説明

マルチ入出力波長選択スイッチ装置

【課題】マルチ入出力波長選択スイッチ装置において、波長選択スイッチやMEMS等の可動部品を用いることなく、小型で実装面積を小さくし、伝送信頼性を向上させること。
【解決手段】マルチ入出力波長選択スイッチ装置1は、N×M光クロスコネクトスイッチ10と波長選択器20及びコントローラ40によって構成される。N×M光クロスコネクトスイッチ10は夫々の入力方路Rin1〜RinNに入力されたNチャンネル分のWDM信号をM個のWDM信号とする。波長選択器20はM個のWDM信号の夫々について波長毎に選択操作を行って出力方路Rout1〜RoutMより出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光通信分野における光ネットワーク網の分岐点に相当する光ノードに設けられる複数の入出力方路数を有するマルチ入出力波長選択スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日の高度情報通信社会を支える高速大容量光ネットワークには、波長多重光通信技術が利用されている。光ネットワーク網の分岐点に相当する光ノードでは、再構成可能なアド、ドロップ機能を有するROADM(Reconfigurable Optical Add Drop Multiplexer)装置の導入が進められている。ROADM装置を実現するため、任意の波長を任意の方向に切り換える波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch、WSSともいう)が注目されている。現在の波長選択スイッチとしては、入力方路数Nが1、出力方路数Mが2以上のものが利用されているが、今後の大容量ネットワークを実現するためにはノード処理能力の向上が求められ、入力方路数及び出力方路数がいずれも複数のマルチ入出力波長選択スイッチ装置が求められている。
【0003】
従来の方法では、特許文献1に示すように入力方路に接続されるN個の1×M波長選択スイッチと、その各出力を夫々入力とするM個のN×1波長選択スイッチとを有するマルチ入出力波長選択スイッチ装置を実現することができる。図1は入力方路数Nが4、入力方路数Mが6の場合のマルチ入出力波長選択スイッチ装置の一例を示す図である。本図において、マルチ入出力波長選択スイッチ装置は入力方路Rin1〜Rin4に接続された4個の1×6の波長選択スイッチ(WSS)110−1〜110−4を有している。各波長選択スイッチ110−1〜110−4の出力は6個の4×1の波長選択スイッチ120−1〜120−6に出力され、その選択出力が出力方路Rout1〜Rout6より出力される。これによってマルチ入出力波長選択スイッチが実現できる。
【0004】
しかしながら波長選択スイッチは複雑な構造であるため、光伝送実装ボードに搭載が困難なほど、装置面積が大きくなり、装置の価格が高額になる。図の構成では波長選択スイッチを(N+M)個使用するので、故障率が高く、伝送信頼度が低いという欠点がある。
【0005】
そこで、少ない部品点数で小型のマルチ入出力波長選択スイッチを実現するため、特許文献1ではMEMS(Micro Electric Mechanical System)微小ミラーの傾斜を利用した複数の2×N波長選択スイッチを利用することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−147804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこの方式では入力方路数Nと出力方路数Mが等しい場合に制限されている。又この場合も波長選択スイッチを2N個使用するので、1つの波長選択スイッチを用いたときに比べて故障率が2N倍になり、伝送信頼度が低下する。又MEMSなどのミラーを機械的に駆動制御するため、本質的に振動や衝撃などの外乱に弱いという欠点があった。
【0008】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであって、従来の波長選択スイッチやMEMS等の可動部品を用いることなく、小型で実装面積を小さくし、伝送信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明のマルチ入出力波長選択スイッチ装置は、N個の入力方路(Nは2以上の自然数)に夫々波長λ1〜λLの第1〜第Nチャンネルの波長多重光信号が加えられ、任意のチャンネルの波長多重光信号をM個の出力方路(Mは2以上の自然数)により出力するマルチ入出力波長選択スイッチ装置であって、N個の入力方路に加えられたNチャンネルのWDM信号のうち、任意のWDM光をM個出力する光クロスコネクトスイッチと、前記光クロスコネクトスイッチのM個の出力を入力とし、入力された各WDM信号について任意の波長の光信号を選択し、M個のWDM信号として出力する波長選択器と、を具備し、前記光クロスコネクトスイッチは、前記入力方路に加えられたWDM信号をM個の出力に分岐するN個の分岐カップラと、前記各分岐カップラの全ての出力が夫々入力として与えられ、入力の1つを選択するM個のN×1光スイッチと、を有するものである。
