説明

マンガンベースの有機金属錯体、医薬組成物及び食物製品

本発明は、化合物及び、特に医薬品及び食品産業におけるその使用に関する。本発明は、Mn−SOD状の活性を有する錯体、並びに癌及び炎症状態などの酸化ストレスに関連する種々の疾病を、前記化合物を投与することによって処置する方法を開示する。本発明は更に、より詳細には種々の疾病又は障害を処置するのに有用な、特に酸化ストレスに関する疾病の予防又は処置に有用な、前記化合物を含む医薬組成物又は食物製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及び、特に医薬品及び食品産業におけるその使用に関する。本発明は、Mn−SOD様の活性を有する錯体、並びに癌及び炎症状態などの酸化ストレスに関連する種々の疾病を、前記化合物を投与することによって処置する方法を開示する。本発明は更に、より詳細には種々の疾病又は障害を処置するのに有用な、特に酸化ストレスに関する疾病の予防又は処置に有用な、前記化合物を含む医薬組成物又は食物製品に関する。
【0002】
発明の背景
広く認識されていないマンガンの一つの主要な特徴は、人間の健康を維持する上で不可欠な要素としての、その役割である。一日あたりの推奨食事摂取レベルは、米国規制当局により、良好な健康状態の維持を確保することを目指して確立された。マンガンの正確な役割は十分には理解されていないが、金属酵素に関する複雑な細胞反応が、その役割を説明する潜在的な機構として認められている。ヒトはよく発達した恒常性維持機構を有しており、それによりマンガンレベルが所望の範囲を保つように調節される。体内のマンガンの過剰又は欠乏により生じる状態に対する医学研究が、多数の研究室で行われている。
【0003】
健康専門家及び栄養学者においては、マンガンがヒトと動物の健康と安寧を確保するために不可欠であるということは一般的な見解である。ヒトの体はマンガン12〜20ミリグラムを含有している。マンガンに対するヒトの必要量の概算は大幅に変化するが、このレベルを維持するのに必要な摂取と排泄のバランスについての研究を基礎としている。幾つかの研究からのデータは、1日当たり体重1キロ当たりマンガン0.035〜0.070ミリグラムの摂取が必要なバランスを供給することを示唆している。しかし、テキサス大学オースティン校の研究者らにより行われた1988年の研究は、1日当たり最低3.5ミリグラムが必要なようであることを見出した。
【0004】
ヒトの消費量は、消費されるある種の食物の消費量に依存している。典型的な英国の冬の食事(相当量の茶の摂取を伴う)は1日当たりマンガン8.8mgまでを供給するが、それに対し、日本、カナダ、ニュージーランド及び米国の女性についての研究は、1日当たり、2.5〜4mgの平均的日常摂取であることを示唆している。
【0005】
マンガンの欠乏は動物において実証されており、ビタミンKの欠乏と関連してヒトにおいて認められている。研究した全種におけるその主要な発現は、成長不全、骨格異常、生殖機能の障害又は低下、新生児の筋肉協調の欠如並びに脂質及び炭水化物代謝の欠乏である。
【0006】
下記の生鮮食品群(降順)はマンガン含有量において最も重要である:ナッツ、シリアル全体、ドライフルーツ、根菜類、塊茎類、茎類、果物、非葉菜類、肉類、鶏製品、魚類及び海藻類。葉菜類も、乾燥重量で表された場合、リストの上位に位置する。茶は、シリアルの10倍という非常に高いマンガン含有量を有する。シリアル穀物及び製品の広範囲のマンガン含有量は、種及び用いられる製粉工程に依存している。米国の研究では、総マンガン量31ppmを含有する全粒小麦は、胚中において160ppm、ブラン中において119ppm及び白小麦粉中においてわずか5ppmを産する。オートミール半カップ、破砕した小麦又はレーズンブランシリアル30グラム、ペカン4分の1カップ又はピーナッツ3分の1カップ、及び調理したホウレンソウ半カップは、それぞれ1ミリグラムを超えるマンガンを含有している。サツマイモ、赤色リマ又は白インゲンマメ、及びパイナップルジュースなどもマンガンの供給源である。乳製品及び高精製砂糖含有食品にはマンガンは非常に少量存在しているか、或いは存在していない。
【0007】
スーパーオキシドラジカル、過酸化水素、水酸基及びカテコールアミンのオルトキノン誘導体などの一次活性酸素種(ROS)は、DNA、脂質及びタンパク質を改質することによって、それらの細胞に対する作用を発揮して、二次親電子物質を形成する。二次親電物質は、もはや正常な細胞活性に関与することができないため、又は他の必須の細胞成分の改質に帰着する酸化連鎖反応における電子受容体として働くため、細胞機能不全に関わる。一次及び二次ROSによって引き起こされる損傷は、重大な人間の疾患の病因となる。特に、酸化的代謝の1つの結果が、スーパーオキシドラジカル(O)の生成であり、それが生体の細胞構成要素に対する包括的な損傷を媒介する。過酸化水素(H)及び酸素(O)に対するO分子の不均化は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)という名称の金属酵素の種類の偏在によって触媒作用を受ける。分子Oに対する暴露を許容する全ての生体におけるSODの優勢は、これらの酵素が酸素損傷に対する細胞の防御の第一線を形成するという有力な示唆を導いた。実際、SODに欠陥のあるマウスは生存せず、この酵素の機能的能力の減少は、細胞の強いミトコンドリア障害と関連して酸化ストレスの高い増加を引き起こす。
