説明

マイクロバルブ装置

【課題】電子制御式自動トランスミッションの流体制御回路内の流体の流れを制御するのに適したマイクロバルブ装置を提供する。
【解決手段】マイクロバルブ装置825は、流体通路の流体圧力を制御するためのパイロットバルブとして作用する第1のマイクロバルブ836と、流体通路内の流体圧力により位置決め可能なパイロット作動型バルブである第2のマイクロバルブ840とを備えている。パイロットバルブの作動によりパイロット作動型バルブの位置が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、半導体の電気機械式装置に係り、より詳しくは、自動トランスミッションを制御するためのマイクロバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(マイクロ電気機械式システム)は、マイクロメートル領域のサイズの特徴を有する、物理的に小さいシステムのクラスである。これらのシステムは、電気的及び機械的な構成部品の両方を持っている。「マイクロ機械加工」という用語は、マイクロ電気機械式システム(MEMS)装置の、3次元構造物及び可動部品の製造を意味するものと一般に理解されている。マイクロ電気機械式システム(MEMS)は、これらの非常に小さい機械的装置をマイクロ機械加工するため、最初に、修正された集積回路(コンピュータチップ)の製造技術(例えば化学エッチング)及び材料(例えばシリコン半導体材料)を使用した。今日では、より多数のマイクロ機械加工及び利用可能な材料が存在する。本願で使用される「マイクロバルブ」という用語は、マイクロバルブを備えると共に他の構成部品を備え得る、装置を意味している。なお、マイクロバルブとは異なる構成部品が、マイクロバルブ装置に含まれる場合には、これらの他の構成部品は、マイクロ機械加工された構成部品又は標準的なサイズ(より大きいサイズ)を持つ構成部品のいずれであってもよい。
【0003】
流体回路内部の流体流れを制御するため様々なマイクロバルブ装置が提案されてきた。典型的なマイクロバルブ装置は、変位可能な部材、又は、ボディにより可動に支持され且つ閉位置と完全な開位置との間で移動するためアクチュエータに作動的に連結されたバルブを備えている。このバルブは、閉位置に配置されたとき、第2の流体ポートと流体連通して配置された第1の流体ポートを遮蔽し即ち閉じ、これにより流体が流体ポートの間を流れることを阻止する。バルブが閉位置から完全な開位置まで移動したとき、流体は、流体ポートの間を流れることを漸増的に可能にされる。「パイロット作動型マイクロバルブ装置」という標題の現在係属中の米国特許出願09/532,604号は、電気的作動式のパイロットマイクロバルブと、その位置が該パイロットマイクロバルブにより制御されるパイロット作動式マイクロバルブとから構成されたマイクロバルブ装置を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変位される部材を移動させるのに十分な力を生成することに加えて、アクチュエータは、変位される部材の意図された変位に対抗する、変位可能な部材に作用する流体流れの力を克服することのできる力を生成しなければならない。これらの流体流れの力は、流体ポートを通過する流れ率が増加するとき、一般に増加する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電子制御式自動トランスミッション及び該電子制御式自動トランスミッションの流体制御回路内の流体の流れを制御するのに適したマイクロバルブ装置に関する。本電子制御式自動トランスミッションは、入力シャフトと、出力シャフトと、該入力シャフトと該出力シャフトとの間を駆動接続する、複数のギアと、を備える。本電子制御式自動トランスミッションは、該入力シャフトと該出力シャフトとの間で該ギアにより提供されるギア減速比に変化をもたらすように作動可能である、例えば、液圧作動式ブレーキバンド及び液圧作動式クラッチ等の少なくとも1つの液圧作動型構成部品を更に備えている。加圧液圧流体の源は、電子制御式自動トランスミッションの液圧作動型構成部分を作動させるため設けられている。本発明に係るマイクロバルブ装置は、源から液圧作動式構成部品への加圧液圧流体の通過を制御するように選択的に作動可能である。好ましい実施形態におけるマイクロバルブ装置は、液圧作動型構成部品への加圧液圧流体の流れを制御し選択的に阻止するためのパイロット作動型バルブを備える。マイクロバルブ装置は、摺動バルブの作動を制御するため、該摺動バルブへの加圧液圧流体の流れを制御するための電子制御式パイロットバルブも更に備えている。
【0006】
