説明

マルチフェーズコンバータ回路

【課題】装置構成を小型化し、かつ低コストで外部電源と二次電池の間の電力授受を可能とする。
【解決手段】二次電池14からの直流電圧を昇圧して駆動回路20に供給する昇圧コンバータ回路の昇圧リアクトルに一次側インダクタ103を付加し、一次側インダクタ103に外部電源からPFC回路106、DC/AC変換回路108を介して交流電圧を供給する。交流電圧の位相を調整することで、出力コンデンサC2の端子間電圧を昇圧させ、出力コンデンサC2から二次電池14に直流電流を流して二次電池14を充電する。また、交流電圧の位相を変えることで、二次電池14から外部電源に発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多機能型マルチフェーズコンバータ回路、特に、外部との間で電力を授受するコンバータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力回路における、回路電圧を昇圧及び降圧する電力変換器(コンバータ回路)が広く使用されており、例えばハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車等の電動車両への搭載が検討されている。そして、このようなコンバータ回路に別の回路を付加し、外部電源との間で絶縁型の充電あるいは発電を可能とする回路構成が提案されている。
【0003】
図14に、このような回路構成の基本例を示す。ハイブリッド自動車等に搭載される二次電池及びコンバータ回路に対し、別付けで双方向PFC回路と絶縁型のDC−DCコンバータから構成され、双方向PFC回路には外部電源が接続される。
【0004】
また、下記の特許文献1には、装置規模を小型化することを目的とした、外部充電機能を有する車両搭載用のマルチフェーズコンバータが記載されている。
【0005】
図15及び図16に、この従来技術のマルチフェーズコンバータの構成を示す。図15において、ハイブリッド車両駆動システム10は、切り換え式3相マルチフェーズコンバータ12を備え、商用電源等の外部電源装置から取得した電力に基づいて二次電池14を充電し、または二次電池14の出力電圧を昇圧して駆動回路20に出力する。また、切り換え式3相マルチフェーズコンバータ12と駆動モータ22及び発電モータ24との間で直流交流変換を行い電力の受け渡しを行う駆動回路20、駆動モータ22、発電モータ24を備える。切り換え式3相マルチフェーズコンバータ12は、上下に接続されたスイッチング素子の接続節点にインダクタを接続した構成であり、二次電池14の出力電圧を昇圧する昇圧モード、あるいは外部電源装置から取得した電力に基づいて二次電池14を充電する外部充電モードで動作する。外部充電モードでは、コントローラ28は、リレースイッチRS1〜RS4をオフに制御する。単相電源プラグ26は単相電源コンセントに差し込まれる。単相電源プラグ26の一方の電極は、リレースイッチRS1側のインダクタL1の一端に接続され、単相電源プラグ26の他方の電極は、リレースイッチRS2側のインダクタL2の一端に接続される。
【0006】
スイッチング素子S1及びS2の接続節点Aとスイッチング素子S3及びS4の接続節点Bとの間には、単相電源プラグ26からインダクタL1及びL2を介して単相交流電圧が印加される。コントローラ28は、スイッチング素子S1〜S4を単相インバータとして動作させ、スイッチング素子をPWM制御して接続節点の間に交流電圧を整流及び昇圧し、これにより得られる直流電圧を出力コンデンサ18に印加する。次に、スイッチング素子S6をオンとしスイッチング素子S5をオフとすると、インダクタL3を介して二次電池14の正極からスイッチング素子S6に電流が流れる。この状態においてスイッチング素子S6をオフとするとインダクタL3に誘導起電力が発生する。このとき、二次電池14の出力電圧にインダクタL3を加えた電圧が出力コンデンサ18の端子間電圧より小さいときは、スイッチング素子S5をオンとすることにより、出力コンデンサ18からインダクタL3を介して入力コンデンサ16及び二次電池14が充電される。この構成では、昇圧モードにおいて昇圧用のインダクタとして用いられたインダクタL1及びL2を、外部充電モードにおける力率改善用及び昇圧用のインダクタとして用いることができ、昇圧モードにおいて昇圧用のインダクタとして用いられたインダクタL3を、外部充電モードにおける降圧用のインダクタとして用いることができる。
