説明

マスクレイアウトデータ作成方法、マスクレイアウトデータ作成装置及び半導体装置の製造方法

【課題】特定の工場設備用に作成されたマスクレイアウトデータを用いて他の工場設備に最適化したマスクレイアウトデータを効率よく作成するマスクレイアウトデータ作成方法、マスクレイアウトデータ作成装置及びそのマスクレイアウトデータを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の工場設備用に作成されたマスクレイアウトデータを基に、半導体装置を構成するトランジスタをゲート長によって複数のグループに分ける。その後、各グループ毎にチャネル層に導入する不純物の濃度を設定し、トランジスタのゲート長−しきい値特性を調整する。また、マスクレイアウトデータから特定のグループのゲート電極と素子領域との重なり部分を抽出し、その重なり部分を拡張してチャネル層に不純物を注入するときのマスクの形状を決定し、そのデータをマスクレイアウトデータに追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の工場設備用に作成されたマスクレイアウトデータを用いて他の工場設備に最適化したマスクレイアウトデータを作成するマスクレイアウトデータ作成方法、マスクレイアウトデータ作成装置及びそのマスクレイアウトデータを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(Large Scale Integration:LSI)を製造する際には、まず要求される仕様に基づいて回路設計が行われる。その後、回路設計に用いられたデータを基にマスクレイアウトデータが作成され、このマスクレイアウトデータを使用してレチクルが作成される。そして、このレチクルを用いて半導体基板にパターンが転写され、半導体装置が製造される。一般的に、回路設計にはSPICEと呼ばれるソフトウェア(電子回路シミュレータ)が使用され、マスクレイアウトデータはGDSと呼ばれるフォーマットで記述される。
【0003】
通常、半導体装置は、自社内の設計基準(SPICEパラメータ)を用いて回路設計部門で回路設計を行い、そのデータを用いて自社内の製造部門で製造されている。しかし、自社工場で製造している半導体装置を急いで増産する必要がある場合、自社工場の設備を拡張すると多大な投資が必要となるだけでなく、新設した設備で実際に半導体装置を製造できるようになるまでに長期間が必要であるという問題がある。また、設備の立ち上げに伴って種々のリスクが発生するという問題もある。
【0004】
そこで、半導体装置の製造を社外(他社)に委託することがある。この場合、自社の設計基準(SPICEパラメータ)と他社の設計基準とが当然異なるので、同一のマスクレイアウトデータ(GDSデータ)を用いて半導体装置を製造しても、半導体装置を構成するトランジスタの特性が異なってしまう。
【0005】
図1は、発注元で製造したトランジスタの特性(ゲート長−しきい値電圧特性)の一例と受注先(委託先)で製造したトランジスタの特性の一例とを併せて示す図である。上述したように、各社毎に設計基準が異なるので、同一のマスクレイアウトデータを用いても、発注元で製造されたトランジスタの特性と受注先で製造されたトランジスタの特性とが異なってしまう。トランジスタの特性はゲート長だけでなく、エクステンション層の接合深さ、ゲート絶縁膜の厚さ、サイドウォールの幅及びチャネル層の不純物濃度などに関係する。従って、従来は、受注先で製造するトランジスタの特性が発注元で製造するトランジスタの特性に近づくように、これらのパラメータを調整している。
【0006】
なお、特許文献1には、真性MOSトランジスタ、長チャネルMOSトランジスタ及び短チャネルMOSトランジスタのチャネルとなる部分に不純物を導入して特性を最適化することが記載されている。また、特許文献2には特定のゲート長のトランジスタについて不純物注入条件を決定して不純物濃度を計算により求め、その計算結果を基に前記特定のゲート長よりもゲート長が短いトランジスタの不純物濃度を計算してそのトランジスタの特性を求める方法が記載されている。
【特許文献1】特開平4−255266号公報
【特許文献2】特開2002−299611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように受注先で製造されるトランジスタの特性を発注元で製造されるトランジスタの特性に近づけるためには、種々のパラメータを調整して実際にトランジスタを製造し、それらのトランジスタの特性を測定してその結果をパラメータの調整にフィードバックする必要がある。しかしながら、それらの作業は煩雑であり、パラメータを決定するのに長期間かかってしまう。
【0008】
また、パラメータの調整の結果ゲート絶縁膜の厚さが薄くなると、トランジスタの耐電圧が低くなって半導体装置の信頼性が低下することが考えられる。更に、エクステンション層の接合深さを変えるためにはプロセスの大幅な変更や新規の製造装置の導入が必要になることもある。
【0009】
