説明

マルチメディアの信号処理装置及びその制御方法

【課題】本発明は移動電話機と接続する移動網交換機と接続され呼制御処理部と各種サービスをユーザに提供する複数のサービス終端部を備えたマルチメディアの信号処理装置に関し,輻輳に対してリアルタイムで対応することができることを目的とする。
【解決手段】移動網交換機と呼制御処理部との間にトラヒック情報収集解析部と,トラヒック情報収集解析部による解析結果を受け取って呼制御処理部とサービス終端部へのリソース制御の指令を発行するリソース制御部を設け,呼制御処理部とサービス終端部はリソース制御部からの指令に従って,それぞれのリソース量を増減するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動網に設けられたマルチメディア信号処理装置及びその制御方法に関する。
【0002】
近年,無線技術の発展により携帯電話サービスの加入者は増加し,それに伴いトラヒックも増加している。また,携帯電話等のサービスでは従来の音声サービスだけでなく,パケットサービスや,テレビ電話(画像サービス)等の多様なサービスの提供が行われており,それに伴って既存のIP(Internet Protocol) 網やPSTN網(Public Switched Telephon Network) への接続を行うため,無線制御用の呼制御装置及び交換機だけでなく音声,パケット,映像等の各サービス毎のプロトコル変換装置とそれぞれのサービスを実行する装置が必要となっている。
【0003】
また,それぞれの携帯電話の通信に要求されるトラヒックは,災害(地震,台風,火災等)の発生や,各種のイベント(祭典,コンサート等)等の有無や,一日の中でも時間帯により,トラヒック総量及びサービス毎のトラヒック要求も変動するため,状況に応じて輻輳が発生しており,その状況によっては通信不可の状態になる可能性があり,その対策が望まれている。
【背景技術】
【0004】
図8は従来例の構成を示す。図中,50は移動電話機(携帯電話機),51は基地局,52は移動網交換機,53は移動網交換機52とスイッチ部54を介した呼制御処理部や各サービス終端部との間のインタフェースをとる装置間IF(インタフェース),54は装置間IF53と呼制御処理部や各種サービスを行う各サービス終端部のスイッチングを行うスイッチ部(SW部),55は移動網交換機による移動電話機50のための呼制御を行う呼制御処理部,56−1〜56−nは及びユーザへの各種サービスを行う各サービス終端部,57はATM網,パケット網等を含むコアネットワークである。なお,装置間IF53,SW部54,呼制御処理部55及びサービス終端部56−1〜56−nはマルチメディアの信号処理装置を構成する。
【0005】
移動電話機50から無線により基地局51に接続され移動網交換機52で接続制御が行われ,ユーザからの各種サービスについて要求があると,装置間IF53,スイッチ部54を介して呼制御処理部55に呼制御情報が送られて呼制御処理を行い,その結果として移動網交換機52に対して制御情報を送り返したり,要求された特定のサービスに対応する一つのサービス終端部(56−nとする)に対して制御信号を供給して駆動する。更に,移動網交換機52側又は移動電話機50側からユーザデータが入力されることにより当該サービス終端部においてサービスが実行され,実行結果であるユーザデータは移動網交換機52側に出力されて基地局51から,移動電話機50側又はコアネットワーク57側へ送られる。
【0006】
この従来の構成では,予め決められた性能の呼処理制御部や各種サービスに対応したサービス終端部等の機能ブロックが搭載されており,それらの装置が有する呼処理性能及びリソース(処理能力)についてはその機能ブロックの数が固定されていた。そのため,装置性能を決定する際には予想される平均トラヒックに対し対処することができるように一定のマージンを持たせる構成で決定されることが多く,トラヒックの変動に対応する構成は採られていない。また,既存のIP網やPSTN網を利用したサービス等,多種のサービスを提供するために,プロトコルの整合をとる装置もサービス種別毎に必要であるが,その比率も同様の理由で固定となっている。
【0007】
