説明

マスクパターン描画方法及び装置

【課題】マスクパターン描画方法及び装置に関し、マスクにパターンを正確に描画するためのマスクパターン描画方法及び装置を提供することを目的としている。
【解決手段】素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのインコーナーまでの距離Dを算出する手段と、該距離Dがある一定の距離D0より短い場合には、素子領域層パターンのインコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、前記距離Dがある一定の距離D0より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えて素子領域層用マスクにパターン描画を行なうように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスク上に電子ビーム(電子線)でパターンを描画するマスクパターン描画方法及び装置に関し、更に詳しくは半導体デバイス製造のリソグラフィー技術に係り、マスクにパターンを描画するためのマスクパターン描画方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、ウェハ上にLSIパターンを形成するには、LSIパターンが形成されたマスクを用意し、このマスクに形成されたパターンを光露光装置によりウェハ上のレジストに一括転写する方法が広く採用されている。このマスクは、LSIのパターンが精度よく形成されている必要がある。そして、このLSIパターンを形成するのに成形アパーチャでビーム寸法や形状を可変する可変成形ビーム方式の電子線描画装置を用いる。
【0003】
図5は可変成形型電子電子ビーム描画装置の一概略例を示す図である。図において、1はCADデータ(オリジナルデータ)を作成するCADシステム、2はCADデータを描画用データに変換するデータ変換計算機、3は可変成形型電子ビーム描画装置本体4を制御する制御装置である。
【0004】
該可変成形型電子ビーム描画装置本体4は、電子銃5、ブランキング電極6、照射レンズ7、第1成形開口板8、成形偏向器9、第2成形開口板10、対物レンズ11、位置偏向器12及びステージ13から構成されている。14はステージ13に載置された描画材料としてのマスクである。
【0005】
このように構成された可変成形型電子ビーム描画装置のデータ変換計算機2はCADシステム1からCADデータを読み込み、描画データにデータ変換して制御装置3に送る。該制御装置3は、送られてきた描画データに基づいて各電源に指令を送ると、各電源(図示せず)は制御信号を生成し、電子銃5、ブランキング電極6、成形偏向器9、対物レンズ11、位置偏向器12に送る。
【0006】
すると、電子銃5から放出された電子ビームEBがブランキング電極6、第1成形開口板8、成形偏向器9、第2成形開口板10、対物レンズ11、位置偏向器12を通ってステージ13上のマスク14に照射される。第1成形開口板8には四角の開口が形成されており、矩形ビームが形成される。これが第2成形開口板10の開口を通過することにより、小四角形のビームサイズとなり、この小サイズの電子ビームでショット(1露光動作)を繰り返して一つの線像パターンをマスク14上のレジストに形成する。描画後に現像等をしてレジストパターンが形成されたマスク表面に遮光膜をエッチングして光露光用マスクを作成する。
【0007】
このように作成されたマスクを用いて、光露光用装置(例えばステッパ−)にて、マスクのパターンをウェハ上のレジストにパターン転写させる。このマスクを現像、前記転写等を繰り返して半導体デバイスを製造する。ところで、仕上がった半導体デバイスのLSIパターンの素子領域層は、ゲート層と重なる領域が、半導体デバイス電気特性に大きく影響するため、他の領域に比べて寸法精度の確保が重要となる。
【0008】
図6の(a)はL字状の素子領域層20のコーナー部に近接するところに帯状のゲート層21を重ねたレイアウトを示したものである。20はマスク上の素子領域層パターン、21はマスク上のゲート層パターンである。図6の(b)はこれらのレイアウトを有する諸マスクによって実際に形成された素子領域層22とゲート層23の位置を示している。ここで、ゲート層というのは、FET(電界効果トランジスタ)のゲート層のことを示す。図中の破線は、素子領域層パターン20の形状の仕上がり状態22を示し、実線は目標とする素子領域層パターン20の形状24を示している。
【0009】
図6の(b)に示すようにゲート層23が素子領域層24のコーナー部に近接する場合、仕上がった素子領域層22のインコーナー部分C−1が丸まって太ってしまうので、ゲート層23と重なる領域の素子領域層22の端部の形状(半導体デバイスの電気的特性に強く影響する部分)が目標の寸法よりも大きく形成され、予定した性能が得られなくなり、半導体デバイスの電気的特性が劣化してしまう。
【0010】
そこで、一般的にマスク上のパターンのコーナー部に対応する部分に、リソグラフィーで解像しない程度の大きさの凹部(インナーセリフという)を入れた方法がマスクのパターン形成で採用されている。これはOPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)と言われ、設計パターンよりもはるかに小さいパターンをマスクパターンに付加し、転写後のウェハのパターン形状と設計パターン形状とを近づける技術である。
