マスク洗浄装置及び洗浄方法並びに有機EL製造装置
【課題】本発明は、ドライ洗浄方式において、表面を洗浄(剥離)しながら裏面も洗浄(剥離)できるマスク洗浄装置または洗浄方法を提供すること、あるいは上記マスク洗浄装置を蒸着装置に隣接して設けることで短時間に洗浄できる稼働率の高い有機EL製造装置を提供することである。
【解決手段】マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射しマスクを洗浄する際に、マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄し、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面も洗浄することを特徴とする。
【解決手段】マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射しマスクを洗浄する際に、マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄し、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面も洗浄することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着マスクを使用した成膜一般に関し、特にレーザで蒸着マスクを洗浄するマスク洗浄装置及び洗浄方法並びに有機EL製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスとして有機ELデバイスが注目され、それを製造する有力な方法として真空蒸着法がある。真空蒸着法はマスクを用いて素子パターンを形成する方法である。素子パターンは真空チャンバ内で蒸着材料を加熱蒸発(昇華)させ、図3に示すように蒸着したい場所に設けたマスクの開口部を通して蒸着材料を表示基板に蒸着することで形成される。マスクの開口部以外の場所には蒸着材料が堆積するため、一定枚数成膜後マスクの洗浄を行なっている。
【0003】
マスクの洗浄方式は主にウエット洗浄方式が用いられているが、処理時間を要する、有機溶剤を用いるため環境負荷が増加する、微細パターンにダメージが生じる、蒸着材料の回収再利用が困難という理由で、レーザ光源を用いたドライ洗浄方式が開発されている。特許文献1には、蒸着を行なう成膜室(真空チャンバ)内で、マスクにレーザ光が透過する粘着のあるフィルムを貼り付け、フィルムを透過してレーザ光を照射し、マスクから剥離した蒸着材料の堆積物をフィルムに回収する洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−169573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マスクは被処理対象(例えば、表示基板)に密着させて蒸着を行なう。その際にマスクの被処理対象と密着側である裏面(従って、蒸発源側をマスクの表面という)に蒸着材料が付着して残存する場合がある。この作業を一日に数百ショット〜数千ショットを繰り返しているうちに、シャドウマスクの裏面側にも蒸着材料がかなりの量付着してしまう。その結果、マスク裏面に付着していた蒸着材料が表示基板に付着する虞がある。表示基板への異物やパーティクルの付着は、結果的に電気的なショートによるドットの発光不良(欠陥)やパーティクル自体の陰による表示ムラ等の不良の原因になる。
【0006】
従って、マスクの表面だけではなく裏面も洗浄することが重要である。ウエット洗浄方式は、洗浄液である薬液を槽に満たしその中にマスクを浸漬するので表裏面に関係なく同時に洗浄できるが、特許文献1に開示されたレーザ光源を用いたドライ洗浄方式(以下、単にレーザ洗浄方式という)は表面のみを洗浄する方法である。
【0007】
本発明の第1の目的は、ドライ洗浄方式において、表面を洗浄(剥離)しながら裏面も洗浄(剥離)できるマスク洗浄装置または洗浄方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、上記マスク洗浄装置を蒸着装置に隣接して設けることで短時間に洗浄できる稼働率の高い有機EL製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記第1の目的を達成するために、マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射し該マスクを洗浄する際に、前記マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄し、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面を洗浄することを第1の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄は前記裏面側に設けられ前記レーザ光を反射し前記裏面に照射する裏面ミラーを経由して行なうことを第2の特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスクの裏面への照射は被処理対象にパターンを形成する前記マスクの開口部を透過し前記裏面ミラーを経由して行なうことを第3の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第3の特徴に加え、前記裏面ミラーはマスクの1辺方向に細長く、前記裏面ミラーを前記1辺方向と垂直方向に前記マスクに沿って相対的に移動させることを第4の特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄は前記裏面ミラーと前記マスクとの距離を相対的に移動させることを第5の特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄は前記裏面ミラーの裏面への照射位置を調節して行なうことを第6の特徴とする。
【0015】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記レーザ光のデフォーカス領域で前記表面及び前記裏面を洗浄することを第7の特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスクの裏面への照射は前記マスクの側部外側に設けられた側部反射ミラーを経由して行ない、前記マスク裏面洗浄は前記レーザ光をビームスプリッタで該側部ミラーに向けて分配することを第8の特徴とする。
【0017】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄の洗浄位置は前記表面の洗浄位置と異なるように前記レーザ光を制御することを第9特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記第2の目的を達成するために、蒸着材料をマスクを介して被処理対象に蒸着し成膜する真空蒸着チャンバと、第1乃至第9のいずれかの特徴を有するマスク洗浄装置と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置との接続部に設けられた真空隔離手段と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置間を前記真空隔離手段を介して前記マスクを搬送する搬送手段とを有することを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドライ洗浄方式において、表面を洗浄(剥離)しながら裏面も洗浄(剥離)できるマスク洗浄装置または洗浄方法を提供できる。
【0020】
また、本発明によれば、上記マスク洗浄装置を蒸着装置に隣接して設けることで短時間に洗浄できる稼働率の高い有機EL製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態である有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である搬送チャンバと処理チャンバの構成の模式図と動作説明図である。
【図3】マスクの一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態であるマスク洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【図5】裏面ミラー角度調節手段と裏面ミラー垂直方向移動手段をより詳細に示す図である。
【図6】第1の実施形態におけるマスクの表面を洗浄しながら裏面も洗浄できる原理を示す図である。
【図7】裏面同時洗浄方法による洗浄フローを示す図である。
【図8】マスク表面および裏面へ照射されるレーザ光の照射エネルギー密度を調節できる第1の実施例を示す図である。