一方,パケット交換装置に関して,パケットのトラヒック量に応じた処理性能を実現して消費電力を抑制することを目的としてパケット交換装置のクロック信号を制御する技術が提案されている(特許文献1参照)。その技術では,複数の伝送路のそれぞれに設けられた伝送路インタフェースがパケット処理部に接続され,パケット処理部と伝送路インタフェースの動作クロックを制御するシステムクロック制御部を備えたパケット交換装置において,パケット処理部が単位時間当たりに受信したパケット数を計数するパケットカウンタを備え,システムクロック制御部はパケットカウンタの計数結果に基づいてシステムクロックカウンタの分周回路の分周比を設定し,トラヒック量が多いとシステムクロック信号の周波数を上げて対応し,トラヒック量が少ないとシステムクロック信号の周波数を下げて消費電力を低減させて無駄な消費電力を抑えるように構成したものである。
【特許文献1】特開2001−144753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8に示す従来の構成では,上記したように予め予想される平均トラヒックに対象できるよう一定のマージンを持つようなリソースを備えているため,トラヒックの変動に対しトラヒックか低い場合には性能的に余剰が発生するし,逆にトラヒックが集中するような場合には輻輳が発生し通信に規制がかかるような状況となる。従って,トラヒック変動を考慮した場合には,必ずしも最適な装置構成にはなっておらず,輻輳発生の問題があった。そして,既存の方法では性能やリソース比率変更の場合には機能ブロックの増減設が必要となり人的作業が発生すること,また増減設後の機能ブロックの起動時間等も考慮する必要があり,リアルタイムでのリソース変更は困難であった。
【0009】
また,上記した特許文献1の技術は,パケット専用の交換機においてそのパケット数に応じた処理性能を実現して消費電力を抑制するものであり,移動通信におけるマルチメディアの信号処理装置における輻輳制御をリアルタイムで行うことは困難である。
【0010】
本発明は携帯電話に対してサービスを行うマルチメディアの信号処理装置において輻輳に対してリアルタイムで対応することができるマルチメディアの信号処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1は本発明の原理構成を示す図である。図中,1はマルチメディアの信号処理装置,10は外部装置との通信を行い呼制御要求等の呼制御情報及びサービス依存のデータ(移動電話機2及びコアネットワーク5間のユーザデータ)のインタフェースである装置間インタフェース(IF),11は各機能ブロック(呼制御処理部13や各サービス終端部15−1〜15−n)とのルーティング制御を行うスイッチ部,12はトラヒック情報収集解析部,13は呼制御等を終端して処理する呼制御処理部,14はリソース制御部,15−1〜15−nはサービス1,サービス2,……,サービスnに対応したサービス終端部,2は移動電話機,3は基地局,4は移動網交換機,5はコアネットワーク,6はマルチメディアの信号処理装置1を外部から制御する場合に必要となる外部制御装置である。なお,スイッチ部11は呼制御処理部13により制御されるスイッチ制御機構を含んでいる。
【0012】
移動電話機2から基地局3に無線で接続して移動網交換機4に接続されると呼制御の処理のための呼制御信号が装置間IF10及びスイッチ部11を通って呼制御処理部13へ送られ,呼制御のために呼制御処理部13から移動網交換機4側に対して制御信号が送られる場合もある。トラヒック情報収集解析部12はスイッチ部11を介した装置間IF10と呼制御処理部13と装置間IF10の間に伝送されるトラヒック情報(呼制御信号)を収集(モニタリング)して解析を行い,解析の結果をリソース制御部14に通知する。リソース制御部14はトラヒック情報の解析結果を受け取ると,解析により求められた呼制御処理部13や各種サービスを実行するサービス終端部15−1〜15−nへの要求処理能力(リソース)が,予め設定された閾値(増加すべき閾値や低下させるべき閾値)を越えたか判別し,増加すべきことが分かるとリソースを増大させる制御を行い,低下させるべきことが分かるとリソースを低下させる制御を行う。リソース制御部14は特定の暦により決まる日時(新年等)や,イベント(コンサートの予約)の発生時にリソースを増大させることが予め分かっている時に外部制御装置6からのリソース制御信号を入力する事により制御する事も可能である。
