができるから、エア溜まりに起因する始動性の悪化を防止すなわちポンプの始動性をより向上させることができる。
【0009】
こうした本発明のポンプ装置において、前記選択器は、前記第1のポンプが作動している最中に前記第1の流路を選択し、前記第1のポンプが停止している最中に前記第2の流路を選択するものとすることもできる。
【0010】
また、本発明のポンプ装置において、前記第2の流路は、前記第2のポンプから圧送された作動流体を前記第1の開閉弁を介して前記ポンプ室に供給する流路であるものとすることもできる。こうすれば、第2の流路の一部を第1の流路と共用するものとなるため、流体圧回路をよりコンパクトなものとすることができる。この場合、前記第2の流路は、前記第2のポンプから圧送された作動流体を前記第1の開閉弁と前記ポンプ室と前記第2の開閉弁とを介してドレンする循環流路であるものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明のポンプ装置において、前記第1のポンプは、前記第2のポンプが停止している最中に作動し、前記第2のポンプが作動している最中に停止するよう制御されるポンプであり、前記選択器は、前記第2のポンプからの流体圧により作動し、前記第2のポンプからの流体圧が作用していないときには前記第1の流路を開放すると共に前記第2の流路を遮断し、前記第2のポンプから流体圧が作用しているときには前記第1の流路を遮断すると共に前記第2の流路を開放する切替バルブであるものとすることもできる。ここで、「切替バルブ」としては、第1の流路と第2の流路のそれぞれの開放と遮断とを一つの切替バルブにより行なうものの他、第1の流路の開放と遮断とを行なうバルブと第2の流路の開放と遮断とを行なうバルブとを別々に設けるものも含まれる。
【0012】
本発明の動力伝達装置は、
上述した本発明のポンプ装置を備え、前記作動対象としての摩擦係合要素を介して原動機からの動力を伝達する動力伝達装置であって、
前記第2のポンプから圧送された作動流体を前記摩擦係合要素の流体圧サーボに供給する第3の流路を備え、
前記第1のポンプは、電力の供給を受けて作動流体を圧送するポンプであり、
前記第2のポンプは、前記原動機からの動力により作動流体を圧送するポンプであり、
前記切替バルブは、さらに、前記第2のポンプからの流体圧が作用しているときには前記第3の流路を開放し、前記第2のポンプからの流体圧が作用していないときには前記第3の流路を遮断するバルブである
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の動力伝達装置では、上述した本発明のポンプ装置を備えるから、第1のポンプの始動性をより向上させることができる結果、第1のポンプから摩擦係合要素の流体圧サーボに迅速に作動流体を供給することができる。また、第2のポンプからの流体圧により切替バルブにより、第2のポンプから圧送された作動流体を流体圧サーボに供給する第3の流路の開放と遮断とを切り替えることができる。
【0014】
こうした本発明の動力伝達装置において、前記第1のポンプは、電磁力を発生させる電磁部を備え、該電磁部の電磁力により前記ピストンを往復動させることにより作動流体を圧送する電磁ポンプとして機能し、前記ポンプ室と区画された調圧室を有し前記電磁部の電磁力を用いて前記第1のポンプからの流体圧を調圧して出力する調圧バルブとしても機能する電磁弁であるものとすることもできる。こうすれば、装置をよりコンパクトなものとすることができる。この態様の本発明の動力伝達装置において、前記第1のポンプは、前記ポンプ室として用いられる第1の流体室と前記作動対象に接続された第2の流体室とを区画するピストンと、電磁力により前記ピストンを往動させる電磁部と、前記ピストンに前記電磁部の電磁力と対向する向きに弾性力を付与することにより前記ピストンを復動させる弾性部材と、前記第1の流体室への作動流体の移動を許可する方向に取り付けられた前記第1の開閉弁と、前記第1の流体室と前記第2の流体室とを接続する流路に設けられ該第1の流体室から該第2の流体室への作動流体の移動を許可する方向に取り付けられた前記第2の開閉弁と、を備え、前記ピストンは、往動するときには前記第1の流体室の容積を小さくすると共に前記第2の流体室の容積を大きくし且つ復動するときには前記第1の流体室の容積を大きくすると共に前記第2の流体室の容積を小さくするよう前記第1の流体室と前記第2の流体室とを区画し、往復動に伴う前記第1の流体室の容積変化が前記第2の流体室の容積変化よりも大きくなるよう形成されてなるものとすることもできる。こうすれば、ポンプの圧縮効率を高めることができる結果、第1のポンプの性能をさらに向上させることができる。この場合、前記第2の流路は、前記第2のポンプから前記第1の開閉弁,前記第1の流体室,前記第2の開閉弁,前記第2の流体室を順に介して作動流体が循環するよう形成されてなるものとすることもできる。
【0015】
第1のポンプが調圧バルブとして機能すると共に電磁ポンプとしても機能する態様の本発明の動力伝達装置において、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁は、前記電磁弁に内蔵されてなるものとすることもできるし、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁は、前記切替バルブに内蔵されてなるものとすることもできる。前者の場合にはポンプ室の容積を縮小することができ、エアの混入を抑制することができる。なお、後者の場合、前記切替バルブは、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁とにより囲まれる空間が前記電磁弁に接続されて前記ポンプ室の一部として用いられ、前記第2のポンプからの流体圧を信号圧として入力する信号圧用入力ポートと前記第1の開閉弁の流入側に作動流体を入力する吸入用ポートと前記第2の開閉弁の流出側から前記摩擦係合要素の流体圧サーボに作動流体を出力する吐出用ポートと前記第2の開閉弁の流出側から作動流体を排出する排出用ポートと作動流体の供給元に接続された第1の入力ポートと前記第2のポンプから圧送された作動流体を入力する第2の入力ポートとバルブ外の流路を介して前記吸入用ポートに接続された第1の出力ポートと前記電磁弁の調圧室に接続された第3の入力ポートと前記摩擦係合要素の流体圧サーボに接続された第2の出力ポートとを有する中空部と、前記中空部内を摺動するスプールと、前記中空部内に配置された前記第1の開閉弁および前記第2の開閉弁と、を備え、前記信号圧用入力ポートに流体圧が入力されているときには前記第2のポンプから圧送された作動流体が前記第2の入力ポート,前記第1の出力ポート,前記吸入用ポート,前記排出用ポートを順に介して作動流体が循環すると共に前記電磁弁の調圧室からの作動流体が前記第3の入力ポート,前記第2の出力ポートを介して前記流体圧サーボに供給され、前記信号圧用入力ポートに流体圧が入力されていないときには前記作動流体の供給元から前記第1の入力ポート,前記第1の出力ポート,前記吸入用ポート,前記第1のポンプ,前記吐出用ポートを順に介して前記流体圧サーボに供給されると共に前記第3の入力ポートと前記第2の出力ポートとが遮断されるよう、前記スプールが作動するものとすることもできる。
【0016】
本発明の車両は、