【0007】
一方、図16において、ハイブリッド車両駆動システム44は、切り換え式6相マルチフェーズコンバータ46を備える。外部充電モードでは、コントローラ48は、リレースイッチSW1〜SW4、SW6及びSW7をオフに制御し、SW5をオンに制御する。単相電源プラグ26は、リレースイッチSW1側のインダクタL1の一端に接続され、単相電源プラグ26の他方の電極は、リレースイッチSW2側のインダクタL2の一端に接続される。コントローラ48は、スイッチング素子S1〜S4を単相インバータとして動作させ、これにより接続節点AとBとの間の交流電圧を整流及び昇圧し、整流及び昇圧後の直流電圧を出力コンデンサ18−1に印加する。スイッチング素子S5及びS6の接続節点Dとスイッチング素子S7及びS8の接続節点Eとの間には、一次側インダクタL3+L4が接続される。スイッチング素子S9及びS10の接続節点Fとスイッチング素子S11及びS12の接続節点Gとの間には、二次側インダクタL5+L6が接続される。
【0008】
コントローラ48は、スイッチング素子S5〜S8を単相インバータとして動作させ、スイッチング素子S5〜S8のPWM制御を行い、出力コンデンサ18−1の端子間電圧を交流電圧に変換し、その交流電圧を一次側インダクタL3+L4に印加する。一次側インダクタL3+L4と二次側インダクタL5+L6との磁気的結合により、二次側L5+L6には交流電圧が発生し、その交流電圧は接続節点FとGとの間に印加される。
【0009】
コントローラ48は、スイッチング素子S9〜S12を単相インバータとして動作させ、スイッチング素子S9〜S12のPWM制御を行い、二次側インダクタL5+L6から接続節点FとGとの間に印加された交流電圧を整流し、整流後の直流電圧を出力コンデンサ18−2、入力コンデンサ16及び二次電池14に印加し、二次電池14を充電する。
【0010】
この構成では、前段側と後段側とは一次側インダクタL3+L4及び二次側インダクタL5+L6の磁気的結合に基づいて結合され、電気的に絶縁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−220443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図14に示す基本例では、別付け回路として複数のスイッチング素子、具体的には12個のスイッチング素子と高周波トランスが必要となるため、構成が大型化するとともに、コストも増大する問題がある。
【0013】
また、図15の構成では、昇圧モードにおいて昇圧用のインダクタとして用いられたインダクタを外部充電モードにおける力率改善用及び昇圧用のインダクタとして用いることができるため、この部分においては部品点数を削減することができるものの絶縁性が確保されておらず、図16の構成では絶縁性が確保されてはいるものの、それでも新たに追加するリレーの個数が7個と比較的多く、昇圧回路の相数も6相と多く、低コスト化が困難である。
【0014】
本発明の目的は、外部電源との間で絶縁性を確保しつつ、装置の小型化、低コスト化を図ることができるマルチフェーズコンバータ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のマルチフェーズコンバータ回路は、二次電池からの直流電圧を昇圧するマルチフェーズ昇圧リアクトルと、前記マルチフェーズ昇圧リアクトルに付加され磁気的に結合するインダクタであって、外部電源からの交流電圧が印加されるインダクタとを備え、前記交流電圧の位相を調整することで前記外部電源と前記二次電池との間で前記マルチフェーズ昇圧リアクトルを介して電力を供給することを特徴とする。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、前記二次電池からの直流電圧を昇圧する前記マルチフェーズ昇圧リアクトルの昇圧後の電圧V2に対し、前記外部電源からの交流電圧V1の位相を90度ずらして前記インダクタに供給する。
【0017】
また、本発明の他の実施形態では、前記二次電池からの直流電圧を昇圧する前記マルチフェーズ昇圧リアクトルの昇圧後の電圧V2に対し、前記外部電源からの交流電圧V1の位相差を90度として前記インダクタに供給することで前記外部電源から前記二次電池に電力を供給し、前記外部電源からの交流電圧V1の位相差を−90度として前記インダクタに供給することで前記二次電池から前記外部電源に電力を供給する。
【0018】
