説明

マスク露光により三次元物体を作製する装置及び方法

【課題】三次元物体を作製するための装置及び方法を改良すること。
【解決手段】
所定数の独立した画素(ピクセル)を有するラスターイメージングユニットを用いてエネルギーを入力することにより、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させて、三次元物体を作製する装置及び方法に関する。三次元物体の個々の断面領域に関するエネルギーの入力は、複数の連続したラスターマスク(ビットマップ;例えば、ビットマップ1及びビットマップ2、並びに、もしあれば他のビットマップ)を用いた露光により制御される。イメージング装置は、断面領域をカバーする第1の全体マスク(ビットマップ1)と該全体マスク内部の部分マスク(ビットマップ2)を含む少なくとも2つのマスクを形成することができるように、適切に制御可能である。ボクセルマトリクスが形成されてもよい。ボクセル毎の硬化深度は、硬化性材料中において具体的に且つ正確に調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに独立した所定数の画素(ピクセル)を備えたイメージングユニットを通してエネルギーを入力することにより、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させて、三次元物体を作製する装置及び方法に関する。特に、本発明は、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)技術とピクセルサイズにより定まるラスターマスクの最小の物理的解像度をイメージングユニットに適用しつつ、当該ラスターマスクを利用して露光することにより硬化させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、光硬化性の感光性樹脂で三次元物体を構成(construction)する方法が極めて多岐にわたって開示されている。
【0003】
実現可能なものとしては、特に、以下のものを利用した露光が知られている。
a)マルチメディアプロジェクタ
b)液晶ディスプレイ(反射型、透過型)
c)LED(Light−Emitting Diode)ライン又はレーザダイオードライン(これらはライン方向と直交する方向に移動させられる。)
d)ライトバルブ技術(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)
【0004】
これらの手法は、特許文献1〜特許文献10に記載されている。特に、特許文献4には、マイクロテクニカルな三次元部品の作製への応用が記載されている。なお、特許文献5と特許文献6は互いに等しいものである。また、特許文献7は、特許文献8と等価なものである。
【0005】
【非特許文献1】マーシャル・バーンズ(Marshall Burns)著、“Automated Fabrication − Improving Productivity in Manufacturing”、1993年発行(ISBN 0−13−119462−3)
【特許文献1】米国特許第5247180号明細書
【特許文献2】米国特許第5980813号明細書
【特許文献3】独国実用新案出願公開第G 93 19 405.6号明細書
【特許文献4】独国実用新案出願公開第299 11 122号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1250997号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/155189号明細書
【特許文献7】独国特許発明第69909136号明細書
【特許文献8】欧州特許第1156922号明細書
【特許文献9】国際公開第01/00390号パンフレット
【特許文献10】国際公開第05/110722号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザを使って光重合させるシステムでは、レーザビームのエネルギーを設定することによって露光点における光の出力レベルを調整し、それにより、感光性樹脂の当該露光点における硬化深度(硬化した材料の深さ方向における厚み)を制御することができる。対象となるレイヤーを選択的に硬化するためには、硬化させたい断面部のみに対してレーザビームを走査する。硬化させたい断面部の輪郭は、レーザビームにより曲線状に走査することができる。
【0007】
SLM技術を備えた投影システムを利用してマスクを投影し、それによって光重合させるシステムには、断面領域全体を一度に露光することができるという利点がある。投影されたラスター像のうち、明るい領域では、ボクセル単位で、感光性樹脂が硬化する。
