説明

マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)デバイスのための音響(acoustic)エアチャネルを有するリードフレームベースのプリモールドされたパッケージ

マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)デバイス(100)が、キャリア面(111)上に中央に開口するキャビティを画定する窪み(117)を有する。前記キャリア面の周囲に導電性リード(112)が組み込まれる。集積回路チップ(101)を含むインセット(120)が、前記窪みの上部(114、116)内に適合され、前記キャビティの覆いとなる。電気的接続(130)が、前記導電性リードを前記チップ上の端子と接続する。前記集積回路チップ及び電気的接続を囲む前記キャリア面にカバー(140)が取り付けられる。周囲環境から前記キャビティを介してチップ内の可動フォイル(105)まで、前記カバー内の孔(141)、前記インセット内の第1及び第2の開口(121、122)、及び集積回路チップ内の開口(104)を含む経路を通して、エアチャネルが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全般的に半導体デバイス及び半導体デバイス製造に関し、更に具体的には、パッケージングされたマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)デバイス及びその製造に関連する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)デバイスは、マイクロメートル規模の小型で軽量なデバイスであり、トランスデューサ及びアクチュエータを含む、機械的に可動する部品を有し得、熱的、音響的、又は光学的エネルギーの影響を受けやすい部品を有し得る。これらの可動し、かつ影響を受けやすい部品のため、MEMSデバイスは、物理的及び雰囲気的保護を必要とする。従って、MEMSデバイスは、基板上に配置され、周囲環境及び電気的障害から、及び応力からMEMSデバイスを遮蔽する筐体又はパッケージによって囲まれるのが典型的である。
【0003】
MEMSデバイスは、機械的要素、センサ、アクチュエータ、及び電子部品を、共通の基板上で統合する。MEMSデバイス製造は、他のマイクロエレクトロニクス・デバイスに用いられるものに類似するバッチ製造手法を用いることを意図している。そのため、MEMSデバイスは、良好に制御された集積回路技術を活用することを試みる一方で、製造コストを低減するために大量生産及び最小限に抑えた材料消費による利点を得ることができる。
【0004】
MEMSデバイスは、マイクロフォン薄膜などの圧力センサのような機械的センサ、及び加速度計などの慣性センサといった形を採り得、これらはいずれもチップの集積電子回路と結合され得る。機械的センサは、圧力、力、トルク、流れ変位、速度、加速度、レベル、位置、傾き、及び音響波長及び振幅に反応し、これらを測定する。一般的な要件の中でも圧力センサ用のものは、長期間安定性、小さな温度感度、低い圧力及び温度ヒステリシス、耐腐食性環境、及び、多くの場合、気密性がある。バルク半導体結晶内に可動性要素とそれらが動くためのキャビティをつくるためにMEMSセンサ製造に用いられる2つの特定のバルク・マイクロマシン・プロセスは、異方性ウェット・エッチングと深堀り反応性イオン・エッチング(DRIE)である。
【0005】
半導体MEMS圧力センサ及びマイクロフォンは、水平及び垂直接続のためパターニングされた多レベルのメタライゼーションを含む絶縁基板上に組み立てられる。一例として、基板は4個のメタライゼーション・レベルを有し得る。この組み立ては、接着性チップ取り付けと端子への金属ワイヤ・ボンディングを含むのが典型的である。多くの製品において、これらの端子は、コンパクトなSON(Small Outline No-Lead)又はQFN(Quad Flat No-Lead)タイプの半導体デバイスに類似して配置される。これは、これらがチップ・サイズ・パッケージのコンパクトな外形を示すためである。基板は、MEMSデバイスによって監視されるべき周囲圧力及び音響信号に薄膜を曝すために必要とされるエアチャネルも含む。保護及び頑強性の目的で、チップと、配線と、及び基板の一部とは、金属CANにパッケージングされるか、プラスチック封止にモールドされる。一例として、携帯電話用の4個の端子を備えたMEMS直方体アナログ出力マイクロフォンの寸法は、約4.8mm×3.8mm×1.25mm、又は2mm×2mm×1.25mm程度の小ささであり得る(その結果4mmのフットプリントとなる)。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、内部キャビティを備えたMEMSデバイスの急速な普及とそれらの幅広い多様化が、現在よりも低い製造コストに強く依存していることを認識している。一例として、低い製造コスト及び小さな寸法は、圧力センサ、マイクロフォン、加速度計、及び外部アナログ入力を電気的出力に変換するために可動部材が必要とされるその他の応用例を、自動車、医療、及び航空宇宙産業における携帯型で民生用の電子デバイスの応用例に組み込むために重要な要件である。
