説明

マイクロ電子デバイスのための小さい粒度の接着剤

【課題】本発明はマイクロ電子デバイスのための接着剤組成物に関し、金属基板上に10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )以上のダイを有意な離層なしに接着できる接着組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】少なくとも1種の有機重合体樹脂、無機充填剤及び消散性液体から調製された接着剤組成物であって、前記液体と有機重合体樹脂は、互いに他に対して不溶である接着剤組成物であって、前記少なくとも1種の有機重合体樹脂が25μ以下の粒度の粒状形態で存在することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ電子デバイスのための小さい粒度を含有する接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,488,082号には、少なくとも1種の有機重合体樹脂、無機充填剤及び消散性液体から、セラミック基板上にシリコンダイを取り付けるための接着剤ペーストを調製することができ、そこで前記樹脂と前記充填剤は番号325メッシュスクリーンを通過するのに十分に小さい粒状形態で存在し、前記消散性(fugitive)液体と有機重合体樹脂が互いに実質的に不溶であることが記載されている。
【0003】
その重合体は好ましくは熱可塑性重合体であるが、ブレンド物の熱可塑性が維持されるなら、熱可塑性重合体と熱硬化性重合体の組み合わせでよい。有機重合体樹脂の最大粒度は325メッシュスクリーン、好ましくは400メッシュスクリーンを通過できる粒度である。
【0004】
これらのペースト組成物は半導体チップまたはダイを基板に取り付けるために用いられる。このペーストを基板の表面に塗布して、接着剤層を形成し、前記ペーストがダイと基板の間にあるように、半導体部品を接着剤層の上に置く。次いで、この電子アセンブリを、熱可塑性樹脂が軟化して、流体となり、そして前記液体がペーストから蒸発するのに十分に高い温度で、十分な時間、加熱する。このアセンブリを熱可塑性重合体が固体となり、マイクロ回路の基板への接着をもたらす温度より低い温度まで冷却する。この接着剤ペーストを用いる利点は接着剤層にボイドがないことである。接着剤層中のボイドは、ついには接着破壊を生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのペーストをダイ取り付け組成物として、セラミック基板上の8.6mm×8.6mm(350mil ×350mil )のシリコンダイ(半導体ダイ)を用いて試験した。しかしながら、これらの組成物は金属基板または大きなサイズのダイ、特に10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )以上のサイズの半導体ダイについて、有用性が乏しいことが分かった。これらの従来技術の接着剤ペーストを、このサイズのダイ及び特に大きなサイズのダイを金属基板に接着するのに用いると、接着剤のための硬化サイクルの後に、ダイは基板から離層または剥離する。大きなサイズのダイは、消散性液体を脱出しにくくし、それがボイドをもたらす。また、金属基板とダイの熱膨張係数(CTE)の差が大きい。このCTEのミスマッチが、ダイと基板の間の接着層を不断のストレス中に置き、ダイの狂いと離層をもたらす。この因子、ダイの大きなサイズ及び金属基板の組み合わせが、ほとんど必然的に基板からのダイの離層をもたらす。
【0006】
離層は特に高出力の回路に、そして結果として高熱発生用途について重大な問題である。いくつかの例では、離層がいくらかあっても、マイクロ電子回路シリコンチップまたはダイは、うまく基板に接着したままであろう。しかしながら、高熱が生成すると、基板からのほんの少しの離層ですら、電子回路中に発生した熱を基板へ転移させる接着剤の能力を損ねるだろう。結局はこれはデバイスの破壊をもたらすだろう。したがって、今だに、半導体シリコンダイ、特に大きなダイを基板、特に金属基板に取り付けるのに用いるための改良された接着剤の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1種の有機重合体樹脂、無機充填剤及び消散性液体から調製された改良された接着剤組成物であって、前記液体及び有機重合体樹脂は、互いに他に対して実質的に不溶であり、前記改良は、前記少なくとも1種の有機重合体樹脂が、25μ以下の粒度の粒状形態で存在することを含んでなる、前記接着剤組成物である。そのようにして調製された接着剤組成物は、有意な離層なしに金属基板上の10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )以上のダイに用いることができる。
【0008】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1種の有機重合体樹脂、無機充填剤、及び消散性液体から調製された接着剤組成物であって、前記液体と有機重合体樹脂は、互いに他に対して実質的に不溶であって、前記少なくとも1種の有機重合体樹脂が25μ以下の粒度の粒状形態で存在する前記接着剤組成物を用いて基板に接着された10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )サイズ以上の半導体を含む電子回路アセンブリである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の目的のために、前記有機重合体樹脂は、前記樹脂が消散性液体に有意に溶解しないなら、そして、前記液体が前記樹脂に有意に溶解しないなら、前記液体に実質的に不溶であると考えられるだろう。有意に溶解するとは、20%未満の溶解性、好ましくは10%未満の溶解性を意味する。
【0010】
