説明

マイクロ波加熱装置

本発明は、300MHz〜5.8GHzの周波数のマイクロ波を照射して、乾燥物品に入力結合させるための複数のマイクロ波発生器を備えた、特に、セラミック製の部材及び成形部材のためのマイクロ波加熱装置と、そのようなマイクロ波加熱装置1,2を使用して、特に、セラミック製の部材又は成形部材を加熱する方法に関し、加熱物品に対して異なるマイクロ波周波数帯域を同時に使用することを特徴とする。特に、それによって、例えば、セラミック製部材、特に、ディーゼル粒子フィルターの均一で張力を生じさせない乾燥が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マイクロ波によるセラミック製の部材及び成形部材の乾燥などのための、有利には、そのような乾燥機器を用いた、マイクロ波加熱装置と加熱物品の加熱方法に関する。
【0002】
工業用乾燥機器及びプロセス分野においてセラミック材料にマイクロ波を照射する際のマイクロ波技術の性能が益々向上するとともに、制御プロセスの自動化が進展することによって、そのような技術の利用領域が常に拡大している。従って、本発明の中心は、様々な材料、特に、セラミック材料と鉱物製絶縁部材を処理するための工業用乾燥方法及びマイクロ波加熱装置である。
【背景技術】
【0003】
照射された物体の表面を貫通して、その体積内に熱を発生させる形で入力結合するマイクロ波の従来から長く知られた特別な物理特性は、固体又は液体を素早く加熱するために使用することと、工業用乾燥プロセスで使用することとが有利であることの根拠となっている。
【0004】
物品の中心にまでエネルギーを投入することは、従来通り熱を発生させる通常の乾燥方法では、乾燥すべき物品の表層から内部までの温度勾配が緩慢にしか拡大しないので、一般的に非常に長い時間がかかっていた。それと反対に、マイクロ波は、セラミック材料などの良好な絶縁物品では、比較的大きな浸入度を有し、また、直に入力結合することによって、照射された体積を均一に加熱することとなる。
【0005】
この場合、別の従来の乾燥方法では必然的に起こる、乾燥物品の表面に熱の印加が集中するなどの、処理すべき乾燥物品の外側表面が過熱する虞は、大幅に排除される。
【0006】
即ち、マイクロ波乾燥機は、基本的に、双極子モーメント、即ち、大きな誘電率を有する水性成分又は溶媒を含有する部材又は成形部品を乾燥させる課題の全てに対して好適である。
【0007】
そのため、このようなマイクロ波による乾燥の利点は、大きなロット数の場合に必要となる、微粒子フィルターとも呼ばれる煤粒子フィルター又はディーゼル粒子フィルター(RPF)の製造プロセスのためにも、工業的に広範囲に使用されている。このような微細なハニカム形状の構造、有利には、円筒形の幾何学形状を有する大型のセラミック製構成部品が、自動車産業において大きなロット数の場合に必要とされている。そのような構成部品は、大抵炭化珪素(SiC)又は炭化珪素の含有量の多いセラミック製混合物から構成されている。そのようなセラミック製成形部品の乾燥には、様々な構造形式と様々な加熱システム(ガス又は電気加熱部)を備えた乾燥炉が使用されている。この場合、マイクロ波炉は、前述したマイクロ波ビームの有利な特性のために益々重要性を増している。
【0008】
所定の使用目的のために用いられる、乾燥物品を一括して熱処理(バッチ処理)するためのマイクロ波チェンバーキルンの他に、セラミック材料を熱処理するための連続運転式乾燥設備が特に頻繁に使用されている。そこでは、様々な課題のために使用される乾燥方法は、様々な設備コンポーネントの配置構成、制御及びパラメータ設定によって実現されている。連続運転炉では、ベルトコンベヤ上の乾燥物品は、大抵複数の加熱ゾーンを通して移送されており、乾燥時間は、ベルトの速度によって制御することが可能である。加熱ゾーン内には、有利には、ベルトコンベヤの上と下に、マイクロ波発生器が配置されており、その乾燥ゾーンに作用するアンテナを用いて、乾燥物品にマイクロ波を照射している。この場合、例えば、微粒子フィルターの本体などの乾燥物品は、乾燥区間上において体積全体を出来る限り均一に加熱される。
【0009】
更に、そのようなマイクロ波乾燥機は、多くの場合、追加の熱風噴射システムと、それに対応して乾燥プロセスを支援するとともに、発生した蒸気を排出するための吸引機器とを備えている。
【0010】
乾燥ゾーンにおいて制御された形の湿潤雰囲気を作り出すことを役割とする更に別の補助機器として、様々な構造形態で入手可能な加湿システムを設置することができる。加湿によって、表面の過剰な乾燥に対抗して作用させており、そのような措置が無いと、影響の受け易いセラミックの表面に容易に張力が発生したり、亀裂が生じる可能性が有る。