本発明の目的は、特定の工場設備用に作成されたマスクレイアウトデータを用いて他の工場設備に最適化したマスクレイアウトデータを効率よく作成するマスクレイアウトデータ作成方法、マスクレイアウトデータ作成装置及びそのマスクレイアウトデータを用いた半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、第1の工場設備用のマスクレイアウトデータを用いて第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成するマスクレイアウトデータ作成方法であって、前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータから、ゲート長が所定の範囲であるトランジスタについて、ゲート電極と素子領域との重なり部分を抽出する工程と、前記重なり部分を拡張して拡張領域を設定する工程と、前記拡張領域に対応するデータを生成し、前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータに追加し、前記第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成する工程とを有するマスクレイアウトデータ作成方法が提供される。
【0011】
また、本発明の他の観点によれば、第1の工場設備用のマスクレイアウトデータを用いて第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成するマスクレイアウトデータ作成装置であって、前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータを入力する入力部と、前記入力部に入力された前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータから、ゲート長が所定の範囲のトランジスタについて、ゲート電極と素子領域との重なり部分を抽出する重なり部分抽出部と、前記重なり部分抽出部で抽出された重なり部分を拡張して拡張領域を設定し、その拡張領域に対応するデータを生成して前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータに追加し、第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成するマスクレイアウトデータ補正部とを有するマスクレイアウトデータ作成装置が提供される。
【0012】
本発明の更に他の観点によれば、半導体装置を構成する複数のトランジスタから、ゲート長に基づいて第1グループ及び第2グループを選別する選別工程と、前記第1グループ及び前記第2グループの前記トランジスタを有する半導体基板に第1のチャネル不純物注入を行う第1注入工程と、前記第1グループの前記トランジスタを有する前記半導体基板に第2のチャネル不純物注入を行う第2注入工程と、前記第1グループ及び前記第2グループの前記トランジスタを有する前記半導体基板の上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成するゲート形成工程と、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に不純物を導入するソース・ドレイン形成工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
本発明においては、半導体装置を構成するトランジスタをゲート長により複数のグループに分類し、各グループ頃にチャネル層の不純物濃度を調整して、基本的にチャネル層の不純物濃度だけで、第1の工場設備で製造されるトランジスタと第2の工場設備で製造されるトランジスタとの特性の差を小さくする。従って、エクステンション層の接合深さ、ゲート絶縁膜の厚さ及びサイドウォールの幅等のパラメータを変更する必要がなく、パラメータを決定するまでの時間を短縮することができる。
【0014】
また、本発明においては、第1の工場設備用のマスクレイアウトデータからゲート長が所定の範囲のゲート電極と素子領域との重なり部分を抽出し、その重なり部分を縦方向及び横方向に拡張して、拡張した領域(拡張領域)の形状をチャネル層に不純物を導入するときのマスクの形状とする。そして、第1の工場設備用のマスクレイアウトデータに拡張領域の形状(すなわち、マスクの形状)のデータを追加する。このような方法で、第1の工場設備用のマスクレイアウトデータから他の工場設備(第2の工場設備)用のマスクレイアウトデータを容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
従来は、発注元(第1の工場設備)で製造されるトランジスタのゲート長−しきい値電圧特性にできるだけ近づくように、受注先(第2の工場設備)においてエクステンション層の接合深さ、ゲート絶縁膜の厚さ、サイドウォールの幅及びチャネル層の不純物濃度などのパラメータを調整している。これに対し、本発明では、発注元で製造されるトランジスタの特性と受注先で製造されるトランジスタの特性との差が小さければゲート長−しきい値電圧特性が連続していなくてもよいとの観点から、半導体装置を構成するトランジスタをゲート長により複数のグループに分け、各グループ毎にチャネル層の不純物濃度を個別に設定し、基本的にチャネル層の不純物濃度だけでゲート長−しきい値電圧特性を調整する。