【0008】
SLM技術を備えた投影システムには、
a)使用する光源;
b)SLMに光エネルギーを結合するための光学系;及び、
c)投影光学系の“けられ”;
に依存して、像表面に亘る光の出力レベルの分布が極めて不均一になる(絶対値で50%まで)となる欠点がある。
【0009】
使用期間中における光源の特性変化は種々のエラーをもたらし、従って、均一な分布にも変化が生じることとなる。更に、光源における光強度の変化は、レーザを用いた場合のような選択的な変化には影響を与えないが、投影された像全体には影響を与える。光エネルギーをSLMに結合させる光学系及び投影光学系によって斑(ムラ)が生じた場合には、一定のエラー(誤差)が懸念される。
【0010】
硬化させたい断面領域の輪郭はラスター内でのみ理解しうる。解像度は、像点/ピクセルの数と投影された像の大きさによって決まる。
【0011】
更に、光強度は、露光された面構造の大きさに依存して変化する(広く連続した面の場合、光強度は高く;狭く繊細な面構造の場合、光強度は低い)。
【0012】
特許文献9では、マスクの透過率を制御することによりビームの強度を制御している。ここで、ビームの強度は、透過型LCD(Liquid Crystal Display)のグレーレベルを選択することにより制御してもよい。
【0013】
特許文献10では、作製する物体の断面領域の輪郭の外側及び輪郭の内側に沿って解像度を上げるためにレイヤー毎にサブピクセルレベルでの多重露光を行う。この露光は、像形成面/造形面内においてサブピクセルレベルで相殺される(オフセットされる)一連の複数の画像から構成される。なお、相殺された像(オフセットイメージ)のそれぞれに対しては、別個のマスク/ビットマップが生成される。
【0014】
特許文献9及び特許文献10のいずれも、像面における微調整及び解像度をどのようにすれば改善できるかについて開示しておらず、また、光源が素の状態(何らの補償もしない状態)において有している不均一性(ムラ)をどのようにして均すかについても開示していない。
【0015】
本発明は、互いに独立した所定数の画素(ピクセル)を備えたイメージングユニットを通してエネルギーを入力することにより、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させて、三次元物体を作製する装置及び方法を改良し、システムの高精度、高解像度及び微調整及び/又は高均一性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、三次元物体を作製するための装置において:電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させることのできるエネルギーを入力するための画素(ピクセル)であって、互いに独立した所定数のピクセルを備えたイメージングユニット;及びコンピュータ装置、IC及び/又はソフトウェアインプリメンテーション;を備えており、前記コンピュータ装置、前記IC及び/又は前記ソフトウェアインプリメンテーションは、複数の連続したラスターマスク(ビットマップ)を用いた露光を利用して、作製したい三次元物体の断面領域に対するエネルギーの入力レベルを制御する機能を有する、装置が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、三次元物体を作製するための装置であって、点状、線状又はマトリクス状に配置された所定数の独立した画素(ピクセル)を有するラスターイメージングユニットを備えており、前記イメージングユニットは、前記三次元物体のそれぞれの断面領域に関する像を前記ピクセルにて構成し、ラスターマスク(ビットマップ)を形成するものであり、前記イメージングユニットは、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させるためのエネルギーの入力を供給するように、構成されており、前記イメージング装置は、前記断面領域をカバーする第1の全体マスク(ビットマップ1)と該全体マスク内部の部分マスク(ビットマップ2)を含む少なくとも2つのマスクを形成することができるように制御されるように構成されている、装置が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、三次元物体を作製するための方法であって、所定数の独立した画素(ピクセル)を有するイメージングユニットを用意するステップと;該イメージングユニットを通してエネルギーを入力することにより、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させてボリューム・ピクセル(ボクセル)のマトリクスを形成するステップ;を備え、硬化対象である前記材料中のボリューム・ピクセルを硬化させるためのエネルギーの入力レベルであって作製したい前記三次元物体の断面領域に対するエネルギーの入力レベルを連続した多数のラスタービットマップにより制御して、前記硬化性材料中のボクセル(ボリューム・ピクセル)毎の硬化深度を調整する、方法が提供される。
