説明

マルチスペクトル撮像装置、マルチスペクトル照明装置

異なる波長の光を発光するLED(23a〜23h)と、これらのLED(23a〜23h)からの光をリレーする複数の光学ロッド(25)と、これらの光学ロッド(25)からの光を白色拡散面(26a)およびアルミコート反射面(26b)により拡散反射して撮像光軸に対して略60度の角度をなすように照射する光拡散素子(26)と、この光拡散素子(26)からの光をさらに拡散する光学シート(27)と、を有するマルチスペクトル照明装置と、このマルチスペクトル照明装置により照明された被照射面からの反射光を結像し撮像する撮像光学系(21)およびCCD(13)と、を有し、CCD(13)の撮像出力を解析して被照射面の色成分を測定するマルチスペクトル撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色成分を測定するために異なる波長の光を照射するようになされたマルチスペクトル撮像装置、マルチスペクトル照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の表面などを観察したり撮像して解析したりするために、対象物の照明を行う照明装置は、従来より種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、特開平9−218356号公報には、鏡面に近い対象物の表面を観察するために、第1の導光手段で導光した照明光を、複数の反射面を有する第2の導光手段で撮影光軸に近接した位置から対象物に照射することにより、正反射光による明るい光で対象物を観察することができるようにする光学装置および照明ヘッドが記載されている。
【0004】
また、特開平9−270885号公報には、測色器等に組み込まれる照明光学系において、リング状光源を用いて、該リング状光源から発光した光を円錐状の第1のミラー面により反射し、さらに凹状の第2のミラー面により反射して、対象物に照射する技術が記載されている。
【0005】
このような照明用の光源としては、従来よりバルブランプが広く用いられているが、近年では分野に応じて発光ダイオード(LED)も徐々に用いられるようになってきている。このLEDは、バルブランプに比べて、低消費電力、長寿命等の利点を有し、さらに、狭波長帯域発光、高色再現性などの特性を有するものとなっている。
【0006】
こうしたLEDの利点や特性を生かして近年開発が進められている技術の一つとして、対象物の色を測定する技術が挙げられる。
【0007】
例えば特許3218601号の明細書には、3原色のLED光を順次発光させて、各色が中央部で重なるように照射面に対して直接照射し、該照射面から夫々反射してくる光をフォトダイオードなどで受光して、その反射光強度に基づいて測色値を求めるものとなっている。
【0008】
上述したようなLEDは、1つの素子からの発光量が小さく、測色に用いるための照明装置を構成しようとすると、複数のLEDを並べるなどして発光量を増やしてやる必要がある。ただし、複数のLEDを単に並べて照明するだけでは、対象物が不均一に照明される可能性があるために、何らかの工夫を施す必要がある。
【0009】
こうした点を考慮した技術として、例えば特開平10−134621号公報には、半導体ウェーハ等を検査するために照明する照明器具において、複数のLEDにより照明光を発光し、その照明光をファイバーバンドルを用いて伝達する際に、バンドルを構成するファイバーをランダムに配置することにより、均一な照明を行うようにする技術が記載されている。
【0010】
さらに、対象物の色を正確に測定するという観点からは、受光する反射光に正反射光が含まれないようにする必要がある。
【0011】
この点に対処するための技術として、例えば特開平11−305141号公報には、照明光を照射する導光手段と、照明される対象物と、の間に、正反射光を遮光するための環状の遮光部を設けた拡大撮像装置および光学装置が記載されている。
【0012】
上記特許3218601号の明細書に記載された測色装置は、3原色の光を照射面に直接照射するものであるために、照射面の光量にムラが発生するか否かはLEDの配光特性と照射距離とにより光学的に決定されることになる。光学的に均一な照射光量を得るためには、照射距離に関わらず高い指向性を有する光線を形成する必要があるが、LEDのみでこうした配光特性を達成するのは困難である。従って、3原色に各対応するLEDの出射光が重なる照射面積を狭い領域でしか得られないために、測定が可能となるのはこの狭い領域に限られることになる。さらに、該明細書に記載されたような構成では、照射面からの正反射光がフォトダイオードに入射される可能性があるために、必ずしも色を正確に測定することができない。
【0013】
また、上記特開平10−134621号公報に記載されたような照明器具は、上述したように、ファイバーバンドルを介して均一な照明を行うように工夫されているが、ほぼ垂直落写照明となっているために、照射面からの正反射光が顕微鏡を介してCCDカメラに入射されるのを防ぐことはできず、正確な色測定は不可能である。さらに、該公報の照明器具は、半導体ウェーハ等のパターンを検査するためのものであるために、測色を行うための特段の構成はなく、当然にして、波長の異なる複数の照明光を用いる構造を備えてはいない。
【0014】
さらに、上記特開平9−218356号公報、特開平9−270885号公報、特開平11−305141号公報に記載されたものは、光源としてLEDを想定したものではないために、複数のLEDを用いたときに生じ得る照明ムラを解消する工夫がなされてはいない。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、被照射面に光量ムラを生じさせることなく照明を行うことができるマルチスペクトル照明装置およびマルチスペクトル撮像装置を提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、第1の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、異なる波長の光を被照射面へ照射するマルチスペクトル照明装置と、このマルチスペクトル照明装置により照明された被照射面からの反射光を結像する撮像光学系と、を具備し、この撮像光学系を介して取得した反射光の成分を解析することにより該被照射面の色成分を測定するマルチスペクトル撮像装置であって、上記マルチスペクトル照明装置が、互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、上記光源からの光をリレーするための光学ロッドと、上記光学ロッドからの光を拡散しながら反射するための反射面を有しこの反射面により拡散された光を上記被照射面に照射する光拡散素子と、を有して構成されたものである。
【0017】
また、第2の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第1の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0018】
さらに、第3の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第1の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0019】
第4の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第1の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つはアルミコート処理を施された反射面である。
