マスクブランク及びフォトマスク並びにこれらの製造方法
【課題】FPD用大型マスクにおけるウエットプロセス(レジスト剥離方法やエッチング方法、洗浄方法等)に適したマスクブランク及びフォトマスクを提供する。
【解決手段】透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(例えば水酸化カリウム(KOH))に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が5%以下である、ことを特徴とする。
【解決手段】透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(例えば水酸化カリウム(KOH))に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が5%以下である、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク及びフォトマスク並びにこれらの製造方法に関し、特に、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク、係るマスクブランクを用いて製造されたフォトマスク並びにこれらの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型FPD用マスクの分野において、半透光性領域(いわゆるグレートーン部)を有するグレートーンマスクを用いてマスク枚数を削減する試みがなされている(非特許文献1)。
ここで、グレートーンマスクは、図13(1)及び図14(1)に示すように、透明基板上に、遮光部1と、透過部2と、半透光性領域であるグレートーン部3とを有する。グレートーン部3は、透過量を調整する機能を有し、例えば、図13(1)に示すようにグレートーンマスク用半透光性膜(ハーフ透光性膜)3a’を形成した領域、あるいは、図14(1)に示すようにグレートーンパターン(グレートーンマスクを使用する大型FPD用露光機の解像限界以下の微細遮光パターン3a及び微細透過部3b)を形成した領域であって、これらの領域を透過する光の透過量を低減しこの領域による照射量を低減して、係る領域に対応するフォトレジストの現像後の膜減りした膜厚を所望の値に制御することを目的として形成される。
大型グレートーンマスクを、ミラープロジェクション方式や、レンズを使ったレンズプロジェクション方式の大型露光装置に搭載して使用する場合、グレートーン部3を通過した露光光は全体として露光量が足りなくなるため、このグレートーン部3を介して露光したポジ型フォトレジストは膜厚が薄くなるだけで基板上に残る。つまり、レジストは露光量の違いによって通常の遮光部1に対応する部分とグレートーン部3に対応する部分で現像液に対する溶解性に差ができるため、現像後のレジスト形状は、図13(2)及び図14(2)に示すように、通常の遮光部1に対応する部分1’が例えば約1μm、グレートーン部3に対応する部分3’が例えば約0.4〜0.5μm、透過部2に対応する部分はレジストのない部分2’となる。そして、レジストのない部分2’で被加工基板の第1のエッチングを行い、グレートーン部3に対応する薄い部分3’のレジストをアッシング等によって除去しこの部分で第2のエッチングを行うことによって、1枚のマスクで従来のマスク2枚分の工程を行い、マスク枚数を削減する。
【非特許文献1】月刊FPD Intelligence、p.31-35、1999年5月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、マイクロプロセッサ、半導体メモリ、システムLSIなどの半導体ディバイスを製造するためのLSI用マスクは、最大でも6インチ角程度と相対的に小型であって、ステッパ(ショット−ステップ露光)方式による縮小投影露光装置に搭載されて使用されることが多い。係るLSI用マスクでは、露光波長で解像限界が決定されることから、露光波長の短波長化(例えば248nm、193nm)が図られている。また、LSI用マスクでは、レンズ系による色収差排除及びそれによる解像性向上の観点から、単色の露光光(例えば248nm、193nm)が使用される。
また、LSI用マスクを製造するための小型マスクブランクにおいては、高いエッチング精度が必要であるため、ドライエッチングによってマスクブランク上に形成された薄膜のパターニングが施される。同様に、レジスト剥離等もドライエッチングによって行われる場合が多い。
これに対し、FPD(フラットパネルディスプレイ)用大型マスクは、330mm×450mmから1220mm×1400mmと相対的に大型であって、ミラープロジェクション(スキャニング露光方式による、等倍投影露光)方式やレンズを使ったレンズプロジェクション方式の露光装置に搭載されて使用されることが多い。FPD用大型マスクでは、超高圧水銀灯のi〜g線の広い帯域を利用し多色波露光を実施している。
また、FPD用大型マスクを製造するための大型マスクブランクにおいては、LSI用マスクの如き高いエッチング精度を重視するよりも、むしろコスト面及びスループットを重視する場合には、エッチング液を用いたウエットエッチングによってマスクブランク上に形成された薄膜のパターニングが施される。
【0004】
本願の目的は、FPD用大型マスクにおけるウエットプロセス(レジスト剥離方法やエッチング方法、洗浄方法等)に適したマスクブランク及びフォトマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、FPD用大型マスクブランク及びFPD用大型フォトマスクに関し、コスト面を考慮し、ウエットエッチングに適したMoSi系半透光性膜の観点から鋭意研究、開発を行った。
その結果、MoSi2膜、MoSi4膜については、いずれも、MoSi系膜のエッチング液(フッ化水素アンモニウムと過酸化水素を含むエッチング液等)に対するエッチング時間は共に30秒程度であり、パターンの品質に関しても、パターン寸法精度及びその面内均一性、パターンのエッジ品質(いわゆるギザがないこと)、パターンの断面形状品質(断面の垂直性)はいずれも良好であり、両者に相違がないことが判った。
ここで、MoSi2膜はMo:Si=1:2(原子%比)のMoSiターゲットを用い、Arをスパッタガスとして成膜され、このMoSiターゲットは、一般的な組成であり一般的に広く使用され入手し易く、成膜の面でも安定性があり膜欠陥の面も含めて成膜しやすいので有利である。
これに対し、MoSi4膜は、Mo:Si=略1:4(原子%比)のSiリッチのMoSiターゲットを用いArをスパッタガスとして成膜され、このSiリッチのMoSiターゲットは、特殊品である。
そこで、ウエットエッチングに適したMoSi系半透光性膜としてMoSi2膜の使用を検討したところ、半透光性膜としてのMoSi2膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用される薬液及びその処理条件によっては透過率の変化量が大きく、薬液及びその処理条件によっては溶解作用の影響を受けやすいという新たな課題1が判明した。具体的には、アルカリ水溶液(例えば、現像液、レジスト剥離液、マスク洗浄液として使用される)に対しては、図4〜6に示すように接触時間が10分までは透過率の変化量は約4%であるが、10分を境にして透過率の変化量が急激に上昇する(図4〜6では10分を境にしてグラフの傾斜が急に大きくなる)ことが判明し、15分接触させたときの透過率の変化量は約8%以上であることが判明した。同様に、クロムのエッチング液に2分接触させたときの透過率の変化量は約2%以上であることが判明した。
ここで、特に、図11(1)に示すMoSi系半透過膜下置き(先付け)タイプのグレートンマスクの製造工程では、後述の図12で詳述するように、マスク製造プロセスにおいてアルカリ水溶液に最長で合計約15分程度接触されるので影響があり、これに加えて、クロムエッチング液に最長で合計約2分接触され、更に酸性の洗浄液等に数回接触され、これらによる透過率の変化量は累積されるので、上記の影響を最も受けやすく、上記の影響が最も顕著に出やすいことが判った。
このような状況下、本発明者らは、MoとSiとから実質的になるMoSi膜中のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19(以下MoSi3〜19で表記する)とすることによって、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液(例えば、現像液、レジスト剥離液、マスク洗浄液として使用される例えば水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)、以下同様)に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を5%以下にでき、上記新たな課題1に対する有効な対処手段であることを見出し、第1の発明に至った。この第1の発明は、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対する接触時間10分を境にしてMoSi半透光性の透過率の変化量が急上昇する現象を解消でき、このことを利用して、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対する耐久特性を大幅に向上させることに成功したものである。
但し、第1の発明では、MoSi3〜19膜は、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対しては、図1〜3に示すように10分を境にして透過率の変化量が上昇する現象が依然として確認された。このような現象がある場合には、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を更に低減しようとする際の障害となる。また、このような現象がある場合には、アルカリ水溶液への接触時間の管理を厳格に行わなければならないなど取扱いが煩雑となる。例えば、透過率の変化量を5%以下のある値で管理しようとする場合等において取扱いが煩雑となる。
そこで、本発明者らは、更に、上記新たな課題1に対する更に有効な対処手段について検討した結果、MoSi3〜19膜をベースとする膜等に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一以上の元素を含有させることによって、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を3%以下(更には2%以下)にでき、上記新たな課題1に対し非常に有効な対処手段であることを見出し、第2の発明に至った。特に、この第2の発明は、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対する接触時間10分を境にしてMoSi半透光性の透過率の変化量が上昇する現象を解消でき、このことを利用して、透過率の変化量の更なる低減を実現できると共に、この透過率の変化量の更なる低減の実現に基づいてより狭い透過率の変動幅(例えば3%以下)で管理しようとする場合において、接触時間の管理を厳格に行わなくてよくなる(例えば接触時間20分までは接触時間を気にしなくてもよくなる)。尚、MoSi2膜中に上記元素を添加しても、上記と同様の条件下、即ちアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を3%以下にすることはむずかしいことが判明した。
但し、第2の発明では、上記元素の添加によって、上記元素を添加しない場合に比べ、半透過膜のウエットエッチング時間が長くなる(例えば上記元素を添加しない場合に比べ約10倍以上になる)ことが判明した。そして、上記元素の添加によって、ウエットエッチング時間が長くなることによって、良好にエッチングできず、良好なパターンも形成できない場合が生じるという新たな課題2が判明した。つまり、上記元素の添加によってアルカリ水溶液に対する透過率の変化量は低減する(新たな課題1の解決には有利である)ものの、上記元素の添加によってウエットエッチング時間が長くなってしまい(新たな課題2の解決には不利となってしまい)、両者はトレードオフの関係にあることが判明した。
