説明

マスキング部材、レーザ溶接方法および電気化学素子の製造方法

【課題】 マスキング部材とワークの接触を防止して、生産性を向上させることができるマスキング部材、レーザ溶接方法および電気化学素子の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 ワークの非溶接部を被覆するレーザ溶接用のマスキング部材7であって、その先端部7aにおけるワーク対向面が、前記ワークから離間した形状に形成した。なお、この先端部7aにおけるワーク対向面は、前記ワークから離れるように傾斜して形成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスキング部材、レーザ溶接方法および電気化学素子の製造方法に関し、特に、非溶接部の溶接を防止するためのマスキング部材、レーザ溶接方法および電気化学素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属板同士等の接合に、レーザビームを照射して溶接するレーザ溶接方法が用いられている。このレーザ溶接方法では、ワークとレーザ溶接機を相対移動させ、溶接ラインに沿って溶接が施される。このうち、溶接ラインの延長上等にある非溶接部においては、レーザの焦点をずらしてエネルギ密度を落とし、溶接が施されないようになっている。
【0003】
また、従来、レーザ加工において、非加工部分をカバーするマスキングプレートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、マスキングプレートを用いることで、ワークの非加工部分にレーザによる加工が及ばないようにされている。具体的には、図6(a)に示すように、複数枚の第1のワーク101,101,・・・と、この第1のワーク101間に介在する第2のワーク102と、1枚の第3のワーク104が積層された積層体100において、第1のワーク101および第2のワーク102を溶接し、第3のワーク104には溶接を施さないようにする場合、第3のワーク104をマスキングプレート105で被覆する。これにより、レーザ溶接機106から照射されるレーザBは、マスキングプレート105で遮られ、第3のワーク104にレーザ加工が施されないようになっている。なお、符号103は第1,2のワーク101,102とともにその積層方向に向けて溶接されるプレートである。
【特許文献1】特開平6−812号公報(段落0011、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レーザの焦点をずらす方法では、レーザ溶接機またはワークの移動速度を遅くするため、サイクルタイムが長くなり、その生産効率が悪化するという問題があった。また、この移動速度の調整を不要とすべく、前記マスキングプレート105を用いることが考えられるが、図6(b)に示すように、マスキングプレート105の先端部がレーザBの入熱を受けると、溶融または変形して第1,2のワーク101,102やプレート103と接して溶着することがあった。その結果、不良品が増加し歩留まりを下げるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、マスキング部材とワークの接触を防止して、生産性を向上させることができるマスキング部材、レーザ溶接方法および電気化学素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ワークの非溶接部を被覆するレーザ溶接用のマスキング部材であって、その端部におけるワーク対向面が、前記ワークから離間した形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、その端部におけるワーク対向面が、ワークから離間した形状に形成されているため、マスキング部材の端部がレーザの入熱を受け、溶融、変形した場合でも、マスキング部材とワークの接触を防止することができる。そのため、マスキング部材とワークの溶着により生じる不良品の発生を抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマスキング部材において、前記端部におけるワーク対向面が、前記ワークから離れるように傾斜して形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマスキング部材において、ワーク対向面の形状を具体的にしたものである。