【0013】
本発明ではリソース制御として,機能ブロックを駆動するクロックの周波数を増加または低減させ,処理能力を増・減する制御と,機能ブロックにおける同時処理チャネル数を増・減する制御の両方または一方が用いられ,同時にそれに伴いバッファ量等の増・減も行うものとし,以下の説明ではリソース制御という用語には周波数制御と同時接続チャネル数の制御の両方を含んだものとして使用する。
【0014】
リソース制御部14からのリソース制御信号(リソースの増加または低減を指示)が呼制御処理部13に供給されると,呼制御処理部13ではそのクロック周波数または同時接続チャネル数がリソース制御信号に応じて制御され,リソース制御部14から各サービス終端部15−1〜15−nへのリソース制御信号が供給されると,各サービス終端部15−1〜15−nにおいてクロック周波数または同時接続チャネル数がリソース制御信号に応じて制御される。
【0015】
リソース制御部14からはリソースを増大することを指示する場合と,低減することを指示する場合があり,増大することを指示した場合は指示された機能ブロックはクロック周波数を増加させるか,同時接続チャネル数を増加させ,リソースを低減することを指示した場合は指示された機能ブロックはクロック周波数を低下させるか,同時接続チャネル数を低減させる。
【0016】
これにより,各機能ブロックは処理量が増加による輻輳が発生した場合に対してリソースを増大させ,輻輳が停止した場合にはリソースを低減させることにより,適正に運営することができる。
【0017】
なお,上記の説明ではリソース制御部14からのリソース制御信号を受けた機能ブロックは,クロック周波数または同時接続チャネル数の増加または低減をする場合について説明したが,リソース制御信号により機能ブロックのクロック周波数だけを増加または低減する制御だけ行う(同時接続チャネル数の制御をしない)ようにすることができる。
【0018】
上記図1の構成では,リソース制御部14から呼制御処理部13や各サービス終端部15−1〜15−nへのリソース制御信号は,それぞれを直接接続する信号線を介して伝送されているが,リソース制御部14からスイッチ部11を介して呼制御処理部13や各サービス終端部15−1〜15−nに伝送するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によりトラヒック増加が見込まれるような,例えばイベント等が催されるような場合,リアルタイムにトラヒック情報を監視して閾値を越えると,関連する機能ブロックの動作周波数を上げることで処理能力及び同時接続チャネル数を増加させ,人的作業を伴わずに簡単且つ迅速にリソースを向上させることが可能であり,その結果,輻輳発生の可能性を少なくすることができる。
【0020】
また,時間帯やイベントの発生により利用されるサービスの割合が異なるような場合には,そのトラヒックの状況により頻度の高いサービス側だけリソースを増加し,頻度の低いサービスについてはリソースを減らすことで最適なリソース分配が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図2はサービス終端部(図1の15−1〜15−n)の構成例である。図中,150はスイッチ部(図1の11)と接続され,装置間IF(図1の10)やリソース制御部(図1の14)に対するインタフェースを行うIF(インタフェース)部,151は当該サービス終端部における呼制御管理等を行うメイン処理部,152は外部(図1のリソース制御部14または外部制御装置6)からのリソース制御信号を受け取ってクロック生成部153の周波数制御を行う周波数制御部,153はクロック生成部,154はデュアルポートメモリまたはFIFO(First In First Out) メモリで構成したIF(インタフェース)用バッファ部であり,例えばサービス処理部156のサービスが回線交換呼のような固定レート(64Kbpsの音声サービス等)サービスであった場合には外部との通信は固定レートで行う必要があるので,サービス処理部156が可変周波数動作を行った場合の固定速度動作部分との速度差分吸収用である。