【0008】
それらの金属イオン含有量を基礎として、SODの3つの種類が認められる:Cu/Zn−、Fe−、及びMn−含有酵素。3つ全ての形態が同じ反応に触媒作用を及ぼすが、Fe−含有SOD(FeSOD)は概ね原核生物に限定され、Cu/Zn酵素(Cu/ZnSOD)は主に真核生物に限定される。Mn−含有SOD(MnSOD)は、普遍的に存在する。原核生物において、MnSODはミトコンドリアに局在化される。それに対して、Cu/ZnSODはサイトゾルに存在する。
【0009】
スーパーオキシドラジカル(O)は、酵素的及び非酵素的酸化の間、生細胞内で生成することが可能である。Oの直接的な反応性のため、並びに生成する二次フリーラジカルの反応性のため、Oは細胞の完全性に対する脅威となる。この脅威は、OからH+Oへの転換に対して触媒作用を及ぼす一群の防御酵素によって対処される。これらの酵素、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、理論上の拡散限界に匹敵する率でOと反応し、好気性生物の生命にとって重要に見える。SODにより生成するHは、カタラーゼによるOとHOへの触媒転換、又はペルオキシダーゼによるチオール、アミン又はフェノール基質を消費する水への還元により処理される。
【0010】
スーパーオキシドラジカルは、自己酸化、酸素毒性、多数の化合物の酸素依存性毒性、再灌流障害、炎症、及び凍傷の結果生じる損傷における原因要素であり、移植器官及び組織の限定された生存能力に関わることが示されている。
【0011】
SODの機能に関する初期の研究は、第一に酸素毒性並びにビオロゲン、キノン及び関連する酸化還元サイクル化合物の酸素依存毒性を扱っていた。これらの調査は、細胞内で作られたOが、細胞を殺しうること、SODが防御を供給することを立証した。現在、Oは望まれない又は危険な二原子酸素の代謝の副産物であるだけでなく、一定の特殊化した細胞により大量に生産され、見かけ上特定の目的に役立つことが知られている。好中球及び関連する食細胞白血球は、細胞が刺激されたとき活性化し、二原子酸素をOに特異的に還元する膜結合NADPHオキシダーゼを含有している。この酵素の欠陥がこれらの白血球の殺菌作用を弱め、慢性肉芽腫性疾患を引き起こす。
【0012】
既知の炎症プロセスに対する好中球の関わり、及び活性化好中球によるOの生産は、炎症の進展における、並びにおそらく有害な結果におけるOに対する役割を示唆している。Oの酵素原は、ヒアルロン酸を解重合することにより滑液の粘度を低下させ、SODは防御効果を発揮する。キサンチンオキシダーゼなどのOの酵素原を注入することにより、限局性炎症が引き起こされるが、これはSODなどの酸素ラジカルのスカベンジャーにより防止することができる。
【0013】
実験動物の炎症モデルに示されるSODの抗炎症効果が、正常なヒト血清中に存在する前駆体とのOの反応による好中球ケモタキシンの生産の阻害に関して説明されている。血液循環中に注入したとき、SODは急速に腎臓から除去されるため、ラット中のi.v.注入したウシSODの循環半減期はわずか7分である。この期間は、SODをポリエチレングリコール又はフィコールに結合させることにより顕著に増加させることができ、これに対応して抗炎症効果が増加する。
【0014】
一時的な虚血の結果として生ずる組織の損傷は、虚血の間課される低酸素状態の間に発現するATPの欠如に起因すると従来から考えられてきた。データは、この損傷が実際に再灌流の間に起こり、酸素ラジカルの生産の増加を表しているという見方を裏付けている。SODは、この再灌流損傷を防御する。
【0015】
種々の供給源からのSODは現在、酸化損傷に対する潜在的治療処置として、大きな関心を集めている。多種多様な障害の処置に対する臨床設定におけるそれらの使用が、提案されている。一般に、スーパーオキシドジスムターゼは、ある種の炎症プロセスに対して防御機能を有すると考えられる。それらは、皮膚移植片、器官移植、凍傷及び心筋梗塞に伴う再灌流損傷の症例において調査された。特に、Mn−SODにおける欠乏症は、慢性関節リウマチ(Pasquier, C. et al. , Inflammation 8, 27-32, 1984)の進展において幾らかの重要性を有すると考えられる。SODはまた、アルコール誘発肝障害(Del Villano B. C. et al., Science 207, 991-993, 1980)に対して防御効果を有すると推定される。
【0016】
SODの付加的な潜在的な治療効果には:(i)腫瘍形成、腫瘍促進及び侵襲性並びに紫外線誘発損傷の予防;(ii)虚血後の再灌流損傷に対する心臓組織の防御;(iii)抗炎症剤として;(iv)抗癌剤の細胞毒性及び心臓毒性作用を低下させること;(v)内皮疾患を減少させること;(vi)変性疾患を減少させること;及び(vii)凝固障害を減少させること、並びに;(viii)生細胞の寿命を改善することがある。実際、SODの機能不全は、早期の細胞の加齢及びそれらのアポトーシスを増大させる。更に現在、ウシCu/ZnSODは、ウマにおける腱の炎症の処置、及び人間における骨関節症の処置に利用されている。ミトコンドリア抗酸化酵素のマンガン含有スーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)が腫瘍抑制遺伝子として機能すること、並びに幾つかのヒト癌細胞系のMnSOD発現の再構成が悪性復帰を引き起こすことが示されている。