そこで、本発明者は、課題1と課題2の双方を同時に解決可能であるか否かについて検討を行った。その結果、課題1と課題2の双方について、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を3%以下にでき、かつ、ウエットエッチングで良好なパターンが形成できるように(即ちMoSiのエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内となるように)、MoSi3〜19膜等に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一以上を含有させることが実際に可能であることを見出し、即ち課題1と課題2の双方を同時に解決可能であることを見出し、第3の発明に至った。
【0006】
本発明方法は、以下の構成を有する。
(構成1)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が5%以下であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成2)前記MoとSiを含む半透光性膜は、MoとSiとで実質的に構成され、膜中のMoとSiとの原子%比率はMo:Si=1:3〜1:19であることを特徴とする、構成1記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成3)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成4)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が、0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、前記半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定する、及び/又は、前記半透光性膜に、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜とすることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成5)前記半透光性膜上にクロムを含む材料からなる遮光性膜が形成されていることを特徴とする、構成1〜4のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成6)前記半透光性膜は、前記遮光性膜をパターニングする際に使用されるクロム系材料のエッチング液に2分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が1.5%以下であることを特徴とする、構成1〜5のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成7)構成1乃至6記載のマスクブランクを用いて製造されたことを特徴とするFPDデバイスを製造するためのフォトマスク。
(構成8)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法であって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、
MoとSiとの原子%比率がMo:Si=1:3〜1:19であるターゲットを用い、かつ、
マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、アルゴンに、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させたガスをスパッタガスとして成膜することを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、FPD用大型マスクにおけるウエットプロセス(レジスト剥離方法やエッチング方法、洗浄方法等)に適したマスクブランク及びフォトマスクを提供できる。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本第1発明に係るFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクは、
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、「マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量」(以下、「上記所定の透過率の変化量」と言う)が5%以下である、ことを特徴とする(構成1)。
ここで、上記所定の透過率の変化量が5%を超えると、実際のマスク製造プロセスに適用した場合、透過率の設定値±1%内への合わせ込み(追い込み)することが厳しくなり、また透過率の設定値±1%を満たす製品の製造が困難となる。
これに対し、上記所定の透過率の変化量が5%以下であると、実際のマスク製造プロセスでの透過率の上昇量Sを予め見込んで、透過率の設定値(最終要求値)に対し透過率がSだけ低い半透光性膜を有するブランク作製しておき、マスク作製工程を経ることで、透過率の設定値±1%内への合わせ込み(追い込み)が可能であり、また透過率の設定値±1%を満たす製品の製造が実用上可能となる。
【0009】
本第1発明において、上記所定の透過率の変化量が5%以下であるMoとSiを含む半透光性膜は、MoとSiとで実質的に構成され、MoとSiとの原子%比率Mo:Siが1:3〜1:19(MoSi3〜19)であるMoとSiを含む半透光性膜によって実現できる(構成2)。
尚、MoとSiとの原子%比率Mo:Siが1:3未満であるMoとSiを含む半透光性膜では、上記所定の透過率の変化量を5%以下とすることはむずかしい。
本発明においては、MoとSiとの比率Mo:Siは1:4〜1:9(MoSi4〜9)であるMoとSiを含む半透光性膜であることが、耐薬性の向上と、パターン形状の制御性の理由から更に好ましい。
【0010】
本第2発明は、透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜であることを特徴とする(構成3)。
本第2発明において、アルカリ水溶液に15分接触させた前後において上記所定の波長帯域における透過率の変化量が3%以下であるMoとSiを含む半透光性膜は、例えば上記構成2記載のMoSi3〜19膜をベースとした膜に、透過率の変化量が3%以下となるように、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜によって実現できる。
尚、MoとSiとの比率Mo:Siが1:3未満であるMoとSiを含む半透光性膜に、これらの元素を含有させても、透過率の変化量が3%以下とすることはむずかしい。
本第2発明において、上記所定の透過率の変化量が3%以下であると、透過率の設定値±1%内への合わせ込み(追い込み)が容易であり、また透過率の設定値±1%を満たす製品の製造が実用上が可能となる。
本第2発明において、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)は、上記所定の透過率の変化量が3%以下となるように、含有させる。
これらの元素の含有量は、上記所定の透過率の変化量が2%以下となる含有量が好ましく、1.5%以下、更には1.0%以下となる含有量が更に望ましい。
本第2発明では、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)を単独で含有する態様の他、CH、NO,CHN、CHO,CHNOなど複数元素を含有する態様が含まれる。
【0011】
本第3発明は、透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、ウエットエッチングで良好なパターンが形成できるように、即ち、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、
(1)前記半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定する、及び/又は、
(2)前記半透光性膜に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜とする、ことを特徴とする(構成4)。
上述したように、上記元素の添加によってアルカリ水溶液に対する透過率の変化量は低減する(新たな課題1の解決には有利である)ものの、上記元素の添加によってウエットエッチング時間が長くなってしまい(新たな課題2の解決には不利となってしまい)、両者はトレードオフの関係にあるが、上記(1)及び(2)の要件を有する本第3発明によれば、課題1と課題2の双方を同時に解決できる。
尚、MoとSiとの比率Mo:Siが1:3未満であるMoとSiを含む半透光性膜に、これらの元素を含有させても、上記課題1と課題2の双方を同時に解決することはむずかしい。
上記(1)の要件を有する本第3発明は、半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定することによって、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内にでき、この結果、ウエットエッチングで良好なパターン形成が可能となることを見出したものである。
上記(2)の要件を有する本第3発明は、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、MoとSiを含む半透光性膜に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一の元素を含有させることが現実に可能であり、この結果、ウエットエッチングで良好なパターン形成が可能となることを見出したものである。
【0012】
尚、上述したように、第2の発明では、上記元素の添加によって、ウエットエッチング時間が長くなり、半透過性膜を良好にエッチングできず、良好なパターンも形成できない場合が生じるという新たな課題2が生じる。
詳しくは、FPD用大型マスクブランクでは、半透過性膜のウエットエッチング時間が長くなると、半透過性膜パターンの断面形状が悪化し、即ち形状制御性が悪化し、結果的にCD精度が悪化する原因となる。
第3発明によれば、半透過膜のウエットエッチング時間が長くなることが原因で生じる、半透過性膜パターンの断面形状の悪化、即ち形状制御性の悪化、これらの結果としてのCD精度の悪化、を抑えたマスクブランク及びフォトマスクを提供できる。
【0013】
本発明において、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液としては、例えば、現像液、レジスト剥離液、マスクやマスクブランクの洗浄液などとして使用されるアルカリ性の水溶液が挙げられ、アルカリ成分としては例えば水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)などが挙げられる。
上記アルカリ水溶液は、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で、半透光性膜やそのパターンの上面に接触される。MoSi系膜のエッチング液は、エッチング時にエッチングマスクで保護されているため、半透光性膜やそのパターンの上面に接触されない。
【0014】
本発明においては、上記半透光性膜上にクロムを含む材料からなる遮光性膜が形成されたマスクブランクが含まれる(構成5)。