155は動作周波数の変化に関係なく同一周期で動作する必要のあるタイミング(例えば,各種タイマや固定レートタイミング部分等)を管理する固定タイミング管理部であり,クロック生成部153からの固定クロックを入力して固定タイミングを発生する。156はユーザからのデータについてサービス処理を行って処理により得られたユーザデータをユーザに返送するサービス処理部,157はクロック生成部153の出力である可変クロックの周波数が規定値になったかを検出する周波数検出部である。
【0022】
リソース制御部(図1の14)からのリソース制御信号が図2のサービス終端部のIF部150へ入力すると,周波数制御部152とメイン処理部151に供給される。周波数制御部152はリソース制御信号を受け取ると周波数制御信号をクロック生成部153に供給する。この周波数制御信号の内容に応じてクロック生成部153はメイン処理部151及びサービス処理部156へ供給する可変クロックの周波数を増加または低減させ,IF用バッファ部154には固定クロック(音声を出力するサービスの場合には固定の64Kbpsに固定)と可変クロック(可変周波数で動作する回路用)が供給される。但し,クロック生成部153から固定タイミング管理部155に対しては予め設定された一定周波数の固定クロックの発生を続け,メイン処理部151とサービス処理部156に対して固定タイミングが供給され,それぞれの音声信号を処理する回路等の固定処理回路(固定レート処理やTimer 等)を駆動する。
【0023】
メイン処理部151は可変クロックにより周波数を変えて駆動されると共に,IF部150から入力されたリソース制御部(図1の14)から供給されたリソース制御信号によって同時接続チャネル数の増加,減少の制御を行う場合がある。メイン処理部151はIF部150を介して呼制御処理部(図1の13)との間で呼制御信号の送受信を行い,サービス処理部156に対して制御を行うと共にサービス処理部156からの制御信号を受け取って,ユーザへのサービス処理が実行される。また,メイン処理部151におけるリソース制御の結果は周波数制御部152に通知され,周波数制御部152からIF部150を介してリソース制御部(図1の14)に通知される。
【0024】
なお,呼処理制御部(図1の13)の内部構成は,図示省略するが移動網交換機(図1の4)からの呼制御信号を受け取って処理装置(プロセッサ),呼制御情報メモリを含む公知の構成により接続制御の処理を実行し,図2のサービス終端部と同様のクロック生成部を備え,リソース制御部(図1の14)からのリソース制御信号によりクロック生成部の周波数を制御する。
【0025】
図3はリソース増加時の動作シーケンスを示し,上記図1に示す呼制御処理部13,リソース制御部14(トラヒック情報収集解析部12)及びサービス終端部15(図1の15−1〜15−nの中の一つを表す)の相互の動作シーケンスである。
【0026】
最初にトラヒック情報収集解析部12で呼制御処理部13へのトラヒック情報を収集解析して,解析結果がリソース制御部14へ供給される。リソース制御部14ではこの解析結果を受け取ると(図3のS1),トラヒックの値が予め設定した輻輳状態を表す閾値を超過したか判別し(同S2),超過を検出するとリソース増加動作が起動される(同S3)。これにより呼制御処理部13には周波数変更指示が出力され,サービス終端部15には周波数変更指示が出力される。サービス終端部15ではこの指示により周波数変更の動作が開始される(図3のS4)。このサービス終端部15は上記図2に示され周波数制御部152がリソース制御部14からの指示により周波数変更が終了し(図3のS5),メイン処理部(図2の151)のリソース変更が実行され(図3のS6),更にサービス処理部(図2の156)のリソース変更が実行され(同S7),リソース変更を終了する(同S8)。これによりリソース制御部14に対してリソース変更終了を通知すると(同S8),リソース制御部14はサービス終端部15でのリソース変更完了を認識する(同S9)。なお,この時点では呼処理制御部では動作周波数の変更のみでありリソースの変更は行われない。