【図9】マスク表面および裏面へ照射されるレーザ光の照射エネルギー密度を調節できる第2の実施例を示す図である。
【図10】マスク表面および裏面へ照射されるレーザ光の照射エネルギー密度を調節できる第3の実施例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態であるマスク洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の成膜装置として蒸着材料として有機材料を用いる有機ELデバイス製造装置を例に図を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態である有機ELデバイス製造装置100を示す。有機ELデバイス製造装置は、単に発光材料層(EL層)を形成し電極で挟むだけの構造ではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層、陰極の上に電子注入層や輸送層をなど様々な材料が薄膜としてなる多層構造を形成したり、基板を洗浄したりする。図1はその製造装置の一例を示したものである。
【0023】
本実施形態における有機ELデバイス製造装置100は、大別して処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ13、基板6を処理する4つのクラスタ(A〜D)、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ13あるいは次工程(封止工程)との間の設置された5つの受渡室14から構成されている。本実施形態では、基板の蒸着面を上面にして搬送し、蒸着するときに基板を立てて蒸着する。
【0024】
ロードクラスタ13は、前後に真空を維持するためにゲート弁10を有するロードロック室13Rとロードロック室13Rから基板を受取り、旋回して受渡室14aに基板6を搬入する搬送ロボット15Rからなる。各ロードロック室13R及び各受渡室14は前後にゲート弁10を有し、当該ゲート弁10の開閉を制御し真空を維持しながらロードクラスタ13あるいは次のクラスタ等へ基板を受け渡しする。
【0025】
各クラスタ(A〜D)は、一台の搬送ロボット15を有する搬送チャンバ2と、搬送ロボット15から基板を受取り、所定の処理をする図面上で上下に配置された2つの処理チャンバ1(第1の添え字a〜dはクラスタを示し、第2の添え字u、dは上側下側を示す)を有する。搬送チャンバ2と処理チャンバ1の間にはゲート弁10を設けている。
【0026】
処理チャンバ1の構成は処理内容によって異なるが、蒸着材料である発光材料を真空中で蒸着しEL層を形成する真空蒸着チャンバ1buを例にとって説明する。図2は、そのとき搬送チャンバ2bと真空蒸着チャンバ1buの構成の模式図と動作説明図である。図2における搬送ロボット15は、全体を上下に移動可能(矢印159参照)で、左右に旋回可能なリンク構造のアーム157を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド158を有する。
【0027】
本実施形態では、図2に示すように、1台の真空蒸着チャンバに処理ラインを2つ設け、一方のライン(例えばRライン)で蒸着している間に、他方のLラインでは基板を搬出入し、基板6とマスク8とのアライメントをして蒸着する準備を完了させることである。この処理を交互に行なうことによって、基板に蒸着させずに無駄に蒸発(昇華)している時間を減少させることができる。
上記を実現するために、真空蒸着チャンバ1buは、搬送ロボット15bと基板6の受け渡し行なう受渡部9と、受渡部の櫛歯状ハンド91をハンド旋回駆動手段93で旋回させて直立した基板6とアライメントするマスク8と、マスクを介して基板に蒸着材料を蒸着させる蒸着部7とを有する。蒸着部7は蒸着源71をレール76上に沿って上下方向に移動させる上下駆動手段76と蒸発源71をレール75上に沿って左右のマスク間を移動させる左右駆動ベース74とを有する。蒸発源71は内部に蒸着材料である発光材料を有し、前記蒸着材料を加熱制御(図示せず)することによって安定した蒸発速度が得られ、図2の引出し図に示すように、蒸発源71に並んだ複数の穴73から噴射する構造となっている。
【0028】
図1の引出し図に示すように、マスク洗浄装置60は真空蒸着チャンバ1buなどの真空蒸着チャンバ1に隣接して設けられたマスク洗浄室4に設けられている。マスク洗浄室4は真空チャンバであるマスク洗浄チャンバ5と大気中のレーザ室3から別れている。マスク洗浄装置もマスク洗浄チャンバ5内に設置されたマスク裏面走査手段と40とレーザ室3内に設けられたレーザ光走査手段30に分かれる。
【0029】
マスク洗浄チャンバ5と真空蒸着チャンバ1とは真空隔離手段であるゲート弁10Bを介して接続しており、マスク8はゲート弁10Bを介して両者の間をマスク搬送手段によって移動可能である。
【0030】
図3は本実施形態におけるマスク8の一例を示す。マスク8は大別してマスク部8Mとマスク部を支持するフレーム8Fからなる。蒸着に用いられるマスク部8Mは例えばインバー材からなり、厚さは50μm程度が一般的である。今後、形成される画素または電極が高精細になれば成る程薄く作られることが予想される。マスク部は頑丈なフレーム8Fにテンションを掛けられ平面を維持している。引出し図に示すように、マスク部8Mには基板6に蒸着する部分に対応した箇所に開口部8hを有する。本例では赤(R)、緑(G)、青(B)の発光材料を蒸着するマスク部のうち赤に対応する開口部を示している。
【0031】
元々薄く作られているマスク部は外力や温度によって変形させられ、結果各開口部間のピッチやクリアランスやトータルピッチに狂いが生じ再生不能になってしまう。現状では十数回が使用限界である。なお、マスクの寸法は基板の大型化に伴い2000mm×2000mmにもなり、その重量も300kg超にも及ぶ。なお、以下の説明では、紛らわしさを避けるために、特別に区別を必要としない限り、マスク部8Mを代表してマスク8と表す。
【0032】
図4は本発明の第1の実施形態であるマスク洗浄装置60の構成を模式的に示した図である。図4は真空蒸着チャンバ1から真空隔離手段であるゲート弁10Bを開閉し、搬送手段によってマスク8をマスク洗浄台45にセットした状態を示す。
【0033】
マスク洗浄装置60はレーザ室3に設けられたレーザ光走査手段30とマスク洗浄チャンバ室5に設けられたマスク裏面走査手段40とこれらを制御する制御部50とから構成される。
レーザ光走査手段はレーザ光33を出射するレーザユニット31、レーザ光33をマスク8表面に向けて水平(X)方向及び垂直(Y)方向に走査するガルバノミラー32、大気中のレーザ室3と真空中のマスク洗浄チャンバ室とを隔離し、レーザ光を透過する透過窓34を有する。
【0034】
一方、マスク裏面走査手段40はマスク8の裏面側に設けられ、マスクの一辺方向(図4では水平(X)方向)に細長い裏面ミラー41、裏面ミラーを矢印Eのように回転させ裏面ミラーの角度を調節する裏面ミラー角度調節手段42、裏面ミラーを前記一辺方向と垂直方向にマスクに沿って(図面では上下(矢印Y)方向)移動させる裏面ミラー垂直方向移動手段43、裏面ミラーをマスクに対し前後(矢印Z方向)に移動させる裏面ミラー前後移動手段44を有する。
【0035】
図5は裏面ミラー角度調節手段42と裏面ミラー垂直方向移動手段43をより詳細に示した図である。裏面ミラー垂直方向移動手段43はボール螺子43bをボールネジ駆動モータ43mで駆動し、ナット43nにより裏面ミラー固定台42dを上下に移動させる。また、裏面ミラー角度調節手段42は、裏面ミラー固定台に固定された裏面ミラー角度調節モータ42mにより裏面ミラー41の両端にも設けられたギアボックス42g内のギアを駆動し裏面ミラーを回転させる。後述するように裏面ミラー41はマスク8の左右全域にレーザ光を反射できるように細長い形状を有する。裏面ミラー垂直方向移動手段43の駆動手段としてはリニア駆動手段を用いてもよい。
【0036】
また、本実施形態では左右(X)方向に長いミラーを用いているので、レーザ光の左右方向の走査し同期して走査する必要がなく、裏面ミラー自体のコンパクト化が可能となり、裏面ミラー自体のコストも抑えることが可能である。
【0037】
さらに、本実施形態では、真空蒸着チャンバ1とマスク洗浄チャンバ室5との間でマスクを搬入出するときに真空蒸着チャンバ1の真空度低下を抑えるためにマスク洗浄チャンバ室も真空チャンバとしている。従って、洗浄後のマスクまたは交換用マスクを直ちに真空蒸着チャンバに搬入できるのでさらに稼働率の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0038】