上述した各態様のいずれかの本発明の動力伝達装置、即ち、基本的には、吸入用の第1の開閉弁と吐出用の第2の開閉弁との間の空間をポンプ室として用いて、ピストンの往復動により作動流体を圧送する第1のポンプと、前記第1のポンプの作動に伴って供給元からの作動流体を前記第1の開閉弁と前記ポンプ室と前記第2の開閉弁とを介して作動対象に供給する第1の流路と、前記第1のポンプとは異なる第2のポンプから圧送された作動流体を前記ポンプ室に供給する第2の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路のいずれかを選択する選択器と、を備えるポンプ装置を有する動力伝達装置を備えることを要旨とする。
【0017】
この本発明の車両では、本発明の動力伝達装置を搭載するから、動力伝達装置が奏する効果と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例としての動力伝達装置20を搭載する車両10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】自動変速機構30の作動表である。
【図3】自動変速機構30の各回転要素の回転速度の関係を示す共線図である。
【図4】油圧回路40の構成の概略を示す構成図である。
【図5】電磁弁100の構成の概略を示す構成図である。
【図6】ポンプ室139におけるスプール124の前面の受圧面積と第2のポンプ室149におけるスプール124の背面の受圧面積を説明する説明図である。
【図7】変形例の油圧回路40Bの構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例の油圧回路40Cの構成の概略を示す構成図である。
【図9】電磁ポンプ200の構成の概略を示す構成図である。
【図10】変形例の油圧回路40Dの構成の概略を示す構成図である。
【図11】変形例の電磁弁300の構成の概略を示す構成図である。
【図12】図10の油圧回路40Dにおける電磁弁300と切替バルブ150とを拡大した拡大図である。
【図13】図10の油圧回路40Dにおける電磁弁300と切替バルブ150とを拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の一実施例としての動力伝達装置20を搭載する車両10の構成の概略を示す構成図であり、図2は自動変速機構30の作動表である。
【0021】
実施例の動力伝達装置20は、図示するように、例えば、FF(フロントエンジンフロントドライブ)タイプの車両10に搭載されるものとして構成されており、エンジン用電子制御ユニット(EGECU)16による制御を受けて運転するエンジン12からの動力をトルクの増幅を伴って伝達するロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ26と、トルクコンバータ26からの動力を変速を伴って車輪18a,18bに伝達する自動変速機構30と、装置全体をコントロールするATECU29とを備える。実施例の車両10は、エンジン12と動力伝達装置20とを含む車両全体をコントロールするメインECU90を備えており、EGECU16やATECU29に対して通信により互いに制御信号やエンジン12,動力伝達装置20の運転状態に関するデータのやり取りを行なっている。このメインECU90には、シフトレバー91の操作位置を検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジションSPやアクセルペダル93の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル95の踏み込みを検出するブレーキスイッチ96からのブレーキスイッチ信号BSW,車速センサ98からの車速Vなどが入力されている。
【0022】
トルクコンバータ26は、エンジン12のクランクシャフト14に接続されたポンプインペラ26aと、自動変速機構30の入力軸22に接続されポンプインペラ26aに対向配置されたタービンランナ26bとを備え、ポンプインペラ26aによりエンジントルクを作動油の流れに変換すると共にこの作動油の流れをタービンランナ26bが入力軸22上のトルクに変換することによりトルクの伝達を行なう。また、トルクコンバータ26は、ロックアップクラッチ26cを内蔵しており、ロックアップクラッチ26cを係合することによりエンジンのクランクシャフト14と自動変速機構30の入力軸22とを直結して直接にエンジントルクを伝達する。
【0023】
自動変速機構30は、プラネタリギヤユニットPUと三つのクラッチC1,C2,C3と二つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。プラネタリギヤユニットPUは、ラビニヨ式の遊星歯車機構として構成されており、外歯歯車の二つのサンギヤS1,S2と、内歯歯車のリングギヤRと、サンギヤS1に噛合する複数のショートピニオンギヤPSと、サンギヤS2および複数のショートピニオンギヤPSに噛合すると共にリングギヤRに噛合する複数のロングピニオンギヤPLと、複数のショートピニオンギヤPSおよび複数のロングピニオンギヤPLとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリアCRと、を備え、サンギヤS1はクラッチC1を介して入力軸22に接続されており、サンギヤS2はクラッチC3を介して入力軸22に接続されると共にブレーキB1によりその回転が自由にまたは禁止されるようになっており、リングギヤRは出力軸24に接続されており、キャリアCRはクラッチC2を介して入力軸22に接続されている。また、キャリアCRは、ワンウェイクラッチF1によりその回転が一方向に規制されると共にワンウェイクラッチF1に対して並列的に設けられたブレーキB2によりその回転が自由にまたは禁止されるようになっている。なお、出力軸24に出力された動力は、図示しないカウンタギヤやデファレンシャルギヤを介して車輪18a,18bに伝達される。
【0024】
また、自動変速機構30は、図2の作動表に示すように、クラッチC1〜C3とブレーキB1,B2のオンオフの組み合わせにより前進1速〜4速と後進とを切り替えることができるようになっている。なお、図3に、自動変速機構30の各変速段におけるサンギヤS1,S2とリングギヤRとキャリアCRの回転速度の関係を示す共線図を示す。
【0025】
自動変速機構30におけるクラッチC1〜C3のオンオフとブレーキB1,B2のオンオフは、油圧回路40により行なわれる。図4は、油圧回路40の構成の概略を示す構成図である。油圧回路40は、図示するように、エンジン12からの動力により図示しないオイルパンからストレーナ41を介して作動油を吸引してライン圧用油路51に圧送する機械式オイルポンプ42と、ライン圧用油路51内の油圧を調圧してライン圧PLを生成するレギュレータバルブ44と、ライン圧PLから図示しないモジュレータバルブを介して生成されるモジュレータ圧PMODを調圧して信号圧として出力することによりレギュレータバルブ44を駆動するリニアソレノイドSLTと、ライン圧用油路51に接続されてライン圧PLを入力する入力ポート46aとドライブポジション用出力ポート(Dポート)46bとリバースポジション用出力ポート(Rポート)46cなどが形成されシフトレバー91の操作に連動して入力ポート46aと各出力ポート46b,46cとの間の連通と遮断とを行なうマニュアルバルブ46と、マニュアルバルブ46のDポート46bに接続されたDポート用油路52を介して入力ポートが接続されDポート46bからの油圧を入力ポート122aを介して入力し調圧して出力ポート122bから出力するリニアソレノイドとして機能すると共にストレーナ41から吸入用油路55を介して吸入ポート123aから作動油を吸入し吐出ポート123bから吐出する電磁ポンプとしても機能する電磁弁100と、ライン圧用油路51と電磁弁100の出力ポート122bの出力ポート用油路53と吸入ポート123aの吸入ポート用油路56と吐出ポート123bの吐出ポート用油路57とクラッチC1のクラッチ用油路54とに接続されライン圧用油路51からのライン圧PLにより作動して各油路間の連通と遮断とを切り替える切替バルブ60と、クラッチC1のクラッチ用油路54に接続されたアキュムレータ48などにより構成されている。なお、図4では、クラッチC1以外の他のクラッチC2,C3やブレーキB1,B2の油圧系については本発明の中核をなさないから省略しているが、これらの油圧系については周知のリニアソレノイドなどを用いて構成することができる。以下、電磁弁100についてさらに詳細に説明する。
