説明

マイクロスキャナ装置及び光学機器

【課題】設計の自由度を向上させるとともに、印加電圧を少なくして偏向角を大きくする。
【解決手段】光スキャナOSは、外枠となる固定枠1と、主軸トーションバー3と、主軸トーションバー3の直交方向に長尺となるよう配設されるとともに、一端を主軸トーションバー3に接続し、他端を固定枠1に固定した片持ち梁構造の保持部41と、保持部41を変形させるための力を電圧印加に応じて生じさせる圧電素子42と、主軸トーションバー3を基準に揺動するミラー部21とを含む。駆動回路から圧電素子42に対して印加される電圧は、光スキャナOS自身の固有振動数に近似または一致するとともに、保持部41に、当該の保持部41の短手方向に対し交差する節を少なくとも1つ発生させる周波数である。保持部41は、前記短手方向におけるミラー部21側の部分のみで、主軸トーションバー3に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロスキャナ装置及び光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を走査し、壁面やスクリーンに画像を投影する小型プロジェクタが種々開発されている。このような小型プロジェクタは、レーザ光を出射する光源と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスを用いてレーザ光を走査するマイクロスキャナとを備えている。
【0003】
このマイクロスキャナは、図9に示すように、固定枠91と、主軸トーションバー93と、固定枠91に固定されて主軸トーションバー93を支持する保持部94と、保持部94を変形させるための力を電圧印加により生じさせる圧電素子942と、主軸トーションバー93の変位によって当該主軸トーションバー93を基準に揺動する可動部92とを備えている。
【0004】
主軸トーションバー93は、所定方向(図中のX方向)に延在するとともに、可動部92を揺動(振動)可能に支持している。
保持部94は、主軸トーションバー93を挟んで対向配置されており、主軸トーションバー93の直交方向(図中のY軸方向)に長尺となっている。この保持部94は、一端が主軸トーションバー93に接続されるとともに、他端が固定枠91に固定された片持ち梁構造をなしており、主軸トーションバー93にねじれ方向の変位(力)を付与するようになっている。
【0005】
なお、これらの主軸トーションバー93及び保持部94は固定枠91と一体に形成されている。また、対向配置された保持部94のそれぞれと主軸トーションバー93とは、接続部95を介して接続されている。
圧電素子942は、保持部94の表面に配設されており、保持部94とによってユニモルフ構造をなしている。
【0006】
可動部92は、レーザ光を反射するためのミラー部921と、ミラー部921を囲む可動枠922と、主軸トーションバー93の直交方向(図中のY方向)に延在して可動枠922に連結されるとともに、ミラー部921を揺動可能に支持するミラートーションバー923とを備えている。
【0007】
以上のマイクロスキャナにおいては、対向配置された保持部94が圧電素子942への電圧印加によって振動し、各保持部94における主軸トーションバー93との接続部分同士の変位差によって主軸トーションバー93がねじられ、主軸トーションバー93に支持されている可動部92全体がX軸周りに揺動される。また、保持部94の振動による共振によってミラートーションバー923がねじられ、ミラー部921がY軸周りに揺動される。このように、可動部92が主軸トーションバー93を軸として揺動されるとともに、ミラー部921がミラートーションバー923を軸として揺動されることで、レーザ光を2次元走査することができる。
【0008】
そして、このようなマイクロスキャナでは、近年、保持部94と主軸トーションバー93との接続部95にスリットを設けて蛇行構造とすることにより、当該接続部95を変形し易くしている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国開公開第2009/87883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のマイクロスキャナでは、図10に示すように、保持部94の長手方向に交差して節が生じるように保持部94を共振させるため、共振周波数の設計値によって圧電素子942の長さが自動的に定まってしまい、設計の自由度が低下してしまうという問題がある。また、このようなマイクロスキャナに対しては、よりいっそう印加電圧を少なくし、ミラー部921の偏向角を大きくして欲しいとの要望がある。なお、図10では、マイクロスキャナの図示を簡略化するとともに、保持部94の各領域を変位量に応じて網掛けしている。より具体的には、保持部94に対する網掛けは、紙面手前側(図9におけるZ方向の手前側)への変位量が大きい領域ほど濃く、紙面奥行き側(図9におけるZ方向の奥側)への変位量が大きい領域ほど薄くなっている。
