説明

ポートからポートへの遅延を実装することにより雑音を減らす方法

【課題】
ポートからポートへの遅延を実装することにより雑音を減らす。
【解決手段】
雑音を減らす方法は、次を含む:電源供給網をオンにする時に、高速データリンクの最大の雑音の周波数を特定すること;その最大の雑音を最小化する、第1のポートと第2のポートの間の遅延時間を特定すること;及び、第1のポートをオンにした時から、その遅延時間後に、第2のポートをオンにすること。他の実施例も開示し請求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雑音を減らす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速なインターフェースの例には、例えば、PCI−E(Peripheral Components Interconnect−Express)、CSI(Common System Interface)、FBD(Fully Buffered DIMM)等がある。高速なインターフェースにおいては、総実効負荷di/dt(電流の変化/時間の変化)により生じる交流雑音がありうる。総実効負荷は、個々のレーンの負荷の、瞬間的な合計である。総実効負荷は、I/O(入出力)電源供給網によって、感知されうる。I/Oインターフェースの各レーンは、送信器、受信器、及び他のデジタル回路を有してもよい。個々のレーンの各々は、レーンの負荷を生成しうる。電源供給網は、全ての動作しているレーンの、総実効負荷の影響を受けることがあり、それにより、AC雑音を生じることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、このような雑音を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
雑音を減らす方法は、次を含む:電源供給網をオンにする時に、高速データリンクの最大の雑音の周波数を特定すること;その最大の雑音を最小化する、第1のポートと第2のポートの間の遅延時間を特定すること;及び、第1のポートをオンにした時から、その遅延時間後に、第2のポートをオンにすること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本願に記載する本発明を添付の図面を用いて例により説明する。添付の図面は本願発明を限定しない。例示を単純かつ明快にするために、図に示している要素は原寸に比例して描かれているとは限らない。例えば、ある要素を明らかに示すために、その寸法を、他の要素に比べて誇張することがある。更に、適切であると判断する場合には、同じ参照番号を複数の図面で繰り返し、対応する又は類比する要素を示す。
【0006】
後述の詳細な記述において、数多くの個別の詳細を記載するのは、本発明の徹底した理解を促すためである。しかし、本願発明を、これら個別の詳細を抜きに実施してもよい。逆に、周知の方法、手続き、部品及び回路は、詳細に記載していない。これは本願発明を明確にするためである。更に、例の寸法、型式、値、範囲を示すことがあるが、本願発明はそれらの個別の例に限定されない。
【0007】
本明細書において、「1つの実施例」、「ある実施例」、「実施例」等の表現が示すのは、記載の実施例は、特定の特徴、構造、又は特性を含んでもよいが、全ての実施例が、その特定の特徴、構造、又は特性を含むとは限らなくてもよいということである。更に、「1つの実施例」、「ある実施例」、「実施例」等の表現は、同一の実施例を示しているとは限らない。更に、特定の特徴、構造、又は特性を、ある実施例に関して記述した場合、前提としているのは、そのような特徴、構造、又は特性を、明示的に記載しているか否かにかかわらず、別の実施例に関して応用することは、当業者の知識の範囲内であるということである。
【0008】
更に、本明細書において参照される要素で、共通の参照番号の後に特定の符号が続くものを、まとめてその参照番号のみで参照することがある。例えば、レーン200A、200B、200C...200Nを、まとめてレーン200ということがある。同様に、遅延回路210A、210B、...210Nを、まとめて遅延回路210ということがある。
【実施例】
【0009】