このように、半透光性膜と、クロムを含む材料からなる遮光性膜とを有するマスクブランクにおいては、上記半透光性膜は、前記遮光性膜をパターニングする際に使用されるクロム系材料のエッチング液に2分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が1.5%以下であることが好ましい(構成6)。
クロム系膜のエッチング液としては、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液が挙げられる。
尚、後述するように、上記アルカリ水溶液、クロム系膜のエッチング液は、半透光性膜下置き(先付け)タイプのグレートーンマスクの製造工程で使用される薬液である。
【0015】
本発明において、上記アルカリ水溶液、クロム系膜のエッチング液に接触とは、吹き掛け、スプレー、浸漬、など、これらの液に晒すことを指す。
【0016】
本発明において、「少なくとも超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率」を特に問題としている理由は、FPD用大型マスクでは、超高圧水銀灯のi〜g線の広い帯域を利用し多色波露光を実施しているからであり、しかも、露光光源である超高圧水銀灯から放射されるi線,h線,g線の露光光強度(相対強度)はほぼ等しいく、相対強度の面でi線,h線,g線はいずれも同等に重要視する必要があるからである(図9参照)。
本発明においては、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、「波長300〜600nmにおける透過率の変化量が5%以下であること」が更に好ましい。この理由は、係る領域に渡って相対強度の大きい露光光が分布するためである(図10参照)。
本発明において、超高圧水銀灯としては、例えば図10に示す特性を有するものが例示されるが、本発明はこれに限定されない。
【0017】
本発明において、透光性基板としては、合成石英、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの基板が挙げられる。
【0018】
本発明において、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクとしては、LCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクが挙げられる。
ここで、LCD製造用マスクには、LCDの製造に必要なすべてのマスクが含まれ、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、特にTFTチャンネル部やコンタクトホール部、低温ポリシリコンTFT、カラーフィルタ、反射板(ブラックマトリクス)、などを形成するためのマスクが含まれる。他の表示ディバイス製造用マスクには、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの製造に必要なすべてのマスクが含まれる。
【0019】
本発明に係るFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクにおいては、少なくとも、グレートーンマスク用半透光性膜と遮光性膜とを透光性基板上に順不同で有する態様が含まれる。つまり、半透光性膜とは別個に、露光波長を遮断する目的で、遮光性膜を形成する態様が含まれる。具体的には、例えば、図11(1)に示すように、透光性基板10上にグレートーンマスク用半透光性膜11と遮光性膜12とをこの順で形成し、これらの膜のパターニングを施して、グレートーンマスク用半透光性膜パターンと遮光性膜パターンとを形成してなる半透光性膜下置きタイプや、図11(2)に示すように、透光性基板上に遮光性膜とグレートーンマスク用半透光性膜とをこの順で形成し、これらの膜のパターニングを施して、遮光性膜パターンとグレートーンマスク用半透光性膜パターンとを形成してなる半透光性膜上置きタイプ、などが挙げられる。尚、MoSi系のグレートーンマスク用半透光性膜は、図11(1)に示す半透光性膜下置きタイプに適している。
本発明において、遮光性膜の材料としては、例えば、光半透過膜のエッチング特性と異なる材料がよく、クロムや、クロムの窒化物、クロムの炭化物、クロムのフッ化物、それらを少なくとも1つ含む材料が好ましい。
【0020】
本発明に係るFPDデバイスを製造するためのフォトマスクは、上記本発明に係るFPDデバイスを製造するためのマスクブランクを用いて製造され、ウエットエッチングによってマスクブランク上に形成された薄膜のパターニングを施し、マスクパターンを形成して製造される(構成7)。
【0021】
以下に、半透光性膜下置きタイプのFPD用大型マスクブランクを用いて、半透光性膜下置きタイプのグレートーンマスクを製造する製造工程の一例を、図l2を用いて説明する。
まず、透光性基板16の表面に半透光膜17、遮光膜18を順次成膜する工程を実施してマスクブランク20を形成し、準備する(図12(A))。
ここで、半透光膜17は、例えばMoとSiを含むMoSi系スパッタターゲットを用いたスパッタ成膜にて形成することができる。その膜厚は、必要な半透過膜の透過率により適宜選定される。次に、遮光膜18は、例えばクロムターゲットを用い、窒素、酸素、メタン、二酸化炭素等の反応性ガスを用いた反応性スパッタにて、一層または多層構造の膜(例えば反射防止膜付遮光膜)を形成することができる。
これらの半透光膜l7と遮光膜18は、グレートーンマスク10の製造工程において、互いのエッチングに対し耐性を有する。つまり、半透光膜17は、クロム用エッチング液に対して耐性を有する。また、遮光膜18は、MoSi用エッチング液に対して耐性を有する。
MoSi用エッチング液としては、弗化水素酸、珪弗化水素酸、弗化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つの弗素化合物と、過酸化水素、硝酸、硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤とを含むものが挙げられる。
【0022】
次に、上記マスクブランク20の遮光膜18上に、レジスト膜(ポジ型レジスト膜やネガ型レジスト膜)を形成し、このレジスト膜を電子線またはレーザー描画装置を用いて露光し、アルカリ水溶液の現像液により現像して、第1レジストパターン2lを形成する(図12(B))。この第1レジストパターン21は、製造されるグレートーンマスク10の透光部14を開口領域とする形状に形成される。また、第1レジストパターン21を形成するレジストとしては、ノボラック系レジストを用いることができる。
この第1レジストパターン21が形成されたマスクブランク20をクロム用エッチング液に浸漬し、このクロム用エッチング液を用い、第1レジストパターン21をマスクにして、マスクブランク20の遮光膜18をウエットエッチングする(図12(C))。このエッチングにより遮光膜18に遮光膜パターン22が形成される。
上記遮光膜パターン22の形成後、この遮光膜パターン22上に残存した第1レジストパターン21をアルカリ水溶液のレジスト剥離液で剥離する(図12(D))。
この第1レジストパターン21の剥離後、遮光膜パターン22が形成されたマスクブランク20をMoSi用エッチング液に浸漬し、このMoSi用エッチング液を用い、遮光膜パターン22をマスクにして半透光膜17をウェットエッチングし、半透光膜パターン23を形成する(図12(E))。これらの遮光膜パターン22及び半透光膜パターン23により透光部14が形成される。
上述のようにして半透光膜パターン23を形成後、遮光膜パターン22を構成する遮光膜18の所望部分以外を除去する工程を実施する。つまり、遮光膜パターン22上及び透光性基板l6上にレジスト膜を成膜し、このレジスト膜を前述と同様に露光、現像して、第2レジストパターン24を形成する(図12(F))。この第2レジストパターン24は グレートーン部15を開口領域とする形状に形成される。次に、第2レジストパターン24をマスクにして、前記クロム用エッチング液を用い遮光膜パターン22を構成する遮光膜18を更にウェットエッチングする(図12(G))。
その後、残存する第2レジストパターン24をアルカリ水溶液のレジスト剥離液で剥離し、半透光膜17からなるグレートーン部15、遮光膜18及び半透光膜17が積層されてなる遮光部13を有するグレートーンマスク30を製造する(図12(H))。
【0023】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.27A)、Ar(100%)をスパッタリングガス(流量56sccm)として、モリブデン及びシリコンからなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4)を、膜厚40オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで64.4%、406nmで66.7%、436nmで68.3%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は5%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで66.7%、406nmで68.7%、436nmで69.9%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大2.3%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても5%以下にできることを確認した。
【0024】
(実施例2)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.41A)、Ar(88.5%)とCH4(11.5%)をスパッタリングガス(流量66sccm)として、モリブデン、シリコン、炭素を含むグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4C)を、膜厚50オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで65.3%、406nmで68.3%、436nmで69.9%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は3%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで65.6%、406nmで68.4%、436nmで70.0%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大0.3%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても3%以下にできることを確認した。
【0025】
(実施例3)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.87A)、Ar(70%)とN2(30%)をスパッタリングガス(流量56sccm)として、モリブデン、シリコン及び窒素からなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4N)を、膜厚81オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで63.5%、406nmで66.9%、436nmで68.8%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は3%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで64.7%、406nmで67.9%、436nmで69.7%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大1.2%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても3%以下にできることを確認した。