【0011】
この方法を用いたマスクを図7の(a)に示す。図7はL字状の素子領域層のコーナー部にインナーセリフを入れた状態を示す図である。図中のようにマスクのL字状の素子領域層パターン20aのインコーナー部Cに凹状のOPCa(インナーセリフ)を入れる。そして、このようなマスクを用いて光露光装置(例えばステッパ−)で光露光した時の仕上がりレジストパターンを図7の(b)に示すように、インコーナー部の太りが抑えられる(C−2)ので、ゲート層23が重なる素子領域22aの端部の形状の寸法が目標寸法に近い値が得られるので、予定していた半導体デバイスの電気的特性が得られる。
【0012】
従来のこの種の装置としては、L字型マスクパターンであり、マスク上の活性領域1の角度が270°のコーナー部に対応する部分にリソグラフィで解像しない程度の大きさの凹部7bが主パターン7aに連続して形成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3419603号公報(段落0018〜0020、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このようなOPC付きのマスクを用いて光露光装置で露光しても、仕上がったLSIパターンのゲート層と重なる素子領域層側のパターンの寸法精度が十分でない場合がある。
【0015】
さて、前述したようにマスク上のパターンは、複雑な設計データを矩形に分割した多数の矩形図形の集まりからなる描画データに基づいて可変成形型電子ビーム描画装置にてパターンニングして形成する。マスク上に形成されたパターンは、大きさの異なるショットサイズの組み合せで描画されるため、各ショットには電子ビームの変動により位置や幅のばらつきを伴う。特に、ショットサイズが大きい場合、このばらつきがマスク上のパターンの寸法精度に反映されてしまう。
【0016】
即ち、マスク上のパターンのインナーセリフの形状・寸法は、コーナーラウンド(インコーナー部の太り)を効果的に抑えるために最適化されていても、このインナーセリフの形状・寸法・位置がずれてしまうと、コーナーラウンドの形状・寸法が変わり、その結果、ゲート層と重なる領域の素子領域層の端部の寸法が変わってしまう。
【0017】
例えば、図8の(a)に示すようにマスク上のパターン20bのコーナーのインナーセリフ部OPCbが目標よりも大きく形成された場合、図8の(b)に示すように仕上がった素子領域層22aのインコーナー部が凹んでしまい(C−3)、半導体デバイスの電気的特性に強く影響するゲート層と重なる部分の素子領域層の端部の寸法が目標寸法より小さく出来上がってしまう。
【0018】
また、図9の(a)に示すように、マスク上のパターン20cのコーナーのインナーセリフ部OPCcが目標よりも小さく形成された場合、図9の(b)に示すように仕上がったレジストパターンの素子領域層22bのインコーナー部が太ってしまい(C−4)、半導体デバイスの電気的特性に強く影響するゲート層と重なる部分の素子領域層の端部の寸法が大きく出来上がってしまう。
【0019】
また、図10の(a)に示すようにマスク上のパターン20dのコーナーのインナーセリフ部OPCdが最適化した寸法通りに形成されたとしても、素子領域層のインコーナーからゲート層と重なる領域までの距離において素子領域層の端部の形状が描画時にショットずれすると目標寸法どおりに形成されない場合、図10の(b)に示すように仕上がった素子領域層のゲート層と重なる端部の寸法が長くなったり、又は短くなったりしてしまう。
【0020】
以上説明したように、インナーセリフの形状、インコーナーからゲート層と重なる領域までの距離及びゲート層と重なる端部の寸法に寸法変動を有する素子領域層マスクを製造工程で使用してしまうと電気特性が劣化した半導体デバイスが製造されてしまう。
【0021】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、マスクにパターンを正確に描画するためのマスクパターン描画方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記した課題を解決するために、本発明は以下のような構成をとっている。
(1)請求項1記載の発明は、コーナー部を有するパターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置の半導体製造方法であって、マスク上のパターンのコーナー部に対応する部分に、リソグラフィで解像しない程度の大きさのインナーセリフを有するようにレイアウトされたパターンを用いて露光する方法において、素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのインコーナーまでの距離Dを算出し、該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのインコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なうことを特徴とする。