【0026】
図5は、電磁弁100の構成の概略を示す構成図である。電磁弁100は、図示するように、電磁コイル112への電流の印加によりコア114に形成される磁気回路によってプランジャ116を吸引することによりシャフト118を押し出すソレノイド部110と、このソレノイド部110によりシャフト118を介して駆動されて調圧弁として機能すると共に電磁ポンプとしても機能するバルブ部120とを備える。
【0027】
バルブ部120は、バルブボディ102に組み込まれ一端がソレノイド部110のケース111に取り付けられた略円筒状のスリーブ122と、スリーブ122の内部空間に挿入され一端がソレノイド部110のシャフト118の先端に当接されたスプール124と、スリーブ122の他端にネジ止めされたエンドプレート126と、エンドプレート126をスプリング受けとして用いてスプール124の他端をソレノイド部110側の方向へ付勢するスプリング128とを備える。
【0028】
スプール124は、略円筒状のスプール本体124aと、ソレノイド部110のシャフト118の先端に当接されスプール本体124aよりも外径が小さな円筒状のシャフト部124bとにより形成されており、ソレノイド部110のシャフト118により押し出されてスリーブ122内を摺動する。
【0029】
バルブ部120には、その中間部に入力ポート122aと出力ポート122bとドレンポート122cとフィードバックポート122dとが形成されており、バルブ部120を調圧弁として機能させるときには、スプール124の外壁とスリーブ122の内壁とより囲まれる空間を調圧室129として用いることにより、入力ポート122aに入力された油圧を一部のドレンポート122cへの排出を伴って調圧しながら出力ポート122bから出力することができる。
【0030】
バルブ部120には、その両端部に吸入ポート123aと吐出ポート123bとが形成されている。また、エンドプレート126には吸入ポート123aに連通するよう吸入用逆止弁130が組み込まれ、スプール124には吐出ポート123bに連通するよう吐出用逆止弁140が組み込まれている。したがって、エンドプレート126とスプール124とスリーブ122により囲まれる空間をポンプ室139として用いると共にスプール124をピストンとして用いることにより、スプリング128の付勢力によりスプール124が押し戻されているときには、ポンプ室139内の容積の増加によりポンプ室139に発生する負圧によって吸入用逆止弁130が開弁すると共に吐出用逆止弁140が閉弁して、作動油を吸入ポート123aからポンプ室139内に吸入し、ソレノイド部110からの電磁力によりスプール124が押し出されているときには、ポンプ室139内の容積の減少によりポンプ室139に発生する正圧によって吸入用逆止弁130が閉弁すると共に吐出用逆止弁140が開弁して、ポンプ室139内に吸入した作動油を吐出ポート123bから吐出する。なお、吸入用逆止弁130は、エンドプレート126と一体化されポンプ室139と吸入ポート123aとを連通するよう軸中心に大径と小径の段差を有する中心孔132aが形成された中空円筒状の本体と、中心孔132aに挿入されたボール134と、このボール134を小径側の本体に押し付けるスプリング136と、本体に圧入あるいは螺合により取り付けられてスプリング136を受ける中空円筒状のスプリング受け138とを備える。一方、吐出用逆止弁140は、スプール124と一体化されポンプ室139と連通するよう軸中心に凹状に中心孔142aが形成されると共に吐出ポート123bと連通するよう径方向に中心孔142aに連通する連通孔142bが形成された本体と、中心孔142aの底をスプリング受けとして中心孔142aに挿入されたスプリング146と、スプリング146を挿入した後に中心孔142aに挿入されたボール144と、中心孔142aに挿入されてボール144を受ける中空円筒状のボール受け148と、ボール受け148を本体142に固定するためのスナップリング148aと、を備える。
【0031】
また、バルブ部120には、ソレノイド部110寄りの部位に、全周に亘って彫り込まれた溝125aを挟んでスプール本体124aが摺動する摺動面125bとこの摺動面125bよりも小さい内径でシャフト部124bが摺動する摺動面125cとが段差をもって形成されており、スプール124が挿入された状態で溝125aとスプール本体124aの背面とにより囲まれる空間149を形成する。この空間149は、スプール124がスプール124aとこれよりも外径の小さなシャフト部124bとにより形成されていることから、ソレノイド部110の電磁力によりスプール124が押し出されると容積が大きくなる方向に変化し、スプリング128の付勢力によりスプール124が押し戻されると容積が小さくなる方向に変化する。空間149は、ポンプ室139の容積変化よりも小さくなるよう形成されていることから、電磁コイル112への通電を伴ってソレノイド部110からの電磁力によりスプール124が押し出されると、ポンプ室139の容積が減少する分とその空間149の容積が増加する分との差分に相当する作動油がポンプ室139から吐出用逆止弁140を介して送られて吐出ポート123bから吐出されることになり、電磁コイル32への通電の停止に伴ってスプリング128の付勢力によりスプール124が押し戻されると、空間149の容積が減少する分の作動油が直接に吐出ポート123bから吐出されることになる。したがって、この空間149は、内部の作動油をスプリング128の付勢力によるスプール124の押し戻しによって圧送するポンプ室として機能する。以下、この空間149を第2のポンプ室149と呼ぶ。
【0032】