一方、ゲート弁10Bの代わりに真空/大気雰囲気を実現できるロードロック室を介して設けることで、マスク洗浄チャンバ室5を大気雰囲気にすることができる。その場合、マスク洗浄装置60はレーザ室3に設けられたレーザ光走査手段30とマスク洗浄チャンバ室5に分ける必要なく一つの室で実現できる。
【0039】
図6は本実施形態におけるマスク8の表裏面を同時に洗浄する原理を示す図である。図6は図3に示したマスク部8Mの一部を拡大して示し、レーザユニット31から射出されたレーザ光33がマスク部裏面に付着した蒸着材料(付着蒸着材料Fという)に照射される様子を示している。レーザユニットから射出されたレーザ光はマスク8の開口部8hを透過し裏面ミラー41に当たる。裏面ミラー41により反射したレーザ光33bはマスク裏面に付着した付着蒸着材料Fbに照射され、付着蒸着材料Fbが洗浄(剥離)される。マスク裏面の洗浄されるY方向の位置は図5に示した裏面ミラー角度調節手段42によって裏面ミラーを図4に示す矢印E方向に駆動することによって制御される。
【0040】
このように、レーザ光はマスク8の蒸着面である表面の付着蒸着材料Ffを洗浄(剥離)すると共に、開口部8hを透過したレーザ光は裏面の付着蒸着材料Fbをも洗浄(剥離)する。この原理は、表面の洗浄実験中に裏面側にあった反射鏡により裏面側も洗浄されていたという新たな知見に基づいてなされたものである。
【0041】
次に、この裏面同時洗浄方法による洗浄フローを図4を参照しながら図7を用いて説明する。
まず、洗浄されるマスク8が真空蒸着チャンバ1からゲート弁10Bを開閉し、マスク洗浄チャンバ室5に搬入されマスク洗浄台45にセットされる(Step(1))。次に、ガルバノミラー32を図4に示す水平(X)方向及び垂直(Y)方向に走査し、レーザユニット31のレーザ光33の照射位置をマスク部8Mの右端上端若しくは左端上端(どちらでも良い)の原点位置に移動する(Step(2))。同時またはそれ以前に裏面ミラー41を前記原点位置の高さまで移動させ、裏面ミラーの反射角度を制御部50からの指定条件により指定された角度に設定し待機する(Step(3))。その後、図4に示したガルバノミラー32によりレーザ光33を水平方向に1走査し、洗浄を開始する。このとき、裏面ミラー41の水平(X)方向の長さはマスク8の幅に対して十分な長さを有しているので停止した状態でレーザ光を反射し裏面を洗浄する(Step(4))。次に、ガルバノミラーによるレーザ光のY方向への所定量の下方シフトに伴い、裏面ミラー垂直方向移動手段43により裏面ミラーをY方向に下方シフトさせる(Step(5))。Step(4)、(5)をマスク8のY方向の高さ分だけ繰り返し洗浄を行なう(Step(6))。
【0042】
上記の洗浄フローのStep(4)、(5)において、制御部50は裏面ミラー41の下方シフトの速度をガルバノミラー32によるレーザ光の下方シフトと同期または連動して一定の所定速度となうように裏面ミラー垂直方向移動手段43を制御する。その結果、裏面ミラーは常に反射光を指定された角度でマスク背面に照射し続けることができ、マスク8の裏面全体を洗浄することができる。
【0043】
図3のマスクの説明で述べたようにマスク部8Mは大変に薄く精密に製作されているので、エネルギー密度が高いと温度の上昇によりマスク部表面が変形し、さらに照射エネルギー密度が高くなるとマスク部表面はレーザにより破壊されることが確認されている。一方、照射エネルギー密度が低いと洗浄(剥離)ができないことも確認されている。
それ故、レーザ光の照射エネルギー密度を調節しマスクの表面温度が所定以上にならないようにかつ洗浄(剥離)できるようにレーザ光の照射エネルギー密度を調整する必要がある。
【0044】
図8はマスク表面および裏面へ照射されるレーザ光33の照射エネルギー密度を調節できる第1の実施例を示す図である。
表面側においては、レーザユニット31の光学系は最終段に凸レンズ31aを用いていることから、凸レンズ31aによりレーザ光33の焦点位置fを調節する。このとき、焦点位置前後に発生するデフォーカス領域dfでマスク表面へ照射する照射面積Sfを調節し、マスク表面おける照射エネルギー密度を調節する。使用したレーザユニットによるが、実験に用いたレーザユニットでは、照射面積Sfの直径が110μmで、直径270μm〜350μmの付着蒸着材料が洗浄(剥離)された。
【0045】
一方、裏面側においては、裏面ミラー41は照射光をほぼ平行に反射する機能を有するので、裏面ミラー41のマスク8からの距離Lを調節することにより、マスク裏面への照射面Sb、即ち照射エネルギー密度を調節することができる。距離Lの調節は図4に示した裏面ミラー前後移動手段44で行う。照射エネルギー密度が高い場合には、マスク部8Mへのダメージを避けるために、マスク8Mから距離Lを離し、マスク裏面に照射されるレーザ光の照射面積Sbを大きくしエネルギー密度を下げる。また、逆に照射エネルギー密度の不足により、洗浄(剥離)効果が弱い場合には、マスク8から距離Lを小さくとり、マスク裏面に照射されるレーザ光の照射面積Sbを小さくしエネルギー密度を上げる。
【0046】
図8においては、焦点位置fを裏面側に設定し、その焦点位置を中心に左右対称のデフォーカス量を有するビームを形成する。そして焦点位置とマスク8との距離LFと焦点位置と裏面ミラー41との距離LBが等距離、即ち、焦点位置をマスク部裏と裏面ミラーとの中間点に設ける。その結果、マスク8の表面と裏面ミラー41、言い換えればマスク8Mの表面と裏面においてほぼ同一の照射面積が得られる。実験結果によれば、同じ照射面積であれば、裏面側の照射エネルギー密度は表面側の照射エネルギー密度とほぼ同じ値が得られ、裏面側も同じ照射エネルギー密度で洗浄(剥離)できることが確認されている。従って、裏面ミラー41を焦点位置を中心にマスク8と対称な位置に調節することにより、裏面側もマスクにダメージを与えることなく洗浄(剥離)することができる。
【0047】
勿論、裏面における付着蒸着材料の厚さや密着強度などにより裏面において必要な照射エネルギー密度は異なる場合はある。この場合は、裏面側の距離LRをマスク部裏面側の距離LMを基準に、必要な照射エネルギー密度比に基づいて調節する。
【0048】
第1の実施例によれば、裏面ミラーは常に反射光を指定された角度でマスク裏面に照射し続けることができ、マスク表面と共にマスク8の裏面を洗浄することができる。
また、第1の実施例によれば、マスクにダメージを与えることなく裏面ミラーの位置を決定することができる。
【0049】
図9はマスク表面および裏面へ照射されるレーザ光33の照射エネルギー密度を調節できる第2の実施例を示す図である。第1の実施例と異なる点は、凸レンズ31aによるレーザ光33の焦点位置をマスク表面側に設けた点である。従って、マスク表面と裏面における照射面積SfとSbが異なり、裏面における照射面積Sfが大きくなる。本実施例では、マスク表面側、裏面側の照射エネルギー密度を距離LF、距離LBを変えることで調節する。距離LFの調節は凸レンズ31aで、距離LBの調節は図4に示した裏面ミラー前後移動手段44で行う。本実施例ではSb>Sfとなるのでマスク裏面における照射エネルギー密度が低くなる。
従って、本実施例では、裏面おける付着蒸着材料の厚さや密着強度などにより裏面側に必要な照射エネルギー密度が表面側に比べ低い場合に適用できる。
【0050】
また、第2の実施例においても、裏面ミラーは常に反射光を指定された角度にてマスク背面に照射し続けることができ、マスク表面と共にマスク8の裏面を洗浄することができる。
【0051】
また、第2の実施例によれば、マスクにダメージを与えることなく裏面ミラーの位置を決定することができる。
【0052】
図10はマスク表面および裏面へ照射されるレーザ光33の照射エネルギー密度を調節できる第3の実施例を示す図である。第2の実施例と異なる点は、裏面ミラー41からのマスク8へのレーザ光の照射経路に凸レンズ41aを設けている点である。これによって、図4に示した裏面ミラー前後移動手段44と協調して照射面積Sb(照射エネルギー密度)を変えることができ、実施例1と同様にマスク8の裏面における照射エネルギー密度を表面における照射エネルギー密度と同一にすることもできる。
【0053】
次に、マスクの表面の照射箇所と裏面の照射箇所の関係について述べる。マスク8を表裏洗浄を行なう際に注意しなければならないことがある。それはマスクの表面の照射箇所と裏面の照射箇所が同じ点になることであり、同じ場所に表裏面から集中してレーザパワーを照射してしまうとレーザの熱によるマスクの変形が発生してしまう虞れがある。これを回避する仕組みとして、図5、図6に示すように裏面ミラーが任意の角度に可動できる裏面ミラー角度調節手段42を設けている。
【0054】