図1は、計算機システムの実施例を示す。この計算機システムは、処理装置100、チップセット110、記憶装置120、及びI/O装置130を含んでもよい。図に示す通り、処理装置100は、チップセット110に接続するのに、処理装置バスを介してもよい。記憶装置120は、チップセット110に接続するのに、記憶装置バスを介してもよい。I/O装置130は、チップセット110に接続するのに、I/Oバスを介してもよい。I/Oバスとは、例えば、PCI(Pheripheral Component Interconnect)バス、PCI Expressバス、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)バス等である。
【0010】
処理装置100は、インテル(登録商標)Pentium(登録商標)4処理装置、インテル(登録商標)Pentium(登録商標)M処理装置、及び/又は、他の型の汎用処理装置100であって、ソフトウェア及び/又はファームウェアの命令を実行できるもので、実装してもよい。1つの実施例では、処理装置100は、記憶装置120に格納してある命令を実行してもよい。これにより、様々な処理を実行し、この計算機システムの総合的な動作を制御する。処理装置100はまた、電源管理に関する命令及び/又はルーチンを実行してもよい。これにより例えば、部品(例えばI/Oインターフェース)が、このシステムの動作中に、交流雑音を減らすようにする。
【0011】
チップセット110は、1つ以上の集積回路(チップともいう)を含んでもよい。チップセット110は、処理装置100を、この計算機システムの他の部品と結合する。図に示す通り、チップセット110は、記憶装置制御ハブ140及びI/O制御ハブ150を含んでもよい。記憶装置制御ハブ140は、記憶装置120の記憶部品へのインターフェースを提供してもよい。とりわけ、記憶装置制御ハブ140は、記憶装置バスに信号を生成して、記憶装置120の記憶部品に対してデータを読み書きしてもよい。このデータの読み書きは、処理装置100及びI/O装置130からの要求に応じて行ってもよい。記憶装置120は、例えば、RAM(Random Access Memory)部品を含んでもよい。RAM部品とは例えばSDRAM(Synchronous Dynamic RAM)部品やDDR(Double Data Rate)RAM部品である。
【0012】
ある実施例によるI/O制御ハブ150は、I/Oインターフェース160を含んでもよい。I/Oインターフェース160とは、例えば、PCI Expressインターフェースである。I/Oインターフェース160は、I/O装置130を、I/O制御ハブ150とインターフェースしてもよい。これにより、処理装置100とI/O装置130の間のデータ転送ができ、記憶装置120とI/O装置130の間のデータ転送ができる。1つの実施例では、I/Oインターフェース160は、処理装置100の中にあってもよい。1つの実施例では、I/Oインターフェース160は、記憶装置制御ハブ140の中にあってもよい。
【0013】
図に示す通り、この計算機システムはまた、I/O装置130を含んでもよい。I/O装置130は、様々な入出力機能を、この計算機システムのために実装してもよい。例えば、I/O装置130は、ハードディスク駆動装置、鍵盤、マウス、CD(Compact Disc)駆動装置、DVD(Digital Versatile Disc)駆動装置、印刷装置、走査装置、等を含んでもよい。
【0014】
図2は、I/Oインターフェースシステム160の実施例を示す。図に示す通り、I/Oインターフェースシステム160は、複数のポート270を含んでもよい。1つのポートは、複数のレーン200を含んでもよい。レーンの例は、例えば200A、200B、200C...200Nである。1つのポートは、複数の遅延回路210を含んでもよい。遅延回路の例は、例えば210A、210B、210C...210Nである。1つのポートは、遅延制御回路220を含んでもよい。I/Oインターフェースシステム160は、電源供給網260を含んでもよい。レーン200Aは、レーン200Bに接続するのに、レーン200Aとレーン200Bの間に提供される遅延回路210Aを通ってもよい。レーン200Bは、レーン200Cに接続するのに、レーン200Bとレーン200Cの間に提供される別の遅延回路210Bを通ってもよい。同様にこれが最後のレーン200Nに到るまで続く。レーン200Nはその直前のレーンと、遅延回路210Nを通って接続する。遅延制御回路220は、遅延回路210の各々に接続してもよい。
【0015】