【0007】
本発明は、パターニングされた多レベル・メタライゼーションを備えた基板上にMEMSデバイスを構築することは、高コストなアプローチであるだけでなく、MEMS構成要素に用いることのできる材料及び構成の選択肢も制限することを認識している。また、多金属レベル基板製造が複雑であるために、これらのMEMSデバイスの、急速に変化する顧客の要求事項や市場機会に対する柔軟性が損なわれている。
【0008】
圧力及び音声感知マイクロフォン及びスピーカーに適した薄膜を備えた低コストMEMSデバイスの大量生産における課題は、薄膜を備えたチップをプレモールドされたリードフレームを含むキャリア上に組み立てることによって解決された。リードフレームのリードを組み込むモールディング・プロセスは、二層の段状の窪みも形成する。第1の層上に置かれた(プラスチック、銅、シリコン、又はその他の適切な材料で作られる)インセット(inset)が、二層間の段に取り付けられ、第2の層を内部エアチャネルの機能に限定する。薄膜を備えたチップを組み立てるための領域を提供するこのインセットは、エアチャネルを外部環境につなぐための穴と、エアチャネルを薄膜につなぐための別の穴とを有する。インセットの寸法及び外形、及び穴の数及び位置はカスタマイズすることができるため、このようなインセットは、MEMSデバイス製造に低コストな設計多様性を付加する。また、インセットは、チップの単結晶シリコンと同じ熱膨張係数(CTE)を有する、廉価なアモルファス・シリコンで作ることができるため、パッケージ材料間のCTEミスマッチを最小化する取り組みを支援する。このアッセンブリ・プロセスは、レーザーを用いないため、コスト削減の支援となる。
【0009】
本発明は更に、QFN/SONタイプのリードフレームにより、パッケージ・オン・­パッケージMEMSデバイスなどの他の構成要素との、より大きなシステムレベル統合が可能となり、それにより、電気的製品効率が高まることを認識している。
【0010】
本発明の実装は、圧力センサ、マイクロフォン、加速度計、中継器、サーモパイルを構築するため、及び外部入力を電気的出力に変換するために可動部材が必要とされるその他の応用例に用いるために、薄膜又はビームを偏向させるための空気圧、静電気力、重力、ガス組成などの利用を含む。
【0011】
可動薄膜により生じる容量性変化で動作する、圧力センサ・ファミリーの例示のMEMSデバイスは、蓋を備えたプレモールドされたリードフレーム上に薄膜を備えたチップが組み立てられる場合、多レベル基板を備えて従来の方式で製造される場合に比べ、20%から30%低い製造コストを提供し得る。
【0012】
例示の一実施例に従って、或る高さ及び面を有するキャリアであって、周囲に複数の金属リードを組み込んでいるキャリアと、前記周囲から離れており、第1の層及び第2の層を有する、前記キャリア内の段状の窪みと、前記段に取り付けられ、第1の穴及び第2の穴を有するインセットと、前記インセットに取り付けられる集積回路チップであって、フォイルによって覆われる、前記集積回路チップを通して延びる開口を有し、前記開口が前記インセットの第1の穴と通信している、集積回路チップと、前記集積回路チップを囲む前記キャリアの前記面に取り付けられ、前記インセットの第2の穴と通信する孔(vent)を有するカバーとを含むMEMSデバイスが提供される。
【0013】
別の例示の実施例に従って、或る高さ及び面を有するキャリアであって、周囲に複数の金属リードを組み込んでいるキャリアと、前記周囲から離れており、前記面から前記キャリアの高さより小さい深さまで延びる、前記キャリア内の段状の窪みと、前記段に取り付けられ、第1の穴及び第2の穴を有するインセットとを含むMEMSデバイスが提供される。
【0014】
別の例示の実施例に従って、MEMSデバイスを製造するための方法が提供され、この方法は、中央のオープンスペースを囲む複数のリードを有するリードフレームを提供する工程であって、前記リードが或る高さを有する金属シートで作られる工程と、前記オープンスペースを重合体化合物で充填する工程であって、それにより前記リードを組み込み、前記高さ及び或る面を有するキャリアを形成する工程と、前記充填されたオープンスペースの前記重合体化合物に窪みを形成する工程と、前記窪み内に第1の穴及び第2の穴を有するインセットを取り付ける工程と、集積回路チップを通して延びる開口を有する前記集積回路チップを、前記開口が前記第1の穴と通信するようにインセット上に取り付ける工程であって、前記開口が前記集積回路側でフォイルによって覆われ、反対側ではふさがれていない工程と、前記集積回路チップを囲む前記キャリアの前記面上にカバーを取り付ける工程とを含む。
【0015】