【0027】
リソース制御部14からサービス終端部15への指示と同時に呼制御処理部13に対して周波数変更指示が出されると,呼制御処理部13がその指示が受け取られて周波数変更が実行され(図3のS10),周波数変更を終了する(同S11)。その後,リソース制御部14から上記ステップS9のサービス終端部でのリソース変更完了の認識に基づいて呼制御処理部13に対してリソース変更指示が送られてくると,周波数変更(呼制御処理部における)が終了したか判別し(同S12),終了したことが分かるとリソース変更を実行し(同S13),リソース変更が終了すると(同S14),リソース制御部14にリソース変更の終了を通知すると,リソース制御部14ではリソース変更完了の処理を行う(同S15)。
【0028】
図4はリソース減少時の動作シーケンス例1を示す。リソース減少はトラヒック情報の収集と解析の結果としてリソースが過大であることが分かった場合に実行される。すなわち,トラヒック情報収集解析部(図1の12)の解析結果がリソース制御部14で受け取られると(図4のS1),解析結果により得られたトラヒック量が予め設定されたリソースを低減すべき閾値を超過(閾値より低下)したか判別し(同S2),超過したことが検出されるとリソース減少の動作が起動し(同S3),サービス終端部15に対して周波数低下の指示が出力される(同S4)と共に呼制御処理部13にも周波数変更の指示が出力される。
【0029】
呼制御処理部13ではまずリソース変更のみを行い(図4のS13,S14),この時点では動作周波数の変更は行わない。呼制御処理部13のリソース変更の処理では,例えば一つのサービス終端部が複数ブロックの並列構成となっているような場合(呼制御処理部によりサービス終端部の複数ブロックのそれぞれの呼制御処理を行っている場合),その時点での使用(獲得)総リソースが変更要求のリソース量以下であっても,呼のばらつき状況によっては,各々のブロックでは変更要求リソース量以上のリソースを使用している場合もある。その場合は該当ブロックに対しては一旦リソースを現状のリソース数とし新たなリソース獲得動作(呼の追加等)はしないようにしておき,使用リソースが解放された後にリソース量を要求された値に減少させる制御を行う。
【0030】
サービス終端部15はリソース制御部14からのリソース低下の指示を受けると現状リソース数を確認し(図4のS4),要求リソース以上のリソースを使用中か判別する(同S5)。この場合,現在動作中のリソース数がリソース制御部14から指示されたリソース量(低下された量)以上である場合,一定時間待って(図4のS6),使用リソースが要求されるリソース以下になるまで待ち,メイン処理部(図2の151)のリソース変更(同S7)とサービス処理部のリソース変更(同S8)を行う。上記したリソース増加時の動作シーケンス(図3)では周波数変更を先に行うが,リソース減少の場合はまず同時接続チャネル数や許容される各ブロックの処理能力(メイン処理部,サービス終端部のリソース)を減少させる。リソース変更の動作が完了すると,次に動作周波数の変更動作を行い(図4のS9,S10),完了した時点でリソース制御部14に対し完了を通知してサービス終端部15のリソース変更作業の完了となる。リソース制御部14は,サービス終端部15におけるリソース変更(減少)完了の通知を受け取ると,呼制御処理部13に対し周波数変更(減少)の指示を発行し,呼処理制御部13で周波数変更が実行され(図4のS15),周波数変更が終了すると(同S16),リソース制御部14に対して完了の通知を発行すると,これを受け取ったリソース制御部14はリソース変更完了の処理を行う。
【0031】
図4のリソース減少時の動作シーケンス例1では,サービス終端部において変更時の獲得リソース量(使用中のリソース量)が変更要求リソースを上回っていた場合に,ウェイト動作により対応しているが,ウェイト動作とせずに張替えにより対処するようにした例を図5にリソース減少時の動作シーケンス例2として示す。
【0032】