ワーク対向面がワークから離れるように傾斜して、つまり、テーパ状に形成されていることで、マスキング部材の端部がレーザの入熱を受けて溶融し、ワーク側に向けて変形した場合でも、マスキング部材とワークの接触を防止することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、ワークの非溶接部をマスキング部材で被覆して前記ワークを他ワークにレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、前記マスキング部材の端部におけるワーク対向面が、前記ワークの非溶接部から所定間隔離間した状態でレーザを照射することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ワークの非溶接部をマスキング部材で被覆して、ワークを溶接する。このとき、マスキング部材の端部におけるワーク対向面が、ワークの非溶接部から所定間隔離間しているので、マスキング部材の端部がレーザの入熱を受け、溶融、変形した場合でも、マスキング部材とワークの接触を防止することができる。そのため、マスキング部材とワークの溶着により生じる不良品の発生を抑えるとともに、レーザ焦点をずらす作業も不要であるため高速溶接が可能となり、生産性を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、集電箔上に電極が設けられた複数の電極シートと、前記電極シート間に配置されたセパレータと、を備え、複数の前記電極シートの一部から電流を集電する集電壁と、積層された前記電極シートのうち端の電極シートを保持し、かつ前記集電壁で集電した電流を外部へ取り出すための電流取出部が設けられる保持壁と、を有する2つの略L字形状の集電プレートで、積層された前記電極シートを積層方向において挟み込んで構成される電気化学素子の製造方法であって、前記電極シートと前記集電プレートの前記集電壁をレーザ溶接する際、溶接ラインの延長上に位置する、一方の集電プレートの保持壁と他方の集電プレートの集電壁との間に介在する隙間を覆うとともに、前記保持壁および前記集電壁から対向面が所定間隔離間するようにマスキング部材を配置した状態で、前記溶接ラインに沿ってレーザを照射することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、溶接ラインの延長上に位置する、一方の集電プレートの保持壁と他方の集電プレートの集電壁との間に介在する隙間を覆うとともに、保持壁および集電壁から対向面が所定間隔離間するように、マスキング部材を配置した状態で、溶接ラインに沿ってレーザを照射し、電極シートと集電プレートの集電壁をレーザ溶接する。このとき、マスキング部材の対向面が、電極シートと集電プレートの集電壁から所定間隔離間しているので、マスキング部材がレーザの入熱を受け、溶融、変形した場合でも、マスキング部材と集電プレート等の接触を防止することができる。そのため、マスキング部材と集電プレート等の溶着により生じる不良品の発生を抑えるとともに、レーザ焦点をずらす作業も不要であるため高速溶接が可能となり、生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、マスキング部材の端部がレーザの入熱を受け、溶融、変形した場合でも、マスキング部材とワークの接触を防止することができる。そのため、マスキング部材とワークの溶着により生じる不良品の発生を抑えることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ワーク対向面がワークから離れるように傾斜して、つまり、テーパ状に形成されていることで、マスキング部材の端部がレーザの入熱を受けて溶融し、ワーク側に向けて変形した場合でも、マスキング部材とワークの接触を防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、マスキング部材の端部がレーザの入熱を受け、溶融、変形した場合でも、マスキング部材とワークの接触を防止することができる。そのため、マスキング部材とワークの溶着により生じる不良品の発生を抑えるとともに、レーザ焦点をずらす作業も不要であるため高速溶接が可能となり、生産性を向上させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、マスキング部材の対向面が、電極シートと集電プレートの集電壁から所定間隔離間しているので、マスキング部材がレーザの入熱を受け、溶融、変形した場合でも、マスキング部材と集電プレート等の接触を防止することができる。そのため、マスキング部材と集電プレート等の溶着により生じる不良品の発生を抑えるとともに、レーザ焦点をずらす作業も不要であるため高速溶接が可能となり、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は本実施形態に係る電気二重層キャパシタ(電気化学素子)の内部構造を示す断面図であり、図2は本実施形態に係る電極シート組立体の斜視図であり、図3は本実施形態に係る電極シート組立体の構造を示す分解斜視図である。また、図4は積層体の構造を示す分解斜視図であり、図5は本実施形態に係る溶接方法について説明する図である。