別の例示の実施例に従って、MEMSデバイスを製造するための方法が提供され、この方法は、中央のオープンスペースを囲む複数のリードを有するリードフレームを提供する工程であって、前記リードが或る高さを有する金属シートで作られる工程と、前記オープンスペースを重合体化合物で充填する工程であって、それにより前記リードを組み込み、前記高さ及び或る面を有するキャリアを形成する工程と、前記オープンスペースに窪みを形成する工程と、第1の穴及び第2の穴を有するインセットを取り付ける工程とを含む。
【0016】
例示の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の原理に従った、リードフレームベースのプレモールドされたパッケージ内に音響エアチャネルを備えたMEMSデバイスの破断概略図である。
【0018】
【図2A】図2Aは、本発明の原理に従った、複数のMEMSデバイスを製造するために用いられる例示のプレモールドされたリードフレーム片の一部の上面図である。
【0019】
【図2B】図2Bは、図2Aのリードフレーム片の線2B−2Bによる断面図である。
【0020】
【図2C】図2Cは、図2Aのリードフレーム片の線2C−2Cによる断面図である。
【0021】
【図3A】図3Aは、プレモールドされたリードフレーム及び音響エアチャネルを備えた、本発明の原理に従って製造された個片化されたMEMSデバイスの上面図である。
【0022】
【図3B】図3Bは、図3Aのデバイスの線3B−3Bによる断面図であり、モールディングされた出っ張り上にあるインセットの断面を表す。
【0023】
【図3C】図3Cは、図3Aのデバイスの線3C−3Cによる断面図であり、モールディングされた出っ張り上にあるインセットの別の断面を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、圧力センサ、マイクロフォン、スピーカー、加速度計、中継器、サーモパイル、及び外部入力を電気的出力に変換するために可動部材が必要とされるその他の構造を構築するために、薄膜又はビームを偏向させるための空気圧、静電気力、重力、ガス組成などの利用に基づいたMEMSデバイスのファミリーからの例示の実施例100を図示する。
【0025】
図1が示すように、集積回路チップ101が接着性フィルム102によってキャリア110上に取り付けられる。このキャリアは、金属性リード112を組み込む重合体の又は他の化合物111、及びインセット120を含む。本例のMEMSデバイスは、辺長が約2×2mmの正方形の外形を有する。他の実施例では、辺長がより大きく又はより小さくてもよく、又は矩形の外形を有していてもよい。図1が示すように、本体110の対向する2辺に3個のリードがあるが、他の実施例では、包含するリードはより多く又は少なくてもよく、これらのリードは、対称的に又は固まって配されてもよく、又はすべてのリードが本体外形に配置されていなくてもよい。
【0026】
キャリア110の部分111の材料は、エポキシベースの重合され、二酸化シリコン又は炭化珪素などの無機充填材で充填された、モールディング化合物であり得、又は任意の他の適切な可塑性化合物であってもよい。リード112は、銅、銅合金、アルミニウム、又はリードフレームの主成分として半導体業界において用いられる任意の他の金属又は合金であり得る。リード112の表面は、ワイヤ・ボンディング(銀又は金の薄層)又ははんだ付け(錫層、ニッケル及びパラジウム又は金の薄層)に適した治金学的表面構成を有し得る。重合体化合物111でつくられたキャリア部は高さ111aを有し、リード112は高さ112aを有する。図1において、開始リードフレーム、及び本体110を製造するために用いられる後続のモールディング・プロセス(以下参照)のため、高さ111aは高さ112aと同じである。従って、キャリア110の表面は、図1において110aで示す面である、リード及びプラスチック部と同じ平坦な面を有する。図1の例示の実施例において、リードの高さ112aは約0.35mmから約0.40mmの間であり、重合体化合物の高さ111aも約0.35mmから約0.40mmの間である。
【0027】
図1は、キャリア110の中心に向かって面110aから延びる段状の窪みが、重合体化合物111内に形成されることを更に示している。この窪みは、2つの層114及び115で構成される。図1の例示の実施例において、この2つの層は同じ深さを有するように示されているが、他の実施例ではこれらの深さは異なっていてもよい。図1の2つの層は、約0.12mmから約0.13mmの間の深さを有する。2つの層の和である総深さは、プラスチック・キャリア部の高さ111aより小さい。層114と層115の間は、第1の層114から第2の層115への遷移を形成するよう突き出る段116である。図1の例示の実施例では、この段は前記窪みの周囲を囲むように延びるが、他の実施例では複数の個別の段があってもよい。図1は、前記窪みがあるため、第2の層115の底部領域が、キャリア110の主要部を通るチャネル117の形をとるキャビティを画定することを示しており、このチャネル117が、MEMSデバイスのエアチャネルの一部である(詳細は下記参照)。