【0020】
第5の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第1の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つは白色塗装を施された反射面である。
【0021】
第6の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第1の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、上記光学ロッドからの光を伝達する光路に略垂直な断面の面積が該光路の途中において該光路の入射側および出射側におけるよりも小さくなるような絞り形状に形成されたものである。
【0022】
第7の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第1の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が上記撮像光学系の光軸に対して45度から75度の範囲内の角度をなすように構成されたものである。
【0023】
第8の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第7の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0024】
第9の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第7の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0025】
第10の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第7の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つはアルミコート処理を施された反射面である。
【0026】
第11の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第7の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つは白色塗装を施された反射面である。
【0027】
第12の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第7の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記光拡散素子が、上記光学ロッドからの光を伝達する光路に略垂直な断面の面積が該光路の途中において該光路の入射側および出射側におけるよりも小さくなるような絞り形状に形成されたものである。
【0028】
第13の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、異なる波長の光を被照射面へ照射するマルチスペクトル照明装置と、このマルチスペクトル照明装置により照明された被照射面からの反射光を結像する撮像光学系と、を具備し、この撮像光学系を介して取得した反射光の成分を解析することにより該被照射面の色成分を測定するマルチスペクトル撮像装置であって、上記マルチスペクトル照明装置が、互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、複数本の光学ファイバーを束ねることにより構成されており入光側において上記複数の光源に対応した入光バンドルとして複数に分割され出光側においてこれらの入光バンドルを構成する光学ファイバーがランダムに混合された状態で一体的に束ねられ出光バンドルとなっているファイバーユニットと、を有して構成されたものである。
【0029】
第14の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第13の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記ファイバーユニットが、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0030】
第15の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第13の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記ファイバーユニットが、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0031】
第16の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第13の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記入光バンドルに配分される光学ファイバーの本数が、対応する光源の発光効率に応じて設定されている。
【0032】
第17の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第13の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記ファイバーユニットが、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が上記撮像光学系の光軸に対して45度から75度の範囲内の角度をなすように構成されたものである。
【0033】
第18の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第17の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記ファイバーユニットが、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0034】
第19の発明によるマルチスペクトル撮像装置は、上記第17の発明によるマルチスペクトル撮像装置において、上記ファイバーユニットが、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0035】
第20の発明によるマルチスペクトル照明装置は、互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、上記光源からの光をリレーするための光学ロッドと、上記光学ロッドからの光を拡散しながら反射するための反射面を有しこの反射面により拡散された光を被照射面に照射する光拡散素子と、を具備したものである。
【0036】
第21の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第20の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記光拡散素子が、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0037】
第22の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第20の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記光拡散素子が、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0038】