【0017】
以下、図2,図3を参照してより具体的に説明する。なお、図2はチャネル層に不純物(導電性不純物)を導入する前の半導体基板10を示す上面図であり、図中一点鎖線で示すゲート電極12a,12bはチャネル層に不純物を導入した後に形成される。また、図3(a)〜(d)は、受注先の工場設備における半導体装置(トランジスタ)の製造工程を示す断面図である。ここでは、図2に示すように、ゲート長Lが50nmを超える(L>50nm)トランジスタT1のゲート長−しきい値電圧特性と、ゲート長Lが50nm以下(L≦50nm)のトランジスタT2のゲート長−しきい値電圧特性とを個別に調整するものとする。また、ここでは、説明の便宜上トランジスタT1,T2のチャネル層の導電型をp型とする。
【0018】
まず、発注元で作成されたマスクレイアウトデータからトランジスタのデータを抽出し、それらのトランジスタをゲート長Lが50nm以下か否かにより2つのグループ(トランジスタT1,T2)に分ける。一方、予め実験を行って、トランジスタT1の特性(ゲート長−しきい値電圧特性)が発注元のトランジスタの特性(但し、ゲート長Lが50nmを超えるトランジスタの特性)に近づく(等価となる)ようにチャネル層の不純物濃度C1を決定し、トランジスタT2の特性が発注元のトランジスタの特性(但し、ゲート長Lが50nm以下のトランジスタの特性)に近づく(等価となる)ようにチャネル層の不純物濃度C2を決定する。
【0019】
次に、図3(a)に示すように、半導体基板10のトランジスタT2形成領域の上にマスク(フォトレジスト膜)21を形成する。そして、トランジスタT1形成領域の半導体基板10の表面にホウ素(B)又はインジウム(In)等のp型不純物をC1の濃度に導入する。その後、マスク21を除去する。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、半導体基板10のトランジスタT1形成領域の上にマスク(フォトレジスト膜)22を形成する。そして、トランジスタT2形成領域の半導体基板10の表面にホウ素又はインジウム等のp型不純物をC2の濃度に導入する。その後、マスク22を除去する。このようにして、トランジスタT1のチャネル層の不純物濃度をC1、トランジスタT2のチャネル層の不純物濃度をC2とする。
【0021】
次に、図3(c)に示すように、半導体基板10上にゲート絶縁膜11及びゲート電極12a,12bを形成する。そして、ゲート電極12a,12bをマスクとして半導体基板10にリン(P)又はヒ素(As)等のn型不純物を導入して、エクステンション層13aを形成する。
【0022】
次いで、図3(d)に示すように、ゲート電極12a,12bの両側にサイドウォール14をそれぞれ形成する。そして、ゲート電極12a,12b及びサイドウォール14をマスクとして半導体基板10にn型不純物を導入し、ソース・ドレイン13bを形成する。このようにして、トランジスタT1,T2が完成する。なお、本実施形態においては、チャネル層の不純物濃度以外のパラメータ、すなわちゲート絶縁膜11の厚さ、エクステンション層13aの接合深さ、サイドウォール14の幅及びソース・ドレイン13bの不純物濃度等は、発注元と同じとする。
【0023】
図4は、発注元のトランジスタの特性と本発明を適用して受注先で製造されたトランジスタの特性とを示す図である。この図4に示すように、本発明を適用して受注先で製造されたトランジスタは、ゲート長としきい値電圧との関係を示す曲線が連続していない。しかし、発注元のトランジスタの特性と受注先のトランジスタの特性との差は最大でも数10mVであり、従来(図1参照)に比べて小さくなっている。
【0024】
ところで、本実施形態においては、上述したようにトランジスタT1形成領域又はトランジスタT2形成領域にそれぞれ選択的に不純物を導入するためにマスク21,22(図3(a),(b)参照)が必要となる。しかしながら、発注元で作成されたマスクレイアウトデータ(GDSデータ)には上述した工程で用いるためのマスクのデータは含まれていない。そのため、マスクレイアウトデータから上述した工程で使用するマスクを作成するためのデータを生成し、マスクレイアウトデータに追加する必要がある。
【0025】
図5は、本発明の実施形態に係るマスクレイアウトデータ作成装置30の構成を示すブロック図である。本実施形態のマスクレイアウトデータ作成装置30は、特定の工場設備(発注元)用に作成されたマスクレイアウトデータを入力し、チャネル層への不純物注入時に用いるマスクパターンのデータを追加して出力する。
【0026】
本実施形態のマスクレイアウトデータ作成装置30はコンピュータ(ワークステーション)と専用ソフトウエアとにより構成され、図5に示すように、入力部31と、重なり部分抽出部32と、マスクレイアウトデータ補正部33と、出力部34とを有している。入力部31には、発注元で作成されたマスクレイアウトデータ(GDSデータ)が入力される。重なり部分抽出部32は、入力部31から入力されたマスクレイアウトデータを解析し、ゲート長が特定の値以下のトランジスタのゲート電極と素子領域(アクティブ領域)との重なり部分を抽出する。
【0027】