【0028】
図1が示すように、インセット120は、段116の上にあり、例えば、エポキシベースの及びポリイミドベースの配合物を含む、Bステージ・チップ取り付け化合物などの接着性フィルムによって段116に取り付けられ得る。インセットは、第1の層の窪み114を充填する寸法(面積及び外形)及び厚みを有し、そのため、第2の層115のカバー、及び半導体チップを取り付けるためのキャリアとして機能する。インセット120は、チップ101と同じ熱膨張係数(CTE)を提供するために多結晶シリコンでつくられてもよく、代替として、インセット120は、プラスチック、又は銅合金、アルミニウム、又はニッケル、又は他の適切な化合物などの金属でつくられてもよい。図1は更に、インセット120が、インセットの一端に近接する開口を画定する第1の穴121と、インセットの反対側の端に近接する開口を画定する第2の穴122とを有することを示している。両方の開口は、チャネル117によって形成されるキャビティに対して開口する。
【0029】
チップ101の集積回路は、図1においてチップ面101a上に配置される。面101aは、キャリア110のコンタクト又はリードへの接続130のためのチップ端子103も有する。面101aの反対側のチップ面は、少なくとも部分的に、接着性フィルム102によってインセット120に取り付けられる。このフィルムは、例えば、エポキシベース配合物などのBステージ・チップ取り付け化合物であり得、代替として、接着性フィルム102はポリイミド層であってもよい。図1に図示するように、チップ101は、チップの高さを介して延びる開口104を有する。開口104は、シリンダ、切頭円錐、又は任意の他の適切な三次元幾何学形状に形づくられ得る。回路側で、開口104は可動部品105によって覆われる。図1の実施例では、可動部品105は、開口104にわたって拡がり、開口の周縁に沿ってx方向及びy方向にチップ内に固定される。他の実施例において、可動部品は開口104の一部のみにわたって延びる。
【0030】
電気的接続130は、従来の半導体ボール・ボンディングにおいて用いられるような、約25μmのワイヤ直径を有する金配線であり得る。配線130は、チップ端子103をキャリア110内に組み込まれた金属リード112に接続する。
【0031】
可動部品105は、パラジウム又は金で作られる表面を備えた幾つかの実施例において、銅、ニッケル、又はアルミニウムなどの金属で作られ得る。多くの実施例で、可動部品105は、約0.04mm2から約0.25mm2の間の面積及び約5μmから約25μmの間の厚みを有する。この厚み範囲では、可動部品105は、z方向に可撓性のあるフォイルであり、面101aに垂直に、そのため、チップ開口104のスペース内で本体面110aにも垂直に、可動する薄膜として機能し得る。薄膜であるため、部品105は、薄膜を開口104の内側へ及び外側へ湾曲させる、開口104を介してz方向から来る外部圧力変化の影響を受けやすい。
【0032】
図1が示すように、カバー140がキャリアの面110aとインセット120の一部とに取り付けられる。カバー140は、アルミニウムのような金属で作られてもよく、又はモールディングされた部品などのプラスチックであってもよい。カバー140は、チップ101及び電気的接続130を封止するためCANのように形づくられ、カバー140の高さを通して延びる孔141を有する。孔141は、インセット120の第2の穴122と整合される。この整合により、孔141からチャネル117を介してチップ開口104の端部の可動部品105への連続した空間的接続が得られる。
【0033】
図2A、図2B、及び図2Cは、図1のMEMSデバイスを製造するために用いられる、プレモールドされた化合物に組み込まれたリードフレーム片を含む、全体を200で示すキャリアの一部の一例を図示する。図2Aは、モールディング化合物で囲まれた、本例の元の金属性リードフレーム片の一部の上面図を示す。本例のリードフレームは、QFNタイプ(Quad Flat No-Lead)及びSONタイプ(Small Outline No-Lead)デバイスのための従来の半導体技術において用いられるリードフレームに類似する。図2Aには、線2B−2B及び線2C−2Cが含まれる。図2Bは、線2B−2Bでの前記キャリアの切開図であり、図2Cは、線2C−2Cでの前記キャリアの切開図である。
【0034】
図2Aのリードフレーム片の部分のうち金属には陰影をつけている。多くのMEMSデバイス実施例では、リードフレーム片は銅又は銅合金のシート金属からつくられ、その他のMEMSデバイスでは、リードフレーム片はアルミニウム又はアルミニウム合金のリードフレーム片で作られ得る。ボンディング工程におけるワイヤ取り付けを容易にするため、一つのリードフレーム面は、銀又は金の薄い層のめっきされたスポットを有し得、アッセンブリ工程におけるはんだ取り付けを容易にするため、反対側のリードフレーム面(図2Aでは図示せず)は、錫のめっきされた層、又はニッケルの、及びパラジウム又は金などの貴金属の、めっきされた薄い層を有し得る。リードは、金属シートの厚みを反映する高さ(図2C参照)を有する。
