説明

ミシンシステム、押え足収納装置、及びミシン

【課題】複数種類の押え足を保管すると共に、ユーザが選択した模様の縫製に適した押え足を、間違うことなく取出すことを可能とする。
【解決手段】ミシンベッドに装着される補助テーブル23に、縫製する模様に応じて使い分けられる5種類の押え足13を収納する押え足収納装置3を一体的に組込む。5個の収納室28を並んで備える箱状収容部29の上面に、1つの収納室28を開放させる窓部31aを有するカバー部材31を、駆動モータ等により移動可能に設ける。ミシンの制御装置は、ユーザにより模様が選択されると、その模様の縫製に適した押え足13が収納されている収納室28を決定し、当該収納室28の上方に窓部31aを移動させるように開閉機構30を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の押え足のうちいずれかを択一的に押え棒に装着して縫製作業を行うミシンと、前記複数種類の押え足を収納する押え足収納装置とを、電気的に接続して構成されるミシンシステム、押え足収納装置、及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば家庭用のミシンにおいては、ミシン頭部に押え棒が設けられ、押え棒の下端部には、加工布を押えるための押え足が着脱可能に取付けられている。前記押え足は、例えば、直線縫い用、ジグザグ縫い用、まつり縫い用、裁ち目かがり用等、縫製する模様の種類に応じた複数種類が用意されており、縫製する模様に適した押え足に交換される。ところが、ミシンを使い慣れていないユーザにとっては、縫製したい模様に対し、どの押え足を選択すれば良いのか判りにくい場合がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、ユーザが所望の模様を選択したときに、その模様に適した押え足(押え金)をユーザに知らせる押え金指示装置を備えるミシンが開示されている。この装置では、ミシンのアーム部の上部に、複数個の押え足を並べて収容する収容部が設けられると共に、各収容部に対応して点灯部が設けられる。そして、ユーザがアーム部前面の模様選択装置により所望の模様を選択すると、まず模様選択確認灯が点灯する。そして、その確認灯の光が光路を通して所定の点灯部に導かれ、点灯部が点灯する。このように、前記押え金指示装置は、ユーザに対し、所望の模様を縫製するときに使用する押え足が収容されている収容部の位置を知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−78086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の押え金指示装置では、アーム部前面に設けられた模様選択装置の複数個の確認灯と、押え足の収容部に設けられた複数の点灯部との間を、夫々光路でつなげる構成であるため、模様の数が多くなると、構成が複雑となってしまう問題点がある。
また、周囲の環境が明るいときには、ユーザにとって点灯部の点灯が見づらいこともある。このため、ユーザは、点灯部が点灯している収容部にある押え足ではなく、隣の収容部にある押え足を間違って取出してしまう虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数種類の押え足を保管すると共に、ユーザが選択した模様の縫製に適した押え足を、間違うことなく取出すことができるミシンシステム、押え足収納装置、及びミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のミシンシステムは、複数種類の押え足のうちいずれかを択一的に押え棒に装着して縫製作業を行うミシンと、前記複数種類の押え足を収納する押え足収納装置とを、電気的に接続して構成されるミシンシステムであって、前記押え足収納装置は、前記各押え足を夫々収納する複数の収納室と、前記各収納室を開閉するものであって複数の収納室のうち1つの収納室のみを選択的に開放する開閉手段とを備えていると共に、前記ミシンは、縫製可能な複数種類の模様とそれら各模様を縫製するに適した押え足の種類とが対応付けられて記憶されている第1記憶手段と、前記押え足収納装置が備える複数の収納室に夫々対応してそれら各収納室に収納される押え足の種類の情報を記憶する第2記憶手段と、前記複数種類の模様から縫製作業を行う模様を選択するための模様選択手段と、前記第1記憶手段及び第2記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記模様選択手段により選択された当該模様を縫製するに適した押え足を収納している1つの収納室を決定する決定手段と、前記決定手段で決定された収納室を開放するように前記開閉手段を制御する制御手段とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
上記構成によれば、ミシンの押え棒に対し、縫製すべき模様に応じて択一的に装着される押え足は、複数種類が用意され、押え足収納装置の複数の収納室に夫々収納されている。そして、ユーザが、ミシンの模様選択手段により所望の模様を選択すると、決定手段により押え足収納装置の1つの収納室が決定される。このとき、第1記憶手段には、模様と各模様を縫製するのに適した押え足の種類とが対応付けられて記憶され、第2記憶手段には、各収納室と収納されている押え足とが対応付けられて記憶されているので、これらの記憶手段に記憶された情報に基づいて、選択された模様を縫製するに適した押え足を収納している1つの収納室を、正しく決定することができる。さらに、制御手段により、押え足収納装置の開閉手段が制御され、決定された収納室が開放されるので、ユーザは、押え足収納装置から縫製に使用する押え足を、間違うことなく取出して装着することができる。
【0009】
請求項2のミシンシステムは、請求項1記載の発明において、前記ミシンは、前記押え足収納装置の各収納室毎に収納する押え足の種類をユーザが任意に設定するための操作手段と、前記操作手段による設定操作に応じて前記第2記憶手段に記憶されている押え足の種類の情報を上書きする設定手段とを備えるところに特徴を有する。
【0010】
請求項3のミシンシステムは、請求項1又は2に記載の発明において、前記押え足収納装置は、一面に前記押え足の出し入れ用の開口部を有し、内部に前記開口部に連なる前記複数の収納室を並べて設けた箱状収容部を備え、前記開閉手段は、前記箱状収容部の開口部全体を覆うと共に前記収納室の並び方向に移動可能に設けられ、いずれか一つの収納室のみを開放する大きさの窓部を有したカバー部材と、前記窓部をいずれかの収納室に合致させるように該カバー部材を移動させる駆動手段とを備えるところに特徴を有する。
【0011】
請求項4のミシンシステムは、請求項3記載の発明において、前記押え足収納装置は、前記箱状収容部のカバー部材を露出させる露出位置と、該カバー部材を遮蔽する遮蔽位置との間で位置切替え可能な蓋部材と、前記蓋部材の位置を検出する検出手段と、前記検出手段が該蓋部材の露出位置を検出しているときには前記駆動手段による前記カバー部材の移動を禁止する禁止手段とを備えるところに特徴を有する。
【0012】
請求項5のミシンシステムは、請求項1から4のいずれかに記載の発明において、前記押え足収納装置は、前記ミシンのミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用するところに特徴を有する。