第23の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第20の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記光拡散素子が、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つはアルミコート処理を施された反射面である。
【0039】
第24の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第20の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記光拡散素子が、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つは白色塗装を施された反射面である。
【0040】
第25の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第20の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記光拡散素子が、上記光学ロッドからの光を伝達する光路に略垂直な断面の面積が該光路の途中において該光路の入射側および出射側におけるよりも小さくなるような絞り形状に形成されたものである。
【0041】
第26の発明によるマルチスペクトル照明装置は、互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、複数本の光学ファイバーを束ねることにより構成されており入光側において上記複数の光源に対応した入光バンドルとして複数に分割され出光側においてこれらの入光バンドルを構成する光学ファイバーがランダムに混合された状態で一体的に束ねられ出光バンドルとなっているファイバーユニットと、を具備したものである。
【0042】
第27の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第26の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記ファイバーユニットが、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0043】
第28の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第26の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記ファイバーユニットが、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0044】
第29の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第26の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記入光バンドルに配分される光学ファイバーの本数が、対応する光源の発光効率に応じて設定されている。
【0045】
第30の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第26の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記ファイバーユニットが、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が上記撮像光学系の光軸に対して45度から75度の範囲内の角度をなすように構成されたものである。
【0046】
第31の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第30の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記ファイバーユニットが、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【0047】
第32の発明によるマルチスペクトル照明装置は、上記第30の発明によるマルチスペクトル照明装置において、上記ファイバーユニットが、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1におけるマルチスペクトル撮像装置の使用形態を示す図。
【図2】上記実施例1におけるマルチスペクトル撮像装置の構成を示すブロック図。
【図3】上記実施例1において、マルチスペクトル照明装置を中心とする撮影装置の構成を側方から示す図およびLED基板の構成を示す正面図。
【図4】上記実施例1におけるマルチスペクトル照明装置の構成を示す斜視図および光学シートの作用を示す側面図。
【図5】上記実施例1におけるマルチスペクトル照明装置の構成を上面から示す図。
【図6】上記実施例1において、LEDによる照明スペクトルとCCDの分光感度とを示す線図。
【図7】上記実施例1において、照射角と正反射光および色成分反射光の反射光量との相関を示す線図。
【図8】本発明の実施例2において、絞り構造を備えた光拡散素子を有するマルチスペクトル照明装置を示す斜視図および光拡散素子による光の反射の様子を側方から示す図。
【図9】上記実施例2において、絞り構造を備え該絞り構造部分に光学シートを配置した光拡散素子を有するマルチスペクトル照明装置を示す斜視図および光拡散素子による光の反射の様子を側方から示す図。
【図10】本発明の実施例3において、ファイバーバンドルを用いて光拡散を行うようにしたマルチスペクトル照明装置の構成を上面側と側面側とから示す図およびファイバーバンドルの出射側端面を示す図。
【図11】上記実施例3において、斜めから光を照射することによる照明ムラの光学シートによる補正を説明するための図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0050】
図1から図7は本発明の実施例1を示したものであり、図1はマルチスペクトル撮像装置の使用形態を示す図、図2はマルチスペクトル撮像装置の構成を示すブロック図、図3はマルチスペクトル照明装置を中心とする撮影装置の構成を側方から示す図およびLED基板の構成を示す正面図、図4はマルチスペクトル照明装置の構成を示す斜視図および光学シートの作用を示す側面図、図5はマルチスペクトル照明装置の構成を上面から示す図、図6はLEDによる照明スペクトルとCCDの分光感度とを示す線図、図7は照射角と、正反射光および色成分反射光の反射光量と、の相関を示す線図である。
【0051】
本実施例のマルチスペクトル照明装置を用いたマルチスペクトル撮像装置は、例えば対象物としての自動車の色を正確に測色する用途などに用いられるものである。
【0052】
図1に示すように、このマルチスペクトル撮像装置のシステムは、自動車等の対象物4を撮影する撮影装置1と、撮影後にこの撮影装置1を載置するなどにより該撮影装置1と電気的に接続されて撮影データを受信すると共に該撮影装置1に対する充電等を行う機能も備えたクレードル2と、このクレードル2が接続されていて該クレードル2を介して受信した撮影データを受け取り解析を行うパーソナルコンピュータ(以下、適宜PCという)3と、を有して構成されている。
【0053】