【0026】
(実施例4)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流1.01A)、Ar(85%)とO2(15%)をスパッタリングガス(流量66sccm)として、モリブデン、シリコン、酸素からなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4O)を、膜厚205オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで65.2%、406nmで68.7%、436nmで70.5%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は3%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで65.9%、406nmで69.3%、436nmで71.2%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大0.7%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても3%以下にできることを確認した。
【0027】
(比較例1)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=30:70(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.28A)、Ar(100%)をスパッタリングガス(流量56sccm)として、モリブデン及びシリコンからなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi2)を、膜厚38オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図4〜6に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで62.0%、406nmで63.7%、436nmで64.5%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図4〜6に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図4〜6において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は8%以上であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで70.7%、406nmで71.8%、436nmで72.5%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大8.7%であった。
【0028】
(実施例5〜8及び比較例2)
実施例1〜4及び比較例1において、アルカリ水溶液(KOH)に替えてクロム系膜のエッチング液を薬液として使用したこと以外は実施例1〜4及び比較例1と同様とした。
尚、クロム系膜のエッチング液としては、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液を常温で使用した。
また、実施例5はMoSi4ターゲット:Arガス、実施例6はMoSi4ターゲット:Ar+CH4ガス、実施例7はMoSi4ターゲット:Ar+N2ガス、実施例8はMoSi4ターゲット:Ar+O2ガス、比較例2はMoSi2ターゲット:Arガス、である。
実施例5〜8及び比較例2の波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を、それぞれ、図7〜図9に示す。これらの図において、横軸は処理回数(1回:2分)、縦軸は透過率(%)、をそれぞれ示す。
図7〜図9から、i線〜g線に渡る波長帯域における8分浸漬前後の透過率の上昇量は実施例5〜8では1.6%以下(=請求項6の1.5%以下と一致せず)と小さいが、比較例2では3.3%以上と大きいことが判った。
【0029】
(FPD用大型マスクの作製)
実施例1〜4及び比較例1と同様にして、大型ガラス基板上に、グレートーンマスク用半透光性膜を形成した。
次に、グレートーンマスク用半透光性膜の上に、Cr系の遮光性膜を形成し、FPD用大型マスクブランクを作製した。具体的には、まずArとN2ガスをスパッタリングガスとしてCrN膜を150オングストローム、次いでArとCH4ガスをスパッタリングガスとしてCrC膜を650オングストローム、次いでArとNOガスをスパッタリングガスとしてCrON膜を250オングストローム、連続成膜した。
次に、上述した図12で示した半透光性膜下置きタイプのグレートーンマスク製造工程に従いマスクを製造した。その際、現像液、レジスト剥離液、マスク洗浄液として、それぞれ、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用し、接触時間は合計で15分以内とした。クロム系膜のエッチング液として硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液を常温で使用し、接触時間(エッチング時間)は合計で2分以内とした。
その結果、マスク作製前後(マスクブランク作製後とマスク作製後)の半透光性膜パターン15における透過率変化量は、実施例1〜4に係るマスクブランクを使用した場合は3%以下と小さいが、比較例1に係るマスクブランクを使用した場合は8%以上と大きかった。
また、実施例1〜4に係るマスクブランクを使用した場合は、パターン断面は垂直で良好なMoSi系半透過膜パターンを形成できた。
【0030】
以上、好ましい実施例を掲げて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1〜4で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長365nm(i線)における透過率の変化を示す図である。
【図2】実施例1〜4で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長406nm(h線)における透過率の変化を示す図である。
【図3】実施例1〜4で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長436nm(g線)における透過率の変化を示す図である。
【図4】比較例1で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長365nm(i線)における透過率の変化を示す図である。
【図5】比較例1で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長406nm(h線)における透過率の変化を示す図である。
【図6】比較例1で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長436nm(g線)における透過率の変化を示す図である。
【図7】実施例5〜8及び比較例2で作成した半透光性膜について、クロム系膜のエッチング液に2分間隔で0〜8分浸漬させたときの波長365nm(i線)における透過率の変化を示す図である。
【図8】実施例5〜8及び比較例2で作成した半透光性膜について、クロム系膜のエッチング液に2分間隔で0〜8分浸漬させたときの波長406nm(h線)における透過率の変化を示す図である。
【図9】実施例5〜8及び比較例2で作成した半透光性膜について、クロム系膜のエッチング液に2分間隔で0〜8分浸漬させたときの波長436nm(g線)における透過率の変化を示す図である。
【図10】露光光源である超高圧水銀灯の分光分布を示す図である。
【図11】FPD用大型グレートーンマスクの態様を説明するための図である。
【図12】半透光性膜下置きタイプのグレートーンマスクを製造する製造工程を説明するための図である。
【図13】半透光性膜を有するグレートーンマスクを説明するための図であり、(1)は部分平面図、(2)は部分断面図である。
【図14】解像限界以下の微細遮光パターンを有するグレートーンマスクを説明するための図であり、(1)は部分平面図、(2)は部分断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 遮光部
2 透過部
3 グレートーン部
3a 微細遮光パターン
3b 微細透過部
3a’ 半透光性膜
10 透光性基板
11 半透光性膜
12 遮光性膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク及びフォトマスク並びにこれらの製造方法に関し、特に、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク、係るマスクブランクを用いて製造されたフォトマスク並びにこれらの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型FPD用マスクの分野において、半透光性領域(いわゆるグレートーン部)を有するグレートーンマスクを用いてマスク枚数を削減する試みがなされている(非特許文献1)。
ここで、グレートーンマスクは、図13(1)及び図14(1)に示すように、透明基板上に、遮光部1と、透過部2と、半透光性領域であるグレートーン部3とを有する。グレートーン部3は、透過量を調整する機能を有し、例えば、図13(1)に示すようにグレートーンマスク用半透光性膜(ハーフ透光性膜)3a’を形成した領域、あるいは、図14(1)に示すようにグレートーンパターン(グレートーンマスクを使用する大型FPD用露光機の解像限界以下の微細遮光パターン3a及び微細透過部3b)を形成した領域であって、これらの領域を透過する光の透過量を低減しこの領域による照射量を低減して、係る領域に対応するフォトレジストの現像後の膜減りした膜厚を所望の値に制御することを目的として形成される。
大型グレートーンマスクを、ミラープロジェクション方式や、レンズを使ったレンズプロジェクション方式の大型露光装置に搭載して使用する場合、グレートーン部3を通過した露光光は全体として露光量が足りなくなるため、このグレートーン部3を介して露光したポジ型フォトレジストは膜厚が薄くなるだけで基板上に残る。つまり、レジストは露光量の違いによって通常の遮光部1に対応する部分とグレートーン部3に対応する部分で現像液に対する溶解性に差ができるため、現像後のレジスト形状は、図13(2)及び図14(2)に示すように、通常の遮光部1に対応する部分1’が例えば約1μm、グレートーン部3に対応する部分3’が例えば約0.4〜0.5μm、透過部2に対応する部分はレジストのない部分2’となる。そして、レジストのない部分2’で被加工基板の第1のエッチングを行い、グレートーン部3に対応する薄い部分3’のレジストをアッシング等によって除去しこの部分で第2のエッチングを行うことによって、1枚のマスクで従来のマスク2枚分の工程を行い、マスク枚数を削減する。
【非特許文献1】月刊FPD Intelligence、p.31-35、1999年5月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、マイクロプロセッサ、半導体メモリ、システムLSIなどの半導体ディバイスを製造するためのLSI用マスクは、最大でも6インチ角程度と相対的に小型であって、ステッパ(ショット−ステップ露光)方式による縮小投影露光装置に搭載されて使用されることが多い。係るLSI用マスクでは、露光波長で解像限界が決定されることから、露光波長の短波長化(例えば248nm、193nm)が図られている。また、LSI用マスクでは、レンズ系による色収差排除及びそれによる解像性向上の観点から、単色の露光光(例えば248nm、193nm)が使用される。