マスクレイアウトデータ補正部33は、重なり部分抽出部32の出力を用いてチャネル層への不純物注入時に用いるマスクパターンのデータを生成し、発注元で作成されたマスクレイアウトデータに追加する。そして、そのマスクレイアウトデータを出力部34を介して出力する。
【0028】
なお、前記特定の値は、予め、発注元で製造されたトランジスタの特性と、発注元で作成されたマスクレイアウトデータを用いて受注先で製造されたトランジスタの特性とを比較して決定しておくことが必要である。また、本実施形態において素子領域とはトランジスタ等の素子が形成される領域である。各素子領域は、SIT(Shallow Trench Isolation)又はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)等の素子分離膜により分離されている。
【0029】
以下、上述のマスクレイアウトデータ作成装置30の動作を、図6に示すフローチャート及び図7に示すトランジスタ形成領域の上面図(模式図)を参照してより詳細に説明する。但し、ここでは図7に示すように、1つの素子領域40に2つのトランジスタT1,T2が近接して形成されるものとする。トランジスタT1のゲート長(ゲート電極41の幅)Lは80nm、トランジスタT2のゲート長(ゲート電極42の幅)Lは50nmであり、ゲート電極41,42の間隔は270nmとする。また、素子領域40のゲート電極41,42の長手方向の長さは200nmとする。更に、ここでは、半導体装置を構成するトランジスタを、ゲート長が50nm以下のものと50nmを超えるものとの2つのグループに分けるものとする。
【0030】
まず、ステップS11において、マスクレイアウトデータ作成装置30に、入力部31を介して、発注元で作成されたマスクレイアウトデータ(GDSデータ))を入力する。そうすると、重なり部分抽出部32は、ステップS12においてマスクレイアウトデータを解析し、全てのトランジスタのゲート電極と素子領域(アクティブ領域)40との重なり部分を抽出する。
【0031】
次に、ステップS13に移行し、重なり部分抽出部32は、抽出した重なり部分から更にゲート長Lが50nm以下のトランジスタT2のゲート電極42と素子領域40との重なり部分(図7中にハッチングを施した部分)を抽出する。その後、ステップS14に移行し、マスクレイアウトデータ補正部33は、ステップS13で抽出された重なり部分を横方向(左右方向)及び縦方向(上下方向)に拡張して、拡張領域を設定する。ここでは、トランジスタT1のゲート電極41とトランジスタT2のゲート電極42との間隔が270nmであるので、その約半分の長さ(140nm)を拡張する距離とする。そして、図7中に破線で示すように、トランジスタT2のゲート電極42と素子領域40との重なり部分を横方向及び縦方向に140nmづつ拡張して拡張領域を設定する。
【0032】
次に、ステップS15に移行し、マスクレイアウトデータ補正部33は、ステップS14で設定された拡張領域を覆うマスク(又は、拡張領域に対応する開口部を有するマスク)のデータ生成する。そして、このマスクのデータを発注元で作成されたマスクレイアウトデータに追加し、出力部34を介して受注先に最適化されたマスクデータとして出力する。
【0033】
次いで、ステップS16に移行し、マスクレイアウトデータ作成装置30から出力されたマスクレイアウトデータ(GDSデータ)に基づいてレチクルが作成される。マスクレイアウトデータからレチクルを作成するためにマスクレイアウトデータをレチクル描画データに変換するが、このとき必要に応じてダミーパターンの発生や光学近接補正((Optical Proximity Correction:OPC)等の処理が実施される。このようにして、各トランジスタのチャネル層に不純物を導入する工程で用いるレチクルの作成が完了する。そして、このレチクルを用いて、図3(a),(b)に示す工程で使用するマスク21,22が形成される。
【0034】
なお、上記の例ではゲート長Lが50nm以下のトランジスタT2のゲート電極42と素子領域40との重なり部分を抽出し、その重なり部分を拡張してマスクの大きさ(又は、マスクの開口部の大きさ)を決定する場合について説明したが、ゲート長Lが50nmを超えるトランジスタT1のゲート電極41と素子領域40との重なり部分を抽出し、その重なり部分を拡張してマスクの大きさ(又は、マスクの開口部の大きさ)を決定してもよい。
【0035】
また、露光装置では最小露光面積が決められており、露光面積が最小露光面積よりも小さい場合はマスクを所望の形状に形成することができない。そのため、マスクの大きさ(又は、マスクの開口部の大きさ)は最小露光面積よりも大きくすることが好ましい。例えば、露光装置の最小露光面積が0.12μm2の場合は、上記のようにゲート電極42と素子領域40との重なり部分を横方向及び縦方向に140nm拡張すると、マスクの面積が0.16μm2(0.33μm×0.48μm)となる。この場合、露光面積が露光装置の最小露光面積よりも大きいので、マスクを所望の形状とすることができる。なお、トランジスタT1,T2のゲート電極41,42間の間隔が小さい場合は、横方向(左右方向)の拡張距離を小さくし、縦方向(上下方向)の拡張距離を大きくすればよい。
【0036】