【0011】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、設計の自由度を向上させるとともに、印加電圧を少なくして偏向角を大きくすることのできるマイクロスキャナ装置及び光学機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の側面によれば、マイクロスキャナと駆動回路とを含むマイクロスキャナ装置において、
前記マイクロスキャナは、
外枠となる固定枠と、
軸部と、
前記軸部の直交方向に長尺となるよう配設されるとともに、一端を前記軸部に接続し、他端を前記固定枠に固定した片持ち梁構造の保持部と、
前記保持部を変形させるための力を電圧印加に応じて生じさせる駆動部と、
前記軸部の変位によって当該軸部を基準に揺動する変動部と、
を含み、
前記駆動回路から前記駆動部に対して印加される電圧は、
前記マイクロスキャナ自身の有する固有振動数に近似または一致するとともに、前記保持部に、当該の保持部の短手方向に対し交差する節を少なくとも1つ発生させる周波数であり、
前記保持部は、
前記短手方向における前記変動部側の部分のみで、前記軸部に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動回路から前記駆動部に対して印加される電圧はマイクロスキャナ自身の有する固有振動数に近似または一致するとともに、保持部に、当該の保持部の短手方向に対し交差する節を少なくとも1つ発生させる周波数であるので、保持部の長手方向に対し交差する節を発生させる周波数である場合と比較して、印加電圧を少なくして偏向角を大きくすることができる。また、保持部の長手方向に対し交差する節を発生させる必要がないため、設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光スキャナを示す平面図である。
【図2】光スキャナに備えられる接続部の概略構造を示す図である。
【図3】光スキャナに備えられる接続部の概略構造を示す図である。
【図4】図1に示す光スキャナをII−II線で切断した断面図と、その一部の拡大図である。
【図5】図1に示す光スキャナが駆動しているときの拡大断面図である。
【図6】圧電素子及びミラー部の周波数特性を示す図である。
【図7】短手方向に交差する節が変位部に発生したときの当該変位部の変位量分布を示す図である。
【図8】短手方向に交差する節が変位部に発生した状態を示す概念図である。
【図9】従来のマイクロスキャナを示す図である。
【図10】従来のマイクロスキャナにおいて長手方向に対して交差する節が発生したときの当該変位部の変位量分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかるマイクロスキャナ装置について図面を参照して説明する。
本発明にかかるマイクロスキャナ装置は、マイクロスキャナと駆動回路とを備えている。なお、本実施の形態においては、変動する部材(変動部)としてミラー部を例に挙げるとともに、このミラー部を変動させることで光を反射しスキャン動作を行うマイクロスキャナとして、2次元走査型の光スキャナを例に挙げる。なお、理解を容易にするために(部分の区別を容易にするために)、平面図にハッチングを付す場合もある。また、便宜上、部材符号及び(又は)ハッチングを省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0016】
図1は光スキャナOSを示す平面図である。
この図に示すように光スキャナOSは、固定部である固定枠1と、可動部2(図中の右上りハッチング部分)と、主軸トーションバー3(軸部)と、変位部4と、接続部5とを備えている。なお、図1に示す光スキャナOSの平面図において、左右方向をX方向とし、光スキャナOSの上下方向中央をX方向に横切る軸をX軸としている。また、上下方向をY方向とし、光スキャナOSの左右方向中央をY方向に横切る軸をY軸としている。そして、厚み方向をZ方向としている。以下の説明においても、特に断りのない限り、X方向、Y方向、Z方向、X軸及びY軸を用いて説明する。