このようなマルチスペクトル撮像装置の撮影装置1を用いて、例えば自動車の表面を撮影し、撮影後の撮影装置1をクレードル2と接続することにより、撮影データがPC3に取り込まれる。そして、該PC3において解析を行うことにより、例えばその自動車の色が正規の塗料により塗られた色であるか、または他の塗料により塗られた色であるかを見分けることが可能となる。これにより、自動車の塗装に関する専門的な知識がなくても、自動車の状態を判断することが可能となる。
【0054】
次に、このようなマルチスペクトル撮像装置の構成を、図2を参照して説明する。
【0055】
上記撮影装置1は、本体5からフード6を延設して構成されており、該本体5の外面には、該撮影装置1の電源をオンするための電源スイッチ7と、撮影動作を指示入力するためのシャッタボタン8と、上記クレードル2と電気的に接続するための接点9と、撮影された画像を確認したり該撮影装置1に関する各種の情報を表示したりするためのLCDユニット10と、後述する撮像光学系21の焦点位置を手動で調整するためのピントリング11と、が配設されている。
【0056】
上記フード6から本体5にかけての内部には、対象物4を照明するための光源となるLED23a〜23hと、これらのLED23a〜23hが取り付けられているLED基板22と、該LED23a〜23hから発光された照明光を均一な照明光として対象物4の被照射面に照射するための照明光学ユニット24と、照明された対象物4の被照射面から反射されてくる光を後述するCCD13上に結像するための撮像光学系21と、が配設されている。
【0057】
このような構成において、マルチスペクトル照明装置は、上記LED基板22、LED23a〜23h、照明光学ユニット24を含んでなる。また、上記撮像光学系21は、至近距離での撮影を行うことができるような光学系となっている。さらに、上記フード6は、この撮像光学系21に入射する光が、上記LED23a〜23hおよび照明光学ユニット24による照明光により照明された対象物4からの反射光のみとなって、それ以外の外光の影響を受けることがないように遮光するためのものである。そして、上記ピントリング11は、上記撮像光学系21による対象物4の光学像の結像位置が、上記CCD13の撮像面に一致するように調整するためのものである。なお、ここではピントリング11を用いて焦点調節するようにしているが、もちろん、オートフォーカス等の機構を用いて自動焦点調節を行うことができるように構成しても良い。
【0058】
上記本体5内には、さらに、上記撮像光学系21により結像された光学的な被写体像を電気的な画像信号に変換するためのものでありRGBカラーフィルタを有するCCD13と、このCCD13から出力される画像信号に各種の信号処理を行うための信号処理回路14と、上記LED23a〜23hを制御して発光を行わせるためのLEDコントローラ15と、上記信号処理回路14により処理された画像データを記憶したり後述する制御回路18により実行される処理プログラムやデータ等を記憶したりするためのメモリ16と、上記クレードル2から上記接点9を介して供給される電源を蓄積するためのバッテリ19と、このバッテリ19から供給される電源をこの撮影装置1内の各回路に供給するための電源回路17と、上記CCD13,信号処理回路14,LEDコントローラ15,メモリ16,電源回路17および後述する制御回路18を実装する電気回路基板12と、上記LCDユニット10,信号処理回路14,LEDコントローラ15,メモリ16,電源回路17とバス等を介して双方向に接続されていてこれらを含むこの撮影装置1全体を統括的に制御するための制御回路18と、を有して構成されている。
【0059】
また、上記クレードル2は、撮影装置1の上記接点9と接続するための接点39と、AC電源から供給される所定電圧の交流を適宜の直流電圧に変換するACアダプタ35と、このACアダプタ35から供給される電源を内部の各回路に供給するための電源回路36と、上記撮影装置1から送信される画像データがアナログデータである場合にデジタルデータへの変換を行うA/D変換回路34と、画像データを記憶したり後述するCPU31により実行される処理プログラムやデータ等を記憶したりするためのSRAM33と、画像データの圧縮処理等を行うためのFPGA(Field Programmable Gate Array)32と、上記PC3と例えばUSB2により通信を行うためのインターフェースであるUSB2I/F37と、上記FPGA32,SRAM33,A/D変換回路34,電源回路36,USB2I/F37とバス等を介して双方向に接続されていてこれらを含むこのクレードル2全体を統括的に制御しかつ上記撮影装置1やPC3との通信を制御するCPU31と、を有して構成されている。
【0060】
さらに、上記PC3は、上述したように例えばUSB2により接続されている上記クレードル2を介して上記撮影装置1から受信した画像データを解析することにより対象物4の色を判断する色解析ソフトウェア41がインストールされていると共に、この色解析ソフトウェア41が色の解析を行う際に参照する色データベース42が記憶されている。
【0061】
続いて、図3から図7を参照して上記照明光学ユニットおよびLEDについて説明する。
【0062】
上記LED基板22に配設されている上記LED23a〜23hは、図3(B)に示すように、複数の発光ユニットにまとめられて格納されている。例えば、第1の発光ユニット22aにはLED23c,23fが、第2の発光ユニット22bにはLED23b,23e,23gが、第3の発光ユニット22cにはLED23a,23d,23hが、それぞれパッケージングされている。なお、ここでは、8つの異なる波長域の光を発光するLEDがそれぞれ1つずつ設けられている例を示したが、1つの波長域の光に対応して複数のLEDを設けるようにしても構わない。
【0063】
これらのLED23a〜23hの発光スペクトルは、図6に示すようになっており、LED23aが曲線Saに示すように450nm、LED23bが曲線Sbに示すように505nm、LED23cが曲線Scに示すように525nm、LED23dが曲線Sdに示すように560nm、LED23eが曲線Seに示すように575nm、LED23fが曲線Sfに示すように609nm、LED23gが曲線Sgに示すように635nm、LED23hが曲線Shに示すように670nmの中心発光波長をそれぞれもつものとなっている。
【0064】
なお、これらの発光スペクトルに対して、RGBカラーフィルタを介した上記CCD13の分光感度は、フィルタ色毎に該図6に示すようになっており、完全には分離されておらず一部が重なっているが、ほぼ次のようである。すなわち、Bカラーフィルタを介した分光感度は、曲線Bに示すように、LED23aの発光帯域をほぼ含むと共に、LED23bの発光帯域を一部含んでいる。また、Gカラーフィルタを介した分光感度は、曲線Gに示すように、LED23b,LED23c,LED23d,LED23eの発光帯域をほぼ含んでいる。さらに、Rカラーフィルタを介した分光感度は、曲線Rに示すように、LED23f,LED23g,LED23hの発光帯域をほぼ含んでいる。
【0065】
また、上記照明光学ユニット24は、図3(A)に示すように、上記LED23a〜23hから発光された照明光を伝達する複数の光学ロッド25と、これらの光学ロッド25を介して伝達された照明光を均一な照明光とするために拡散を行う光拡散素子26と、を含んで構成されていて、該光拡散素子26は、図4や図5に示すように、出射端面側に光を拡散するための光学シート27をさらに配設して構成されている。
【0066】
