説明

マスクパターンの検査方法およびマスクパターン検査装置

【課題】同パターンが繰り返し描かれた複数のチップパターン毎に付与される互いに異なるフレア補正図形の差を考慮し、ダイ−ダイ比較方式によりマスクパターン検査を行う。
【解決手段】多層膜マスクにおいて最初の検査ストライプを指定した後、多層膜マスクを走査させて検査画像の取り込みを開始し、1つ目のチップの検査画像データを取り込み、フレアマップ格納部26から対応するフレア補正量のデータを読み込む。次に、2つ目のチップの検査画像データの取り込み、フレアマップ格納部26からフレア補正量データをパターン輪郭の辺のシフト量として取り込む。これらフレア補正量データは、補正データ生成回路22がパターンの形状補正量に変換する。比較回路23では、取り込んだ2つのチップのパターン形状を、補正データ生成回路22が生成したパターンの形状補正量に基づいて補正し、2つのチップのパターンを画像比較して欠陥の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク上のパターン欠陥を検査する技術に関し、特に、EUV(Extreme UltraViolet)光を反射する多層膜マスク基板上にEUV光を吸収する材料で形成された微細パターンを有するマスク上のパターン欠陥の検査に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(半導体集積回路装置)は、回路パターンが描かれた原版であるマスクに露光光を照射し、前記回路パターンを、縮小光学系を介して半導体基板(以下、「ウエハ」と称する)上に転写する光リソグラフィ工程を繰り返し用いることによって、大量生産されている。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化が進み、光リソグラフィの露光波長をより短くして解像度を上げる方法が検討されている。これまでは波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いたArFリソグラフィが開発されてきたが、それよりもはるかに波長の短い波長13.5nmのEUVL(Extreme UltraViolet Lithography)の開発が進んでいる。
【0004】
この波長域では透過マスクが物質の光吸収の関係で使えないため、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)などの多層膜による反射(ブラッグ反射)を利用した多層膜反射基板がEUVL用のマスクブランクスとして使用される。
【0005】
多層膜反射は一種の干渉を利用した反射である。EUVL用のマスクは、石英ガラスや低熱膨張ガラス基板の上にMoとSiなどの多層膜が被着された多層膜ブランク上に吸収体パターンが形成されている。
【0006】
図12(a)は、現在開発が進められているEUVL用のマスクM1をパターン面から見た一例であり、中央部には半導体集積回路装置のパターンを有するデバイスパターンエリアMDEを有し、周辺部にはマスクの位置合せのためのマークやウェハアライメントマークなどを含むアライメントマークエリアMA1,MA2,MA3,MA4が配置される。
【0007】
図12(b)は、EUVL用のマスクM1のデバイスパターンエリアMDEにおける断面の一例を示す図である。石英ガラスや低熱膨張材などの基板51の上に前記の多層膜52が被着され、その上にキャッピング層53が被着されている。その上に、バッファ層54を介して吸収体パターン55が設けられている。一方、基板51の裏面側には、マスクを静電チャックするためのメタル膜56がコーティングされている。
【0008】
図13は、EUV投影露光装置によりEUVL用のマスクM1上のパターンを半導体ウエハ上に縮小転写する手段を示す図である。光源61から発する中心波長13.5nmのEUV光は多層膜反射鏡からなる照明光学系62を介してEUVL用のマスクM1のパターン面を照明する。
【0009】
パターン面からの反射光は多層膜反射鏡からなる縮小投影光学系63を通過して半導体ウエハ64上にパターンを転写する。半導体ウエハ64はステージ65に搭載されており、ステージ65の移動とパターン転写の繰り返しにより半導体ウエハ64の所望の領域にパターンを多数転写する。
【0010】
このパターン転写において、吸収体パターン55に欠陥が存在すると、半導体ウエハ上へのパターン転写の際に半導体集積回路装置の欠陥となるので、マスクの供給に先立って吸収体パターンの欠陥検査を行っておく必要がある。従来のマスク欠陥検査方法として、図14に示すように、同じパターンが描かれた2つのチップ(チップA、A’)70,71をそれぞれ複数の画素を有するセンサでスキャン観察し、その両者の違いを適当な欠陥検出アルゴリズムによって比較し検出する方法(ダイ−ダイ比較方式) がある(たとえば、特許文献1〜4 参照)。
【0011】
チップ画像を効率よく取り込むためには、短冊状の領域(ストライプ)72の長手方向に連続して存在する複数のダイを一度に貫通して走査し画像取り込みするのがよい。このために、画像は連続で撮影して、撮影画像をメモリに取り込み、取り込みと同時進行、あるいは1ストライプ分を取り込み完了後に、メモリ上の画像同士を比較する方法を採る。
【0012】
一方、吸収体パターンの形状を設計するときの設計データを読み込んで、適切なフィルタ処理を実施した後に、チップ画像と比較してその差を検出するダイ−データベース比較方式もある。
【0013】
このフィルタは、マスクの製造過程や検査光学系の解像特性、センサの特性などによって、実際の検査画像が劣化する分を想定して、設計側のデータにも劣化処理を施して実際の検査画像にあわせるためのものである。
【0014】
