マイクロ機械的エレメントを動かすためのアクチュエータ
本発明は、剛体エレメント(例えばミラーのような光学エレメント)を動かすためのアクチュエータに関する。エレメントは、曲げ可能な連結部を有するフレームに機械的に連結される。アクチュエータエレメントは、フレームとエレメントとの間で連結部上に載置される。連結部およびアクチュエータエレメントは、信号発生器から信号を受けるときに、エレメントに動きを提供するのに適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堅い、好ましくは光学的なエレメント(例えばミラー)を動かすためのアクチュエータユニットに関する。それは、統合された圧電アクチュエータを有するシリコン・オン・インシュレータ・ウエハから形成される20Vで9μmよりも大きいストロークをともなってマイクロミラーを動かすためのアクチュエータに、特に関する。主な用途は、赤外線ガス分光法のためのファブリーペロー干渉計である。
【背景技術】
【0002】
調節可能なファブリーペロー干渉計および他のデバイスにおいて、剛性の光学エレメント(例えばマイクロ機械的デバイスにおけるミラー)の十分に大きくかつ信頼性の高い転移を提供することは、チャレンジである。圧電アクチュエータは、試みられた。しかし、それらは、動きが一方向に限られているので、利用できる動きは十分でなかった。
【0003】
MEMSと統合される圧電性の薄いフィルムは、低い電圧で長いストロークの作動を許容する[1]。付加的な利点は、圧電フィルムが大きい力を発生させることであり、したがって、そのアクチュエータは、一般的に用いられる静電アクチュエータによって可能であるよりも強固でかつ堅牢であることができる。この種のエレメントの使用は、特許文献1および特許文献2(両方とも剛体エレメントを動かす圧電アクチュエータの使用を示す)において論じられた。両方とも、しかしながら、エレメントの位置および方向を制御するための曲げ可能なビームの使用に頼り、それは、ユニットの生産の複雑さおよび長期の信頼性を犠牲にしている。したがって、MEMS技術を用いて安価に製造され、そして光学的使用(例えば干渉計)にとって必要な精度の範囲内で制御可能な堅牢でかつ信頼性のあるユニットを提供する、コンパクトなアクチュエータユニットを提供することは、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2006/110908号
【特許文献2】特開2007―206480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述のような、そして独立クレームにおいて示されるように特徴づけられるアクチュエータユニットを提供することによって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明の好ましい実施形態によれば、2重リングのプッシュプル・アクチュエータを用いることにより垂直に撓む新規のマイクロミラーは、提示される。マイクロミラーは、光学およびマイクロ光学における広範囲の適用を有する。しかし、主な目的は、赤外線ガス分光法のためのファブリーペロー干渉計である[2、3]。
【0007】
アクチュエータユニットは、標準MEMS製造と互換性があり、そして、充分な精度を有するマイクロミラーまたは類似の剛体デバイスを動かすための堅牢な手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、例として本発明を例示する添付図面を参照して以下に記述される。
【図1a】図1aは、本発明による可動マイクロミラーを例示する。
【図1b】図1bは、本発明による可動マイクロミラーを例示する。
【図2a】図2aは、図1a、図1bにおいて例示される実施形態の好ましい実施形態を例示する。
【図2b】図2bは、図1a、図1bにおいて例示される実施形態の好ましい実施形態を例示する。
【図3】図3は、ファブリーペロー干渉計において使用する本発明の好ましい実施形態を例示する。
【図4】図4は、図2a、図2bに例示したように、実施形態の得られた撓みを示す。
【図5a】図5aは、本質的に円形の膜および圧電アクチュエータに基づく本発明の別の実施形態を例示する。
【図5b】図5bは、本質的に円形の膜および圧電アクチュエータに基づく本発明の別の実施形態を例示する。
【図5c】図5cは、本質的に円形の膜および圧電アクチュエータに基づく本発明の別の実施形態を例示する。
【図6a】図6aは、本発明の別の実施形態を例示する。
【図6b】図6bは、本発明の別の実施形態を例示する。
【図7a】図7aは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7b】図7bは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7c】図7cは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7d】図7dは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7e】図7eは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7f】図7fは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7g】図7gは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1a、図1bは、薄いシリコンデバイス層2、埋込み酸化物層6および厚いシリコンハンドル層7を備えるSOIウエハから形成される剛体エレメント1(例えばマイクロミラー)の3次元モデルを示す。デバイスは、フレーム4と剛体エレメント1との間に連結領域2aを定義する膜上に配置されるリング形の圧電アクチュエータ3を備える。アクチュエータ3は、中央に開いた開口を有するディスクを撓ませる(図1a)。剛体エレメントディスク1は、ハンドルシリコンウエハ7の完全な厚みを有し、そして、ディスク1の縁辺周りで膜2aを構成している薄いデバイスシリコン層2によって適切な位置に保たれる。膜2aは、剛体エレメントを囲んでいる連続膜として図示されるが、例えば、エレメントの下のキャビティと環境との間の圧力平衡のために、適切な位置の開口を有してよい。光学エレメント1は、アクチュエータエレメント3によって動くときに本質的に同じ形状を維持するように堅く、そして、アクチュエータエレメント3は、フレーム4または剛体エレメント1のいずれかの近くに配置されることが好ましい。その結果、圧電材料が収縮するときに、膜上に配置されるアクチュエータの部分は、上方へ曲げられ、したがって、膜をその方向へ引っ張る。
【0010】