更に、上記の例では半導体装置を構成するトランジスタをゲート長が50nm以下のものと50nmを超えるものとの2つのグループに分けた場合について説明したが、半導体装置を構成するトランジスタをゲート長により3以上のグループに分け、各グループ毎にチャネル層の不純物濃度を設定してもよい。
【0037】
本実施形態によれば、発注元で作成されたマスクレイアウトデータ(GDSデータ)をマスクレイアウトデータ作成装置30で処理するだけで、受注先の工場設備に最適化されたマスクレイアウトデータを得ることができる。これにより、受注先での半導体装置の製造に要する時間を従来に比べて大幅に短縮することができる。また、設計基準が異なる工場設備を用いて特性が均一な半導体装置を容易に製造することが可能になる。更に、本実施形態においては、チャネル層の不純物濃度以外のパラメータを変更しなくてもよいので、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴う半導体装置の信頼性の低下や、エクステンション層の接合深さの変更に伴うプロセスの大幅な変更又は新規装置の導入等の問題が回避される。
【0038】
(変形例)
上記実施形態では、図3(a),(b)に示すように、トランジスタT1,T2のチャネル領域の不純物濃度をそれぞれC1,C2とするために2回のフォトリソグラフィ工程が必要である。しかし、1回のフォトリソグラフィ工程でトランジスタT1,T2のチャネル領域の不純物濃度をそれぞれC1,C2とすることも可能である。以下に、その方法について説明する。
【0039】
図8(a),(b)は、変形例1に係るトランジスタT1,T2のチャネル層への不純物導入方法を示す断面図である。ここでも、説明の便宜上、トランジスタT1,T2のチャネル層の導電型をp型としている。
【0040】
まず、図8(a)に示すように、トランジスタT1,T2形成領域の半導体基板10の表面にp型不純物をC1の濃度に導入する。その後、図8(b)に示すように、トランジスタT1形成領域の上にマスク(フォトレジスト膜)23を形成し、トランジスタT2形成領域の半導体基板10の表面に更にp型不純物を導入して、トランジスタT2形成領域のチャネル層の不純物濃度をC2とする。このようにして、1回のフォトリソグラフィ工程で不純物濃度がC1のチャネル層と不純物濃度がC2のチャネル層とを形成することができる。
【0041】
図9(a),(b)は、変形例2に係るトランジスタT1,T2のチャネル層への不純物導入方法を示す断面図である。ここでも、説明の便宜上、トランジスタT1,T2のチャネル層の導電型をp型としている。
【0042】
まず、図9(a)に示すように、トランジスタT1,T2形成領域の半導体基板10の表面にp型不純物をC2の濃度に導入する。その後、図9(b)に示すように、トランジスタT2形成領域の上にマスク(フォトレジスト膜)24を形成する。そして、トランジスタT1形成領域の半導体基板10の表面にn型不純物を導入して、トランジスタT1形成領域のチャネル層の不純物濃度をC1とする。このようにして、1回のフォトリソグラフィ工程で不純物濃度がC1のチャネル層と不純物濃度がC2のチャネル層とを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、発注元で製造したトランジスタの特性(ゲート長−しきい値電圧特性)の一例と受注先(委託先)で製造したトランジスタの特性の一例とを併せて示す図である。
【図2】図2は、チャネル層に不純物を導入する前の半導体基板を示す上面図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】図4は、発注元のトランジスタの特性と本発明を適用して受注先で製造されたトランジスタの特性とを示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係るマスクレイアウトデータ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、マスクレイアウトデータ作成装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、マスクレイアウトデータ作成装置の動作を示すトランジスタ形成領域の上面図である。
【図8】図8(a),(b)は、トランジスタT1,T2のチャネル層への不純物導入方法の変形例1を示す図である。
【図9】図9(a),(b)は、トランジスタT1,T2のチャネル層への不純物導入方法の変形例2を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10…半導体基板、
11…ゲート絶縁膜、
12a,12b,41,42…ゲート電極、
13a…エクステンション層、
13b…ソース・ドレイン、
14…サイドウォール、
21〜24…マスク(フォトレジスト膜)、
30…マスクレイアウトデータ作成装置、
31…入力部、
32…重なり部分抽出部、
33…マスクレイアウトデータ補正部、
34…出力部、
40…素子領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の工場設備用のマスクレイアウトデータを用いて第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成するマスクレイアウトデータ作成方法であって、