また、この種のマスクパターンの欠陥検査技術としては、描画用パターンデータを的確に補正してパターン検査用データとし、パターン欠陥検査装置により得られる画像データに対するパターン検査用データの相違が生じないようにし、これらパターン検査用データと画像データとの比較により精度よく欠陥を検出するものが知られている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−282008号公報
【特許文献2】特開2004−212221号公報
【特許文献3】特開2004−61289号公報
【特許文献4】特開2004−77390号公報
【特許文献5】特開2007−11169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、上記のようなEUV投影露光装置によりEUVL用マスク上のパターン欠陥の検査技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0017】
すなわち、EUVリソグラフィ装置では、投影光学系を構成するミラーの表面ラフネスに起因して散乱される迷光(フレア)が増大し、EUVL用のマスクM1上のパターンを半導体ウエハ上に縮小転写するときに、本来暗くなるはずのパターン部もこのフレアの影響を受ける。
【0018】
その結果、パターンの周囲が明るい場合は、投影されるパターンの像の線幅が変化する。波長の2乗に反比例して全散乱光量が増えるので、従来の光リソグラフィと比べて1桁小さい波長の光を用いるEUVLでは、フレアの量は2桁以上増大する。
【0019】
さらに、着目するパターンを中心にμmあるいはmmのオーダーの距離の範囲内にどれだけ明るい部分が存在するかによって、パターンに与えるフレアの影響が異なる。
【0020】
したがって、EUVL用マスク上では、設計上は同一形状のパターンであっても、そのパターンを含むチップ位置に応じて異なるフレア補正図形がパターンに付与される。従来光リソグラフィで駆使されてきた光学的近接効果補正(OPC)は、隣接するパターンも含め同一パターン図形であれば同一の補正図形を付加すればよかった。
【0021】
しかし、EUVLでは、隣接するパターンを含めて同一パターン図形であっても、チップサイズレベルの範囲内でのパターン密度に応じてフレア補正を施す必要があり、この点が従来のOPCとは異なる。
【0022】
したがって、図15に示すように、チップA内に存在する吸収体パターン73とチップA’内に存在する吸収体パターン74とは、設計上は同一形状のパターンであってもマスク上では異なる寸法を有する。そのため、従来のダイ−ダイ比較方式比較方式では、正確な検査ができないという問題がある。
【0023】
一方、ダイ−データベース比較方式を採用すれば、前記のような異なる寸法に起因する検査精度の劣化を防止することができる。しかしながら、前述のフィルタ処理には膨大な演算量を必要とし、検査の精度確保と検査の高速性とを両立させることが困難である。
【0024】
本発明の目的は、同じパターンが繰返し描かれた複数のチップパターンを有するマスクのパターン欠陥検査を行うにあたり、チップパターン毎に付与される互いに異なるフレア補正図形の差を考慮して、ダイ−ダイ比較方式と同等の方式によってパターン検査を行うことができる技術を提供することにある。
【0025】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0027】
本発明は、EUV用マスクに形成された複数のチップパターンにおけるパターン欠陥の有無を判定するパターン検査方法であって、複数のチップパターンのうち、比較対象の基準となる基準チップパターンの任意の検査領域に、光または電子線を照射し、該基準チップパターンの任意の領域からの反射光、2次電子、または反射電子を撮像手段により取り込んで基準測定パターンを取得するステップと、複数のチップパターンのうち、基準チップパターン以外の比較用チップパターンの任意の検査領域に、光または電子線を照射し、比較用チップパターンの任意の検査領域からの反射光、2次電子、または反射電子を撮像手段により取り込んで比較用測定パターンを取得するステップと、基準チップパターンから取得した基準測定パターン、および比較用チップパターンから取得した比較用測定パターンのパターン形状を補正する補正データを読み込み、該補正データに基づいて、基準測定パターン、および比較用測定パターンのパターン形状をそれぞれ補正するステップと、補正した基準測定パターンのパターン形状と補正した比較用測定パターンのパターン形状とを比較し、パターンの欠陥の有無を判定するステップとを有するものである。
【0028】
また、本発明は、EUV用マスクに形成された複数のチップパターンにおけるパターン欠陥の有無を判定するパターン検査装置であって、複数のチップパターンのうち、基準チップパターン、および基準チップパターン以外の比較用チップパターンの任意の検査領域からの反射光、2次電子、または反射電子を検出し、基準測定パターン、および比較用測定パターンをそれぞれ取得する検出部と、検出した基準測定パターン、および比較用測定パターンの位置を検出する位置回路と、検出した基準測定パターン、および比較用測定パターンを格納するパターンメモリと、チップパターンの任意の領域毎にEUVリソグラフィで発生するフレアの影響を補正するフレア補正データが格納されたフレアマップ格納部と、位置回路が検出した位置に対応するフレア補正データをフレアマップ格納部から取得し、パターンの形状補正量に変換する補正データ生成部と、パターンメモリに格納された基準測定パターン、および比較用測定パターンを補正データ生成部が生成した形状補正量に基づいてパターン補正し、補正した基準測定パターンと比較用測定パターンとを比較し、パターンの欠陥の有無を判定する比較部とを備えたものである。
【0029】