図1a、図1bに示されるデバイスは、図1aの平面図に示すように、デバイスの中央部の埋込み酸化物6と同様にデバイスシリコン2をエッチングで取り除くことによって、上述のようにシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハから形成される。底側は、図1bの底面図に示すように形づくられる。ここでは、その表側上の剛体エレメント1の周辺周りで膜を構成しているデバイスシリコン層2aによって適切な位置に保たれる固いディスク形のミラープレート1を例えば構成する剛体エレメントを残して、SOIのハンドルシリコン層7は、埋込み酸化物6までエッチングされた。リング形の(すなわち円環)圧電フィルム3は、中央ディスクを保持している薄いデバイスシリコンの上部に構成される。そして、圧電フィルムは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)から作られることが好ましい。作動時に、圧電フィルムは、半径方向に収縮して、バイモルフ効果を通じてデバイスシリコン膜2aの曲がりを引き起こす。構造の円対称性のせいで、この曲がりは、ディスク1の面外撓みを引き起こす。この方法では、本発明の好ましい実施形態によるアクチュエータユニットは、表面上に適用されるPZTアクチュエータエレメントを有する1つのSOIエレメントから作られてよく、したがって、単純でかつ費用効率の高い生産に適して作られてよい。
【0011】
図2a、図2bに示すように、好適な設計は、2つのリング形のアクチュエータ3a、3bを含む。これは、図2bに示すように、外側のアクチュエータ3bが収縮されるときに膜2aは上方へ曲がり、一方内側のアクチュエータ3aが収縮するときに膜は下方へ曲がるように、中央ディスクのプッシュプル作動を許容する。フレームおよび剛体エレメントが両方とも堅いので、外側のアクチュエータ(最大の直径)は、膜をしたがって光学エレメントを上方へ引っ張る。その一方で、内側のディスク(最小の直径)の作動は、膜をしたがって剛体エレメントを下方へ引っ張る。この解決手段は、剛体エレメント1にとっての動きの可能な範囲を広げる。
【0012】
ディスク形のマイクロミラーとしての剛体エレメントの主な用途は、図3に例示されるファブリーペロー干渉計の一部としてである。この用途において、ディスク1の上面は、反射防止(AR)層11で覆われ、一方底面は、ユニットを通過する光13用のミラーとして作用する。しかし、例えば、キャビティの上下の面によって形成されるミラー16、17間の必要な距離15に依存して、他の選択がなされてよい。ミラー16,17は、反射コーティングまたは、必要な反射率を提供してよい材料自体(シリコンのような)の屈折率のいずれかを備えてよい。これもまた一側12上にARコートされた第2の構造化されていないシリコンウエハ10に、ミラーを結合(ウエハ規模で)することによって、キャビティ15は、その中を光が繰返し反射を受けられるように形成される。共振器キャビティの範囲内のARコーティング11、12および可能な反射コーティングは、適切な厚みまたはフォトニック結晶で誘電層を例えば使用する、任意の適切な方法で設けられてよい。
【0013】
隙間15の高さは、どの波長が構造的に干渉して、したがって干渉計を通って完全に送信されるかを決定する。3〜10μmの波長範囲における赤外分光学に適用できるFP干渉計にとって、数マイクロメートルのストロークは、十分な可同調性のために望ましい。ファブリーペロー干渉計は、ポリマー(例えばBCB 9)を有する粘着性のボンディングを使用して第2のシリコンウエハに結合されるディスク形のマイクロミラーによって形成される。
【0014】
図3に例示するように、ファブリーペローは、端部ストッパ14と同様に、圧力平衡のためのBCB層9にリークチャネルを含んでよい。剛体エレメントが端部ストッパに置かれてよく、そして、その位置がこれと関連して制御されてよいので、端部ストッパ14は、校正のために用いられてよい。後述するように、異なるタイプの位置測定手段(例えば光学的、容量的またはピエゾ抵抗的測定手段)が用いられてよい。上方への動きのための端部ストッパは、例えば、干渉計を囲んでいるハウジング内に設けられてもよい。
【0015】
マイクロミラーは、〔1〕にて記述されるように、参照によってここに含まれ、そしてここでは詳述しないが、産業利用のために開発されかつ標準化されたマルチ・プロジェクト・ウエハ(MPW)プロセスの一部として製造される。このプロセスにおいて、圧電素子は、膜上に取り付けられる(載置される)。そして、アクチュエータを形成するために用いる圧電フィルムは、下部白金電極と金によって製造される上部電極との間に挟まれているチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である。マイクロミラーの製造にとって、後部キャビティのウエットエッチングは、より良好な寸法制御のためのディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)によって置き換えられた。
【0016】
圧電素子3を膜の領域2a上に取り付けるための他の手段は、素子の利用できる技術および用途に応じて考察されてもよい。
【0017】
本発明の好ましい実施形態により使用する最初のSOIウエハは、380μmのハンドルシリコン7、300nmの埋込み酸化物6、および8μmのデバイスシリコン層2を有する。マイクロミラーの製作のために、後部エッチングは、ディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)を用いて実施された。
【0018】
中央ミラーディスクを保持しているデバイスシリコン層の一部が、それがハンドルシリコン内にエッチングされる後部隙間を埋めるが、しかし連続した膜を形成する領域において構築されないように、マイクロミラーが設計されることに注意されたい。これは、構造の堅牢性を著しく増加させて、単結晶シリコンを、製造プロセスにおいて緊張させた場合に亀裂を容易に形成し得るいかなる障害からも安全に保つ。
【0019】
ダイシングの後、仕上げられたデバイスの圧電アクチュエータは、150℃の温度で20Vを10分間適用することによって極性を与えられた。
【0020】
測定は、中央の領域が開口である図2に示されるタイプの仕上げられたマイクロミラーを使用して実行された。そして図示されるデバイスは、3mmの直径および、金の上部電極3c、3dを有する2重リング・アクチュエータ3a、3b、を有する。
【0021】
ミラーにの作動特性は、ZYGO白色光干渉計によって測定された。ミラーは、内側アクチュエータに20Vを適用することによって下方へ押され、そして、外側リングに20Vの電圧を適用することによって上方へ押された。ミラーディスクがいずれの場合においても完全に平坦なままであることに注意されたい。これは、ハンドルシリコンウエハの完全な厚みを有するシリコンディスクの高い剛性に起因する。
【0022】
ミラーディスクの高い剛性はまた、3mmよりも非常に大きい直径のミラーの製作がここで提示されることを許容する。形成された構造が、信じられないほど堅牢であることがわかった。したがって、5〜10mmの開口は可能でなければならない。
【0023】