また、本発明のさらに他の実施形態では、前記インダクタに直列に接続される電流制限用の第2インダクタを備える。
【0019】
また、本発明のさらに他の実施形態では、前記マルチフェーズ昇圧リアクトルは、逆結合と順結合の2つの磁気結合リアクトルを直結して構成され、前記インダクタは、前記マルチフェーズ昇圧リアクトルの前記逆結合の磁気結合リアクトルに付加され磁気結合される。
【0020】
また、本発明のさらに他の実施形態では、前記インダクタは中性点を有し、かつ、その一端には第1スイッチング素子が接続されるとともにその他端には第2スイッチング素子が接続され、前記第1スイッチング素子の他端と前記第2スイッチング素子の他端は互いに接続され、前記外部電源からの電力は、前記中性点と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続節点との間に供給される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、外部電源との間で絶縁性を確保しつつ、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。特に、本発明によれば、昇圧リアクトルをトランスとして援用できるため、別個のトランスを用いる必要がない。言い換えれば、昇圧リアクトルを外部電源からの充電ユニット、あるいは外部電源への発電ユニットの一部として機能させることができるので、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態の基本回路図である。
【図2】図1の等価回路図である。
【図3】実施形態のV1、V2、i2の波形及び位相説明図である。
【図4】実施形態の前提となる具体的な基本回路図である。
【図5】実施形態の具体的な回路図である。
【図6】図5の等価回路図である。
【図7】電流変化のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図8】電池電流のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図9】磁気結合型昇圧リアクトルの構成及び回路図である。
【図10】実施形態の一次側インダクタを付加した磁気結合型昇圧リアクトルの構成図である。
【図11】図10の磁気結合型昇圧リアクトルを用いた等価回路図である。
【図12】他の実施形態の回路図である。
【図13】図12に示す回路と図14に示す従来回路との対比説明図である
【図14】従来技術の回路図である。
【図15】従来技術の回路図である。
【図16】従来技術の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態のマルチフェーズコンバータ回路は、好適にはハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の電動車両に搭載され、車載の二次電池とモータとの間の電力供給に用いられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
<基本構成及び基本原理>
まず、本実施形態の基本構成及び基本原理について説明する。
【0025】
図1に、本実施形態におけるマルチフェーズコンバータ回路の回路構成を示す。マルチフェーズコンバータ回路100は、二次電池14の出力電圧を昇圧して駆動回路20に出力する昇圧モードの他に、外部電源から取得した電力に基づいて二次電池14を充電する外部充電モード、さらには外部に対して電力を出力する外部発電モードを備える。
【0026】
マルチフェーズコンバータ回路100は、上下に接続されたスイッチング素子の接続節点にインダクタを接続した2相昇圧コンバータを基本構成として有し、この2相昇圧コンバータにさらにインダクタ103を付加して構成される。二次電池14の両端には入力コンデンサC1が並列に接続される。二次電池14の正極には、インダクタ101,102のそれぞれの一端が接続される。インダクタ101の他端は、スイッチング素子S1及びS2の接続節点に接続され、インダクタ102の他端は、スイッチング素子S3及びS4の接続節点に接続される。スイッチング素子S1、S3の他端は出力側コンデンサC2の一端に接続され、スイッチング素子S2、S4の他端は出力側コンデンサC2の他端に接続される。出力側コンデンサC2は駆動回路20に接続される。
【0027】