【0010】
この課題を解決するために、本発明のマルチ入出力波長選択スイッチ装置は、N個の入力方路(Nは2以上の自然数)に夫々波長λ1〜λLの第1〜第Nチャンネルの波長多重光信号が加えられ、任意のチャンネルの波長多重光信号をM個の出力方路(Mは2以上の自然数)により出力するマルチ入出力波長選択スイッチ装置であって、N個の入力方路に加えられたNチャンネルのWDM信号のうち、任意のWDM光をM個出力する光クロスコネクトスイッチと、前記光クロスコネクトスイッチのM個の出力を入力とし、入力された各WDM信号について任意の波長の光信号を選択し、M個のWDM信号として出力する波長選択器と、を具備し、前記光クロスコネクトスイッチは、前記入力方路に加えられたNチャンネルのWDM信号を夫々1つ選択するN個の1×M光スイッチと、前記各1×M光スイッチの全ての出力が夫々入力として与えられ、入力の1つを選択するM個のN×1光スイッチと、を有するものである。
【0011】
ここで前記波長選択器は、y軸にそって配列され、多数の波長の光から成る第1〜第M個のWDM信号光をその波長に応じて空間的に分散させる第1の分散素子と、前記第1の分散素子によって分散した各チャンネルのWDM光を平行光とする第1の集光素子と、波長に応じてx軸方向に配列され、更にM個のWDM光が夫々y軸の異なった位置に配列されてxy平面に展開された入射光を受光する位置に配置され、xy平面に格子状に配列された多数の画素を有し、2次元の各画素の透過特性を切換えることにより任意のWDM信号について任意の波長帯の光を選択する波長選択素子と、前記波長選択素子のxy方向に配列された電極を駆動することによってx軸及びy軸方向の所定の位置の画素の光透過特性を制御する波長選択素子駆動部と、前記波長選択素子を透過した各波長の光を集光する第2の集光素子と、前記第2の集光素子によって集光された分散光を合成する第2の波長分散素子と、を具備するようにしてもよい。
【0012】
ここで前記波長選択素子はLCOS素子としてもよい。
【0013】
ここで前記波長選択器は波長ブロッカとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上詳細に説明したように本発明によれば、波長選択スイッチを内を全体として構成しており、複数の波長選択スイッチを用いることはないので、小型で実装面積が小さくなり、信頼性を向上させることができる。又MEMSの可動部品を用いることがなく、振動や衝撃等に外乱の影響を受けにくいマルチ入出力波長選択スイッチ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は入力方路数4、出力方路数6を有する従来の波長選択スイッチ装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の基本構成によるマルチ入出力波長選択スイッチの一例を示すブロック図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施の形態によるマルチ入出力波長選択スイッチの一例を示すブロック図である。
【図4】図4(a)は本発明の第1の実施の形態による波長選択器のx軸方向から見た光学的な配置、図4(b)はそのy軸方向からの光学的な配置を示す図である。
【図5】図5は本実施の形態による波長選択器に用いられるLCOS素子を示す図である。
【図6A】図6Aは本実施の形態に用いられるLCOS素子の変調方式の一例を示す図である。
【図6B】図6Bは本実施の形態に用いられるLCOS素子の変調方式の他の例を示す図である。
【図7】図7はLCOS素子の駆動状態を示す図である。
【図8】図8はLCOS素子の駆動状態に対応するフィルタの選択特性を示す図である。
【図9】図9は本発明の第2の実施の形態によるマルチ入出力波長選択スイッチの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の基本構成)