【0019】
本実施形態では、電気二重層キャパシタの製造工程(製造方法)における、L形プレート、電極シートおよびシムの溶接方法について説明するが、本発明は特に限定されるものではなく、種々のワークの溶接に適用可能である。まず、本実施形態に係る電気二重層キャパシタの構造について説明する。
【0020】
図1に示すように、電気二重層キャパシタ10(以下、単に「キャパシタ10」ともいう。)は、ケーシング1と、このケーシング1の中に電解液とともに収容される電極シート組立体EAとを備えて構成されている。
【0021】
ケーシング1は、角形筒状の筒体11と、この筒体11の上下開口部に取り付けられる蓋体12とで構成されている。そして、このケーシング1は、筒体11の上下開口部の縁部に蓋体12の縁部を、曲げ加工やカシメ加工、あるいは溶着(融着)などによって取り付けることで、密閉されるようになっている。
【0022】
図2,3に示すように、電極シート組立体EAは、複数の電極シート2が主に積層されて構成される積層体LAと、この積層体LAを積層方向において挟み込む2つのL形リードプレート(集電プレート)3とを備えて構成されている。
【0023】
積層体LAは、図4に示すように、電荷を貯めるための複数の電極シート2と、各電極シート2の間に設けられるセパレータ4と、所定の電極シート2の間または電極シート2とL形リードプレート3との間(図1参照)に設けられるシム5とを備えて構成されている。
【0024】
電極シート2は、略四角形状の集電箔2aと、この集電箔2aの両面に形成される電極層2bとで構成されている。集電箔2aは、アルミニウム箔などの導電性を有する材料で形成されている。電極層2bは、活性炭を主成分としており、集電箔2aの一辺部分を除いた略全面にわたって略四角形状に形成されている。そして、電極層2bが形成されていない集電箔2aの一辺部分は、各電極層2bに貯めた電荷の取出口としてのリード部2cとなっている。
【0025】
また、電極シート2の中央部には、電解液注入用の貫通孔2dが形成されるとともに、そのリード部2cには、軽量化および電解液の浸透に寄与する2つの長孔2eとボルト挿通用の2つの円形の孔2fが貫通するように形成されている。さらに、電極シート2のリード部2cの端縁(詳しくは、4つの孔2e,2fの間)には、主に軽量化に寄与する切欠部2gが形成されている。そして、このように形成される複数の電極シート2は、正の電荷を貯めるものと負の電荷を貯めるものとが交互に積層されるようになっているとともに、正の電荷を貯める電極シート2のリード部2cが所定の向きに揃えられ、この所定の向きとは逆の向き(異なる向き)に負の電荷を貯める電極シート2のリード部2cが揃えられるようになっている。なお、積層体LAでは、前記した電極シート2の長孔2eと、前記したシム5の長孔5eとが連通することによって空間が形成される。この空間は、電解液の分解などでガスが生じた場合に、体積増加分を受け持つバッファ部として機能させることができる。
【0026】
セパレータ4は、略四角形のシート状に形成される絶縁部材であり、隣り合う異極の電極シート2(リード部2cが互いに逆方向を向く一対の電極シート2)を絶縁している。また、このセパレータ4は、電極シート2の電極層2bの周縁から少しはみ出る程度の大きさで、かつ、前記長孔2eおよび孔2fを塞がない程度の大きさに形成されるとともに、その中央部に電解液注入用の貫通孔4dが前記電極シート2の貫通孔2dよりも小さな大きさで形成されている(図1参照)。
【0027】
シム5は、導電性を有する略短冊状の部材であり、その角部が適宜R形状に面取りされるとともに、前記した電極シート2の切欠部2gに対応した切欠部5gを両側縁に有するような形状に形成されている。また、このシム5には、前記した電極シート2の各長孔2eおよび各孔2fに対応した2つの長孔5eおよび2つの孔5fが適宜形成されている。そして、このシム5は、隣り合う同極の電極シート2(リード部2cが互いに同一方向を向く一対の電極シート2)のリード部2cの間や、端から2番目に位置する電極シート2のリード部2cとL形リードプレート3との間(図1参照)に配設されるようになっている。ここで、端から2番目に位置する電極シート2とL形リードプレート3との間の距離は、同極の電極シート2のリード部2c間の距離に対して短いため、実際には、厚さの異なる2種類のシム5(以下、「第1シム5A」、「第2シム5B」ともいう。)が設けられている。