スイッチング素子S1〜S4の動作は従来と同様であり、図示しないコントローラ(図15におけるコントローラ28と同様でよい)は、スイッチング素子S1〜S4を単相インバータとして動作させ、スイッチング素子をPWM制御して接続節点の間に交流電圧を整流及び昇圧し、これにより得られる直流電圧を出力コンデンサC2に印加する。
【0028】
一方、昇圧リアクトルを構成するインダクタ101,102には一次側インダクタ103が結合される。一次側インダクタ103はDC/AC変換回路108に接続される。DC/AC変換回路108は、PFC回路106を介して外部電源プラグ26に接続される。
【0029】
図2に、図1におけるインダクタ101,102,103の等価回路を示す。インダクタ103は一次側であってインダクタL1とし、インダクタ101,102は二次側であってまとめてインダクタL3として示す。また、図1には示されていないが、インダクタL1には電流変動を制限するためのインダクタL2を加えた構成として示す。図1におけるインダクタ101,102,103からなるトランスの結合率kを1とする。
【0030】
図2において、インダクタL1,L2に流れる一次側電流をi1、インダクタL3に流れる二次側電流をi2、一次側電圧をV1、二次側電圧をV2とすると、電流変化率は
【数1】

【数2】

であり、相互インダクタンスは、
【数3】

である。但し、上記のようにkは1とする。
【0031】
図1において、スイッチング素子S1〜S4からなる上下のアームを180度位相をずらせてデューティ比約50%で駆動した場合、二次側の電圧V2の波形は図3(a)に示すような矩形波形となる。昇圧リアクトルの昇圧比は2倍となり、スイッチング素子S1〜S4の接続節点の電圧はVbで常に二次電池14の電圧と同じであり、二次電池14への直流電流は生じない。また、V2のみを二次側のインダクタL3に印加した場合、二次側の電流i2と二次側の電圧V2の位相は90度ずれているから電力は発生しない。すなわち、二次側の電流i2と二次側の電圧V2の積分を1周期で行った場合、電力=0となる。
【0032】
これに対し、一次側電圧V1を同様にデューティ比約50%の矩形波形とし、図3(b)に示すようにV2に対して位相差90度で印加した場合には、図3(c)に示すように二次側の電流i2と二次側の電圧V2の位相差が45度となり、電力が発生する。図3(d)は二次側の電流i2とその時間変化di2/dtを示す。一方、V2に対してV1の位相を位相差−90度で印加した場合には、90度の場合と符号が反転した電力が発生する。このことは、V1の位相を−90度から+90度まで変化させることで、充電から発電まで電力量が制御可能であることを意味する。すなわち、図1におけるインダクタL101,102に、インダクタ103を結合させることで、一次側から二次側に(充電)、あるいは二次側から一次側に(発電)電力を移行することができる。
【0033】
また、二次側の電力は充電の場合には図1におけるコンデンサC2に蓄積され、コンデンサC2の端子間電圧が昇圧する。すると、昇圧コンバータに二次電池14を充電する直流電流が流れる。電流は振動するが、最終的にはトランスを介して伝達される電力量と、直流による電力量が等しくなった時点で平衡になる。
【0034】
<具体的構成>
次に、本実施形態における具体的構成について説明する。
【0035】
図4に、本実施形態における基本回路構成を示す。マルチフェーズコンバータ回路は、順結合と逆結合の2つの磁気結合リアクトルを直結した構成の磁気結合型である。すなわち、二次電池14の正極側とスイッチング素子S1,S2の接続節点の間には、第1のインダクタ及び第2のインダクタが互いに直列に接続され、また、二次電池14の正極側とスイッチング素子S3,S4の接続節点の間には、第3のインダクタと第4のインダクタが互いに直列に接続される。第1のインダクタと第3のインダクタは逆結合され、第2のインダクタと第4のインダクタは順結合される。逆結合の相互インダクタンスをM1、順結合の相互インダクタンスをM2とすると、昇圧リアクトルのインダクタンスL=M1+M2とする(強結合とし、漏れインダクタンスは無視する)。スイッチング素子S1、S3の他端は出力側コンデンサC2の一端に接続され、スイッチング素子S2、S4の他端は出力側コンデンサC2の他端に接続される。出力側コンデンサC2は駆動回路20に接続される。
【0036】