図6は、ポンプ室139におけるスプール124の前面の受圧面積と第2のポンプ室149におけるスプール124の背面の受圧面積を説明する説明図である。ポンプ室139におけるスプール124の前面の受圧面積をA1とし、第2のポンプ室149におけるスプール124の背面の受圧面積をA2とすると、ソレノイド部110からの電磁力によりポンプ室139から吐出用逆止弁140と第2のポンプ室149とを介して吐出される作動油の吐出圧P1は、次式(1)により表わすことができ、スプリング128の付勢力(スプリング力)F2により第2のポンプ室149から直接に吐出される作動油の吐出圧P2は、次式(2)により表わすことができる。ここで、式中の「F1」はソレノイド部110の電磁力を示し、「F2」はスプリング力を示し、「F3」はスプリング力によりスプール124が押し戻される際にポンプ室139に生じる負圧により逆方向に生じる力を示す。負圧による力F3はスプリング力F2に比べて十分に小さく且つ第2のポンプ室149における受圧面積A2はポンプ室139における受圧面積A1よりも小さいから、電磁力F1によりスプリング力F2に抗してスプール124を押し出すことができる範囲内(F1>F2)でスプリング力F2を電磁力F1に近づける(大きくする)ことにより、吐出圧P2を吐出圧P1よりも大きくすることができる。即ち、電磁ポンプ20全体の1周期当たりの吐出圧のピークをスプリング128のスプリング力F2を設定することにより調整することができるのである。なお、式(2)に示すように、スプール124のシャフト部124bの径を大きくして第2のポンプ室149におけるスプール124の受圧面積A2を小さくすると、スプリング力F2によるスプール124の復動による吐出圧P2は大きくなり、吐出量は減少する。この場合、電磁力F1によるスプール124の往動による吐出量が増加するから、1周期当たりの吐出量としては変わらない。
【0033】
P1=(F1-F2)/A1 …(1)
P2=(F2-F3)/A2 …(2)
【0034】
切替バルブ60は、図4に示すように、各種ポートが形成されたスリーブ62と、スリーブ62内を軸方向に摺動するスプール64と、スプール64を軸方向に付勢するスプリング66とにより構成されている。スリーブ62には、各種ポートとして、ライン圧用油路51に接続されライン圧PLを信号圧として入力する信号圧用入力ポート62aと、機械式オイルポンプ42を介さずにストレーナ41に連結された吸入用油路55に接続された入力ポート62bと、出力ポート用油路53(電磁弁100の出力ポート122b)に接続された入力ポート62cと、吐出ポート用油路57(電磁弁100の吐出ポート123b)に接続された入力ポート62dと、クラッチC1のクラッチ用油路54に接続された出力ポート62eと、ドレンポート62fと、ライン圧用油路51に接続された入力ポート62gと、吸入ポート用油路56(電磁弁100の吸入ポート123a)に接続された出力ポート62hとが形成されている。切替バルブ60は、ライン圧PLが信号圧用入力ポート62aに入力されているときには、スプリング66の付勢力に打ち勝ってスプール64が図中右半分の領域に示す位置に移動し、入力ポート62b(ストレーナ41)と出力ポート62h(吸入ポート123a)との連通を遮断し、入力ポート62g(ポンプ用油路55)と出力ポート62h(吸入ポート123a)とを連通し、入力ポート62c(出力ポート122b)と出力ポート62e(クラッチC1)とを連通し、入力ポート62d(吐出ポート123b)と出力ポート62e(クラッチC1)との連通を遮断し、入力ポート62d(吐出ポート123b)とドレンポート62fとを連通する。一方、ライン圧PLが信号圧用入力ポート62aに入力されていないときには、スプリング66の付勢力によりスプール64が図中左半分の領域に示す位置に移動し、入力ポート62b(ストレーナ41)と出力ポート62h(吸入ポート123a)とを連通し、入力ポート62g(ポンプ用油路55)と出力ポート62h(吸入ポート123a)との連通を遮断し、入力ポート62c(出力ポート122b)と出力ポート62e(クラッチC1)との連通を遮断し、入力ポート62d(吐出ポート123b)と出力ポート62e(クラッチC1)とを連通し、入力ポート62d(吐出ポート123b)とドレンポート62fとの連通を遮断する。
【0035】
こうして構成された実施例の自動車10では、シフトレバー91をD(ドライブ)の走行ポジションとして走行しているときに、車速Vが値0,アクセルオフ,ブレーキスイッチ信号BSWがオンなど予め設定された自動停止条件の全てが成立したときにエンジン12を自動停止する。エンジン12が自動停止されると、その後、ブレーキスイッチ信号BSWがオフなど予め設定された自動始動条件が成立したときに自動停止したエンジン12を自動始動する。
【0036】
実施例の自動車10では、自動停止条件が成立してエンジン12が自動停止したときには、これに伴って機械式オイルポンプ42も停止するから、ライン圧PLが抜け、切替バルブ60は電磁弁100の出力ポート122b(出力ポート用油路53)とクラッチC1(クラッチ用油路54)との連通を遮断すると共に電磁弁100の吐出ポート123b(吐出ポート用油路57)とクラッチC1とを連通する。シフトレバー91がDポジションのときに電磁弁100を電磁ポンプとして機能させることにより、クラッチC1に油圧を作用させることができる。次に、自動始動条件が成立して停止しているエンジン12が自動始動されると、これに伴って機械式オイルポンプ42が作動するから、ライン圧PLが供給され、切替バルブ60は電磁弁100の出力ポート122bとクラッチC1とを連通すると共に電磁弁100の吐出ポート123bとクラッチC1との連通を遮断する。したがって、電磁弁100を調圧バルブとして機能させることにより、クラッチC1を完全に係合して車両を発進させることができる。このようにエンジン12が自動停止している最中に電磁弁100を電磁ポンプとして機能させてクラッチC1に油圧を作用させておくことにより、エンジン12が自動始動した直後にクラッチC1を迅速に係合させることができるから、発進をスムーズに行なうことができる。
【0037】
いま、エンジン12が運転している状態を考える。この状態では、切替バルブ60は入力ポート62g(ポンプ用油路55)と出力ポート62h(吸入ポート123a)とを連通し入力ポート62c(出力ポート122b)と出力ポート62e(クラッチC1)とを連通し入力ポート62d(吐出ポート123b)とドレンポート62fとを連通するから、電磁弁100を調圧バルブとして機能させることにより機械式オイルポンプ42からの油圧が調圧を伴ってクラッチC1に作用する一方、オイルパンからの吸引を伴って機械式オイルポンプ42から圧送された作動油が切替バルブ60の入力ポート62g,出力ポート62h,電磁弁100の吸入ポート123a,吸入用逆止弁130,ポンプ室139,吐出用逆止弁140,吐出ポート123b,切替バルブ60の入力ポート62d,ドレンポート62fを順に介して再びオイルパンに流れる循環回路を形成する。したがって、電磁ポンプとしての機能を停止している最中であってもポンプ室139内にエア溜まりは生じない。したがって、エンジン12が自動停止されて電磁弁100を電磁ポンプとして機能させるときに、エア溜まりに起因する始動の遅れを防止することができる。
【0038】
以上説明した実施例の動力伝達装置20によれば、機械式オイルポンプ42が作動している最中には、切替バルブ60により、機械式オイルポンプ42から入力ポート62g,出力ポート62h,電磁弁100の吸入ポート123a,吸入用逆止弁130,ポンプ室139,吐出用逆止弁140,吐出ポート123b,切替バルブ60の入力ポート62d,ドレンポート62fを順に介して作動油が循環するよう循環回路を形成するから、電磁弁100を電磁ポンプに代えて調圧バルブとして機能させているときにポンプ室139内のエア溜まりの発生を抑制することができる。この結果、次に電磁弁100を電磁ポンプとして機能させたときに迅速に始動させることができ、電磁弁100の性能をより向上させることができる。また、電磁弁100に電磁ポンプとしての機能を持たせ、電磁弁100に吸入用逆止弁130と吐出用逆止弁140とを内蔵するから、ポンプ室139の容積を縮小することができ、これによってもエアの混入を抑制することができる。さらに、スリーブ122の内壁とスプール本体124aの前面とによりポンプ室139を形成し、スリーブ122の内壁に全周に亘って彫り込まれた溝125aを挟んでスプール本体124aが摺動する摺動面125bとシャフト部124bが摺動する摺動面125cとを段差をもって形成しスプール124が挿入された状態で溝125aとスプール本体124aの背面とにより第2のポンプ室149を形成するから、効率良く作動油を圧送することができ、ポンプ性能をさらに向上させることができる。