【0019】
更に、本発明によれば、三次元物体を作製するための方法であって、所定数の独立した画素(ピクセル)を有するイメージングユニットを用意するステップと;該イメージングユニットを通してエネルギーを入力することにより、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させるステップ;を備え、前記イメージングユニットは、前記三次元物体の個々の断面領域に関する像を前記ピクセルにて構成し、ラスターマスク(ビットマップ)を形成するものであり、前記三次元物体の断面領域毎に、前記断面領域をカバーする第1の全体マスク(ビットマップ1)と該全体マスク内部の部分マスク(ビットマップ2)を含む少なくとも2つのマスクが使用される、方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明について、添付した図面を参照し、更なる典型的な実施の形態に基づいて、より詳細に説明する。しかしながら、本発明は、後述する実施の形態及び実施例並びに図面に限定されるものではなく、むしろ、本発明の範囲内において種々の改変、改良を加えることができるものである。
【0021】
本発明の装置及び方法によれば、像レベルにおける不均一性を除去することができ、より高精度、高解像度、及び、微調整を達成することができる。
【0022】
本発明によれば、一方では、ピクセルレベルでの光出力の制御により、硬化対象となる材料中のボクセルの硬化深度を制御することができ、他方では、1又は複数の連続したデジタルマスク(ビットマップ)を通して造形面/露光サイクル毎に選択的に露光することにより、光源を含めたイメージング装置の特性・性能を変更することなく、硬化させたい断面領域の選択された部位を断面領域毎に明確に過露光(強露光)とすることができる。ここで、好ましくは、マスク内の黒/白ラスター(又は、明/暗、及び/若しくは、カラーラスター)がマスク毎に異なっていてもよいし、及び/又は、マスク毎の露光時間が異なっていてもよい。
【0023】
ラスターマスクを使用した露光によって、硬化対象である材料内において所謂ボクセル(ボリューム・ピクセル)のマトリクスが硬化させられる。ここで、XYラスターは、ピクセルの大きさ、数及び配置によって予め定められており、材料内におけるボクセルの高さ(硬化深度)は多重露光によって制御することができる。更に、好ましい実施の形態では、光の強度及び/又はスペクトルは、特に、グレー値及び/又はカラー値によって(後者の場合は電磁放射の波長帯域又は波長を通じて)ピクセル毎に制御することができる。
【0024】
本発明によれば、必要に応じて、生成したい構造の特定の部位、即ち、硬化させたい断面領域内部のみにある部位が識別され選択されうる。本発明によれば、三次元物体の輪郭によって規定された個々の断面領域に関連して、エネルギーの入力は非常に効率よく調整される。最も適切には、第1のビットマップで規定される断面領域において、第2のビットマップ又は更なるビットマップが生成される。第1及び第2のビットマップは(もしあるのであれば、付加的なビットマップも)、多重露光によって重ね合わされる。第2のビットマップともしあるならば付加的なビットマップは、それぞれ、第1のビットマップにて形成される全体マスクに含まれる部分マスクを形成する。本発明によれば、「部分マスク」及び「全体マスクに含まれる」という表現は、典型的には、全体マスクと比較して断面積が同じか小さいことに関連して、1又は複数の比較的小さな領域が露光されることを意味する。第2のビットマップともしあるならば付加的なビットマップは、同一である必要はなく、第1のビットマップの全体マスク内で必要に応じて異ならせることができる。従って、全体マスクに加えて形成される部分マスク同士を、同一又は異なるものとすることができるし、また、異なるサブ部分マスクを形成することもできる。
【0025】
本発明によれば、ボクセルマトリックスは、形成面の予め規定された所定の全体像領域内部に、多重露光によって生成することができる。断面領域毎の形成レベルにおける像のオフセッティングは不要である。ボックスマトリックス形成によれば、例えば、支持構造、張出部及び/又はとりわけ小さい/繊細な部位を極めてより繊細かつより正確に形成することができる。
【0026】
