説明

マイクロプレートの把持機構

【課題】回転モータ及びねじ送り機構を用いることなくマイクロプレートを把持する。
【解決手段】一対の把持アーム30a、30bにより、マイクロプレートMの両側面を挟むようにされたマイクロプレートの把持機構において、前記把持アーム30a、30bを開閉方向に摺動ガイドするスライド機構40と、前記把持アーム30a、30bを閉方向に付勢する付勢手段(引張りばね50)と、該付勢手段(50)に抗して、前記把持アーム30a、30bを開くための回転リンク52と、該回転リンク52を駆動するための回転ソレノイド60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清等を分析するために用いられるマイクロプレートの把持機構に係り、特に、分注等が自動化された機器に用いるのに好適な、一対の把持アームにより、マイクロプレートの両側面を挟むようにされたマイクロプレートの把持機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
分注等が自動化された機器においては、血清等を分析するために用いられるマイクロプレートを把持して移送する必要がある。
【0003】
このため、特許文献1には、図1に示す如く、マイクロプレートMの両側面を挟む一対の挟持アーム8、9を、ねじ軸19を正転又は逆転する回転モータ18を搭載した一方の保持板10と、前記ねじ軸19と螺合する雌ねじ部21を有する支持片20を設けた他方の保持板11によって開閉するようにされたマイクロプレート移送機構が記載されている。図において、1、2はレール、3はガイドバー、7は基板、8a、9aは、前記挟持アーム8、9の先端部内面に取着されたゴム、12は、前記基板7に設けられた支軸、13は、同じく前記基板7に設けられたばね掛け突起、14、15は、前記保持板10、11に、それぞれ設けられたばね掛け片、16、17は、前記支軸12に中央部を掛け、一方側の端部を前記ばね掛け突起13に掛止すると共に、他方側の端部を前記ばね掛け片14、15に、それぞれ掛けた、前記一対の挟持アーム8、9を常時内向きに回動するよう付勢する針金状のばね、22、23は、前記一対の挟持アーム8、9の回動角度を規制するためのリミットスイッチである。
【0004】
【特許文献1】特開平9−89904号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転モータ18とねじ軸19の送り機構(ねじ送り機構とも称する)により挟持アーム8、9を開閉する方法では、(1)その動作を制限するためにリミットスイッチ22、23等が必要となり、構成が複雑で高価である、(2)回転モータ18を正転又は逆転させて開閉するので動作が遅い、(3)何らかの理由で電源が突然遮断された場合に、挟持アーム8、9を自動的に閉じることができず、マイクロプレートMを落下してしまう恐れがある、等の問題点を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、簡単な構成で、動作が早く、しかも、電源が遮断した場合にマイクロプレートを確実に把持可能なマイクロプレートの把持機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対の把持アームにより、マイクロプレートの両側面を挟むようにされたマイクロプレートの把持機構において、前記把持アームを開閉方向に摺動ガイドするスライド機構と、前記把持アームを閉方向に付勢する付勢手段と、該付勢手段に抗して、前記把持アームを開くための回転リンクと、該回転リンクを駆動するための回転ソレノイドとを備えることにより、前記課題を解決したものである。
【0008】
又、前記把持アームの先端に、回動自在な把持具を設けたものである。
【0009】
又、前記把持具の下端を、内側に曲げたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、把持アームを回転ソレノイドで開閉するので、動作が速い。又、ねじ送り機構や、動作を制限するためのリミットスイッチ等が不要であるため、構成が簡略で、安価に構成できる。更に、回転ソレノイドの電源が切れた場合には、付勢手段により把持アームが閉方向に付勢されるので、マイクロプレートを確実に把持できる。
【0011】
特に、前記把持アームの先端に、回動自在な把持具を設けた場合には、把持アームの撓みに合わせて把持具が回動するので、把持アームの撓みの影響を受けることなく、マイクロプレートを安定して保持できる。
【0012】
更に、前記把持具の下端を内側に曲げた場合には、質量の大きなマイクロプレートでもずれることなく、安定して搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の第1実施形態は、図2に示す如く、一対の把持アーム30a、30bによりマイクロプレートMの両側面を挟むようにされたマイクロプレートの把持機構において、前記把持アーム30a、30bを開閉方向である水平方向に摺動ガイドするスライド機構40と、前記把持アーム30a、30bを閉方向に付勢する付勢手段である引張りばね50と、該引張りばね50に抗して、前記把持アーム30a、30bを開くための回転リンク52と、該回転リンク52を駆動するための回転ソレノイド60とを備えたものである。
【0015】
図において、38は、スライド機構40及び回転ソレノイド60のベースである。
【0016】