【0013】
請求項6のミシンシステムは、請求項5記載の発明において、前記押え足収納装置及び前記ミシンは、該押え足収納装置が前記ミシンベッドに装着されたときに相互の電気的接続を行う接続手段を備えているところに特徴を有する。
【0014】
本発明の請求項7の押え足収納装置は、複数種類の押え足を収納するものであって、前記複数種類の押え足のうちいずれかを択一的に押え棒に装着して縫製作業を行うミシンに電気的に接続される押え足収納装置において、前記各押え足を夫々収納する複数の収納室と、前記各収納室を開閉するものであって複数の収納室のうち1つの収納室のみを選択的に開放する開閉手段とを備えていると共に、前記開閉手段は、前記ミシンからの制御信号に基づいて、該ミシンで選択された模様を縫製するに適した押え足を収納する収納室を開放するところに特徴を有する。
【0015】
請求項8の押え足収納装置は、請求項7記載の発明において、一面に前記押え足の出し入れ用の開口部を有し、内部に前記開口部に連なる前記複数の収納室を並べて設けた箱状収容部を備え、前記開閉手段は、前記箱状収容部の開口部全体を覆うと共に前記収納室の並び方向に移動可能に設けられ、いずれか一つの収納室のみを開放する大きさの窓部を有したカバー部材と、前記窓部をいずれかの収納室に合致させるように該カバー部材を移動させる駆動手段とを備えるところに特徴を有する。
【0016】
請求項9の押え足収納装置は、請求項8記載の発明において、前記箱状収容部のカバー部材を露出させる露出位置と、該カバー部材を遮蔽する遮蔽位置との間で位置切替え可能な蓋部材と、前記蓋部材の位置を検出する検出手段と、前記検出手段が該蓋部材の露出位置を検出しているときには前記駆動手段による前記カバー部材の移動を禁止する禁止手段とを備えるところに特徴を有する。
【0017】
請求項10の押え足収納装置は、請求項7から9のいずれかに記載の発明において、前記ミシンのミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用するところに特徴を有する。
【0018】
請求項11の押え足収納装置は、請求項10記載の発明において、前記ミシンベッドに装着されたときに前記ミシンとの電気的接続を行う接続手段を備えているところに特徴を有する。
【0019】
本発明の請求項12のミシンは、複数種類の押え足のうちいずれかを択一的に押え棒に装着して縫製作業を行うものであって、請求項7から11のいずれかに記載の押え足収納装置と電気的に接続されるミシンにおいて、縫製可能な複数種類の模様とそれら各模様を縫製するに適した押え足の種類とが対応付けられて記憶されている第1記憶手段と、前記押え足収納装置が備える複数の収納室に夫々対応してそれら各収納室に収納される押え足の種類の情報を記憶する第2記憶手段と、前記複数種類の模様から縫製作業を行う模様を選択するための模様選択手段と、前記第1記憶手段及び第2記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記模様選択手段により選択された当該模様を縫製するに適した押え足を収納している1つの収納室を決定する決定手段と、前記決定手段で決定された収納室を開放するように前記押え足収納装置の開閉手段に対して制御信号を出力する制御手段とを備えるところに特徴を有する。
【0020】
請求項13のミシンは、請求項12記載の発明において、前記押え足収納装置の各収納室毎に収納する押え足の種類をユーザが任意に設定するための操作手段と、前記操作手段による設定操作に応じて前記第2記憶手段に記憶されている押え足の種類の情報を上書きする設定手段とを備えるところに特徴を有する。
【0021】
請求項14のミシンは、請求項12又は13記載の発明において、前記押え足収納装置は、ミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用するものであって、前記押え足収納装置が前記ミシンベッドに装着されたときに該押え足収納装置との電気的接続を行う接続手段を備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1のミシンシステムによれば、ミシンと押え収納装置とを電気的に接続して構成されるものにおいて、押え足収納装置に、複数の収納室と、1つの収納室のみを選択的に開放する開閉手段とを設けると共に、ミシンに、第1記憶手段と、第2記憶手段と、模様選択手段と、決定手段と、制御手段とを設けたので、複数種類の押え足を保管することができると共に、ユーザが選択した模様の縫製に適した押え足を、間違うことなく取出すことができるという優れた効果を得ることができる。
【0023】
請求項2のミシンシステムによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、前記ミシンは、前記押え足収納装置の各収納室毎に収納する押え足の種類をユーザが任意に設定するための操作手段と、前記操作手段による設定操作に応じて前記第2記憶手段に記憶されている押え足の種類の情報を上書きする設定手段とを備えるので、ユーザは、各収納室に収納する押え足を、使用頻度や好みに合わせて設定することができ、ユーザにとってより使いやすいものとすることができる。
【0024】
請求項3のミシンシステムによれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、前記押え足収納装置は、一面に前記押え足の出し入れ用の開口部を有し、内部に前記開口部に連なる前記複数の収納室を並べて設けた箱状収容部を備え、前記開閉手段は、前記箱状収容部の開口部全体を覆うと共に前記収納室の並び方向に移動可能に設けられいずれか一つの収納室のみを開放する大きさの窓部を有したカバー部材と、前記窓部をいずれかの収納室に合致させるように該カバー部材を移動させる駆動手段とを備えるので、カバー部材及び駆動手段を設けるだけの比較的簡単な構成で、開閉手段を実現することができる。
【0025】
請求項4のミシンシステムによれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、前記押え足収納装置は、前記箱状収容部のカバー部材を露出させる露出位置と、該カバー部材を遮蔽する遮蔽位置との間で位置切替え可能な蓋部材と、前記蓋部材の位置を検出する検出手段と、前記検出手段が該蓋部材の露出位置を検出しているときには前記駆動手段による前記カバー部材の移動を禁止する禁止手段とを備えるので、ユーザが移動しているカバー部材に手を触れることを確実に防止でき、安全性を高めることができる。
【0026】
請求項5のミシンシステムによれば、請求項1から4のいずれかに記載の発明の効果に加え、前記押え足収納装置は、前記ミシンのミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用するので、押え足収納装置を補助テーブルとは別体に構成する場合に比べて、構成の簡単化、省スペース化を図ることができ、ユーザにとって使いやすいものとすることができる。
【0027】
請求項6のミシンシステムによれば、請求項5記載の発明の効果に加え、前記押え足収納装置及び前記ミシンは、該押え足収納装置が前記ミシンベッドに装着されたときに相互の電気的接続を行う接続手段を備えているので、ユーザが、ミシンベッドに対し、補助テーブルを兼用する押え足収納装置を装着すると同時に、接続手段によりそれらの電気的接続もなされるので、利便性をより高めることができる。