上記光学ロッド25は、種々の構成のものを用いることが可能であるが、代表例としては、光学材料により単一のロッド状に形成されたもの、あるいは、ファイバーバンドルとして構成されたもの、が挙げられる。
【0067】
上記光拡散素子26は、側面から見ると図3(A)に示すようにほぼ長方形をなしているが、上面から見ると図5に示すように(あるいは斜めから見ると図4に示すように)湾曲した形状となるように形成されていて、上記光学ロッド25から伝達された光をその内面で複数回反射して拡散するように構成されている。
【0068】
該光拡散素子26は、図5に示すように、光学ロッド25からの光を入射する入射側が白色拡散面26aとして構成され、該光を出射する出射側がアルミコート反射面26bとして構成されている。これにより、照明光を均一に拡散しながら、かつ光量を低下させることなく出射端側へ伝達するようになっている。
【0069】
そして、該光拡散素子26は、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が、図5に示すように、上記撮像光学系21の光軸に対して略60度の角度をなすように配置されている。これは、正反射光の影響を抑制しつつ、色成分の反射光を効率良く取り込むことができるような設計に基づく配置である。
【0070】
すなわち、図7の三角印に示すように、照射光束の中心軸と撮像光軸とのなす角度が0度である場合に、正反射光の光量が最も大きくなる。そして、この角度が大きくなるに従って、正反射光の光量は減少し、45度を超える付近からほぼ実用上の影響がないような範囲となる。一方、色成分反射光の光量も、図7の丸印に示すように、上記角度が0度である場合に最も大きく、角度が大きくなるに従って減少する。しかし、色成分反射光の光量は、正反射光の光量よりも減衰の仕方が緩やかであるために、反射光量の開きは大きくなり、つまりSN比が向上する。そして、正反射光の実用上の影響がなくなる上記45度においても、色成分反射光は依然として実用的な光量を保っている。その後、さらに上記角度が増大して、約75度になったところで、該色成分反射光の光量の低下が無視し得ない程度になり、実用範囲から外れてしまう。従って、SN比が高く、かつ必要な色成分反射光の光量を得られる実用範囲として、上記角度が45度〜75度となる範囲が挙げられる。このような実用範囲内においても、最も効率が高く、色測定を最も精度良く行うことができる角度として、この実施例では上記略60度が設定されている。
【0071】
上記光学シート27は、図4(B)に示すように、入射面27aが平面、出射面27bが拡散面となっており、上記光拡散素子26により均一化された照明光を、さらに拡散して均一化してから対象物4に照射するようになっている。
【0072】
続いて、上述したような構成のマルチスペクトル撮像装置の作用について説明する。
【0073】
使用者は、撮影装置1のフード6側を対象物4の撮影対象部分に正対させて、電源スイッチ7を操作することにより撮影装置1の電源を投入する。これにより、電気回路基板12上の各回路がバッテリ19からの電源供給を受けて駆動を開始する。
【0074】
制御回路18は、制御プログラムに従って動作を開始すると、所定の初期化等を行った後に、LEDコントローラ15を介してLED基板22に電流を供給するように制御する。これにより、LED基板22上に配置されているLED23a〜23hが例えば全て同時に点灯される。LED23a〜23hは、このように全てを同時に点灯可能であるが、その一方で、任意の1つ、または任意の2つ以上を点灯させることも可能となっている。全てのLED23a〜23hの点灯は、例えばLCDユニット10を介して対象物4を観察する際に用いられ、LED23a〜23hの個別の点灯は、例えば対象物4の測色を行う際に用いられる。また、LED23a〜23hに供給する電流値は変更することができるように構成されており、特にLCDユニット10による観察を行う際には、この電流値を変化させて光量を制御することにより、対象物4を適度な照度で観察しつつ消費電力の低減を図るようにすると良い。
【0075】
このようにして、LED23a〜23hに電力を供給すると、各LED23a〜23hは所定の出射角度をもってそれぞれの波長の光を出射する。この光が、上記照明光学ユニット24を介して対象物4に照明光として照射される。
【0076】
使用者は、対象物4の撮影対象部分を上記LCDユニット10の画面を介して観察しながら、上記ピントリング11を操作してピント調整を行うことにより、撮影対象部分にピントを合わせる。そして、ピントが合ったところで、上記シャッタボタン8を押すことにより、該撮影対象部分の測色用の画像取り込み動作が開始される。
【0077】
すなわち、制御回路18は、上記シャッタボタン8が押されたことを検出すると、測定モードにおける発光動作を行うようにLEDコントローラ15を指示する。LEDコントローラ15は、この指示を受けて、電流の供給がなされているLED基板22上の8つのLED23a〜23hを、順次、1/30秒間隔で点灯/消灯を繰り返すように動作させる。上記LED23a〜23hは、上記図6に示したような波長の各々に対する発光効率が異なるために、該LEDコントローラ15は、電流値を制御して、撮影に必要な光量を発光させる。
【0078】
LED23a〜23hから所定の角度をもって出射された光は、上記光学ロッド25に入射して、光拡散素子26へ伝達される。光は、光拡散素子26に入射すると、まず白色拡散面26aで反射される。該光拡散素子26は、例えば内部が空洞となる箱状に形成されたものであり、この白色拡散面26aは、全ての波長の光を波長に依存することのない反射率で拡散反射するための微細な白色塗料粒子が、内面に塗布された面である。この白色拡散面26aの反射作用により、伝達された光の拡散は、確実に促進される。
【0079】
このような拡散促進の作用を白色拡散面26aにより複数回繰り返し、その後、さらにアルミコート反射面26bにより光量をほとんど低下させることなく反射が行われる。こうして、光拡散素子26から光が出射される段階では、積分光に近い状態になる。
【0080】
この光は、さらに第1の光学シート27によって拡散され、より照射面に対する均一性が向上した照明光として、対象物4に照射される。このときには、上記フード6により外光が遮断されているために、対象物4は、ほぼ、LEDからの照明光のみにより照明される状態となる。
【0081】
照射された光は、対象物4により反射されて、撮像光学系21に入射し、上記CCD13の撮像面に結像される。このときに撮像光学系21に入射する光は、上述したような理由から、ほぼ色成分反射光のみであって、正反射光はほとんど含まれることがない。
【0082】
こうしてCCD13により光電変換して生成された画像データは、信号処理回路14により信号処理された後に、メモリ16に蓄積される。
【0083】
このような動作が、上記LED23a〜23hの順次の点灯/消灯に応じて行われ、8種類の各波長に対応する画像データがメモリ16に順次蓄積される。このような8種類の画像データの取り込みは、1回のみ行っても構わないが、データの信頼性を向上するために、複数回繰り返すようにしても良い。
【0084】
このような撮影装置1を用いた測定動作が完了したら、使用者は、撮影装置1をクレードル2に載置して、接点9と接点39とを電気的に接続させる。
【0085】
すると、撮影装置1の制御回路18とクレードル2のCPU31とが通信を行って、メモリ16に記憶されている画像データを、該撮影装置1からクレードル2に転送する。
【0086】
クレードル2は、受信した画像データをSRAM33に一旦蓄積した後に、上記FPGA32などで処理し、USB2I/F37を介してPC3に送信する。
