説明

マイクロ波検出器用アンテナ及びマイクロ波検出器

【課題】 検出対象物が垂直偏波を出射するタイプと水平偏波を出射するタイプが混在する場合において、簡易で小型な構成のアンテナで確実に検出できること
【解決手段】 矩形状の基板11の裏面の全面に導体膜が成膜されてグランドが構成され、表面に所定形状の導体パターンを形成する。まず、基板の長手方向に沿って、正方形のパッチアンテナ放射素子12を2個形成し、このパッチアンテナ放射素子12を、アンテナの設置時における垂直/水平方向に対して、その傾斜角度を27度になるように傾斜配置した。これにより、水平利得と垂直利得が共に適度な(受信可能な)レベルになり、いずれのタイプの検出対象物にも対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両速度測定装置から送出されるマイクロ波を検知して報知するマイクロ波検出器に用いられるマイクロ波検出器用アンテナ及びマイクロ波検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両速度測定装置から送出されるマイクロ波を検知して報知するマイクロ波検出器が知られている。このマイクロ波検出器は、当該マイクロ波を受信するためのアンテナが必須の構成となり、例えば特許文献1に開示されたようにホーンアンテナからなる立体アンテナが用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−341113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のホーンアンテナの場合、垂直方向のアンテナ利得は7dBあるのに対し、水平方向のアンテナ利得は−16dB程度となる(数値はいずれも一例である)。従って、従来のホーンアンテナは、垂直偏波を受信するのに適しているが、水平偏波を十分に受信することできない。
【0005】
一方、車両速度測定装置から放射されるマイクロ波は、従来は垂直偏波のものが主流であったので、上記のホーンアンテナにより確実に目的のマイクロ波を受信することができた。しかし、最近では、水平偏波のマイクロ波を利用した車両速度測定装置も出現しており、従来のホーンアンテナのままでは、マイクロ波の受信に基づいて当該車両速度測定装置を検出できないおそれがある。
【0006】
そこで、係る問題を解決するため、たとえば、図1(a)に示すように、ホーンアンテナ1の開口部に、整波板2を配置した構成を採り、水平偏波のマイクロ波も受信できるようにすることが考えられる。この整波板2は、図1(b)に示すように、帯板状のプリント基板2aを用い、その表面に斜め45度に傾斜する導電性のストリップ2bを形成したパターンとする。
【0007】
係る構成を採ると、上記のホーンアンテナ1(垂直利得:7dB,水平利得:−16dB)を用いた場合のアンテナ利得は、例えば、垂直方向が6dBで水平方向が−3dB程度に改善され、水平偏波のマイクロ波も受信可能となる。
【0008】
しかしながら、上記の構成では、ホーンアンテナ1と、整波板2の2つの部材が必要となり、部品点数の増加を招くと共に、整波板2をホーンアンテナ1に対して位置あわせをしつつ取り付ける作業が繁雑となる。
【0009】
本発明は、検出対象物(目標物)が、車両速度測定装置のように垂直偏波を出射するタイプと水平偏波を出射するタイプが混在するような特殊なものを、簡易で小型な構成のもので検出することができるマイクロ波検出器用アンテナ及びマイクロ波検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明に係るマイクロ波検出器用アンテナ、(1)車両速度測定装置から送出されるマイクロ波を検知して報知するマイクロ波検出器に用いられるマイクロ波検出器用アンテナであって、裏面がグランドとなる導体パターンが形成された基板の表面に、矩形状のパッチアンテナ放射素子を設け、そのパッチアンテナ放射素子を構成する各辺が、アンテナの設置時における垂直或いは水平方向に対して、傾斜配置するパターンとした。
【0011】
係る構成を採ることで、水平偏波と垂直偏波のいずれに対しても適度な利得を発揮でき、水平偏波のマイクロ波を出射する車両速度測定装置と、垂直偏波のマイクロ波を出射する車両速度測定装置のいずれに対しても検出することができるアンテナとなる。よって、整波板を用いる必要が無く、1枚のアンテナ素子で構成できるので、小型・薄型化が図れる。
【0012】