【0039】
実施例の動力伝達装置20では、切替バルブ60は電磁弁100の出力ポート122bとクラッチC1との連通と遮断の切り替えと、吸入用油路55(ストレーナ41)と電磁弁100の吸入ポート123aとの連通と遮断の切り替えおよび吐出ポート123bとクラッチC1の連通と遮断の切り替えと、ライン圧用油路51(機械式オイルポンプ42)と電磁弁100の吸入ポート123aの連通と遮断の切り替えおよび吐出ポート123bと切替バルブ60のドレンポート62fの連通の遮断の切り替えとを一つのバルブを用いて行なうものとしたが、各切り替えを二つ或いは三つのバルブを用いて行なうものとしても構わない。ただし、一つの切替バルブを用いた方が装置全体をコンパクトにできると共にコスト面でも有利なものとなる。
【0040】
実施例の動力伝達装置20では、切替バルブ60をライン圧PLを用いて駆動するものとしたが、ライン圧PLを図示しないモジュレータバルブを介して降圧したモジュレータ圧PMODを用いて駆動するものとしてもよいし、ライン圧PLやモジュレータ圧PMODがソレノイドバルブを介して切替バルブ60に供給されるようにしてこのソレノイドバルブを用いて駆動するものとしても構わない。
【0041】
実施例の動力伝達装置20では、電磁弁100(調圧バルブ)をライン圧PLから最適なクラッチ圧を生成してクラッチC1をダイレクトに制御するダイレクト制御用の調圧バルブとして構成するものとしたが、調圧バルブをパイロット制御用のものとして用いて別途コントロールバルブを駆動することによりこのコントロールバルブによりクラッチ圧を生成してクラッチC1を制御するものとしてもよい。
【0042】
実施例の動力伝達装置20では、電磁弁100をクラッチC1に油圧を作用させる電磁ポンプとして機能させると共に同じくクラッチC1に油圧を作用させる調圧バルブとして機能させるものとしたが、これに限られず、例えば、レギュレータバルブ44に信号圧を作用させるための調圧バルブなど如何なるタイプの調圧バルブとして機能させるものとしてもよい。レギュレータバルブ44を駆動する調圧バルブとして機能させた場合の変形例の油圧回路40Bを図7に示す。変形例の油圧回路40Bは、図示するように、実施例のリニアソレノイドSLTに代えて電磁弁100の出力ポート122bからレギュレータバルブ44を駆動するための信号圧を出力し、リニアソレノイドSLC1の入力ポートにDポート用油路52を介してマニュアルバルブ50のDポート46bからのライン圧PLを入力すると共に調圧して出力ポートから出力ポート用油路53,切替バルブ60の入力ポート62c,出力ポート62eを介してクラッチC1に出力するよう構成されている。
【0043】
実施例の動力伝達装置20では、電磁弁100に調圧バルブとしての機能と電磁ポンプとしての機能とを持たせるものとしたが、調圧バルブと電磁ポンプとを別体として備えるものとしてもよい。この場合の変形例の油圧回路40Cを図8に示す。変形例の油圧回路40Cは、図示するように、実施例の電磁弁100に代えて、Dポート用油路52を介してマニュアルバルブ46のDポート46bからのライン圧PLを入力ポートから入力すると共に調圧して出力ポートから出力ポート用油路53,切替バルブ60の入力ポート62c,出力ポート62eを介してクラッチC1に出力するリニアソレノイドSLC1と、吸入ポート用油路56(切替バルブ60の出力ポート62h)に吸入ポート223aが接続されると共に吐出ポート用油路57(入力ポート62d)に吐出ポート223bが接続された電磁ポンプ200とを備える。以下、電磁ポンプ200の構成についてさらに詳細に説明する。図9は、電磁ポンプ200の構成の概略を示す構成図である。なお、図9では、電磁ポンプ200のソレノイド部110は実施例の電磁弁100のソレノイド部110と同様のものを用いているから、同一の符号を付した。
【0044】
電磁ポンプ200は、図示するように、電磁力を発生させるソレノイド部110と、ソレノイド部110からの電磁力により駆動して作動油を圧送するポンプ部220とを備える。ポンプ部220は、中空円筒状のシリンダ222と、シリンダ222内に挿入されソレノイド部110のシャフト118と同軸上で摺動可能に配置されたピストン224と、ピストン224にソレノイド部110の電磁力とは逆向きに付勢力を付与するスプリング226と、シリンダ222内の端部に配置されスプリング226を受けるエンドプレートとしても機能する吸入用逆止弁230と、同じくシリンダ222内に配置され本体がピストン本体224aと一体成型された吐出用逆止弁240と、を備える。ピストン224は、円筒状のピストン本体224aと、ソレノイド部110のシャフト118の先端に当接されピストン本体224aよりも外径が小さなシャフト部224bとにより形成されており、ソレノイド部110のシャフト118により押し出されてシリンダ222内を摺動する。吸入用逆止弁230は、実施例の電磁弁100の吸入用逆止弁130と同様に、軸中心に大径と小径の段差を有する中心孔232aが形成された中空円筒状の本体232と、中心孔232aに挿入されたボール234と、ボール234を小径側の本体232に押し付けるスプリング236と、本体232に圧入あるいは螺合により取り付けられてスプリング236を受ける中空円筒状のスプリング受け238とを備える。一方、吐出用逆止弁240は、ピストン本体224aと一体で軸中心に凹状に中心孔242aが形成されると共に径方向に中心孔242aと連通する連通孔242bが形成された本体と、中心孔242aの底をスプリング受けとして中心孔242aに挿入されたスプリング246と、スプリング246を挿入した後に中心孔242aに挿入されたボール244と、中心孔242aに挿入されてボール244を受ける中空円筒状のボール受け248と、ボール受け248を本体(ピストン本体224a)に固定するためのスナップリング248aとを備える。実施例の電磁弁100と同様に、吸入用逆止弁230とピストン本体224aの前面(吐出用逆止弁240)とシリンダ222の内壁とにより囲まれる空間はポンプ室239として用いられ、ピストン本体224aの背面とシリンダ22の内壁(溝225a,摺動面225b,225b)とにより囲まれる空間は第2のポンプ室249として用いられる。
【0045】
実施例の動力伝達装置20では、電磁弁100のスリーブ122に吸入用逆止弁130と吐出用逆止弁140とを内蔵させるものとしたが、吸入用逆止弁130と吐出用逆止弁140とを内蔵させないものとしても構わない。この場合における変形例の油圧回路40Dの構成の概略を図10に示す。変形例の油圧回路40Dは、図示するように、電磁弁100と切替バルブ60とに代えて、調圧バルブとして機能すると共に電磁ポンプとしても機能する電磁弁300と、吸入用逆止弁160と吐出用逆止弁170とを内蔵する切替バルブ150とを備える。図11は、電磁弁300の構成の概略を示す構成図である。
【0046】