【0017】
しかし、大きさ、抗原性及びコストが、それらの広範囲にわたる使用を抑制する。酵素は生物源から分離されなければならず、或いは遺伝子工学により調製されなければならないので、限られた供給量で、非常に高価であり、そして/又は汚染物により引き起こされる問題に苛まれる。治療のため現在提案されるSODは、高度な免疫原性というひどく不都合な難点があり、従って、投与により生ずる抗体反応の結果、臨床有用性が低いことが判明している。更に、利用可能なSOD、特に哺乳類の供給源からのSODは、哺乳類細胞において低濃度であること、及び満足のいく純度レベルで生産するのに煩雑な分離手順を要することからみて、大量に入手するのが困難である。
【0018】
細胞内で作用しうるSODの模倣物が有用であろうことは、長く明らかであった。マンガン(II)はそれ自体、Oをスカベンジし、適切なバッファ内では触媒作用によってスカベンジする。しかし、マンガン(II)は多数のタンパク質によく結合するが、そうしているうちに、その活性を失う。更に、臨床データはこれまでのところ、マンガンそれ自体の有機又は鉱物塩が、非致死量で動物又はヒトに対して、抗酸化作用などの有益な生物学的又は治療的効果を提示することを、示していなかった。Cu(II)はそれ自体、Oの不均化の非常に効果的な触媒である。発見される第1のSODが銅タンパク質であったので、SOD活性について銅錯体を試験している。遊離型Cu(II)についての問題は、それが容易に水酸化物を形成すること、そしてそれが強力に多くの巨大分子と結合することである。これらの理由により、Cu(II)それ自体は、酸性溶液中で、強力に結合するリガンドが存在しない際に、最も活性である。報告されているSOD様活性を有するCu(II)の錯体には:Cu(リシン)2及びCu(グリシン−ヒスチジン)2、Cu(サリチル酸ジイソプロピル)2、Cu(ペニシラミン)、Cu(ヒスチジン)、Cu(ジペプチド)並びにCu(グリシン−ヒスチジン−リシン)がある。これら全ての銅錯体に関する深刻な課題がある。多くは、単に金属バッファとして作用し、Cu(II)を可溶化する上で役立つが、血清アルブミンの存在下で活性を保持するには安定性が不十分である。Cu(II)錯体の調査はこれまでのところ、生物学的に有用なSODの模倣物の発見には帰着しなかった。
【0019】
発明の概要
本発明の目的は、安価な抗酸化剤を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、SODの安価な合成の模倣物を提供することである。
【0021】
本発明の更なる目的は、タンパク質により不活性化されていないスーパーオキシドラジカルのスカベンジャーを提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、スーパーオキシドラジカル誘発毒性の毒性を低減又は予防するSODの模倣物を用いる方法を提供することである。
【0023】
本発明の更なる目的は、活性成分として、スーパーオキシドジスムターゼの安定的な模倣物を含有する医薬組成物を提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的と利点は、下記の発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0025】
本発明はより具体的には、新規な工業製品として、マンガン、ステロール及びジグリセリドベースの有機金属錯体、並びに治療又は栄養製品としての、特に抗酸化剤としてのその使用に関する。
【0026】
本発明は、これらの錯体を含有する医薬組成物及び食物製品に関する。
【0027】
米国特許第6,129,924号は、
−生体代謝内で生体触媒として有用な少なくとも2種の酸化状態の金属(M)陽イオンの、
−シトステロールの、シトスタノールの、又はシトステロール及びシトスタノールの混合物の、或いはそれを含有する植物抽出物の、
−式:
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、
−Rはオレイン酸のアシル残基であり(C18:1)、
−Rは2〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸のアシル残基である)のジグリセリドの、反応により入手可能な有機金属錯体を記載している。
【0030】
この文献に記載されている錯体は、より詳しくは、金属陽イオンがバナジウムである錯体であり、この錯体は、インスリン依存性若しくはインスリン非依存性糖尿病、その心血管系合併症及び/又はインスリン抵抗性及びその心血管系合併症の処置及び/又は予防、並びに高コレステロール血症及び/又は高トリグリセライド血症の処置又は予防にとって特に興味深いことが証明されている。
【0031】
発明の詳細な説明
第一の態様においては、本発明は、その不可欠な特性に従い、酸化ストレスに関する疾患の処置のための医薬組成物の調製のための、マンガンの鉱物若しくは有機塩(より詳しくはマンガンの陽イオン、特に2、3、4、6又は7価の酸化状態を含む)、
−シトステロール、若しくはシトステロール及びシトスタノールの混合物、又はそれを含有する植物抽出物、
−式(I):
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、