図5のリソース減少時の動作シーケンス例2の中で図4の動作シーケンスと相違する部分は,サービス終端部15でのステップS5における要求リソース以上のリソースが使用中かの判定をした時,要求リソース以上のリソースが使用中であると判定された場合に,張替え動作を行い(図5のS6),これに対応して呼制御処理部13に対して張替え依頼等の相互の制御動作によりリソース分配変更認識(図5のS15)が行われることである。
【0033】
図6はサービス終端部からの張替えの説明図である。図6のA.はブロック構成を示し,上記図1に示す構成中の張替えに関係する一部のブロックである装置間IF10,SW部11,呼制御処理部13及びサービス終端部15(図1の15−1〜15−nの中の一つであるリソース減少の対象)だけ示す。この動作説明の例では,サービス終端部15が4つのブロック15a〜15dで構成され,各ブロックはそれぞれ最大で16チャネル分の処理能力があるものとし,現在の各ブロックにおいて使用中のチャネルとしてブロック15aが10チャネル,ブロック15bが3チャネル,15cが2チャネル,15dが1チャネルであり,合計16チャネルであるものとする。これらのサービス終端部15の各ブロック15a〜15dと呼制御処理部13及び装置間IF10(移動網交換機を介して移動電話機へ接続)との接続は呼制御処理部により制御されるSW部11のスイッチングにより切替えられ,各ブロックの中の現在使用中の各チャネルはSW部11を通る経路により形成されている。
【0034】
この状態で,図5の動作シーケンスの例2のステップS1におけるトラヒック情報収集解析部の解析結果を得て,その解析結果のリソース量がリソース減少の閾値と比較し(図5のS2),閾値を越えた場合(低下した場合),リソース減少が起動する。これにより,リソース(処理量)を半分にするよう指示があった場合,図6に示すサービス終端部15の処理能力を「16チャネル」から「8チャネル」に減少させる必要がある。この時,現状リソース数を確認し(図5のS4),要求リソース以上のリソースが使用中かの判定(同S5)において,図6のサービス終端部15の中のブロック15a〜15dの中のブロック15aは「10チャネル」が使用中であるため,このブロック15aの処理量を「8チャネル」に減少させる必要がある。図5のシーケンスでは,ブロック15aの使用中の10チャネルの中の2チャネルを他のブロックに分配して移す。例えば,ブロック15b,15cに1チャネルずつ張替える。
【0035】
図6のB.に張替えの詳細な動作シーケンスであり,サービス終端部15と呼制御処理部13の相互の動作シーケンスを示す。図5のサービス終端部15におけるステップS5において要求リソース以上のリソースが使用中であると判定されると,図6においてサービス終端部15から呼制御処理部13に対して,張替え依頼(張替え対象のブロックや,張替え内容等の情報を含む)が発行される(図6のS60)。呼制御処理部13ではこの張替え依頼を認識すると(図6のS150),張替えの指示をサービス終端部15に対して発行する(同S151)。これを受け取ったサービス終端部15は張替えを実行し(図6のS61),張替えが終了すると終了通知を呼制御処理部13に通知する(同S62)。この通知を受けた呼制御処理部13は,張替え終了を認識しサービス終端部15に終了を通知し(図6のS152),これを受け取ったサービス終端部15は張替え終了を確認して,次のステップ(図5のS7)によるメイン処理部リソース変更に移行する。
【0036】
図5のリソース減少時の動作シーケンス例2では,要求リソース以上のリソースが使用中であると判別された時に張替えが行われる点が上記動作シーケンス例1と相違することを除いて,他の動作シーケンスは上記図4に示す動作シーケンス例1と同じであり,説明を省略する。
【0037】
図7はリソース減少時の動作シーケンス例3である。この動作シーケンス例3では,リソース制御部14からサービス終端部15に対してリソースを減少させる指示が発行された時,現状リソース数を確認した後(図7のS4),要求リソース以上のリソースを使用中か判別した時(同S5),ノーと判断された場合はメイン処理部リソース変更(同S9)に移行するが,イエス(要求リソース以上のリソースを使用中)の場合は,ウェイト状態に移行し(同S6),繰り返し回数が予め決められた回数を越えたか(または予め決められた時間が経過したか)判別する(同S7)。決められた回数を越えない(決められた時間が経過しない)場合は,ステップS5に戻り,同様の動作が繰り返され,決められた回数を越えた(決められた時間が経過した)場合は,張替え動作が実行される(図7のS8)。この張替え動作は上記図5,図6で説明したのと同じであり,説明を省略する。この張替え動作以後は,上記図5と同様の動作シーケンスが実行される。