【0028】
本発明の請求項7の押え足収納装置によれば、複数種類の押え足を夫々収納する複数の収納室と、前記各収納室を開閉するものであって複数のうち1つの収納室のみを選択的に開放する開閉手段とを備えていると共に、前記開閉手段は、電気的に接続されるミシンからの制御信号に基づいて、該ミシンで選択された模様を縫製するに適した押え足を収納する収納室を開放するので、複数種類の押え足を保管できると共に、ユーザが、ミシンにおいて選択した模様の縫製に適した押え足を、間違うことなく取出すことができるという優れた効果を得ることができる。
【0029】
請求項8の押え足収納装置によれば、請求項7記載の発明の効果に加え、一面に前記押え足の出し入れ用の開口部を有し、内部に前記開口部に連なる前記複数の収納室を並べて設けた箱状収容部を備え、前記開閉手段は、前記箱状収容部の開口部全体を覆うと共に前記収納室の並び方向に移動可能に設けられいずれか一つの収納室のみを開放する大きさの窓部を有したカバー部材と、前記窓部をいずれかの収納室に合致させるように該カバー部材を移動させる駆動手段とを備えるので、カバー部材及び駆動手段を備えるという比較的簡単な構成で、開閉手段を実現することができる。
【0030】
請求項9の押え足収納装置によれば、請求項8記載の発明の効果に加えて、前記箱状収容部のカバー部材を露出させる露出位置と、該カバー部材を遮蔽する遮蔽位置との間で位置切替え可能な蓋部材と、前記蓋部材の位置を検出する検出手段と、前記検出手段が該蓋部材の露出位置を検出しているときには前記駆動手段による前記カバー部材の移動を禁止する禁止手段とを備えるので、ユーザが、移動しているカバー部材に手を触れることを確実に防止でき、安全性を高めることができる。
【0031】
請求項10の押え足収納装置によれば、請求項7から9のいずれかに記載の発明の効果に加え、前記ミシンのミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用するので、構成の簡単化、省スペース化を図ることができ、ユーザにとって使いやすいものとすることができる。
【0032】
請求項11の押え足収納装置によれば、請求項10記載の発明の効果に加え、前記ミシンベッドに装着されたときに前記ミシンとの電気的接続を行う接続手段を備えているので、ユーザが、ミシンベッドに対し、補助テーブルを兼用する押え足収納装置を装着すると同時に、接続手段によりそれらの電気的接続もなされるので、利便性をより高めることができる。
【0033】
本発明の請求項12のミシンによれば、請求項7から11のいずれかに記載の複数の収納室及び開閉手段を備える押え足収納装置と電気的に接続されるものであって、第1記憶手段と、第2記憶手段と、模様選択手段と、決定手段と、決定手段の決定に応じて押え足収納装置の開閉手段に対して制御信号を出力する制御手段とを設けたので、押え足収納装置に複数種類の押え足を保管できると共に、ユーザが選択した模様の縫製に適した押え足を、間違うことなく取出すことができるという優れた効果を得ることができる。
【0034】
請求項13のミシンによれば、請求項12記載の発明の効果に加え、前記押え足収納装置の各収納室毎に収納する押え足の種類をユーザが任意に設定するための操作手段と、前記操作手段による設定操作に応じて前記第2記憶手段に記憶されている押え足の種類の情報を上書きする設定手段とを備えるので、ユーザは、各収納室に収納する押え足を、使用頻度や好みに合わせて設定することができ、ユーザにとってより使いやすいものとすることができる。
【0035】
請求項14のミシンによれば、請求項12又は13記載の発明の効果に加え、ミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用する押え足収納装置が、前記ミシンベッドに装着されたときに、該押え足収納装置との電気的接続を行う接続手段を備えているので、ユーザが、ミシンベッドに対し、補助テーブルを兼用する押え足収納装置を装着すると同時に、接続手段によりそれらの電気的接続もなされるので、利便性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、ミシンの外観構成を示す斜視図
【図2】蓋部材を開放した状態の押え足収納装置の斜視図
【図3】蓋部材及び上板部を取外して示す押え足収納装置の平面図
【図4】蓋部材を取外して示す押え足収納装置の平面図
【図5】押え足収納装置の縦断正面図
【図6】電気的構成を示すブロック図
【図7】液晶ディスプレイ表示装置の模様選択時の表示画面の例を示す正面図
【図8】EEPROMに記憶される収納室データの構成を模式的に示す図
【図9】収納室データの設定の処理手順を示すフローチャート
【図10】収納室の開閉動作の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を、例えば刺繍縫製可能な家庭用ミシンに適用した一実施形態について、図1から図10を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るミシンシステム1の全体の外観を、正面(ユーザ側)から見た様子を示している。ミシンシステム1は、ミシン2と、ミシン2に着脱可能に装着される押え足収納装置3とから構成される。尚、ミシン2を操作するユーザ(操作者)が位置する側を前方、その反対側を後方とし、それら前後方向をY方向とする。また、脚柱部5が位置する側を右側、その反対側を左側とし、それら左右方向をX方向として説明する。
【0038】
本実施形態に係るミシン2は、図1で左右方向に延びるミシンベッド4と、ミシンベッド4の右端部から上方に延びる脚柱部5と、脚柱部5の上端から左方に延びるアーム部6とを一体的に有して構成されている。アーム部6の先端部が、ミシン頭部7とされている。前記アーム部6の上部には、カバー6aが開閉可能に設けられている。アーム部6内には、前記カバー6aの内側に位置して糸駒収容部8が設けられており、糸駒収容部8に上糸供給源としての糸駒9が着脱(交換)可能にセットされる。
【0039】
前記ミシン頭部7には、針棒10が設けられ、下端部に縫針11が装着されている。そして、前記ミシン頭部7には、前記針棒10(縫針11)の後ろ側に位置して押え棒12が設けられている。押え棒12の先端に、押え足13が着脱(交換)可能に装着されている。ここで、図1においては、後述する複数種類の押え足13の何れかが装着された状態を示したものとする。また、詳しく図示はしないが、ミシン頭部7内には、前記針棒10を上下動させる針棒駆動機構、針棒10を布送り方向と直交する方向(左右方向)に揺動させる針棒揺動機構、前記押え棒12を上下動させる押え棒駆動機構等が配設されている。
【0040】
さらに、前記アーム部6の前面側下部には、ミシンモータ14(図6にのみ図示)の起動又は停止を指示する起動・停止キー15、返し縫い動作を指示する返し縫いキー16、針棒10の停止位置を針上又は針下に切替える動作を指示する針上下キー17、糸切り動作を指示する糸切りキー18、押え足12を上昇又は下降させる動作を指示する押え上下キー19、縫製速度即ちミシンモータ14の回転速度を調整する速度調整つまみ20などの各種の操作キーが設けられている。