【0023】
(2)請求項2記載の発明は前記素子領域層はL字状、ゲート層は帯状であり、帯状のゲート層がL字状の素子領域層に重なり、該素子領域層のインコーナーからゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることを特徴とする。
【0024】
(3)請求項3記載の発明は、パターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置の半導体製造方法であって、素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのアウトコーナーまでの距離Dを算出し、該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのアウトコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なうことを特徴とする。
【0025】
(4)請求項4記載の発明は、前記素子領域層は長方形状、ゲート層は帯状であり、帯状のゲート層が長方形状の素子領域層に重なり、前記素子領域層のアウトコーナーから帯状のゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることを特徴とする。
【0026】
(5)請求項5記載の発明は、前記領域F1は最大ショットサイズが200nmのショットで描画を行ない、前記領域F2では、最大ショットサイズが2μmのショットで描画を行なうことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のマスクパターン描画方法。
【0027】
(6)請求項6記載の発明は、前記パターン描画をマスクではなく、ウェハ上に直接描画するようにしたことを特徴とする。
(7)請求項7記載の発明は、前記パターン描画をマスクではなく、ナノインプリント用マスクに対して行なうようにしたことを特徴とする。
【0028】
(8)請求項8記載の発明は、コーナー部を有するパターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置であって、マスク上のパターンのコーナー部に対応する部分に、リソグラフィで解像しない程度の大きさのインナーセリフを有するようにレイアウトされたパターンを用いて露光する装置において、素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのインコーナーまでの距離Dを算出する手段と、該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのインコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なう手段とを有することを特徴とする。
【0029】
(9)請求項9記載の発明は、パターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置において、素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのアウトコーナーまでの距離Dを算出する手段と、該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのアウトコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なう手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は以下に示すような効果を有する。
(1)請求項1記載の発明によれば、L字型パターンとゲートパターンとを描画する場合において、パターン描画領域を高解像度で描画する領域F1と、通常の解像度で描画する領域F2を求めて領域毎に異なる寸法精度でビーム描画するようにしたので、領域F1には高分解能描画を行ない、領域F2には通常分解能描画を行なうことができ、半導体パターンの精度を上げて、かつ高速にビーム描画を行なうことができる。
【0031】
(2)請求項2記載の発明によれば、素子領域層のインコーナーからゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることができ、前記異なる寸法精度で領域F1と領域F2を描画することができる。
【0032】
(3)請求項3記載の発明によれば、長方形パターンとゲートパターンとを描画する場合において、パターン描画領域を高解像度で描画する領域F1と、通常の解像度で描画する領域F2を求めて領域毎に異なる寸法精度でビーム描画するようにしたので、領域F1には高分解能描画を行ない、領域F2には通常分解能描画を行なうことができ、半導体パターンの精度を上げて、かつ高速にビーム描画を行なうことができる。
【0033】
(4)請求項4記載の発明によれば、素子領域層のアウトコーナーから帯状のゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることができ、前記異なる寸法精度で領域F1と領域F2を描画することができる。
【0034】