2台のアクチュエータを有するマイクロミラーのための完全な特性は、図4に示される。2台のアクチュエータの各々に20Vの駆動電圧を順番に印加するときに、ミラープレートにとって9.3μmの全ストロークは達成される。ヒステリシスは、PZTベースのアクチュエータの典型的特徴である。フィードバックは、正確な位置取りのために必要とされる。これは、参照レーザーを用いて光学的になされることができる。将来のデザインにおいては、しかしながら、ピエゾ抵抗器は、ミラーの閉回路動作および非常に正確な位置取りを許容するために、アクチュエータの一部であるデバイスシリコンに付加される。マイクロミラーの作動特性は、したがって、外側のアクチュエータ・リングに適用される0〜20Vへの電圧掃引が上方の曲線を生成する一方、内側のリングに対する同じ掃引が下方の曲線を生成する、アクチュエータを提供する。全ストロークは、9μmである。
【0024】
したがって、二重リングのプッシュプル・アクチュエータを用いることによって、20Vで9μmのストロークを達成するマイクロミラーは提示された。ミラーは、SOIウエハのハンドルシリコンから形成される。高い剛性は、作動時に高い平坦性を確実にする。3mm以上の開口を有する大きなミラーは、うまく製作された。このミラーは、ガス分光法のためのファブリーペロー干渉計であるその主な用途のために、非常に適している。
【0025】
図5a〜図5cは、剛体エレメント1とフレーム4との間に連結手段を提供しているリング形の膜2aに基づく、本発明の実施形態を例示する。図5aにおいて、ピエゾ抵抗器5は、圧電アクチュエータ3の下に配置される。したがって、曲がりが提供される同じ位置で膜の曲がりを測定する。
【0026】
図5bは、縁辺部で堅い間、剛体エレメントが薄い中央膜を有するホールまたは中空領域を囲んでいる剛性フレームを有してよいことを示す。
【0027】
図5cは、他のリングが膜2aを成形したことを示すが、しかし、アクチュエータは、円周方向に沿って4つの部分3a1、3a2、3a3、3a4に分割される。本発明の好ましい実施形態によれば、対応する内側アクチュエータ部品は、設けられる。図5cにおいて、ピエゾ抵抗器5として設けられる位置測定手段は、アクチュエータ部分間のギャップに置かれる。分割されたアクチュエータ部分を有する利点は、それらが平行移動に加えて傾斜移動を提供してよく、したがって、剛体エレメントの位置および向きのいくらかの調整または校正を提供してよいということである。
【0028】
図6a、図6bは、本発明の別の実施形態を例示する。剛体エレメント1は、中央開口を有し、そして、図6bに示されるユニットの断面に示しているように、ガラスまたは水晶から製造される光学エレメント17aがそれに固定される。したがって、光計測(例えばファブリーペローフィルタ)に用いられる場合、剛体エレメント1は、関連した波長に適している適切な透過スペクトルを有するエレメント17aを備えてよい。このように、ユニットは、選択した材料に応じて、可視光、近赤外線または紫外線領域において用いられてよい。その一方で、シリコンから製造される剛体エレメント1は、ほぼ1100nmを上回る波長に適している。
【0029】
図7a〜図7gは、図6bに示されるユニットを製造するための生産プロセスを記載する。これらの図面は、製造の異なる段階におけるユニットの断面を示す。
【0030】
図7a、図7bに見ることができるように、このユニットは、上で述べた他の実施形態と同じ出発点を共有する。そして、図1a、図3、図5aに関して述べたように、圧電アクチュエータ・リングを有するSOI構造から始める。そして、デバイス層は、剛体エレメント1として使用される領域からエッチングされる。
【0031】
圧電アクチュエータを担持しているユニットの上部は、それから、図7cに示すように運搬ウエハ20に一時的に結合される。これは、ポリマー21(例えばBrewer ScienceからのWaferBOND)を使用して実行されてよい。膜の領域と同様に中央領域は、それから、図7dに示すように、デバイス層が取り除かれる中央領域の開口、およびデバイス層が損傷を受けてない膜を残して、エッチングで取り除かれる。
【0032】
ガラスまたは水晶層は、それから、例えば図7eに示すようにBCBボンディングを用いて、下からユニットに結合される。ボンディングは、ウエハおよびガラスの接続を永久に保つために十分強くなければならない。そして、BCBボンディングは、比較的低い温度および高い強度の組合せであるため適切である。
【0033】
剛体エレメントの一部を構成している光学エレメントの能動部分17aは、それから、図7fに例示される構造を残して、例えばパウダーブラストによって、残りのガラスまたは水晶から切り離される。
【0034】
一時的な運搬ウエハを取り除いた後、ユニットは終了する。そして、図3に示されるユニットと類似の光ユニットに載置されてよい。しかし、構造化されていないシリコン層10は、剛体エレメント1の透明な部分17aと同じ波長において透明なガラスまたは水晶層でよい。適切な反射防止および反射層は、任意の知られた適切な方法において表面に適用されてよい。
【0035】
本発明を要約することは、したがって、剛体エレメント(レンズ、ミラー、または少なくとも部分的に透明でかつ部分的に反射するウィンドウのような、例えば光学エレメント)を動かすためのアクチュエータに関する。ここで、エレメントは、連結部を提供する曲げ可能な膜を有するフレームに機械的に連結する。アクチュエータエレメントは、フレームとエレメントとの間の前記連結膜上に載置される。膜およびアクチュエータエレメントは、信号発生器から信号を受けるときに、エレメントに動きを提供するのに適している。圧電素子がフレームと剛体エレメントとの間の連結方向に収縮するのに適しているので、好ましくは、アクチュエータエレメントは、電圧の印加で前記連結部を曲げるのに適している前記連結膜上に載置する少なくとも圧電素子で構成される。
【0036】
特に好適な実施形態において、各アクチュエータエレメントは、2つのPZTエレメントによって構成される。第1のPZTエレメントは、フレームの近くの連結部上に載置され、第2のPZTエレメントは、剛体エレメントの近くの連結部上に載置され、そして、それらのうちの一方が剛体エレメントを第1の方向に動かし、他方が剛体エレメントを第1の方向とは反対の方向に動かすように、互いに独立して、または好ましくは交互に作動するように、信号発生器に組み合わされる。
【0037】
本発明の一実施形態において、連結部は、フレームの薄くて円形の部分によって構成され、前記少なくとも1つの圧電素子は、連結部に沿って延びる。好適なバージョンにおいて、2つの圧電素子が、動きの長さを増加させるために上述のように用いられる。
【0038】
いかなる実施形態においても、アクチュエータは、フレームと関連して剛体エレメントの位置のフィードバックを提供するために、位置測定手段を備えてよい。そして、圧電素子3を使用している実施形態では、位置測定手段は、連結部の曲がりをモニタするために連結部上に設けられる圧電抵抗素子5であることも好ましい。圧電抵抗素子5は、圧電アクチュエータ3の下に、または連結部が曲げられる他の位置に配置されてよい。
【0039】