本発明の様々な目的及び利点は、添付図面を参照して、好ましい実施形態の次の詳細な説明を読むとき、当業者には明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照すると、入力シャフト800a及び出力シャフト800bを有する、電子制御式自動トランスミッション800の概略図が示されている。自動トランスミッションは、遊星ギア構成部800cの様々なエレメントを係止したり係止解除したりすることによって様々なギア減速比を提供することができる遊星ギア構成部800cをトルクコンバータに結合したものを一般に使用している。係止及び係止解除は、例えばクラッチ800d(あるモデルでは、ブレーキバンド)等の液圧作動式構成部品によって制御することができる。クラッチ又はブレーキバンド800dは、それらを作動させるためポンプ800eから加圧液圧流体を選択的に供給される。加えて、トルクコンバータ800fは、トランスミッションの効率を改善するため、幾つかのトランスミッションでは、加圧液圧流体を係止機構に供給することによって係止され得る。このようにして、トルクコンバータ800eは、電子制御式自動トランスミッション800の別の液圧作動式構成部品となる。
【0008】
自動トランスミッション800は、トランスミッション800のコンバーター(図示せず)のシフト工程及び係止工程のための加圧流体を供給するための複数の電子制御バルブ802を備え付けている。自動車用の電子制御ユニット(ECU)804は、バルブ802の作動を制御するためのトランスミッション制御ユニット806を備え、更には点火及び燃料噴射制御ユニット808を備えていてもよい。エンジン速度センサー810、空気流量センサー812、スロットルセンサー814、キックダウンセンサー816、酸素センサー818、及び、ギアセレクターレバーの位置を検出するための位置センサー820を始めとして、ECU804に信号を供給する複数のセンサーが設けられている。これらのセンサー信号は、適切な制御信号を決定し、発生させるため、ECU804により処理される。典型的には、ECU804は、フォールト条件が検出された場合に車両のドライバーに警告を発するため、フォールトインジケーターランプ822も備え付けられている。
【0009】
図1に示された電子制御自動トランスミッション800の前述した説明は、当該技術分野で知られており、「機械技術者のためのマークスの標準ハンドブック第9版」(11−9頁乃至11−10頁;マグローヒル社により著作権が所有された、1987年度、ユーゲン.A.アバロン及びテオドア.ボーマイスターIIIにより編集される)、並びに、「現代自動車技術」(707頁;グッドハート−ウィルコックス社により著作権が所有された、1994年度、ジェームズ・E・ダーフィーによる)から採用されている。バルブ802とは異なる自動トランスミッション800の構成及び作動は、これ以上、説明しない。従来技術におけるバルブ802は、数百ポンド/平方インチ(p.s.i)までの圧力を制御する、従来のソレノイド作動型バルブであった。自動トランスミッションで使用するため設計された従来のバルブの一例は、フェーダーらに付与された米国特許番号4,535,816号で怪異されているが、バルブ802のため従来技術のソレノイド作動型バルブの代わりにマイクロバルブを用いてもよいと考えられる。トランスミッション802の特有の設計及び個々のバルブ802の特有の使用に依存して、本発明により利用されるマイクロバルブは、オンオフ(即ち、完全開放−完全閉鎖)で機能するか、或いは、比例バルブ(即ち、完全開放位置から完全閉鎖位置まで連続可変の態様で流量/圧力を制御するバルブ)として機能してもよい。前述した現在継続中の米国特許出願番号09/532,604号は、電子作動型パイロットマイクロバルブと、その位置がパイロットマイクロバルブにより制御されるパイロット作動型マイクロバルブと、からなる、マイクロバルブ装置を記載しており、このマイクロバルブ装置はオンオフ(完全開放−完全閉鎖)で作動することができる。マイクロ製作技術により作られたバルブは、一般に、従来のバルブと比べて小さい。これは、ECU804(又は少なくともトランスミッション制御ユニット806)及びバルブ802を、トランスミッション800の内部に備えることができる1パッケージ内に備え付けることを促進する。これは、マイクロバルブ装置と一体に製作されたセンサー(例えば、そのようなパッケージを使用することのできる自動トランスミッションの制御装置の正確な作動を監視する流体圧力センサー等)の使用も促進する。これらのセンサーは、開ループ又は閉ループ制御及び自動トランスミッション800の監視のため使用することができる。
【0010】