【0017】
固定枠1は、可動部2、主軸トーションバー3、変位部4及び接続部5を囲む長方形状の外枠である。さらに詳しく説明すると、変形可能なシリコン基板等で形成された長方形板状の基体にエッチングを施すことで、可動部2、主軸トーションバー3、変位部4における後述の保持部41及び接続部5を形成する。そして、エッチング後の基体のうち、これらの部材を取り囲むように残った部分が固定枠1となる。
【0018】
なお、図1に示すように、固定枠1、主軸トーションバー3、変位部4の保持部41及び接続部5とは一体に形成されている。なお、エッチングを施す基体は、100μm程度の厚さのシリコン基板が用いられるが、それに限定されるものではない。このように一枚の基体(基板)にエッチングを施して上述の各部を形成することで、それぞれの部分の大きさや、部分同士の間隔の精度を高めることが可能である。なお、加工法としてはエッチングに限定されるものではないし、複数の部材を組み合わせて形成するものであってもよい。
【0019】
可動部2は、光源(不図示)からの光(レーザ光)を反射する部材である。可動部2は、主軸トーションバー3に支持されている。可動部2は、ミラー部21と、可動枠22と、ミラートーションバー23と、連結部24とを含んでいる。
【0020】
ミラー部21は円板形状であり、光源からの光を反射する反射部材である。ミラー部21の表面には光源からの光を反射するため、アルミニウム等の金属薄膜が反射膜として成膜されている。なお、金属薄膜は蒸着やスパッタリング等の方法で形成されているものを挙げることができる。また、ミラー部21の表面は、このような金属薄膜に限定されるものではなく、表面が滑らかで光を均一に反射できるように形成された鏡面状のものを広く採用することができる。そして、ミラー部21は中心を挟んで対向した部分をミラートーションバー23に保持されている。なお、ミラー部21のミラートーションバー23に保持されている部分は、可動部2が停止している状態のときY方向の両端部となっているが、これに限定されるものではない。また、可動部2の説明を行う限りにおいて、ミラートーションバー23の軸線をY軸として説明する。
【0021】
可動枠22はミラー部21を囲むように配置されており、エッチングによって形成されたひし形状の部材である。可動部2は線対称の基準となる2本の対称軸が直交している。2本の対称軸のうち、一方の対称軸(ここでは、短い方の対称軸)はX軸と重なっており、他方の対称軸(ここでは、長い方の対称軸)はX軸と直交している(可動枠22が停止状態のとき、Y軸と重なる)。
【0022】
ミラートーションバー23は一対の長尺な部材であり、Y軸上に配置されてミラー部21を保持している。各ミラートーションバー23は同じ断面形状及び同じ長さの部材である。各ミラートーションバー23のミラー部21と反対側は、可動枠22と一体的に連結されている。なお、ミラートーションバー23は弾性変形可能な部材であり、ミラートーションバー23が弾性的にねじれることで、ミラー部21がY軸周りに揺動(振動)される。一対のミラートーションバー23が同一の形状であるので、各ミラートーションバー23のねじれ量、速度が同じであり、ミラー部21はY軸周りに揺動できる。
【0023】
連結部24は長方形状の部材であり、可動枠22のX方向の両端部と一体連結されている。連結部24は各辺がX軸又はY軸と平行となっており、Y軸と平行な辺の一方が可動枠22と連結している。また、他方のY軸と平行な辺の中央部に主軸トーションバー3が連結されている。これによって、可動枠22、すなわち、ミラー部21、ミラートーションバー23を含む可動部2が、X軸周りに揺動可能となっている。
【0024】
次に主軸トーションバー3について説明する。主軸トーションバー3は弾性変形可能な長尺部材である。光スキャナOSでは、停止状態のとき、主軸トーションバー3の中心軸がX軸と重なるものとする。主軸トーションバー3は可動部2のX方向の両端部に配置された連結部24のそれぞれを支持している。なお、以下の説明では、便宜上、図1のY軸よりも左にある主軸トーションバー3を3AC、右にある主軸トーションバー3を3BDと表す場合がある。
【0025】
主軸トーションバー3は、長手方向の端部のうち、一方が固定枠1と連結し、他方が可動部2の連結部24と連結している。そして、主軸トーションバー3は可動部2の近傍で接続部5を介して、変位部4と接続している。なお、主軸トーションバー3の一方の端部が固定枠1と連結していることで、主軸トーションバー3がねじられ、可動部2が揺動するとき、主軸トーションバー3がX軸からずれにくい。これによって、可動部2のX軸周りの揺動の精度低下を抑制することができる。