【0028】
図3に示すように、L形リードプレート3は、導電性を有する部材であり、同極の電極シート2から電流を集電する集電壁31と、積層された電極シート2のうち端の電極シート2を保持する保持壁32とによって、略L字形状に形成されている。
【0029】
集電壁31は、電極シート2よりも小さな幅となる四角い板状に形成されおり、その中央部に電極シート2の積層方向に延びる所定のビード部31aが電極シート2側へ向かって凸となるように形成されるとともに、その側縁部に電極シート2側および外側へ向かって略L字状に折り曲げられた屈曲部31bが形成されている。なお、集電壁31に形成されるビード部31aおよび屈曲部31bは、平面状の集電壁31の剛性を向上する役割を果たすとともに、前記した電極シート2およびシム5の各切欠部2g,5gと係合することで、各電極シート2および各シム5をその面方向(詳しくは、シム5の長手方向)において位置決めする役割も果たすようになっている。そして、このように形成される集電壁31は、その屈曲部31bの縁部が、同極の各電極シート2および各シム5に溶接部31cで溶接により接合されており、これにより各電極シート2から流れてくる電流を集電するようになっている。
【0030】
保持壁32は、電極シート2よりも大きな面積となる四角い板状に形成されており、その中央部に集電壁31で集電した電流を外部から取り出すための端子接続プラグ(電流取出部)6が設けられるとともに、その四隅にボルト挿通用の孔32fが形成されている。なお、本実施形態では、2つのL形リードプレート3の保持壁32に跨るようにボルトを挿通させることとしているため、ボルトの材質を絶縁性にするか、または、金属製のボルトのうち一方の保持壁32に接する部分を絶縁処理することによって、L形リードプレート3,3間の短絡を防止する必要がある。また、ボルトに代えてシャフトが使用されてもよく、保持壁32,32に跨るように配置されたシャフトは、保持壁32,32から突出した端部がかしめられることとなる。
【0031】
また、端子接続プラグ6は、図1に示すように、雄型プラグ61と雌型プラグ62とをそれらの間に保持壁32を介在させた状態で螺合させることによって、保持壁32に固定される構造となっている。そのため、これに対応すべく、保持壁32には、雄型プラグ61の雄ねじ部61aを挿通させるための取付孔32aと、雄型プラグ61のフランジ部61b側の端面と保持壁32の電極シート2側の端面を面一にするための段差状の取付部32bが形成されている。
【0032】
また、保持壁32の電極シート2側の面(端子接続プラグ6が取り付けられた状態となる面)には、絶縁膜32cによる絶縁処理が施されている。なお、本実施形態では、保持壁32とこれに隣接する電極シート2が同極となるので、保持壁32と電極シート2を絶縁させる必要はなく、絶縁膜32cは省略し、その代わりに第1シム5Aを絶縁体としてもよい。ただし、絶縁膜32cは、絶縁の機能の他に、保持壁32の表面形状(端子接続プラグ6周りの微小な凹凸)によって電極シート2が傷つくのを防止する機能も有する。ため、本実施形態のように設けておくのが望ましい。また、この絶縁膜32cには、端子接続プラグ6の雄型プラグ61に形成される電解液注入・排出用の孔61cに対応した孔32dが形成されている。
【0033】
さらに、保持壁32の集電壁31側の端部には、前記したシム5の代わりとなる段差部32eが形成されている。すなわち、段差部32eを設けない場合には、保持壁32とこれに隣接する電極シート2のリード部2cとの間に、絶縁膜32cの厚さと電極層2bの厚さを足した厚さの導電性のシム(第1シム5Aや第2シム5Bとは厚さの異なるシム)を新たに設ける必要があるが、本実施形態では、段差部32eを設けることによって、そのシムを無くして、部品点数の削減を図ることが可能となっている。
【0034】
次に、本実施形態に係るキャパシタ10の製造方法について説明する。
図4に示すように、まず、隣り合う電極シート2のリード部2cの向きが互い違いに逆方向となるように、電極シート2とセパレータ4を交互に積層していく。また、このように積層していく際には、各電極シート2のリード部2cに対して適宜シム5を配設していく。
【0035】