【0011】
そのようなハイブリッド式乾燥設備とも呼ばれる連続運転炉は、熱源として、マイクロ波の他に、電気又はガスで動作することが可能な更に別の追加の加熱素子又は熱源を備えることもできる。
【0012】
しかし、これらの周知の工業用マイクロ波乾燥設備で使用されている乾燥方法は、電磁界分布の均一性と体積内における発熱量密度において重大な欠点も持っている。それは、ここで考察すべき大きな体積のセラミック製成形部材に関して特に不利な作用効果を持っており、特に、ディーゼル粒子フィルターでは、フィルター本体の寿命の低下などの望ましくない品質の劣化を生じさせるとともに、そのフィルター作用を損なわせて、その利用可能性を狭めることとなる。
【0013】
周知のマイクロ波乾燥装置で度々起こる、乾燥物品、即ち、セラミック製本体とその表面の亀裂、張力及び変形を防止するためには、照射するマイクロ波によって、乾燥物品の体積内に出来る限り均一に熱を加える必要が有る。従って、乾燥区間全体に渡ってマイクロ波電磁界を平均化して、出来る限り均一な電磁界分布とすることによって、そのような目的を達成することが試みられてきた。追加の反射器配列や特殊なアンテナ構造などの所定の措置を用いて、マイクロ波電磁界の均一性と安定性を改善して、運び込まれて来るセラミック製本体の全体に対する均一な乾燥プロセスを実現しようとしている。
【0014】
そのような乾燥の欠陥を防止するために、複数のマイクロ波反射器を所定の放射角で乾燥窯内の予め決められた位置に配置するか、或いは個々の乾燥ゾーンに分散して配置することも提案されている。それらの周知の措置に伴う、乾燥物品への電磁界分布の均一化と集束のための小さくない追加の設備的な負担に対して、乾燥プロセスでの限定された改善しか得られていない。特許文献1により、水分含有量が少なくとも70%である多湿の周囲環境内において、触媒担体として構成された自動車排気ガス清浄化システム用セラミック製ハニカム構造体の乾燥プロセスを行うと同時にマイクロ波を照射する更に別の方法が周知である。
【0015】
炉内の空気中の高い水分含有量は、異なる大きさの収縮過程と亀裂及び皺の発生を防止することを目指している。しかし、この周知の解決策では、大きな湿気投入量が、望ましくない長い乾燥時間を引き起こすとともに、乾燥プロセスのために必要な発熱量を増大させてもいる。
【0016】
特許文献2に開示された装置では、乾燥窯内の乾燥物品の位置の分布と姿勢をセンサーで検出して、配置された多くのマイクロ波発生器のマイクロ波照射エネルギー及び/又は照射方向を制御するために使用することによって、セラミック製対象物の乾燥プロセスを目的通り制御するような方法の改善が試みられている。この場合、マイクロ波発生器の使用周波数は、300MHz〜300GHzの周波数帯域から選定されている。
【0017】
この提案されている方法は、負担のかかる信号処理と、監視センサーと関連する制御電子機器とを必要とする。この場合に見込まれることは、そのような熱と湿気が加えられた動作環境において、監視すべきセンサーを動作させて、マイクロ波発生器を制御する際に故障が頻繁に起こることを考慮しなければならないことである。その結果、この解決策の高い設備要件の他に、長い動作期間に渡ってのセンサーシステム(画像認識)の信頼性と機能性に疑念も生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】ドイツ特許公開第10201299号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第10353784号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上のことから、本発明の課題は、周知の方法及び乾燥装置の欠点を防止するとともに、特に、セラミック製乾燥物品の体積内において、出来る限り張力を生じさせない均一な乾燥を実現することが可能なマイクロ波加熱方法及びマイクロ波加熱装置を提案することである。しかし、この場合、コストを削減するために、使用する乾燥装置で必要な乾燥時間も最適化するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題は、請求項1と請求項6の特徴によって解決される。各従属請求項には、本発明の更に別の有利な実施形態が記載されている。
【0021】