【0026】
変位部4は正面視長方形状であり、固定枠1と一体に形成された保持部41と、保持部41の表面に貼り付けられた圧電素子42(図中のクロスハッチング部分)とを備えている。保持部41はY方向に長尺となるよう配設されており、一方の短辺で主軸トーションバー3に接続され、他方の短辺で固定枠1に連結固定された片持ち梁様の構造を有している。ここで、前記一方の短辺では、固定枠1の中心側の端部(X方向におけるミラー部21側の部分)のみが主軸トーションバー3に接続されている。圧電素子42はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を含む素子である。この圧電素子42は、本発明における駆動部であり、図示しない駆動回路から電圧が印加されると力(変位)を出力する逆圧電効果を発揮する。これにより、圧電素子42は、保持部41を変形させるための力を、電圧印加に応じて生じさせる。
【0027】
この変位部4は保持部41と圧電素子42を張り合わせたユニモルフ構造であり、圧電素子42に電力を供給することで、固定枠1と連結されていない側の短辺(自由端側の短辺)のうち、少なくとも主軸トーションバー3との接続部分が厚み方向(図1において、Z方向手前又は奥方向)に変位する。
【0028】
詳説すると、圧電素子42に電圧を印加することで、圧電素子42には圧縮方向或いは引っ張り方向の力が作用する。圧電素子42に圧縮方向の力が作用すると、圧電素子42が貼り付けられている保持部41が圧電素子42側に曲げられる。逆に圧電素子42に引っ張り方向の力が作用すると、保持部41は圧電素子42と反対側に曲げられる。このように、圧電素子42に作用する圧縮方向の力と引っ張り方向の力とをタイミングよく交互に発生させることで、変位部4は自由端のうち、少なくとも主軸トーションバー3との接続部分が振動する。
【0029】
光スキャナOSは4個の変位部4を備えており、Y軸を挟んで対称となるように2個ずつ配置されている。同様に4個の変位部4は、X軸を挟んで対称となるように2個ずつ配置されている。すなわち、4個の変位部4はX軸及びY軸を基準に対称となるように配置されている。なお、説明の便宜上、図1において左上の変位部4を変位部4A、左下を4C、右上を4B及び右下を4Dと称して区別する場合があるが、形状及び大きさは全て同じである。また、図1に示す変位部4では、保持部41に対して圧電素子42が小さいものが採用されているが、それに限定されるものではなく、端縁部が重なるように形成された圧電素子42を張り合わせるものであってもよく、圧電素子42が保持部41よりも大きいものを採用してもよい。
【0030】
接続部5は、主軸トーションバー3と、保持部41とを接続している。図1及び図2に示すように、接続部5は、複数個の片持ち梁様のレバー部51と、隣り合うレバー部51の端部を接続する折り返し部52とを備えており、接続部5は平面視蛇行状に形成されている。隣り合うレバー部51の間には、スリットSTが形成されている。図1及び図2に示しているように、接続部5においては、左辺から切れ込んだスリットSTと右辺から切れ込んだスリットSTとがレバー部51を挟んでY方向に交互に並んでいる。
【0031】
なお、接続部5において、スリットSTは左右から2個ずつ形成されているが、それに限定されるものではない。また、以下の説明において、それぞれの接続部を区別するために、変位部4Aと接続する接続部5を接続部5A、変位部4Cと接続する接続部5を接続部5C、変位部4Bと接続する接続部5を接続部5B、変位部4Dと接続する接続部5を接続部5Dと示す場合もある。そして、接続部5A及び接続部5Cは左側の主軸トーションバー3ACと、接続部5B及び接続部5Dは右側の主軸トーションバー3BDとそれぞれ接続している。
【0032】
接続部5はレバー部51とスリットSTとが交互に並んだ形状であるので、接続部5の両端部にZ方向のせん断力が作用すると、レバー部51がねじれつつ曲げられる。よって、接続部5は平面視で同じ大きさの平板に比べてY軸に沿った平面曲げ(Y軸に沿った方向の曲げ)が容易な(柔軟性が高い)構成となっている。例えば、図1において、変位部4Aが紙面手前側、変位部4Cが紙面奥側に変形した場合(後述の図5の状態)、接続部5A及び接続部5Cは変位部4A、変位部4Cの先端にあわせて移動する。このとき、接続部5A及び接続部5CがY軸に沿ってZ方向に曲げ変形されるので、変位部4Aと主軸トーションバー3AC及び変位部4Cと主軸トーションバー3ACとの角度の変化をある程度許容することができる。これにより、変位部4A及び変位部4Cの先端のZ方向の変位が、柔軟性の低い接続部を使う場合に比べて大きくなる。