また、LSI用マスクを製造するための小型マスクブランクにおいては、高いエッチング精度が必要であるため、ドライエッチングによってマスクブランク上に形成された薄膜のパターニングが施される。同様に、レジスト剥離等もドライエッチングによって行われる場合が多い。
これに対し、FPD(フラットパネルディスプレイ)用大型マスクは、330mm×450mmから1220mm×1400mmと相対的に大型であって、ミラープロジェクション(スキャニング露光方式による、等倍投影露光)方式やレンズを使ったレンズプロジェクション方式の露光装置に搭載されて使用されることが多い。FPD用大型マスクでは、超高圧水銀灯のi〜g線の広い帯域を利用し多色波露光を実施している。
また、FPD用大型マスクを製造するための大型マスクブランクにおいては、LSI用マスクの如き高いエッチング精度を重視するよりも、むしろコスト面及びスループットを重視する場合には、エッチング液を用いたウエットエッチングによってマスクブランク上に形成された薄膜のパターニングが施される。
【0004】
本願の目的は、FPD用大型マスクにおけるウエットプロセス(レジスト剥離方法やエッチング方法、洗浄方法等)に適したマスクブランク及びフォトマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、FPD用大型マスクブランク及びFPD用大型フォトマスクに関し、コスト面を考慮し、ウエットエッチングに適したMoSi系半透光性膜の観点から鋭意研究、開発を行った。
その結果、MoSi2膜、MoSi4膜については、いずれも、MoSi系膜のエッチング液(フッ化水素アンモニウムと過酸化水素を含むエッチング液等)に対するエッチング時間は共に30秒程度であり、パターンの品質に関しても、パターン寸法精度及びその面内均一性、パターンのエッジ品質(いわゆるギザがないこと)、パターンの断面形状品質(断面の垂直性)はいずれも良好であり、両者に相違がないことが判った。
ここで、MoSi2膜はMo:Si=1:2(原子%比)のMoSiターゲットを用い、Arをスパッタガスとして成膜され、このMoSiターゲットは、一般的な組成であり一般的に広く使用され入手し易く、成膜の面でも安定性があり膜欠陥の面も含めて成膜しやすいので有利である。
これに対し、MoSi4膜は、Mo:Si=略1:4(原子%比)のSiリッチのMoSiターゲットを用いArをスパッタガスとして成膜され、このSiリッチのMoSiターゲットは、特殊品である。
そこで、ウエットエッチングに適したMoSi系半透光性膜としてMoSi2膜の使用を検討したところ、半透光性膜としてのMoSi2膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用される薬液及びその処理条件によっては透過率の変化量が大きく、薬液及びその処理条件によっては溶解作用の影響を受けやすいという新たな課題1が判明した。具体的には、アルカリ水溶液(例えば、現像液、レジスト剥離液、マスク洗浄液として使用される)に対しては、図4〜6に示すように接触時間が10分までは透過率の変化量は約4%であるが、10分を境にして透過率の変化量が急激に上昇する(図4〜6では10分を境にしてグラフの傾斜が急に大きくなる)ことが判明し、15分接触させたときの透過率の変化量は約8%以上であることが判明した。同様に、クロムのエッチング液に2分接触させたときの透過率の変化量は約2%以上であることが判明した。
ここで、特に、図11(1)に示すMoSi系半透過膜下置き(先付け)タイプのグレートンマスクの製造工程では、後述の図12で詳述するように、マスク製造プロセスにおいてアルカリ水溶液に最長で合計約15分程度接触されるので影響があり、これに加えて、クロムエッチング液に最長で合計約2分接触され、更に酸性の洗浄液等に数回接触され、これらによる透過率の変化量は累積されるので、上記の影響を最も受けやすく、上記の影響が最も顕著に出やすいことが判った。
このような状況下、本発明者らは、MoとSiとから実質的になるMoSi膜中のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19(以下MoSi3〜19で表記する)とすることによって、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液(例えば、現像液、レジスト剥離液、マスク洗浄液として使用される例えば水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)、以下同様)に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を5%以下にでき、上記新たな課題1に対する有効な対処手段であることを見出し、第1の発明に至った。この第1の発明は、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対する接触時間10分を境にしてMoSi半透光性の透過率の変化量が急上昇する現象を解消でき、このことを利用して、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対する耐久特性を大幅に向上させることに成功したものである。
但し、第1の発明では、MoSi3〜19膜は、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対しては、図1〜3に示すように10分を境にして透過率の変化量が上昇する現象が依然として確認された。このような現象がある場合には、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を更に低減しようとする際の障害となる。また、このような現象がある場合には、アルカリ水溶液への接触時間の管理を厳格に行わなければならないなど取扱いが煩雑となる。例えば、透過率の変化量を5%以下のある値で管理しようとする場合等において取扱いが煩雑となる。
そこで、本発明者らは、更に、上記新たな課題1に対する更に有効な対処手段について検討した結果、MoSi3〜19膜をベースとする膜等に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一以上の元素を含有させることによって、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を3%以下(更には2%以下)にでき、上記新たな課題1に対し非常に有効な対処手段であることを見出し、第2の発明に至った。特に、この第2の発明は、アルカリ水溶液(例えばKOH)に対する接触時間10分を境にしてMoSi半透光性の透過率の変化量が上昇する現象を解消でき、このことを利用して、透過率の変化量の更なる低減を実現できると共に、この透過率の変化量の更なる低減の実現に基づいてより狭い透過率の変動幅(例えば3%以下)で管理しようとする場合において、接触時間の管理を厳格に行わなくてよくなる(例えば接触時間20分までは接触時間を気にしなくてもよくなる)。尚、MoSi2膜中に上記元素を添加しても、上記と同様の条件下、即ちアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を3%以下にすることはむずかしいことが判明した。
但し、第2の発明では、上記元素の添加によって、上記元素を添加しない場合に比べ、半透過膜のウエットエッチング時間が長くなる(例えば上記元素を添加しない場合に比べ約10倍以上になる)ことが判明した。そして、上記元素の添加によって、ウエットエッチング時間が長くなることによって、良好にエッチングできず、良好なパターンも形成できない場合が生じるという新たな課題2が判明した。つまり、上記元素の添加によってアルカリ水溶液に対する透過率の変化量は低減する(新たな課題1の解決には有利である)ものの、上記元素の添加によってウエットエッチング時間が長くなってしまい(新たな課題2の解決には不利となってしまい)、両者はトレードオフの関係にあることが判明した。
そこで、本発明者は、課題1と課題2の双方を同時に解決可能であるか否かについて検討を行った。その結果、課題1と課題2の双方について、i線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量を3%以下にでき、かつ、ウエットエッチングで良好なパターンが形成できるように(即ちMoSiのエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内となるように)、MoSi3〜19膜等に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一以上を含有させることが実際に可能であることを見出し、即ち課題1と課題2の双方を同時に解決可能であることを見出し、第3の発明に至った。
【0006】
本発明方法は、以下の構成を有する。
(構成1)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が5%以下であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成2)前記MoとSiを含む半透光性膜は、MoとSiとで実質的に構成され、膜中のMoとSiとの原子%比率はMo:Si=1:3〜1:19であることを特徴とする、構成1記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成3)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成4)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が、0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、前記半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定する、及び/又は、前記半透光性膜に、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜とすることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成5)前記半透光性膜上にクロムを含む材料からなる遮光性膜が形成されていることを特徴とする、構成1〜4のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成6)前記半透光性膜は、前記遮光性膜をパターニングする際に使用されるクロム系材料のエッチング液に2分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が1.5%以下であることを特徴とする、構成1〜5のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
(構成7)構成1乃至6記載のマスクブランクを用いて製造されたことを特徴とするFPDデバイスを製造するためのフォトマスク。
(構成8)透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法であって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、
MoとSiとの原子%比率がMo:Si=1:3〜1:19であるターゲットを用い、かつ、
マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、アルゴンに、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させたガスをスパッタガスとして成膜することを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、FPD用大型マスクにおけるウエットプロセス(レジスト剥離方法やエッチング方法、洗浄方法等)に適したマスクブランク及びフォトマスクを提供できる。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本第1発明に係るFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクは、