【0041】
前記脚柱部5の前面には、大型で縦長形状をなしフルカラー表示が可能な表示手段たる液晶ディスプレイ21が設けられている。液晶ディスプレイ21の表面にはタッチパネル22が設けられている。ユーザは、タッチパネル22を押圧操作することによって、所望の実用模様や刺繍模様等を選択したり、縫製に関する各種の機能を実行させたりすることができる。タッチパネル22が模様選択手段として機能すると共に、後述するように操作手段として機能する。
【0042】
前記ミシンベッド4の上面には、前記針棒10に対応して針板4aが設けられている。以下、いずれの機構も周知であるので図示はしないが、ミシンベッド4内には、針板4aの下側に位置して、下糸ボビンを収容し縫針11と協働して加工布に縫目を形成するための釜機構が設けられている。また、加工布を前後方向に送るための送り歯を、前記針棒10の上下動と同期させて、前後方向及び上下方向に駆動させる送り機構が設けられている。また、前記針棒駆動機構、釜機構、送り機構は、ミシン2内に配設されたミシンモータ14(図6参照)を駆動源として駆動される。
【0043】
前記ミシンベッド4の左方部分は、周知の構成なので詳しく図示しないが、筒状の加工布を縫製するために左方に延びる筒状に形成されている。前記筒状部分をフリーアームベッド部と称す。前記ミシンベッド4(フリーアームベッド部)の左側部分には、加工布を載置する面を拡張するための補助テーブル23が、前記フリーアームベッド部に嵌合するように着脱可能に装着されている。補助テーブル23は、ミシンベッド4への装着時にその上面がミシンベッド4(針板4a)の上面とほぼ面一となり、この状態で、加工布を送りながら直線縫いやジグザグ縫い等の実用縫いの縫製を行うことができる。そして、補助テーブル23には、本実施形態に係る押え足収納装置3が組込まれている。換言すれば、押え足収納装置3が補助テーブル23としての機能を兼用している。押え足収納装置3の詳細については、後述する。
【0044】
このとき、ミシンベッド4の前方の左側面には、メス側(凹側)のコネクタ24(図6にのみ図示)が設けられている。一方、補助テーブル23(押え足収納装置3)の前方の右側面には、図2〜図5にも示すように、前記コネクタ24に着脱自在に接続されるオス側(凸側)のコネクタ25が設けられている。補助テーブル23をミシンベッド4に装着すると、コネクタ24とコネクタ25が接続され、ミシン2と押え足収納装置3とが電気的に接続される。本実施形態では、これらコネクタ24,25が、ミシン2と押え足収納装置3とを電気的に接続する接続手段として機能する。
【0045】
尚、図示はしないが、前記ミシンベッド4には、前記補助テーブル23を取外した状態で、周知の刺繍機(刺繍枠移動装置)が着脱可能に装着される。刺繍機は、加工布を保持する刺繍枠が着脱可能に装着される。刺繍機には、ミシンベッド4の針板4a上において、前記刺繍枠をX方向(左右方向)及びY方向(前後方向)に自在に移送させる刺繍枠移送機構や、刺繍枠移送機構を駆動するX方向モータ及びY方向モータ等が内蔵されている。ミシンベッド4に刺繍機が装着されている状態では、刺繍機に設けられた図示しないコネクタが、前記コネクタ24に接続され、刺繍縫製を行うことができる。
【0046】
さて、前記押え足収納装置3及び補助テーブル23について、図2〜図5を参照して述べる。前記ミシン2には、付属品として、縫製する模様(縫製作業)の種類に応じて使い分けられる複数種類の押え足13が用意されており、押え棒12に対して択一的に装着される。ここでは、図3及び図5に示すように、押え足収納装置3に、5種類の押え足13を収納する場合を具体例とする。これら5種類の押え足13を区別する必要がある場合には、符号「13」の後に、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)を付して区別することとする。
【0047】
具体的には、図3、図5に示すように、押え足13(A)は、まつり縫いに用いられる「まつりぬい押え」であり、押え足13(B)は、直線縫いに用いられる「直線押え」であり、押え足13(C)は、文字模様等の縫製に用いられる「模様縫い押え」であり、押え足13(D)は、裁ち目かがり縫いに用いられる「裁ち目かがり押え」であり、押え足13(E)は、ファスナー付け、ピンタック等に用いられる「片押え」である。尚、図示はしていないが、ミシン2で刺繍縫製を行う場合には、押え棒12には、上記5種類とはまた別の、刺繍用の押え足が装着される。
【0048】
前記補助テーブル23は合成樹脂からなり、図2〜図4に示すように、全体として、前記ミシンベッド4のフリーアーム部の後部、左部、前部を囲う形状に構成されている。また、補助テーブル23の内側部分には底板部23aが設けられ、前記ミシンベッド4(フリーアーム部)に補助テーブル23を装着したときに、底板部23aがフリーアーム部の下方に位置する。そして、補助テーブル23の前方部分に、横長な矩形箱状をなすケース部26が設けられ、ケース部26内に押え足収納装置3が組込まれている。
【0049】
即ち、前記ケース部26は、図2〜図5に示すように、底壁部26a、右側壁部26b、左側壁部26c、前壁部26d、後壁部26eを有すると共に、その上面を覆う上板部27を有して構成されている。前記上板部27の中央部には、横長な矩形状に開口する開口部27aが形成されている。このように、開口部27aは、押え足収納装置3の上面(一面に相当)に配置される。
【0050】
そして、図3、図5に示すように、前記ケース部26内には、前記5種類の押え足13を夫々収納する複数(この場合5個)の収納室28を備える箱状収容部29が設けられる。箱状収容部29は、開口部27aの大きさに対応した上面が開放した横長で薄型の矩形箱状をなし、前記開口部27aの下部に位置して、つまり開口部27aに臨んで配設されている。図5に示すように、箱状収容部29の中が、4つの仕切壁29aによって区切られることによって、上面が開放した同じ大きさの収納室28が、左右方向に5個並べて設けられる。
【0051】
尚、箱状収容部29は、例えば前記ケース部26の後壁部26eに一体的に設けられている。また、前記5個の収納室28を区別する必要がある場合には、左から順に、1番から5番までの室番号を付して区別することとする。図3〜図5は、室番号が1番の収納室28に押え足13(A)が収納され、室番号が2番の収納室28に押え足13(B)が収納され、室番号が3番の収納室28に押え足13(C)が収納され、室番号が4番の収納室28に押え足13(D)が収納され、室番号が5番の収納室28に押え足13(E)が収納される。
【0052】
これと共に、ケース部26内には、前記各収納室28を開閉するものであって、5個の収納室28のうち、1つの収納室28のみを選択的に開放する開閉手段としての開閉機構30が設けられる。開閉機構30は、図2〜図5に示すように、軟質材料からなる薄板状(帯状)部材から構成されるカバー部材31と、カバー部材31を移動させる駆動機構32とを備える。前記カバー部材31は、箱状収容部29の各収納室28の前後方向寸法よりもやや大きい幅寸法を有した無端ベルトからなり、その一部には、図2〜図4に示すように、1つの収納室28の大きさに対応した、前後に長い矩形状の窓部31aが開口している。
【0053】