この裏面ミラー角度調節手段によって、図8から図10に示すように裏面ミラー41による裏面への照射箇所が表面の照射箇所と同一にならないように任意にずらすことにより同時に同じポイントを照射することを防止することができる。ここで、裏面ミラー41の角度を水平よりも上側に向けることで、裏面は表面よりも遅れて照射され、下側に向けることで表面よりも先に照射されることになる。この順序はどちらでも良く、大切なのは表面裏面の洗浄位置をずらすことである。
【0055】
本実施形態によれば、表裏における照射位置をずらすことで、マスクにダメージを与えることなく、表裏面を洗浄(剥離)することができる。
勿論、レーザ光の照射エネルギーを低くして表裏面を同時に照射することで表裏面同時に洗浄(剥離)するのに必要なエネルギーが得られること且つ、表裏面同時箇所照射にてダメージレスなエネルギーにコントロールすることが可能ならば同一箇所に照射してもよい。
【0056】
図11は本発明の第2の実施形態であるマスク洗浄装置60の構成を模式的に示した図である。図4に示す第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では裏面へ照射するレーザ光をマスクの開口部8hを透過して照射した。本実施形態では、マスクの上側又は下側あるいは左右側の各側部外側からマスク裏面への照射するレーザ光を照射する。図11はそのうちマスク上側側部から前記レーザ光を得る実施例を示した図である。
【0057】
レーザ光走査手段30はレーザユニット31、レーザ光33を分配するビームスプリッタ35、ビームスプリッタで分配したレーザ光のうちマスク表面への照射光33fを透過窓34を介してマスク表面上を走査するガルバノミラー32、ビームスプリッタで分配したレーザ光のうちマスク裏面への照射光33bを反射させる反射ミラー36、反射ミラーからの照射光33bを透過窓34を介して受け洗浄チャンバ5の天井に設けられた裏面走査用のガルバノミラー37(側部反射ミラー)を有する。裏面走査用のガルバノミラーは、第1の実施形態と同様な機能を有する裏面ミラー垂直方向移動手段43や裏面ミラー前後移動手段44に走査される裏面ミラー41に追随してマスク裏面への照射光33bを裏面ミラーに照射する。
【0058】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、マスク表面を洗浄(剥離)しながら、マスク裏面も洗浄(剥離)することができる。
また、第1の実施形態で説明した種々の施策を第2の実施形態に適用することによって第1の実施形態で得られた効果を奏することができる。
【0059】
上記第1及び第2の実施形態では、図4及び図11に示す左右(X)方向に走査させる手段を設ける必要がないように細長い形状を有する裏面ミラーを用いたが、裏面ミラーも左右(X)方向に走査させてもよい。
また、第2の実施形態では、天井に設けた裏面走査用のガルバノミラー37を単なる反射ミラーとし、裏面ミラーの位置に裏面走査用のガルバノミラーを設けてもよい。この場合は、第1、第2の実施形態で説明した裏面ミラー垂直方向移動手段43や裏面ミラー前後移動手段44が不要となる。
【0060】
さらに、第1、第2の実施形態では、洗浄チャンバ5を真空チャンバとしたが、真空隔離手段としてゲート弁の代わりにロードロック室を設ける。これにより洗浄チャンバは真空蒸着チャンバと完全に分離でき、洗浄チャンバを大気雰囲気とすることも可能である。
【0061】
また、第1、第2の実施形態では、レーザユニットを1台としたが、スループット向上のために、表面側に複数台設け、それぞれのレーザ光を例えば開口部を透過させて、例えば共通に設けた裏面ミラーに照射し裏面側を洗浄してもよい。
【0062】
以上、説明した本発明の各実施形態によれば、レーザ洗浄の欠点である片面ずつの洗浄を、タクト及びコストを増加させることなく一度に表裏面洗浄を行なうことができ、スループットをウエット洗浄と同等の性能まで向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1:処理チャンバ 1bu:真空蒸着チャンバ
2:搬送チャンバ 3:レーザ室
4:マスク洗浄室 5:マスク洗浄チャンバ
6:基板 7:蒸着部
8:マスク 8M:マスク部
8F:マスクフレーム 8h:マスク開口部
9:処理受渡部 10、10B:ゲート弁
13:ロードクラスタ 14:受渡室
15:搬送ロボット 20:制御装置
30:レーザ光走査手段 31:レーザユニット
31a:レーザユニットの最終段の凸レンズ
32:ガルバノミラー 33:レーザ光
33b:マスク裏面への照射光 33f:マスク表面への照射光
34:透過窓 35:ビームスプリッタ
36:反射ミラー 37:裏面走査用のガルバノミラー
40:マスク裏面走査手段 41:裏面ミラー41
42:裏面ミラー角度調節手段 43:裏面ミラー垂直方向移動手段
44:裏面ミラー前後移動手段 45:マスク洗浄台
50:制御部 60:マスク洗浄装置
71:蒸発源 100:有機ELデバイスの製造装置
A〜D:クラスタ df:デフォーカス領域
f:凸レンズによる焦点位置 F:付着蒸着材料
Fb:マスク裏面に付着した付着蒸発材料
Ff:マスク表面に付着した付着蒸発材料
L:裏面ミラーとマスク裏面との距離 LB:焦点位置と裏面ミラーとの距離
LF:焦点位置とマスクとの距離 Sf:マスク表面への照射面積
Sb:マスク裏面への照射面積。
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着マスクを使用した成膜一般に関し、特にレーザで蒸着マスクを洗浄するマスク洗浄装置及び洗浄方法並びに有機EL製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスとして有機ELデバイスが注目され、それを製造する有力な方法として真空蒸着法がある。真空蒸着法はマスクを用いて素子パターンを形成する方法である。素子パターンは真空チャンバ内で蒸着材料を加熱蒸発(昇華)させ、図3に示すように蒸着したい場所に設けたマスクの開口部を通して蒸着材料を表示基板に蒸着することで形成される。マスクの開口部以外の場所には蒸着材料が堆積するため、一定枚数成膜後マスクの洗浄を行なっている。
【0003】
マスクの洗浄方式は主にウエット洗浄方式が用いられているが、処理時間を要する、有機溶剤を用いるため環境負荷が増加する、微細パターンにダメージが生じる、蒸着材料の回収再利用が困難という理由で、レーザ光源を用いたドライ洗浄方式が開発されている。特許文献1には、蒸着を行なう成膜室(真空チャンバ)内で、マスクにレーザ光が透過する粘着のあるフィルムを貼り付け、フィルムを透過してレーザ光を照射し、マスクから剥離した蒸着材料の堆積物をフィルムに回収する洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−169573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マスクは被処理対象(例えば、表示基板)に密着させて蒸着を行なう。その際にマスクの被処理対象と密着側である裏面(従って、蒸発源側をマスクの表面という)に蒸着材料が付着して残存する場合がある。この作業を一日に数百ショット〜数千ショットを繰り返しているうちに、シャドウマスクの裏面側にも蒸着材料がかなりの量付着してしまう。その結果、マスク裏面に付着していた蒸着材料が表示基板に付着する虞がある。表示基板への異物やパーティクルの付着は、結果的に電気的なショートによるドットの発光不良(欠陥)やパーティクル自体の陰による表示ムラ等の不良の原因になる。
【0006】
従って、マスクの表面だけではなく裏面も洗浄することが重要である。ウエット洗浄方式は、洗浄液である薬液を槽に満たしその中にマスクを浸漬するので表裏面に関係なく同時に洗浄できるが、特許文献1に開示されたレーザ光源を用いたドライ洗浄方式(以下、単にレーザ洗浄方式という)は表面のみを洗浄する方法である。
【0007】