(5)請求項5記載の発明によれば、高分解能描画の時はショットサイズを200nmで行ない、通常分解能描画の時はショットサイズを2μmで行なうようにしたので、効率のよい描画を高精度で行なうことができる。
【0035】
(6)請求項6記載の発明によれば、本発明による描画方法を用いてウェハ上に直接描画することができ、工程をスキップして効率のようにウェハを作製することができる。
(7)請求項7記載の発明によれば、本発明によるパターン描画をナノインプリント用マスクに対しても行なうことができる。
【0036】
(8)請求項8記載の発明によれば、L字型素子領域パターンとゲート層パターンとを描画する場合において、描画領域を高解像度で描画する領域F1と、通常の解像度で描画する領域F2を求めて領域毎に異なる寸法精度でビーム描画するようにしたので、領域F1には高分解能描画を行ない、領域F2には通常分解能描画を行なうことができ、半導体パターンの精度を上げて、かつ高速にビーム描画を行なうことができる。
【0037】
(9)請求項9記載の発明によれば、長方形素子領域パターンとゲート層パターンとを描画する場合において、パターン描画領域を高解像度で描画する領域F1と、通常の解像度で描画する領域F2を求めて領域毎に異なる寸法精度でビーム描画するようにしたので、領域F1には高分解能描画を行ない、領域F2には通常分解能描画を行なうことができ、半導体パターンの精度を上げて、かつ高速にビーム描画を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の工程説明図である。
【図3】本発明の工程説明図である。
【図4】本発明の工程説明図である。
【図5】可変成形型電子ビーム描画装置の一概略例を示す図である。
【図6】L字状の素子領域層のコーナー部に近接するところに帯状のゲート層を重ねた図である。
【図7】L字状の素子領域層のコーナー部にインナーセリフを入れた状態を示す図である。
【図8】L字状の素子領域層のコーナー部にインナーセリフを入れた状態を示す図である。
【図9】L字状の素子領域層のコーナー部にインナーセリフを入れた状態を示す図である。
【図10】L字状の素子領域層のコーナー部にインナーセリフを入れた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
[実施例1]
図1は本発明の一実施例を示す構成図である。図において、図5と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、31はCADシステム1から送られてきた素子領域層オリジナルデータとゲート層オリジナルデータを記憶するメモリ、32は該メモリ31からの素子領域層オリジナルデータを読み出し、該素子領域層オリジナルデータの素子領域層のコーナー部を抽出する抽出部、33は該抽出部32からの素子領域層オリジナルデータと前記メモリ31からゲート層オリジナルデータを読み込んで、素子領域層のコーナー部の辺からゲート層(オリジナルデータ)までの距離Dを算出する距離算出部である。
【0040】
34は前記距離算出部33で算出された距離Dと予め設定された所定距離D0とを比較する判定部、35は該判定部34から素子領域層オリジナルデータを読み込み、素子領域層の角部の部分に凸部のOPCを付加し、素子領域層のコーナー部の部分に凹部のOPCを付加するOPC付加部、36は前記判定部34の判断結果と前記メモリ31から読み込んだゲート層オリジナルデータに基づいて前記OPC付加部35でOPC付加された素子領域層OPC付加後データを高い寸法精度が要求される領域F1と寸法精度が要求されない領域F2とに分類する分類分け部である。
【0041】
37は領域F1と領域F2に分類されたOPC付きの素子領域層パターンの形状に応じてパターンを描画可能な図形に分割するパターン分割部である。2はデータ変換計算機であり、メモリ31,抽出部32,距離算出部33,判定部34,OPC付加部35,分類分け部36及びパターン分割部37から構成されている。
【0042】
このような構成のデータ変換計算機2において、CADシステム1からゲート層が素子領域層のコーナー部に近接する素子領域層上にレイアウトされた素子領域層オリジナルデータとゲート層オリジナルデータがデータ変換計算機2内に送られると、メモリ31は素子領域層オリジナルデータとゲート層オリジナルデータを一旦記憶する。
【0043】
次に、抽出部32は、前記メモリ31から素子領域層オリジナルデータを読み込んで、第2図の(a)に示す素子領域層20’のコーナー部Cを抽出し、その結果を距離算出部33に送る。次に、距離算出部33は、前記メモリ31からゲート層オリジナルデータを読み込み、図2の(a)に示す素子領域層20’のコーナー部Cの辺からゲート層21’の側端部までの最短距離Dを算出する。
【0044】
次に、判定部34は、該算出された最短距離Dが予め設定された設定値D0、例えば400nmより小さいと判断した場合、その判断結果を分類分け部36に送る。次にOPC付加部35は、判定部34から素子領域層オリジナルデータを読み込み、図2の(a)に示すようなL字状の素子領域層パターン20’の角部及びコーナー部Cに図2の(b)に示すOPC(OP1,OP2,OP3,OP4,OP5)を角部に付加し、凹部のOPC(OP6)をコーナー部Cに付加する。
【0045】