全体マスクと部分マスクの使用順序は、ランダムに選択することができる。即ち、“ビットマップ”を修飾する文言“第1”、“第2”及び“付加的な”は、いかなるタイムシーケンスを特定するものでもなく、多重マスク露光における異なるビットマップであることを単に示すにすぎない。しかしながら、全体マスクを有する第1のビットマップは最初に使用されることが最も適切である。各ビットマップは、対応するソフトウェアアルゴリズムによって形成することができる。加えて、電気機械シャッターを用いて、全体マスクの露光時間及び部分マスク毎の露光時間を互いに独立に制御することができる。
【0027】
本発明の多重マスク露光を用いれば、各ボクセルの硬化深度をピクセル単位で制御することができ、したがって、全体、作製されたコンポーネントの表面に関する品質、圧粉体硬度、各細部における正確さ、及び、許容度の改善を図り、また、支持構造に必要な条件を最適化することができる。
【0028】
本発明の多重マスク露光によれば、硬化させたいボクセルマトリクスの選択された領域を過露光とすることができる。なお、グレー値による調整は、原理的に少なくとも部分的に光のエネルギーを制限するものであることから、ビットマップ中における単なるグレー値のスケーリングによるのみでは、上記のように過露光とすることは不可能であり、また基本的に望ましくない。しかし、更なる微調整のためには、第1、第2及び/又は更なるビットマップにおいてグレー値及び/又はカラー値を調整すると特に効果的である。
【0029】
これにより、グレー値及び/又はカラー値の調整を行うことなく同じ微調整を行うために必要とされるであろう全体マスク内のビットマップの数を同時に制限しながら、更なる微調整を行うことができる。グレー値及び/又はカラー値の調整は、ビットマップ又は部分的なビットマップ毎に個々のピクセル或いは一部のピクセルで、個々のピクセルに対して別個に行うことができる。
【0030】
例えば、張出部の硬化、繊細な構造及び材料の堆積部の過露光、造形面における材料の収縮の抑制などに関して、断面領域毎の露光サイクルにおける部分的な露光用のマスクの上手な選択及び使用順序の決定が、実現されうる。
【0031】
更なる露光マスクの形成は、技術的にはソフトウェアによって全体として実現されることが好ましい。かかるマスク形成は非常にフレキシブルであり且つSML技術ベースのマスク投影システムのすべてに適用可能である。
【0032】
本発明のある実施の形態によれば、ピクセルレベルでのビットマップにおける付加的なグレー値及び/又はカラーチャネルをコーディングすることにより、硬化性材料におけるボクセルの硬化深度を調整するような付加的なパラメータを格納し且つ適用することができる。これには、以下のものを調整するものが含まれる。
a)明度で表された光の強度(白=255から黒=0までのグレー値)及び、
b)カラー情報に基づいたスペクトル(開始材及び吸収の性質)
【0033】
個々のピクセルに対するグレー値及び/又はカラーチャネルのコーディングにより、ビットマップ内における露光パラメータを精度良く補正することができる。
【0034】
シャッターにより制御可能なビットマップ毎の個々の露光時間により、付加的な制御パラメータが提供される。イメージング装置によってデジタルイメージが完全に形成されたときに限り、シャッターが開かれ、続いて、再び閉じられる。
【0035】
装置及び方法に関する本発明の原理は、様々なタイプ又は手法による三次元物体の作製に適用することができる。レイヤー単位(レイヤーワイズ)で造形又は構成してもよいが、代替的に、レイヤーとは別の手段で造形又は構成してもよい。他の設計オプションも採用可能である。例えば、硬化プロセスは、レイヤー単位ではなく連続的に実行しても良いし、(同一の或いは異なる層厚又は種々の層厚で)不連続に行ってもよいし、部分的に連続的に実行する一方で他の部分では(同一の又は異なる層厚、種々の層厚で)不連続に行ってもよいし、考えられ得る様々な手法の組み合わせにて行ってもよい。本発明による装置及び方法は、レイヤーとは無関係にボクセルマトリックス内に三次元物体を作製するのに特に適している。
【0036】
更に、断面領域毎に複数のビットマップを用いること、即ち、第1及び第2又は更なるラスターマスクを適用することは、作製したい三次元構造の1以上の断面領域形成に使用することができる。
【0037】
適用例
(支持構造の過露光)
図1(A)に模式的に示されているように、概略、支持構造20を最小化すること、特に、作製されたコンポーネント10との接点21を最小化することが重要な目的である。この目的は、造形プロセスにおいて、支持構造20に対して、より高い重合度に起因したより高い本質的な強度を付与することにより、達成することができる。更に、より高い重合度は、本発明による概念を適用した過露光によって得ることができる。