【0035】
図2Aの例において、リードフレーム部は、レール又はタイバー201によって形づくられかつ接続された、約2mmの辺長の2個の矩形のユニットを含む。レールに取り付けられた各ユニットは複数のリード112を含み、図2Aの例では、向かい合ったレールに対称的に配置された3個のリードのセット2つにグルーピングされた、6個のリードがある。しかし、これらのユニットは、典型的なリードフレームにおいてレール(又は周囲)から離れて配置される、半導体チップを取り付けるための従来のパッドを含んでいない。その代わり、ユニットの中央部はオープンスペースのままである。本例では、リード112は、レールへの取り付け時に約0.25mmの幅202、約0.5mmの長さ203、及び約0.5mmの中心間ピッチ204を有する。
【0036】
図2Aのキャリア200の上面図は、キャリア200のモールディングされた部分内の窪みの第1の層と第2の層とを分ける段116の領域を示す。図2Aは、第1の層114の縁線と第2の層115の縁線を示す。第2の層の底部領域は、完成デバイスのチャネル117を形成する。
【0037】
線2B−2Bに沿った、図2Bのキャリア110の断面は、キャリアのプラスチック部111の高さ111aと、プラスチック部内の前記二層の窪みの外形を図示する。リードフレームは、モールディング・プロセスにより封止化合物内に組み込まれ得るため、プラスチック・キャリア部の高さ111aは、リードフレーム高さと同じである(図2Cも参照)。キャリアの面110aから第2の層によって形成されたチャネル117の底部まで延びる窪みの深さ216は、高さ111aより小さい。深さ216の第1の部分は前記第1の層114であり、第2の部分は前記第2の層115である。図2Bの実施例は、これらの層が全体の深さ216に対し均等量寄与することを示すが、他の実施例ではこれらは不均等な量寄与する。第1の層によって作られる窪み量は、インセット122(図3B及び図3C参照)によって充填される。第1の層114は、第2の層115より大きな幅(図2Bの実施例で約15%)を有するため、それらの間に段116が形成される。段116は、図1に示したようにインセット122の支持を提供する。
【0038】
図2Bの実施例に用いられるリードフレームにおいて、タイバー201は、上述のように、元のリードフレームの厚みに等しいキャリアの高さ111aよりも小さな高さを有するように示されている。この特徴により、リードフレーム片のトリミングや、アッセンブリ及びパッケージング・プロセスを完了した後リードフレーム片から個別のユニットを個片化するオペレーションが容易になる。この特徴は、タイバーに沿ってリードフレーム片の金属をハーフエッチングすることによってつくられる。
【0039】
線2C−2Cに沿った、図2Cのキャリア110の断面は、キャリアの金属性リード部112の高さ112aをプラスチック部111の高さ111aと共に図示する。上述したように、高さ112aは高さ111aと同じである。半導体チップ用の異なるアッセンブリ要求を有する他の実施例では、これらの高さが異なる場合もある。図2Cの断面に示した窪みは、図2Bの断面に示した窪みより広い段116の領域に特徴があり、段116の幅が不均一であることを示す。他の実施例では段116の幅は均一であってもよい。また、図2Cの断面は、第1及び第2の層及びチャネル117のジオメトリが、窪み、層、及びチャネルの延びた形状を示す図2Bの断面に示した2つの層及びチャネルのジオメトリに比べて短いことを示す。
【0040】
図3A、図3B、及び図3Cは、図1に斜視図で示した例示の実施例の上面図、及び線3B−3B及び線3C−3Cに沿った2つの切開図を図示する。図3Aは、リードフレーム片を個別のユニットに個片化し、チップをその薄膜及びボンド・ワイヤ接続と共に保護するためのカバーを取付けた後の本実施例の上面図であり、全体を100で示す。実施例100において、カバー140の外形は、約2×2mmの、完成MEMSデバイスの外形を決める。カバーの上面まで達しているのは孔141であり、孔141は本例のMEMSデバイスでは円形の外形を有するが、他の実施例では孔は異なる外形を有していてもよい。
【0041】
破線でこの上面図に更に示すのは、本例のMEMSデバイスにおいて、約1mmの辺を備えた矩形として形づくられた半導体チップ101と、そのチップを通る開口を覆うフォイル105と、窪みの第1の層を充填し、第1の開口121及び反対の端部の第2の開口122を有するインセット120と、第1の穴及びフォイルと第2の穴及び孔との間のチャネル117を提供する窪みの第2の層115と、キャリア化合物内に組み込まれるリード112である。
【0042】