前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータから、ゲート長が所定の範囲であるトランジスタについて、ゲート電極と素子領域との重なり部分を抽出する工程と、
前記重なり部分を拡張して拡張領域を設定する工程と、
前記拡張領域に対応するデータを生成し、前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータに追加し、前記第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成する工程と
を有することを特徴とするマスクレイアウトデータ作成方法。
【請求項2】
前記拡張領域の拡張距離は、同一素子領域内に形成される前記トランジスタのゲート電極間の距離の半分であることを特徴とする請求項1に記載のマスクレイアウトデータ作成方法。
【請求項3】
前記拡張領域の大きさは、前記第2の工場設備用のマスクレイアウトデータから作成されたレチクルを使用する露光装置の最小露光面積以上であることを特徴とする請求項1に記載のマスクレイアウトデータ作成方法。
【請求項4】
第1の工場設備用のマスクレイアウトデータを用いて第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成するマスクレイアウトデータ作成装置であって、
前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータを入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータから、ゲート長が所定の範囲のトランジスタについて、ゲート電極と素子領域との重なり部分を抽出する重なり部分抽出部と、
前記重なり部分抽出部で抽出された重なり部分を拡張して拡張領域を設定し、その拡張領域に対応するデータを生成して前記第1の工場設備用のマスクレイアウトデータに追加し、第2の工場設備用のマスクレイアウトデータを作成するマスクレイアウトデータ補正部と
を有することを特徴とするマスクレイアウトデータ作成装置。
【請求項5】
前記マスクレイアウトデータ補正部は、前記拡張領域の拡張距離を、同一素子領域内に形成される前記トランジスタのゲート電極間の距離の半分とすることを特徴とする請求項4に記載のマスクレイアウトデータ作成装置。
【請求項6】
前記マスクレイアウトデータ補正部は、前記拡張領域の大きさを、露光装置の最小露光面積以上に決定することを特徴とする請求項4に記載のマスクレイアウトデータ作成装置。
【請求項7】
半導体装置を構成する複数のトランジスタから、ゲート長に基づいて第1グループ及び第2グループを選別する選別工程と、
前記第1グループ及び前記第2グループの前記トランジスタを有する半導体基板に第1のチャネル不純物注入を行う第1注入工程と、
前記第1グループの前記トランジスタを有する前記半導体基板に第2のチャネル不純物注入を行う第2注入工程と、
前記第1グループ及び前記第2グループの前記トランジスタを有する前記半導体基板の上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成するゲート形成工程と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に不純物を導入するソース・ドレイン形成工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記選別工程は、第1のマスクレイアウトデータから、前記ゲート長が所定の範囲のゲート電極と素子領域との重なり部分を抽出する工程と、
前記重なり部分を拡張して拡張領域を設定する拡張工程と、
前記拡張領域に対応するレイアウトデータを生成し、前記第1のマスクレイアウトデータに追加して第2のマスクレイアウトデータを作成する作成工程とを有することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1のマスクレイアウトデータは第1の工場設備において使用され、前記第2のマスクレイアウトデータは第2の工場設備において使用されることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1のチャネル不純物注入及び前記第2のチャネル不純物注入によるチャネル層の不純物濃度は、前記第2の工場設備により製造される前記第1グループの前記トランジスタ及び前記第2グループの前記トランジスタのしきい値電圧が、前記第1の工場設備により製造される前記トランジスタのしきい値電圧と等価になるように決定することを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−192946(P2008−192946A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27605(P2007−27605)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】