【0038】
データ構造に基づいて、コンポーネント全体(斜視図として、図1(A)において上側断面表面により模式的に示される)に含まれる個々の断面領域について、支持構造のデータをコンポーネントのデータと区別することが可能であり、従って、支持構造20のビットマップ領域に対してのみ及び/又は接点21に対して選択的に、(断面領域の全体をカバーする)全体ビットマップ1内部において付加的な部分ビットマップ2を形成することも可能である。ビットマップ2は、第1のマスク露光に関連して規定された(即ち、同一の又は異なる)露光時間でもって、第1のビットマップ1と直列に結合され、且つ、その上に重ねられて、支持構造(図1(B)及び図1(C))の領域のみにおける過露光又はポスト露光を実現する。
【0039】
(繊細な断面構造と大きな面構造とにおける硬度深度)
比較的大きな構造面積を有する場合、繊細な構造の場合と比較して、単位面積あたりの利用可能な光の出力レベルをより多くすることができる。この現象により、xy方向における拡張度合い(輪郭を超えてしまうこと)及びz方向における拡張度合い(深さ)において、断面領域毎に、硬化が異なることとなる。
【0040】
例えば10mm×10mmの広い面が一度に露光されるとき、例えば130μmの厚さまで硬化される。これに対して、2mm×10mmの構造では同じ露光時間で100μmしか硬化されない。コンポーネントが例えば100μm厚のレイヤー内に作製される場合、繊細な部位に関し、生成されたレイヤーは過露光(深さ130μmで既に形成されたレイヤー中に30%まで硬化させる)によっても十分に化学結合せず、硬化させられた材料がこの部位で分離して、コンポーネントに欠陥が生じる。この現象は特に繊細な支持構造物において問題となる。
【0041】
図2(A)は、広い断面領域31及び繊細な断面領域32、33を有する例を模式的に示す。生成したいコンポーネントの断面全体が、斜視図として、図2(A)において上側の断面領域によって模式的に示唆されている。適切なアルゴリズムに基づいて、様々な領域拡張度合いを有する構造31又は32及び33が断面の像内において識別され、繊細な構造を再露光するためのものとして、一又は複数の対応する部分ビットマップ2(全体ビットマップ1(断面全体をカバーするビットマップ)中に位置し且つ全体ビットマップ1と重なるもの)が生成され、それぞれ特有の露光時間を割り当てられる。
【0042】
加えて、比較的大きい断面領域31には、正確にピクセル毎に適切なグレー値を割り当てる一方、比較的小さな断面領域32、33には、正確にピクセル毎に低いレベルのグレー値及び/又はカラー値を割り当てるかグレー値及び/又はカラー値を割り当てないこととし、それによって露光したい構造領域の全体に亘って均一な硬化深度(Z)及び硬化広がり度合い(XY)を得る。即ち、比較的大きい構造領域は、その広がり度合いが増すほど暗くなる。
【0043】
(一つのコンポーネント内部における材料の高堆積、又は大規模な構造の過露光即ち高圧粉体硬度)
コンポーネントによっては、壁の厚さがポスト硬化プロセスにおける最大可能硬化深度を超えているほど材料が堆積されてなるボリューム部や、コンポーネント内部における位置であってポスト硬化プロセスにおいて光エネルギーが到達しない或いは限られた範囲にしか到達しない位置に材料が堆積されてなるボリューム部を備えているものある。
【0044】
かかるボリューム部は、既に生成プロセス中で具体的には過露光されることによって高圧粉体硬度を達成することができる。これは、断面領域の多重露光によって行われる。これに代えて又は付加的に、後に露光される断面領域へそれぞれ適切なグレー値又はカラー値を割り当てることによって過露光を行ってもよい。ここで、後者のケースにおいては、Z方向における硬化深度は、通常の硬化深度を何倍か超えるべきである。
【0045】
更に、選択された領域へのポスト露光又は過露光に使用される部分ビットマップに関する露光時間は、所望とする硬化深度に応じて、逐次増加させることができる。
【0046】
(収縮を減少させる露光手法)