ピエゾ抵抗器は、イオン注入およびそれに続くアニーリングによって、シリコン・オン・インシュレータ層内に製造されることができる。このドーピング手順については、pn接合が生成され得て、それは抵抗器のジオメトリを定める。抵抗器は、後のプロセスステップにおいて表面上のメタライゼーション層と接続される、付加的な、より高いドーピング領域と接触することができる。ピエゾ抵抗器を製作するプロセスステップは、圧電層のための下部電極を堆積させる前に実行することができる。この種のドーピングしたピエゾ抵抗器は、応力センサとして用いられて、通常4つの曲げ可能な抵抗器を有するホイートストンブリッジ構成に組み立てられる。機械構造およびプロセス許容度における利用可能な空間に依存して、他の構成(例えばハーフブリッジ)もまた可能である。
【0040】
ピエゾ抵抗器の代わりに、光学的または容量的解決手段は、剛体エレメントの位置を測定するために用いてよい。
【0041】
図3に例示するように、本発明はまた、上述によるアクチュエータを含む干渉計(特にファブリーペロー干渉計)に関する。剛体エレメントは、少なくとも部分的に反射する反射面、第2の反射面を含むハウジング内に取り付けられるフレーム、少なくとも部分的に透明なボディ上に設けられる少なくとも1つの反射面、および、互いに間隔をもって配置されてファブリーペローエレメントを構成する2つの反射面を有する。そして、その間隔は、前記アクチュエータエレメントによって誘発される動きによって調整される。
【0042】
本発明はまた、アクチュエータを含む反射デバイスに関する。ここで、剛体エレメントは、ミラーを構成するか、または、選択した波長領域の範囲内で少なくとも部分的に透明である。そして、圧電アクチュエータは、不良位置合せを調整するために、または選択した方向に光を導くために、剛体エレメントを傾けることが可能な個々に制御される円形の部分に分割される。
【0043】
参照
[1] “Taking piezoelectric microsystems from the laboratory to production”, H. Rader, F. Tyholdt, W. Booij, F. Calame, N. P. Ostbo, R. Bredesen, K. Prume, G. Rijnders, and P. Muralt, J Electroceram (2007) 19:357−362
[2] “Infrared detection of carbon monoxide with a micromechanically tunable silicon Fabry−Perot filter”, Hakon Sagberg, Alain Ferber, Karl Henrik Haugholt, and Ib−Rune Johansen, IEEE Conf. on Optical MEMS (2005)
[3] “Tunable infrared detector with integrated micromachined Fabry−Perot filter”, Norbert Neumann, Martin Ebermann, Steffen Kurth, and Karla Hiller, J. Micro/Nanolith. MEMS MOEMS 7, 021004 (2008)
【技術分野】
【0001】
本発明は、堅い、好ましくは光学的なエレメント(例えばミラー)を動かすためのアクチュエータユニットに関する。それは、統合された圧電アクチュエータを有するシリコン・オン・インシュレータ・ウエハから形成される20Vで9μmよりも大きいストロークをともなってマイクロミラーを動かすためのアクチュエータに、特に関する。主な用途は、赤外線ガス分光法のためのファブリーペロー干渉計である。
【背景技術】
【0002】
調節可能なファブリーペロー干渉計および他のデバイスにおいて、剛性の光学エレメント(例えばマイクロ機械的デバイスにおけるミラー)の十分に大きくかつ信頼性の高い転移を提供することは、チャレンジである。圧電アクチュエータは、試みられた。しかし、それらは、動きが一方向に限られているので、利用できる動きは十分でなかった。
【0003】
MEMSと統合される圧電性の薄いフィルムは、低い電圧で長いストロークの作動を許容する[1]。付加的な利点は、圧電フィルムが大きい力を発生させることであり、したがって、そのアクチュエータは、一般的に用いられる静電アクチュエータによって可能であるよりも強固でかつ堅牢であることができる。この種のエレメントの使用は、特許文献1および特許文献2(両方とも剛体エレメントを動かす圧電アクチュエータの使用を示す)において論じられた。両方とも、しかしながら、エレメントの位置および方向を制御するための曲げ可能なビームの使用に頼り、それは、ユニットの生産の複雑さおよび長期の信頼性を犠牲にしている。したがって、MEMS技術を用いて安価に製造され、そして光学的使用(例えば干渉計)にとって必要な精度の範囲内で制御可能な堅牢でかつ信頼性のあるユニットを提供する、コンパクトなアクチュエータユニットを提供することは、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2006/110908号
【特許文献2】特開2007―206480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述のような、そして独立クレームにおいて示されるように特徴づけられるアクチュエータユニットを提供することによって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明の好ましい実施形態によれば、2重リングのプッシュプル・アクチュエータを用いることにより垂直に撓む新規のマイクロミラーは、提示される。マイクロミラーは、光学およびマイクロ光学における広範囲の適用を有する。しかし、主な目的は、赤外線ガス分光法のためのファブリーペロー干渉計である[2、3]。
【0007】
アクチュエータユニットは、標準MEMS製造と互換性があり、そして、充分な精度を有するマイクロミラーまたは類似の剛体デバイスを動かすための堅牢な手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、例として本発明を例示する添付図面を参照して以下に記述される。
【図1a】図1aは、本発明による可動マイクロミラーを例示する。
【図1b】図1bは、本発明による可動マイクロミラーを例示する。
【図2a】図2aは、図1a、図1bにおいて例示される実施形態の好ましい実施形態を例示する。
【図2b】図2bは、図1a、図1bにおいて例示される実施形態の好ましい実施形態を例示する。
【図3】図3は、ファブリーペロー干渉計において使用する本発明の好ましい実施形態を例示する。
【図4】図4は、図2a、図2bに例示したように、実施形態の得られた撓みを示す。
【図5a】図5aは、本質的に円形の膜および圧電アクチュエータに基づく本発明の別の実施形態を例示する。
【図5b】図5bは、本質的に円形の膜および圧電アクチュエータに基づく本発明の別の実施形態を例示する。
【図5c】図5cは、本質的に円形の膜および圧電アクチュエータに基づく本発明の別の実施形態を例示する。