さらに、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0030】
本発明は、マスクパターンデータに付与するフレア補正図形情報をあらかじめ抽出し、この補正量をマスクパターンの領域ごとの固有情報として格納するフレアマップデータを作成した。まず、従来のダイ−ダイ比較と同様、第1チップの検査画像を取り込み、メモリに格納する。同時に、第1チップ領域に応じたフレア補正量を読み込む。次に、第2チップの検査画像を取り込み、第1チップの検査画像と比較処理を行う。このとき、同時に第2チップ領域に応じたフレア補正量も読み込み、フレア補正量の差を考慮した比較演算処理を行う。そして、比較の結果、差が認められたときに欠陥と認識するものである。
【0031】
また、フレア補正量の差を考慮した比較演算では、第1チップの検査画像と第2チップの検査画像との差がフレア補正量の差と同等になるかを調べる方法や、各チップの検査画像からそれぞれ固有のフレア補正量を差し引く演算を行ってから、その補正された検査画像を比較する。
【0032】
尚、マスク上に形成される半導体集積回路パターンのデータは通常、階層構造となっているが、フレア補正データは必ずしも階層構造である必要はなく、フラット展開構造でもよい。
【発明の効果】
【0033】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0034】
(1)EUV用マスクであっても、ダイ−ダイ比較方式と同等の方式でパターン検査を行うことができる。
【0035】
(2)上記(1)により、EUV用マスクにおけるパターンの欠陥検査を、高精度にかつ高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1によるマスクパターン欠陥検査装置の構成例を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるマスクパターン欠陥検査装置の検査光学系のみが異なる場合の構成例を抽出して示した説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1による同一パターン図形に異なる補正データが付加されてサイズが異なった2つのマスクパターンの例を示す説明図である。
【図4】図1のマスクパターン欠陥検査装置に用いられる補正データをマスク上の領域に応じて付与する補正データマップの一例を示す説明図である。
【図5】多層膜マスク上の検査ストライプと検査用センサの画素を示す説明図である。
【図6】チップ領域中のパターンと画像取り込み時の画像画素との関係を示す説明図である。
【図7】1行分のセンサ画素列に取り込まれる検査画像の強度とセンサ面に結像する検査像光強度分布とを示す説明図である。
【図8】図1のマスクパターン欠陥検査装置における検査ストライプ1本分の検査画像の処理工程を示すタイムチャートである。
【図9】図1のマスクパターン欠陥検査装置におけるマスク欠陥検査の処理フローを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2による検査ストライプ1本分の検査画像の処理工程を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の実施の形態3によるマスクパターン欠陥検査装置の構成例を示す説明図である。
【図12】本発明者が検討したEUVL用マスクの構造例を示す説明図である。
【図13】本発明者が検討したEUVL用マスクパターンを半導体基板上に転写するEUV投影露光装置の概要を示す図である。
【図14】本発明者が検討したマスクに描かれている複数のチップあるいはパターンの構成と検査ストライプとの関係を示す図である。
【図15】本発明者が検討したパターン設計上は同一であるがマスク上の異なる位置に配置される為に異なるサイズを有する、互いに比較処理を行うパターンの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるマスクパターン欠陥検査装置の構成例を示す説明図、図2は、マスクパターン欠陥検査装置の検査光学系のみが異なる場合の他の構成例を示した説明図、図3は、本発明の実施の形態1による同一パターン図形に異なる補正データが付加されてサイズが異なった2つのマスクパターンの例を示す説明図、図4は、図1のマスクパターン欠陥検査装置に用いられる補正データをマスク上の領域に応じて付与する補正データマップの一例を示す説明図、図5は、多層膜マスク上の検査ストライプと検査用センサの画素を示す説明図、図6は、チップ領域中のパターンと画像取り込み時の画像画素との関係を示す説明図、図7は、1行分のセンサ画素列に取り込まれる検査画像の強度とセンサ面に結像する検査像光強度分布とを示す説明図、図8は、図1のマスクパターン欠陥検査装置における検査ストライプ1本分の検査画像の処理工程を示すタイムチャート、図9は、図1のマスクパターン欠陥検査装置におけるマスク欠陥検査の処理フローを示すフローチャートである。
【0039】
本実施の形態1において、マスクパターン欠陥検査装置10は、図1に示すように、EUV露光用のモリブデン(Mo)、およびシリコン(Si)などからなる多層膜マスクMがマスクステージ11に固定されており、マスクステージ制御回路12により、X,Y,θ方向にそれぞれ移動される。
【0040】
多層膜マスクMの固定は、側面を支持する方法や裏面を静電チャックする方法がある。多層膜マスクMの位置は、レーザ測長系13によりマスクステージ11の位置として後述する位置回路25に送られる。
【0041】
一方、光源14から発する検査光は、照明光学系15やビームスプリッタ17を介して多層膜マスクM上のパターンを照明する。検査光としては、波長が190nm程度から270nm程度までのDUV(遠紫外)光を用いるのが一般的である。