前記把持アーム30a、30bの先端には、図3及び図4に詳細に示す如く、例えば板金製の把持具32a、32bが、ピン34a、34bにより回動自在に保持されている。又、前記把持具32a、32bの下端は、内側に曲げられている。マイクロプレートMの下端は、図5に示す如く、この曲げ位置Cで把持できるよう、上下方向動作により位置決めされる。
【0017】
前記スライド機構40は、図6に詳細に示す如く、前記把持アーム30a、30bの基部が結合される略L字状のアーム保持部材42a、42bと、該アーム保持部材42a、42bを水平方向に摺動ガイドするベース38(図2)に固定されたスライドガイド44と、前記アーム保持部材42a、42bに固定された先端が略U字状の回転リンク係合部46a、46bとを備えている。
【0018】
前記回転リンク52は、図7に詳細に示す如く、前記スライド機構40の回転リンク係合部46a、46bと係合するスライド部材係合用コロ54a、54bを備えており、これらは、図8に示す如く、前記回転ソレノイド60により回動される。
【0019】
以上の構成において、ある特定位置に置かれたマイクロプレートMを本把持機構が把持するときは、図7に示す如く、回転ソレノイド60を動作させ、コロ54a、54b、回転リンク係合部46a、46b及びアーム保持部材42a、42bを介して把持アーム30a、30bを開いて、所定の把持位置へ移動後、回転ソレノイド60をオフにすると、引張りばね50の引張力で、把持アーム30a、30bが平行移動可能に結合されたスライドガイド44及びアーム保持部材42a、42bにより閉じられ、ピン34a、34bで回動可能に結合された把持具32a、32bにより、マイクロプレートMが把持される。
【0020】
この際、十分な把持力を得るために引張りばね50の引張力を強めに設定してあると、特に軽量性やコンパクト性を優先して把持アーム30a、30bの強度が十分でないと、これらが、引張りばね50の引張力で微少に撓んでしまうことは避けられないが、把持具32a、32bが把持アーム30a、30bにピン34a、34bで回動可能に結合されているため、この撓みに影響されず、安定した把持が可能となる。
【0021】
又、把持具32a、32bの下端が内側に曲げられているので、例えディープウェルと呼ばれる、検査液体層が深く、より多くの検査液体が入るため質量が大きなマイクロプレートを把持しても、ずれることなく、安定した搬送ができる。
【0022】
本把持機構は、マイクロプレートMを把持したまま、他の処理ユニット等へ移動し、所定位置へ移動後、回転ソレノイド60を動作させ、上記と逆の動作で把持アーム30a、30bを引張りばね50に抗して開いて、マイクロプレートMを開放する。
【0023】
なお、動作途中で電源が遮断され、回転ソレノイド60がオフとなった場合は、引張りばね50の作用で把持アーム30a、30bが自動的に閉じられるので、マイクロプレートMを落下することが無く、安全である。
【0024】
なお、前記把持具32a、32bの構成は、前記第1実施形態に限定されず、図9に示す第2実施形態の如く、下端を内側に曲げる代わりに、例えばゴム36aを把持具32aの表面に取着しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】特許文献1に記載された従来のマイクロプレート移送機構を示す平面図
【図2】本発明の第1実施形態の構成を示す斜視図
【図3】同じく把持アーム先端の把持具を示す斜視図
【図4】同じく把持具中央の断面を示す斜視図
【図5】同じく把持具でマイクロプレートを保持した状態を示す正面図
【図6】同じくスライド機構の詳細を示す斜視図
【図7】同じく回転リンクとスライド機構の係合状態を示す正面図
【図8】同じく回転ソレノイドに取付けられた回転リンクを示す斜視図
【図9】本発明の第2実施態の把持具を示す斜視図
【符号の説明】
【0026】
M…マイクロプレート
30a、30b…把持アーム
32a、32b…把持具
34a、34b…ピン
40…スライド機構
42a、42b…アーム保持部材
44…スライドガイド
46a、46b…回転リンク係合部
50…引張りばね
52…回転リンク
54a、54b…スライド部材係合用コロ
60…回転ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の把持アームにより、マイクロプレートの両側面を挟むようにされたマイクロプレートの把持機構において、
前記把持アームを開閉方向に摺動ガイドするスライド機構と、
前記把持アームを閉方向に付勢する付勢手段と、
該付勢手段に抗して、前記把持アームを開くための回転リンクと、
該回転リンクを駆動するための回転ソレノイドと、
を備えたことを特徴とするマイクロプレートの把持機構。
【請求項2】
前記把持アームの先端に、回動自在な把持具が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロプレートの把持機構。
【請求項3】
前記把持具の下端が、内側に曲げられていることを特徴とする、請求項2に記載のマイクロプレートの把持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−46957(P2007−46957A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229911(P2005−229911)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】