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、「マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量」(以下、「上記所定の透過率の変化量」と言う)が5%以下である、ことを特徴とする(構成1)。
ここで、上記所定の透過率の変化量が5%を超えると、実際のマスク製造プロセスに適用した場合、透過率の設定値±1%内への合わせ込み(追い込み)することが厳しくなり、また透過率の設定値±1%を満たす製品の製造が困難となる。
これに対し、上記所定の透過率の変化量が5%以下であると、実際のマスク製造プロセスでの透過率の上昇量Sを予め見込んで、透過率の設定値(最終要求値)に対し透過率がSだけ低い半透光性膜を有するブランク作製しておき、マスク作製工程を経ることで、透過率の設定値±1%内への合わせ込み(追い込み)が可能であり、また透過率の設定値±1%を満たす製品の製造が実用上可能となる。
【0009】
本第1発明において、上記所定の透過率の変化量が5%以下であるMoとSiを含む半透光性膜は、MoとSiとで実質的に構成され、MoとSiとの原子%比率Mo:Siが1:3〜1:19(MoSi3〜19)であるMoとSiを含む半透光性膜によって実現できる(構成2)。
尚、MoとSiとの原子%比率Mo:Siが1:3未満であるMoとSiを含む半透光性膜では、上記所定の透過率の変化量を5%以下とすることはむずかしい。
本発明においては、MoとSiとの比率Mo:Siは1:4〜1:9(MoSi4〜9)であるMoとSiを含む半透光性膜であることが、耐薬性の向上と、パターン形状の制御性の理由から更に好ましい。
【0010】
本第2発明は、透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜であることを特徴とする(構成3)。
本第2発明において、アルカリ水溶液に15分接触させた前後において上記所定の波長帯域における透過率の変化量が3%以下であるMoとSiを含む半透光性膜は、例えば上記構成2記載のMoSi3〜19膜をベースとした膜に、透過率の変化量が3%以下となるように、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜によって実現できる。
尚、MoとSiとの比率Mo:Siが1:3未満であるMoとSiを含む半透光性膜に、これらの元素を含有させても、透過率の変化量が3%以下とすることはむずかしい。
本第2発明において、上記所定の透過率の変化量が3%以下であると、透過率の設定値±1%内への合わせ込み(追い込み)が容易であり、また透過率の設定値±1%を満たす製品の製造が実用上が可能となる。
本第2発明において、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)は、上記所定の透過率の変化量が3%以下となるように、含有させる。
これらの元素の含有量は、上記所定の透過率の変化量が2%以下となる含有量が好ましく、1.5%以下、更には1.0%以下となる含有量が更に望ましい。
本第2発明では、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)を単独で含有する態様の他、CH、NO,CHN、CHO,CHNOなど複数元素を含有する態様が含まれる。
【0011】
本第3発明は、透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、ウエットエッチングで良好なパターンが形成できるように、即ち、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、
(1)前記半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定する、及び/又は、
(2)前記半透光性膜に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜とする、ことを特徴とする(構成4)。
上述したように、上記元素の添加によってアルカリ水溶液に対する透過率の変化量は低減する(新たな課題1の解決には有利である)ものの、上記元素の添加によってウエットエッチング時間が長くなってしまい(新たな課題2の解決には不利となってしまい)、両者はトレードオフの関係にあるが、上記(1)及び(2)の要件を有する本第3発明によれば、課題1と課題2の双方を同時に解決できる。
尚、MoとSiとの比率Mo:Siが1:3未満であるMoとSiを含む半透光性膜に、これらの元素を含有させても、上記課題1と課題2の双方を同時に解決することはむずかしい。
上記(1)の要件を有する本第3発明は、半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定することによって、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内にでき、この結果、ウエットエッチングで良好なパターン形成が可能となることを見出したものである。
上記(2)の要件を有する本第3発明は、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、MoとSiを含む半透光性膜に、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも一の元素を含有させることが現実に可能であり、この結果、ウエットエッチングで良好なパターン形成が可能となることを見出したものである。
【0012】
尚、上述したように、第2の発明では、上記元素の添加によって、ウエットエッチング時間が長くなり、半透過性膜を良好にエッチングできず、良好なパターンも形成できない場合が生じるという新たな課題2が生じる。
詳しくは、FPD用大型マスクブランクでは、半透過性膜のウエットエッチング時間が長くなると、半透過性膜パターンの断面形状が悪化し、即ち形状制御性が悪化し、結果的にCD精度が悪化する原因となる。
第3発明によれば、半透過膜のウエットエッチング時間が長くなることが原因で生じる、半透過性膜パターンの断面形状の悪化、即ち形状制御性の悪化、これらの結果としてのCD精度の悪化、を抑えたマスクブランク及びフォトマスクを提供できる。
【0013】
本発明において、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液としては、例えば、現像液、レジスト剥離液、マスクやマスクブランクの洗浄液などとして使用されるアルカリ性の水溶液が挙げられ、アルカリ成分としては例えば水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)などが挙げられる。
上記アルカリ水溶液は、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で、半透光性膜やそのパターンの上面に接触される。MoSi系膜のエッチング液は、エッチング時にエッチングマスクで保護されているため、半透光性膜やそのパターンの上面に接触されない。
【0014】
本発明においては、上記半透光性膜上にクロムを含む材料からなる遮光性膜が形成されたマスクブランクが含まれる(構成5)。
このように、半透光性膜と、クロムを含む材料からなる遮光性膜とを有するマスクブランクにおいては、上記半透光性膜は、前記遮光性膜をパターニングする際に使用されるクロム系材料のエッチング液に2分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が1.5%以下であることが好ましい(構成6)。
クロム系膜のエッチング液としては、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液が挙げられる。
尚、後述するように、上記アルカリ水溶液、クロム系膜のエッチング液は、半透光性膜下置き(先付け)タイプのグレートーンマスクの製造工程で使用される薬液である。
【0015】
本発明において、上記アルカリ水溶液、クロム系膜のエッチング液に接触とは、吹き掛け、スプレー、浸漬、など、これらの液に晒すことを指す。
【0016】
本発明において、「少なくとも超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率」を特に問題としている理由は、FPD用大型マスクでは、超高圧水銀灯のi〜g線の広い帯域を利用し多色波露光を実施しているからであり、しかも、露光光源である超高圧水銀灯から放射されるi線,h線,g線の露光光強度(相対強度)はほぼ等しいく、相対強度の面でi線,h線,g線はいずれも同等に重要視する必要があるからである(図9参照)。
本発明においては、マスクブランク及びマスクの製造工程や使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、「波長300〜600nmにおける透過率の変化量が5%以下であること」が更に好ましい。この理由は、係る領域に渡って相対強度の大きい露光光が分布するためである(図10参照)。
本発明において、超高圧水銀灯としては、例えば図10に示す特性を有するものが例示されるが、本発明はこれに限定されない。
【0017】
本発明において、透光性基板としては、合成石英、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの基板が挙げられる。
【0018】
本発明において、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクとしては、LCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクが挙げられる。
ここで、LCD製造用マスクには、LCDの製造に必要なすべてのマスクが含まれ、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、特にTFTチャンネル部やコンタクトホール部、低温ポリシリコンTFT、カラーフィルタ、反射板(ブラックマトリクス)、などを形成するためのマスクが含まれる。他の表示ディバイス製造用マスクには、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの製造に必要なすべてのマスクが含まれる。
【0019】
本発明に係るFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及びマスクにおいては、少なくとも、グレートーンマスク用半透光性膜と遮光性膜とを透光性基板上に順不同で有する態様が含まれる。つまり、半透光性膜とは別個に、露光波長を遮断する目的で、遮光性膜を形成する態様が含まれる。具体的には、例えば、図11(1)に示すように、透光性基板10上にグレートーンマスク用半透光性膜11と遮光性膜12とをこの順で形成し、これらの膜のパターニングを施して、グレートーンマスク用半透光性膜パターンと遮光性膜パターンとを形成してなる半透光性膜下置きタイプや、図11(2)に示すように、透光性基板上に遮光性膜とグレートーンマスク用半透光性膜とをこの順で形成し、これらの膜のパターニングを施して、遮光性膜パターンとグレートーンマスク用半透光性膜パターンとを形成してなる半透光性膜上置きタイプ、などが挙げられる。尚、MoSi系のグレートーンマスク用半透光性膜は、図11(1)に示す半透光性膜下置きタイプに適している。