本発明では、処理すべき乾燥物品に対して、一つ以上のマイクロ波発生器によって、国際的に許されたマイクロ波周波数(ISM周波数)の上方の周波数帯の第一のマイクロ波周波数を用いて照射し、それと同時に、或いはそれに続いて、一つ以上のマイクロ波発生器によって、国際的に許された下方の周波数帯の下方の周波数帯域の第二の周波数を用いて照射するように構成された一つ以上のマイクロ波発生器を備えたマイクロ波加熱装置とマイクロ波加熱方法を提示している。この場合、上方の周波数帯域の周波数を使用することによって、マイクロ波の浸入度は浅いが均一な電磁界分布が実現されるとともに、下方の周波数帯域の周波数を照射に使用することによって、浸入度が深く、体積内の深い層での良好な入力結合が実現されることとなる。
【0022】
実際に周知の全てのマイクロ波乾燥装置では、2.45GHzの周波数、即ち、広く普及しているマイクロ波家電製品と同じ周波数で動作するマイクロ波発生器が使用されている。このISM(産業科学医療用)周波数は、世界中で加熱目的のために許されたマイクロ波周波数である。
【0023】
前述した通り、そのような周波数を使用した場合の乾燥プロセスは、満足な結果を提供せず、幾つかの難点と関連しており、それは、特に、セラミック製部材内へのマイクロ波の浸入度が浅いことによって生じるものである。浸入度は、加熱すべき材料の体積内での熱の発生場所に関する重要な尺度であることが分かっている。しかし、内部に温度分布を発生させる場合には、乾燥物品の大きさと幾何学形状も決定的な役割を果たす。加熱すべき材料の層の厚さに関する内部熱源の分布が使用するマイクロ波周波数によって影響を受けるという事実にもとづき、本発明では、加熱すべき乾燥物品に一つ以上の異なるマイクロ波周波数、有利には、2.45GHz以上の高い周波数と1000MHz以下の低い周波数を照射することを提案している。固体内に入力結合させた場合のマイクロ波ビームの挙動の研究は、マイクロ波ビームの浸入度が周波数の上昇と逆比例して変化することを明らかにしている。即ち、使用するビームの周波数が高くなる程、浸入度が浅くなる。更に、これと関連して、乾燥物品の誘電特性が同じ場合、使用するマイクロ波ビームの周波数が高くなる程、乾燥物品内の熱の発生が、より大きく表面領域内に集中することが分かっている。
【0024】
特に、本発明にもとづき、このようなメカニズムをマイクロ波乾燥装置で使用することは、セラミック製乾燥物品に順次異なる周波数の所定のマイクロ波と本発明の方法により制御したマイクロ波電力を照射することによって、従来から周知の方法の欠点を防止した新しい効果的な乾燥方法を実現することを可能としている。
【0025】
本発明によるマイクロ波乾燥装置は、有利には、上方と下方の周波数帯域の異なる周波数を乾燥物品に照射することができるように、それぞれ技術的に構成された複数のマイクロ波発生器を備えている。
【0026】
この場合、ここで提案している乾燥プロセスを支援するための乾燥装置は、有利には、更に別の設備コンポーネントによって補完、支援することができる。即ち、乾燥プロセスの支援と湿気の排出のための吸引機器を備えた周知の熱風噴射システムを更に配置することが有利であることが分かっている。
【0027】
他方において、連続運転炉又は乾燥窯の乾燥ゾーンに一つ以上の加湿システムを追加することは、湿潤雰囲気を制御しつつ加工物を均一に乾燥することとなる。即ち、特に、セラミック製成形部品の表面での亀裂と変形の発生を最小化するとともに、著しい品質改善を実現することができる。
【0028】
また、マイクロ波乾燥炉の実際の構造において、常に出来る限り乾燥物品の全面への照射を心がけるるとともに、炉空間内で発生するマイクロ波の反射を考慮すべきである。複数のマイクロ波発生器を配置した場合、加熱物品を取り囲むが、特別な措置が無いと非常に不均一に分布する複雑なマイクロ波電磁界がしばしば発生する。それは、マイクロ波ビームの特性と、マイクロ波共振器として動作する炉空間の特殊な形状及び形態とにもとづくものである。
【0029】
本発明の有利な改善構成は、請求項、明細書及び図面から明らかとなる。明細書の冒頭で述べた特徴及び複数の特徴の組合せの利点は、単なる例であり、それに代わる、或いはそれに追加する作用効果を奏することもでき、そのような利点は、必ずしも本発明の実施構成によって実現されるものではない。更に別の特徴は、図面、特に、図示されている幾何学形状、複数の構成部品の互いの相対的なサイズ及びそれらの配置構成と作用関係から読み取ることができる。本発明の異なる実施構成の特徴又は異なる請求項の特徴の組合せは、同じく請求項に示された参照関係から逸脱することも可能であり、それを奨励するものである。これは、そのような別個の図面に図示されている、或いはそれに対する記載で述べられている特徴にも言えることである。これらの特徴は、異なる請求項の特徴と組み合わせることもできる。同様に、請求項に記載された特徴が、本発明の更に別の実施構成から抜け落ちている可能性も有る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による連続運転式乾燥炉1としてのマイクロ波炉の図