【図6a】図6aは、本発明の別の実施形態を例示する。
【図6b】図6bは、本発明の別の実施形態を例示する。
【図7a】図7aは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7b】図7bは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7c】図7cは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7d】図7dは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7e】図7eは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7f】図7fは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【図7g】図7gは、図6a、図6bにおいて例示される実施形態の生産プロセスを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1a、図1bは、薄いシリコンデバイス層2、埋込み酸化物層6および厚いシリコンハンドル層7を備えるSOIウエハから形成される剛体エレメント1(例えばマイクロミラー)の3次元モデルを示す。デバイスは、フレーム4と剛体エレメント1との間に連結領域2aを定義する膜上に配置されるリング形の圧電アクチュエータ3を備える。アクチュエータ3は、中央に開いた開口を有するディスクを撓ませる(図1a)。剛体エレメントディスク1は、ハンドルシリコンウエハ7の完全な厚みを有し、そして、ディスク1の縁辺周りで膜2aを構成している薄いデバイスシリコン層2によって適切な位置に保たれる。膜2aは、剛体エレメントを囲んでいる連続膜として図示されるが、例えば、エレメントの下のキャビティと環境との間の圧力平衡のために、適切な位置の開口を有してよい。光学エレメント1は、アクチュエータエレメント3によって動くときに本質的に同じ形状を維持するように堅く、そして、アクチュエータエレメント3は、フレーム4または剛体エレメント1のいずれかの近くに配置されることが好ましい。その結果、圧電材料が収縮するときに、膜上に配置されるアクチュエータの部分は、上方へ曲げられ、したがって、膜をその方向へ引っ張る。
【0010】
図1a、図1bに示されるデバイスは、図1aの平面図に示すように、デバイスの中央部の埋込み酸化物6と同様にデバイスシリコン2をエッチングで取り除くことによって、上述のようにシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハから形成される。底側は、図1bの底面図に示すように形づくられる。ここでは、その表側上の剛体エレメント1の周辺周りで膜を構成しているデバイスシリコン層2aによって適切な位置に保たれる固いディスク形のミラープレート1を例えば構成する剛体エレメントを残して、SOIのハンドルシリコン層7は、埋込み酸化物6までエッチングされた。リング形の(すなわち円環)圧電フィルム3は、中央ディスクを保持している薄いデバイスシリコンの上部に構成される。そして、圧電フィルムは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)から作られることが好ましい。作動時に、圧電フィルムは、半径方向に収縮して、バイモルフ効果を通じてデバイスシリコン膜2aの曲がりを引き起こす。構造の円対称性のせいで、この曲がりは、ディスク1の面外撓みを引き起こす。この方法では、本発明の好ましい実施形態によるアクチュエータユニットは、表面上に適用されるPZTアクチュエータエレメントを有する1つのSOIエレメントから作られてよく、したがって、単純でかつ費用効率の高い生産に適して作られてよい。
【0011】
図2a、図2bに示すように、好適な設計は、2つのリング形のアクチュエータ3a、3bを含む。これは、図2bに示すように、外側のアクチュエータ3bが収縮されるときに膜2aは上方へ曲がり、一方内側のアクチュエータ3aが収縮するときに膜は下方へ曲がるように、中央ディスクのプッシュプル作動を許容する。フレームおよび剛体エレメントが両方とも堅いので、外側のアクチュエータ(最大の直径)は、膜をしたがって光学エレメントを上方へ引っ張る。その一方で、内側のディスク(最小の直径)の作動は、膜をしたがって剛体エレメントを下方へ引っ張る。この解決手段は、剛体エレメント1にとっての動きの可能な範囲を広げる。
【0012】
ディスク形のマイクロミラーとしての剛体エレメントの主な用途は、図3に例示されるファブリーペロー干渉計の一部としてである。この用途において、ディスク1の上面は、反射防止(AR)層11で覆われ、一方底面は、ユニットを通過する光13用のミラーとして作用する。しかし、例えば、キャビティの上下の面によって形成されるミラー16、17間の必要な距離15に依存して、他の選択がなされてよい。ミラー16,17は、反射コーティングまたは、必要な反射率を提供してよい材料自体(シリコンのような)の屈折率のいずれかを備えてよい。これもまた一側12上にARコートされた第2の構造化されていないシリコンウエハ10に、ミラーを結合(ウエハ規模で)することによって、キャビティ15は、その中を光が繰返し反射を受けられるように形成される。共振器キャビティの範囲内のARコーティング11、12および可能な反射コーティングは、適切な厚みまたはフォトニック結晶で誘電層を例えば使用する、任意の適切な方法で設けられてよい。
【0013】
隙間15の高さは、どの波長が構造的に干渉して、したがって干渉計を通って完全に送信されるかを決定する。3〜10μmの波長範囲における赤外分光学に適用できるFP干渉計にとって、数マイクロメートルのストロークは、十分な可同調性のために望ましい。ファブリーペロー干渉計は、ポリマー(例えばBCB 9)を有する粘着性のボンディングを使用して第2のシリコンウエハに結合されるディスク形のマイクロミラーによって形成される。
【0014】
図3に例示するように、ファブリーペローは、端部ストッパ14と同様に、圧力平衡のためのBCB層9にリークチャネルを含んでよい。剛体エレメントが端部ストッパに置かれてよく、そして、その位置がこれと関連して制御されてよいので、端部ストッパ14は、校正のために用いられてよい。後述するように、異なるタイプの位置測定手段(例えば光学的、容量的またはピエゾ抵抗的測定手段)が用いられてよい。上方への動きのための端部ストッパは、例えば、干渉計を囲んでいるハウジング内に設けられてもよい。
【0015】
マイクロミラーは、〔1〕にて記述されるように、参照によってここに含まれ、そしてここでは詳述しないが、産業利用のために開発されかつ標準化されたマルチ・プロジェクト・ウエハ(MPW)プロセスの一部として製造される。このプロセスにおいて、圧電素子は、膜上に取り付けられる(載置される)。そして、アクチュエータを形成するために用いる圧電フィルムは、下部白金電極と金によって製造される上部電極との間に挟まれているチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である。マイクロミラーの製造にとって、後部キャビティのウエットエッチングは、より良好な寸法制御のためのディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)によって置き換えられた。