本発明の基本構成によるマルチ入出力波長選択スイッチ装置の構成図を示す。このマルチ入出力波長選択スイッチ装置1はN個(Nは2以上の自然数)の入力方路Rin1〜RinNと、M個(Mは2以上の自然数)の出力方路Rout1〜RoutMを有している。このマルチ入出力波長選択スイッチ装置1は、N×M光クロスコネクトスイッチ10と波長選択器20及びコントローラ40によって構成される。ここで入力方路Rin1〜RinNに入力される光信号は、夫々波長λ1〜λL(Lは2以上の自然数)の光信号が多重化された波長多重光信号(以下、WDM信号という)とする。このNチャンネルのWDM信号は光ファイバを介して又は直接N×M光クロスコネクトスイッチ10に入力される。光クロスコネクトスイッチ10は、コントローラ40からの制御によりNチャンネル分の入力の任意のWDM信号を任意のM個のWDM信号として出力することができる光スイッチである。N×M光クロスコネクトスイッチ10はM個のWDM信号を波長選択器20に与える。
【0017】
波長選択器20はM個の各WDM信号入力に対して夫々をλ1〜λLまでの波長毎に分離し、各波長の光に対してフィルタ操作を行い、更に合成してM個のWDM信号として出力方路Rout1〜RoutMより出力するものである。このフィルタ操作は典型的には特定の波長の光をブロックしたり、特定の波長の光を透過させるものである。又これに加えて透過させる波長の光レベルを等しいレベルに保つようなイコライザ機能を設けるようにしてもよい。
【0018】
次にコントローラ40は光クロスコネクトスイッチ10のスイッチング状態を制御する。又コントローラ40は波長選択器20の各WDM信号の各波長の信号光のレベルを波長毎に制御するものである。
【0019】
本発明によるマルチ入出力波長選択スイッチ装置では光クロスコネクトスイッチ10と波長選択器20を用いることによって各入力方路Rin1〜RinNに入力されたWDM信号を波長毎に選択操作を行って任意の出力方路Rout1〜RoutMのいずれか出力方路に出力することができる。
【0020】
(第1の実施の形態)
次に本発明のより詳細な実施の形態について説明する。図3は本発明の第1の実施の形態によるマルチ入出力波長選択スイッチ装置の構成図である。本実施の形態においては光クロスコネクトスイッチ10Aは、N個の分岐カップラ11−1〜11−NとM個のN×1光スイッチ(OSWと表記する)12−1〜12−Mによって構成される。分岐カップラ11−1は入力方路Rin1より入力された第1チャンネルのWDM信号をM個に分岐し、分岐した第1チャンネルの各出力をM個の光スイッチ12−1〜12−Mに夫々入力するものである。分岐カップラ11−2も同様にして入力方路Rin2に加えられた第2チャンネルのWDM信号をM個に分岐して各出力を夫々光スイッチ12−1〜12−Mに出力するものである。その他の分岐カップラ11−3〜11−Nについても同様である。光スイッチ12−1〜12−Mはコントローラ40Aからの出力に基づいて夫々入力されているNチャンネル分のWDM信号入力信号のうちいずれか1つのWDM信号を選択して波長選択器20Aに出力するものである。これによって入力方路に加えられたNチャンネルのWDM信号のうち任意のM個のWDM信号を波長選択器20Aの入力として与えることができる。この実施の形態では同一チャンネルの複数のWDM信号を波長選択器20Aに入力し、複数の出力方路より出力することができるマルチキャスト機能が実現できる。ここで光クロスコネクトスイッチ10Aを小型化するため、N個の分岐カップラ11−1〜11−Nと、M個の光スイッチ12−1〜12−Mを同一の平面光導波路に形成してもよい。
【0021】
次に本実施の形態における波長選択器20Aの詳細な構成について説明する。図4において入射光の番号を第1〜第Mとすると、波長選択器20Aへの入射光はM個のWDM信号であり、夫々コリメートレンズ21−1〜21−Mに入射され、平行な光ビームとしてレンズ22に与えられる。レンズ22は各WDM光をy軸方向に集束して一点に集光するもので、集光位置には第1の波長分散素子23が設けられる。第1の波長分散素子23は、回折格子やプリズム、もしくは回折格子とプリズムの組み合わせで実現することができる。波長分散素子23は図4(b)に示すように光の波長毎にxz平面上で異なった方向に光を出射するものである。この光はいずれもレンズ24に入射される。レンズ24はxy平面上で分散した光をz軸方向に平行に集光する第1の集光素子である。又レンズ24の光軸に垂直に波長選択素子25が配置される。波長選択素子25は入射光を部分的に透過させるものであり、詳細については後述する。波長選択素子25を透過した光はレンズ26に入射される。レンズ24、第1の波長分散素子23とレンズ26、第2の波長分散素子27は波長選択素子25の中心のxy面に対して面対称である。レンズ26はxz平面上の平行な光を集光する第2の集光素子であり、波長分散素子27は異なった波長成分の異なった方向からの光を合成して出射するものである。波長分散素子27によって合成された光はレンズ28によってz軸に平行でy軸方向に分離したM個のWDM光に変換される。各WDM光はコリメートレンズ29−1〜29−Mを介して出力方路Rout1〜RoutMより出力される。