【図2】本発明によるチェンバーキルン2として構成されたマイクロ波炉の図
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで、具体的な実施例にもとづき、本発明を詳しく説明する。
【0032】
既に従来技術で開示されている通り、セラミック製成形部材を乾燥するための多くのマイクロ波乾燥装置が様々な実施形態により知られている。特に、衛生技術分野の構造グループや自動車産業の煤粒子フィルター用の炭化珪素(SiC)から成る特に重要なセラミック製フィルターカートリッジなどの幾何学形状が大きい乾燥物品では、2.45GHzの周波数のマイクロ波発生器が使用されている。この場合、表面領域の部分的な過熱と体積内の不均一な温度勾配によって起こる乾燥物品の品質不良(亀裂や変形の発生等)を既に述べた措置によって克服することが試みられてきた。
【0033】
また、この実施例でベースとなるマイクロ波乾燥装置(図1)は、先ずは周知の設備形態をベースとするものではなく、セラミック製成形部材用の連続的に動作する連続運転式乾燥炉1として構成されている。乾燥炉での乾燥物品の投入と搬出のために、搬入される乾燥物品の種類と幾何学形状に合った吸収ゾーン6,12が更に配備されている。しかし、二つの吸収ゾーンは、特に、炉の入口領域12と出口領域6から炉の周囲環境へのマイクロ波ビームの漏れも防止すべきである。既存の大きい体積の物品の場合、或いは速い生産速度に対して、有利には、反射ゲートと吸収ゲートを組み合せたものを入口領域と出口領域に使用することも可能である。
【0034】
高い方の周波数と低い方の周波数のマイクロ波の入力結合は、乾燥窯の天井と底部領域に挿入された複数の入力結合素子3と4、例えば、出力周波数と適合するスロットアンテナによって行われ、その結果、有利には、(段階的な動作においても)マイクロ波の均一な分布が保証されることとなる。
【0035】
特に均一なマイクロ波電磁界分布を実現するために、乾燥窯11の天井領域に複数の磁束ガイド8を配置するのが有利である。
【0036】
図1に図示されている通り、乾燥物品は、連続的なコンベヤベルト7を用いて、炉の乾燥窯11を通して移送される。この場合、乾燥窯では、乾燥目的に応じて、所定の量の新鮮な空気が絶えず乾燥プロセスで発生した湿気の搬出口5,9に供給されて、出口10で吸引されている。
【0037】
図2には、本発明の別の実施形態のチェンバーキルン2が図示されている。ここでは、乾燥物品は、乾燥窯13内に配置された回転テーブル14上に設置されて、家庭用電子レンジと比較できる形で乾燥中回転されている。本発明による異なる周波数の入力結合は、入力結合素子3と4によって行われる。このチェンバーキルンも、湿気を排出するための連続的な給気口と排気口9,10を必要としている。
【0038】
大きい体積の乾燥物品としては、微粒子フィルター用の円筒形のフィルターカートリッジであるセラミック製成形部材が使用される。そのハニカム形状のセル構造は、材料の張力、亀裂又は破壊に繋がる可能性が有り、利用可能性を損なうこととなる乾燥中の大きな温度差と湿度差に対して特に敏感である。高い方の周波数を発生させるマイクロ波発生器と、低い方の周波数を発生させるマイクロ波発生器は、個々の乾燥ゾーンのコンベヤベルトの上と下に配置されている。
【0039】
高い方の周波数のマイクロ波発生器は、2.45GHzの周波数で動作する。この周波数帯域では、マイクロ波は、表面近くの領域に入力結合して、そのことは、その領域内での熱の発生を強めている。
【0040】
例えば、好適な誘電体を選定することによって、マイクロ波周波数を2.45GHzから5.8GHzに上昇させた場合、そのビームの浸入度が浅くなるだけでなく、乾燥物品の表面直下の発熱量密度も増大する。
【0041】
それと反対に、特に、900MHz〜1000MHzの周波数帯域のマイクロ波は、乾燥すべきセラミック材料への浸入度が遥かに深くなることが分かっている。そのため、乾燥物品の体積内部への熱投入量が増大して、それによって、乾燥プロセスが著しく加速されることとなる。
【0042】
しかし、そのような下方の許された周波数帯域のマイクロ波電磁界は、明らかに電磁界分布の不均一性を増大させ、その結果、所定の場合において、乾燥窯内に好適な反射器を配置するのが有利である。