図2は、図1の自動トランスミッション800においてバルブ802として使用するのに適していると考えられる、本発明に係るマイクロバルブ装置825の実施形態を示している。図3は、図2のライン3−3に沿って取られたマイクロバルブ装置の断面図である。マイクロバルブ装置825は、パイロットバルブ836及びパイロット作動型摺動バルブ840を有する、パイロット作動型マイクロバルブ装置である。マイクロバルブ装置825は、パイロットバルブ836が配置されている第1のキャビティ844を画成するボディ842と、摺動バルブ840が配置されているT字形の第2のキャビティ846と、第1のキャビティ844と第2のキャビティ846とを接続する流体通路848とを備えている。第2の流体通路路850は、第1のキャビティ844を、電子制御式自動トランスミッション800の低圧リザーバー又は流体戻り部(図示せず)に接続されるようになった、出口ポート852に接続している。入口ポート856は、第1のキャビティ844に接続され、高圧流体の源、即ち電子制御自動トランスミッション800のポンプ800eの吐出部に接続されるようになっている。
【0011】
ボディ842は、第2のキャビティ846に接続している幾つかのポートも画成している。これらには、高圧流体の源、即ちポンプ800eの吐出部に接続されるようになり且つ入口ポート856が接続されている供給ポート858と、電子制御式自動トランスミッション800の低圧リザーバー又は流体戻り部(図示せず)に接続されるようになったタンクポート860と、が含まれている。2つの負荷ポート862a及び862bが該ボディ内に形成され、供給ポート856の対向する側に配置された、第2のキャビティ846と連通している。負荷ポート862a及び862bは、電子制御式自動トランスミッション800の、ブレーキバンド又はクラッチ800d又はトルクコンバータ800f等の、電子制御式自動トランスミッション800の液圧作動型構成部品に加圧流体を供給するため、一緒に接続されるように構成されている。加えて、図3に示されるように、トラフ部864は、負荷ポート862aとは反対側の第1のキャビティ844の上側表面に形成されており、別のトラフ部865は、タンクポート860とは反対側の第1のキャビティ844の上側表面上に形成されている。上述したトラフ部に関しては、トラフ部864及び833は、摺動バルブ840上に作用する流れの力を平衡させる。
【0012】
パイロットバルブ836は、図2に示された第1の位置と、第2の位置(図示せず)との間で連続可変の態様で移動する、細長いビーム866から構成される。ビーム866は、屈曲ビーム866aによりバルブボディ842の固定位置に枢動可能に取り付けられている。第2の位置では、パイロットバルブ836のビーム866は、入口ポート856を覆うように配置され、入口ポート856から第1のキャビティ836への流れを事実上遮蔽する。第1のキャビティ844内の加圧流体は、第2の通路850内のオリフィス854を通って出口ポート852へと流れ出る。パイロットバルブ836のビーム866が第1の開位置に向かって移動されるとき、入口ポート856は漸次開放され、入口ポート856から第1のキャビティ844内への流体のより速い流れを可能にする。このようにして流入することを可能にされた流体は第2の通路850を流れ出て、該流体がオリフィス854を通って流れるとき圧力差を形成させ、第1のキャビティ844内の圧力を上昇させる。入口ポート856が更に開放されるとき、流体はオリフィス854をより速く流れ、より大きい圧力差を引き起こし、第1のキャビティ844内の圧力を更に上昇させる。かくして、第1のキャビティ844内の圧力は、入口ポート856から、第1のキャビティ844、オリフィス854及び第2の通路850を通って出口ポート852に至る、流れ率を制御することにより、制御することができる。ビーム866を位置決めすることは、この流体の流れ率を制御し、かくして第1のキャビティ844内の圧力を制御する。
【0013】
全体が867で示されたバルブアクチュエータは、ビーム866を位置決めする。アクチュエータ867は、ビーム866に取り付けられた細長い背部867を備える。アクチュエータ867は、対向する多数対の第1のリブ867b及び第2のリブ867cを更に備えている。第1のリブ867bの各々は、背部867aの第1の側部に取り付けられた第1の端部と、バルブボディ842の固定部分に取り付けられた第2の端部とを有する。第1のリブ867bと同様に、第2のリブ867cの各々は、背部867aの第2の側部に取り付けられた第1の端部と、バルブボディ842の固定部分に取り付けられた第2のリブ端部とを有する。これらのリブ867b、867cは、熱で伸びたり(細長く)縮んだりするように設計されている。リブ867b及び867cを熱膨張させるため、電気接点867d(図4に示される)が、リブ867b及び867cを通って流れる電流を供給するべく電源に接続するように構成されている。アクチュエータ867は、図1に示されたECU804等の電子制御ユニットにより制御されるようになっている。
【0014】