−Rはオレイン酸のアシル残基であり(C18:1)、
−Rは2〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸のアシル残基である)のジグリセリドの、反応により入手可能な有機金属錯体の使用に関する。
【0034】
本発明の特定の態様においては、医薬組成物は、スーパーオキシドラジカルの存在の結果として生じる病理学的状態を予防又は治療するために使用される。
【0035】
本発明は更に、酸化ストレスに関する、又はスーパーオキシドラジカルの存在の結果として生じる疾患を処置する方法であって、それを必要とする被験体(動物又はヒト)に、上記で定義された錯体の有効量を投与することを含む方法を含む。
【0036】
好ましい実施態様においては、本発明はRがオレオイル又はアセチル基である錯体に関する。
【0037】
従って、本発明はSODに類似した生物学的活性を示す有機金属のマンガンベース錯体を扱う。本発明の錯体は、マンガンの低投与量でも有効であるという利点がある。これらの錯体は、動物に投与される場合、同じモデルに対してSODに類似した特異的抗酸化活性を有する。
【0038】
この性質は、一般に当業者は、金属陽イオンの治療的用途における困難さが有効用量でのそれらの毒性と関連することを承知しているため、一層重要である。更に、マンガンそれ自体が、臨床的に抗酸化活性を示しうることは報告されていなかった。
【0039】
例として、本発明において特に有用な、下記の鉱物若しくは有機マンガン塩又は誘導体を挙げることができる:酢酸マンガン、炭酸マンガン、酸化マンガン、硫酸マンガン、アスコルビン酸マンガン、グルコン酸マンガン、グリセロリン酸マンガン、オレイン酸マンガン、リン酸マンガン又はクエン酸マンガン。より好ましくは、本発明による有用なマンガン誘導体は、酢酸マンガン、炭酸マンガン、オレイン酸マンガン、リン酸マンガン及び硫酸マンガンからなる群より選択される。
【0040】
これらの誘導体は、通常、水又は有機溶媒に可溶性である。誘導体は、有利には水に、又はアルコールに、好ましくはエタノールに溶解することができる。
【0041】
本発明に従って使用されるマンガン誘導体は、上記の通りマンガンが豊富なことで既知の食物又は植物から抽出することができる。
【0042】
特定の態様において、本発明は、
−酢酸マンガン、炭酸マンガン、酸化マンガン、硫酸マンガン、アスコルビン酸マンガン、グルコン酸マンガン、グリセロリン酸マンガン、オレイン酸マンガン、リン酸マンガン及びクエン酸マンガンからなる群より選択される少なくとも1つのマンガン誘導体、
−シトステロール、若しくはシトステロール及びシトスタノールの混合物、又はそれを含有する植物抽出物、
−式(I):
【0043】
【化5】

【0044】
(式中、
−Rはオレイン酸のアシル残基であり(C18:1)、
−Rは2〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸のアシル残基である)のジグリセリドの、反応により入手可能な有機金属錯体に関する。
【0045】
より詳細には、上記の錯体は、R2がオレオイル又はアセチル基である式(I)のジグリセリドの反応によって入手可能である。
【0046】
シトステロールは好ましくは、ほかのものを混ぜないで使用するが、市販製品は85%のシトステロール及び15%のシトスタノール、時にカンペステロールを有する混合物である。これらの市販製品は一般に、大豆又はトール油から抽出される。
【0047】
活性は、シトステロールの存在に専ら関連しているように見えるが、それは活性とシトステロールの量の間に、用量反応関係が存在するからである。更に、純粋なカンペステロール又はシトスタノールは活性を示さない。
【0048】
シトステロールと、従ってシトスタノールは、文献中の技術、例えばClaude CerdonによりMontpellierにて示された、<<Modulation de la production de sapogenines steroidiques en reponse a l'inhibition de la synthese de sterols>>と題された学位論文の95ページに従って、植物から抽出することによっても調製することができる。
【0049】
この抽出は、特に、3−水酸化ステロイド及び3−オキソステロイドを、これらを含有する混合物から単離する方法を記載したフランス国特許第2316247号に記載された方法に従い、金属との錯化により有利に行う。
【0050】
この抽出を達成するために、比較的高いシトステロール含有量で知られる植物又は植物製品を使用することができる。
【0051】
比較的高いシトステロール含有量を有する植物又は植物製品の例として、特にオリーブ油、大豆油、綿の葉、コーヒーの葉、小麦胚芽を挙げることができる。
【0052】
遊離ステロールの画分が24R及び24Sという異性体をある比率で含み、この比率が植物により異なることも指摘しなければならない。この比率は、ほとんど又は全く研究されてこなかったため、周知ではない。
【0053】
この比率、並びに精製の間シトステロールから分離できないシトスタノールの相対量により、幾つかの植物のステロール画分のより良い相対活性、並びにとりわけ本発明に記載される新規の製品の調製のために必要なシトステロールの過剰量を説明することができる。
【0054】