【0087】
PC3は、受信した画像データを、インストールされている色解析ソフトウェア41により解析するが、その際には、該PC3に記憶されている色データベース42を参照しながら解析を行うことになる。これにより、PC3において、被写体の正確な色が明確に分析され、その結果が該PC3のモニタ等に表示される。
【0088】
また、上記撮影装置1をクレードル2に接続することにより、該撮影装置1のバッテリ19が、接点9,39を介してクレードル2のACアダプタ35から電源供給を受けて充電される。
【0089】
このような実施例1によれば、マルチスペクトル照明装置に光拡散素子を設けたために、LEDから発光された光を、均一な照明光として照射することができる。さらに、LEDから発光された光を、光学ロッドを用いて光拡散素子に伝達しているために、光を損失させることなく有効に伝達することができる。そして、光拡散素子内に白色拡散面を設けているために、照明光の均一化を効率的に行うことができる。加えて、光拡散素子の出射面に光を拡散する機能を備えた光学シートを設けているために、照明光をより一層均一化することができる。また、照明光の光束の中心軸が撮像光軸と45度〜75度の範囲の中の特に略60度の角度をなすようにしているために、正反射光の影響をほぼ受けることなく、かつ色成分反射光の光を効率的に撮像することが可能となる。これにより、正確な色測定を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0090】
図8、図9は本発明の実施例2を示したものであり、図8は絞り構造を備えた光拡散素子を有するマルチスペクトル照明装置を示す斜視図および光拡散素子による光の反射の様子を側方から示す図、図9は絞り構造を備え該絞り構造部分に光学シートを配置した光拡散素子を有するマルチスペクトル照明装置を示す斜視図および光拡散素子による光の反射の様子を側方から示す図である。
【0091】
この実施例2において、上述の実施例1と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0092】
この実施例2は、光拡散素子26の形状を異ならせたものである。すなわち、この実施例2の光拡散素子26は、上面から見た形状は上述した実施例1の図5に示したものとほぼ同様であるが、側面から見たときの形状が図8(B)に示すように(あるいは斜めから見たときの形状が図8(A)に示すように)、中央部がくびれたものとなっている。
【0093】
すなわち、光拡散素子26は、光を入射する入射側の白色拡散面26aと、光を出射する出射側のアルミコート反射面26bと、の間となる光を伝達する光路の中程に、絞り部26cが設けられている。この絞り部26cは、光を伝達する光路に略垂直な断面の面積が、上記光学ロッド25からの光を入射する入射側端面の面積よりも小さく、かつ、上記光学シート27へ向けて光を照射する出射側端面の面積よりも小さくなるような、絞り形状に形成されている。
【0094】
このような光拡散素子26に、上記LED23a〜23hからの光が光学ロッド25を介して入射すると、入射側の白色拡散面26aにおいて複数回反射されながら、上記絞り部26cに向けて光束が収束して行く。この光束が収束する課程で、光の拡散が促進される。その後、光束は、この絞り部26cを起点として、アルミコート反射面26bで反射されながら広がって行く。該アルミコート反射面26bは、図8(B)に示すように、例えば放物面に準ずるような形状に形成されていて、放物面の焦点から照射された光が該放物面の対称軸に平行な光として反射されるのと同様に、このアルミコート反射面26bで反射された各光線は、互いに略平行な光線となる。こうして、均一で略平行となった光束が、該光拡散素子26から出射される。
【0095】
光拡散素子26から出射された光は、上記実施例1と同様に、上記光学シート27によりさらに拡散された後に、対象物4に照射されることになる。
【0096】
また、図9は、上記図8に示したような形状の光拡散素子26の内部に、光拡散機能を有する光学シート28を配設する構成例を示している。上記図8に示した構成例においては、光学シート27は光拡散素子26の出射面側に配設されていたが、この図9(A)および図9(B)に示す構成例では光拡散素子26の内部に光学シート28を配設するようにしている。すなわち、該光学シート28は、光拡散素子26において光束が最も収束する位置である絞り部26cに配設されている。
【0097】
これにより、該絞り部26cの位置で、光の拡散がさらに効果的に行われる。この光学シート28により拡散された光は、上述と同様にアルミコート反射面26bで反射され、略平行光として光拡散素子26から出射される。
【0098】
このような実施例2によれば、上述した実施例1とほぼ同様の効果を奏するとともに、絞り部を設けたために、光束が収束しその後に拡大するという課程の中で、より多くの回数反射されるようになるために、より均一な照明光を得ることができる。一方、実施例1と同程度の均一性をもった照明光で良い場合には、光拡散素子の全長が短くて済むなどのより小型化を図ることが可能となる。これにより、より小型なマルチスペクトル照明装置、ひいてはより小型なマルチスペクトル撮像装置を構成することができる。
【0099】
そして、絞り部に光学シートを設ける場合には、対象物を照明する光が略平行光となることが妨げられないために、フード側に逃げる無駄な光量を減らして、より効率的に高い照度で対象物を照明することが可能となる。一方、実施例1と同程度の照度で良い場合には、LEDに供給する電力を低減することができるために、より低消費電力で使用可能時間の長いマルチスペクトル撮像装置を構成することが可能となる。
【実施例3】
【0100】
図10、図11は本発明の実施例3を示したものであり、図10はファイバーバンドルを用いて光拡散を行うようにしたマルチスペクトル照明装置の構成を上面側と側面側とから示す図およびファイバーバンドルの出射側端面を示す図、図11は斜めから光を照射することによる照明ムラの光学シートによる補正を説明するための図である。
【0101】
この実施例3において、上述の実施例1,2と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0102】
この実施例3のマルチスペクトル照明装置は、上記LED基板22と、このLED基板22上に配設されたLED23a〜23hと、これらのLED23a〜23hから発光された光を均一化して伝達するものでありファイバーユニットを構成するファイバーバンドル52と、このファイバーバンドル52から対象物4へ向けて斜めに光が照射されることによる照明ムラを補正するためのものでありファイバーユニットを構成する第2の光学シート54と、を有して構成されている。
【0103】
上記ファイバーバンドル52は、例えば50μm程度の極細の単ファイバー(光学ファイバー)を複数本束ねたものとして構成されており、一端側が、上記LED23a〜23hから所定の出射角度をもって発光される光をそれぞれ入射するための入光バンドル51a〜51h、他端側が、対象物4へ向けて光を照射するための出光バンドル53となっている。
【0104】
上記入光バンドル51a〜51hでそれぞれ8束に分割して束ねられている各光学ファイバーは、その光を伝達する光路の途中において、互いにランダムに混合された後に、図10(C)のA矢視図に示すように再び束ねられて、出光バンドル53となる。
【0105】