【0016】
圧電素子3を膜の領域2a上に取り付けるための他の手段は、素子の利用できる技術および用途に応じて考察されてもよい。
【0017】
本発明の好ましい実施形態により使用する最初のSOIウエハは、380μmのハンドルシリコン7、300nmの埋込み酸化物6、および8μmのデバイスシリコン層2を有する。マイクロミラーの製作のために、後部エッチングは、ディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)を用いて実施された。
【0018】
中央ミラーディスクを保持しているデバイスシリコン層の一部が、それがハンドルシリコン内にエッチングされる後部隙間を埋めるが、しかし連続した膜を形成する領域において構築されないように、マイクロミラーが設計されることに注意されたい。これは、構造の堅牢性を著しく増加させて、単結晶シリコンを、製造プロセスにおいて緊張させた場合に亀裂を容易に形成し得るいかなる障害からも安全に保つ。
【0019】
ダイシングの後、仕上げられたデバイスの圧電アクチュエータは、150℃の温度で20Vを10分間適用することによって極性を与えられた。
【0020】
測定は、中央の領域が開口である図2に示されるタイプの仕上げられたマイクロミラーを使用して実行された。そして図示されるデバイスは、3mmの直径および、金の上部電極3c、3dを有する2重リング・アクチュエータ3a、3b、を有する。
【0021】
ミラーにの作動特性は、ZYGO白色光干渉計によって測定された。ミラーは、内側アクチュエータに20Vを適用することによって下方へ押され、そして、外側リングに20Vの電圧を適用することによって上方へ押された。ミラーディスクがいずれの場合においても完全に平坦なままであることに注意されたい。これは、ハンドルシリコンウエハの完全な厚みを有するシリコンディスクの高い剛性に起因する。
【0022】
ミラーディスクの高い剛性はまた、3mmよりも非常に大きい直径のミラーの製作がここで提示されることを許容する。形成された構造が、信じられないほど堅牢であることがわかった。したがって、5〜10mmの開口は可能でなければならない。
【0023】
2台のアクチュエータを有するマイクロミラーのための完全な特性は、図4に示される。2台のアクチュエータの各々に20Vの駆動電圧を順番に印加するときに、ミラープレートにとって9.3μmの全ストロークは達成される。ヒステリシスは、PZTベースのアクチュエータの典型的特徴である。フィードバックは、正確な位置取りのために必要とされる。これは、参照レーザーを用いて光学的になされることができる。将来のデザインにおいては、しかしながら、ピエゾ抵抗器は、ミラーの閉回路動作および非常に正確な位置取りを許容するために、アクチュエータの一部であるデバイスシリコンに付加される。マイクロミラーの作動特性は、したがって、外側のアクチュエータ・リングに適用される0〜20Vへの電圧掃引が上方の曲線を生成する一方、内側のリングに対する同じ掃引が下方の曲線を生成する、アクチュエータを提供する。全ストロークは、9μmである。
【0024】
したがって、二重リングのプッシュプル・アクチュエータを用いることによって、20Vで9μmのストロークを達成するマイクロミラーは提示された。ミラーは、SOIウエハのハンドルシリコンから形成される。高い剛性は、作動時に高い平坦性を確実にする。3mm以上の開口を有する大きなミラーは、うまく製作された。このミラーは、ガス分光法のためのファブリーペロー干渉計であるその主な用途のために、非常に適している。
【0025】
図5a〜図5cは、剛体エレメント1とフレーム4との間に連結手段を提供しているリング形の膜2aに基づく、本発明の実施形態を例示する。図5aにおいて、ピエゾ抵抗器5は、圧電アクチュエータ3の下に配置される。したがって、曲がりが提供される同じ位置で膜の曲がりを測定する。
【0026】
図5bは、縁辺部で堅い間、剛体エレメントが薄い中央膜を有するホールまたは中空領域を囲んでいる剛性フレームを有してよいことを示す。
【0027】
図5cは、他のリングが膜2aを成形したことを示すが、しかし、アクチュエータは、円周方向に沿って4つの部分3a1、3a2、3a3、3a4に分割される。本発明の好ましい実施形態によれば、対応する内側アクチュエータ部品は、設けられる。図5cにおいて、ピエゾ抵抗器5として設けられる位置測定手段は、アクチュエータ部分間のギャップに置かれる。分割されたアクチュエータ部分を有する利点は、それらが平行移動に加えて傾斜移動を提供してよく、したがって、剛体エレメントの位置および向きのいくらかの調整または校正を提供してよいということである。
【0028】
図6a、図6bは、本発明の別の実施形態を例示する。剛体エレメント1は、中央開口を有し、そして、図6bに示されるユニットの断面に示しているように、ガラスまたは水晶から製造される光学エレメント17aがそれに固定される。したがって、光計測(例えばファブリーペローフィルタ)に用いられる場合、剛体エレメント1は、関連した波長に適している適切な透過スペクトルを有するエレメント17aを備えてよい。このように、ユニットは、選択した材料に応じて、可視光、近赤外線または紫外線領域において用いられてよい。その一方で、シリコンから製造される剛体エレメント1は、ほぼ1100nmを上回る波長に適している。
【0029】
図7a〜図7gは、図6bに示されるユニットを製造するための生産プロセスを記載する。これらの図面は、製造の異なる段階におけるユニットの断面を示す。
【0030】
図7a、図7bに見ることができるように、このユニットは、上で述べた他の実施形態と同じ出発点を共有する。そして、図1a、図3、図5aに関して述べたように、圧電アクチュエータ・リングを有するSOI構造から始める。そして、デバイス層は、剛体エレメント1として使用される領域からエッチングされる。
【0031】
圧電アクチュエータを担持しているユニットの上部は、それから、図7cに示すように運搬ウエハ20に一時的に結合される。これは、ポリマー21(例えばBrewer ScienceからのWaferBOND)を使用して実行されてよい。膜の領域と同様に中央領域は、それから、図7dに示すように、デバイス層が取り除かれる中央領域の開口、およびデバイス層が損傷を受けてない膜を残して、エッチングで取り除かれる。
【0032】
ガラスまたは水晶層は、それから、例えば図7eに示すようにBCBボンディングを用いて、下からユニットに結合される。ボンディングは、ウエハおよびガラスの接続を永久に保つために十分強くなければならない。そして、BCBボンディングは、比較的低い温度および高い強度の組合せであるため適切である。
【0033】
剛体エレメントの一部を構成している光学エレメントの能動部分17aは、それから、図7fに例示される構造を残して、例えばパウダーブラストによって、残りのガラスまたは水晶から切り離される。