式(I)のジグリセリド、特に最も有効であることが判明しているものが商業的に存在している。この事例として、特に1−オレオイル−2−アセチルグリセリン及び1,2−ジオレオイルグリセリンがあり、約98%の純度を有する市販製品として存在している。
特に1−オレオイル−2−アセチルグリセリンは、特に、1,2−ジオレオイルグリセリンのアセチルCoAによる2位でのアセチル化による化学合成若しくは生化学合成によって、或いはジオレオイルリン脂質、特にオリーブ油中に存在し、ホスホリパーゼCによってジオレイン及びホスホリルコリンに分解されるホスファチジルコリンからでも入手することができる。
【0055】
更に、本発明の錯体の調製に有用なアシルグリセリンを幾つかの植物油から分離することができる。
【0056】
概して、高濃度のオレイン酸を含有する油が、本発明のアシルグリセリンの供給源として選ばれる。
【0057】
かかる油の例としては下記を挙げることができる。
−オリーブ油(オレイン酸(C18:1)の含有量が60〜80%である);ヨーロッパの油(スペイン、イタリア、フランス南部)は北アフリカの油よりもC18:1が豊富である。
−ひまわり油(オレイン酸ひまわりハイブリッドとして既知の変種で、通常のひまわり油中の16%ではなくて、80%のC18:1を含有する)
−扁桃油(64〜82%のC18:1を含有する)
−ヘーゼルナッツ油(66〜83%のC18:1を含有する)
−アボカド油(36〜80%のC18:1を含有する)
【0058】
本発明の錯体は、単に上記の3種類の化合物を一緒に混合することによって容易に調製される。混合は有利には、有機溶媒、好ましくはエタノール中で行う。より具体的には、混合物を撹拌し、室温又はそれ以上(30〜40℃)で数分間(30〜60分)保持する。
【0059】
錯体は、油を溶媒として使用することによって直接調製することもでき、それを引き続き注射可能な形態の場合には活性製品の注射用水として、或いは経口用形態には賦形剤として使用する。
【0060】
異なる構成成分の比率に関する限り、それらを広範囲に変更することができる。それにもかかわらず、得られる製品の活性を使用する3種類の試薬の比率と相互に関連させることによって、下記の比率を決定することが可能であった。データはマンガン1モルに対して示されている:
−シトステロールは有利には1モル当たり1000〜10000モルの比率で使用する;
−ジグリセリドは有利には1モル当たり10〜100モルの比率で使用する。
【0061】
例として、シトステロールの混合物50mgに対して、及びマンガン量1〜5μg(金属として示されている)に対して、好ましくは1,2−ジオレオイルグリセリン500〜2500μgを使用する。
【0062】
異なる構成成分を適切な分析方法により同定することができる:
−マンガンは原子吸光により、
−シトステロールは、ガスクロマトグラフィー、HPLC又はH NMRにより、
−アシルグリセリンは、光拡散検出器を使用したC18kromasilカラムのHPLCで、アイソクラチック・アセトニトリルからなる溶離剤を使用する。
【0063】
錯体の質量ピークは、化学イオン化法及び電子衝撃法などの通常の方法によっては検出できない。それは、金属を有するこれら2つの構成成分により形成される錯体は、生物活性を有する有機金属錯体の大多数のように、概して不安定であるという事実によって説明することができる。
【0064】
本発明に記載の有機金属錯体は、マンガンの生物学的利用能を最適化することで、毒性の低い、若しくは毒性を伴わない治療用途を可能にし、現状の技術の対して相当な利点を示す。
【0065】
別の態様によると、本発明は、先に定義した少なくとも1つのマンガン錯体を含有する医薬組成物、並びに薬学的に許容され得るビヒクル、賦形剤又は担体にも関する。
【0066】
薬学的に許容され得る賦形剤、ビヒクル又は担体として、当業者に周知のあらゆる賦形剤、ビヒクル又は担体を使用してもよい。錯体は、固体及び液体などの形態を含む種々の形態、例えば錠剤、ゲル、シロップ、粉末、エアゾールなどの形態に調製してもよい。
【0067】
本発明の組成物は、生理学的に許容され得る希釈剤、充填剤、滑沢剤、賦形剤、溶剤、結合剤、安定化剤など含有してもよい。以下を非制限的な例として挙げることができる:
ラクトース、トウモロコシでんぷん、グルコース、スクロース、マルチトールシロップのような甘味剤、アラビアゴム、ゼラチン、カラギーナン(carrhagenans)、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、デキストリン、マルトデキストリン、マンニトール、タルク、天然由来の脂肪、特に不飽和脂肪酸が豊富な植物由来の油及びステロール。特に、最終的に必要であるならば、安定剤、乾燥剤、結合剤又は緩衝剤のような当業者に周知の他の添加剤を用いてもよい。
【0068】
本発明の組成物は、経頬若しくは腸溶吸収の経口経路、粘膜、皮下、筋肉内経路、又は経皮経路(パッチ又はゲルとして)などの種々の経路によって投与することができる。
【0069】
錯体を投与する投薬量及び投薬量レジメンは、投薬形態、投与方法、処置の状況及び処置する患者の詳細によって変化する。一般に、マンガンは1日当たり1〜200マイクログラムの量でヒト又は動物に投与することができる。従って、最適治療濃度はルーチンの実験を通して時と場合により最良に決定する。
【0070】
