説明

マイクロバブルを利用した水処理装置及び水処理方法

【目的】凝集剤の使用量を減じることができると共に、処理時間を短縮化することができ、更に、より細かな微粒子の分離除去が可能な水処理装置及び水処理方法を提供する。
【構成】被処理水である原水を貯溜するための原水槽(第1工程)と、該原水槽から導水可能に接続され、導水された水の浄化を行った後に該浄化済みの水を放流するための放流水槽(最終工程)と、を有する水処理装置であって、
前記原水槽と前記放流水槽との間に、凝集剤の投入手段、混合手段、フロック分離槽、スラッジ貯溜槽の如き中間工程が接続されており、
前記放流水槽内に、マイクロバブル発生手段、及び濾材又は及びその他の分離手段が配設されていることを特徴とするマイクロバブルを用いた水処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルを利用した水処理装置及び水処理方法に関し、詳しくは、土木、建設工事の現場で発生する濁水や、その他の工場廃水・生活廃水等の濁水の浄化を行う水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建設工事では地盤を掘削する際に地中から流出する水によって大量の濁水が発生する。発生した濁水をポンプ等で排水しながら工事は行われるが、排水される濁水には大量の土砂が含まれているため、環境保全の面からそのままの状態での排水は許されておらず、濁水の浄化処理を施して、土等と水とを分離する水処理作業が必要である。
【0003】
一般に行われている水処理は、濁水中に懸濁している土等を浮遊・凝集させてフロック化し、凝集して大きくなったフロックを今度は沈殿させて固液分離を行って廃棄し、上澄みとなった水を排水するものである。凝集に用いられる凝集剤としては、例えば、無機凝集剤(PAC:ポリ塩化アルミニウム)や高分子凝集剤(ポリアクリルアミド)が挙げられる。
【0004】
近年では濁水の水処理技術として上記した浮遊・凝集等の一連の濁水処理を工程化した装置が用いられている(例えば、特許文献1〜6等参照。)。
【0005】
特許文献1に記載の技術は、濁水中に炭酸ガスを吹き込み中和処理し、中和された濁水に凝集剤をラインミキサーで混合して濁水中の浮遊物を凝集させフロックの生成反応を促進させることで処理するものである。
【0006】
特許文献2に記載の技術は、(1)濁水中に浮上性固体粒子及び有機高分子凝集剤を添加して濁水中の微粒子を浮上分離させ、分離水を濾過することで処理するもの、又は(2)濁水を濾過した後、濾過済みの流出水に浮上性固体粒子及び有機高分子凝集剤を添加して該流出水中の微粒子を浮上分離させることで処理するものである。
【0007】
特許文献3に記載の技術は、濁水と無機凝集剤を混合攪拌した後、高分子凝集剤を添加して凝集反応させて上澄み水と分離沈降するフロックとに分離することで処理する構成に磁気装置を配置したものである。
【0008】
特許文献4に記載の技術は、濁水に無機凝集剤を添加して強攪拌して反応させた後、反応液に高分子凝集剤を添加して緩速攪拌してフロックを生成させ、該フロック生成水に磁性体粉末を通過させて該磁性体粉末に前記フロックを補足した後、外字生体を回収すると共にフロックを除去することで処理するものである。
【0009】
特許文献5に記載の技術は、濁水中にPAC(無機凝集剤)を投入し、ラインミキサーで攪拌混合した後、貯溜凝集槽にて貯溜・放置して凝集した粗フロックを粉砕し、次に高分子凝集剤を投入して乱流攪拌してフロックを凝集沈降させ上澄み水を放流することで処理するものである。
【0010】
特許文献6に記載の技術は、濁水中にPAC(無機凝集剤)を投入し、ラインミキサーで攪拌混合した後、高分子凝集剤を投入して乱流攪拌してフロックを凝集沈降させ上澄み水を放流することで処理するものである。
【特許文献1】特開2006−239619号公報
【特許文献2】特開2004−073989号公報
【特許文献3】特開2002−307071号公報
【特許文献4】特開平11−057310号公報
【特許文献5】特開平07−000715号公報
【特許文献6】特開平07−000714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
凝集剤を用いた濁水処理技術について本発明者らは鋭意研究したところ、特許文献1〜6に記載のような従来の水処理装置では、濁水中の粒子の沈降を凝集剤による凝集に頼っているために大量の凝集剤が必要となり、また、凝集に時間を要するため処理時間が長く、更に、大きな微粒子を凝集させて捉えることはできたが細かな微粒子の分離除去が不充分であるという欠点を有している。