図3Bの本例の個別のMEMSデバイスの(図3Aのオフセット線3B−3Bに沿った)断面は、キャリアの金属性リード112間で共通の高さ112aと、キャリアのプラスチック部111の高さ111aを図示する。この共通の高さは、リードを組み込み、キャリアをつくるリードフレームのプレモールド・プロセスを行った結果である。図3Bの断面に示す窪みは、例えば、301で示すBステージ重合体接着性配合物を用いることによって、プレモールドされたキャリアの段116にインセット120が取り付けられた後の、第2の層窪み115からのエアチャネル117の形成に特徴がある。上述したように、本例のMEMSデバイスの第1の層の深さは約0.12mmから約0.13mmの間であり、インセットが第1の層の高さ及び領域を充填する。従って、接着剤301の厚みと一緒にしたインセット120の厚みは、同じ範囲内にある。
【0043】
図3Bにおいて、半導体チップ101は、例えば、302で示すBステージ重合体接着性配合物を用いることにより、部分的にインセット120上に及び部分的にプラスチック化合物111上に取り付けられる。チップ101の高さ101bは約0.3mmから約0.4mmの間である。従って、約0.7mmから約0.8mmの間であるカバー140の高さ142は、フォイル105のz軸動きだけでなくワイヤ・ボール・ボンドのアーチ高さを収容するのに充分である。そのため、パッケージングされたMEMSデバイスの総高303は、おおよそ、1.0mmから1.3mmまでの範囲に入る。図3Bにおいて、チップ101の開口104は、シリコン貫通電極(TSV)など、一つ又はそれ以上の狭窄部104aによってフォイル105まで続くよう概略で示されているが、この特徴は、MEMSデバイス(圧力センサ、マイクロフォン、スピーカーなど)の機能に依存する。従って、幾つかのデバイスにおいて、開口104は構造体無しにフォイル105まで継続してもよく、他のデバイスでは複数の構造体又はTSVがあってもよい。
【0044】
図3Cの切開図は、本例のMEMSデバイス実施例の全体的なエアチャネルのレイアウトを示す。キャリア110の重合体化合物111によって形成された部分は、チャネル117を含み、このチャネルがカバー140の孔141を介して雰囲気インレット(ambient inlet)をチップ101の開口104の端部の可動部品(フォイル、薄膜)105に接続する。このエアチャネルは、チャネル117をインセットの第1の穴によりチップ開口104及びフォイル105へ、及びインセットの第2の穴122により周囲雰囲気及び孔141へつなげるインセット120によって補完される。
【0045】
本発明の別の実施例はMEMSを製造するための方法である。プロセス・フローの第1の工程において、リードフレーム片が供給され、このリードフレーム片は複数のユニットを有し、各ユニットは中央のオープンスペースを囲むリードを有する。上述したように、これらのユニットはチップを取り付けるためのパッドは呈していない。これらのユニットはタイバー又はレールによって共に保持される。これらのレール及びリードは、或る高さを有する金属シートからスタンピングされるか又はエッチングされる。薄くするため、これらのレールは、その後ハーフエッチングされて元の金属厚みを約50%低減させる。多くの実施例の場合、シート材料は銅であり、銅表面にはモールディング化合物への接着を強化するため酸化又は粗化などの処理が成され得る。一つの面上で、リードは、ワイヤ・ボンディングを容易にするためスポットめっきされた銀を有し得、反対の面上で、リードは、はんだ取り付けを容易にするためめっきされた金属(ニッケル、及びパラジウム又は金など)を有し得る。
【0046】
次の処理工程において、これらのユニットのオープンスペースは、重合体化合物で充填され、それにより、リードを組み込み、リードの高さと複数のリードに共通の面とを有するプレート状のキャリアを形成する。多くの実施例では、オープンスペースを充填する低コストの手法はトランスファ成形技術である。この技術において、リードフレーム片は、リードフレーム片の長さのキャビティとリードフレーム厚みの或る高さを備えたスチール・モールドにロードされる。高比率の無機充填材を含有するエポキシベース封止化合物がキャビティ内に圧入されてリードフレーム片を組み込む。その結果、リード片は、多くのQFN及びSON半導体デバイスのキャリアに類似する、頑強なプレート状のキャリアに形成される。
【0047】
各ユニット内のオープンスペースを充填する工程と同時に、二層の段状の窪みが、その窪みがキャリアの前記面から前記キャリアの高さより小さい或る深さまで延びるように、各ユニットのオープンスペースの中央領域に作られる。また、この窪みは、或る階段状の段が前記窪みの周囲を囲んで延びるように形成される。この段は第1の層から第2の層までの遷移を記す。
【0048】
その後、インセットが個別部品として供給される。インセットは、好ましくは、Bステージのエポキシベースの接着性フィルムを用いて、各ユニットの段に取り付けられる。インセットは、第1の層の窪みの輪郭、領域、及び厚みを呈するように構成され、そのため、第1の層を充填することができる。インセットは更に、インセットの一端の第1の穴の開口とインセットの反対の端部の第2の穴の開口とを有する。インセットは、段に取り付けられた後、第2の層の窪みで画定されるキャビティへの蓋として機能し、エアチャネルとして機能する第2の層の空間を画定する。多くの実施例において、低コストのポリシリコンで作られるインセットを有することは利点である。これは、この選択肢により、インセットのCTEがチップのCTEに等しくなり、熱機械的応力が低減されるためである。代替として、インセットはプラスチック又は銅などの金属でつくられてもよい。