摺動バルブ840は、細長いボディで形成されている。該ボディは、摺動バルブ840が略T字形プレートであるように、該ボディの第1の端部で垂直に延在している一対の対向して配置されたアームを有している。摺動バルブは、該プレートの幅広い長さ方向端部に形成された第1の端部面(即ち制御面)868と、該プレートの幅狭い長さ方向端部に形成された第2の端部面870と、を有する。摺動バルブ840は、該バルブを通る3つの開口を画成している。第1の端部面868に近接した第1の開口872は、トラフ部865内の流体体積部分が、タンクポート860での圧力と等しくなり、該摺動バルブ840上に垂直に作用する力を平衡させることを可能にするため、(図3に示されるように)摺動バルブ840を通して画成されている。摺動バルブ840を通る第2の開口874は、常に負荷ポート862bと連通している内部体積を形成している。第2の開口874と第1開口872との間の薄板部876は、負荷ポート862bとタンクポート860との間の流れを可能にしたり又は阻止したりする。図示の位置では、薄板部876は、負荷ポート862bとタンクポート860との間の流れを阻止している。薄板部876が右方に移動するとき(図2及び図3に示されるように)、負荷ポート862bとタンクポート860との間の流体経路が開放され、負荷ポート862bに存在している圧力をタンクポート860に接続されている低圧リザーバーへと逃がす。
【0015】
摺動バルブ840を通る第3の開口878は、トラフ部864内の流体体積部分が、負荷ポート862aでの圧力と等しくなり、(図3に示されるように)摺動バルブ840上に垂直に作用する力を平衡させることを可能にする。第2の開口874と第3の開口878との間の薄板部880は、摺動バルブ840の全ての位置で、供給ポート858と負荷ポート862bとの間の流れを阻止する。第3の開口878と第2の長さ方向端部面870との間の最後の薄板部882は、供給ポート858と負荷ポート862aとの間の流れを可能にしたり又は阻止したりする。図示の位置では、薄板部882は、供給ポート858と負荷ポート862aとの間の流れを阻止している。摺動バルブ840が左方に移動するとき(図2及び図3に示されるように)、供給ポート858と負荷ポート862aとの間の流体経路が開放され、加圧流体を負荷ポート862aに接続された負荷に供給する。
【0016】
摺動バルブ840は、第2のキャビティ846の壁と協働して、第1の長さ方向端部面868と、第2のキャビティ846の対向する壁との間で第1のチャンバー882を画成する。第1の通路848は、全時間で第1のチャンバー882と流体連通している。第2のチャンバー884が、第2の端部面870と、第2のキャビティ846の反対側の壁との間に画成されている。チャンバー884は、全時間で負荷ポート862aと流体連通している。加えて、2つの体積部分886及び888は、全時間でタンクポート860と連通している。この態様では、摺動バルブ840の液圧係止が防止される。
【0017】
摺動バルブ840の第1の端部面868の面積は、摺動バルブ840の第2の端部面870の面積よりも大きい。このため、第1のチャンバー882及び第2のチャンバー884内の圧力が等しくなったとき、摺動バルブ840上に作用する正味の力は、平衡を破り、(図2及び図3に示されるように)摺動バルブ840を左方へと押しやる。
【0018】
パイロットバルブ836内の入口ポート856は、特にパイロット作動型摺動バルブ840の、供給ポート858及び負荷ポート862aに比べて、比較的小さい。作動中には、パイロットバルブ836のビーム866は、入口ポート856を覆わず、流体が、入口ポート856、第1のキャビティ844、オリフィス854及び第2の通路850を通って出口ポート852へと流れる。入口ポート856は、この流れ経路で追加のオリフィスとして作用することができる。オリフィス状の入口ポート856を通る圧力降下に起因して、第1のキャビティ844内(及びこれにより第1のチャンバー882内)の圧力を、ポンプ800eの出口における圧力まで上げることは可能ではなくなる。第2のチャンバー884内の圧力は、摺動バルブ840の、供給ポート858及び負荷ポート862のより大きい開口、並びに、その結果として流体がこれらのポートを通って流れるときの低圧効果に起因して、第1のチャンバー882内で達成することができる圧力よりも、より高い圧力(ポンプ出口圧力付近)を達成することができる。しかし、第1の端部面868の表面積が、第2の端部面870の表面積より大きいので、第1の端部面868上に作用する、第1のチャンバー882内の圧力が、第2のチャンバー884内の圧力より小さくなったとしても、摺動バルブ840は、(図2及び図3に示されるように)なおも左方に移動することができる。
【0019】
より詳しくは、入口ポート856は、パイロットバルブ836と共に、一種の可変オリフィスを形成しており、その流れ面積は、パイロットバルブ836のビーム866の位置と共に変化する。オリフィス854は、パイロットバルブ836により形成された「可変オリフィス」と協働して、圧力分割回路(pressure divider circuit)を形成する。圧力分割回路は、次式に従って摺動バルブ840の制御面(第1の端部面866)に印加された圧力を制御する。