【0012】
そこで本発明の課題は、凝集剤の使用量を減じることができると共に、処理時間を短縮化することができ、更に、より細かな微粒子の分離除去が可能な水処理装置及び水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
【0014】
1.被処理水である原水を貯溜するための原水槽(第1工程)と、該原水槽から導水可能に接続され、導水された水の浄化を行った後に該浄化済みの水を放流するための放流水槽(最終工程)と、を有する水処理装置であって、
前記原水槽と前記放流水槽との間に、凝集剤の投入手段、混合手段、フロック分離槽、スラッジ貯溜槽の如き中間工程が接続されており、
前記放流水槽内に、マイクロバブル発生手段、及び濾材又はその他の分離手段が配設されていることを特徴とするマイクロバブルを用いた水処理装置。
【0015】
2.前記第1工程である原水槽内でマイクロバブルを発生させて原水と混合させ、原水と混合した粒子を濾材を用いて吸着濾過を行う構成であることを特徴とする上記1に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0016】
3.前記中間工程の凝集剤の投入が2段階で行われる構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0017】
4.前記中間工程には、一つ又は二つ以上の混合装置が配設され、該混合装置の直前・間・直後の少なくとも何れか一箇所に凝集剤を投入する構成であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0018】
5.前記中間工程には、反応塔が配設され、該反応塔に高分子凝集剤が投入される構成であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0019】
6.前記反応塔が混合装置の後工程に配設される構成であることを特徴とする上記5に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0020】
7.前記濾材を有する濾過工程が、濾材と汚泥沈積体とを交互に積層して粒子を分離する構成であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0021】
8.前記濾材が溶岩繊維接触材であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0022】
9.前記第1工程である原水槽で濾材の洗浄を行う構成であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0023】
10.前記最終工程の放流水槽に用いられるマイクロバブル発生装置が、負圧型又は加圧型のいずれかであることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0024】
11.前記第1工程の原水槽に用いられるマイクロバブル発生装置が、負圧型又は加圧型のいずれかであることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0025】
12.前記最終工程のその他の分離手段が、粒子を吸引する吸引手段であることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【0026】
13.上記1〜12に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置を用いて行う水処理方法であって、
第1工程である原水槽と最終工程である放流水槽の少なくとも2つの槽を有し、前記放流水槽内でマイクロバブルを発生させると共に濾材を用いて粒子を濾過し、中間工程に凝集剤を投入して混合・反応させてフロック分離・スラッジ貯溜を行うことを特徴とする水処理方法。
【発明の効果】
【0027】
請求項1又は13に示す発明によれば、凝集剤の使用量を減じることができると共に、処理時間を短縮化することができ、更に、より細かな粒子の分離除去が可能な水処理装置及び水処理方法を提供することができる。
【0028】