図に示す通り、レーン200の各レーンは、1つの実施例では、送信器230、受信器240、及びデジタル回路250を含んでもよい。電源が電源供給網260からI/Oインターフェース160の諸ポート270に供給されると、全てのレーン200が同時にオンになってしまうことがある。すると、レーン200の送信器230、受信器240、及びデジタル回路250により、レーン200の各々が電源供給網にレーンの負荷を与えてしまう。電源供給網260は、全ての動作するレーン200の総実効負荷di/dt(個々のレーンの負荷の瞬間的な合計)の影響を受けてしまうことがある。これにより、電源供給網260は、I/Oシステムの動作中にAC雑音を発生させてしまう。
【0016】
これを解決するために、遅延回路210は、レーン200同士の間に遅延時間を導入してもよい。これにより、後続のレーン200をオンにするのを遅らせる。1つの実施例では、遅延回路210における遅延時間である時間定数を、遅延制御回路220の補助を受けて、遅延回路210の電圧を変えることによって制御してもよい。
【0017】
1つの実施例では、プログラムされる遅延時間を計算するために、実験により周波数を特定する。この周波数とは、ポート270のレーン200がオンになった時に、I/Oインターフェース160に、最も雑音を発生させる周波数である。1つの例では、図3に示すような雑音のグラフが、ポート270Aのレーン200Aから測定された。これにより、最も大きく雑音の発生に寄与する周波数を特定する。この周波数に基づき、遅延時間を定めてもよい。これにより、この周波数における雑音を最小化する。これは、継続するレーンを順番にオンにして、ポートはこの周波数で位相が180度ずれるようにすることによって行う。1つの実施例では、この周波数を、電源供給網260の共振周波数と呼ぶ。この周波数が100MHzである場合には、遅延時間は、その周期の半分である5nsとなる。I/Oインターフェースが6.4GHzで動作するのであれば、この遅延時間は、32単位間隔(UI)の大きさとなる。
【0018】
1つの実施例では、レーンとレーンの間に真性遅延があってもよい。この場合、遅延制御回路220は、この真性遅延に更に遅延を追加して、計算した遅延時間になるようにしてもよい。遅延回路210はまた、各ポートの各レーンをオフにする場合も、遅延を導入してもよい。例えば、省電力設定でポートへの電源供給をオフにするような場合である。遅延制御回路220は、継続するレーンの各々をオフにするための、第2の遅延時間を、遅延回路210に与えてもよい。継続するレーンの各々をオフにするための第2の遅延時間は、継続するレーンの各々をオンにするための第1の遅延時間とは、異なってもよく、異ならなくてもよい。
【0019】
1つの実施例では、プログラムした遅延回路210を諸レーン200の間に設けることにより、個々のレーンの負荷に一様に間隔を空けてもよい。これにより、諸レーン200における負荷が重なり一致してしまうことを減らす。従って、電源供給網260が感知する総実効負荷(個々のレーンの負荷の瞬間的な合計)を大きく減らせる。そして、総実効負荷が減れば、I/Oシステムにおける交流雑音の最大振幅をより小さくできる。
【0020】
図3を参照する。雑音のグラフの1つの実施例を示す。図に示す通り、グラフ300は、レーンがオンになる場合の、異なる周波数成分についての電流の測定値を示す。この例では、100MHzが、最も大きな雑音の周波数である。1つの実施例では、グラフ300はレーン200Aで測定したものである。
【0021】
図4を参照する。図1のシステムが実装する、雑音を減らす方法の、ある実施例を示す。図に示す通り、区画400では、最大の雑音の周波数を特定する。1つの実施例では、雑音のグラフ(図3に示すようなもの)を作って、レーン200がオンになる場合に、どの周波数が最大の雑音に寄与するかを、目で見て確かめる。
【0022】
区画410では、最大の雑音を最小化する遅延時間を特定する。1つの実施例では、この遅延時間は、区画400で特定した周波数の周期の半分の値である。
【0023】
区画420では、示している通り、遅延時間をI/Oインターフェース160に実装する。1つの実施例では、遅延制御回路220を設定して、適切な遅延時間を格納し、この遅延時間を遅延回路210が用いる。
【0024】
実施例を参照して本発明の特徴を記述した。しかし、この記述は、本願発明を限定する意味で解釈されることを意図していない。本発明の記載した実施例の種々の変更、及び、本発明の別の実施例の種々の変更は、当業者には明らかであり、本発明の精神及び範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】計算機システムの実施例を示す。