このとき、入光バンドル51a〜51hにおいて束ねられている光学ファイバーの本数は、各LED23a〜23hの発光効率に応じて、出射時に必要な発光量が得られる本数が割り当てられている。例えば、図10(B)に示すLED23a,23h,23dの各発光効率の比が1:1.5:2であるとすると、これらに対応する入光バンドル51a,51h,51dを構成する光学ファイバーの本数の比が1:0.67:0.5となるように束ねられる。
【0106】
このような構成により、入光バンドル51a〜51hから適切な光量で取り込まれた光が、ランダムに混合されることにより均一に分散された照明光として、図10(C)に示すような出光バンドル53から出射される。
【0107】
このとき、出光バンドル53は、図10(A)、図11(A)、図11(B)に示すように、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が、上記撮像光学系21の光軸に対して略60度の角度をなすように配置されている。その理由は、上記実施例1で説明したように、正反射光の影響を抑制しつつ、色成分の反射光を効率良く取り込むためである。
【0108】
このような角度をもって出光バンドル53から出射される光は、対象物4の被照射面において、例えば図11(C)に示すような照明ムラを生じることがある。このような照明ムラを補正するために設けられているのが、上記第2の光学シート54である。
【0109】
この光学シート54は、図11(D)に示すようなグラデーション特性を備えたものとなっており、その特性曲線は照明ムラの輝度分布を逆にしたような形状となっている。
【0110】
出光バンドル53からの照明光が、このような光学シート54を介して通過すると、対象物4の被照射面において、図11(E)に示すような照度で照射されることになり、照明ムラのない照明を行うことが可能となる。
【0111】
なお、上記実施例1,2において用いられたような、伝達する光を拡散するための光学シートを、さらにファイバーバンドルによる光路中に配置するようにしても構わない。この場合には、より均一に拡散された光を照射することが可能となる。
【0112】
このような実施例3によれば、ファイバーバンドルを用いて、入射側と出射側との途中で光学ファイバーをランダムに混合することによっても、上述した実施例1,2とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0113】
さらに、出光バンドルの出射側の面に第2の光学シートを設けたことにより、斜めから光を照射することによる照明ムラを良好に補正して、対象物の被照射面において均一な照度を得ることができる。
【0114】
なお、上記実施例3において用いられた第2の光学シート54は、上述した実施例1,2の光拡散素子26の出射面側に用いることも可能であり、この場合にも同様の効果を奏することができる。
【0115】
また、上述した実施例1から実施例3の光拡散素子26は、白色拡散面26aの内面に白色塗料粒子を塗布することにより構成するに限るものではなく、これに代えて、所定の割合の白色の添加剤を含む樹脂、例えば5%未満の割合で白色のTiO2(酸化チタン)を主成分とする添加剤を含む樹脂、により形成するようにしても良い。
【0116】
この場合には、材料に良質(波長に対する反射率が安定して高い)の添加剤を混入して射出成形等で形成することにより、高い性能を有する光拡散素子を、塗装などの2次加工を不要としながら、容易かつ安価に得ることが可能となる。
【0117】
また、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる波長の光を被照射面へ照射するマルチスペクトル照明装置と、このマルチスペクトル照明装置により照明された被照射面からの反射光を結像する撮像光学系と、を具備し、この撮像光学系を介して取得した反射光の成分を解析することにより該被照射面の色成分を測定するマルチスペクトル撮像装置であって、
上記マルチスペクトル照明装置は、
互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、
上記光源からの光をリレーするための光学ロッドと、
上記光学ロッドからの光を拡散しながら反射するための反射面を有し、この反射面により拡散された光を上記被照射面に照射する光拡散素子と、
を有して構成されたものであることを特徴とするマルチスペクトル撮像装置。
【請求項2】
上記光拡散素子は、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項3】
上記光拡散素子は、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項4】
上記光拡散素子は、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つはアルミコート処理を施された反射面であることを特徴とする請求項1に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項5】
上記光拡散素子は、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つは白色塗装を施された反射面であることを特徴とする請求項1に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項6】
上記光拡散素子は、上記光学ロッドからの光を伝達する光路に略垂直な断面の面積が、該光路の途中において、該光路の入射側および出射側におけるよりも小さくなるような、絞り形状に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項7】
上記光拡散素子は、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が、上記撮像光学系の光軸に対して45度から75度の範囲内の角度をなすように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項8】
上記光拡散素子は、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項7に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項9】
上記光拡散素子は、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項7に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項10】
上記光拡散素子は、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つはアルミコート処理を施された反射面であることを特徴とする請求項7に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項11】
上記光拡散素子は、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つは白色塗装を施された反射面であることを特徴とする請求項7に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項12】
上記光拡散素子は、上記光学ロッドからの光を伝達する光路に略垂直な断面の面積が、該光路の途中において、該光路の入射側および出射側におけるよりも小さくなるような、絞り形状に形成されたものであることを特徴とする請求項7に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項13】