特に、最終工程である放流水槽内にマイクロバブル発生手段を配設した構成により、マイクロバブルの攪拌効果によって被処理水中の土等の粒子と凝集剤との接触をより促進することができるので、従来より凝集剤の使用量を減じても所定の凝集効果が得られるだけでなく処理時間の短縮化が可能であり、更に、マイクロバブルが極めて微細な気泡であるため、より細かな粒子をも逃さず捉えることができ、マイクロバブルが原水と混合することによって原水に混合した粒子が濾材に吸着され易くなる(付着性が向上する)ので、より細かな粒子の分離除去が可能となり水処理性能が極めて高い。
【0029】
請求項2に示す発明によれば、最終工程に加えて第1工程においてもマイクロバブル発生手段を配設した構成により、マイクロバブルの攪拌効果による濁水中の土等の粒子と凝集剤との接触がより高められた水処理が行われるので、処理時間の短縮化がより可能であるだけでなく、最初の工程である第1工程で濁水中の土等の粒子のかなり部分を分離除去することが可能となるので、後工程を含む最終工程での被処理水中の粒子の分離除去の精度及び効率をより向上させることができる。
【0030】
請求項3に示す発明によれば、凝集剤の被処理水中への混合をより確実とすることができるので凝集効率の向上が可能となる。
【0031】
請求項4に示す発明によれば、凝集剤の投入が混合装置による攪拌直前・攪拌中・攪拌直後のいずれかで行われるため、被処理水中に投入された凝集剤が直ちに混合されるので凝集効率が高い。
【0032】
請求項5に示す発明によれば、反応塔内の被処理水に高分子凝集剤を投入するので、単に水処理経路中に凝集剤を投入する場合に比して凝集反応効率が著しく向上する。
【0033】
請求項6に示す発明によれば、混合装置によって攪拌された状態の被処理水が反応塔内に導水されるので、該反応塔内に投入される高分子凝集剤の被処理水への混合効率が高まり凝集反応効率がより向上することになる。
【0034】
請求項7に示す発明によれば、被処理水を濾過する濾材と沈積する土等の粒子を受け止める汚泥沈積体とが交互に積層した多段構成であるので、濾材に濾別された土等の粒子が該濾材に付着することなく沈降してしまった場合でも、該濾材の下層に配設された汚泥沈積体が受け止めることができる。更に、下方から上昇する水流中に残存している土等の粒子を汚泥沈積体の下面が受け止めることで被処理水から分離させ、受け止められた粒子は該受け止めた汚泥沈積体の下層に配設された濾材に吸着することで濾過することができる。
【0035】
請求項8に示す発明によれば、微粉砕した溶岩を練り込んだ繊維を構成素材に含む濾材により、汚泥から発生する硫化水素ガスに対しても有効に吸着作用を発揮することができる。
【0036】
請求項9に示す発明によれば、最終工程で用い、被処理水の土等の粒子が付着した濾材を第1工程である原水槽で洗浄することができるので、格別の洗浄装置を別途用意することなく、濾材の繰り返し使用が可能となる。
【0037】
請求項10に示す発明によれば、最終工程の放流水槽に配設するマイクロバブル発生装置として、負圧型又は加圧型のいずれかを用いることにより凝集する被処理水中の土等の粒子が濾材に付着し易くなるので分離除去がより容易となる。
【0038】
請求項11に示す発明によれば、第1工程である原水槽に配設するマイクロバブル発生装置として、負圧型又は加圧型のいずれかを用いることにより凝集する濁水中の土等の粒子が濾材に付着し易くなるので容易に分離することができる。
【0039】
請求項12に示す発明によれば、凝集した粒子を吸引することで被処理水を浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係るマイクロバブルを利用した水処理装置及び水処理方法について、土木・建設現場等で発生する濁水の浄化処理の場合を実施例として詳細に説明する。
【0041】
図1は本発明に係るマイクロバブルを利用した水処理装置の一実施例を示す概略構成図、図2は第1工程である原水槽をより詳細に説明するための構成図、図3は最終工程である放流水槽をより詳細に説明するための構成図、図4は最終工程である放流水槽に配設される濾材及び汚泥沈積体を説明する構成図、図5は図4の濾材及び汚泥沈積体の放流水槽内における配設状態を説明する一部省略平面構成図である。
【0042】
図1に示すように、本発明に係るマイクロバブルを利用した水処理装置(以下、単に水処理装置とも言う。)は、
被処理水である原水(以下、本実施例では濁水と言う。)を貯溜するための原水槽10を有する第1工程1と、