本発明において、遮光性膜の材料としては、例えば、光半透過膜のエッチング特性と異なる材料がよく、クロムや、クロムの窒化物、クロムの炭化物、クロムのフッ化物、それらを少なくとも1つ含む材料が好ましい。
【0020】
本発明に係るFPDデバイスを製造するためのフォトマスクは、上記本発明に係るFPDデバイスを製造するためのマスクブランクを用いて製造され、ウエットエッチングによってマスクブランク上に形成された薄膜のパターニングを施し、マスクパターンを形成して製造される(構成7)。
【0021】
以下に、半透光性膜下置きタイプのFPD用大型マスクブランクを用いて、半透光性膜下置きタイプのグレートーンマスクを製造する製造工程の一例を、図l2を用いて説明する。
まず、透光性基板16の表面に半透光膜17、遮光膜18を順次成膜する工程を実施してマスクブランク20を形成し、準備する(図12(A))。
ここで、半透光膜17は、例えばMoとSiを含むMoSi系スパッタターゲットを用いたスパッタ成膜にて形成することができる。その膜厚は、必要な半透過膜の透過率により適宜選定される。次に、遮光膜18は、例えばクロムターゲットを用い、窒素、酸素、メタン、二酸化炭素等の反応性ガスを用いた反応性スパッタにて、一層または多層構造の膜(例えば反射防止膜付遮光膜)を形成することができる。
これらの半透光膜l7と遮光膜18は、グレートーンマスク10の製造工程において、互いのエッチングに対し耐性を有する。つまり、半透光膜17は、クロム用エッチング液に対して耐性を有する。また、遮光膜18は、MoSi用エッチング液に対して耐性を有する。
MoSi用エッチング液としては、弗化水素酸、珪弗化水素酸、弗化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つの弗素化合物と、過酸化水素、硝酸、硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤とを含むものが挙げられる。
【0022】
次に、上記マスクブランク20の遮光膜18上に、レジスト膜(ポジ型レジスト膜やネガ型レジスト膜)を形成し、このレジスト膜を電子線またはレーザー描画装置を用いて露光し、アルカリ水溶液の現像液により現像して、第1レジストパターン2lを形成する(図12(B))。この第1レジストパターン21は、製造されるグレートーンマスク10の透光部14を開口領域とする形状に形成される。また、第1レジストパターン21を形成するレジストとしては、ノボラック系レジストを用いることができる。
この第1レジストパターン21が形成されたマスクブランク20をクロム用エッチング液に浸漬し、このクロム用エッチング液を用い、第1レジストパターン21をマスクにして、マスクブランク20の遮光膜18をウエットエッチングする(図12(C))。このエッチングにより遮光膜18に遮光膜パターン22が形成される。
上記遮光膜パターン22の形成後、この遮光膜パターン22上に残存した第1レジストパターン21をアルカリ水溶液のレジスト剥離液で剥離する(図12(D))。
この第1レジストパターン21の剥離後、遮光膜パターン22が形成されたマスクブランク20をMoSi用エッチング液に浸漬し、このMoSi用エッチング液を用い、遮光膜パターン22をマスクにして半透光膜17をウェットエッチングし、半透光膜パターン23を形成する(図12(E))。これらの遮光膜パターン22及び半透光膜パターン23により透光部14が形成される。
上述のようにして半透光膜パターン23を形成後、遮光膜パターン22を構成する遮光膜18の所望部分以外を除去する工程を実施する。つまり、遮光膜パターン22上及び透光性基板l6上にレジスト膜を成膜し、このレジスト膜を前述と同様に露光、現像して、第2レジストパターン24を形成する(図12(F))。この第2レジストパターン24は グレートーン部15を開口領域とする形状に形成される。次に、第2レジストパターン24をマスクにして、前記クロム用エッチング液を用い遮光膜パターン22を構成する遮光膜18を更にウェットエッチングする(図12(G))。
その後、残存する第2レジストパターン24をアルカリ水溶液のレジスト剥離液で剥離し、半透光膜17からなるグレートーン部15、遮光膜18及び半透光膜17が積層されてなる遮光部13を有するグレートーンマスク30を製造する(図12(H))。
【0023】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.27A)、Ar(100%)をスパッタリングガス(流量56sccm)として、モリブデン及びシリコンからなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4)を、膜厚40オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで64.4%、406nmで66.7%、436nmで68.3%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は5%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで66.7%、406nmで68.7%、436nmで69.9%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大2.3%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても5%以下にできることを確認した。
【0024】
(実施例2)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.41A)、Ar(88.5%)とCH4(11.5%)をスパッタリングガス(流量66sccm)として、モリブデン、シリコン、炭素を含むグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4C)を、膜厚50オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで65.3%、406nmで68.3%、436nmで69.9%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は3%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで65.6%、406nmで68.4%、436nmで70.0%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大0.3%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても3%以下にできることを確認した。
【0025】
(実施例3)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.87A)、Ar(70%)とN2(30%)をスパッタリングガス(流量56sccm)として、モリブデン、シリコン及び窒素からなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4N)を、膜厚81オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで63.5%、406nmで66.9%、436nmで68.8%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は3%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで64.7%、406nmで67.9%、436nmで69.7%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大1.2%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても3%以下にできることを確認した。
【0026】
(実施例4)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=20:80(原子%比)のターゲットを用い(投入電流1.01A)、Ar(85%)とO2(15%)をスパッタリングガス(流量66sccm)として、モリブデン、シリコン、酸素からなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi4O)を、膜厚205オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図1〜3に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで65.2%、406nmで68.7%、436nmで70.5%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図1〜3に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図1〜3において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は3%以下であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで65.9%、406nmで69.3%、436nmで71.2%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大0.7%であった。また、波長300〜600nmの波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量についても3%以下にできることを確認した。
【0027】
(比較例1)
大型ガラス基板(合成石英(QZ)10mm厚、サイズ850mm×1200mm)上に、大型インラインスパッタリング装置を使用し、グレートーンマスク用半透光性膜の成膜を行った。具体的には、Mo:Si=30:70(原子%比)のターゲットを用い(投入電流0.28A)、Ar(100%)をスパッタリングガス(流量56sccm)として、モリブデン及びシリコンからなるグレートーンマスク用半透光性膜(MoSi2)を、膜厚38オングストロームで形成した。この段階(アルカリ水溶液(KOH)への接触前)における波長300〜600nmの分光透過率を測定した。尚、分光透過率は分光光度計(日立製作所社製:U−4100)により測定した。図4〜6に示すように、アルカリ水溶液(KOH)への接触前(接触時間・処理回数は共にゼロ)における、露光光源の波長における透過率は、365nmで62.0%、406nmで63.7%、436nmで64.5%、であった。
次に、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液(KOH)に、それぞれ、5分、10分、15分、20分浸漬した各段階(処理回数1〜4回の各段階)において、波長300〜600nmの分光透過率を測定した。波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を図4〜6に示す。
尚、アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用した。
図4〜6において、i線〜g線に渡る波長帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は8%以上であり、より詳しくは、15分浸漬した後における露光光源の波長における透過率は、365nmで70.7%、406nmで71.8%、436nmで72.5%、であり、係る帯域における15分浸漬前後の透過率の上昇量は最大8.7%であった。
【0028】
(実施例5〜8及び比較例2)
実施例1〜4及び比較例1において、アルカリ水溶液(KOH)に替えてクロム系膜のエッチング液を薬液として使用したこと以外は実施例1〜4及び比較例1と同様とした。