本発明の第1の目的は、ドライ洗浄方式において、表面を洗浄(剥離)しながら裏面も洗浄(剥離)できるマスク洗浄装置または洗浄方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、上記マスク洗浄装置を蒸着装置に隣接して設けることで短時間に洗浄できる稼働率の高い有機EL製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記第1の目的を達成するために、マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射し該マスクを洗浄する際に、前記マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄し、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面を洗浄することを第1の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄は前記裏面側に設けられ前記レーザ光を反射し前記裏面に照射する裏面ミラーを経由して行なうことを第2の特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスクの裏面への照射は被処理対象にパターンを形成する前記マスクの開口部を透過し前記裏面ミラーを経由して行なうことを第3の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第3の特徴に加え、前記裏面ミラーはマスクの1辺方向に細長く、前記裏面ミラーを前記1辺方向と垂直方向に前記マスクに沿って相対的に移動させることを第4の特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄は前記裏面ミラーと前記マスクとの距離を相対的に移動させることを第5の特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄は前記裏面ミラーの裏面への照射位置を調節して行なうことを第6の特徴とする。
【0015】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記レーザ光のデフォーカス領域で前記表面及び前記裏面を洗浄することを第7の特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記マスクの裏面への照射は前記マスクの側部外側に設けられた側部反射ミラーを経由して行ない、前記マスク裏面洗浄は前記レーザ光をビームスプリッタで該側部ミラーに向けて分配することを第8の特徴とする。
【0017】
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記マスク裏面洗浄の洗浄位置は前記表面の洗浄位置と異なるように前記レーザ光を制御することを第9特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記第2の目的を達成するために、蒸着材料をマスクを介して被処理対象に蒸着し成膜する真空蒸着チャンバと、第1乃至第9のいずれかの特徴を有するマスク洗浄装置と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置との接続部に設けられた真空隔離手段と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置間を前記真空隔離手段を介して前記マスクを搬送する搬送手段とを有することを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドライ洗浄方式において、表面を洗浄(剥離)しながら裏面も洗浄(剥離)できるマスク洗浄装置または洗浄方法を提供できる。
【0020】
また、本発明によれば、上記マスク洗浄装置を蒸着装置に隣接して設けることで短時間に洗浄できる稼働率の高い有機EL製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態である有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である搬送チャンバと処理チャンバの構成の模式図と動作説明図である。
【図3】マスクの一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態であるマスク洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【図5】裏面ミラー角度調節手段と裏面ミラー垂直方向移動手段をより詳細に示す図である。
【図6】第1の実施形態におけるマスクの表面を洗浄しながら裏面も洗浄できる原理を示す図である。
【図7】裏面同時洗浄方法による洗浄フローを示す図である。
【図8】マスク表面および裏面へ照射されるレーザ光の照射エネルギー密度を調節できる第1の実施例を示す図である。
【図9】マスク表面および裏面へ照射されるレーザ光の照射エネルギー密度を調節できる第2の実施例を示す図である。
【図10】マスク表面および裏面へ照射されるレーザ光の照射エネルギー密度を調節できる第3の実施例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態であるマスク洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の成膜装置として蒸着材料として有機材料を用いる有機ELデバイス製造装置を例に図を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態である有機ELデバイス製造装置100を示す。有機ELデバイス製造装置は、単に発光材料層(EL層)を形成し電極で挟むだけの構造ではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層、陰極の上に電子注入層や輸送層をなど様々な材料が薄膜としてなる多層構造を形成したり、基板を洗浄したりする。図1はその製造装置の一例を示したものである。
【0023】
本実施形態における有機ELデバイス製造装置100は、大別して処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ13、基板6を処理する4つのクラスタ(A〜D)、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ13あるいは次工程(封止工程)との間の設置された5つの受渡室14から構成されている。本実施形態では、基板の蒸着面を上面にして搬送し、蒸着するときに基板を立てて蒸着する。
【0024】
ロードクラスタ13は、前後に真空を維持するためにゲート弁10を有するロードロック室13Rとロードロック室13Rから基板を受取り、旋回して受渡室14aに基板6を搬入する搬送ロボット15Rからなる。各ロードロック室13R及び各受渡室14は前後にゲート弁10を有し、当該ゲート弁10の開閉を制御し真空を維持しながらロードクラスタ13あるいは次のクラスタ等へ基板を受け渡しする。
【0025】
各クラスタ(A〜D)は、一台の搬送ロボット15を有する搬送チャンバ2と、搬送ロボット15から基板を受取り、所定の処理をする図面上で上下に配置された2つの処理チャンバ1(第1の添え字a〜dはクラスタを示し、第2の添え字u、dは上側下側を示す)を有する。搬送チャンバ2と処理チャンバ1の間にはゲート弁10を設けている。
【0026】
処理チャンバ1の構成は処理内容によって異なるが、蒸着材料である発光材料を真空中で蒸着しEL層を形成する真空蒸着チャンバ1buを例にとって説明する。図2は、そのとき搬送チャンバ2bと真空蒸着チャンバ1buの構成の模式図と動作説明図である。図2における搬送ロボット15は、全体を上下に移動可能(矢印159参照)で、左右に旋回可能なリンク構造のアーム157を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド158を有する。
【0027】
本実施形態では、図2に示すように、1台の真空蒸着チャンバに処理ラインを2つ設け、一方のライン(例えばRライン)で蒸着している間に、他方のLラインでは基板を搬出入し、基板6とマスク8とのアライメントをして蒸着する準備を完了させることである。この処理を交互に行なうことによって、基板に蒸着させずに無駄に蒸発(昇華)している時間を減少させることができる。
上記を実現するために、真空蒸着チャンバ1buは、搬送ロボット15bと基板6の受け渡し行なう受渡部9と、受渡部の櫛歯状ハンド91をハンド旋回駆動手段93で旋回させて直立した基板6とアライメントするマスク8と、マスクを介して基板に蒸着材料を蒸着させる蒸着部7とを有する。蒸着部7は蒸着源71をレール76上に沿って上下方向に移動させる上下駆動手段76と蒸発源71をレール75上に沿って左右のマスク間を移動させる左右駆動ベース74とを有する。蒸発源71は内部に蒸着材料である発光材料を有し、前記蒸着材料を加熱制御(図示せず)することによって安定した蒸発速度が得られ、図2の引出し図に示すように、蒸発源71に並んだ複数の穴73から噴射する構造となっている。
【0028】
図1の引出し図に示すように、マスク洗浄装置60は真空蒸着チャンバ1buなどの真空蒸着チャンバ1に隣接して設けられたマスク洗浄室4に設けられている。マスク洗浄室4は真空チャンバであるマスク洗浄チャンバ5と大気中のレーザ室3から別れている。マスク洗浄装置もマスク洗浄チャンバ5内に設置されたマスク裏面走査手段と40とレーザ室3内に設けられたレーザ光走査手段30に分かれる。
【0029】
マスク洗浄チャンバ5と真空蒸着チャンバ1とは真空隔離手段であるゲート弁10Bを介して接続しており、マスク8はゲート弁10Bを介して両者の間をマスク搬送手段によって移動可能である。