【0020】
【数2】

【0021】
ここで、P1は、上記圧力分割回路への供給圧力(ポンプ800eから入口ポート856に供給された圧力)である。
2は、第1のキャビティ844内の流体圧力であり、かくして、第1のキャビティ844と第1のチャンバー882との間の流体通路848の故に摺動バルブ840の制御面(第1の端部面868)に差し向けられた制御圧力となる。
【0022】
1は、圧力分割回路の上流側のオリフィス、即ちパイロットバルブ836及び入口ポート856により形成された可変オリフィスの開口面積(流れ面積)である。
2は、圧力分割回路の下流オリフィスの開口面積(流れ面積)、即ちオリフィス854の流れ面積である。
【0023】
好ましくは、第2の端部面870の面積に対する第1の端部面868の面積の比率が、チャンバー884内の(第2の端部面870に対して作用する)圧力がP1にほとんど等しい圧力にまで上昇させることができるようであるのがよい。
【0024】
摺動バルブ840は、作動の3つの主要なゾーン又は位置を有する。即ち、圧力増大位置、圧力維持位置、オリフィス、圧力減少位置である。図2及び図3に示されているように、摺動バルブ840は、圧力維持位置、即ち、負荷に関して加圧流体を保持する位置にある。摺動バルブ840が(図2及び図3に示されたように)右方に移動する場合、摺動バルブ840は圧力減少位置にある。これは、ECU804が、アクチュエータ867に供給された電流を増大させることによりパイロットバルブ836を閉じるように指令するとき達成される。アクチュエータ867のリブは拡張し、ビーム866を枢動させ(屈曲ビーム866aを曲げ)、入口ポート856のより多くの部分を覆わせる。流れは、入口ポート856から出口ポート852までの第2の通路850内で減少する。オリフィス854に亘る圧力降下は減少する。第1のキャビティ844、第1の通路848及び第1のチャンバー882内の圧力も減少する。このことは、摺動バルブ840上に作用する力の不均衡を生じさせる。第1の端部面868上に作用する、(第1のチャンバー882内で低下した圧力に起因して)減少した力は、(負荷部に接続された)チャンバー884内の圧力に起因して第2の端部面870上に変わらずに作用する力よりも小さくなる。力は、摺動バルブ840を(図2及び図3に示されたように)右方に押しやる。かくして、薄板部876は、右方に移動され、負荷部からの加圧流体の流れが、負荷ポート862bを通り、摺動バルブ840内の第2の開口874を通ることを可能にする。そこから、流れのうちのあるものは、タンクポート860から直接流れ出るが、流れの中には、薄板部876の頂部の上方のトラフ部865内に上昇し、第1の開口872を通って下降し、タンクポート860から出るものもある。この態様では、圧力は、負荷部から解放され、タンクポート860に接続された低圧リザーバーに排出される。摺動バルブ840上に作用する力が(図2及び図3に示されるように)摺動バルブ840を左方に移動させるのに十分であるようにチャンバー884内の(負荷ポート862aを通って作用する)圧力が減少するとき、摺動バルブ840は、圧力保持位置に戻るように移動する。力が等しくなる場合、摺動バルブ840は、圧力保持位置で停止する。かくして、(負荷ポート862aを通して検出されたときの)負荷部における圧力は、アクチュエータ867に供給された電気信号(電流)に比例(図示の実施形態では、逆比例)する。
【0025】
ECU804がアクチュエータ867のリブを通って流れる電流を減少させるとき、パイロットバルブ836のビーム866は、入口ポート856のより多くの部分を露出させるように枢動する。これは、第1のキャビティ844及び第1のチャンバー882内の圧力増加を生じさせるが、第2のチャンバー884内の圧力は一定値のままである。摺動バルブ840は、該摺動バルブ840上に作用する力の結果として生じた不均衡に起因して(図2及び図3に示されるように)左方に移動される。摺動バルブ840が圧力減少位置にあった場合、この左方への移動は、摺動バルブを図2及び図3に示された圧力維持位置に戻るように移動させる。ECU804が電流を更に減少させ、パイロットバルブ836を更に開放させる場合、第1のチャンバー884内の圧力は更に増大し、摺動バルブ840を、圧力増大位置へと、(図2及び図3に示されるように)左方に押しやる。薄板部870は、左方に移動され、供給ポート858から摺動バルブ840内の開口878を通る加圧流体の流れを可能にしている。そこから、流れのうちのあるものは、負荷ポート862aから直接流れ出るが、流れの中には、薄板部870の頂部の上方のトラフ部864内に上昇し、第2のチャンバー884を通って、負荷ポート862aから出るものもある。この態様では、圧力は、供給ポート858に接続された高圧流体源から差し向けられ、負荷ポート862aに接続された負荷部(例えば、電子制御式自動トランスミッション800の液圧作動型部品)に印加される