図5に、本実施形態のマルチフェーズコンバータ回路200の回路構成を示す。図4に示された回路構成において、昇圧リアクトルの逆結合部に一次側インダクタ103を付加し、さらに一次側インダクタ103に電流制限用のインダクタL2を接続する。一次側インダクタ103は、AC/AC変換回路109を介して外部電源プラグ26に接続される。AC/AC変換回路109は、商用交流電力を10kHzの高周波電力に変換する回路である。
【0037】
図6に、AC/AC変換回路109の出力電圧として、400V、10kHzの矩形波を設定した場合を示す。図6において、一次側インダクタ103のインダクタンスは242μH、L2=80μH、逆結合のインダクタンスは242μH、順結合のインダクタンスは94μHである。また、図7に、図6の動作をコンピュータでシミュレーションした結果を示す。なお、二次側には一次側と同様に10kHzの矩形波を印加している。図7において、グラフaは一次電流i1の電流変化であり、上記の(1)、(2)式で計算した電流変化率は9.06A/μSであるのに対し、シミュレーション結果は9.29A/μSである。また、グラフbは二次電流i2の電流変化であり、上記の(1)、(2)式で計算した電流変化率は5.2A/μSであるのに対し、シミュレーション結果は5.24μSである。計算結果とシミュレーション結果がよく一致している。このことは、数(1)、(2)の元となる図2の等価回路が正しいことを意味している。
【0038】
なお、交流電力はトランスを介して出力コンデンサC2に伝達される。昇圧コンバータは2倍昇圧とし、この状態で交流電力が供給されると、出力コンデンサC2が二次電池14の電池電圧Vbの2倍より高くなる。端子間電圧が電池電圧Vbの2倍より高くなると、駆動側の平均電圧電池電圧Vbより高くなるため、昇圧リアクトルに電池側への直流電流が発生し、交流電力を直流電力として二次電池14に蓄電する。直流電力量と交流伝達電力量が等しくなったところで平衡に達し、出力コンデンサC2の端子間電圧も電池電圧Vbの2倍で安定する。
【0039】
図8に、送電する交流電力を0kWから10kWにステップ的に印加した場合の電池電流の時間変化をコンピュータでシミュレーションした結果を示す。直流電流は振動しながらやがて一定値に収斂していく。シミュレーションにおける平衡状態での電池電流(図において「Sim.」として示す)は32.8Aであり、計算値の33.23Aとよく一致している。
【0040】
ここで、入力矩形波電圧の位相を充電状態から180度シフトさせると、充電ではなく発電となることは上述した通りである。発電の場合には充電とは逆方向の電池電流が発生する。
【0041】
図4では、逆結合と順結合の昇圧リアクトルにおいて、逆結合リアクトルに一次側インダクタを付加しているが、順結合を独立リアクトルとすることもできる。
【0042】
図9に、順結合リアクトルを独立リアクトルとした場合の昇圧リアクトルの構成及び回路図を示す。図9(a)は磁気結合リアクトルの構成図であり、図9(b)は回路図である。磁気結合リアクトル300は、断面形状がE字型をなすコア片、すなわち所定間隔だけ離間させて3つの凸部が形成されたコア片300a,300bを互いに凸部が対向するように配置させてコア構造が構成され、コア構造の2つの脚部にインダクタLを形成することで、インダクタLによって生じる独立した磁束と、2つのインダクタが干渉して生じる干渉磁束が存在し、磁気的に結合している。図9(b)において、二次電池14の正極側とスイッチング素子S1,S2の接続節点の間には、第1のインダクタ及び第2のインダクタが互いに直列に接続され、また、二次電池14の正極側とスイッチング素子S3,S4の接続節点の間には、第3のインダクタと第4のインダクタが互いに直列に接続される。第1のインダクタと第3のインダクタは逆結合され、第2のインダクタと第4のインダクタはそれぞれ独立している。
【0043】
図10に、図9の磁気結合リアクトルに一次側インダクタ103を付加した磁気結合リアクトルの構成を示す。磁気結合リアクトル400は、図9(a)に示す磁気結合リアクトル300と同様に、断面形状がE字型をなすコア片、すなわち所定間隔だけ離間させて3つの凸部が形成されたコア片400a,400bを互いに凸部が対向するように配置させてコア構造が構成され、コア構造の2つの脚部にインダクタLを形成する。さらに、インダクタLが形成された2つの脚部であって、インダクタLの内部に、一次側インダクタ103がそれぞれ形成される。これにより、逆結合したインダクタに一次側インダクタ103が結合される構成となり、図5の場合と同様に、入力矩形波電圧の位相を変化させることで、充電及び発電が可能となる。但し、この構成では、独立したインダクタLが一次側ではなく二次側に接続される構成となる。