【0042】
多層膜マスクMからの反射光は、ビームスプリッタ17、レンズPL1,PL2を含む拡大結像光学系PLを介してパターンの拡大像を検出部を構成するセンサ18の受光面上に形成する。このとき、従来と同様に、幅150μm〜250μm程度の細い短冊状の検査領域に分割し、この検査領域が連続的に走査されるようにマスクステージ11を移動させ、検査が実行される。検査光の光量は光量モニタ16により常時あるいは適宜計測される。
【0043】
センサ18の受光面上に形成されたパターンの拡大像は光電変換され、さらに検出部を構成するセンサ回路19によりA/D(Analog/Digital)変換され、測定されたパターン像データを生成する。
【0044】
このデータは、位置回路25から出力されたマスクステージ11の位置情報とともに、パターンメモリ20、または比較部となる比較回路23に送られる。センサ回路19からの像データの出力のタイミング制御は、タイミング制御回路24から出力される走査制御信号によって行われる。パターンメモリ20は、短冊状の検査領域全長にわたる像パターンデータを格納できる容量を備えている。
【0045】
また、検査を実施して像パターンデータを格納している最中であっても、既に格納されたデータを読み出すことと、新たに格納する像データの書き込みとを同時に動作可能とするように構成されている。
【0046】
マスクの領域ごとに異なる値を有するフレア補正データとなるフレア補正量は、マスク検査の実行に先立ってフレアマップ格納部26に格納される。この補正量は、補正データ生成部である補正データ生成回路22で後述するように、補正データとなるパターンの形状補正量に変換されて比較回路23に送られる。
【0047】
尚、図中、21は検査装置全体を制御するシステム制御コンピュータ、27は各種データや検査結果を格納する記録装置、28はパターンモニタ、29は画像出力部である。
【0048】
図1では、多層膜マスクMは、マスクステージ11上の静電チャックに固定され、パターン面が下向きに構成された例を示したが、図2に示すように、多層膜マスクMは、パターン面を上側に配置し、マスクステージ11の上側に載置される構成としてもよい。
【0049】
この場合、多層膜マスクMは、マスクステージ11上に固定されてもよいし、3点支持で置くだけでもよい。多層膜マスクMを照明する検査光は、該多層膜マスクMの上側から入射し、反射光は拡大結像光学系PLを介してセンサ18上に拡大像を形成する。以後、データの取り扱いや検査装置の構成は、図1に示す構成と同様である。
【0050】
図3は、多層膜マスクM上の2チップから同一パターンデータで表現されるパターンを抽出して示した図である。たとえば、図3(a)は、マスク検査を開始して最初にパターンメモリ20に格納されるデータであり、図3(b)は、隣接するチップの同一形状パターンである。
【0051】
図3(a)および、図3(b)に示すように、同一マスク上に複数のチップが配置されると、チップ内の同一パターンであってもマスクの領域の差によって、異なるパターンバイアスが付加されている。
【0052】
すなわち、図3(a)では、本来のパターン30の形状に対してC1だけパターンの辺が外側に移動した図形31(図6のハッチング部分)、図3(b)では、パターン30と同一形状であるべきパターン32に対してC2だけパターンの辺が外側に移動した図形33(図6のハッチング部分)となっている。
【0053】
この、バイアス量C1やバイアス量C2はマスク上の領域によって異なるので、図4に示すように、多層膜マスクMのパターン領域34を複数の領域に分割し、それぞれの領域に対してバイアス量(Am,n)を定義し、これをフレアマップとして検査装置の入力データとする。
【0054】
このデータが、図1に示すフレアマップ格納部26に格納されるデータである。図4に示す領域を分割する境界線35は、マスクパターンの密度や形状、あるいは使用する露光装置によって異なる形状をとるのが一般的であり、また、バイアス量が一定の領域の面積は互いに異なる場合もある。
【0055】
どのような場合であっても、対象とするパターン、あるいは連続するパターンの一部の座標とバイアス量とが対応できるようにフレアマップが構成されている。このデータは、半導体集積回路パターンのデータと比べると複雑ではないので、必ずしも階層構造である必要はなく、フラット構造でもよい。
【0056】
次に、図5、図6、ならびに図7を用いて、マスクパターンの検査画像収集と比較の方法を説明する。
【0057】
まず、図5に示すように、多層膜マスクM上のパターンを幅200μm程度の細長い短冊状の検査領域となる検査ストライプ42に分割し、検査ストライプ42内のマスクパターン拡大検査像が複数の画素41の強度としてセンサに連続的に取り込まれるように、マスクステージ11を走査制御する。
【0058】
センサとしては、画素方向が2048画素、積算方向の画素数が512段のTDI(Time Delay Integration)センサを用いる。このTDIセンサは、マスクステージの走査と同期して矢印40の示す方向に電荷を1段ずつ転送することで、電荷を蓄積段数分だけ蓄積して出力することができる。尚、ストライプの幅やセンサの画素数については上記の数値に限定されることはない。
【0059】
図6は、図3に示した2個のパターン、すなわち異なるチップに含まれるが設計上は同一形状を有するパターンがセンサに取り込まれたときの画素との位置関係を示す図である。
【0060】
この図6において、縦方向の点線43はTDIセンサの画素の電荷蓄積方向(すなわちパターンの走査方向)の境界線を、横方向の点線44はTDIセンサの画素方向の境界線を表している。
【0061】
ここで、特定の画素列を抽出した例を示し、適切なアルゴリズムで検査画像を比較する比較回路23で行われる画像比較の方法の例を説明する。