カバー部材31は、図5に示すように、前記ケース部26内の、箱状収容部29の左側に位置して設けられた駆動ローラ33と、箱状収容部29の右側に位置して設けられた従動ローラ34との間に掛渡されている。このとき、カバー部材31は、前記箱状収容部29を内包するように配置され、その上側部分が、箱状収容部29の上面側、言い換えれば上板部27の下面側に位置し、箱状収容部29の開口部全体を覆っている。これと共に、前記収納室28の並び方向に移動可能に設けられ、前記窓部31aが、いずれか一つの収納室28の上面のみを選択的に開放する。
【0054】
前記駆動ローラ33には、タイミングプーリからなる従動プーリ35が同軸に設けられている。そして、前記ケース部26内の駆動ローラ33の下方には、例えばステッピングモータからなる駆動モータ36が設けられている。駆動モータ36の出力軸には、タイミングプーリからなる駆動プーリ37が取付けられ、駆動プーリ37と前記従動プーリ35との間に、タイミングベルト38が掛渡されている。前記駆動モータ36は、押え足収納装置3に収容されている駆動回路39(図6にのみ図示)によって駆動される。
【0055】
これにて、駆動機構32が構成され、後述するミシン2の制御装置40(図6参照)により前記駆動モータ36が駆動制御されることにより、駆動プーリ37、タイミングベルト38、従動プーリ35を介して駆動ローラ33が回転され、もってカバー部材31が左右方向(X方向)に自在に移動される。ここで、駆動ローラ33の回転は、カバー部材31にスリップすることなく伝達されるとする。このとき、カバー部材31は、前記窓部31aをいずれかの収納室28の上面に合致させるように移動され、もって、窓部31aに合致した収納室28のみが開放されて押え足13の出し入れが可能となる。尚、図2〜図4では、左から2番目即ち室番号が2番の収納室28が開放された様子を示している。
【0056】
また、補助テーブル23のうち前側部分、即ちケース部26の上部には、蓋状をなし、該補助テーブル23の上面を構成する蓋部材41が、図示しないヒンジ部を介して開閉操作可能に設けられている。詳しくは、蓋部材41は、図1に示すように、前記上板部27の上面に重なるように位置してカバー部材31を遮蔽する遮蔽位置と、図2に示すように、手前側に回動操作されて上板部27の開口部27aひいてはカバー部材31を露出させる露出位置との間で位置切替え可能に設けられている。
【0057】
さらに、図2〜図4に示すように、補助テーブル23には、前記蓋部材41の位置を検出するための検出手段としての検出スイッチ42が設けられている。検出スイッチ42は、例えばマイクロスイッチからなり、ケース部26の左側壁部26cの外面側に取付けられている。これにて、検出スイッチ42は、前記蓋部材41の遮蔽位置において、該蓋部材41の裏面側に設けられた図示しない押圧部によりオンされ、蓋部材41の露出位置においてオフされる。
【0058】
尚、前記コネクタ25は、補助テーブル23の前側部分の右側壁部26bから右方に突出するように設けられている。補助テーブル23内に配設されている前記駆動モータ36を駆動するモータ駆動回路39及び前記検出スイッチ42は、配線58(図3参照)を介して前記コネクタ25に接続されている。コネクタ25が前記ミシン2のコネクタ24に接続されることにより、モータ駆動回路39及び検出スイッチ42は、制御装置40に接続される。
【0059】
図6は、ミシン2及び押え足収納装置3の電気的構成を概略的に示している。ここで、ミシン2の全体を制御する制御装置40は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU43、ROM44、RAM45、EEPROM46、入力インターフェイス47、出力インターフェイス48をバス49により相互に接続して構成されている。前記ROM44には、縫製動作を制御するための制御プログラムや、縫製動作に必要な模様データ等の各種のデータが記憶されている。
【0060】
このとき、本実施形態では、前記ROM44には、図示はしないが、縫製可能な複数種類の模様とそれら各模様を縫製するに適した押え足13の種類との対応関係の情報(以下、「押え足データ」と称する)が記憶されている。従って、ROM44が第1記憶手段として機能する。そして、前記EEPROM46には、図8に示すように、前記押え足収納装置3の各収納室28の室番号(1番〜5番)と、各収納室28に収納されている押え足13の種類の情報(以下、「収納室データ」と称する)が記憶されている。このEEPROM46に記憶されている収納室データは、書替え可能とされている。また、収納室データには、カバー部材31の窓部31aの現在の位置(室番号何番の収納室28を開放しているか)のデータも書込まれる。図8に例示した収納室データは、図2〜図5の状態に対応している。EEPROM46が第2記憶手段として機能する。
【0061】
前記入力インターフェイス47には、前記タッチパネル22、起動・停止キー15、返し縫いキー16、針上下キー17、糸切りキー18、押え上下キー19、速度調整つまみ20が接続されており、それらの操作信号が制御装置40に入力される。前記出力インターフェイス48には、駆動回路50を介して前記液晶ディスプレイ21が接続されていると共に、駆動回路51を介して前記ミシンモータ14が接続されている。
【0062】
更に、出力インターフェイス48には、駆動回路52,53,54を夫々介して針振りパルスモータ55、押え駆動モータ56、糸切りモータ57が接続されている。制御装置40は、それらを制御して縫製動作を実行する。前記出力インターフェイス48には、前記コネクタ24も接続されている。このとき、制御装置40は、コネクタ24を介して、補助テーブル23つまり押え足収納装置3が接続されているかどうか(更には刺繍機が接続されているかどうか)を検出する。
【0063】
前記制御装置40は、そのソフトウエア的構成、即ち制御プログラムの実行により、液晶ディスプレイ21の表示を制御する。このとき、縫製作業を行うにあたっては、例えばユーザの操作に基づいて、液晶ディスプレイ21に、図7に示すような模様選択画面を表示させる。この模様選択画面では、縫製可能な複数の模様がアイコン表示され、ユーザのタッチパネル22のタッチ操作により、所望の模様が選択される。模様が選択されると、液晶ディスプレイ21の画面の左上部には、選択された模様の縫製に適した押え足13の種類が表示される。
【0064】
そして、後の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、制御装置40は、ミシンベッド4に補助テーブル23が装着されている、つまり押え足収納装置3が接続されている状態で、ユーザにより所望の模様が選択されると、ROM44内の押え足データから、当該模様の縫製に適した必要な押え足13のデータを読出す。これと共に、その押え足13の種類を液晶ディスプレイ21に表示させる。また、前記EEPROM46内の収納室データから、該当する押え足13が収納されている収納室28(室番号)を決定する。そして、制御装置40は、決定された収納室28を開放させる、つまり当該収納室28の上方にカバー部材31の窓部31aを移動させるように、前記押え足収納装置3の開閉機構30を制御する(駆動回路39に制御信号を出力する)。
【0065】