【0044】
図11に、図10の磁気結合リアクトル400を用いた場合の等価回路を示す。図6の場合と比較すると、一次側にインダクタL2が接続されておらず、その代わりに二次側、すなわち逆結合インダクタLrとスイッチング素子S1、S2の接続節点の間、及び逆結合インダクタLrとスイッチング素子S3,S4の接続節点の間に独立インダクタLが接続されていることがわかる。因みに、図6の場合では、一次側にインダクタL2を接続して電流を制限しており、インダクタL2のインダクタンスの値は一次側であるため相対的に小さく設定できることから、図11の場合と比べて多くの電力を処理することが可能である。従って、例えば50kWまでの充放電も可能であり、いわゆる急速充電にも対応可能である。
【0045】
最後に、図1におけるDC/AC変換回路108について説明する。DC/AC変換回路108としては、図13に示す従来技術のようにフルブリッジ構成の単相インバータを用いることも可能であるが、既述したように多数のスイッチング素子及びトランスが必要となり、トランスを小型化するために100kHz程度の駆動周波数であるためスイッチング素子としてMOSFETを用いる必要がある。MOSFETのオン抵抗は耐圧の上昇とともに著しい増加傾向を示す。
【0046】
一方、本実施形態では、図12に示すように、一次側インダクタ103に中性点を設け、その両端に2つのスイッチング素子S10,S11を接続する構成とする。中性点にはPFC回路106が接続される。具体的には、一次側インダクタ103の接続節点を中性点の一端(図中−端子)とし、一次側インダクタ103の一端にはスイッチング素子S10が接続され、一次側インダクタ103の他端にはスイッチング素子S11が接続される。スイッチング素子S10とS11の接続節点を中性点の他端(図中+端子)とし、PFC回路106の出力の正極側を中性点の+側に接続し、PFC回路106の出力の負極側を中性点の−側に接続する。本実施形態では、別付けのトランスを新たに付加することなく、昇圧コンバータの昇圧リアクトルに一次側インダクタを付加する構成であるため、トランスを小型化するために100kHz程度の駆動周波数とする必要がなく、駆動周波数を10kHz程度としても問題ない。この場合、スイッチング素子S10,S11としてMOSFETではなくIGBTを用いることが可能となる。IGBTの耐圧として1200V程度は一般的であり、直流電圧を最大で400Vとした場合にスイッチング素子S10,S11に印加される電圧は800Vのサージ電圧となるため、1200V耐圧のIGBTを用いることが十分可能である。
【0047】
したがって、図14に示す従来の構成と図12に示す本実施形態の構成とを対比すると、従来の回路構成では、MOSFETが12素子、コンデンサ、トランスが必要であるところ、本実施形態では、MOSFETが4素子、IGBTが2素子、コンデンサ、一次側インダクタとなり、スイッチング素子数を12素子から6素子に半減できるとともに、トランスを省くことができる。
【0048】
図13に、図12に示す本実施形態の回路構成と、図14に示す従来の回路構成とを対比して示す。従来における外部電源プラグ26及びPFC回路は本実施形態における外部電源プラグ26及びPFC回路と同一であるが、従来におけるDC/AC変換回路は本実施形態における2つのスイッチング素子と一次側インダクタに対応し、従来における2次側回路は本実施形態における昇圧リアクトルを含む昇圧コンバータ回路に対応する。昇圧コンバータの部分は何ら素子を付加しておらず、DC/AC変換回路及びトランスの部分がインダクタ及び2つのスイッチング素子に置換される。従来においては、双方向PFC回路部分、DC/AC変換回路部分、トランス部分の3つの機能ブロックが別付けで必要であるところ、本実施形態では、双方向PFC回路部分及びインダクタとスイッチング素子部分の2つの機能ブロックを付加するだけで済むことが理解されよう。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、ハイブリッド自動車等の昇圧コンバータの昇圧リアクトルにインダクタを付加し、このインダクタに外部電源から交流電力を供給することで、二次電池14への充電機能あるいは二次電池14からの発電機能を付加することができる。本実施形態では、昇圧コンバータの昇圧リアクトルを援用して外部電源から二次電池14への充電機能あるいは二次電池14から外部電源への発電機能を付加することで、昇圧コンバータを多機能化するものといえる。また、昇圧コンバータの昇圧リアクトルに付加するインダクタは磁気結合しており、絶縁性も確保される。