ここで、図3(A)及び図3(B)に模式的に描かれている基本的なアイデアは、硬化させたい所定の断面領域(暗く塗りつぶされた断面領域全体の一部である領域60により示されている部分)が一度に全て露光及び硬化されるのではなく、部分的なステップ(図3(A)及び図3(B))においてビットマップ1パターン及びビットマップ2パターンを含む補助的且つ連続的なビットマップパターンにより露光及び硬化されることである。図3(A)に示されるように、ビットマップパターン1は、特に、照射領域において、対応する複数のグリッドストランドからなる適切な厚みを有するグリッド構造61を適切に備えており、一方、図3(B)によれば、ビットマップパターン2は、照射領域のギャップ62を満たしている。即ち、照射されたグリッド構造61’及びギャップ62’を備えるビットマップ2は、ビットマップ1を反転したパターンを有している。このように、補助的なビットマップパターン2によって後で硬化させるために、第1のビットマップパターン1による第1の部分的な硬化の後、材料の収縮で形成された“隙間”の中においてリフローさせることができる。個々のビットマップパターンはここに示されているものに限られない。更に、ビットマップパターンの照射領域は重なっていてもよい。
【0047】
(張出部のための露光方法)
図4は、張出部の安定化に関する好ましい実施例を模式的に示す。
【0048】
張出部41において、ある部分的な構造40の張出部の領域において、より安定した硬化を得ることができるようにするために、例えば、まず、最初の3つの造形面に関する露光サイクルでは、張り出し領域への露光を行わないこととし、それにより、メインコンポーネント領域42のみにおいて材料の硬化が行われるようにする。その後になって初めて、第4の露光サイクルにて多重エネルギーで張出部41を露光する。本発明によれば、第4の露光サイクルにおいて、まず、全露光領域(即ち、メインコンポーネント領域42及びその左右への張出部41)を露光するビットマップ1を用いて所定の露光時間tだけ露光し;その後、左右の張出部41のみをカバーする部分ビットマップ2を用いて、例えばビットマップ1の露光時間tの4倍から5倍の露光時間tだけ再露光する(図4参照)。参照符号45は搬送板を示す。
【0049】
(多重マスク露光とグレー値及び/又はカラー値の調整の組み合わせによる複合的なボクセルマトリックスの形成)
複合的なボクセルマトリクスの形成による好ましい他の実施例が図5(A)〜図5(C)に示されている。これは、3×3ピクセルの小さな部分的な領域においてのみ模式的に説明されているが、他の領域、特に更に多くのピクセルからなる大きな領域にも同じ原理を適用可能なことは明らかである。3つの異なる硬化深度を有する図5(A)に示されるボクセルマトリクスを得るためには、X方向及びY方向によって規定される断面領域に関して、第1のビットマップ1を用いて生成されたマスクを使用して最初の露光を行う。ここで、最も浅い硬化深度に対応する2つのピクセル(図の正面左に符合51で示されている)には付加的なグレー値が割り当てられ、他のピクセル(図中では符号52で示されている)には白(グレー値は割り当てない)が設定される。次いで、X方向及びY方向によって規定される同一断面領域に関して、第2のビットマップ2を用いて生成された部分マスクを利用して第2の露光が行われる。ここで、最も深い硬化深度に対応する2つのピクセル(図の後部右に参照符号53で示されている)に白(グレー値は割り当てない)が割り当てられる一方、他のピクセル(図中では参照符号54で示されている)は完全に暗くされる(黒)。
【0050】
結果として、断面領域に対して2つの露光ステップのみで複合的なボクセルマトリックスが得られる。
【0051】
上述したすべての適用例に関し、ピクセル単位のカラーチャネルのコーディングにより部分ビットマップにおける微調整が可能である。即ち、ビットマップマスク/露光マスクは、ピクセル毎に、付加的な黒/白、グレー値及び/又はカラー情報を有することができ、それらによって、ビットマップ内部における露光強度はピクセル毎に正確に制御される。更に、全ての適用例において、ビットマップ毎の露光時間は互いに別個独立して調整されてもよく、それによって、ボクセルマトリックスにおける選択的な硬化深度用として付加的なパラメータを提供してもよい。
【0052】
本発明による多重露光についての全体マスクのそれぞれ及び部分マスクのそれぞれの露光パターンの順番及びデザインに関しては、なんらの制限もない。注意すべき点は、部分的な各露光によって、材料の硬化を開始するために必要なエネルギー又は材料を完全に硬化させるために必要なエネルギーが少なくとも到達するようにすることである。
【0053】
以上説明した実施例は、互いに適宜結合することができる。更に、これらは単に例示であって、決して限定するものと解釈してはならない。むしろ、これらは他の実施例で本発明による原理を実現するために容易に改変することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1(A)〜(C)は、特定の断面領域に関して複数のビットマップを用いる本発明の原理の例を模式的に示す。このうち、図1(A)は、作製したい支持構造を例示したものである。図1(B)及び図1(C)は、それぞれ、支持構造を作製するために使用されるビットマップ1及びビットマップ2を示す。