この点で「処置」若しくは「処置すること」は治療的及び予防的処置の両者を含んでいる。従って、本化合物は、疾病の最初期段階、又は初期の発症以前、又は重大な進行後に使用しても良い。
【0071】
特定の実施態様により、本発明は酸化ストレスに関する疾病の予防又は治療用の医薬組成物の調製のための、上記で定義した錯体の使用に関する。
【0072】
本発明の更なる目的は、スーパーオキシドラジカルの存在の結果として生じる疾病の予防又は治療用の医薬組成物の調製のための、上記で定義した錯体の使用に基づく。
【0073】
本発明の別の様態はSOD様物としての錯体の使用である。
【0074】
この点において、錯体を下記の治療的効果を得るために使用することができる:(i)腫瘍形成、腫瘍促進及び侵襲性並びに紫外線誘発損傷の防止;(ii)虚血後の再灌流損傷に対する心臓組織の防御;(iii)抗炎症剤として;(iv)抗癌剤の細胞毒性及び心臓毒性作用を低下させること;(v)内皮疾患を減少させること;(vi)変性疾患を減少させること;及び(vii)凝固障害を減少させること、並びに;(viii)生細胞の寿命を改善すること。
【0075】
特定の実施態様においては、本発明により処置する疾病は、癌、神経変性疾患、網膜変性疾患、年齢関連黄斑変性(ARMD)、虚血脳障害、内皮機能不全若しくは障害、炎症状態、凍傷、心筋梗塞、慢性関節リウマチ、骨関節炎、アルコール誘発の肝障害を示す疾病若しくは障害、及び凝固障害からなる群において選択可能である。錯体は、生細胞の寿命を改善するために用いることもできる。
【0076】
特に、本発明の錯体は、結腸癌若しくは結腸直腸癌、乳癌、胸膜中皮腫、白血病、グリア芽腫などを含む癌を処置するために用いることができる。別の態様においては、本発明の錯体は、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患を処置するために用いることができる。
【0077】
別の実施様態によると、本発明は、上記の錯体を含む栄養製品に関する。この栄養製品は好ましくは、上記の錯体を含み、ここで、ジグリセリドは植物油、特にオレイン酸を高含量で含有する油中に含まれる。
【0078】
上記の栄養製品は、より具体的には、健康の維持を確保するため、特に生細胞の寿命を改善し、並びに/又は細胞の初期のアポトーシスを防止するために有用である。
【0079】
下記の実施例は、本発明の説明としてのみ示される。
【0080】
実施例
実施例1:本発明の錯体の調製
エタノール10mlに溶解した市販のシトステロール1g。
1,2−ジオレイン及び1,3−ジオレインの市販の混合物100mg。
硫酸マンガン一水和物313μg。
大豆油20ml。
混合物を撹拌し、30分間加熱した。エタノールを蒸発させた。
【0081】
実施例2:本発明の錯体の調製
エタノール10mlに溶解した市販のシトステロール1g。
1,2−ジオレイン50mg。
硫酸マンガン一水和物626μg。
オリーブ油5ml。
混合物を撹拌し、35℃で30分間加熱した。エタノールを蒸発させた。
【0082】
実施例3:本発明の医薬組成物の調製
医薬組成物を、実施例2に従って形成した錯体から調製した。生成物を耐胃酸カプセルに導入した。次に生成物を投与した。
【0083】
実施例4:本発明の医薬組成物の調製
医薬組成物を、実施例1に従って形成した錯体から調製した。生成物は液体で、動物、特にヒトにおいて経口で吸収するように、又は腹腔内経路を介して吸収するように用意した。
【0084】
実施例5:本発明の医療用途のための食物製品の調製
エタノール50mlに溶解した市販のシトステロール20g。
硫酸マンガン一水和物6.26mg。
オリーブ油(特上)120ml。
混合物を撹拌し、35℃で30分間加熱した。
本発明の錯体を形成し、生成物を経口で吸収するように用意した。
【0085】
実施例6:薬理試験
実施例4の錯体を下記の手順に従って評価した。
薬理試験モデル
アドリアマイシン試験は、試験物質の抗フリーラジカル活性の証拠を示すのに用いられる特定の試験である。この試験は、G. Jadot, (Edema from adriamycin in the Wistar rat. SuperOxide Dismutases, p 73-77, Masson Ed., Paris, 1988) に記載されている。
【0086】
1−原理
アドリアマイシンの注射後1時間で、12時間続く一時的な炎症反応を観察することができた。この第1相は、ヒスタミン、セロトニンの放出、及び多核好中球の滞留に対応した。第2炎症相は投与後3日目に始まり、5日間続いた。この炎症相の間、血管の透過性亢進は、フリーラジカルによる酸化的損傷によって生み出される内皮細胞膜変化をもたらした。この第2炎症相の間、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症薬は効果的でなかった。
【0087】
腹腔内投与によるラットにおける抗フリーラジカルについての調査は、ラットの後肢足蹠に対してのアドリアマイシンの注射によって生み出される浮腫の低下を測定することからなる。
【0088】
2−動物
15日間の隔離期間後、雄のウィスターラットをこれらの試験に使用した。
【0089】
3−実験プロトコル
(浮腫を、ラットの右後肢の足蹠にアドリアマイシン(2.5mg/ml)溶液0.2mlを皮下注射して誘発した(Jadotにより修正されたシーゲルの方法(1988))。