【0034】
一時的な運搬ウエハを取り除いた後、ユニットは終了する。そして、図3に示されるユニットと類似の光ユニットに載置されてよい。しかし、構造化されていないシリコン層10は、剛体エレメント1の透明な部分17aと同じ波長において透明なガラスまたは水晶層でよい。適切な反射防止および反射層は、任意の知られた適切な方法において表面に適用されてよい。
【0035】
本発明を要約することは、したがって、剛体エレメント(レンズ、ミラー、または少なくとも部分的に透明でかつ部分的に反射するウィンドウのような、例えば光学エレメント)を動かすためのアクチュエータに関する。ここで、エレメントは、連結部を提供する曲げ可能な膜を有するフレームに機械的に連結する。アクチュエータエレメントは、フレームとエレメントとの間の前記連結膜上に載置される。膜およびアクチュエータエレメントは、信号発生器から信号を受けるときに、エレメントに動きを提供するのに適している。圧電素子がフレームと剛体エレメントとの間の連結方向に収縮するのに適しているので、好ましくは、アクチュエータエレメントは、電圧の印加で前記連結部を曲げるのに適している前記連結膜上に載置する少なくとも圧電素子で構成される。
【0036】
特に好適な実施形態において、各アクチュエータエレメントは、2つのPZTエレメントによって構成される。第1のPZTエレメントは、フレームの近くの連結部上に載置され、第2のPZTエレメントは、剛体エレメントの近くの連結部上に載置され、そして、それらのうちの一方が剛体エレメントを第1の方向に動かし、他方が剛体エレメントを第1の方向とは反対の方向に動かすように、互いに独立して、または好ましくは交互に作動するように、信号発生器に組み合わされる。
【0037】
本発明の一実施形態において、連結部は、フレームの薄くて円形の部分によって構成され、前記少なくとも1つの圧電素子は、連結部に沿って延びる。好適なバージョンにおいて、2つの圧電素子が、動きの長さを増加させるために上述のように用いられる。
【0038】
いかなる実施形態においても、アクチュエータは、フレームと関連して剛体エレメントの位置のフィードバックを提供するために、位置測定手段を備えてよい。そして、圧電素子3を使用している実施形態では、位置測定手段は、連結部の曲がりをモニタするために連結部上に設けられる圧電抵抗素子5であることも好ましい。圧電抵抗素子5は、圧電アクチュエータ3の下に、または連結部が曲げられる他の位置に配置されてよい。
【0039】
ピエゾ抵抗器は、イオン注入およびそれに続くアニーリングによって、シリコン・オン・インシュレータ層内に製造されることができる。このドーピング手順については、pn接合が生成され得て、それは抵抗器のジオメトリを定める。抵抗器は、後のプロセスステップにおいて表面上のメタライゼーション層と接続される、付加的な、より高いドーピング領域と接触することができる。ピエゾ抵抗器を製作するプロセスステップは、圧電層のための下部電極を堆積させる前に実行することができる。この種のドーピングしたピエゾ抵抗器は、応力センサとして用いられて、通常4つの曲げ可能な抵抗器を有するホイートストンブリッジ構成に組み立てられる。機械構造およびプロセス許容度における利用可能な空間に依存して、他の構成(例えばハーフブリッジ)もまた可能である。
【0040】
ピエゾ抵抗器の代わりに、光学的または容量的解決手段は、剛体エレメントの位置を測定するために用いてよい。
【0041】
図3に例示するように、本発明はまた、上述によるアクチュエータを含む干渉計(特にファブリーペロー干渉計)に関する。剛体エレメントは、少なくとも部分的に反射する反射面、第2の反射面を含むハウジング内に取り付けられるフレーム、少なくとも部分的に透明なボディ上に設けられる少なくとも1つの反射面、および、互いに間隔をもって配置されてファブリーペローエレメントを構成する2つの反射面を有する。そして、その間隔は、前記アクチュエータエレメントによって誘発される動きによって調整される。
【0042】
本発明はまた、アクチュエータを含む反射デバイスに関する。ここで、剛体エレメントは、ミラーを構成するか、または、選択した波長領域の範囲内で少なくとも部分的に透明である。そして、圧電アクチュエータは、不良位置合せを調整するために、または選択した方向に光を導くために、剛体エレメントを傾けることが可能な個々に制御される円形の部分に分割される。
【0043】
参照
[1] “Taking piezoelectric microsystems from the laboratory to production”, H. Rader, F. Tyholdt, W. Booij, F. Calame, N. P. Ostbo, R. Bredesen, K. Prume, G. Rijnders, and P. Muralt, J Electroceram (2007) 19:357−362
[2] “Infrared detection of carbon monoxide with a micromechanically tunable silicon Fabry−Perot filter”, Hakon Sagberg, Alain Ferber, Karl Henrik Haugholt, and Ib−Rune Johansen, IEEE Conf. on Optical MEMS (2005)
[3] “Tunable infrared detector with integrated micromachined Fabry−Perot filter”, Norbert Neumann, Martin Ebermann, Steffen Kurth, and Karla Hiller, J. Micro/Nanolith. MEMS MOEMS 7, 021004 (2008)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体エレメント(例えば光学エレメント)を動かすためのアクチュエータユニットであって、前記エレメントは、曲げ可能な膜を有するフレームに機械的に連結され、前記膜は、前記エレメントを本質的に囲み、前記フレームと前記エレメントとの間で前記膜上に少なくとも1つのアクチュエータエレメントが実質的に載置され、前記膜および前記アクチュエータエレメントは、前記膜を曲げることによって信号発生器から信号を受けたときに、前記エレメントに動きを提供するのに適している、アクチュエータユニット。
【請求項2】
前記アクチュエータエレメントは、信号の適用で前記膜を曲げるのに適している前記膜上に載置された少なくとも1つの圧電素子によって構成される、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