本発明のマイクロバルブ装置825は、適切なゼロ電流/最大電流信号を(各々)アクチュエータ867に提供することによって、全開/全閉態様で作動させることができることが理解されよう。パイロットバルブ836を、アクチュエータ867が屈曲ビーム866aにより提供された枢動接続部と、入口ポート856を覆ったり露出させたりするビーム866の端部との間でビーム866に作用するように構成することができることが更に理解されよう。そのような実施形態では、アクチュエータ867への最大電流は、電子制御式自動トランスミッション800の連係された液圧作動型構成部品に供給される圧力の増大を生じさせる一方で、アクチュエータ867に対するゼロ電流は、連係された液圧作動型構成部品に供給される圧力の減少を生じさせる。
【0026】
マイクロバルブ装置825が、電子制御式パイロットバルブ836及びパイロット作動型摺動バルブ840の両方を含むものとして説明されたが、パイロットバルブが本文中で示されたものとは異なる形態を持ち得ること、パイロット作動型バルブが本文中で示されたものとは異なる形態を持ち得ること、或いは、実際には、マイクロバルブ装置825が、ポンプ800eから電子制御式自動トランスミッション800の液圧作動型構成部品への加圧流体の流れを直接制御する電子制御式マイクロバルブを代わりに備え付けることができることが予想される。加えて、図示されていないが、様々な他のマイクロ機械加工された電子構成部品を、マイクロバルブ装置825のボディ842内に製造することができるということも予想される。これらの構成部品の例は、トランスミッション制御ユニット806又はECU804の全体と、電子制御式自動トランスミッション800の他の液圧作動型構成部品を作動させるための追加の機械加工バルブと、圧力センサー、位置センサー、温度センサー及び加速度計を始めとする広範囲に亘る様々なセンサーと、を含むことができる。
【0027】
例えば、図4は、マイクロバルブ装置のボディ842の外側に固定された圧力センサー890を示している。圧力センサー890は、マイクロ電気機械式システム(MEMS)装置である。圧力センサー890は、負荷ポート862aの反対側のトラフ部864の領域にボディ842に連結された金属歪ゲージ890aを備えている。歪ゲージ890a及び圧力センサーの他の部分を、金属メッキ又は金属蒸着を始めとする任意の適切な手段によりボディに付着させることができる。ボディ842は、この領域では比較的薄い壁を有し、この壁は、第2のチャンバー884内の圧力が増減するとき、微細に膨張したり収縮したりする。該ボディのこの運動は、歪ゲージ890aの内部抵抗の変動を引き起こす。これらの変動は、歪ゲージ890aから、制御システムのワイヤを装着することができるパッド890cへと延在する、複数のインストルメントリード線90bを通して監視することができる。この態様では、圧力センサー890は、負荷ポート862aにおける圧力を表す信号を発生することができる。
【0028】
図5を参照すると、複数のマイクロバルブ装置825が、複数の液圧作動型構成部品800dを制御するため概略的に示されている。図示のように、マイクロバルブ装置の各々は、ポンプ800eから加圧流体が供給される。マイクロバルブ装置825は、ECU804により電子的に制御される。圧力センサー890は、ECU804に圧力信号を提供するためマイクロバルブ装置867dの各々に設けられるのが好ましい。マイクロバルブ装置825の各々及びECU804は、例えば電子印刷回路基板であるとすることができる共通の基板892上に取り付けられている。
【0029】
特許法の条項に従って、本発明の原理及び作動モードが、その好ましい実施形態で説明され、示された。しかし、本発明は、その精神又は範囲から逸脱することなく、特有に説明され示されたものとは異なる仕方で実施することができるということが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明のマイクロバルブを適切に使用することができる、電子制御式自動トランスミッションの概略図である。
【図2】図2は、図1の自動トランスミッションで使用するのに適した、本発明に係るマイクロバルブ装置の実施形態の上面図であり、マイクロバルブ装置の可動構成部品を示すため部分的に破断されている。
【図3】図3は、ライン3−3に沿って取られた、図2のマイクロバルブ装置の概略図である。
【図4】図4は、マイクロバルブ装置のボディの外側に固定された圧力センサーを示す図である。
【図5】図5は、複数の液圧作動型構成部品を制御するために複数のマイクロバルブ装置を配置した状態を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロバルブ装置において、