該第1工程の原水槽10から導水可能に接続され、導水された濁水の浄化を行った後に該浄化済みの被処理水を放流するための放流水槽20と、該放流水槽20内に配設したマイクロバブル発生手段21及び濾材22とを有する最終工程2と、
前記第1工程1の原水槽10と前記最終工程2の放流水槽20との間に接続された中間工程3と、
を有して構成されている。
【0043】
濁水は、先ず、第1工程1の原水槽10に導水されて貯留し、該原水槽10により最初の処理が行われる。即ち、図2に示すように、マイクロバブル発生手段11によりマイクロバブル(例えば、数10μm程度の微細気泡)を発生させ、濁水中に懸濁している土等の粒子に付着させることでマイクロバブルを濁水中に混合させ、濁水中にマイクロバブルが混合することによって土等の粒子が濾材12に吸着し易くなり(付着性の向上)、この濾材12への吸着によって最初の濾過処理が行われる。尚、本明細書では基本的に、この最初の濾過処理が行われる以前の水については「濁水」と言い、最初の濾過処理が行われた以降の水については濁水ではなく「被処理水」と言うこととする。
【0044】
第1工程1に用いられるマイクロバブル発生手段11としては、この種の水処理施設等に用いられる公知公用のものが特別の制限なく挙げられる。例えば、マイクロバブル発生部11Aに水中ポンプ11Bを接続し、該水中ポンプ11Bが原水槽10内の濁水を強制的に送液することでマイクロバブル発生部11Aでキャビテーション(乱流)を生じさせてマイクロバブルを発生する構成等が挙げられる。尚、第1工程1の原水槽10で用いられるマイクロバブル発生手段11としては、負圧型と加圧型のいずれでもよいが、マイクロバブルと濁水とを混合させることを主眼にすれば、加圧供気装置が不要なコストの観点から負圧型であることが好ましい。
【0045】
第1工程1に用いられる濾材12としては、この種の水処理施設等に用いられる公知公用のものが特別の制限なく挙げられる。例えば、粉砕した溶岩を練り込んだ繊維を構成素材に含む溶岩繊維接触材から成る濾材が挙げられる。濾材12の配設位置としては、原水槽10内の中層域から水面にかけて配設することが好ましいが、原水槽10内の中層域から底部にかけて配設してもよい。
【0046】
上記した第1工程1で最初の処理が行われた被処理水は、原水槽10内に配設された送水ポンプ13により次の中間工程3に送水されて処理される。中間工程3への送水は、図2に示す本実施例のように、仕切り壁14をオーバーフローした被処理水の上澄み水を送水ポンプ13によって送水する構成であることが好ましい。尚、中間工程3への送水は、仕切り壁14からのオーバーフローに限らず、原水槽10の中層域や底面部分、或いはその他の部分からの送水であってもよいし、仕切り壁14の無い構成であってもよい。
【0047】
中間工程3としては、凝集剤投入手段31、混合手段32、フロック分離槽33、スラッジ貯溜槽34、その他の処理工程の少なくともいずれか一つの処理が行われる。本実施例では、凝集剤投入手段31、混合手段32、フロック分離槽33、スラッジ貯溜槽34、pH中和手段35による処理が行われる構成を例示している。
【0048】
中間工程3では、凝集剤投入手段31によって凝集剤槽31Aから凝集剤が被処理水の通水経路中に投入される。ここで投入される凝集剤としては無機凝集剤が好ましく、より好ましくはPAC(ポリ塩化アルミニウム)である。
【0049】
この凝集剤の投入は1度での投入に限らず2段階以上の投入でもよく(本実施例では2段階)、かかる凝集剤の投入は混合手段32である混合装置の前・後、或いは混合中、更には混合装置が複数配設されている構成(本実施例では2つ配設)では混合装置間の何れか少なくとも一箇所に投入される。本実施例では1つ目の混合装置32Aの前と2つ目の混合装置32Bの後に投入する2段階投入構成となっている。混合手段32としては、この種の水処理施設等に用いられる公知公用のものが特別の制限なく挙げられ、例えば、公知公用の混合装置やラインミキサー等の攪拌手段が好ましい。
【0050】
凝集剤投入手段31により凝集剤が投入され、混合手段32により混合されることで、前記第1工程1で被処理水中の土等の粒子に付着していたマイクロバブルを剥離させて中和すると共に、被処理水に凝集剤を混合して凝集反応を生じさせる。
【0051】
尚、凝集剤の投入前や混合途中において、炭酸ガスや希硫酸を添加するpH中和手段35を設けることが好ましい。炭酸ガス又は希硫酸を添加することで、被処理水の水素イオン濃度を調整して中性にすることで、水質汚濁防止法に基く一般排水基準値(pH5.8〜8.6)範囲内にpHを調整する。pH中和手段35としては、この種の水処理施設等に用いられる公知公用のpH中和処理装置(炭酸ガス型、或いは希硫酸型)が特別の制限なく挙げられる。