そして、図3に示すように、予め端子接続プラグ6および絶縁膜32c(図1参照)を取り付けたL形リードプレート3で、積層体LAを積層方向において挟持する。このとき、L形リードプレート3のビード部31aおよび屈曲部31bを、適宜電極シート2およびシム5の各切欠部2g,5gと係合させるとともに、L形リードプレート3の集電壁31の面で各電極シート2および各シム5を揃えることで、各部品3,2,5のボルト挿通用の孔32f,2f,5fが同軸に揃えられることとなる。その後は、これらの孔32f,2f,5fに図示せぬボルトを挿通し、挿通したボルトの先端を図示せぬナットに捩じ込むことで、図1に示すように、L形リードプレート3の保持壁32で積層体LAが保持されることとなる。ここで、この保持壁32は、前記したように電極シート2の面積よりも大きく形成されているので、この大きな保持壁32によって各電極シート2の全面が均一に加圧されることとなる。
【0036】
前記したように積層体LAを適度な加圧力で保持した後は、L形リードプレート3の集電壁31の側縁部(屈曲部31b)と、各電極シート2のリード部2cおよび各シム5とを溶接する。この溶接に際しては、図5を参照しながら詳細に説明する。なお、便宜上、互いに異極の2つのL形リードプレートのうち、一方をL形リードプレート3A、他方をL形リードプレート3Bとする。
【0037】
図5(a)に示すように、L形リードプレート3Aの集電壁31と、他方のL形リードプレート3Bの保持壁32との間に介在する隙間(ワークの非溶接部)を覆うようにマスキングプレート(マスキング部材)7を配置する。マスキングプレート7は、例えば、反射率の高いアルミニウム合金等からなる板状の部材で、その先端部7aにおける集電壁31に対向する面が、集電壁31から離間する方向に傾斜した形状に形成されている。そして、マスキングプレート7を配置した後、レーザ溶接機8を集電壁31の屈曲部31b(図2参照)の縁部である溶接部31c(溶接ライン)に沿って平行移動させながら、レーザBを照射する。これにより、集電壁31と電極シート2とシム5が溶接される。なお、マスキングプレート7が、L形リードプレート3Aの集電壁31とL形リードプレート3Bの保持壁32の間の隙間を覆っていることで、両者が溶接されることはなく、また、先端部7aがテーパ状に形成されていることで、図5(b)に示すように、レーザBにより入熱されて溶融、変形した場合でも、集電壁31に接触することはない。
【0038】
そして、集電壁31と電極シート2とシム5が溶接されることで、電極シート組立体EAの製造が完了する。その後は、図1に示すように、この電極シート組立体EAをケーシング1内に収容させた後、端子接続プラグ6の孔61cから電解液を注入することで、各電極シート2の電極層2bと各セパレータ4に電解液を含浸させる。そして、最後に、端子接続プラグ6の孔61cを図示せぬ栓で封止することで、キャパシタ10の製造が完了する。
【0039】
以上によれば、本実施形態において、次のような効果を得ることができる。
集電壁31と電極シート2とシム5の溶接時、L形リードプレート3A,3B間の隙間に、マスキングプレート7を配置するので、両者が接合されることによる短絡を防止することができる。また、マスキングプレート7の先端部7aが、テーパ状に形成されていることで、レーザBの入熱を受け、集電壁31側に向けて溶融、変形した場合でも、集電壁31への接触は防止することができる。これにより、マスキングプレート7がL形リードプレート3A,3B等に溶着することにより生じる不良品の発生を抑えることができる。さらに、レーザ焦点をずらす作業も不要であるため高速溶接が可能となり、生産性を向上させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態において、製造されたキャパシタ10は、以下のような効果を有する。
電極シート2の面積よりも大きな面積となるL形リードプレート3の保持壁32で、積層された電極シート2を挟み込むので、積層された電極シート2に対して積層方向において適度な加圧力を均一に付与することができる。そして、このように適度な加圧力が均一に電極シート2に加わることによって、集電箔2aと電極層2bとが密着して電気抵抗を下げることが可能となるとともに、各電極シート2の傾きが防止され、各一対の電極シート2の面方向における各位置の電極間距離を一定に、かつ短くすることができる。
【0041】
セパレータ4が電極シート2の電極層2bよりも大きく形成されるとともに、セパレータ4の貫通孔4dが電極シート2の貫通孔2dよりも小さく形成されるので、電極シート2とセパレータ4を積層する際において、電極シート2とセパレータ4とが正規位置よりも多少ずれたとしても、セパレータ4によって各電極シート2を確実に絶縁させることができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