これにて、押え足収納装置3の複数の収納室28の中から、ユーザが選択した模様を縫製するに適した押え足13を収納した1つの収納室28のみが開放されるのである。従って、制御装置40が決定手段及び制御手段として機能する。この後、ユーザが縫製の準備作業、即ち、押え足13の付替えや加工布のセット等を行った後、縫製をスタートさせると、制御装置40により、選択された模様についての縫製動作が実行されることは勿論である。
【0066】
また、これも後述するように、本実施形態では、前記EEPROM46に記憶されている収納室データをユーザが任意に設定する(書替える)ことができる。即ち、ユーザは、補助テーブル23、即ち押え足収納装置3の接続状態で、液晶ディスプレイ21(タッチパネル22)上で、収納室データの設定(更新)のモードを設定し、タッチパネル22を操作して収納室28の室番号を指定すると共に、指定した収納室28に収納する押え足13の種類を入力する。この入力は、例えば複数の選択肢の中から1つを選択することにより行われる。すると、制御装置40は、指定された室番号の収納室28が開放されるように開閉機構30を制御すると共に、EEPROM46内の収納室データをユーザが設定した通りに上書きする。
【0067】
従って、タッチパネル22が操作手段として機能し、制御装置40が設定手段として機能する。さらに、本実施形態では、制御装置40は、補助テーブル23(押え足収納装置3)の接続状態で、前記検出スイッチ42のオン・オフの信号に基づいて、オフ状態つまり蓋部材41が露出位置にあることを検出しているときには、前記駆動機構32(駆動モータ36)によるカバー部材31の移動を禁止する。従って、制御装置40は、禁止手段としても機能する。
【0068】
次に、上記構成のミシンシステム1の作用について、図9及び図10も参照して説明する。今、ミシンシステム1の使用開始時、つまり工場出荷時の状態においては、押え足収納装置3における収納室28と、各収納室28に収納されている押え足13の種類との対応関係の情報は予め初期設定されており、EEPROM46にはデフォルトの収納室データが記憶されている。この場合、デフォルトのまま、収納室28と押え足13の種類との対応関係を変更せずに、押え足収納装置3をそのまま使用しても良い。しかし、ユーザの好みや模様の使用頻度等によっては、各収納室28に収納する押え足13の種類を変更して(入替えて)、収納室データの設定(更新)を行ってもよい。
【0069】
図9のフローチャートは、収納室データの設定のモードにおいて、制御装置40が実行する処理手順を、ユーザが実行する操作も含めて示している。即ち、例えばユーザがタッチパネル22を操作して、収納室データの設定処理の実行を選択すると、まずステップS1にて、液晶ディスプレイ21に、ユーザが所望の収納室28の室番号及びそこに収納する押え足13の種類を入力(選択)操作するための選択入力画面が表示される。ステップS2では、ユーザがタッチパネル22を操作し、収納室28の室番号(1番から5番のいずれか)を入力(選択)すると共に、押え足13の種類を入力(選択)する。
【0070】
ステップS3では、カバー部材31の窓部31aの現在位置データと、選択された収納室28の室番号とから、窓部31aをその室番号の収納室28上まで移動させて該当する収納室28を開放させるために必要な駆動モータ36の回転方向及び駆動量が算出される。次のステップS4では、検出スイッチ42がオンされているか、つまり補助テーブル23の蓋部材41が遮蔽位置にあるかどうかが判断される。検出スイッチ42がオフ、つまり蓋部材41が露出位置にある場合には(ステップS4にてNo)、ステップS5にて、蓋部材41を閉じるように促すメッセージが、液晶ディスプレイ21に表示される。
【0071】
検出スイッチ42がオン状態にある(又はオンされた)場合には(ステップS4にてYes)、ステップS6にて、上記ステップS3で算出された回転方向及び駆動量で駆動モータ36が駆動され、カバー部材31の窓部31aが選択された室番号の収納室28を開放させるように移動される。これと共に、ステップS7では、EEPROM46の収納室データの上書きが行われる。この上書きでは、ステップS2で選択された室番号に関して選択された押え足13の種類のデータが更新されると共に、カバー部材31の窓部31aの現在位置のデータも更新される。
【0072】
ステップS8では、開放している収納室28に対し、ステップS2で選択された種類の押え足13を収納することをユーザに促すメッセージが、液晶ディスプレイ21に表示される。ステップS9では、蓋部材41を露出位置に切替え(開く)、開放している収納室28に選択した種類の押え足13を収納し、再び蓋部材41を遮蔽位置に切替える(閉じる)といったユーザの操作が行われる。また、ここで設定の処理を終了する場合には、ユーザは、タッチパネルで処理完了の操作を行う。ステップS10では、設定の処理が全て完了したかどうかが判断され、完了した場合には(Yes)、処理が終了し、未だ完了していない場合には(No)、ステップS1からの処理が繰返される。
【0073】
次に、図10のフローチャートは、ユーザが、所望の模様の縫製作業を行うべく、模様選択画面にて模様選択を行った場合に、制御装置40が実行する押え足13に関する処理の手順を示している。即ち、まずステップS21では、液晶ディスプレイ21に、ユーザが縫製すべき模様を選択するための模様選択画面が表示される。ユーザは、タッチパネル22のタッチ操作によって、所望の模様を選択する(ステップS22)。ユーザにより模様が選択されると(ステップS22にてYes)、ステップS23では、ROM44に記憶されている押え足データから、その模様の縫製に適した(必要な)押え足13の種類のデータが読出されると共に、模様選択画面(左上部)に、その押え足13の種類が表示される。
【0074】
ここで、一例を挙げると、図7に示すように、ユーザにより、複数の模様のうちの裁ち目かがり縫い、この場合、最下段の左側3種類のアイコンうちいずれかが選択された場合には、縫製に適した押え足13の種類として、「裁ち目かがり押え」の押え足13(D)が読出される。図7には、模様選択画面において裁ち目かがりが選択された場合に、画面の左上のコーナー部に、使用すべき押え足13の種類として「裁ち目かがり押え」が表示された様子を示している。
【0075】
ステップS24では、EEPROM46に記憶されている収納室データから、該当する押え足13を収納した、開放すべき収納室28の室番号が決定される。図7、図8の具体例では、「裁ち目かがり押え」の押え足13(D)は、室番号4番の収納室28に収納されている。ステップS25では、収納室データに必要な押え足13が存在したかどうかが判断される。収納室データ内に必要な押え足13が存在しなかった場合には(ステップS25にてNo)、ステップS26にて、該当する押え足13が、押え足収納装置3つまり補助テーブル23内に収納されていない旨のメッセージが、液晶ディスプレイ21に表示され、この処理が終了する。
【0076】
収納室データに必要な押え足13が存在している場合には(ステップS25にてYe)、ステップS27にて、収納室データの窓部31aの現在位置データと、上記ステップS24で決定された収納室28の室番号とから、窓部31aをその室番号の収納室28まで移動させて該当する収納室28を開放させるために必要な、駆動モータ36の回転方向及び駆動量が算出される。図7、図8の例では、窓部31aの現在位置が室番号2なので、カバー部材31の窓部31aを、室番号2から室番号4まで移動させるに必要な駆動モータ36の回転方向及び駆動量が算出される。