【0038】
このように図7に示すリソース減少時の動作シーケンス例3では,一定時間のウェイトと張替え動作を組み合わせたものであり,一定時間のウェイト中に要求リソース以上のリソースの使用が無くなれば張替える必要性がなくなる可能性があり呼制御処理の負担を軽減する可能性がある。
【0039】
(付記1) 移動電話機と接続する移動網交換機と接続され呼制御処理部と各種サービスをユーザに提供する複数のサービス終端部を備えたマルチメディアの信号処理装置において,前記移動網交換機と前記呼制御処理部との間にトラヒック情報収集解析部と,前記トラヒック情報収集解析部による解析結果を受け取って前記呼制御処理部と前記サービス終端部のリソース制御の指令を発行するリソース制御部を設け,前記呼制御処理部と前記サービス終端部は前記リソース制御部からの指令に従って,それぞれのリソース量を増減することを特徴とする移動網交換機に接続されたマルチメディアの信号処理装置。
【0040】
(付記2) 付記1において,前記リソース制御部から前記呼制御処理部及び前記各サービス終端部に発行されるリソース制御信号を受けると,それぞれを駆動するクロック信号の周波数を増減するか,同時処理可能なチャネル数を増減するか,の一方または両方のリソース制御を行い,それに伴いメモリ量等のハード量の増減を行うことを特徴とする移動網交換機に接続されたマルチメディアの信号処理装置。
【0041】
(付記3) 付記1において,前記サービス終端部は,前記リソース制御信号を受け取る周波数制御部と,前記周波数制御部からの制御信号により当該サービス終端部内の各部を駆動するクロックの周波数を可変に制御するクロック生成部を備えること特徴とするマルチメディアの信号処理装置。
【0042】
(付記4) 付記1乃至3の何れかにおいて,前記マルチメディアの信号処理装置の外部から前記リソース制御部に対してリソース制御の指示を発行する外部制御装置を備えたことを特徴とする移動網交換機に接続されたマルチメディアの信号処理装置。
【0043】
(付記5) 移動電話機と接続する移動網交換機と接続され呼制御処理部と各種サービスをユーザに提供する複数のサービス終端部を備えたマルチメディアの信号処理装置の制御方法において,前記移動網交換機と前記呼制御処理部との間のトラヒック情報を収集して解析し,前記解析結果に応じて前記呼制御処理部及び各サービス終端部に対してリソースの増加または減少の何れかを指示するリソース制御信号を発行し,前記リソース制御信号を受けた前記呼制御処理部及び前記サービス終端部は,受け取ったリソース制御信号に従ってそれぞれの装置を駆動するクロック信号の周波数を増加または減少させることを特徴とするマルチメディアの信号処理装置の制御方法。
【0044】
(付記6) 付記5において,前記リソース制御信号を受けた前記呼制御処理部及び前記サービス終端部は,受け取ったリソース制御信号に従ってそれぞれの処理を行う装置のハード量を増加または減少させることを特徴とするマルチメディアの信号処理装置の制御方法。
【0045】
(付記7) 付記5において,前記移動網交換機と前記呼制御処理部との間のトラヒック情報を収集して解析によりリソース減少の指示が前記サービス終端部に発行されると,前記サービス終端部は,現在使用中のリソース量が前記リソース制御部から指示されたリソースの量より少ないか判別し,使用中のリソース量の方が多いと判別されると,一定時間だけ待機してリソース量を減少させることを特徴とするマルチメディアの信号処理装置の制御方法。
【0046】