【0030】
図3は本実施形態におけるマスク8の一例を示す。マスク8は大別してマスク部8Mとマスク部を支持するフレーム8Fからなる。蒸着に用いられるマスク部8Mは例えばインバー材からなり、厚さは50μm程度が一般的である。今後、形成される画素または電極が高精細になれば成る程薄く作られることが予想される。マスク部は頑丈なフレーム8Fにテンションを掛けられ平面を維持している。引出し図に示すように、マスク部8Mには基板6に蒸着する部分に対応した箇所に開口部8hを有する。本例では赤(R)、緑(G)、青(B)の発光材料を蒸着するマスク部のうち赤に対応する開口部を示している。
【0031】
元々薄く作られているマスク部は外力や温度によって変形させられ、結果各開口部間のピッチやクリアランスやトータルピッチに狂いが生じ再生不能になってしまう。現状では十数回が使用限界である。なお、マスクの寸法は基板の大型化に伴い2000mm×2000mmにもなり、その重量も300kg超にも及ぶ。なお、以下の説明では、紛らわしさを避けるために、特別に区別を必要としない限り、マスク部8Mを代表してマスク8と表す。
【0032】
図4は本発明の第1の実施形態であるマスク洗浄装置60の構成を模式的に示した図である。図4は真空蒸着チャンバ1から真空隔離手段であるゲート弁10Bを開閉し、搬送手段によってマスク8をマスク洗浄台45にセットした状態を示す。
【0033】
マスク洗浄装置60はレーザ室3に設けられたレーザ光走査手段30とマスク洗浄チャンバ室5に設けられたマスク裏面走査手段40とこれらを制御する制御部50とから構成される。
レーザ光走査手段はレーザ光33を出射するレーザユニット31、レーザ光33をマスク8表面に向けて水平(X)方向及び垂直(Y)方向に走査するガルバノミラー32、大気中のレーザ室3と真空中のマスク洗浄チャンバ室とを隔離し、レーザ光を透過する透過窓34を有する。
【0034】
一方、マスク裏面走査手段40はマスク8の裏面側に設けられ、マスクの一辺方向(図4では水平(X)方向)に細長い裏面ミラー41、裏面ミラーを矢印Eのように回転させ裏面ミラーの角度を調節する裏面ミラー角度調節手段42、裏面ミラーを前記一辺方向と垂直方向にマスクに沿って(図面では上下(矢印Y)方向)移動させる裏面ミラー垂直方向移動手段43、裏面ミラーをマスクに対し前後(矢印Z方向)に移動させる裏面ミラー前後移動手段44を有する。
【0035】
図5は裏面ミラー角度調節手段42と裏面ミラー垂直方向移動手段43をより詳細に示した図である。裏面ミラー垂直方向移動手段43はボール螺子43bをボールネジ駆動モータ43mで駆動し、ナット43nにより裏面ミラー固定台42dを上下に移動させる。また、裏面ミラー角度調節手段42は、裏面ミラー固定台に固定された裏面ミラー角度調節モータ42mにより裏面ミラー41の両端にも設けられたギアボックス42g内のギアを駆動し裏面ミラーを回転させる。後述するように裏面ミラー41はマスク8の左右全域にレーザ光を反射できるように細長い形状を有する。裏面ミラー垂直方向移動手段43の駆動手段としてはリニア駆動手段を用いてもよい。
【0036】
また、本実施形態では左右(X)方向に長いミラーを用いているので、レーザ光の左右方向の走査し同期して走査する必要がなく、裏面ミラー自体のコンパクト化が可能となり、裏面ミラー自体のコストも抑えることが可能である。
【0037】
さらに、本実施形態では、真空蒸着チャンバ1とマスク洗浄チャンバ室5との間でマスクを搬入出するときに真空蒸着チャンバ1の真空度低下を抑えるためにマスク洗浄チャンバ室も真空チャンバとしている。従って、洗浄後のマスクまたは交換用マスクを直ちに真空蒸着チャンバに搬入できるのでさらに稼働率の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0038】
一方、ゲート弁10Bの代わりに真空/大気雰囲気を実現できるロードロック室を介して設けることで、マスク洗浄チャンバ室5を大気雰囲気にすることができる。その場合、マスク洗浄装置60はレーザ室3に設けられたレーザ光走査手段30とマスク洗浄チャンバ室5に分ける必要なく一つの室で実現できる。
【0039】
図6は本実施形態におけるマスク8の表裏面を同時に洗浄する原理を示す図である。図6は図3に示したマスク部8Mの一部を拡大して示し、レーザユニット31から射出されたレーザ光33がマスク部裏面に付着した蒸着材料(付着蒸着材料Fという)に照射される様子を示している。レーザユニットから射出されたレーザ光はマスク8の開口部8hを透過し裏面ミラー41に当たる。裏面ミラー41により反射したレーザ光33bはマスク裏面に付着した付着蒸着材料Fbに照射され、付着蒸着材料Fbが洗浄(剥離)される。マスク裏面の洗浄されるY方向の位置は図5に示した裏面ミラー角度調節手段42によって裏面ミラーを図4に示す矢印E方向に駆動することによって制御される。
【0040】
このように、レーザ光はマスク8の蒸着面である表面の付着蒸着材料Ffを洗浄(剥離)すると共に、開口部8hを透過したレーザ光は裏面の付着蒸着材料Fbをも洗浄(剥離)する。この原理は、表面の洗浄実験中に裏面側にあった反射鏡により裏面側も洗浄されていたという新たな知見に基づいてなされたものである。
【0041】
次に、この裏面同時洗浄方法による洗浄フローを図4を参照しながら図7を用いて説明する。
まず、洗浄されるマスク8が真空蒸着チャンバ1からゲート弁10Bを開閉し、マスク洗浄チャンバ室5に搬入されマスク洗浄台45にセットされる(Step(1))。次に、ガルバノミラー32を図4に示す水平(X)方向及び垂直(Y)方向に走査し、レーザユニット31のレーザ光33の照射位置をマスク部8Mの右端上端若しくは左端上端(どちらでも良い)の原点位置に移動する(Step(2))。同時またはそれ以前に裏面ミラー41を前記原点位置の高さまで移動させ、裏面ミラーの反射角度を制御部50からの指定条件により指定された角度に設定し待機する(Step(3))。その後、図4に示したガルバノミラー32によりレーザ光33を水平方向に1走査し、洗浄を開始する。このとき、裏面ミラー41の水平(X)方向の長さはマスク8の幅に対して十分な長さを有しているので停止した状態でレーザ光を反射し裏面を洗浄する(Step(4))。次に、ガルバノミラーによるレーザ光のY方向への所定量の下方シフトに伴い、裏面ミラー垂直方向移動手段43により裏面ミラーをY方向に下方シフトさせる(Step(5))。Step(4)、(5)をマスク8のY方向の高さ分だけ繰り返し洗浄を行なう(Step(6))。
【0042】
上記の洗浄フローのStep(4)、(5)において、制御部50は裏面ミラー41の下方シフトの速度をガルバノミラー32によるレーザ光の下方シフトと同期または連動して一定の所定速度となうように裏面ミラー垂直方向移動手段43を制御する。その結果、裏面ミラーは常に反射光を指定された角度でマスク背面に照射し続けることができ、マスク8の裏面全体を洗浄することができる。
【0043】
図3のマスクの説明で述べたようにマスク部8Mは大変に薄く精密に製作されているので、エネルギー密度が高いと温度の上昇によりマスク部表面が変形し、さらに照射エネルギー密度が高くなるとマスク部表面はレーザにより破壊されることが確認されている。一方、照射エネルギー密度が低いと洗浄(剥離)ができないことも確認されている。
それ故、レーザ光の照射エネルギー密度を調節しマスクの表面温度が所定以上にならないようにかつ洗浄(剥離)できるようにレーザ光の照射エネルギー密度を調整する必要がある。
【0044】
図8はマスク表面および裏面へ照射されるレーザ光33の照射エネルギー密度を調節できる第1の実施例を示す図である。
表面側においては、レーザユニット31の光学系は最終段に凸レンズ31aを用いていることから、凸レンズ31aによりレーザ光33の焦点位置fを調節する。このとき、焦点位置前後に発生するデフォーカス領域dfでマスク表面へ照射する照射面積Sfを調節し、マスク表面おける照射エネルギー密度を調節する。使用したレーザユニットによるが、実験に用いたレーザユニットでは、照射面積Sfの直径が110μmで、直径270μm〜350μmの付着蒸着材料が洗浄(剥離)された。
【0045】
一方、裏面側においては、裏面ミラー41は照射光をほぼ平行に反射する機能を有するので、裏面ミラー41のマスク8からの距離Lを調節することにより、マスク裏面への照射面Sb、即ち照射エネルギー密度を調節することができる。距離Lの調節は図4に示した裏面ミラー前後移動手段44で行う。照射エネルギー密度が高い場合には、マスク部8Mへのダメージを避けるために、マスク8Mから距離Lを離し、マスク裏面に照射されるレーザ光の照射面積Sbを大きくしエネルギー密度を下げる。また、逆に照射エネルギー密度の不足により、洗浄(剥離)効果が弱い場合には、マスク8から距離Lを小さくとり、マスク裏面に照射されるレーザ光の照射面積Sbを小さくしエネルギー密度を上げる。