【0033】
そして、接続部5A及び接続部5Cは主軸トーションバー3ACをねじることができる弾力を備えている。これにより、接続部5A及び接続部5Cは変位部4A及び変位部4Cの先端部の変位にあわせ、主軸トーションバー3ACの接続部分をZ方向に引っ張る。変位部4A及び変位部4Cの先端部の変位量が大きいので、主軸トーションバー3ACの接続部が引っ張られる量も大きくなり、ねじれも大きくなる。なお、接続部5B、5Dで接続される変位部4B、4D及び主軸トーションバー3BDも同様である。
【0034】
なお、本発明の光スキャナOSに用いられる接続部として、図2等に示すように蛇行状に形成されている接続部5を用いているが、これに限定されるものではない。図3に示すような、貫通孔形状のスリットST1と、左右両側から形成された凹形状のスリットST2とを交互に配置した形状の接続部7を利用しても、同様に主軸トーションバー3のせん断ひずみを大きくすることが可能である。なお、以下の説明では、主に接続部として図2に示す接続部5として説明するが、接続部7を用いても同様である。以上に示したように、接続部5及び7は、変位部4の変位を妨げにくく、且つ、主軸トーションバー3をねじる方向に引っ張ることができる程度の柔軟性を有するものである。
【0035】
次に、光スキャナOSで光を走査(二次元走査)するときの駆動について詳しく説明する。まず、可動部2のX軸周りの揺動について説明する。
【0036】
可動部2は、主軸トーションバー3(3AC、3BD)のねじれによって、X軸周りに揺動(振動)される。主軸トーションバー3のねじれ変形を説明するため、左側の主軸トーションバー3ACのねじれ変形について説明する。なお、主軸トーションバー3BDのねじれ変形もY軸に対して対称となっているだけで、実質上同じ動きであり、詳細は省略する。
【0037】
主軸トーションバー3ACは、変位部4A及び変位部4Cが変位することでX軸周りにねじられる。例えば、図1,図4において、変位部4AをZ方向手前側、変位部4CをZ方向奥側に変位させるとする。この場合、接続部5Aは変位部4Aの自由端側の辺に引っ張られZ方向手前側に移動し、逆に接続部5Cは変位部4Cの自由端側の辺に引っ張られZ方向奥側に移動する(図5参照)。
【0038】
接続部5A、接続部5Cの柔軟性が高い(変形しやすい)ので、上述したように、変位部4A及び変位部4Bの自由端側の辺の変位が大きくなる。これにより、接続部5A及び接続部5Cを介して変位部4A及び変位部4Cと接続されている主軸トーションバー3ACのせん断ひずみ(ねじり方向のひずみ)が大きくなる。
【0039】
そして変位部4A及び変位部4Cが、Z方向手前側とZ方向奥側にタイミングを合わせて振動することで、主軸トーションバー3ACがX軸周りのねじれを繰り返すように振動する。上述したように、変位部4B及び4Dの変位が接続部5B及び5Dで伝達されることで、主軸トーションバー3BDも振動する。そして、変位部4Aと変位部4Bを一組、変位部4C及び変位部4Dを一組とし、それぞれの組の変位部がZ方向に同じ方向、異なる組の変位部がZ方向に逆方向となるよう振動させることで、主軸トーションバー3ACと主軸トーションバー3BDの振動を同期させることができる。なお、各変位部4(4A、4B、4C、4D)が同期していることはいうまでもないことである。
【0040】
主軸トーションバー3AC及び主軸トーションバー3BDは、ともにX軸上に配置されているとともに、可動枠22のX方向の端部に一体連結された連結部24と連結されている。主軸トーションバー3AC及び主軸トーションバー3BDがねじれ方向に振動することで、連結部24で主軸トーションバー3AC、3BDと連結された可動枠22、すなわち、ミラー部21及びミラートーションバー23を含む可動部2がX軸周りに揺動(振動)される。
【0041】
なお、ミラー部21はミラートーションバー23に揺動可能に保持されているが、ミラートーションバー23は、可動部2の揺動の中心であるX軸と直交しているので、可動部2の揺動によってねじれ方向の力が作用することはない。すなわち、可動部2のX軸を中心とする揺動はミラー部21のミラートーションバー23による揺動にほとんど影響しない。