【図2】図2(A)〜(C)は、特定の断面領域に関して複数のビットマップを用いる本発明の原理の例を模式的に示す。図2(A)は、作製したい構造であって比較的広い断面領域を有するものを例示したものである。図2(B)及び図2(C)は、それぞれ、断面領域毎に用いられるビットマップ1及びビットマップ2を示す。
【図3】図3(A)〜(B)は、本発明の他の実施の形態に係る基本概念を模式的に示す。ここで、特定且つ所定の断面構造は、一部のステップにおいて、ビットマップパターン1(図3(A))とビットマップパターン2(図3(B))を含む一連のビットマップパターンを用いて照射される。
【図4】図4は、張出部の安定化関する典型的な実施の形態を模式的に示す。
【図5】図5(A)〜(C)は、ボクセルマトリクスのZ方向における硬化深度を異ならせるために、XY断面領域毎にビットマップ1(図5(B))とビットマップ2(図5(C))を含む複数のビットマップを用いて複合的なボクセルマトリックス(図5(A))を作製する典型的な実施の形態を示す。
【符号の説明】
【0055】
10 構成部品
20 支持構造
21 接点
31 広い断面領域
32,33 繊細な断面領域
60 領域
61 グリッド構造
61’グリッド構造
62 ギャップ
62’ギャップ
40 部分的な構造
41 張出部
42 メインコンポーネント領域
45 搬送板
51 ピクセル
52 ピクセル
53 ピクセル
54 ピクセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体を作製するための装置において:
電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させることのできるエネルギーを入力するための画素(ピクセル)であって、互いに独立した所定数のピクセルを備えたイメージングユニット;及びコンピュータ装置、IC及び/又はソフトウェアインプリメンテーション;を備えており、
前記コンピュータ装置、前記IC及び/又は前記ソフトウェアインプリメンテーションは、複数の連続したラスターマスク(ビットマップ)を用いた露光を利用して、作製したい三次元物体の断面領域に対するエネルギーの入力レベルを制御する機能を有する、
装置。
【請求項2】
前記エネルギーの入力レベルを制御することにより、ボリューム・ピクセル(ボクセル)のマトリクスを形成する、及び/又は、
エネルギーの強度及び/又は選択された光の波長を供給することにより、前記硬化性材料におけるボクセル(ボリューム・ピクセル)毎の硬化深度を変えることができる、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
更に、前記ラスターマスクの少なくとも1つは、グレー値及び/又はカラー値に関して、像点(ピクセル)毎に制御されるように、設けられている
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記ピクセルの少なくとも一部は、エネルギーの入力を可変とするために、3種以上のエネルギーレベルを割り当てられることができ、
前記3種以上のエネルギーレベルは、
a)オン及びオフ状態(黒/白);及び
b1)所定数のグレーレベル、又は
b2)所定数のカラー値;
を備える、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記イメージングユニットは、投影ユニットに含まれている、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記イメージングユニットは、空間光変調器(SLM)タイプのものである、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記イメージングユニットは、MEMS技術のライトバルブを備える発光点、発光ライン又は発光マトリクスを備える、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記イメージングユニットは、LEDを備える発光点、発光ライン又は発光マトリクスを備える、請求項1記載の装置。
【請求項9】
硬化させたい材料とエネルギー源との間に、ラスターマスク毎の露光時間を制御するためのシャッターが更に設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項10】
三次元物体を作製するための装置であって、
点状、線状又はマトリクス状に配置された所定数の独立した画素(ピクセル)を有するラスターイメージングユニットを備えており、