【0062】
図7は、図6に示す検査画像からB−B’で示した1行分の画素列だけを抽出して、パターン付近の検査画像の光強度分布と画素強度を模式的に示した図である。図7(a)において、光強度分布を表す曲線45はフレア補正量がC1(図6左側のハッチング部分)である吸収体パターン近傍の検査画像の光強度分布を表している。
【0063】
この光強度分布は滑らかな曲線で表されるが、画素に取り込まれる検査像は1画素内の光強度を積分した値となるので、離散的な検出信号列となる。たとえば、画素45−1と画素45−5は吸収体パターンのない部分の検査像強度を、画素45−3は吸収体からの検査像強度を、画素45−2と画素45−4は、両者の中間の値をとる。ただし、この取り込んだ検出信号(画素強度)から、曲線45に相当するたとえばビットマップ展開データを生成して比較処理に備える。
【0064】
一方、図7(b)においも、曲線46はフレア補正量がC2(図6右側のハッチング部分)である吸収体パターン近傍の検査画像の光強度分布を表している。ここでは、フレア補正量としてC2>C1を仮定しているので、パターンエッジ部近傍で、曲線46は曲線45より小さい値になる。センサ画素に取り込まれる検査画像はこの差を反映した検出信号列となる。
【0065】
従来のダイ−ダイ比較処理では差があると判定されてしまうが、本実施の形態では次の処理を行うことにより同一パターンと判定できる。すなわち、フレア補正量C1とC2は検出するパターンごとに予め読み込まれているので、たとえば、図7(b)で得られる検査画像から吸収体パターンのエッジ位置を(C2−C1)だけ内側に移動させたときに得られる検査画像を計算すれば、図7(a)で得られる検査画像を再現することができる。
【0066】
実際、吸収体パターン部と吸収体のない部分とにおける検査光の反射率が既知であれば、パターンエッジ部近傍に対応する画素47−1,47−2の検査信号強度を補正することが可能である。
【0067】
また、別途投影像シミュレーションを行って、パターンエッジ位置が移動した場合の1画素に蓄積される光量の変化をテーブルとして作成しておき、適宜参照してもよい。さらに、パターンエッジ位置がセンサ画素の中央部に存在する場合は画素強度の変更は予測しやすいが、パターンエッジ位置が画素の境界付近にある場合は、隣接する複数の画素において、それぞれの画素において積算される検査像強度から吸収体の存在する部分と存在しない部分との比を予測し、エッジ位置の移動量(C2−C1)から、新たな画素強度を予測できる。
【0068】
以上の処理により、図7(b)で得られる検査画像の光強度分布を表す曲線46から、新たな光強度分布を表す曲線47をたとえばビットマップ展開データとして生成して、これを図7(a)に示す検査画像の光強度分布を表す曲線45を示すビットマップ展開データと比較する。もし、パターン欠陥がなければ比較した光強度分布は精度よく一致する。
【0069】
尚、上記のエッジ位置の移動量(C2−C1)は、検出すべき欠陥より小さいと思われるが、このエッジ位置の内側への移動の処理によって欠陥部が小さくなる場合もありうる。
【0070】
その場合、たとえば前記の図7(a)で得られた検査画像から吸収体パターンのエッジ位置を(C2−C1)だけ外側に移動させて図7(b)と比較すればよい。ただし、このエッジ位置の外側への移動によっても、検出すべき欠陥のサイズが小さくなるように処理される場合もあるので、(C2−C1)の量があるレベルを超える場合は、両方の演算処理を行うことが望ましい。
【0071】
図8は、本実施の形態の検査装置において、検査ストライプ1本分の処理工程を説明するためのタイムチャートである。
【0072】
ここで、例示する被検査マスクのチップ構成は、図14に示すように、検査ストライプ長さ方向(X方向)に、基準チップパターンとなるチップA(図14ではチップ70)と比較用チップパターンとなるチップA’(図14ではチップ71)とが配置されているものとする。時刻t1で多層膜マスクMを走査開始するとともにセンサ18をスタンバイ状態にする。
【0073】
同時に、これから読み込むパターンデータのフレア補正量データを読み込む。フレア補正量データの読み込みは、以後適宜行われる。時刻t2でセンサ18の画素がチップAに差し掛かると、ステージ位置とセンサ画像との位置関係を記憶すると同時にチップAの検査画像データを取り込み、以後パターンメモリ20にデータを取り込む。
【0074】
時刻t3でチップAからの画像データ取り込みを終了する。センサ18の画素がチップA’に差し掛かる時刻t4で、ステージ位置とセンサ画像との位置関係を記憶すると同時にチップA’の検査画像データの取り込みを開始する。
【0075】
時刻t4とt5の間では、前述した画像処理を用いたダイ−ダイ比較処理が行われる。フレア補正量データは適宜読み込まれる。ダイ−ダイ比較を行う方法は、チップA’から取り込まれたパターンデータを比較回路23に入力する。これと並行して、パターンメモリ20から、先に記録してあるチップAの区切りに相当するメモリ番地からパターンデータを順次読み出して、比較回路23に入力する。
【0076】
比較回路23は、二つのデータを比較して、欠陥判定を行う。比較回路23は適切なアルゴリズムに従って2つの測定パターンデータを比較し、一致しない場合は欠陥ありと判定する。
【0077】
X方向のチップ構成数が3つ(チップA、チップA’、チップA”)の場合は、比較用チップパターンとなる3目のチップA”の測定パターンデータを取り込む際に、最初のチップAの測定パターンデータを再度パターンメモリ20から読み出すことと、チップA”の測定パターンデータを比較回路23に並列に送り込んで、欠陥判定を行わせる。
【0078】