【0049】
次の処理工程において、集積回路チップが供給され、ここで、各集積回路チップは、チップ厚みを介して延びる少なくとも1つの開口を有する。集積回路チップの回路側で、各開口は、MEMSデバイスの可動部品として機能するのに充分薄いフォイルによって覆われる。集積回路チップの回路とは反対側では、この開口はふさがれていない。各ユニットのインセット上に、チップの開口がインセットの第1の穴と整合されるようにチップが取り付けられる。取り付けプロセスは、Bステージのエポキシベースの接着性フィルムを用いることが好ましい。その後、各チップの端子が、各ユニットのキャリアに組み込まれたリードに接続され、ボール・ワイヤ・ボンディング技術が低コストの方法を提供する。
【0050】
次に、ユニットの領域(area)にわたって適合し、チップ及びワイヤ・ボンドを保護するのに充分な高さを有するCANのように形づくられ得るカバーが提供される。カバーは、カバーの高さを通る孔を更に有する。この孔がインセットの第2の穴と整合され、カバーがユニットのチップを封止するように、各キャリア・ユニットの面にカバーが取り付けられる。
【0051】
最後に、パッケージングされたユニットがリードフレーム片から個片化される。低コストの手法は、ハーフエッチングされたレール及び薄いモールディング化合物を貫いて切る、リードフレーム・レールに沿ったソーイング工程である。代替として、インセットの付加前又はチップの付加前にパッケージ基板を個別化し、パッケージ基板の製造を完成デバイスの製造とは別に行うこともできる。
【0052】
本発明は、プラスチック及びセラミックスを含む、MEMSデバイス・パッケージのための任意の材料に、及びシリコン、シリコン・ゲルマニウム、ガリウム砒素、又は製造に用いられる任意の他の半導体又は化合物を含む任意の集積材料に適用される。インセットを備えたプレモールドされたリードフレームの、MEMSデバイスのパッケージのためのエアチャネルを備えたキャリアとしての利用は、圧力の電子的に検出可能な信号への変換が、その圧力に曝される薄膜の又は全般的には構造体の弾性撓みに依存する圧電抵抗圧力センサに適用することができる。インセットを備えたプレモールドされたリードフレームの、MEMSデバイスのパッケージのためのエアチャネルを備えたキャリアとしての利用は、共振周波数が、振動する微細構造の機械的応力に依存する共振圧力センサに適用することができる。
【0053】
窪みは、インセットによって覆われる単一層を有して形成され得る。例えば、インセットは、この単一層内部に適合してもよく、単一層の底部から間隔を空けて配置されてエアチャネルを形成してもよい。この間隔は、前記窪み内に上下逆にされる、前記窪み内にモールディングされる、又はインセットの一部として形成される、スタンドオフによって制御され得る。同様の方式で、インセットは、パッケージ基板の上面上に配置されてもよく、インセットの整合を確実にするため窪み内に延びる、インセット内に形成される一つ又はそれ以上の構造体を任意で含んでいてもよい。更に別の例において、前記第2の穴は、インセットの端部と前記窪みの端部との間のギャップによって具現化されてもよい。前記第2の穴を覆うことによって粒子による前記第2の穴及びエアチャネルへのアクセスが制限されるが、前記第2の穴は、パッケージカバーによって囲まれている必要はない。カバーの利用により、前記第2の穴から外部環境への経路の長さ及び形状の両方を特定の応用例用に調節することも可能となる。
【0054】
例示の実施例の文脈で説明したような特徴又は工程のすべて又はその幾つかを有する例示の実施例の文脈で説明した1つ又はそれ以上の特徴又は工程の異なる組み合わせを有する実施例も、本明細書に包含されることも意図している。当業者であれば、他の多くの実施例及び変形も特許請求の範囲に包含されることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)デバイスであって、
或る高さ及び面を有するキャリア、
前記キャリアの前記高さ内に形成され、前記キャリアの前記面上に開口する窪み、
前記窪み内に適合されて、前記窪みによって画定されるキャビティを覆い、前記キャビティへの第1及び第2の開口を有するインセット、
前記インセットに取り付けられ、前記インセットの前記第1の開口を通して前記キャビティと通信する開口を有する集積回路チップ、及び、
前記集積回路チップを囲む前記キャリアの前記面に取り付けられ、前記インセットの前記第2の開口を通して前記キャビティと通信する孔を有するカバー、