【0043】
この実施例では、低い方の周波数のマイクロ波発生器は、915MHzの周波数で動作し、主に連続運転炉の後方部分に設置される。
【0044】
本発明にもとづき2.45GHzと915MHzの二つの異なる周波数を組み合わせて使用することによって、乾燥すべきセラミック製成形部材に入力結合させたマイクロ波の異なる浸入度がそれぞれ実現されている。そうすることによって、セラミック製ハニカムフィルターとして構成された乾燥物品の表面近くの領域と体積内部の両方において実現される発熱量密度は、ほぼ均一な温度勾配と、そのため連続した速い、張力を発生させない乾燥プロセスとを実現するものである。
【0045】
浸入度と、従って、使用するマイクロ波周波数とは、加熱すべき材料の体積内に発生する熱の幾何学的な分布に関する重要な尺度であることが分かっているので、内部に温度分布が発生する場合には、乾燥物品の大きさと幾何学形状も、顧慮すべき役割を果たすこととなる。
【0046】
即ち、本発明では、材料の所定の幾何学形状に適した周波数を選定することによって非常に有効に、かつ乾燥プロセスに関して非常に有利にマイクロ波エネルギーを活用することができる。
【0047】
乾燥ゾーン内において支配的な周囲環境の変更可能な圧力レベルなどの更に別の技術的措置と関連して、困難な乾燥させる課題自体も比較的低い温度で容易に実行することができる。
【0048】
本発明によるマイクロ波乾燥技術では、正に高いエネルギー密度の特別なマイクロ波電磁界を実現することができるので、特に、省スペースのコンパクトな乾燥装置の構造を実現することが可能である。
【0049】
このような複数の周波数による方法を用いて、同じ、或いは乾燥形態に合ったマイクロ波エネルギー量が、物品の全ての層と深い所に有る領域にも直に素早く加えられることとなる。それは、乾燥すべきセラミック製物品において、特に、その物品自体が化学的かつ物理的に均一なままであり、その構造が維持されるという利点を有する。
【0050】
ここで示した本発明によるマイクロ波乾燥方法とここで提案したマイクロ波乾燥装置によって、周知の方法及び設備と比べて、より速い生産速度、即ち、より短い乾燥時間を可能にするとともに、ほとんど張力と亀裂が生じない物品が実現される、特に大きい体積のセラミック製成形部材の乾燥処理が実現されることとなる。
【0051】
セラミック製乾燥物品の表面の変形又は別の起伏及び品質の欠陥も、乾燥プロセスにおいて本発明にもとづき複数の周波数のマイクロ波により処理することによって防止され、そのことは、同じくコストを大幅に削減することとなる。
【0052】
本発明によるマイクロ波加熱装置及び本発明による方法は、例えば、繊維複合材料又は木材から成る構造部品を製造する際の予備成形品の加熱や、異なる物質の誘導加熱式硬化、例えば、架橋などのセラミックと異なる材料の加熱及び乾燥以外の目的に使用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 連続運転炉として構成されたマイクロ波乾燥炉
2 チェンバーキルンとして構成されたマイクロ波乾燥炉
3 2.45GHzのマイクロ波入力結合素子
4 915MHzのマイクロ波入力結合素子
5 熱風/混合気動作用給気/換気口
6 マイクロ波ビームの漏れを防止するための吸収ゾーン
7 (簡易式又は可逆式)コンベヤベルト
8 マイクロ波用磁束ガイド
9 給気口
10 排気口
11 連続運転炉のマイクロ波乾燥窯
12 吸収ゾーン
13 任意の形状の金属製チェンバーキルンのマイクロ波乾燥窯
14 乾燥物品の回転テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
300MHz〜5.8GHzの周波数のマイクロ波を照射して加熱物品に入力結合させるための複数のマイクロ波発生器を備えたマイクロ波加熱装置において、
一つ以上のマイクロ波発生器が、上方のマイクロ波周波数帯域の第一の周波数のマイクロ波を照射して、加熱物品内への浸入度が浅くなるように構成されており、一つ以上のマイクロ波発生器が、下方のマイクロ波周波数帯域の第二の周波数のマイクロ波を照射して、加熱物品内への浸入度が深くなるように構成されていることを特徴とするマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
上方のマイクロ波周波数帯域の第一の周波数が、1GHzよりも高く、有利には、2.45GHz〜5.8GHzの帯域内に有り、下方のマイクロ波周波数帯域の第二の周波数が、1GHzよりも低く、有利には、900MHz〜1000MHzの帯域内に有ることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