【0022】
次に実施の形態に用いられる波長選択素子25について説明する。波長選択素子25は図5に示すようにマトリックス状に配置された2次元のP×Qドットの画素構造の素子である。又波長選択素子25にはコントローラ40A内の設定部41がドライバ42を介して接続されている。設定部41はxz平面の光を透過する画素を選択チャンネルの選択波長に合わせて決定するものであり、ドライバ42は所定の位置の画素の光透過特性を制御する波長選択素子の駆動部である。
【0023】
ここで第1〜第MのWDM光を夫々y軸方向に分散させると共に、波長によってx軸方向に分散させ、M本の平行な帯状の光として波長選択素子25に入射したとき、第1〜第MのWDM光の入射領域R1〜RMは図5に示す長方形状の領域であるとする。即ち入射領域R1〜RMに加わる光は夫々第1〜第MのWDM光を波長選択素子25への入力番号i(i=1〜M)と波長帯λj(j=1〜L)に応じてxy平面に展開した光である。波長選択器20Aでは、透過させる画素を選択することによって、任意の波長の光を選択することができる。
【0024】
波長選択素子25はLCOS(Liquid Crystal On Silicon)の液晶素子を用いて実現することができる。LCOS素子25Aは各画素の背面に液晶変調ドライバ42を内蔵しているため、画素数を多くすることができ、例えば1000×1000の多数の格子状の画素から構成することができる。LCOS素子25Aでは各チャンネル毎及び波長毎に異なる位置に各光ビームが入射するので、その位置の画素を透過状態とすればその光信号を選択することができる。
【0025】
ここでLCOS素子25Aにおける変調方式の1つである位相変調方式について説明する。図6AはLCOS素子を示す概略図であり、光が入射する面からz軸に沿って透明電極31,液晶32及び透明電極33を積層して構成されている。LCOS素子25Aは1つのWDM信号の1つの波長帯を複数の画素で構成するため、複数画素について屈折率の凹凸を形成し、回折現象を発現することができる。従って透明電極31と透明電極33との間に電圧を印加することによって各周波数成分の回折角を独立に制御し、特定波長の入力光をz軸方向に直進させてそのまま透過させたり、他の波長成分の光を不要な光として回折させ、z軸方向とは異なった方向に光を回折させることができる。このため各画素に印加する電圧を制御することによって、必要な画素を回折させずに透過状態とすることができる。
【0026】
次にLCOS素子の他の変調方式である強度変調方式について説明する。図6Bは強度変調方式による波長選択方法を示す図であり、入射光の入射する面には偏光子34を配置する。偏光子34は入射光を図中○で示す特定の偏光状態にしてLCOS素子25Aに入射する。この場合にもLCOS素子25Aは透明電極31,液晶32及び透明電極33によって構成される。LCOS素子25Aを透過した出射光光軸上には偏光子35を配置する。偏光子35は入射光を図中○で示す特定の偏光状態の光のみを出射するものである。LCOS素子に光を入射すると、電圧の印加状態によって電極間の液晶の複屈折率差を制御することができる。従って印加する電圧の偏光状態を独立に制御することにより透過光の偏光状態を異ならせることができる。ここで液晶分子の配向成分によって電圧を制御したときに偏光面が回転するか保持されるかが決定される。例えば電圧を印加しない場合に偏光面が保持されるとすると、図中○状態で示す光がそのまま透過することとなる。一方電圧を印加すれば偏光面が回転して透過するため、透過光は偏光子35によって遮蔽される。従って画素に加える電圧を制御して入射光を選択することができる。ここで任意数の画素を透過状態とすれば任意の複数のWDM信号光の、任意の複数の波長帯を選択することができる。
【0027】