X方向のチップ構成数が4つ以上の場合も同様である。1ストライプ分の複数チップの画像を取り込み終わった時点で、比較回路23での比較判定処理の終了を待ち、次のストライプの検査画像取り込みに進み、マスク上の所定の全ストライプの処理が終了した段階でマスク検査を終了する。
【0079】
検査ストライプの幅方向(Y方向)に繰り返されているチップ同士を比較する際には、各チップの開始Y座標に基づいて、検査ストライプ位置(Y座標)を調整して、画像画素の差し掛かり具合を一致させる。
【0080】
以上の検査画像取り込みと比較処理のフローをまとめて図9に示す。
【0081】
すなわち、多層膜マスクM上の検査すべき領域において最初の検査ストライプを指定した後に、マスクステージ11を連続移動させることにより、多層膜マスクMを走査させて検査画像の取り込みを開始する(ステップS101)。チップAの領域に入ったら、センサ18により、チップAの検査画像データを取り込み、同時にフレアマップ格納部26から対応するフレア補正量のデータを適宜読み込む(ステップS102)。フレア補正量のデータはマスクの領域に応じて定義されており、必ずしもチップ内で一つの値とは限らない。
【0082】
さらに、検査画像のパターンメモリ20への取り込みを合わせて行う(ステップS103)。次に、マスクステージ11の継続的な連続移動によりセンサ18の画素がチップA’に差し掛かったら、チップA’の検査画像データの取り込みを行うとともに、フレアマップ格納部26から適宜フレア補正量データをパターン輪郭の辺のシフト量として取り込む。
【0083】
同時に、これらのデータと、パターンメモリ20から読み出したチップAのパターンデータとを比較回路23に入力する(ステップS104)。比較回路23では、前述したアルゴリズムにより2つのチップの画像比較を行い、欠陥の有無を判定する(ステップS105)。もし欠陥が見出された場合は、必要に応じて欠陥情報の表示や記録を行う。
【0084】
1つのストライプ上に3つ以上のチップがあるかを判断し(ステップS106)、もし存在する場合は、同様に3つ目以降のチップについて同様な比較処理と欠陥の有無の判定を継続する(ステップS107)。
【0085】
1つのストライプ上の処理がすべて終了したら、マスク上の所定領域の欠陥検査が終了したかを判定する(ステップS108)。未終了の場合は新たな検査ストライプを指定して(ステップS109)、マスクステージ11の新たな位置決めにより、多層膜マスクMを次のストライプのスタート位置に位置決めし、ステップS101の処理に戻って比較検査を繰り返す。マスク上の所定領域のすべてのストライプ上の処理が終了した時点で、欠陥検査を終了する。
【0086】
なお、本実施の形態では、多層膜マスクMを照明する検査光としてDUV光を用いる場合を示したが、該多層膜マスクMに電子線を照明し、シンチレータと光電子増倍管などを組み合わせた電子検出器をセンサとして用いても、検査画像のダイ−ダイ比較処理は全く同様に行うことができる。
【0087】
さらに、本実施の形態では反射型マスクの検査を対象として説明したが、検査像のパターンエッジ位置を移動させてからダイ−ダイ比較を行う方法は、透過型マスクにも適用できることは言うまでもない。
【0088】
それにより、本実施の形態1によれば、同じパターンが繰り返し描かれた複数のチップを有するマスクのパターン欠陥検査を行うにあたり、チップあるいはチップ内の位置に応じて異なるフレア補正が施されていても、このフレア補正図形の差を考慮して、従来のダイ−ダイ比較方式と同等の方式でパターン検査を行うことができる。
【0089】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2による検査ストライプ1本分の検査画像の処理工程を示すタイムチャートである。
【0090】
本実施の形態2では、フレア補正量を取り込んだ画像比較の判断処理が検査画像取り込み速度より遅い場合の検査方法を説明する。前記実施の形態1によれば、比較処理が間に合わない場合であり、タイミングエラーを起こすことになる。
【0091】
しかし、本実施の形態2においては、パターンメモリ20(図1)は、ストライプ全長にわたるすべてのチップの測定画像データを格納可能な容量を備えている。また、ストライプのなかの画像比較処理による検査中であってパターン格納途上であっても、新たに取り込み中の検査画像データの書き込みと、既に格納済みの当該測定パターンデータの読み出しを並行して行うことが可能な構成となっている。さらに、現在取り込み中のチップ以前の、その検査ストライプでの格納済みの測定パターンデータを読み出すことも可能とする。
【0092】
この構成で、検査ストライプの先頭から第1のチップAの測定パターンデータをパターンメモリ20に格納する。次に第2のチップA’の画像の測定パターンデータをパターンメモリ20に格納開始するのと同時に、パターンメモリ20からチップAの検査画像データとチップA’の測定画像データを並行して読み出して比較回路23に並列に送り込み欠陥判定を行わせる。
【0093】
パターンメモリ20からの読み出しは、比較回路23での比較判定処理の進行に応じて行われることになる。従って、比較回路23での比較判定処理がチップの検査画像取り込み速度より遅い場合であっても、パターンメモリ20への書き込みが先行するだけで、測定パターンデータの格納と比較処理は進められる。
【0094】
比較回路23でのチップAとチップA’の画像の比較判定処理が、チップA’の画像の取り込みが終わった時点で完了していない場合であっても、マスクステージの走査は続き、引き続き第3以降のチップの画像取り込みを進める。
【0095】
比較回路23での比較判定処理は追って進行する。1ストライプ分の複数チップの画像を取り込み終わった時点で、比較回路23での比較判定処理の終了を待ち、この処理が終了したら次のストライプの検査を進める。