1日目に、第1回目の測定の2時間前に試験化合物を投与し、その後の日は8日目まで測定の1時間前に投与した。
浮腫の容積の測定は、プレチスモグラフィにより判定し、1日目のアドリアマイシンの注射直前に(基準測定)、その後毎日同じ時間に行われた。
処置は、研究の全継続時間の間維持された。対照群は、投与用ビヒクルのみを受けた。
【0090】
4−処置
動物10匹の群の設定後、下記のスキームに従って、腹腔内投与を毎日行った。
陰性対照:オリーブ油を投与した動物(1ml/kg)。
陽性対象:ジオスミン(diosmine)100mg/kgを投与した動物(1ml/kg)。
実施例4:実施例4を投与した動物(1ml/kg)。
(ジオスミンは血管及び血管周囲抗フリーラジカル活性を有する植物フラボノイドである。)
【0091】
5−結果式
パーセンテージで表される足の浮腫を、各動物につき各時点で計算した:
【0092】
【数1】

【0093】
各時点及び各動物群についての足の浮腫におけるパーセンテージの低下を下記の通りに計算した:
【0094】
【数2】

【0095】
対照群に比べると、処置群における足の容積が有意に減少していることにより抗フリーラジカル活性が示された。
【0096】
6−結果
6−1.足の容積(図1)
各群及び各時点についての個々及び平均の足の容積値を下記の表に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
基準値(処置前)間に統計的な差を観察しなかった。従って、動物群は同一であった。
【0101】
実施例4及びジオスミンで処置した群は、実験の全継続時間の間、足の容積についての統計的な有意差を示さなかった。しかし、陰性対象と比較すると、実施例4及びジオスミンで処置した群はD2からD7にかけて統計的な有意差を示し、D3及びD4では実施例4について最も有意な差を示した(p<0.001)。
対照群と処置群との間の相違は8日目(D8)に消失した。
【0102】
6−2.浮腫の割合(図2)
各群について、%で表された個々及び平均の値を、標準偏差と共に下記の表に示した。
【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
実施例4及びジオスミンで処置した群は、実験の全継続時間の間、足の浮腫のパーセンテージについて統計的な有意差を示さなかった。しかし、実施例4及びジオスミンで処置した群は、D2からD5にかけて、足の浮腫のパーセンテージにおいて有意な減少を示し、D3では実施例4について、浮腫の最大の大きさに対して統計的に最も有意な減少を示した(p<0.001)。
実施例4とジオスミン群との間の浮腫のパーセンテージの差はD6に消失した。
【0107】
6−3.防御の割合(図3)
浮腫の阻害のパーセンテージを下記の表及びグラフ形態に示した。
【0108】
【表7】

【0109】
結論
陽性対照であるジオスミンを、フリーラジカルによる損傷に由来する浮腫の発現に関する防御効果を示すための基準として用いた。この化合物は、対照群と比較して、浮腫の進行についてその活性を裏付けた。ウシのスーパーオキシドジスムターゼは、ジオスミンと同じような特性を有している(JL Jadotを参照)。実施例4に従って調製した生成物が、基準化合物(すなわちジオスミン及びスーパーオキシドジスムターゼ)として従来用いられた化合物に類似したフリーラジカル防御活性を有することを、得られた結果が示した。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の錯体又はジオスミンで処置する各群の足の容積値(表1、2、3を参照)である。
【図2】本発明の錯体及びジオスミンで処置する各群の足の浮腫の割合、並びに標準偏差(表4、5、6を参照)である。
【図3】浮腫の阻害の割合(ジオスミンにより与えられる防御と比較した本発明の錯体により与えられる防御)である。表7を参照すること。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−マンガンの鉱物若しくは有機塩、
−シトステロール、若しくはシトステロール及びシトスタノールの混合物、又はそれを含有する植物抽出物、
−式(I):
【化1】


(式中、
−Rはオレイン酸のアシル残基であり(C18:1)、
−Rは2〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸のアシル残基である)のジグリセリドの、反応により入手可能な有機金属錯体の、酸化ストレスに関する疾患の処置のための医薬組成物の調製のための使用。
【請求項2】
医薬組成物が、スーパーオキシドラジカルの存在の結果生じる病理状態を予防又は治療するために使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
がオレイン酸残基又はアセチル残基である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ジグリセリドが、オリーブ油又はオレイン酸豊富な油からの分離によって得られる、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
鉱物若しくは有機マンガン塩が、酢酸マンガン、炭酸マンガン、酸化マンガン、硫酸マンガン、アスコルビン酸マンガン、グルコン酸マンガン、グリセロリン酸マンガン、オレイン酸マンガン、リン酸マンガン又はクエン酸マンガンからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