(付記8) 付記7において,前記移動網交換機と前記呼制御処理部との間のトラヒック情報を収集して解析によりリソース減少の指示が前記サービス終端部に発行されると,前記サービス終端部が複数ブロックで構成され,現在使用中のリソース量が一部ブロックだけ過大である場合に,前記リソース減少の指示により減少させる時,前記過大なリソース量のブロックに対して,残りのブロックのリソースへの張替えを行うことを特徴とするマルチメディアの信号処理装置の制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の原理構成を示す図である。
【図2】サービス終端部の構成例を示す図である。
【図3】リソース増加時の動作シーケンスを示す図である。
【図4】リソース減少時の動作シーケンス例1を示す図である。
【図5】リソース減少時の動作シーケンス例2を示す図である。
【図6】サービス終端部からの張替えの説明図である。
【図7】リソース減少時の動作シーケンス例3を示す図である。
【図8】従来例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 マルチメディアの信号処理装置
10 装置間インタフェース(IF)
11 スイッチ(SW)部
12 トラヒック情報収集解析部
13 呼制御処理部
14 リソース制御部
15−1〜15−n サービス終端部
2 移動電話機
3 基地局
4 移動網交換機
5 コアネットワーク
6 外部制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動電話機と接続する移動網交換機と接続され呼制御処理部と各種サービスをユーザに提供する複数のサービス終端部を備えたマルチメディアの信号処理装置において,
前記移動網交換機と前記呼制御処理部との間にトラヒック情報収集解析部と,前記トラヒック情報収集解析部による解析結果を受け取って前記呼制御処理部と前記サービス終端部のリソース制御の指令を発行するリソース制御部を設け,
前記呼制御処理部及び前記サービス終端部は前記リソース制御部からの指令に従って,それぞれのリソース量を増減することを特徴とする移動網交換機に接続されたマルチメディアの信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記リソース制御部から前記呼制御処理部及び前記各サービス終端部に発行されるリソース制御信号を受けると,それぞれを駆動するクロック信号の周波数を増減するか,同時処理可能なチャネル数を増減するか,の一方または両方のリソース制御を行い,それに伴いメモリ量等のハード量の増減を行うことを特徴とする移動網交換機に接続されたマルチメディアの信号処理装置。
【請求項3】
請求項1において,
前記サービス終端部は,前記リソース制御信号を受け取る周波数制御部と,前記周波数制御部からの制御信号により当該サービス終端部内の各部を駆動するクロックの周波数を可変に制御するクロック生成部を備えること特徴とするマルチメディアの信号処理装置。
【請求項4】
移動電話機と接続する移動網交換機と接続され呼制御処理部と各種サービスをユーザに提供する複数のサービス終端部を備えたマルチメディアの信号処理装置の制御方法において,
前記移動網交換機と前記呼制御処理部との間のトラヒック情報を収集して解析し,
前記解析結果に応じて前記呼制御処理部及び各サービス終端部に対してリソースの増加または減少の何れかを指示するリソース制御信号を発行し,
前記リソース制御信号を受けた前記呼制御処理部及び前記サービス終端部は,受け取ったリソース制御信号に従ってそれぞれの装置を駆動するクロック信号の周波数を増加または減少させることを特徴とするマルチメディアの信号処理装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4において,
前記リソース制御信号を受けた前記呼制御処理部及び前記サービス終端部は,受け取ったリソース制御信号に従ってそれぞれの処理を行う装置のハード量を増加または減少させることを特徴とするマルチメディアの信号処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−48336(P2008−48336A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224292(P2006−224292)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】