電磁弁300は、図示するように、電磁力を発生させるソレノイド部110と、このソレノイド部110によりシャフト118を介して駆動されて調圧弁として機能すると共に電磁ポンプとしても機能するバルブ部320とを備える。バルブ部320は、略円筒状のスリーブ322と、スリーブ322の内部空間に挿入され一端がソレノイド部110のシャフト118の先端に当接されたスプール324と、スリーブ322の他端にネジ止めされたエンドプレート326と、エンドプレート326をスプリング受けとして用いてスプール324をソレノイド部110側の方向へ付勢するスプリング328とを備える。バルブ部320には、その中間部に入力ポート322aと出力ポート322bとドレンポート322cとフィードバックポート322dとが形成されており、バルブ部320を調圧弁として機能させるときには、スプール324の外壁とスリーブ322の内壁とより囲まれる空間を調圧室329として用いることにより、入力ポート322aに入力された油圧を一部のドレンポート322cへの排出を伴って調圧しながら出力ポート322bから出力することができる。また、バルブ部320には、スリーブ322の内壁とスプール324とエンドプレート326とにより囲まれてスプリング328が収容されるスプリング室339と連通するようスプリング室用ポート323aが形成されている。
【0047】
図12および図13は、図10の油圧回路40Dにおける電磁弁300と切替バルブ150とを拡大する拡大図である。切替バルブ150は、図10,図12,図13に示すように、スリーブ152に形成される各種ポートとして、ライン圧用油路51(機械式オイルポンプ42)に接続された信号圧用入力ポート152aと、同じくライン圧用油路51に接続された入力ポート152bと、吸入用油路55(ストレーナ41)に接続された入力ポート152cと、出力ポート152dと、この出力ポート152dと連絡流路358を介して接続された入力ポート152eと、出力ポート用油路53(電磁弁300の出力ポート322b)に接続された入力ポート152fと、クラッチ用油路54(クラッチC1)に接続された二つの出力ポート152g,152hと、二つのドレンポート152i,152jと、電磁弁300のスプリング室用油路357(スプリング室339)に接続された二つの入力ポート152k,152lと、クラッチ用油路54にチェック弁180を介して接続された出力ポート152mとを備える。また、切替バルブ150は、スリーブ152内に吸入用逆止弁160が配置されると共にスプール64に組み込まれた状態で吐出用逆止弁170が配置されている。この切替バルブ150は、スプール154,吐出用逆止弁170,吸入用逆止弁160の順に配置されており、吐出用逆止弁160と吸入用逆止弁170との間にスプリング156が設けられている。したがって、スプリング156は、吸入用逆止弁160をスプリング受けとして吐出用逆止弁170と共にスプール154を付勢する。吸入用逆止弁160は、軸中心に大径と小径の段差を有する中心孔162aが形成された中空円筒状の本体162と、本体162の段差部をスプリング受けとして用いて中心孔162aに挿入されたスプリング166と、スプリング166が挿入された後に中心孔162aに大径側から挿入されたボール164と、中心孔162aに挿入された中空円筒状のボール受け168と、ボール受け168を本体162に固定するためのスナップリング168aとを備える。一方、吐出用逆止弁170は、軸中心に大径と小径の段差を有する凹状の中心孔172aが形成されると共に径方向に中心孔172aと連通する連通孔172bが形成されスプール154に一体成型された円筒状の本体と、中心孔172aの底をスプリング受けとして中心孔172aに挿入されたスプリング176と、スプリング176が挿入された後に中心孔172aに大径側から挿入されたボール174と、中心孔172aに挿入された中空円筒状のボール受け178と、ボール受け178を本体に固定するためのスナップリング178aとを備える。なお、スリーブ152には、吸入用逆止弁160がスリーブ152の端面に当接している状態で入力ポート152eと中心孔162aとを径方向に連通するための凸部151が形成されている。
【0048】
また、切替バルブ150は、ライン圧PLが信号圧用入力ポート152aに作用していないときには、スプリング156の伸張を伴ってスプール154が図中上方に移動することにより、入力ポート152b(機械式オイルポンプ42)と出力ポート152d(入力ポート152e)との連通を遮断し、入力ポート152c(ストレーナ41)と出力ポート152d(入力ポート152e)とを連通し、入力ポート152eと出力ポート152g(クラッチC1)とを吸入用逆止弁160および吐出用逆止弁170を介して連通し、入力ポート152eとドレンポート152iとの連通を遮断し、入力ポート152f(電磁弁300の出力ポート322b)と出力ポート152m(チェック弁180)とを連通する(図12参照)。切替バルブ150の入力ポート152k,152lは電磁弁300のスプリング室用ポート323aにスプリング室用油路357を介して接続されていることから、吸入用逆止弁160と吐出用逆止弁170とにより囲まれた空間(ポンプ室)169は、スプリング室用ポート323a,スプリング室用油路357,入力ポート152k,152lを介して電磁弁300のスプリング室339と連通することになる。電磁弁300でスプール324を押し出している状態からスプリング328の付勢力によりスプール324が押し戻されると、スプリング室339の容積の増加を伴って生じる負圧により、ポンプ室169に負圧を生じさせ、吸入用逆止弁160を開弁すると共に吐出用逆止弁170を閉弁し、ストレーナ41から切替バルブ150の入力ポート152c,出力ポート152d,入力ポート152e,吸入用逆止弁160(中心孔162a)を順に介して作動油をポンプ室169内に吸入する。次に、電磁力によりスプール324が押し出されると、スプリング室339の容積の減少を伴って生じる正圧により、ポンプ室169に正圧を生じさせ、吸入用逆止弁160を閉弁すると共に吐出用逆止弁170を開弁し、ポンプ室169に吸入した作動油を吐出用逆止弁170(中心孔172aおよび連通孔172b),出力ポート152gを順に介してクラッチC1に吐出する。したがって、ソレノイド部110を駆動と駆動の解除とを一定周期で繰り返すことにより、電磁弁300を電磁ポンプとして機能させてクラッチC1に作動油を圧送することができる。一方、ライン圧PLが信号圧用入力ポート152aに作用しているときには、スプリング156の圧縮を伴ってスプール154が図中下方に移動することにより、入力ポート152b(機械式オイルポンプ42)と出力ポート152d(入力ポート152e)とを連通し、入力ポート152c(ストレーナ41)と出力ポート152d(入力ポート152e)との連通を遮断し、入力ポート152eと出力ポート152g(クラッチC1)との連通を遮断し、入力ポート152eとドレンポート152iとを吸入用逆止弁160および吐出用逆止弁170を介して連通し、入力ポート152f(電磁弁300の出力ポート322b)と出力ポート152h(クラッチC1)とを連通する(図13参照)。したがって、電磁弁300を調圧バルブとして機能させることにより、電磁弁300の出力ポート322bからクラッチC1に調圧した油圧を作用させことができる。また、ライン圧PLが信号圧用入力ポート152aに作用しているときには、吸入用逆止弁160の本体162は吐出用逆止弁170と接触している状態となっており、吸入用逆止弁160にはその状態で径方向に入力ポート152lと連通する連通溝162bが形成されている。切替バルブ150の入力ポート152lは電磁弁300のスプリング室用ポート323aに接続されていることから、ポンプ室169は、スプリング室用ポート323a,スプリング室用油路357,入力ポート152l,連通溝162bを介して電磁弁300のスプリング室339と連通することになる。これにより、オイルパンからの吸引を伴って機械式オイルポンプ42から圧送された作動油が切替バルブ150の入力ポート152b,出力ポート152d,入力ポート152e,吸入用逆止弁160(中心孔162a),ポンプ室169,吐出用逆止弁170(中心孔172a,連通孔172b),ドレンポート152iを順に介して再びオイルパンに流れる循環回路を形成する。したがって、ポンプ室169内にエア溜まりは生じない。