【0042】
次に、ミラー部21のX軸と直交する軸(Y軸)周りの揺動について説明する。ミラー部21はミラートーションバー23に保持されており、ミラートーションバー23のねじれによって揺動される。ミラートーションバー23は変位部4(4A、4B、4C、4D)がミラートーションバー23の共振周波数で振動することで、共振し、揺動する。
【0043】
さらに詳しく説明すると、以下のとおりである。変位部4A及び変位部4Cを組とし、変位部4B及び変位部4Dを組として、同じ組の変位部はZ方向の同方向に、異なる組の変位部はZ方向の異なる方向に振動させる。まず、図1において、変位部4A及び4CをZ方向手前側、変位部4B及び変位部4DをZ方向奥側に変位させた場合を例に説明する。変位部4A及び変位部4CがZ方向手前側に変位すると、接続部5A及び5CがともにZ方向手前側に変位する。そして、主軸トーションバー3ACは接続部5A及び接続部5Cに引っ張られ、可動部2側がZ方向手前側となるように曲げられる。主軸トーションバー3ACの曲げ変形によって、可動部2の連結部24が持ち上げられる。なお、接続部5A及び接続部5Cが蛇行状に形成されているので、ねじれ方向にも変形しやすく、主軸トーションバー3ACの変位を大きくすることができる。
【0044】
主軸トーションバー3BDも主軸トーションバー3ACと同様に、変位部4B及び変位部4D、接続部5B及び接続部5Dによって曲げられる。なお、主軸トーションバー3BDの曲げ方向は主軸トーションバー3ACと反対のZ方向奥側である。主軸トーションバー3AC及び主軸トーションバー3BDの曲げ変形によって、可動部2がY軸周りにねじられる。
【0045】
そして、変位部4A及び変位部4Cの組、変位部4B及び変位部4Dの組を交互に変位させることで、可動部2がミラートーションバー23の主軸周りに揺動(振動)する。この可動部2の揺動の振動数をミラートーションバー23及びミラー部21の共振周波数とすることで、ミラートーションバー23は励振されてねじれ方向の振動が発生する。これにより、ミラートーションバー23に保持されているミラー部21がY軸回りに揺動される。
【0046】
ここで、本実施の形態における光スキャナOSの駆動特性を、従来の光スキャナ(マイクロスキャナ)(図9,図10参照)と比較しつつ説明する。
従来の光スキャナにおいてミラー部921がY軸周りに揺動する場合には、ミラー部921の共振周波数は3.05E+4[Hz]付近であり、図6に点線で示すように、3.05E+04[Hz]程度の周波数で駆動回路(図示せず)が圧電素子942に電圧を印加する。この周波数は、光スキャナ自身の有する固有振動数に近似または一致する周波数となっている。このような周波数の電圧が印加されることにより、図10に示すように、各変位部(保持部)94には、当該変位部94の長手方向(Y方向)に対して交差する節、つまり変位部4の短手方向に延在する節が少なくとも1つ発生し、変位部4A及び変位部4Cにおける主軸トーションバー3AC側の端部と、変位部4C及び変位部4Dにおける主軸トーションバー3BD側の端部とがZ方向に大きく離れる結果、Y軸周りでのミラー部21の偏向角が大きくなる。
これに対し、本実施の形態における光スキャナOSにおいてミラー部21がY軸周りに揺動する場合には、ミラー部21の共振周波数は42.0E+04[Hz]程度であり、図6に実線で示すように、42.0E+04[Hz]程度の周波数で駆動回路(図示せず)が圧電素子42に電圧を印加する。このような周波数の電圧が印加されることにより、図7に示すように、各変位部4には、当該変位部4の短手方向(X方向)に対して交差する節、つまり変位部4の長手方向に延在する節が少なくとも1つ発生し、変位部4A及び変位部4Cにおける主軸トーションバー3AC側の端部と、変位部4C及び変位部4Dにおける主軸トーションバー3BD側の端部とが従来の光スキャナよりもZ方向に大きく離れ、Y軸周りでのミラー部21の偏向角が従来と比べてより一層大きくなる。つまり、効率よくミラー部21が駆動される。なお、図7では、光スキャナOSの図示を簡略化するとともに、変位部4の各領域を変位量に応じて網掛けしている。より具体的には、変位部4に対する網掛けは、紙面手前側(図1におけるZ方向の手前側)への変位量が大きい領域ほど濃く、紙面奥行き側(図1におけるZ方向の奥側)への変位量が大きい領域ほど薄くなっている。