次に、分類分け部36は、判定部34の判断結果と前記メモリ31から読み込んだゲート層オリジナルデータに基づいて素子領域層OPC付加後データのパターン領域を高い寸法精度が要求される領域F1とそれ以外の領域F2に設定する。
【0046】
判定部34で素子領域層パターン1のコーナー部Cの辺からゲート層21’の端部までの距離Dが設定値D0400nmより小さいと判断された場合、分類分け部36は、判定部34の判断結果に基づいて素子領域層OPC付きパターン内を図2の(c)に示すようにゲート層21’と重なる素子領域層パターン20’の両端部の斜線で示す領域と素子領域層のコーナー部Cのインナーセリフ部OPC6の周囲の斜線で示す領域を領域F1とし、その他の領域を領域F2と設定する。
【0047】
そして、パターン分割部37は、前記分類分け部36の素子領域層OPC付データのパターンに基づいて図2の(d)に示すように高い寸法精度が要求される領域F1を小さいショットSS、例えば最大ショットサイズが200nmの図形分割を行ない、高い寸法精度が要求されない領域F2を大きなショットLS、例えば最大ショットサイズが2μmのパターン描画を行なう。
【0048】
このように、素子領域層OPC付きデータのパターン領域を領域F1と領域F2に分けた描画データを作成したデータ変換計算機2はこの描画データを制御装置3に送る。該制御装置3は、送られてきた前記描画データに基づいて各電源(図示せず)に指令を送ると、各電源(図示せず)は制御信号を生成し、該制御信号をブランキング電極6、成形偏向器9、対物レンズ11、位置偏向器12に送る。
【0049】
すると、電子銃56から放出された電子ビームEBがブランキング電極6、第1成形開口板8、成形偏向器9、第2成形開口板10を通って形成された矩形ビームがステージ13上のマスク14上に順次ショットされる。
【0050】
一方、判定部34で素子領域層パターン20’のコーナー部Cの辺からゲート層21’の端部までの距離Dが設定値D0400nmより大きいと判断された場合、分類分け部36は、前記判定部34の判断結果に基づいて素子領域層パターン20’内を、図3の(c)に示すようにゲート層21’と重なる素子領域層20’の両端部の斜線で示す領域を領域F1に、その他の領域を領域F2に設定する。
【0051】
そして、パターン分割部37は、分類分け部36の素子領域層パターン20’の領域分けに基づいて図3の(d)に示すように高い寸法精度が要求されるF1を小さなショットSS、例えば最大ショットサイズが200nmの図形分割を行ない、高い寸法精度が要求されない領域F2を大きなショットLS、例えば最大ショットサイズが2μmのパターン分割を行なう。
【0052】
このようにL字状の素子領域層OPC付きパターンを領域F1とF2に分けた描画データを作成したデータ変換計算機2はこの描画データを制御装置3に送る。この描画データに基づいて可変成形型電子ビーム描画装置はサイズの異なる矩形ビームを形成し、該矩形ビームを素子領域層マスク上のレジストに順次ショットする。
【0053】
なお、前記実施例の素子領域層パターンのインコーナーからゲート層パターンまでの設定値D0は400nmとしたが、適用する光露光プロセス(露光、現像等)に対して最適化を行ない、変更することも可能である。
【0054】
また、距離Dの測定の始点は、インナーセリフを付加する前のオリジナル(近接効果補正処理を施す前の)の素子領域層のインコーナーとする。終点は、始点となるインコーナーから最も距離が近いゲート層のエッジ(インコーナーに近い方のエッジ)とする。領域1とするインナーセリフの領域は、インコーナーから400nm以内(4倍マスクならウェハ上では1/4の100nm以内となる)とする。
【0055】
実施例1によれば、L字型パターンとゲートパターンとを描画する場合において、パターン描画領域を高解像度で描画する領域F1と、通常の解像度で描画する領域F2を求めて領域毎に異なる寸法精度でビーム描画するようにしたので、領域F1には高分解能描画を行ない、領域F2には通常分解能描画を行なうことができ、半導体パターンの精度を上げて、かつ高速にビーム描画を行なうことができる。
【0056】
また、素子領域層のインコーナーからゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることができ、前記異なる寸法精度で領域F1と領域F2を描画することができる。
また、高分解能描画の時はショットサイズを200nmで行ない、通常分解能描画の時はショットサイズを2μmで行なうようにしたので、効率のよい描画を高精度で行なうことができる。
[実施例2]
実施例1において、帯状のゲート層(オリジナルパターン)がL字状の素子領域層に重なり、該素子領域層のインコーナーからゲート層までの距離Dをパラメータとして分割することとしたが、これを長方形状の素子領域層においてこの素子領域層のアウトコーナーから帯状のゲート層までの距離D1をパラメータとして分割することも可能である。
【0057】
データ変換計算機2が帯状のゲート層(オリジナルパターン)が長方形状の素子領域層と重なる素子領域層オリジナルパターンデータを読み込むと、メモリ31は素子領域層オリジナルデータとゲート層オリジナルデータを一旦記憶する。データ変換計算機2の抽出部32は、前記メモリ31から素子領域層オリジナルデータを読み込んで、図4の(a)に示す素子領域層20’’のアウトコーナーACを抽出し、その結果を距離算出部33に送る。