各アクチュエータエレメントは、2つの圧電素子によって構成され、第1の圧電素子は、前記フレームの近くで前記連結部上に載置され、第2の圧電素子は、前記剛体エレメントの近くで前記膜上に載置され、したがって、前記剛体エレメントを上下両方に引くことが可能である、請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記膜は、前記フレームの薄くて円形の部分によって構成され、少なくとも1つのリング形の前記圧電素子は、前記剛体エレメントの周りで前記膜に沿って延びる、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記リング形の圧電素子は、多くの個々に制御される部分に分割される、請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記膜は、前記剛体エレメントを囲む前記膜に沿って配分される多くのアクチュエータエレメントを備える、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記フレームと関連して前記剛体エレメントの位置をモニタする位置測定手段を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記位置測定手段は、前記連結部の曲がりを示すような位置であり、前記光学エレメントが前記フレームと関連する場合のその位置の前記連結部上に適用されるピエゾ抵抗器を含む、請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記位置測定手段は、前記フレームと関連する前記光学エレメントの場合に、前記位置を測定するのに適した容量的または光学的センサを含む、請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)アクチュエータである、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記剛体エレメントは、少なくとも部分的に反射する反射面、第2の反射面を含むハウジング内に取り付けられるフレーム、少なくとも部分的に透明なボディ上に設けられる少なくとも1つの反射面、および、互いに間隔をもって配置されてファブリーペローエレメントを構成する2つの反射面を有し、前記間隔は、前記アクチュエータエレメントによって誘発される動きによって調整される、請求項1に記載のアクチュエータを含む干渉計。
【請求項12】
前記剛体エレメントはミラーを含む、請求項1に記載のアクチュエータを含む反射デバイス。
【請求項1】
剛体エレメント(例えば光学エレメント)を動かすためのアクチュエータユニットであって、前記エレメントは、曲げ可能な膜を有するフレームに機械的に連結され、前記膜は、前記エレメントを本質的に囲み、前記フレームと前記エレメントとの間で前記膜上に少なくとも1つのアクチュエータエレメントが実質的に載置され、前記膜および前記アクチュエータエレメントは、前記膜を曲げることによって信号発生器から信号を受けたときに、前記エレメントに動きを提供するのに適している、アクチュエータユニット。
【請求項2】
前記アクチュエータエレメントは、信号の適用で前記膜を曲げるのに適している前記膜上に載置された少なくとも1つの圧電素子によって構成される、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
各アクチュエータエレメントは、2つの圧電素子によって構成され、第1の圧電素子は、前記フレームの近くで前記連結部上に載置され、第2の圧電素子は、前記剛体エレメントの近くで前記膜上に載置され、したがって、前記剛体エレメントを上下両方に引くことが可能である、請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記膜は、前記フレームの薄くて円形の部分によって構成され、少なくとも1つのリング形の前記圧電素子は、前記剛体エレメントの周りで前記膜に沿って延びる、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記リング形の圧電素子は、多くの個々に制御される部分に分割される、請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記膜は、前記剛体エレメントを囲む前記膜に沿って配分される多くのアクチュエータエレメントを備える、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記フレームと関連して前記剛体エレメントの位置をモニタする位置測定手段を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記位置測定手段は、前記連結部の曲がりを示すような位置であり、前記光学エレメントが前記フレームと関連する場合のその位置の前記連結部上に適用されるピエゾ抵抗器を含む、請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記位置測定手段は、前記フレームと関連する前記光学エレメントの場合に、前記位置を測定するのに適した容量的または光学的センサを含む、請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)アクチュエータである、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記剛体エレメントは、少なくとも部分的に反射する反射面、第2の反射面を含むハウジング内に取り付けられるフレーム、少なくとも部分的に透明なボディ上に設けられる少なくとも1つの反射面、および、互いに間隔をもって配置されてファブリーペローエレメントを構成する2つの反射面を有し、前記間隔は、前記アクチュエータエレメントによって誘発される動きによって調整される、請求項1に記載のアクチュエータを含む干渉計。
【請求項12】
前記剛体エレメントはミラーを含む、請求項1に記載のアクチュエータを含む反射デバイス。
【図1a】
【図1b】
【図2a−2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【図1b】
【図2a−2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【公表番号】特表2013−505471(P2013−505471A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529273(P2012−529273)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063628
【国際公開番号】WO2011/033028
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512028954)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063628
【国際公開番号】WO2011/033028
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512028954)
【Fターム(参考)】
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