を含む、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、前記集積回路チップの開口が前記集積回路チップを通して延び、フォイルによって覆われる開口である、デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、連続するエアチャネルが、前記カバーの外側から、前記キャビティへの前記孔を通して、及び前記キャビティから前記集積回路チップの開口を通して前記フォイルまで形成される、デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、前記フォイルが、前記キャリア面に垂直に、及び前記集積回路チップの開口のスペース内で移動可能である、デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスであって、前記窪みが、前記面から延びる第1の層、前記キャビティを画定する第2の層、及び前記第1の層から前記第2の層への段状の遷移を有する、デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイスであって、前記窪みが前記キャリアの前記面上の中央に開口し、前記面の周囲で前記キャリアに組み込まれる導電性リードを更に含む、デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイスであって、前記集積回路チップ上の接続端子、及び前記接続端子と前記導電性リードとの間に延びる電気的接続を更に含み、前記電気的接続が前記カバーにより囲まれている、デバイス。
【請求項8】
請求項4に記載のデバイスであって、前記フォイルが前記集積回路チップの上側に固定される可動懸架ビームの構成を有し、前記ビームが前記固定地点から離れたプレートへ延び、前記プレートを前記上側に対して垂直に動かすように動作し得る、デバイス。
【請求項9】
マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)デバイスを製造するための方法であって、
中央のオープンスペースを囲む複数のリードを有するリードフレームを提供する工程であって、前記リードが或る厚みを有する金属シートで作られる工程、
前記オープンスペースを重合体化合物で充填する工程であって、それにより前記リードを組み込み、前記厚み及び或る面を有するキャリアを形成する、工程、
前記充填されたオープンスペースに窪みを形成する工程、
第1の穴(perforation)及び第2の穴を有するインセットを取り付ける工程、
集積回路チップを通して延びる開口を有する前記集積回路チップを、前記開口が前記第1の穴と通信するように前記インセット上に取り付ける工程であって、前記開口が前記回路側でフォイルによって覆われ、反対側ではふさがれていない、工程、及び、
前記集積回路チップを囲む前記キャリアの前記面上にカバーを取り付ける工程、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記窪みを形成する工程が、前記オープンスペースに二層状の窪みと、第1の層から少なくとも前記窪みの周囲の一部を囲む第2の層へ突き出る段と、を形成することを含む。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記集積回路チップの端子から前記リードへの電気的接続を提供することを更に含み、前記カバーを取り付ける工程が前記電気的接続を封止することを含む、方法。
【請求項12】
マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)を製造するための方法であって、
中央のオープンスペースを囲む複数のリードを有するリードフレームを提供する工程であって、前記リードが或る高さを有する金属シートで作られる工程、
前記オープンスペースを重合体化合物で充填する工程であって、それにより前記リードを組み込み、前記高さ及び或る面を有するキャリアを形成する工程、
前記オープンスペースに窪みを形成する工程、及び、
第1の穴及び第2の穴を有するインセットを取り付ける工程、
を含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3B】
image rotate


【公表番号】特表2013−516329(P2013−516329A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547262(P2012−547262)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/062331
【国際公開番号】WO2011/082214
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【出願人】(507107291)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (50)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
【Fターム(参考)】