【0049】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では吸入用逆止弁130,160,230が「第1の開閉弁」に相当し、吐出用逆止弁140,170,240が「第2の開閉弁」に相当し、電磁ポンプとして機能することができる電磁弁100,300や電磁ポンプ200が「第1のポンプ」に相当し、機械式オイルポンプ42が「第2のポンプ」に相当し、吸入用油路55と切替バルブ60の入力ポート62bおよび出力ポート62hと吸入ポート用油路56と電磁弁100と吐出ポート用油路57と切替バルブ60の入力ポート62dおよび出力ポート62eとクラッチ用油路54とが「第1の流路」に相当し、ライン圧用油路51と切替バルブ60の入力ポート62gおよび出力ポート62hと吸入ポート用油路56と電磁弁100と吐出ポート用油路57と切替バルブ60の入力ポート62dおよびドレンポート62fとが「第2の流路」に相当し、切替バルブ60が「選択器」に相当する。また、吸入用油路55と切替バルブ150の入力ポート152cおよび出力ポート152dと連絡流路358と切替バルブ150の入力ポート152eおよび出力ポート152hとクラッチ用油路54も「第1の流路」に相当し、ライン圧用油路51と切替バルブ150の入力ポート152bおよび出力ポート152dと連絡流路358と切替バルブ150の入力ポート152eおよびドレンポート152iも「第2の流路」に相当する。また、ポンプ室139,239が「第1の流体室」に相当し、第2のポンプ室149,249が「第2の流体室」に相当する。エンジン12が「原動機」に相当し、自動変速機構30と油圧回路40などが「動力伝達装置」に相当し、クラッチC1などが「摩擦係合要素」に相当し、ライン圧用油路51とマニュアルバルブ46の入力ポート46aおよびDポート46bとDポート用油路52と出力ポート用油路57と切替バルブ60の入力ポート62cおよび出力ポート62eとクラッチ用油路54とが「第3の流路」に相当する。ここで、「原動機」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど、如何なるタイプの内燃機関であっても構わないし、内燃機関以外の電動機など、動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの原動機であっても構わない。「動力伝達装置」としては、前進1速〜4速の4段変速の自動変速機構30を組み込むものに限定されるものではなく、3段変速や5段変速,6段変速など、如何なる段数の自動変速機を組み込むものであっても構わない。また、「動力伝達装置」としては、自動変速機を組み込むものに限定されるものでもなく、例えば、エンジン12のクランクシャフト14にクラッチを介して直接に車輪18a,18bに接続されるなど、摩擦係合要素を介して原動機からの動力を伝達するものであれば如何なるものであっても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、動力伝達装置の製造産業や自動車産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、16 エンジン用電子制御ユニット(EGECU)、18a,18b 車輪、20 動力伝達装置、22 入力軸、24 出力軸、26 トルクコンバータ、26a ポンプインペラ、26b タービンランナ、26c ロックアップクラッチ、29 オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(ATECU)、30 自動変速機構、40 油圧回路、41 ストレーナ、42 機械式オイルポンプ、44 レギュレータバルブ、46 マニュアルバルブ、46a 入力ポート、46b Dポート、46c Rポート、48 アキュムレータ、51 ライン圧用油路、52 Dポート用油路、53 出力ポート用油路、54 クラッチ用油路、55 吸入用油路、56 吸入ポート用油路、57 吐出ポート用油路、60 切替バルブ、62 スリーブ、62a 信号圧用入力ポート、62b,62c,62d,62g 入力ポート、62e,62h 出力ポート、62f ドレンポート、64 スプール、66 スプリング、90 メイン電子制御ユニット、91 シフトレバー、92 シフトポジションセンサ、93 アクセルペダル、94 アクセルペダルポジションセンサ、95 ブレーキペダル、96 ブレーキスイッチ、98 車速センサ、100 電磁弁、102 バルブボディ、110 ソレノイド部、111 ケース、112 電磁コイル、114 コア、116 プランジャ、118 シャフト、120 バルブ部、122 スリーブ、122a 入力ポート、122b 出力ポート、122c ドレンポート、122d フィードバックポート、123a 吸入ポート、123b 吐出ポート、124 スプール、124a 本体、124 シャフト部、125a 溝、125b,125c 摺動面、126 エンドプレート、128 スプリング、130 吸入用逆止弁、132a 中心孔、134 ボール、136 スプリング、139 ポンプ室、140 吐出用逆止弁、142a 中心孔、142b 連通孔、144 ボール、146 スプリング、148 ボール受け、148a スナップリング、149 第2のポンプ室、150 切替バルブ、151 凸部、152 スプール、152a 信号圧用入力ポート、152b,152c,152e,152f,152k,152l 入力ポート、152d,152g,152h,152m 出力ポート、152i,152j ドレンポート、154 スプール、156 スプリング、160 吸入用逆止弁、162 本体、162a 中心孔、164 ボール、166 スプリング、168 ボール受け、168a スナップリング、169 ポンプ室、170 吐出用逆止弁、172a 中心孔、172b 連通孔、174 ボール、176 スプリング、178 ボール受け、178a スナップリング、180 チェック弁、200 電磁ポンプ、220 ポンプ部、222 シリンダ、223a 吸入ポート、223b 吐出ポート、224 ピストン、225a 溝、225b,225c 摺動面、230 吸入用逆止弁、232 本体、232a 中心孔、234 ボール、236 スプリング、238 スプリング受け、239 ポンプ室、240 吐出用逆止弁、242a 中心孔、242b 連通孔、244 ボール、246 スプリング、248 ボール受け、248a スナップリング、249 第2のポンプ室、300 電磁弁、320 バルブ部、322 スリーブ、322a 入力ポート、322b 出力ポート、322c ドレンポート、322d フィードバックポート、324 スプール、326 エンドプレート、328 スプリング、329 調圧室、339 スプリング室、PU プラネタリギヤユニット、S1,S2 サンギヤ、R リングギヤ、CR キャリア、PS ショートピニオンギヤ、PL ロングピニオンギヤ、C1〜C3 クラッチ、B1,B2 ブレーキ、F1 ワンウェイクラッチ、SLT,SLC1 リニアソレノイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用の第1の開閉弁と吐出用の第2の開閉弁との間の空間をポンプ室として用いて、ピストンの往復動により作動流体を圧送する第1のポンプと、