流体通路の流体圧力を制御するためのパイロットバルブとして作用する第1のマイクロバルブと、
前記流体通路内の流体圧力により位置決め可能なパイロット作動型バルブである第2のマイクロバルブとを備え、
前記パイロットバルブの作動により前記パイロット作動型バルブの位置が制御される、マイクロバルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロバルブ装置において、
加圧流体源に接続される入口と、出口と、前記加圧流体源及び流体通路に接続されるパイロットバルブ入口とを画成するバルブボディを更に備え、
前記パイロット作動型バルブが、前記入口と前記出口の間で前記バルブボディ内に配置され、前記流体通路と流体的に連通する制御面を有し、かつ前記流体通路内の流体圧力により前記入口と前記出口の間の流体流れを制御するように位置決めされ、
前記パイロットバルブが、前記パイロットバルブ入口と前記流体通路の間で前記バルブボディに配置され、前記流体通路内の圧力を制御するように作動可能であり、それにより、前記パイロット作動型バルブの位置を制御する、マイクロバルブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロバルブ装置において、
前記パイロットバルブは、加圧流体が前記パイロットバルブ入口から前記流体通路まで流れるのを防止する第1の位置と、加圧流体が前記パイロットバルブ入口から前記流体通路まで流れるのを許容して前記流体通路内の圧力を増加させる第2の位置との間で位置決め可能である、マイクロバルブ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
前記バルブボディの出口にて、圧力を表す信号を発生させる圧力検出器を更に備える、マイクロバルブ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロバルブ装置において、
前記圧力検出器が前記バルブボディの外面に接着されたMEMSストレインゲージである、マイクロバルブ装置。
【請求項6】
請求項2ないし5の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
前記流体通路内に圧力分割回路を備える、マイクロバルブ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のマイクロバルブ装置において、
前記圧力分割回路は、次式に従って前記制御面に印加される圧力を制御する、マイクロバルブ装置。
【数1】

ここで、
1=前記圧力分割回路への供給圧力、
2=前記制御面に差し向けられた制御圧力、
1=前記圧力分割回路の上流側のオリフィスの開口面積、
2=前記圧力分割回路の下流オリフィスの開口面積である。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
電子制御される自動トランスミッションであって、
入力シャフトと、
出力シャフトと、
前記入力シャフトと前記出力シャフトとの間を駆動接続する、複数のギアと、
前記入力シャフトと前記出力シャフトとの間で前記ギアにより提供されるギア減速比に変化をもたらすように作動可能である、液圧作動式構成要素と、
前記バルブボディの入口と前記パイロットバルブ入口に流体的に連通するように接続された加圧液圧流体の源として作用するポンプと、を備えた前記自動トランスミッションを備え、
前記パイロット作動式バルブが、前記ポンプから前記バルブボディの入口及び前記バルブボディの出口を介して液圧作動式ブレーキバンド及び液圧作動式クラッチのうちの一つまで流れる加圧液圧流体の通過を制御して、前記液圧作動式ブレーキバンド及び前記液圧作動式クラッチのうちの一つを作動させる、マイクロバルブ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロバルブ装置において、
前記液圧作動式構成要素が液圧作動式ブレーキバンド及び液圧作動式クラッチのうちの一つである、マイクロバルブ装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のマイクロバルブ装置において、
前記バルブボディは、自動トランスミッションの低圧リザーバーに接続されるようになったパイロットバルブ出口ポートと、前記パイロットバルブ入口及び該パイロットバルブ出口ポートの間の前記流体通路内のオリフィスと、前記流体通路及び前記パイロット作動型バルブの前記制御面の間で流体連通を提供すると共に該流体通路に接続された第2の流体通路と、を更に画成する、マイクロバルブ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のマイクロバルブ装置において、