一つ以上の乾燥モジュールを備えたマイクロ波連続運転炉(1)として構成されているか、或いは個別のマイクロ波チェンバーキルンとして構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項4】
当該のマイクロ波炉が、複数の周波数のマイクロ波による乾燥を支援するとともに、発生する蒸気を良好に排出するために、吸引機器を備えた追加の熱風噴射システム及び/又は制御された形の湿潤雰囲気を提供するための少なくとも一つの加湿システムを有するマイクロ波ハイブリッド炉として構成されていることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項5】
有利には、ガス加熱機器及び/又は電気動作式加熱素子として構成された従来の構造形式の一つ以上の追加の加熱機器が、支援及び補完のために配置されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項6】
有利には、300MHz〜5.8GHzの帯域の世界中で加熱目的のために許されたISM周波数の一つの周波数帯域のマイクロ波を用いた処理によって加熱物品を加熱する方法において、
異なる浸入度を実現するために、有利には、2.45〜5.8GHzの上方のマイクロ波周波数帯域の第一の周波数のマイクロ波を用いて、所定の時間間隔に渡って加熱物品を処理し、それと同時に、或いはそれに続けて、有利には、900MHz〜1000MHzの下方のマイクロ波周波数帯域の第二の周波数のマイクロ波を用いて、所定の時間間隔に渡って加熱物品を処理することを特徴とする方法。
【請求項7】
当該の処理すべき加熱物品には、有利には、煤粒子フィルター又はディーゼル粒子フィルター用のセラミック製構造体又はフィルター部材として構成された工業用セラミック分野の部品又は成形部材が含まれることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
当該の煤粒子フィルター又はディーゼル粒子フィルターを製造するためのセラミック製構造体又はフィルター部材が、主要な成分として炭化珪素(SiC)を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか一つに記載の方法により衛生用セラミック分野のセラミック材料を含むセラミック製の部材又は成形部材を乾燥する方法において、
異なる浸入度を実現するために、有利には、2.45〜5.8GHzの上方のマイクロ波周波数帯域の第一の周波数のマイクロ波を用いて、所定の時間間隔に渡って加熱物品を処理し、それと同時に、或いはそれに続けて、有利には、900MHz〜1000MHzの下方のマイクロ波周波数帯域の第二の周波数のマイクロ波を用いて、所定の時間間隔に渡って加熱物品を処理するとともに、更に別のマイクロ波周波数のマイクロ波による処理を行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
当該の処理すべき加熱物品が、繊維複合材料又は木材から成る構成部品用の予備成形品又は予備成形品の一部であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
当該の処理すべき加熱物品が、架橋又は硬化すべきポリマー、接着剤、樹脂又は繊維であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
異なる周波数又は周波数帯域のマイクロ波を任意の時間的な相互間隔及び/又は空間的な相互間隔で、同時に、順番に、或いは周波数の順番を任意に変更して、乾燥すべきセラミック製の部材又は成形部材に作用させることを特徴とする請求項6から11までのいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511980(P2010−511980A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539657(P2009−539657)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010530
【国際公開番号】WO2008/067996
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509159218)フリッケ・ウント・マラー・マイクロウェーブ・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】