本発明の改良された接着剤組成物の成分は、米国特許第5,488,082号に列挙されており、それを参照により本明細書に完全に組み込む。簡単にいうと、これらの成分は、有機重合体樹脂、無機充填剤及び、前記重合体樹脂のための溶媒ではない消散性液体である。
【0011】
本発明に用いることができる重合体樹脂は所望の最終用途に適切である、任意の熱硬化性もしくは熱可塑性有機重合体または熱硬化性及び熱可塑性有機重合体の任意の組み合わせを包含する。好ましい熱可塑性有機重合体は、ほぼ室温から、マイクロ回路電子部品が働く環境温度までの温度で固体であり、マイクロ回路電子部品の働く温度より高温まで加熱すると軟化して、部品間の接着を創造するのに十分に流動性になるものであろう。好ましい熱硬化性有機重合体は、硬化前に35〜200℃、好ましくは50〜150℃の融点またはガラス転移点及び35〜200℃、好ましくは50〜150℃の硬化反応開始温度を有し、硬化後には、接着剤に寸法安定性及び耐熱性をもたらす熱硬化物質に硬化するだろう。
【0012】
典型的なそして適切な熱可塑性重合体は、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリハロゲン化ビニル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、アクリル重合体、ビニル重合体及び熱可塑性エポキシ樹脂である。重合体は上記熱可塑性重合体の共重合体または上記熱可塑性重合体と他の適切な熱可塑性重合体の共重合体であってもよい。代表的なポリアミドは、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(ε−カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレンフタルアミド)及びポリ(イソフタルアミド)を包含する。代表的なポリエステルはポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(ブチレンテレフタレート)を包含する。
【0013】
公知で特定の最終用途に用いられるあらゆる熱硬化性重合体を用い得るが、好ましい熱硬化性重合体は、エポキシ樹脂である。
【0014】
適切な無機充填剤は40容量%までの量で存在する。好ましい無機充填剤は、銀、金、銅、ニッケル及びそれらの金属の合金、アルミナ、酸化ベリリウム、シリカ、シリコンカーバイド、グラファイト、タングステンカーバイド、チタン酸バリウム、窒化硼素、窒化アルミニウム及びダイアモンドを包含する。導電性ダイ取り付け接着剤のために、好ましい充填剤は銀のフレークであって、典型的には25μ以下の粒度で市販されているものである。用いられるあらゆる充填剤は25μ以下の粒度を有していることが好ましい。
【0015】
消散性液体は、慣用の計量分配と塗布のために、有機重合体樹脂及び無機充填剤を懸濁させるように作用する。好ましい液体は非極性で、約50mmHg未満の室温蒸気圧と低表面張力を有する。代表的な液体は、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素並びにグリコールエーテル及びそれらの誘導体である。
【0016】
有機重合体は、25μ以下の粒度を有する。メッシュスクリーンへのミクロンでの粒度の参考のために、45μ粒子はほぼ325メッシュスクリーンに相当し、40μ粒子はほぼ400メッシュスクリーンに相当し、25μ粒子はほぼ500メッシュスクリーンに相当する。粒度が25μ以下に低下すると、大きい半導体ダイ、すなわち10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )以上のものを、硬化を受けた後に有機意な離層なしに金属基板に取り付けることができることを、予想外に発見した。金属基板はこの産業で最近用いられている任意のもの、たとえば、銅及び銀めっきした銅である。
【0017】
この明細書の目的のために、有意な離層は基板からのダイの表面積の25%を超える分離を意味する。硬化は一般に100〜200℃の範囲の温度で行なわれる。同じ化学的組成物であるが、25μより大なる粒度の組成物を用いると、10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )のダイは、硬化サイクルの後で基板からの有意な離層、すなわち、25%を超える離層を示す。
【0018】
本発明の接着剤組成物は、ペースト配合物のために当技術分野で公知の装置中で成分を混合することにより調製される。混合順序は重要でない。すなわち、全成分をいっしょに混合することができるか、または、成分の組み合せを予備混合し、その後、残りの成分を添加することによりペーストを調製することができる。好ましい接着剤組成物は、硬化前に約24〜37容量%の無機充填剤及び11〜37容量%、好ましくは13〜29容量%の有機重合体樹脂と残余の消散性液体と任意の添加剤を含有するだろう。
【0019】
上記の主要成分に加えて、接着剤組成物は少量の添加剤、たとえば、接着促進剤、熱安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤及び粘度変性重合体を含有することもできる。好ましい粘度変性重合体は、スチレン−b−エチレン(エチレン−コ−プロピレン)ブロック共重合体であって、当業界で公知公用の同様な共重合体、たとえば、(スチレン−コ−エチレン)−b−(ブチレン−コ−スチレン)ブロック共重合体も適切である。添加剤の選択及び量は当業者に公知であろう。
【0020】
本明細書に記載された接着剤は、マイクロ回路電子部品を基板に取り付けるのに用いることができ、この目的のために十分な接着強さを有していることが当業界で明らかにされた。例は、接着剤のための硬化サイクル後にダイが金属基板から分離しないという点で、本発明の改良された組成物が、大きい半導体ダイについてすぐれた性能を示すことを明らかにする。
【実施例】
【0021】
接着剤組成物を表1に列挙された成分から明細書に従って調製した。
【表1】