【0058】
次に、距離算出部33は、前記メモリ31からゲート層オリジナルデータを読み込み、図4の(a)に示すように素子領域層20’’のアウトコーナー部ACの辺からゲート層21’の端部までの最短距離D1を算出する。次に、判定部34は、該算出された最短距離D1が予め設定された設定値D0、例えば400nmより小さいと判断した場合、その結果を分類分け部36に送る。
【0059】
次に、OPC付加部35は、素子領域層パターン20’’に図4の(a)に示すような長方形状の素子領域層20’’の右上と右下の角部の部分に凸部のOPC(OP3’,OP4’)を付加する。次に、分類分け部36は、判定部34の判断結果と前記メモリ31から読み込んだゲート層オリジナルデータに基づいて素子領域層OPC付加後データのパターン領域を高い寸法精度が要求される領域F1と、それ以外の領域F2に設定する。
【0060】
次に、判定部34で素子領域層20’’のアウトコーナー部ACの辺からゲート層21’の端部までの距離D1を設定値D0400nmより小さいと判断された場合、分類分け部36は、判定部34の判断結果と素子領域層OPC付きパターン内を、図4の(a)に示すようにゲート層21’と重なる素子領域層20’’の両端部の斜線で示す領域から素子領域層の右上と右下の角部のOPCの領域までの領域をF1とし、その他の領域を領域F2とする。
【0061】
一方、判定部34が素子領域層パターン20’’のアウトコーナー部ACの辺からゲート層21’の端部までの距離D1を設定値D0400nmより大きいと判断した場合、分類分け部36は、前記判定部34の判断結果に基づいて素子領域層パターン領域を、図4の(b)に示すようにゲート層21’と重なる素子領域層20’’の両端の斜線で示す領域を領域F1とし、その他の領域を領域F2と設定する。
【0062】
実施例2によれば、長方形パターンとゲートパターンとを描画する場合において、パターン描画領域を高解像度で描画する領域F1と、通常の解像度で描画する領域F2を求めて領域毎に異なる寸法精度でビーム描画するようにしたので、領域F1には高分解能描画を行ない、領域F2には通常分解能描画を行なうことができ、半導体パターンの精度を上げて、かつ高速にビーム描画を行なうことができる。
【0063】
また、素子領域層のアウトコーナーから帯状のゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることができ、前記異なる寸法精度で領域F1と領域F2を描画することができる。
[実施例3]
実施例1と2において、マスクのパターンに対して本発明を適用しているが、半導体デバイス作成時のウェハ上のパターニングをEB直接描画で行なう場合に適用してもよい。
【0064】
実施例3によれば、本発明による描画方法を用いてウェハ上に直接描画することができ、工程をスキップして効率のようにウェハを作製することができる。
[実施例4]
実施例1と2において、マスクのパターンに対して本発明を適用しているが、ナノインプリント用マスク(モールド)のパターニングをEB直接描画で行なう場合に適用してもよい。
【0065】
実施例4によれば、本発明によるパターン描画をナノインプリント用マスクに対しても行なうことができる。
[実施例5]
実施例1と3において、領域F1とF2の2つの領域に分類しているが、3つ以上に分割し、それぞれ最大ショットサイズを変更して描画してもよい。
【0066】
以上説明した本発明によれば、素子領域層パターンの光露光用マスクの作製において、素子領域層パターンのコーナー部からゲート層パターンまでの距離Dをパラメータとして、このパラメータに基づいて高い寸法精度が要求される領域F1とそれ以外の領域F2に分割することにより、可変成形型電子ビーム描画装置において素子領域層パターンの光露光用マスクを描画する時のパターン寸法精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 CADシステム
2 データ変換計算機
3 制御装置
31 メモリ
32 抽出部
33 距離算出部
34 判定部
35 OPC付加部
36 分類分け部
37 パターン分割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーナー部を有するパターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置の半導体製造方法であって、マスク上のパターンのコーナー部に対応する部分に、リソグラフィで解像しない程度の大きさのインナーセリフを有するようにレイアウトされたパターンを用いて露光する方法において、
素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのインコーナーまでの距離Dを算出し、
該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのインコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、