【0077】
次のステップS28では、検出スイッチ42がオンされているか、つまり補助テーブル23の蓋部材41が遮蔽位置にあるかどうかが判断される。検出スイッチ42がオフ、つまり蓋部材41が露出位置にある場合には(ステップS28にてNo)、ステップS29にて、蓋部材41を閉じるように促すメッセージが、液晶ディスプレイ21に表示される。検出スイッチ42がオン状態にある又はオンされた場合には(ステップS28にてYes)、ステップS30にて、上記ステップS27で算出された回転方向及び駆動量で駆動モータ36が駆動され、カバー部材31の窓部31aが選択された室番号の収納室28を開放させるように移動される。
【0078】
ステップS31では、EEPROM46の収納室データのうち、カバー部材31の窓部31aの現在位置のデータの上書き(更新)が行われる。そして、ステップS32では、押え足収納装置3つまり補助テーブル23から押え足13の取出しが可能である旨のメッセージが液晶ディスプレイ21に表示され、処理が終了する。これにより、ユーザが蓋部材41を開く、即ち露出位置に移動させると、選択された模様の縫製に適した種類の押え足13を収納した1つの収納室28のみが開放されているので、ユーザは、その収納室28から間違うことなく必要な押え足13を取出して、押え棒12に装着することができる。
【0079】
尚、図10のフローチャートでは図示していないが、ユーザによる押え足13の取出しの際、検出スイッチ42が一旦オフし、一定時間経過後に再びオンしたことを検出した場合には、蓋部材41が一旦開かれて、開放されている収納室28から押え足13が取出され、その後再び蓋部材41が閉じられたと推測することができる。その後、ユーザにより起動・停止キー15がオン操作されて動作がスタートされることにより、制御装置40により、選択された模様に関する縫製動作が実行されることは勿論である。
【0080】
このように本実施形態によれば、複数の収納室28を備える押え足収納装置3により、複数種類の押え足13を保管することができる。そして、ユーザが、液晶ディスプレイ21の模様選択画面にて縫製作業を行いたい模様を選択すると、選択された模様を縫製するに適した押え足13を収納している1つの収納室28が、正しく決定される。これと共に、制御装置40により、押え足収納装置3の開閉機構30が制御され、決定された収納室28のみが開放され、残りの収納室28は閉塞されるので、ユーザは、押え足収納装置3から、選択した模様の縫製に適した1つの押え足13を、間違うことなく確実に取出して装着することができる。
【0081】
特に本実施形態では、ユーザが、各収納室28に収納する押え足13の種類を任意に設定して、EEPROM46に記憶される収納室データを上書するように構成したので、ユーザにとってより使いやすいものとすることができる。
【0082】
また、特に本実施形態では、押え足収納装置3に、複数の収納室28を並べて設けた箱状収容部29を設けると共に、開閉機構30を、いずれか一つの収納室28のみを開放する大きさの窓部31aを有したカバー部材31と、その窓部31aをいずれかの収納室28に合致させるようにカバー部材31を移動させる駆動機構32とから構成したので、開閉機構30を比較的簡単な構成で実現することができる。
【0083】
このとき、箱状収容部29のカバー部材31の上面部を開閉可能に覆う蓋部材41を設けると共に、蓋部材41の位置を検出する検出スイッチ42を設け、検出スイッチ42により蓋部材41の露出位置を検出しているときにはカバー部材31の移動を禁止するように構成したので、ユーザが、移動しているカバー部材31に手を触れてしまうことを防止でき、安全性を高めることができる。
【0084】
更に、特に本実施形態では、押え足収納装置3を、ミシン2のミシンベッド4に着脱可能に装着される補助テーブル23に組込んで構成した(兼用させた)ので、構成の簡単化、省スペース化を図ることができ、ユーザにとって使いやすいものとすることができる。この場合、押え足収納装置3(補助テーブル23)がミシンベッド4に装着されたときに相互の電気的接続を行うコネクタ25,24を備えているので、ユーザが、ミシンベッド4に対し、補助テーブル23を装着すると同時に、押え足収納装置3とミシン2との電気的接続もなされるので、利便性をより高めることができる。
【0085】
尚、本発明は上記し且つ図面に示した実施形態に限定されるものではなく、様々な拡張、変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、EEPROM46に記憶された収納室データを、ユーザにより設定(上書き)可能に構成したが、操作手段及び設定手段は必要に応じて設ければよく、デフォルトのまま使用しても良い。
また、押え足収納装置の構成としても、例えば、箱状収納部に、複数個の収納室を円環状に並ぶように設け、その箱状収納部の開口部を覆うカバー部材に、それらの収納室のうち1個を開放させる窓部を設けるようにしても良い。この場合、カバー部材(窓部)側を固定的に設け、箱状収納部側を回転方向に移動させる構成とすることも可能である。
【0086】
また、カバー部材を無端ベルトではなく、有端ベルトとする構成としても良い。この場合、ベルトの夫々の両端を巻き取る巻取りローラを設け、それら両ローラの駆動によってベルトの巻取り(又は送出し)を行って、窓部の位置を移動させるように構成する。
また、カバー部材を窓部が形成された平板とし、平板を左右方向にスライド移動させる構成としても良い。
また、押え足の出し入れ用の開口部を、箱状収容部(補助テーブル)の前面に設ける構成であっても良い。
また、複数の収納室の夫々に開閉扉を設けると共に、ソレノイド等を用いてそれら扉を個々に開閉する機構からなる開閉手段を構成しても良い。
【0087】
蓋部材の開閉を検出する検出手段としても、メカ的な検出スイッチに限らず、光センサ等の他のセンサ類を用いることも可能である。
また、検出スイッチ42を、駆動モータ36を駆動する駆動回路系に設ける構成にしても良い。
更には、押え足収納装置を、ミシンとは別体に設けても良い。この場合、押え足収納装置とミシンとを有線(ケーブル)で接続しても良いし、無線接続、即ち、ブルートゥースのような近距離無線通信を用いたり、光通信を行うものを採用したりすることも可能である。
その他、ミシンの全体構成や、押え足の個数や種類などについても、様々な変更が可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0088】
1 ミシンシステム
2 ミシン
3 押え足収納装置
4 ミシンベッド
12 押え棒
13 押え足
21 液晶ディスプレイ
22 タッチパネル(模様選択手段、操作手段)
23 補助テーブル
24,25 コネクタ(接続手段)
27a 開口部
28 収納室
29 箱状収容部
30 開閉機構(開閉手段)
31 カバー部材
31a 窓部
32 駆動機構(駆動手段)
36 駆動モータ
40 制御装置(決定手段、制御手段、設定手段、禁止手段)
41 蓋部材
42 検出スイッチ(検出手段)
44 ROM(第1記憶手段)