【0052】
凝集剤手段31による凝集剤の投入、混合手段32による被処理水と凝集剤との混合の後、フロック分離槽33でのフロックの分離及びフロック分離槽33からスラッジ貯溜槽34へのスラッジの貯溜が行われるが、フロック分離槽33の前であって前記混合手段32の後工程には反応塔36を配設することが好ましい。反応塔36には、該反応塔36に接続される高分子凝集剤溶解槽37から高分子凝集剤が投入される。高分子凝集剤としては、この種の水処理施設等に用いられる公知公用のものが特別の制限なく挙げられ、例えば、ポリアクリルアミドが好ましい。
【0053】
前記混合手段32によって攪拌された状態の被処理水が反応塔36内に導水されるので、該反応塔36内に投入される高分子凝集剤の被処理水への混合効率が高まることから凝集反応効率はより向上する。
【0054】
高分子凝集剤による凝集反応、即ち、高分子凝集剤の鎖状の高分子が被処理水中の土等の粒子を吸着すること(架橋中和作用)により、土等の粒子の沈降速度が速まることになる。また、−(マイナス)に帯電して浮遊している粒子を凝集反応により中和すること(電荷中和作用)で粒子の結合が促進され、粒子の沈降速度が速まることになる。
【0055】
反応塔36を通過した被処理水は、該被処理水中の土等の粒子が凝集した状態となり沈降速度が大の状態となっているためフロック分離槽33に導水され貯溜させることでフロック(懸濁物質の集合物)となって分離することになる。分離したフロックはスラッジ(沈降した汚泥)となり該フロック分離槽33に接続されたスラッジ貯溜槽34に貯留する。貯留したスラッジは廃棄又は再利用されることになる。尚、被処理水から分離したスラッジは有機物を含有していないため、コーン指数200kN/m以上あれば建設発生土として再利用でき、産業廃棄物扱いにはならない。
【0056】
フロック分離槽33でフロックが分離した被処理水はその上澄み水が中間工程3の次の工程である最終工程2へ送水される。
【0057】
最終工程2の放流水槽20へ送水された被処理水は、第1工程及び中間工程3での処理によって土等の粒子の大部分が分離除去された状態にあるが、放流可能な水質となるように当該最終工程2で最終処理が行われる。
【0058】
先ず、中間工程3から最終工程2の放流水槽20に導水される際、放流水槽20の前段にあるpH・濁度測定部21にてpHセンサー21Aや濁度センサー21B等の測定手段によりpH測定及び濁度測定されることが好ましい。pH測定により、第1工程1及び中間工程3により2段階で処理され、更には好ましく配設される構成のpH中和手段35によりpH中和処理された被処理水が水質汚濁防止法に基く一般排水基準値(例えば、大阪府下水道放流基準pH5.8〜8.6、SS200mg/l、豊橋市役所水質汚濁防止法環境保全排水基準pH5.8〜8.6、SS30mg/l等)範囲内に調整された状態であるかの確認が行われる。この測定値を参考に最終工程2での処理時間等の処理条件を設定することが好ましい。
【0059】
次に、放流水槽20に導水された被処理水は該放流水槽20内で最終工程の処理が行われる。即ち、図3に示すように、マイクロバブル発生手段22によりマイクロバブルを発生させ、第1工程1及び中間工程3を経ても未だ被処理水中に残存している土等の粒子を被処理水と共に濾材23に送り込んで該濾材23に残存していた粒子を吸着させることで最終の濾過処理が行われる。
【0060】
最終工程2に用いるマイクロバブル発生手段22は、前述した第1工程1に用いられるマイクロバブル発生手段11と同様に、この種の水処理施設等に用いられる公知公用のものが特別の制限なく挙げられ、負圧型、加圧型のいずれでもよいが、本最終工程2では水素や二酸化炭素といった気体を供気するのではなく、マイクロバブルと被処理水とを混合させる機能であれば加圧供気装置が不要であるという観点から負圧型であることが好ましい。マイクロバブル発生手段22により、大量の気体(マイクロバブル)を被処理水に混入させることで該被処理水の粒子の付着性を向上させることができ濾材23に吸着し易くなる。また、マイクロバブル発生による攪拌によって土等の粒子と高分子凝集剤との接触機会が増大することになり前述した架橋吸着作用をより促進させることができ、更に、マイクロバブル発生手段22によって生じるキャビテーション(乱流)により被処理水が帯電することになり前述した電荷中和作用をより促進することができる。