【図2】I/Oインターフェースシステムの実施例を示す。
【図3】雑音のグラフの例を示す。
【図4】図1のシステムで実装してもよい、雑音を減らす方法の実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源供給網をオンにする時に、高速データリンクの最大の雑音の周波数を特定すること;
前記最大の雑音を最小化する、第1のポートと第2のポートとの間の遅延時間を特定すること;及び
前記第1のポートをオンにした時から、前記遅延時間後に、前記第2のポートをオンにすること;
を含む方法。
【請求項2】
前記最大の雑音の前記周波数を前記特定することは、前記電源供給網の共振周波数を特定することを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記周波数は、約100MHzである、請求項1の方法。
【請求項4】
前記遅延時間は、約32単位間隔である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記第2のポートをオンにした時から、前記遅延時間後に、第3のポートをオンにすることを更に含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記第1のポートをオフにした時から、前記遅延時間後に、前記第2のポートをオフにすることを更に含む、請求項1の方法。
【請求項7】
オンにされることになる複数のレーン;
前記レーン同士の間で、プログラムされた第1の遅延を提供する遅延回路、ここで前記遅延回路は、前記第1の遅延の後に、継続するレーンをオンにする;
前記遅延回路における前記第1の遅延の時間を制御する遅延制御回路、ここで前記第1の遅延の前記時間は、電源供給網をオンにする時にレーンの最大の雑音を最小化するために特定される;
を含むI/Oインターフェース。
【請求項8】
前記第1の遅延の前記時間は、前記最大の雑音の周波数の半分の周期である、請求項7のI/Oインターフェース。
【請求項9】
前記第1の遅延の前記時間は、約32単位間隔である、請求項7のI/Oインターフェース。
【請求項10】
前記最大の雑音は、前記電源供給網の共振周波数で発生する、請求項7のI/Oインターフェース。
【請求項11】
前記レーン同士の間で、プログラムされた第2の遅延を提供する前記遅延回路を更に含む、請求項7のI/Oインターフェース、ここで前記遅延回路は、前記第2の遅延の後に、継続するレーンをオフにする。
【請求項12】
前記第1の遅延と、前記第2の遅延とは、実質的に同じである、請求項11のI/Oインターフェース。
【請求項13】
処理装置;
I/O信号が計算機システムに送信されることを助けるチップセット;
前記計算機システムに命令を供給するI/O装置;及び
前記I/O装置を前記チップセットに結合するI/Oインターフェース、ここで前記I/Oインターフェースは、レーン同士の間で、プログラムされた第1の遅延を提供し、前記I/Oインターフェースは、前記第1の遅延の後に、継続するレーンをオンにし、前記第1の遅延は、電源供給網をオンにする時にレーンの最大の雑音を最小化するために特定される;
を含むシステム。
【請求項14】
前記第1の遅延は、前記最大の雑音の周波数の半分の周期である、請求項13のシステム。
【請求項15】
前記第1の遅延は、約32単位間隔である、請求項13のシステム。
【請求項16】
前記最大の雑音は、前記電源供給網の共振周波数で発生する、請求項13のシステム。
【請求項17】
前記レーン同士の間で、プログラムされた第2の遅延を提供する前記I/Oインターフェースを更に含む、請求項13のシステム、ここで前記I/Oインターフェースは、前記第2の遅延の後に、継続するレーンをオフにする。
【請求項18】
前記第1の遅延と、前記第2の遅延とは、実質的に同じである、請求項17のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−165120(P2009−165120A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322188(P2008−322188)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(593096712)インテル コーポレイション (931)
【Fターム(参考)】