本実施形態では、製造コスト上の観点から、同じ材料で第1シム5Aおよび第2シム5Bを形成したが、本発明はこれに限定されず、第1シム5Aを絶縁性の材料で形成してもよい。これによれば、図1に示すように、第1シム5Aに隣接する電極シート2から流れてくる電流が第1シム5A側には行かずに、その反対側(電流が取り出される側)のみに向かって流れるようになるので、集電をより良好に行うことができる。また、本実施形態とは逆に、L形リードプレートとこれに隣接する電極シートとが異極である場合にも、この異極の電極シートのリード部とL形リードプレートとの間に絶縁性のシムを設けることで、前記と同様の効果を奏することができる。
【0043】
本実施形態では、マスキングプレート7を板状部材で形成したが、本発明はこれに限定されず、様々な形状に形成することができる。また、本実施形態では、マスキングプレート7の材質をアルミニウム合金としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他、アルミニウム合金よりも高融点の金属、合成樹脂、ガラス、セラミックス等種々の材質を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係る電気二重層キャパシタの内部構造を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る電極シート組立体の斜視図である。
【図3】本実施形態に係る電極シート組立体の構造を示す分解斜視図である。
【図4】積層体の構造を示す分解斜視図である。
【図5】本実施形態に係る溶接方法について説明する図である。
【図6】従来技術に係る溶接方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ケーシング
2 電極シート
2a 集電箔
2b 電極層(電極)
2c リード部
3 L形リードプレート(集電プレート)
31 集電壁
32 保持壁
32c 絶縁膜
4 セパレータ
5 シム
6 端子接続プラグ(電流取出部)
7 マスキングプレート(マスキング部材)
10 電気二重層キャパシタ(電気化学素子)
EA 電極シート組立体
LA 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの非溶接部を被覆するレーザ溶接用のマスキング部材であって、その端部におけるワーク対向面が、前記ワークから離間した形状に形成されていることを特徴とするマスキング部材。
【請求項2】
前記端部におけるワーク対向面が、前記ワークから離れるように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスキング部材。
【請求項3】
ワークの非溶接部をマスキング部材で被覆して前記ワークを他ワークにレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、前記マスキング部材の端部におけるワーク対向面が、前記ワークの非溶接部から所定間隔離間した状態でレーザを照射することを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項4】
集電箔上に電極層が形成された複数の電極シートと、
前記電極シート間に配置されたセパレータと、を備え、
複数の前記電極シートの一部から電流を集電する集電壁と、積層された前記電極シートのうち端の電極シートを保持し、かつ前記集電壁で集電した電流を外部へ取り出すための電流取出部が設けられる保持壁と、を有する2つの略L字形状の集電プレートで、積層された前記電極シートを積層方向において挟み込んで構成される電気化学素子の製造方法であって、
前記電極シートと前記集電プレートの前記集電壁をレーザ溶接する際、
溶接ラインの延長上に位置する、一方の集電プレートの保持壁と他方の集電プレートの集電壁との間に介在する隙間を被覆するとともに、前記保持壁および前記集電壁から対向面が所定間隔離間するようにマスキング部材を配置した状態で、前記溶接ラインに沿ってレーザを照射することを特徴とする電気化学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−320917(P2006−320917A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144257(P2005−144257)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(592173674)株式会社市川精機 (2)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】