異なる波長の光を被照射面へ照射するマルチスペクトル照明装置と、このマルチスペクトル照明装置により照明された被照射面からの反射光を結像する撮像光学系と、を具備し、この撮像光学系を介して取得した反射光の成分を解析することにより該被照射面の色成分を測定するマルチスペクトル撮像装置であって、
上記マルチスペクトル照明装置は、
互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、
複数本の光学ファイバーを束ねることにより構成されており、入光側において上記複数の光源に対応した入光バンドルとして複数に分割され、出光側においてこれらの入光バンドルを構成する光学ファイバーがランダムに混合された状態で一体的に束ねられ出光バンドルとなっているファイバーユニットと、
を有して構成されたものであることを特徴とするマルチスペクトル撮像装置。
【請求項14】
上記ファイバーユニットは、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項13に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項15】
上記ファイバーユニットは、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項13に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項16】
上記入光バンドルに配分される光学ファイバーの本数は、対応する光源の発光効率に応じて設定されていることを特徴とする請求項13に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項17】
上記ファイバーユニットは、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が、上記撮像光学系の光軸に対して45度から75度の範囲内の角度をなすように構成されたものであることを特徴とする請求項13に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項18】
上記ファイバーユニットは、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項17に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項19】
上記ファイバーユニットは、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項17に記載のマルチスペクトル撮像装置。
【請求項20】
互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、
上記光源からの光をリレーするための光学ロッドと、
上記光学ロッドからの光を拡散しながら反射するための反射面を有し、この反射面により拡散された光を被照射面に照射する光拡散素子と、
を具備したことを特徴とするマルチスペクトル照明装置。
【請求項21】
上記光拡散素子は、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項20に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項22】
上記光拡散素子は、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項20に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項23】
上記光拡散素子は、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つはアルミコート処理を施された反射面であることを特徴とする請求項20に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項24】
上記光拡散素子は、複数の反射面を有して構成されており、該複数の反射面の内の少なくとも1つは白色塗装を施された反射面であることを特徴とする請求項20に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項25】
上記光拡散素子は、上記光学ロッドからの光を伝達する光路に略垂直な断面の面積が、該光路の途中において、該光路の入射側および出射側におけるよりも小さくなるような、絞り形状に形成されたものであることを特徴とする請求項20に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項26】
互いに異なる波長の光を発光する複数の光源と、
複数本の光学ファイバーを束ねることにより構成されており、入光側において上記複数の光源に対応した入光バンドルとして複数に分割され、出光側においてこれらの入光バンドルを構成する光学ファイバーがランダムに混合された状態で一体的に束ねられ出光バンドルとなっているファイバーユニットと、
を具備したことを特徴とするマルチスペクトル照明装置。
【請求項27】
上記ファイバーユニットは、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項26に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項28】
上記ファイバーユニットは、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項26に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項29】
上記入光バンドルに配分される光学ファイバーの本数は、対応する光源の発光効率に応じて設定されていることを特徴とする請求項26に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項30】
上記ファイバーユニットは、被照射面に向けて照射する光束の中心軸が、上記撮像光学系の光軸に対して45度から75度の範囲内の角度をなすように構成されたものであることを特徴とする請求項26に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項31】
上記ファイバーユニットは、伝達する光を拡散するための光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項30に記載のマルチスペクトル照明装置。
【請求項32】
上記ファイバーユニットは、被照射面における照明の非均一性を低減するためのグラデーションを有する光学シートをさらに光路中に配置して構成されたものであることを特徴とする請求項30に記載のマルチスペクトル照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【国際公開番号】WO2005/047833
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515432(P2005−515432)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016662
【国際出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】