46 EEPROM(第2記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の押え足のうちいずれかを択一的に押え棒に装着して縫製作業を行うミシンと、前記複数種類の押え足を収納する押え足収納装置とを、電気的に接続して構成されるミシンシステムであって、
前記押え足収納装置は、前記各押え足を夫々収納する複数の収納室と、
前記各収納室を開閉するものであって複数の収納室のうち1つの収納室のみを選択的に開放する開閉手段とを備えていると共に、
前記ミシンは、縫製可能な複数種類の模様とそれら各模様を縫製するに適した押え足の種類とが対応付けられて記憶されている第1記憶手段と、
前記押え足収納装置が備える複数の収納室に夫々対応してそれら各収納室に収納される押え足の種類の情報を記憶する第2記憶手段と、
前記複数種類の模様から縫製作業を行う模様を選択するための模様選択手段と、
前記第1記憶手段及び第2記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記模様選択手段により選択された当該模様を縫製するに適した押え足を収納している1つの収納室を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された収納室を開放するように前記開閉手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするミシンシステム。
【請求項2】
前記ミシンは、前記押え足収納装置の各収納室毎に収納する押え足の種類をユーザが任意に設定するための操作手段と、前記操作手段による設定操作に応じて前記第2記憶手段に記憶されている押え足の種類の情報を上書きする設定手段とを備えることを特徴とする請求項1記載のミシンシステム。
【請求項3】
前記押え足収納装置は、一面に前記押え足の出し入れ用の開口部を有し、内部に前記開口部に連なる前記複数の収納室を並べて設けた箱状収容部を備え、
前記開閉手段は、前記箱状収容部の開口部全体を覆うと共に前記収納室の並び方向に移動可能に設けられ、いずれか一つの収納室のみを開放する大きさの窓部を有したカバー部材と、前記窓部をいずれかの収納室に合致させるように該カバー部材を移動させる駆動手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のミシンシステム。
【請求項4】
前記押え足収納装置は、前記箱状収容部のカバー部材を露出させる露出位置と、該カバー部材を遮蔽する遮蔽位置との間で位置切替え可能な蓋部材と、
前記蓋部材の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段が該蓋部材の露出位置を検出しているときには前記駆動手段による前記カバー部材の移動を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする請求項3記載のミシンシステム。
【請求項5】
前記押え足収納装置は、前記ミシンのミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のミシンシステム。
【請求項6】
前記押え足収納装置及び前記ミシンは、該押え足収納装置が前記ミシンベッドに装着されたときに相互の電気的接続を行う接続手段を備えていることを特徴とする請求項5記載のミシンシステム。
【請求項7】
複数種類の押え足を収納するものであって、前記複数種類の押え足のうちいずれかを択一的に押え棒に装着して縫製作業を行うミシンに電気的に接続される押え足収納装置であって、
前記各押え足を夫々収納する複数の収納室と、
前記各収納室を開閉するものであって複数の収納室のうち1つの収納室のみを選択的に開放する開閉手段とを備えていると共に、
前記開閉手段は、前記ミシンからの制御信号に基づいて、該ミシンで選択された模様を縫製するに適した押え足を収納する収納室を開放することを特徴とする押え足収納装置。
【請求項8】
一面に前記押え足の出し入れ用の開口部を有し、内部に前記開口部に連なる前記複数の収納室を並べて設けた箱状収容部を備え、
前記開閉手段は、前記箱状収容部の開口部全体を覆うと共に前記収納室の並び方向に移動可能に設けられ、いずれか一つの収納室のみを開放する大きさの窓部を有したカバー部材と、前記窓部をいずれかの収納室に合致させるように該カバー部材を移動させる駆動手段とを備えることを特徴とする請求項7記載の押え足収納装置。
【請求項9】
前記箱状収容部のカバー部材を露出させる露出位置と、該カバー部材を遮蔽する遮蔽位置との間で位置切替え可能な蓋部材と、
前記蓋部材の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段が該蓋部材の露出位置を検出しているときには前記駆動手段による前記カバー部材の移動を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする請求項8記載の押え足収納装置。
【請求項10】
前記ミシンのミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の押え足収納装置。
【請求項11】
前記ミシンベッドに装着されたときに前記ミシンとの電気的接続を行う接続手段を備えていることを特徴とする請求項10記載の押え足収納装置。
【請求項12】
複数種類の押え足のうちいずれかを択一的に押え棒に装着して縫製作業を行うものであって、請求項7から11のいずれかに記載の押え足収納装置と電気的に接続されるミシンであって、
縫製可能な複数種類の模様とそれら各模様を縫製するに適した押え足の種類とが対応付けられて記憶されている第1記憶手段と、
前記押え足収納装置が備える複数の収納室に夫々対応してそれら各収納室に収納される押え足の種類の情報を記憶する第2記憶手段と、
前記複数種類の模様から縫製作業を行う模様を選択するための模様選択手段と、
前記第1記憶手段及び第2記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記模様選択手段により選択された当該模様を縫製するに適した押え足を収納している1つの収納室を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された収納室を開放するように前記押え足収納装置の開閉手段に対して制御信号を出力する制御手段とを備えることを特徴とするミシン。
【請求項13】
前記押え足収納装置の各収納室毎に収納する押え足の種類をユーザが任意に設定するための操作手段と、前記操作手段による設定操作に応じて前記第2記憶手段に記憶されている押え足の種類の情報を上書きする設定手段とを備えることを特徴とする請求項12記載のミシン。
【請求項14】
前記押え足収納装置は、ミシンベッドに着脱可能に装着される補助テーブルを兼用するものであって、
前記押え足収納装置が前記ミシンベッドに装着されたときに該押え足収納装置との電気的接続を行う接続手段を備えていることを特徴とする請求項12又は13記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−157450(P2012−157450A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18069(P2011−18069)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】