医薬組成物が、(i)腫瘍形成、腫瘍促進及び侵襲性並びに紫外線誘発損傷の予防のために;(ii)虚血後の再灌流損傷に対する心臓組織の防御のために;(iii)抗炎症剤として;(iv)抗癌剤の細胞毒性及び心臓毒性作用を低下させるため;(v)内皮疾患を処置するために;(vi)変性疾患を処置するために;(vii)凝固障害を処置するために、又は;(viii)生細胞の寿命を改善するために使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
疾病が、癌、神経変性疾患、網膜変性疾患、年齢関連黄斑変性(ARMD)、虚血性脳障害、内皮機能不全若しくは障害、炎症状態、凍傷、心筋梗塞、慢性関節リウマチ、骨関節炎、アルコール誘発肝障害を示す疾病若しくは障害、及び凝固障害からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
疾病が、結腸癌若しくは結腸直腸癌、乳癌、胸膜中皮腫、白血病、及びグリア芽腫からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
疾病が、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、及び筋萎縮性側索硬化症からなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
−酢酸マンガン、炭酸マンガン、酸化マンガン、硫酸マンガン、アスコルビン酸マンガン、グルコン酸マンガン、グリセロリン酸マンガン及びクエン酸マンガンからなる群より選択される少なくとも1個のマンガン誘導体、
−シトステロール、若しくはシトステロール及びシトスタノールの混合物、又はそれを含有する植物抽出物、
−式(I):
【化2】


(式中、
−Rはオレイン酸のアシル残基であり(C18:1)、
−Rは2〜18個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸のアシル残基である)のジグリセリドの、反応により入手可能な有機金属錯体。
【請求項11】
がオレオイル又はアセチル基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項12】
ジグリセリドが、オリーブ油又はオレイン酸豊富な油からの分離によって得られる、請求項10又は11に記載の錯体。
【請求項13】
薬学的に許容され得る担体中に、請求項10〜12のいずれか1項記載の少なくとも1個の錯体を含む医薬組成物。
【請求項14】
酸化ストレスに関する疾病の処置のための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
スーパーオキシドラジカルの存在の結果生じる病理状態を予防又は治療するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
(i)腫瘍形成、腫瘍促進及び侵襲性並びに紫外線誘発損傷の防止のための;(ii)虚血後の再灌流損傷に対する心臓組織の防御のための;(iii)抗炎症剤としての;(iv)抗癌剤の細胞毒性及び心臓毒性作用を低下させるために;(v)内皮疾患を処置するための;(vi)変性疾患を処置するための;(vii)凝固障害を処置するための、又は(viii)生細胞の寿命を改善するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
癌、神経変性疾患、網膜変性疾患、年齢関連黄斑変性(ARMD)、虚血性脳障害、内皮機能不全若しくは障害、炎症状態、凍傷、心筋梗塞、慢性関節リウマチ、骨関節炎、アルコール誘発の肝障害を示す疾病若しくは障害、及び凝固障害を処置するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
結腸癌若しくは結腸直腸癌、乳癌、胸膜中皮腫、白血病、及びグリア芽腫を処置するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項19】
パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、及び筋萎縮性側索硬化症を処置するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項10〜13のいずれか1項記載の少なくとも1個の錯体を含有する食物製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−520752(P2006−520752A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501967(P2006−501967)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001961
【国際公開番号】WO2004/075990
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505325235)メデシス・ファルマ・ソシエテ・アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】MEDESIS PHARMA S.A.
【Fターム(参考)】