前記イメージングユニットは、前記三次元物体のそれぞれの断面領域に関する像を前記ピクセルにて構成し、ラスターマスク(ビットマップ)を形成するものであり、
前記イメージングユニットは、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させるためのエネルギーの入力を供給するように、構成されており、
前記イメージング装置は、前記断面領域をカバーする第1の全体マスク(ビットマップ1)と該全体マスク内部の部分マスク(ビットマップ2)を含む少なくとも2つのマスクを形成することができるように制御されるように構成されている、
装置。
【請求項11】
三次元物体を作製するための方法であって、
所定数の独立した画素(ピクセル)を有するイメージングユニットを用意するステップと;該イメージングユニットを通してエネルギーを入力することにより、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させてボリューム・ピクセル(ボクセル)のマトリクスを形成するステップ;を備え、
硬化対象である前記材料中のボリューム・ピクセルを硬化させるためのエネルギーの入力レベルであって作製したい前記三次元物体の断面領域に対するエネルギーの入力レベルを連続した多数のラスタービットマップにより制御して、前記硬化性材料中のボクセル(ボリューム・ピクセル)毎の硬化深度を調整する、
方法。
【請求項12】
投影ユニットを利用して、前記材料を硬化させるために像を造形面に投影する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
硬化させたいボクセルの前記マトリックスにおける何れの領域を露光すべきでないか、又は、更に露光すべきかは、断面領域毎に決定され、
当該決定に関する情報から、対応する複数の部分ビットマップが形成されて露光に用いられる、
請求項11記載の方法。
【請求項14】
断面領域毎に生成される断面像において、領域拡張度合いの異なる別個独立した領域が識別され、拡張度合いの小さい領域に対しては、当該小さい拡張度合いを有する構造に対応する一又は複数の付加的なビットマップが生成され且つその後の部分的な露光に用いられる、
請求項11記載の方法。
【請求項15】
コンポーネント内部における個々の構造が識別され、当該構造の断面領域に対して、断面領域毎の多重露光を目的として、付加的なビットマップが生成される、
請求項11記載の方法。
【請求項16】
断面領域毎に異なる情報を有する一又は複数のビットマップマスクを生成し、それをもって露光することにより、単一露光又は多重露光を通じて、選択された領域をより硬化させる方法であって、
それによって得られる前記ボクセルの(Z方向における)硬化深度は、多重露光された領域において、通常の硬化の厚みの数倍を超えている、
請求項11記載の方法。
【請求項17】
硬化対象である前記材料とエネルギー源との間に、マスク毎の露光時間を制御するためのシャッターを更に用いる、
請求項11記載の方法。
【請求項18】
像点(ピクセル)毎に、前記グレー値及び/又は前記カラー値に関する情報をラスターイメージ(ビットマップ)中に格納する、
請求項11記載の方法。
【請求項19】
像点(ピクセル)毎のグレー値及び/又はカラー値に関する情報は、各ラスターイメージ(ビットマップ)毎に、その都度、オンラインで算出される、
請求項11記載の方法。
【請求項20】
三次元物体を作製するための方法であって、
所定数の独立した画素(ピクセル)を有するイメージングユニットを用意するステップと;該イメージングユニットを通してエネルギーを入力することにより、電磁放射の作用で硬化性材料を硬化させるステップ;を備え、
前記イメージングユニットは、前記三次元物体の個々の断面領域に関する像を前記ピクセルにて構成し、ラスターマスク(ビットマップ)を形成するものであり、
前記三次元物体の断面領域毎に、前記断面領域をカバーする第1の全体マスク(ビットマップ1)と該全体マスク内部の部分マスク(ビットマップ2)を含む少なくとも2つのマスクが使用される、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−298990(P2007−298990A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117866(P2007−117866)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(507142041)エンビジョンテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Envisiontec GmbH
【Fターム(参考)】