【0022】
この配合物のいくつかの例は、熱硬化性重合体及び熱可塑性重合体について粒度を変化させて作成した。配合物を、銀めっきした銅のリードフレーム上に分配し、10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )のダイ及び12.7mm(500mil )×12.7mm(500mil )のダイを接着剤と接触させて置いた。各配合物について試験したダイの数は5〜14に変化した。
【0023】
ダイとリードフレームアセンブリを30分以内で温度100℃〜200℃で傾斜される、プログラム可能なオーブン中に入れ、次いで200℃で15分保持した。硬化されたアセンブリをオーブンから取り出し、室温まで冷却させた。離層をSonix Inc.による音響顕微鏡を用いて調査した。この装置は、ダイと基板の間の境界面離層のレベルの観測を可能とする。離層のレベルは全ダイ面積のパーセントとして、報告されている。
【0024】
各例についての熱硬化性及び熱可塑性ポリマーのための粒径、試験されたダイの数及び離層の発生が表2に報告されている。離層は試験された数の内から離層を示したダイの数として記録され、境界面離層のパーセントによりグループに分割されている。たとえば、「75%まで」の離層の下の記載事項「3/12」は、12個のダイの内3個が、ダイと基板との境界面の75%までの面積にわたる離層を示したことを意味する。
【0025】
【表2】

【0026】
データは、25μ以下である小さい粒度は金属基板上の大きいダイの離層に関して、すぐれた結果を示すことを明らかにしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有機重合体樹脂、無機充填剤及び消散性液体から調製された改良された接着剤組成物であって、前記消散性液体及び有機重合体樹脂が、互いに他に対して実質的に不溶であり、前記改良が、前記少なくとも1種の有機重合体樹脂が25μ以下の粒度の粒状形態で存在することを含んでなる、前記接着剤組成物。
【請求項2】
前記有機重合体樹脂が、熱可塑性重合体、熱硬化性重合体または熱硬化性重合体と熱可塑性重合体の組み合わせである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記有機重合体樹脂が11〜37容量%の範囲で存在する、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の粒度が<15μである、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂の粒度が<5μである、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
電子回路アセンブリであって、少なくとも1種の有機重合体樹脂、無機充填剤、及び消散性液体から製造された接着剤組成物であって、前記液体及び有機重合体樹脂は、互いに他に対して実質的に不溶であって、前記少なくとも1種の有機重合体樹脂が、25μ以下の粒度の粒状形態で存在する前記接着剤で、基板に結合された、10.16mm(400mil )×10.16mm(400mil )の大きさ以上の半導体ダイを含む、前記アセンブリ。
【請求項7】
前記基板が金属基板である、請求項7に記載の電子回路アセンブリ。

【公開番号】特開2011−26602(P2011−26602A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−173870(P2010−173870)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願平11−14250の分割
【原出願日】平成11年1月22日(1999.1.22)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】