前記オリフィスは、前記パイロットバルブと、前記パイロットバルブ出口ポートとの間で前記流体通路内に配置されている、マイクロバルブ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のマイクロバルブ装置において、
前記第2の流体通路は、前記パイロットバルブと前記オリフィスとの間で前記流体通路に接続される、請求項6に記載のマイクロバルブ装置。
【請求項13】
請求項12に記載のマイクロバルブ装置において、
前記パイロット作動型バルブは細長いボディを有し、該ボディは、該パイロット作動型バルブが略T字形であるように該ボディの第1の端部で垂直に延在する一対の対向して配置されたアームを備え、前記制御面は該ボディの該記第1の端部における該ボディの軸端部面である、マイクロバルブ装置。
【請求項14】
請求項8ないし13の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
第2の液圧作動型構成部品を更に含み、前記第2の液圧作動型構成部品は、該第2の液圧作動型構成部品の作動を制御するための第2のマイクロバルブ装置と流体連通しており、該第2のマイクロバルブ装置及び前記マイクロバルブ装置は、共通の基板上に取り付けられている、マイクロバルブ装置。
【請求項15】
請求項14に記載のマイクロバルブ装置において、
前記マイクロバルブ装置及び前記第2のマイクロバルブ装置の作動を制御するための電子制御ユニットを更に含み、該電子制御ユニットは、前記共通の基板上に取り付けられている、マイクロバルブ装置。
【請求項16】
請求項1ないし7の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
前記パイロットバルブの位置を制御するための電気信号を発生する電子制御ユニットを更に含む、マイクロバルブ装置。
【請求項17】
請求項16に記載のマイクロバルブ装置において、
前記電気信号が、前記マイクロバルブ装置の閉鎖ループ制御のために前記電子制御ユニットに提供される、マイクロバルブ装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のマイクロバルブ装置において、
前記電子制御ユニット及び前記バルブボディが共通の基板上に取り付けられている、マイクロバルブ装置。
【請求項19】
請求項2ないし18の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
前記バルブボディがキャビティを形成し、前記キャビティ内に、前記パイロット作動型バルブが配置され、前記バルブボディは前記バルブボディの出口とは反対側の前記キャビティの表面にトラフを形成し、前記トラフが前記パイロット作動型バルブに作用する平衡力を助けるように作動する、マイクロバルブ装置。
【請求項20】
請求項2ないし19の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
前記バルブボディが低圧リザーバー又は流体戻り部に接続されたタンクポートを形成し、前記パイロット作動型バルブが、前記バルブボディの入口及び出口の間で及び前記前記バルブボディの出口及び前記タンクポートの間で、前記流体通路内の圧力に従って流体の流れを制御するべく位置決めされた、マイクロバルブ装置。
【請求項21】
請求項20に記載のマイクロバルブ装置において、
前記パイロット作動型バルブが、前記出口での圧力を増大させる第1の位置と、前記出口での圧力を一定に保つ第2の位置と、前記出口での圧力を低減させる第3の位置に位置決めされ得る、マイクロバルブ装置。
【請求項22】
請求項2ないし21の何れか一項に記載のマイクロバルブ装置において、
前記パイロット作動型バルブが細長いビームを備えている、マイクロバルブ装置。
【請求項23】
請求項22に記載のマイクロバルブ装置において、
前記バルブボディに配置されたアクチュエータを更に備え、前記アクチュエータが複数のリブを有し、前記リブは、前記リブと係合する中央の背部により前記パイロットバルブに接続されている、マイクロバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−71398(P2007−71398A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306190(P2006−306190)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【分割の表示】特願2002−504412(P2002−504412)の分割
【原出願日】平成13年6月20日(2001.6.20)
【出願人】(599176311)ケルシー ヘイズ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】