【0096】
また、図10に示すように、まず、ひとつの検査ストライプ全長にわたるデータと適宜対応するフレア補正量データを取り込み、次に、パターンメモリ20から測定データを読み出して、その後に検査画像の比較と欠陥の有無の判定を行うことも可能である。
【0097】
それにより、本実施の形態2では、フレア補正量を取り込んだ画像比較の判断処理が検査画像取り込み速度より遅い場合であっても、タイミングエラーを起こすことなく、ダイ−ダイ比較方式によるパターン検査を行うことができる。
【0098】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3によるマスクパターン欠陥検査装置の構成例を示す説明図である。
【0099】
本実施の形態3では、第1のチップAの検査画像をパターンメモリ20に格納するに先立って、事前にフレア補正データC1の影響を差し引いて得られる検査画像予測値を演算し、これを格納する例を説明する。
【0100】
これは、フレア補正データが無いときに得られる検査画像に相当し、もし、チップAのパターンに対するフレア補正量がゼロであれば、補正データの影響を差し引く処理を省略することができる。
【0101】
図11は、本実施の形態を実現する検査装置の構成を示した構成図である。
【0102】
前記実施の形態1で説明した検査装置(図1)との違いは、センサ回路19で得られたチップの検査画像データを一旦補正データ生成回路22に送り、上記の演算処理を施した後にパターンメモリ20に格納するように構成としたことである。その他の構成は、図11と図1とは同一である。
【0103】
検査ストライプ1本分の処理工程において、フレア補正量がゼロに相当するチップAの検査画像データをパターンメモリ20に格納した後、第2のチップA’の検査画像データの取り込みを行う。
【0104】
このデータは比較回路23に入力される。これと並行して、パターンメモリ20から、先にフレア補正量がゼロに相当する検査画像として記録してあるチップAのパターンデータを順次読み出して、比較回路23に入力する。
【0105】
比較回路23は、二つのデータを比較して欠陥判定を行うが、チップA’の検査画像については、対応するフレア補正量C2を補正データ生成回路22で読み出し、吸収体パターンのエッジ位置をC2だけシフトさせたときに得られる検査画像を計算し、これと第1のチップAの補正された検査画像を比較する。
【0106】
したがって、実際に比較する検査画像データはいずれもフレア補正データを差し引いた設計パターンの検査画像を比較することに相当する。この比較処理と適切なアルゴリズムに従って2つの測定パターンデータを比較し、一致しない場合は欠陥ありと判定する。
【0107】
別な形態として、第1のチップAのみでなく、第2のチップ以降についても、それぞれのパターンの検査画像を取り込んだ後、対応するフレア補正量のデータがゼロ以外の場合は、補正データ生成回路22に送り、フレア補正量を表す補正データの影響を差し引く処理を行った後、順次パターンメモリ20に格納し、ストライプ内の検査画像データ収集が終了した後に、適宜チップA,A’の補正された検査画像を比較回路23に読み出して比較処理を行うこともできる。
【0108】
それにより、本実施の形態3においては、領域ごとに異なるフレア補正量が付与されていても、ダイ−ダイ比較では、フレア補正量の影響を削除した検査画像同士を比較するので、安定した検査を実現することができる。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、多層膜マスクに形成されたパターンにおける欠陥検査技術に適している。
【符号の説明】
【0111】
10 マスクパターン欠陥検査装置
11 マスクステージ
12 マスクステージ制御回路
13 レーザ測長系
14 光源
15 照明光学系
16 光量モニタ
17 ビームスプリッタ
18 センサ
19 センサ回路
20 パターンメモリ
22 補正データ生成回路
23 比較回路
24 タイミング制御回路
25 位置回路
26 フレアマップ格納部
30 パターン
32 パターン
34 パターン領域
35 境界線
40 矢印
41 画素
42 検査ストライプ
43 点線
45 曲線
46 曲線
47 曲線
51 基板
52 多層膜
53 キャッピング層
54 バッファ層
55 吸収体パターン
61 光源
62 照明光学系
63 縮小投影光学系
64 半導体ウエハ
65 ステージ
65 メタル膜
70 チップ
71 チップ
150 幅
200 幅
M 多層膜マスク
PL1 レンズ
PL 拡大結像光学系
M1 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV用マスクに形成された複数のチップパターンにおけるパターン欠陥の有無を判定するマスクパターンの検査方法であって、
前記複数のチップパターンのうち、比較対象の基準となる基準チップパターンの任意の検査領域に、光または電子線を照射し、前記基準チップパターンの任意の領域からの反射光、2次電子、または反射電子を撮像手段により取り込んで基準測定パターンを取得するステップと、
前記複数のチップパターンのうち、前記基準チップパターン以外の比較用チップパターンの任意の検査領域に、光または電子線を照射し、前記比較用チップパターンの任意の検査領域からの反射光、2次電子、または反射電子を撮像手段により取り込んで比較用測定パターンを取得するステップと、
前記基準チップパターンから取得した基準測定パターン、および前記比較用チップパターンから取得した比較用測定パターンのパターン形状を補正する補正データを読み込み、前記補正データに基づいて、前記基準測定パターン、および前記比較用測定パターンのパターン形状をそれぞれ補正するステップと、