尚、クロム系膜のエッチング液としては、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液を常温で使用した。
また、実施例5はMoSi4ターゲット:Arガス、実施例6はMoSi4ターゲット:Ar+CH4ガス、実施例7はMoSi4ターゲット:Ar+N2ガス、実施例8はMoSi4ターゲット:Ar+O2ガス、比較例2はMoSi2ターゲット:Arガス、である。
実施例5〜8及び比較例2の波長365nm(i線)、406nm(h線)、436nm(g線)における各段階毎の透過率の変化を、それぞれ、図7〜図9に示す。これらの図において、横軸は処理回数(1回:2分)、縦軸は透過率(%)、をそれぞれ示す。
図7〜図9から、i線〜g線に渡る波長帯域における8分浸漬前後の透過率の上昇量は実施例5〜8では1.6%以下(=請求項6の1.5%以下と一致せず)と小さいが、比較例2では3.3%以上と大きいことが判った。
【0029】
(FPD用大型マスクの作製)
実施例1〜4及び比較例1と同様にして、大型ガラス基板上に、グレートーンマスク用半透光性膜を形成した。
次に、グレートーンマスク用半透光性膜の上に、Cr系の遮光性膜を形成し、FPD用大型マスクブランクを作製した。具体的には、まずArとN2ガスをスパッタリングガスとしてCrN膜を150オングストローム、次いでArとCH4ガスをスパッタリングガスとしてCrC膜を650オングストローム、次いでArとNOガスをスパッタリングガスとしてCrON膜を250オングストローム、連続成膜した。
次に、上述した図12で示した半透光性膜下置きタイプのグレートーンマスク製造工程に従いマスクを製造した。その際、現像液、レジスト剥離液、マスク洗浄液として、それぞれ、水酸化カリウム(KOH)を常温で使用し、接触時間は合計で15分以内とした。クロム系膜のエッチング液として硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液を常温で使用し、接触時間(エッチング時間)は合計で2分以内とした。
その結果、マスク作製前後(マスクブランク作製後とマスク作製後)の半透光性膜パターン15における透過率変化量は、実施例1〜4に係るマスクブランクを使用した場合は3%以下と小さいが、比較例1に係るマスクブランクを使用した場合は8%以上と大きかった。
また、実施例1〜4に係るマスクブランクを使用した場合は、パターン断面は垂直で良好なMoSi系半透過膜パターンを形成できた。
【0030】
以上、好ましい実施例を掲げて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1〜4で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長365nm(i線)における透過率の変化を示す図である。
【図2】実施例1〜4で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長406nm(h線)における透過率の変化を示す図である。
【図3】実施例1〜4で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長436nm(g線)における透過率の変化を示す図である。
【図4】比較例1で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長365nm(i線)における透過率の変化を示す図である。
【図5】比較例1で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長406nm(h線)における透過率の変化を示す図である。
【図6】比較例1で作成した半透光性膜について、アルカリ水溶液(KOH)に5分間隔で0〜20分浸漬させたときの波長436nm(g線)における透過率の変化を示す図である。
【図7】実施例5〜8及び比較例2で作成した半透光性膜について、クロム系膜のエッチング液に2分間隔で0〜8分浸漬させたときの波長365nm(i線)における透過率の変化を示す図である。
【図8】実施例5〜8及び比較例2で作成した半透光性膜について、クロム系膜のエッチング液に2分間隔で0〜8分浸漬させたときの波長406nm(h線)における透過率の変化を示す図である。
【図9】実施例5〜8及び比較例2で作成した半透光性膜について、クロム系膜のエッチング液に2分間隔で0〜8分浸漬させたときの波長436nm(g線)における透過率の変化を示す図である。
【図10】露光光源である超高圧水銀灯の分光分布を示す図である。
【図11】FPD用大型グレートーンマスクの態様を説明するための図である。
【図12】半透光性膜下置きタイプのグレートーンマスクを製造する製造工程を説明するための図である。
【図13】半透光性膜を有するグレートーンマスクを説明するための図であり、(1)は部分平面図、(2)は部分断面図である。
【図14】解像限界以下の微細遮光パターンを有するグレートーンマスクを説明するための図であり、(1)は部分平面図、(2)は部分断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 遮光部
2 透過部
3 グレートーン部
3a 微細遮光パターン
3b 微細透過部
3a’ 半透光性膜
10 透光性基板
11 半透光性膜
12 遮光性膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が5%以下であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項2】
前記MoとSiを含む半透光性膜は、MoとSiとで実質的に構成され、膜中のMoとSiとの原子%比率はMo:Si=1:3〜1:19であることを特徴とする、請求項1記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項3】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項4】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が、0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、前記半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定する、及び/又は、前記半透光性膜に、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜とすることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項5】
前記半透光性膜上にクロムを含む材料からなる遮光性膜が形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項6】
前記半透光性膜は、前記遮光性膜をパターニングする際に使用されるクロム系材料のエッチング液に2分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が1.5%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項7】
請求項1乃至6記載のマスクブランクを用いて製造されたことを特徴とするFPDデバイスを製造するためのフォトマスク。
【請求項8】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法であって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、
MoとSiとの原子%比率がMo:Si=1:3〜1:19であるターゲットを用い、かつ、
マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、アルゴンに、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させたガスをスパッタガスとして成膜することを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法。
【請求項1】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が5%以下であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項2】
前記MoとSiを含む半透光性膜は、MoとSiとで実質的に構成され、膜中のMoとSiとの原子%比率はMo:Si=1:3〜1:19であることを特徴とする、請求項1記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項3】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜であることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項4】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、MoSi系材料のエッチング液に対するエッチング速度が、0.3〜5Å/秒の範囲内となるように、前記半透光性膜のMoとSiとの原子%比率をMo:Si=1:3〜1:19から選定する、及び/又は、前記半透光性膜に、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させた膜とすることを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項5】
前記半透光性膜上にクロムを含む材料からなる遮光性膜が形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項6】
前記半透光性膜は、前記遮光性膜をパターニングする際に使用されるクロム系材料のエッチング液に2分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が1.5%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のFPDデバイスを製造するためのマスクブランク。
【請求項7】
請求項1乃至6記載のマスクブランクを用いて製造されたことを特徴とするFPDデバイスを製造するためのフォトマスク。
【請求項8】
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有するMoとSiを含む半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法であって、
前記MoとSiを含む半透光性膜は、
MoとSiとの原子%比率がMo:Si=1:3〜1:19であるターゲットを用い、かつ、
マスクブランク及びマスクの製造工程及び使用工程で使用されるアルカリ水溶液に15分接触させた前後において、超高圧水銀灯から放射される少なくともi線からg線に渡る波長帯域における透過率の変化量が3%以下となるように、アルゴンに、炭素、水素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも一の元素を含有させたガスをスパッタガスとして成膜することを特徴とする、FPDデバイスを製造するためのマスクブランクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−52120(P2008−52120A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229395(P2006−229395)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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