より具体的な構成の一態様としては、(2)パッチアンテナ放射素子は、2個を横一列に配置すると共に、各パッチアンテナ放射素子の前記傾斜配置させる角度は、26度以上28度以下としたり、(3)前記パッチアンテナ放射素子は、複数有し、各パッチアンテナ放射素子は、M行・N列(M,Nは、1以上の整数で同じ値でも良い)に整列配置されるようにしたりすることかできる。上記傾斜配置させる際の角度は、最も望ましいのは27度である。ただし、種々の速度測定装置で実測した結果、27度±10度の範囲では、垂直偏波・水平偏波の双方のマイクロ波を発するいずれの速度測定装置においても、速度測定装置に車両の速度が測定される以前の適切な警報距離での警報が可能な感度が得られる。特に、26度以上28度以下では、垂直偏波・水平偏波の双方の速度測定装置について感度のバランスがよく、好適な警報距離での警報が可能な感度を得られる。
【0013】
(4)本発明のマイクロ波検出器は、(1)から(3)のいずれかに記載のマイクロ波検出器用アンテナと、そのマイクロ波検出器用アンテナで受信した受信信号に基づき、警報の有無を判断する判断手段と、その判断手段の判断結果に基づき警報を発する警報手段と、を備えて構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、矩形状のパッチアンテナ放射素子を傾斜配置させたことで、垂直偏波と水平偏波のいずれにも適度な利得を発揮することができ、検出対象物が、車両速度測定装置のように垂直偏波を出射するタイプと水平偏波を出射するタイプが混在するような特殊なものを、1枚のパッチアンテナという簡易で小型な構成のもので確実に検出することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は、本発明の好適な一実施の形態を示している。図2に示すように、車両速度測定装置を検出するためのマイクロ波検出器用のアンテナ10は、矩形状の基板11(両面プリント基板)の表面に所定形状の導体膜がパターンニングされ、裏面の全面に導体膜が成膜されてグランドが構成された構造からなる。そして、表面の所定形状のパターンが、以下に示すようにしている。
【0016】
まず、基板11の長手方向に沿って、正方形のパッチアンテナ放射素子12を2個形成する。このパッチアンテナ放射素子12を、傾斜配置する。具体的には、アンテナの設置時における垂直方向(水平方向)に対して、その傾斜角度を27度とした。ここでは、基板11の長手方向が、設置時の水平方向になるようにしたので、図示するように、基板11の短手方向(長手方向)の軸から、パッチアンテナ放射素子12の縦横の各辺が27度傾くように形成される。この傾斜角度であるが、本実施形態のように、最も望ましいのは27度である。ただし、27度±10までは、垂直偏波・水平偏波の双方の速度測定装置についての受信に好適であるので、当該範囲内とするのがよい。もちろん、アンテナ10で受信した信号を書する高周波回路の感度や、要求される仕様等に伴い、上記の範囲を超えた角度でも対応可能な場合もある。
【0017】
さらに、パッチアンテナ放射素子12に対する給電は、それぞれ上下逆側から行なうようにした。すなわち、図中左側のパッチアンテナ放射素子12に対しては、上側の辺から給電し、右側のパッチアンテナ放射素子12に対しては、下側の辺から給電する。そして、それぞれに対して給電を行なうためのマイクロストリップライン13,14は、共通マイクロストリップライン15の先端から分岐され、その長さが、マイクロストリップライン13の先端13aとマイクロストリップライン14の先端14aとの位置において、位相が180度反転するような長さに設定されている。そして、それら両先端13a,14aが、それぞれのパッチアンテナ放射素子12における給電点Xに接続される。
【0018】
また、図から明らかなように、本実施形態では、パッチアンテナ放射素子12の給電側の辺12aの中央付近から中心に向けて凹状(スリット状)の切込部12bを設け、マイクロストリップライン13,14は、それぞれその切込み部12b内に入り込み、その切込部12bの最深部の給電点Xで接続される。このようにすることで、マイクロストリップライン13,14とパッチアンテナ放射素子12の接続部位でのインピーダンスを低くし、マッチングを採りやすくしている。
【0019】
共通マイクロストリップライン15の一端(マイクロストリップライン13,14との非接続側)は、基板11を貫通するスルーホール16に接続され、そのスルーホール16の図示省略する基板11の裏面側に設けられた端子(裏面のグランドとは非導通)と導通する。これにより、両パッチアンテナ放射素子12で受信した信号は、それぞれのマイクロストリップライン13,14から共通マイクロストリップライン15を経由してスルーホール16に至り、基板11の裏面側の端子に伝えられる。
【0020】
上記の傾斜角度を27度にしたアンテナパターンとしたパッチアンテナでは、垂直利得が6dBで水平利得が−3dB程度となり、整波板を用いた従来構成のものと同等の性能が得られる。その結果、1枚の基板からなるパッチアンテナを用いつつ、垂直偏波はもちろん水平偏波のマイクロ波も受信可能となる。