補正した前記基準測定パターンのパターン形状と補正した前記比較用測定パターンのパターン形状とを比較し、パターンの欠陥の有無を判定するステップとを有することを特徴とするマスクパターンの検査方法。
【請求項2】
請求項1記載のマスクパターンの検査方法において、
前記基準測定パターン、および前記比較用測定パターンのパターン形状をそれぞれ補正するステップは、
取得した前記基準測定パターンのパターン形状をパターンメモリに格納するステップと、
取得した前記比較用測定パターンのパターン形状をパターンメモリに格納するステップと、
前記パターンメモリに格納された前記基準測定パターンのパターン形状を前記補正データに基づいて補正するステップと、
前記パターンメモリに格納された前記比較用測定パターンのパターン形状を前記補正データに基づいて補正するステップとを有することを特徴とするマスクパターンの検査方法。
【請求項3】
請求項1記載のマスクパターンの検査方法において、
前記基準測定パターン、および前記比較用測定パターンのパターン形状をそれぞれ補正するステップは、
取得した前記基準測定パターンのパターン形状をパターンメモリに格納するステップと、
前記パターンメモリに格納された前記基準測定パターンのパターン形状を前記補正データに基づいて補正するステップと、
取得した前記比較用測定パターンのパターン形状を前記補正データに基づいて補正するステップとを有することを特徴とするマスクパターンの検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスクパターンの検査方法において、
前記補正データは、EUVリソグラフィで発生するフレアの影響を補正するデータであることを特徴とするマスクパターンの検査方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスクパターンの検査方法において、
前記EUV用マスクは、多層膜マスクであることを特徴とするマスクパターンの検査方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマスクパターンの検査方法において、
前記基準チップパターンは、
前記EUV用マスクのコーナ部に最も近い位置に形成されているチップパターンであることを特徴とするマスクパターンの検査方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のマスクパターンの検査方法において、
前記EUV用マスクに用いられる露光波長は、中心波長が13.5nmであることを特徴とするマスクパターンの検査方法。
【請求項8】
EUV用マスクに形成された複数のチップパターンにおけるパターン欠陥の有無を判定するマスクパターン検査装置であって、
前記複数のチップパターンのうち、基準チップパターン、および前記基準チップパターン以外の比較用チップパターンの任意の検査領域からの反射光、2次電子、または反射電子を検出し、基準測定パターン、および比較用測定パターンをそれぞれ取得する検出部と、
検出した前記基準測定パターン、および前記比較用測定パターンの位置を検出する位置回路と、
検出した前記基準測定パターン、および前記比較用測定パターンを格納するパターンメモリと、
前記チップパターンの任意の領域毎にEUVリソグラフィで発生するフレアの影響を補正するフレア補正データが格納されたフレアマップ格納部と、
前記位置回路が検出した位置に対応するフレア補正データを前記フレアマップ格納部から取得し、パターンの形状補正量に変換する補正データ生成部と、
前記パターンメモリに格納された基準測定パターン、および前記比較用測定パターンを前記補正データ生成部が生成した形状補正量に基づいてパターン補正し、補正した前記基準測定パターンと前記比較用測定パターンとを比較し、パターンの欠陥の有無を判定する比較部とを備えたことを特徴とするマスクパターン検査装置。
【請求項9】
EUV用マスクに形成された複数のチップパターンにおけるパターン欠陥の有無を判定するマスクパターン検査装置であって、
前記複数のチップパターンのうち、基準チップパターン、および前記基準チップパターン以外の比較用チップパターンの任意の検査領域からの反射光、2次電子、または反射電子を検出し、基準測定パターン、および比較用測定パターンをそれぞれ取得する検出部と、
検出した前記基準測定パターン、および前記比較用測定パターンの位置を検出する位置回路と、
検出した前記基準測定パターンを格納するパターンメモリと、
前記チップパターンの任意の領域毎にEUVリソグラフィで発生するフレアの影響を補正するフレア補正データが格納されたフレアマップ格納部と、
前記位置回路が検出した位置に対応するフレア補正データを前記フレアマップ格納部から取得し、パターンの形状補正量に変換する補正データ生成部と、
前記パターンメモリに格納された基準測定パターンを補正データ生成部が生成した形状補正量に基づいてパターン補正し、前記検出部が検出した前記比較用測定パターンを前記補正データ生成部が生成した形状補正量に基づいてパターン補正し、補正した前記基準測定パターンとパターン補正した前記比較用測定パターンとを比較し、パターンの欠陥の有無を判定する比較部とを備えたことを特徴とするマスクパターン検査装置。
【請求項10】
請求項8または9記載のマスクパターン検査装置において、
前記EUV用マスクは、多層膜マスクであることを特徴とするマスクパターン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−192634(P2010−192634A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34729(P2009−34729)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】