第1の実施の形態では夫々がλ1〜λLのLの波長帯を有するM個のWDM信号に対して例えば3M×3Lの画素を有するLCOS素子25Aを用いるものとする。そうすれば特定のWDM信号の特定波長、例えば図7(a)に示すようにi番目の入力のWDM光のλjの波長帯の信号を選択する場合には、3i〜3i+2,3j〜3j+2の9ドットの画素を正透過状態とすることによってその入力番号のその波長を選択することができる。図7では透過状態とする画素を黒く示している。ここでLCOS素子25Aの透過状態とした画素に光が入射すると、入射光はそのまま透過されて出力側に得られる。又選択されていない画素に入射した波長の光は回折又は遮蔽されるため、出力されない。このように特定の波長帯に対応する9画素を選択する場合には、図8(a)に示すようにフィルタ形状として信号スペクトル成分を包含しつつ隣接波長帯に影響のないフラットトップ型のスペクトル波形を得ることができる。
【0028】
更にLCOS素子25Aにおいてオンオフさせる画素数を制御することによってフィルタの形状も任意に設定することができる。即ち図7(a)においてその入力の特定波長帯の3×3の画素のうち一つの画素を選択すれば、低いレベルとすることができる。又LCOS素子25Aのi番目の入力の波長λj帯を選択する9画素のうち一部を選択すれば任意の波長とすることができる。こうすれば光がLCOS素子25Aに入射すると、透過領域の幅に対応したパスバンドの幅が得られる。例えば図7(b)に示すようにiチャンネルの波長λj帯を選択する9画素のうち中央の3画素を透過状態とすれば、図8(b)に示すようにλj帯の中心部分の波長を選択する幅が狭い選択特性が得られる。
【0029】
又図7(c)に示すようにこれに隣接する中央の画素も同時に透過状態とすれば、図8(c)に示すようにパスバンドの幅を少し広くし、ガウシアン状に近い選択特性とすることができる。
【0030】
更に図7(d)に示すように、波長λjの9画素に加えて隣接する画素の一部も透過状態とすれば、図8(d)に示すようにパスバンドの幅をより広くすることができる。
【0031】
本実施の形態ではN×M光クロスコネクトスイッチ10AをN個の分岐カップラと、M個のN×1光スイッチから構成している。これらはいずれも波長選択スイッチと比べて故障率が極めて低い単機能部品であり、信頼性を向上させることができる。又いずれも小型な部品であり実装面積を少なくすることができるという効果が得られる。
【0032】
又本実施の形態では波長選択器20AとしてLCOS素子を波長選択素子として用いている。このように波長選択器を構成することによって可動部品を用いる必要がないため、振動や衝撃等の外乱の影響を波長選択スイッチ装置を実現することができる。
【0033】
又各LCOS素子25Aの画素は印加する電圧レベルを制御することによって透過率を連続的に変化させることができる。従って電圧を印加する画素とそのレベルを制御することによって種々のフィルタ特性を得ることができる。又波長選択器20Aの各WDM信号出力について波長毎にパワーモニタを行い、透過させるべき波長の光についてはそのレベルを一定とするように帰還制御を行うことにより、イコライジングを実現することができる。
【0034】
尚本実施の形態ではWDM信号の1つのチャンネルの各波長帯について3×3画素を対応させるようにしているが、更に多数の画素を対応させたり、夫々の画素について電圧レベルを制御すれば、より精密なフィルタ特性の制御が可能となる。
【0035】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態では光クロスコネクトスイッチ10Bとして、分岐カップラに代えてN個の1×M光スイッチ(OSW)13−1〜13−Nを用い、その出力をM個のN×1光スイッチ12−1〜12−Mに加えるように構成したものである。本実施の形態では分岐カップラを用いたものに比べて分岐損を回避することができ、効率を向上させることができる。こうすれば入力方路Rin1〜RinNに加わったWDM信号は光スイッチ12−1〜12−Mのいずれからも出力することができ、波長選択器20Bに加えることができる。波長選択器20Bの構成については前述した第1の実施の形態の波長選択器20Aと同様である。又コントローラ40Bは1×M光スイッチ13−1〜13−Nと、N×1光スイッチ12−1〜12−Mのスイッチングを制御すると共に、波長選択器10Aのフィルタタリングの制御を行うものである。この場合もN+M個の光スイッチから構成されるため、故障率が低く小型で実装面積が小さくなり、伝送信頼性を向上させることができる。
【0036】