前記第1のポンプの作動に伴って供給元からの作動流体を前記第1の開閉弁と前記ポンプ室と前記第2の開閉弁とを介して作動対象に供給する第1の流路と、
前記第1のポンプとは異なる第2のポンプから圧送された作動流体を前記ポンプ室に供給する第2の流路と、
前記第1の流路と前記第2の流路のいずれかを選択する選択器と、
を備えることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記選択器は、前記第1のポンプが作動している最中に前記第1の流路を選択し、前記第1のポンプが停止している最中に前記第2の流路を選択することを特徴とする請求項1記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記第2の流路は、前記第2のポンプから圧送された作動流体を前記第1の開閉弁を介して前記ポンプ室に供給する流路であることを特徴とする請求項1または2記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記第2の流路は、前記第2のポンプから圧送された作動流体を前記第1の開閉弁と前記ポンプ室と前記第2の開閉弁とを介してドレンする循環流路であることを特徴とする請求項3記載のポンプ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載のポンプ装置であって、
前記第1のポンプは、前記第2のポンプが停止している最中に作動し、前記第2のポンプが作動している最中に停止するよう制御されるポンプであり、
前記選択器は、前記第2のポンプからの流体圧により作動し、前記第2のポンプからの流体圧が作用していないときには前記第1の流路を開放すると共に前記第2の流路を遮断し、前記第2のポンプから流体圧が作用しているときには前記第1の流路を遮断すると共に前記第2の流路を開放する切替バルブである
ことを特徴とするポンプ装置。
【請求項6】
請求項5記載のポンプ装置を備え、前記作動対象としての摩擦係合要素を介して原動機からの動力を伝達する動力伝達装置であって、
前記第2のポンプから圧送された作動流体を前記摩擦係合要素の流体圧サーボに供給する第3の流路を備え、
前記第1のポンプは、電力の供給を受けて作動流体を圧送するポンプであり、
前記第2のポンプは、前記原動機からの動力により作動流体を圧送するポンプであり、
前記切替バルブは、さらに、前記第2のポンプからの流体圧が作用しているときには前記第3の流路を開放し、前記第2のポンプからの流体圧が作用していないときには前記第3の流路を遮断するバルブである
動力伝達装置。
【請求項7】
前記第1のポンプは、電磁力を発生させる電磁部を備え、該電磁部の電磁力により前記ピストンを往復動させることにより作動流体を圧送する電磁ポンプとして機能し、前記ポンプ室と区画された調圧室を有し前記電磁部の電磁力を用いて前記第1のポンプからの流体圧を調圧して出力する調圧バルブとしても機能する電磁弁である請求項6記載の動力伝達装置。
【請求項8】
請求項7記載の動力伝達装置であって、
前記第1のポンプは、前記ポンプ室として用いられる第1の流体室と前記作動対象に接続された第2の流体室とを区画するピストンと、電磁力により前記ピストンを往動させる電磁部と、前記ピストンに前記電磁部の電磁力と対向する向きに弾性力を付与することにより前記ピストンを復動させる弾性部材と、前記第1の流体室への作動流体の移動を許可する方向に取り付けられた前記第1の開閉弁と、前記第1の流体室と前記第2の流体室とを接続する流路に設けられ該第1の流体室から該第2の流体室への作動流体の移動を許可する方向に取り付けられた前記第2の開閉弁と、を備え、
前記ピストンは、往動するときには前記第1の流体室の容積を小さくすると共に前記第2の流体室の容積を大きくし且つ復動するときには前記第1の流体室の容積を大きくすると共に前記第2の流体室の容積を小さくするよう前記第1の流体室と前記第2の流体室とを区画し、往復動に伴う前記第1の流体室の容積変化が前記第2の流体室の容積変化よりも大きくなるよう形成されてなる
動力伝達装置。
【請求項9】
前記第2の流路は、前記第2のポンプから前記第1の開閉弁,前記第1の流体室,前記第2の開閉弁,前記第2の流体室を順に介して作動流体が循環するよう形成されてなる請求項8記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁は、前記電磁弁に内蔵されてなる請求項7ないし9いずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁は、前記切替バルブに内蔵されてなる請求項7記載の動力伝達装置。
【請求項12】
請求項11記載の動力伝達装置であって、
前記切替バルブは、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁とにより囲まれる空間が前記電磁弁に接続されて前記ポンプ室の一部として用いられ、
前記第2のポンプからの流体圧を信号圧として入力する信号圧用入力ポートと前記第1の開閉弁の流入側に作動流体を入力する吸入用ポートと前記第2の開閉弁の流出側から前記摩擦係合要素の流体圧サーボに作動流体を出力する吐出用ポートと前記第2の開閉弁の流出側から作動流体を排出する排出用ポートと作動流体の供給元に接続された第1の入力ポートと前記第2のポンプから圧送された作動流体を入力する第2の入力ポートとバルブ外の流路を介して前記吸入用ポートに接続された第1の出力ポートと前記電磁弁の調圧室に接続された第3の入力ポートと前記摩擦係合要素の流体圧サーボに接続された第2の出力ポートとを有する中空部と、前記中空部内を摺動するスプールと、前記中空部内に配置された前記第1の開閉弁および前記第2の開閉弁と、を備え、
前記信号圧用入力ポートに流体圧が入力されているときには前記第2のポンプから圧送された作動流体が前記第2の入力ポート,前記第1の出力ポート,前記吸入用ポート,前記排出用ポートを順に介して作動流体が循環すると共に前記電磁弁の調圧室からの作動流体が前記第3の入力ポート,前記第2の出力ポートを介して前記流体圧サーボに供給され、前記信号圧用入力ポートに流体圧が入力されていないときには前記作動流体の供給元から前記第1の入力ポート,前記第1の出力ポート,前記吸入用ポート,前記第1のポンプ,前記吐出用ポートを順に介して前記流体圧サーボに供給されると共に前記第3の入力ポートと前記第2の出力ポートとが遮断されるよう、前記スプールが作動する
ことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項13】
請求項6ないし12いずれか1項に記載の動力伝達装置を搭載する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−127633(P2011−127633A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284178(P2009−284178)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】