【0050】
なお、本実施形態では、外部電源として交流電源を示し、この交流外部電源からPFC回路106、DC/AC変換回路108を介して交流電圧をインダクタ103に供給しているが、外部電源を直流電源とし、この直流電源からDC/AC変換回路108を介して交流電圧をインダクタ103に供給する構成としてもよい。
【0051】
本実施形態におけるマルチフェーズコンバータ回路は、二次電池からの直流電圧を昇圧してモータに供給するとともに、外部電源からの交流電力により当該二次電池を充電するプラグインハイブリッド自動車に特に好適であるが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
14 二次電池、20 駆動回路、26 外部電源プラグ、106 PFC回路、108 DC/AC変換回路、100 マルチフェーズコンバータ回路、101,102 インダクタ、103 一次側インダクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池からの直流電圧を昇圧するマルチフェーズ昇圧リアクトルと、
前記マルチフェーズ昇圧リアクトルに付加され磁気的に結合するインダクタであって、外部電源からの交流電圧が印加されるインダクタと、
を備え、前記交流電圧の位相を調整することで前記外部電源と前記二次電池との間で前記マルチフェーズ昇圧リアクトルを介して電力を供給することを特徴とするマルチフェーズコンバータ回路。
【請求項2】
請求項1記載のマルチフェーズコンバータ回路において、
前記二次電池からの直流電圧を昇圧する前記マルチフェーズ昇圧リアクトルの昇圧後の電圧V2に対し、前記外部電源からの交流電圧V1の位相を90度ずらして前記インダクタに供給することを特徴とするマルチフェーズコンバータ回路。
【請求項3】
請求項2記載のマルチフェーズコンバータ回路において、
前記二次電池からの直流電圧を昇圧する前記マルチフェーズ昇圧リアクトルの昇圧後の電圧V2に対し、前記外部電源からの交流電圧V1の位相差を90度として前記インダクタに供給することで前記外部電源から前記二次電池に電力を供給し、前記外部電源からの交流電圧V1の位相差を−90度として前記インダクタに供給することで前記二次電池から前記外部電源に電力を供給することを特徴とするマルチフェーズコンバータ回路。
【請求項4】
請求項1記載のマルチフェーズコンバータ回路において、
前記インダクタに直列に接続される電流制限用の第2インダクタと、
を備えることを特徴とするマルチフェーズコンバータ回路。
【請求項5】
請求項1記載のマルチフェーズコンバータ回路において、
前記マルチフェーズ昇圧リアクトルは、逆結合と順結合の2つの磁気結合リアクトルを直結して構成され、
前記インダクタは、前記マルチフェーズ昇圧リアクトルの前記逆結合の磁気結合リアクトルに付加され磁気結合される
ことを特徴とするマルチフェーズコンバータ回路。
【請求項6】
請求項1記載のマルチフェーズコンバータ回路において、
前記インダクタは中性点を有し、かつ、その一端には第1スイッチング素子が接続されるとともにその他端には第2スイッチング素子が接続され、
前記第1スイッチング素子の他端と前記第2スイッチング素子の他端は互いに接続され、
前記外部電源からの電力は、前記中性点と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続節点との間に供給される
ことを特徴とするマルチフェーズコンバータ回路。
【請求項7】
請求項2,3のいずれかに記載のマルチフェーズコンバータ回路において、
前記マルチフェーズ昇圧リアクトルは2相昇圧リアクトルであってその昇圧比は2倍であり、
前記V1及びV2は同一周波数である
ことを特徴とするマルチフェーズコンバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−34279(P2013−34279A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168152(P2011−168152)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】