尚第1,第2の実施の形態では波長選択器としてLCOSによる波長選択素子を用いているが、WDM信号の任意の波長の信号を透過したりブロックすることができる波長ブロッカをM個用いて波長選択器を構成することもできる。又この場合に各波長の信号レベルをパワーモニタによって検出し、出力を制御することによって通過させる帯域の波長のレベルを揃えるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は光ネットワークの分岐点に設けられる光ノードの波長選択装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 マルチ入出力波長選択スイッチ装置
10,10A,10B N×M光クロスコネクトスイッチ
11−1〜11−N 分岐カップラ
12−1〜12−M N×1光スイッチ
13−1〜13−N 1×M光スイッチ
20,20A,20B 波長選択器
21−1〜21−N,29−1〜29−N コリメートレンズ
22,24,26,28 レンズ
23,27 波長分散素子
25 波長選択素子
25A LCOS素子
31,33 透明電極
32 液晶
34,25 偏光子
40,40A,40B コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の入力方路(Nは2以上の自然数)に夫々波長λ1〜λLの第1〜第Nチャンネルの波長多重光信号が加えられ、任意のチャンネルの波長多重光信号をM個の出力方路(Mは2以上の自然数)により出力するマルチ入出力波長選択スイッチ装置であって、
N個の入力方路に加えられたNチャンネルのWDM信号のうち、任意のWDM光をM個出力する光クロスコネクトスイッチと、
前記光クロスコネクトスイッチのM個の出力を入力とし、入力された各WDM信号について任意の波長の光信号を選択し、M個のWDM信号として出力する波長選択器と、を具備し、
前記光クロスコネクトスイッチは、
前記入力方路に加えられたWDM信号をM個の出力に分岐するN個の分岐カップラと、
前記各分岐カップラの全ての出力が夫々入力として与えられ、入力の1つを選択するM個のN×1光スイッチと、を有するマルチ入出力波長選択スイッチ装置。
【請求項2】
N個の入力方路(Nは2以上の自然数)に夫々波長λ1〜λLの第1〜第Nチャンネルの波長多重光信号が加えられ、任意のチャンネルの波長多重光信号をM個の出力方路(Mは2以上の自然数)により出力するマルチ入出力波長選択スイッチ装置であって、
N個の入力方路に加えられたNチャンネルのWDM信号のうち、任意のWDM光をM個出力する光クロスコネクトスイッチと、
前記光クロスコネクトスイッチのM個の出力を入力とし、入力された各WDM信号について任意の波長の光信号を選択し、M個のWDM信号として出力する波長選択器と、を具備し、
前記光クロスコネクトスイッチは、
前記入力方路に加えられたNチャンネルのWDM信号を夫々1つ選択するN個の1×M光スイッチと、
前記各1×M光スイッチの全ての出力が夫々入力として与えられ、入力の1つを選択するM個のN×1光スイッチと、を有するマルチ入出力波長選択スイッチ装置。
【請求項3】
前記波長選択器は、
y軸にそって配列され、多数の波長の光から成る第1〜第M個のWDM信号光をその波長に応じて空間的に分散させる第1の分散素子と、
前記第1の分散素子によって分散した各チャンネルのWDM光を平行光とする第1の集光素子と、
波長に応じてx軸方向に配列され、更にM個のWDM光が夫々y軸の異なった位置に配列されてxy平面に展開された入射光を受光する位置に配置され、xy平面に格子状に配列された多数の画素を有し、2次元の各画素の透過特性を切換えることにより任意のWDM信号について任意の波長帯の光を選択する波長選択素子と、
前記波長選択素子のxy方向に配列された電極を駆動することによってx軸及びy軸方向の所定の位置の画素の光透過特性を制御する波長選択素子駆動部と、
前記波長選択素子を透過した各波長の光を集光する第2の集光素子と、
前記第2の集光素子によって集光された分散光を合成する第2の波長分散素子と、を具備する請求項1又は2記載のマルチ入出力波長選択スイッチ装置。
【請求項4】
前記波長選択素子はLCOS素子である請求項3記載のマルチ入出力波長選択スイッチ装置。
【請求項5】
前記波長選択器は波長ブロッカである請求項1又は2記載のマルチ入出力波長選択スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−10005(P2012−10005A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142646(P2010−142646)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(591102693)サンテック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】