【0061】
最終工程2に用いられる濾材23としては、前述した第1工程1に用いられる濾材12と同様に、この種の水処理施設等に用いられる公知公用のものが特別の制限なく挙げられ、同じく、粉砕した溶岩を練り込んだ繊維を構成素材に含む溶岩繊維接触材から成る濾材が挙げられる。
【0062】
最終工程2に用いられる濾材23の配設構成としては、図4に示すように、被処理水を濾過する濾材23と沈積する土等の粒子を受け止める汚泥沈積体24とが交互に上下方向に積層(上下方向において傾斜させたり、或いはずらして積層した場合を含む)した多段構成となったものを一単位として、図5に示すように、平面方向の縦横に複数単位を並列させた構成(平面方向において縦横並列以外に斜めに並列させたり、或いは縦横をずらして並列した場合を含む。)となっている。尚、図5では、当該図5を正面視した際に上右側に位置する6個の単位については最上層の濾材23を省略した状態で図示している。図3及び図4に示す符号25は、マイクロバブル発生手段22が作用する水域と濾材23による濾過処理域とを隔てる仕切り壁であり、図4に示す符号26は、濾材23と汚泥沈積体24とを多段構成に支持するためのワイヤーやチェーン部材から成る支持部材であり、同じく図4に示す符号27は、濾材23及び/又は汚泥沈積体24の交換時等に止水するための止水栓である。
【0063】
この構成により、マイクロバブル発生手段22によって放流水槽20内でマイクロバブルが混合した状態となった被処理水が、濾材23及び汚泥沈積体24の下方から送り込まれることで、該濾材23及び汚泥沈積体24によって濾過処理されることになる。
【0064】
濾過処理において、濾材23に濾別された土等の粒子が該濾材23に付着することなく沈降してしまった場合でも、該濾材23の下層に配設された汚泥沈積体24が受け止めることができる。更に、下方から上昇する水流中に残存している土等の粒子を汚泥沈積体24の下面が受け止めることで被処理水から分離させ、受け止められた粒子は該受け止めた汚泥沈積体24の下層に配設された濾材23に吸着することで濾過することができる。
【0065】
かかる最終工程2の処理によって、第1工程1及び中間工程3での処理を経ても被処理水中の粒子が有った場合であっても、これらの残存する粒子を吸着濾過処理することができる。
【0066】
以上のように最終工程2において最終処理された被処理水は、放流直前に放流水を濁度測定部28により濁度測定を行い、基準値範囲内に浄化処理されたことを確認した後に放流前槽29を経て放流される。
【0067】
以上、本発明に係るマイクロバブルを利用した水処理装置及び水処理方法の実施例について説明したが、本発明は上記に限定されず本発明の範囲内において他の態様を採ることもでき、例えば、最終工程2の濾材23に替えて又は加えて、粒子を分離するその他の分離手段を用いてもよい。その他の分離手段としては、例えば、粒子を吸引する吸引手段を挙げることができ、該吸引手段としてはこの種の水処理施設等に用いられる公知公用のバキューム装置等が特別の制限なく挙げられる。吸引手段を用いることで、凝集した粒子を吸引することで被処理水を浄化することができる。
【0068】
また、本発明が適用される水処理分野も上記実施例の土木・建設現場で発生する濁水の浄化処理に限らず、本発明の範囲内で適用可能な水浄化処理に用いることができる。
【0069】
更に、本発明に係る水処理装置は濁水の水処理を行うだけでなく、濾過処理に用いられた濾材の洗浄を行うこともできる。例えば、前記最終工程2の放流水槽20に用いられた濾材23を第1工程1である原水槽10で洗浄することができる。使用済みの濾材の洗浄を行うことで、格別の洗浄装置を別途用意することなく、該濾材の繰り返し使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るマイクロバブルを利用した水処理装置の一実施例を示す概略構成図
【図2】第1工程である原水槽をより詳細に説明するための構成図
【図3】最終工程である放流水槽をより詳細に説明するための構成図
【図4】最終工程である放流水槽に配設される濾材及び汚泥沈積体を説明する構成図
【図5】図4の濾材及び汚泥沈積体の放流水槽内における配設状態を説明する一部省略平面構成図
【符号の説明】
【0071】
1 第1工程
10 原水槽
11 マイクロバブル発生手段
11A マイクロバブル発生部
11B 水中ポンプ
12 濾材