前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、
前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なう、
ことを特徴とするマスクパターン描画方法。
【請求項2】
前記素子領域層はL字状、ゲート層は帯状であり、帯状のゲート層がL字状の素子領域層に重なり、該素子領域層のインコーナーからゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることを特徴とする請求項1記載のマスクパターン描画方法。
【請求項3】
パターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置の半導体製造方法でにおいて、
素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのアウトコーナーまでの距離Dを算出し、
該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのアウトコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、
前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割し、
前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なう、
ことを特徴とするマスクパターン描画方法。
【請求項4】
前記素子領域層は長方形状、ゲート層は帯状であり、帯状のゲート層が長方形状の素子領域層に重なり、前記素子領域層のアウトコーナーから帯状のゲート層までの距離Dを算出してパラメータとすることを特徴とする請求項3記載のマスクパターン描画方法。
【請求項5】
前記領域F1は最大ショットサイズが200nmのショットで描画を行ない、前記領域F2では、最大ショットサイズが2μmのショットで描画を行なうことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のマスクパターン描画方法。
【請求項6】
前記パターン描画をマスクではなく、ウェハ上に直接描画するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のマスクパターン描画方法。
【請求項7】
前記パターン描画をマスクではなく、ナノインプリント用マスクに対して行なうようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のマスクパターン描画方法。
【請求項8】
コーナー部を有するパターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置であって、マスク上のパターンのコーナー部に対応する部分に、リソグラフィで解像しない程度の大きさのインナーセリフを有するようにレイアウトされたパターンを用いて露光する装置において、
素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのインコーナーまでの距離Dを算出する手段と、
該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのインコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、
前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、
前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なう手段と、
を有することを特徴とするマスクパターン描画装置。
【請求項9】
パターンをリソグラフィにより形成する工程を含む半導体製造装置において、
素子領域層とゲート層とにより構成されるマスクパターンを作成する場合に、ゲート層パターンから素子領域層パターンのアウトコーナーまでの距離Dを算出する手段と、
該距離Dがある一定の距離より短い場合には、素子領域層パターンのアウトコーナーから、ゲート層パターンと重なる素子領域層までを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、
前記距離Dがある一定の距離より長い場合には、ゲート層パターンと重なる素子領域層パターンを領域F1、それ以外の領域を領域F2と分割する手段と、
前記領域F1と領域F2とでショットする最大ショットサイズを変えてマスクにパターン描画を行なう手段と、
を有することを特徴とするマスクパターン描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−128478(P2011−128478A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288679(P2009−288679)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「マスク設計・描画・検査総合最適化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】