【0046】
図8においては、焦点位置fを裏面側に設定し、その焦点位置を中心に左右対称のデフォーカス量を有するビームを形成する。そして焦点位置とマスク8との距離LFと焦点位置と裏面ミラー41との距離LBが等距離、即ち、焦点位置をマスク部裏と裏面ミラーとの中間点に設ける。その結果、マスク8の表面と裏面ミラー41、言い換えればマスク8Mの表面と裏面においてほぼ同一の照射面積が得られる。実験結果によれば、同じ照射面積であれば、裏面側の照射エネルギー密度は表面側の照射エネルギー密度とほぼ同じ値が得られ、裏面側も同じ照射エネルギー密度で洗浄(剥離)できることが確認されている。従って、裏面ミラー41を焦点位置を中心にマスク8と対称な位置に調節することにより、裏面側もマスクにダメージを与えることなく洗浄(剥離)することができる。
【0047】
勿論、裏面における付着蒸着材料の厚さや密着強度などにより裏面において必要な照射エネルギー密度は異なる場合はある。この場合は、裏面側の距離LRをマスク部裏面側の距離LMを基準に、必要な照射エネルギー密度比に基づいて調節する。
【0048】
第1の実施例によれば、裏面ミラーは常に反射光を指定された角度でマスク裏面に照射し続けることができ、マスク表面と共にマスク8の裏面を洗浄することができる。
また、第1の実施例によれば、マスクにダメージを与えることなく裏面ミラーの位置を決定することができる。
【0049】
図9はマスク表面および裏面へ照射されるレーザ光33の照射エネルギー密度を調節できる第2の実施例を示す図である。第1の実施例と異なる点は、凸レンズ31aによるレーザ光33の焦点位置をマスク表面側に設けた点である。従って、マスク表面と裏面における照射面積SfとSbが異なり、裏面における照射面積Sfが大きくなる。本実施例では、マスク表面側、裏面側の照射エネルギー密度を距離LF、距離LBを変えることで調節する。距離LFの調節は凸レンズ31aで、距離LBの調節は図4に示した裏面ミラー前後移動手段44で行う。本実施例ではSb>Sfとなるのでマスク裏面における照射エネルギー密度が低くなる。
従って、本実施例では、裏面おける付着蒸着材料の厚さや密着強度などにより裏面側に必要な照射エネルギー密度が表面側に比べ低い場合に適用できる。
【0050】
また、第2の実施例においても、裏面ミラーは常に反射光を指定された角度にてマスク背面に照射し続けることができ、マスク表面と共にマスク8の裏面を洗浄することができる。
【0051】
また、第2の実施例によれば、マスクにダメージを与えることなく裏面ミラーの位置を決定することができる。
【0052】
図10はマスク表面および裏面へ照射されるレーザ光33の照射エネルギー密度を調節できる第3の実施例を示す図である。第2の実施例と異なる点は、裏面ミラー41からのマスク8へのレーザ光の照射経路に凸レンズ41aを設けている点である。これによって、図4に示した裏面ミラー前後移動手段44と協調して照射面積Sb(照射エネルギー密度)を変えることができ、実施例1と同様にマスク8の裏面における照射エネルギー密度を表面における照射エネルギー密度と同一にすることもできる。
【0053】
次に、マスクの表面の照射箇所と裏面の照射箇所の関係について述べる。マスク8を表裏洗浄を行なう際に注意しなければならないことがある。それはマスクの表面の照射箇所と裏面の照射箇所が同じ点になることであり、同じ場所に表裏面から集中してレーザパワーを照射してしまうとレーザの熱によるマスクの変形が発生してしまう虞れがある。これを回避する仕組みとして、図5、図6に示すように裏面ミラーが任意の角度に可動できる裏面ミラー角度調節手段42を設けている。
【0054】
この裏面ミラー角度調節手段によって、図8から図10に示すように裏面ミラー41による裏面への照射箇所が表面の照射箇所と同一にならないように任意にずらすことにより同時に同じポイントを照射することを防止することができる。ここで、裏面ミラー41の角度を水平よりも上側に向けることで、裏面は表面よりも遅れて照射され、下側に向けることで表面よりも先に照射されることになる。この順序はどちらでも良く、大切なのは表面裏面の洗浄位置をずらすことである。
【0055】
本実施形態によれば、表裏における照射位置をずらすことで、マスクにダメージを与えることなく、表裏面を洗浄(剥離)することができる。
勿論、レーザ光の照射エネルギーを低くして表裏面を同時に照射することで表裏面同時に洗浄(剥離)するのに必要なエネルギーが得られること且つ、表裏面同時箇所照射にてダメージレスなエネルギーにコントロールすることが可能ならば同一箇所に照射してもよい。
【0056】
図11は本発明の第2の実施形態であるマスク洗浄装置60の構成を模式的に示した図である。図4に示す第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では裏面へ照射するレーザ光をマスクの開口部8hを透過して照射した。本実施形態では、マスクの上側又は下側あるいは左右側の各側部外側からマスク裏面への照射するレーザ光を照射する。図11はそのうちマスク上側側部から前記レーザ光を得る実施例を示した図である。
【0057】
レーザ光走査手段30はレーザユニット31、レーザ光33を分配するビームスプリッタ35、ビームスプリッタで分配したレーザ光のうちマスク表面への照射光33fを透過窓34を介してマスク表面上を走査するガルバノミラー32、ビームスプリッタで分配したレーザ光のうちマスク裏面への照射光33bを反射させる反射ミラー36、反射ミラーからの照射光33bを透過窓34を介して受け洗浄チャンバ5の天井に設けられた裏面走査用のガルバノミラー37(側部反射ミラー)を有する。裏面走査用のガルバノミラーは、第1の実施形態と同様な機能を有する裏面ミラー垂直方向移動手段43や裏面ミラー前後移動手段44に走査される裏面ミラー41に追随してマスク裏面への照射光33bを裏面ミラーに照射する。
【0058】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、マスク表面を洗浄(剥離)しながら、マスク裏面も洗浄(剥離)することができる。
また、第1の実施形態で説明した種々の施策を第2の実施形態に適用することによって第1の実施形態で得られた効果を奏することができる。
【0059】
上記第1及び第2の実施形態では、図4及び図11に示す左右(X)方向に走査させる手段を設ける必要がないように細長い形状を有する裏面ミラーを用いたが、裏面ミラーも左右(X)方向に走査させてもよい。
また、第2の実施形態では、天井に設けた裏面走査用のガルバノミラー37を単なる反射ミラーとし、裏面ミラーの位置に裏面走査用のガルバノミラーを設けてもよい。この場合は、第1、第2の実施形態で説明した裏面ミラー垂直方向移動手段43や裏面ミラー前後移動手段44が不要となる。
【0060】
さらに、第1、第2の実施形態では、洗浄チャンバ5を真空チャンバとしたが、真空隔離手段としてゲート弁の代わりにロードロック室を設ける。これにより洗浄チャンバは真空蒸着チャンバと完全に分離でき、洗浄チャンバを大気雰囲気とすることも可能である。
【0061】
また、第1、第2の実施形態では、レーザユニットを1台としたが、スループット向上のために、表面側に複数台設け、それぞれのレーザ光を例えば開口部を透過させて、例えば共通に設けた裏面ミラーに照射し裏面側を洗浄してもよい。
【0062】
以上、説明した本発明の各実施形態によれば、レーザ洗浄の欠点である片面ずつの洗浄を、タクト及びコストを増加させることなく一度に表裏面洗浄を行なうことができ、スループットをウエット洗浄と同等の性能まで向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1:処理チャンバ 1bu:真空蒸着チャンバ
2:搬送チャンバ 3:レーザ室
4:マスク洗浄室 5:マスク洗浄チャンバ
6:基板 7:蒸着部
8:マスク 8M:マスク部
8F:マスクフレーム 8h:マスク開口部
9:処理受渡部 10、10B:ゲート弁
13:ロードクラスタ 14:受渡室
15:搬送ロボット 20:制御装置
30:レーザ光走査手段 31:レーザユニット
31a:レーザユニットの最終段の凸レンズ
32:ガルバノミラー 33:レーザ光
33b:マスク裏面への照射光 33f:マスク表面への照射光
34:透過窓 35:ビームスプリッタ
36:反射ミラー 37:裏面走査用のガルバノミラー
40:マスク裏面走査手段 41:裏面ミラー41
42:裏面ミラー角度調節手段 43:裏面ミラー垂直方向移動手段
44:裏面ミラー前後移動手段 45:マスク洗浄台
50:制御部 60:マスク洗浄装置
71:蒸発源 100:有機ELデバイスの製造装置