13 送水ポンプ
14 仕切り壁
2 最終工程
20 放流水槽
21 pH・濁度測定部
21A pHセンサー
21B 濁度センサー
22 マイクロバブル発生手段
23 濾材
24 汚泥沈積体
25 仕切り壁
26 支持部材
27 止水栓
28 濁度測定部
29 放流前槽
3 中間工程
31 凝集剤投入手段
31A 凝集剤槽
32 混合手段
32A 1つ目の混合装置
32B 2つ目の混合装置
33 フロック分離槽
34 スラッジ貯溜槽
35 pH中和手段
36 反応塔
37 高分子凝集剤溶解槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水である原水を貯溜するための原水槽(第1工程)と、該原水槽から導水可能に接続され、導水された水の浄化を行った後に該浄化済みの水を放流するための放流水槽(最終工程)と、を有する水処理装置であって、
前記原水槽と前記放流水槽との間に、凝集剤の投入手段、混合手段、フロック分離槽、スラッジ貯溜槽の如き中間工程が接続されており、
前記放流水槽内に、マイクロバブル発生手段、及び濾材又は及びその他の分離手段が配設されていることを特徴とするマイクロバブルを用いた水処理装置。
【請求項2】
前記第1工程である原水槽内でマイクロバブルを発生させて原水と混合させ、原水と混合した粒子を濾材を用いて吸着濾過を行う構成であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項3】
前記中間工程の凝集剤の投入が2段階で行われる構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項4】
前記中間工程には、一つ又は二つ以上の混合装置が配設され、該混合装置の直前・間・直後の少なくとも何れか一箇所に凝集剤を投入する構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項5】
前記中間工程には、反応塔が配設され、該反応塔に高分子凝集剤が投入される構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項6】
前記反応塔が混合装置の後工程に配設される構成であることを特徴とする請求項5に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項7】
前記濾材を有する濾過工程が、濾材と汚泥沈積体とを交互に積層して粒子を分離する構成であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項8】
前記濾材が溶岩繊維接触材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項9】
前記第1工程である原水槽で濾材の洗浄を行う構成であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項10】
前記最終工程の放流水槽に用いられるマイクロバブル発生装置が、負圧型又は加圧型のいずれかであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項11】
前記第1工程の原水槽に用いられるマイクロバブル発生装置が、負圧型又は加圧型のいずれかであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項12】
前記最終工程のその他の分離手段が、粒子を吸引する吸引手段であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のマイクロバブルを利用した水処理装置。
【請求項13】
請求項1〜12に記載のマイクロバブルを利用した水処理装置を用いて行う水処理方法であって、
第1工程である原水槽と最終工程である放流水槽の少なくとも2つの槽を有し、前記放流水槽内でマイクロバブルを発生させると共に濾材を用いて粒子を濾過し、中間工程に凝集剤を投入して混合・反応させてフロック分離・スラッジ貯溜を行うことを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−72747(P2009−72747A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246918(P2007−246918)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】