【0021】
また、この実施形態では、パッチアンテナ放射素子12を2個横並びに配置するパターン・レイアウトとしたが、本発明はこれに限ることはなく、たとえば上下・左右に2個ずつ配置した4個(2行・2列)としたり、その他任意の個数を設定できる。
【0022】
さらに、本実施形態では、高周波回路を内蔵する扁平な箱状のシールド部17に取り付ける。このとき、上記の端子を介して高周波回路と接続を図り、アンテナ10と高周波回路(受信回路)を備えたモジュールを構成する。
【0023】
そして、図示の例では、当該モジュールを、メイン基板18に実装する。このメイン基板18には、アンテナ10で受信したマイクロ波が、検出対象である速度測定装置(目標物)から出射されたものであるか否かを判断し、目標物からのマイクロ波であると判断した場合に、警報を発するような制御を行なう制御部や、実際の警報を行なう報知部の動作を制御する駆動回路等が実装される。
【0024】
図3は、このアンテナ10を用いたマイクロ波検出器の概略の基本構成を示している。図示するように、アンテナ10と、そのアンテナ10からの出力信号(受信信号/検波信号)を受け、警報の有無の判断処理を行う制御部20と、制御部20からの指令に従い、警報を行なう警報部21と、を備えている。もちろん、実際には、他の入力手段(センサ・受信機等)を備え、より高精度な検出,多岐にわたる目標物の検出等を行なうことができるようになる。制御部20や、報知部21の機能は、基本的に従来のこの種のマイクロ波検出器(目標物検出装置)と同様のものとすることができる。
【0025】
そして、この例では、アンテナ10が、従来のホーンアンテナのような立体アンテナから、平面アンテナ(パッチアンテナ)に変更されると共に、水平偏波のマイクロ波を受信するための整波板も不要になるので、アンテナ部分がきわめて薄くて小型化される。その結果、マイクロ波を受信・検波するための高周波回路や、制御部20,報知部21を実装したマイクロ波検出器自体を全体的に薄くする(前後方向に短くする)ことができ、コンパクトに形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来例を示す図である。
【図2】本発明のアンテナの好適な一実施形態を示す図である。
【図3】マイクロ波検出器の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
10 アンテナ
11 基板
12 パッチアンテナ放射素子
13 マイクロストリップライン
14 マイクロストリップライン
15 共通マイクロストリップライン
16 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両速度測定装置から送出されるマイクロ波を検知して報知するマイクロ波検出器に用いられるマイクロ波検出器用アンテナであって、
裏面がグランドとなる導体パターンが形成された基板の表面に、矩形状のパッチアンテナ放射素子を設け、
そのパッチアンテナ放射素子を構成する各辺が、アンテナの設置時における垂直或いは水平方向に対して、傾斜配置するパターンとしたことを特徴とするマイクロ波検出器用アンテナ。
【請求項2】
前記パッチアンテナ放射素子は、2個を横一列に配置すると共に、各パッチアンテナ放射素子の前記傾斜配置させる角度は、27度±10度としたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波検出器用アンテナ。
【請求項3】
前記パッチアンテナ放射素子は、複数有し、
各パッチアンテナ放射素子は、M行・N列(M,Nは、1以上の整数で同じ値でも良い)に整列配置されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波検出器用アンテナ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のマイクロ波検出器用アンテナと、
そのマイクロ波検出器用アンテナで受信した受信信号に基づき、警報の有無を判断する判断手段と、
その判断手段の判断結果に基づき警報を発する警報手段と、
を備えたことを特徴とするマイクロ波検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−288130(P2009−288130A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142216(P2008−142216)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】