なお、本実施の形態では、ミラー部21やミラートーションバー23の形状を調整することによって、ミラー部21の共振周波数を42.0E+04[Hz]程度としている。また、本実施の形態では、変位部4の駆動特性(駆動周波数が42.0E+04[Hz]程度である場合に、短手方向(X方向)に対して交差する節を生じる特性)に合わせてミラー部21の共振周波数を3.05E+04[Hz]程度から42.0E+04[Hz]程度に変更しているが、ミラー部21の共振周波数を3.05E+04[Hz]程度に維持しつつ、変位部4の駆動特性を調整し、駆動周波数が3.05E+04[Hz]程度である場合に、短手方向(X方向)に対して交差する節を生じるようにしても良い。
【0047】
そして、変位部4(4A、4B、4C、4D)を以上のように振動させることで、可動部2がX軸周りに揺動されるとともに、可動枠22と独立してミラー部21がY軸周りに揺動される。ミラー部21で光を反射しつつ可動部2を低周波で、ミラー部21を高周波で揺動させることで、光スキャナOSは光を2次元走査する。
【0048】
なお、以上の光スキャナOSは、その小型、軽量であるという特徴から、携帯電話、デジタルカメラ等の携帯用の電子機器に搭載されることが想定されている。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、ミラー部21をY軸周りに揺動させる場合に駆動回路から圧電素子42に対して印加される電圧は光スキャナOS自身の有する固有振動数に近似または一致するとともに、保持部41に、当該の保持部41の短手方向に対し交差する節を少なくとも1つ発生させる周波数(4.20E+0[Hz]程度)であるので、保持部41の長手方向に対し交差する節を発生させる周波数(3.05E+0[Hz]程度)である場合と比較して、印加電圧を少なくしてY軸周りの偏向角を大きくすることができる(図6参照)。また、保持部41の長手方向に対し交差する節を発生させる必要がないため、設計の自由度を向上させることができる。
【0050】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0051】
例えば、上記の実施形態においては、本発明のマイクロスキャナの例として、光を2次元走査する光スキャナを挙げているが、光を直線上に走査する1次元走査の光スキャナに用いることも可能である。また、上記各実施例において、マイクロスキャナとして、ミラー部で光を反射する光スキャナを例に説明しているが、それに限定されるものではなく、ミラー部に替わる光学素子としてレンズを用いるものやLED、レーザダイオード等の自発光素子を用いるものであってもよい。さらに、可動部の動力源(アクチュエータ)として片持ち梁状の保持部に圧電素子を貼り付けたユニモルフ構造の変位部を採用しているが、それに限定されるものではなく、片持ち梁形状であるとともに、コイル、永久磁石等を用い、電磁気力で変位する変位部を採用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 固定枠
3 主軸トーションバー
21 ミラー部
41 保持部
42 圧電素子
OS 光スキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロスキャナと駆動回路とを含むマイクロスキャナ装置において、
前記マイクロスキャナは、
外枠となる固定枠と、
軸部と、
前記軸部の直交方向に長尺となるよう配設されるとともに、一端を前記軸部に接続し、他端を前記固定枠に固定した片持ち梁構造の保持部と、
前記保持部を変形させるための力を電圧印加に応じて生じさせる駆動部と、
前記軸部の変位によって当該軸部を基準に揺動する変動部と、
を含み、
前記駆動回路から前記駆動部に対して印加される電圧は、
前記マイクロスキャナ自身の有する固有振動数に近似または一致するとともに、前記保持部に、当該の保持部の短手方向に対し交差する節を少なくとも1つ発生させる周波数であり、
前記保持部は、
前記短手方向における前記変動部側の部分のみで、前記軸部に接続されることを特徴とするマイクロスキャナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロスキャナ装置を搭載することを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−3474(P2013−3474A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136835(P2011−136835)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】