A〜D:クラスタ df:デフォーカス領域
f:凸レンズによる焦点位置 F:付着蒸着材料
Fb:マスク裏面に付着した付着蒸発材料
Ff:マスク表面に付着した付着蒸発材料
L:裏面ミラーとマスク裏面との距離 LB:焦点位置と裏面ミラーとの距離
LF:焦点位置とマスクとの距離 Sf:マスク表面への照射面積
Sb:マスク裏面への照射面積。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射し該マスクを洗浄するマスク洗浄装置において、
前記マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄するマスク表面洗浄手段と、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面を洗浄するマスク裏面洗浄手段とを有することを特徴とするマスク洗浄装置。
【請求項2】
前記マスク裏面洗浄手段は前記裏面側に設けられ前記レーザ光を反射し前記裏面に照射する裏面ミラーを有することを特徴とする請求項1に記載のマスク洗浄装置。
【請求項3】
前記マスクの裏面への照射は被処理対象にパターンを形成する前記マスクの開口部を透過し前記裏面ミラーを経由して行なうことを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項4】
前記裏面ミラーはマスクの1辺方向に細長く、前記裏面ミラーを前記一辺方向と垂直方向に前記マスクに沿って相対的に移動させる裏面ミラー垂直方向移動手段を有することを特徴とする請求項3に記載のマスク洗浄装置。
【請求項5】
前記マスク裏面洗浄手段は前記裏面ミラーと前記マスクとの距離を相対的に移動させる裏面ミラー前後移動手段を有することを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項6】
前記マスク裏面洗浄手段は前記裏面ミラーの裏面への照射位置を調節する裏面ミラー角度調節手段を有することを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項7】
前記レーザ光のデフォーカス領域で前記表面及び前記裏面を洗浄することを特徴とする請求項1に記載のマスク洗浄装置。
【請求項8】
前記マスクの裏面への照射は前記マスクの側部外側に設けられた側部反射ミラーを経由して行ない、前記マスク裏面洗浄手段は前記レーザ光を該側部反射ミラーに向けて分配するビームスプリッタを有することを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項9】
前記裏面ミラー、前記側部反射ミラーのうち一方はガルバノミラーであることを特徴とする請求項8に記載のマスク洗浄装置。
【請求項10】
マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射し該マスクを洗浄するマスク洗浄方法において、
前記マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄するマスク表面洗浄ステップと、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面を洗浄するマスク裏面洗浄ステップを有することを特徴とするマスク洗浄方法。
【請求項11】
前記マスク裏面洗浄ステップは前記裏面側に設けられ前記レーザ光を前記裏面に反射し照射する裏面ミラーを経由して行なうことを特徴とする請求項10に記載のマスク洗浄方法。
【請求項12】
前記マスクの裏面への照射は被処理対象にパターンを形成する前記マスクの開口部を透過し前記裏面ミラーを経由して行なうことを特徴とする請求項10に記載のマスク洗浄方法。
【請求項13】
前記マスク裏面洗浄ステップは前記裏面の洗浄位置を前記表面の洗浄位置と異なるように前記レーザ光を制御することを特徴とする請求項10に記載のマスク洗浄方法。
【請求項14】
蒸着材料をマスクを介して被処理対象に蒸着し成膜する真空蒸着チャンバと、請求項1乃至9のいずれかに記載のマスク洗浄装置と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置との接続部に設けられた真空隔離手段と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置間を前記真空隔離手段を介して前記マスクを搬送する搬送手段とを有することを特徴とする有機EL製造装置。
【請求項1】
マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射し該マスクを洗浄するマスク洗浄装置において、
前記マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄するマスク表面洗浄手段と、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面を洗浄するマスク裏面洗浄手段とを有することを特徴とするマスク洗浄装置。
【請求項2】
前記マスク裏面洗浄手段は前記裏面側に設けられ前記レーザ光を反射し前記裏面に照射する裏面ミラーを有することを特徴とする請求項1に記載のマスク洗浄装置。
【請求項3】
前記マスクの裏面への照射は被処理対象にパターンを形成する前記マスクの開口部を透過し前記裏面ミラーを経由して行なうことを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項4】
前記裏面ミラーはマスクの1辺方向に細長く、前記裏面ミラーを前記一辺方向と垂直方向に前記マスクに沿って相対的に移動させる裏面ミラー垂直方向移動手段を有することを特徴とする請求項3に記載のマスク洗浄装置。
【請求項5】
前記マスク裏面洗浄手段は前記裏面ミラーと前記マスクとの距離を相対的に移動させる裏面ミラー前後移動手段を有することを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項6】
前記マスク裏面洗浄手段は前記裏面ミラーの裏面への照射位置を調節する裏面ミラー角度調節手段を有することを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項7】
前記レーザ光のデフォーカス領域で前記表面及び前記裏面を洗浄することを特徴とする請求項1に記載のマスク洗浄装置。
【請求項8】
前記マスクの裏面への照射は前記マスクの側部外側に設けられた側部反射ミラーを経由して行ない、前記マスク裏面洗浄手段は前記レーザ光を該側部反射ミラーに向けて分配するビームスプリッタを有することを特徴とする請求項2に記載のマスク洗浄装置。
【請求項9】
前記裏面ミラー、前記側部反射ミラーのうち一方はガルバノミラーであることを特徴とする請求項8に記載のマスク洗浄装置。
【請求項10】
マスクに付着した蒸着材料にレーザ光を照射し該マスクを洗浄するマスク洗浄方法において、
前記マスクの蒸着面である表面に該レーザ光を照射し該表面を洗浄するマスク表面洗浄ステップと、前記レーザ光を前記マスクの裏面へ照射し該裏面を洗浄するマスク裏面洗浄ステップを有することを特徴とするマスク洗浄方法。
【請求項11】
前記マスク裏面洗浄ステップは前記裏面側に設けられ前記レーザ光を前記裏面に反射し照射する裏面ミラーを経由して行なうことを特徴とする請求項10に記載のマスク洗浄方法。
【請求項12】
前記マスクの裏面への照射は被処理対象にパターンを形成する前記マスクの開口部を透過し前記裏面ミラーを経由して行なうことを特徴とする請求項10に記載のマスク洗浄方法。
【請求項13】
前記マスク裏面洗浄ステップは前記裏面の洗浄位置を前記表面の洗浄位置と異なるように前記レーザ光を制御することを特徴とする請求項10に記載のマスク洗浄方法。
【請求項14】
蒸着材料をマスクを介して被処理対象に蒸着し成膜する真空蒸着チャンバと、請求項1乃至9のいずれかに記載のマスク洗浄装置と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置との接続部に設けられた真空隔離手段と、前記真空蒸着チャンバと前記マスク洗浄装置間を前記真空隔離手段を介して前記マスクを搬送する搬送手段とを有することを特徴とする有機EL製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−195872(P2011−195872A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62685(P2010−62685)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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