ミシン
【課題】フリーモーション縫製によって所望の形状の縫目を簡単な操作によって形成させる機能を備えたミシンを提供すること。
【解決手段】ミシンは、移送手段と、縫製手段と、操作状態に応じて、1つ以上の縫目によって構成される単位縫目を指定する第1出力信号を出力する第1操作手段と、操作状態に応じて、加工布に単位縫目を形成する位置を指示する第2出力信号を出力する第2操作手段とを備える。第1操作手段によって出力された第1出力信号と、第2操作手段によって出力された第2出力信号とに基づき、単位縫目が縫製される位置を指示する座標データを含む縫製データが作成される(S85からS105)。S105で作成された縫製データに従って、移送手段が駆動され、加工布が移送される。また、縫製手段が駆動され、加工布に単位縫目によって構成される縫目が形成される(S110)。
【解決手段】ミシンは、移送手段と、縫製手段と、操作状態に応じて、1つ以上の縫目によって構成される単位縫目を指定する第1出力信号を出力する第1操作手段と、操作状態に応じて、加工布に単位縫目を形成する位置を指示する第2出力信号を出力する第2操作手段とを備える。第1操作手段によって出力された第1出力信号と、第2操作手段によって出力された第2出力信号とに基づき、単位縫目が縫製される位置を指示する座標データを含む縫製データが作成される(S85からS105)。S105で作成された縫製データに従って、移送手段が駆動され、加工布が移送される。また、縫製手段が駆動され、加工布に単位縫目によって構成される縫目が形成される(S110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工布を所定の2方向に移送させる移送手段を備えるミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キルティング分野では、加工布をユーザの手動操作で自由に移送させながらミシンで縫目を縫製するフリーモーション縫製が行われている。フリーモーション縫製が実行される場合には、ミシンの送り歯は、針板上面から突出せず、加工布を移送させない。しかしながら、フリーモーション縫製に不慣れなユーザにとっては、加工布を所望の位置に移送させる操作が難しく、所望の位置に縫目を形成できないという問題があった。そこで、加工布が装着された刺繍枠を、ユーザの指示に従って所定の2方向に移送させることによりフリーモーション縫製を実行する機能を有するミシンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のミシンでは、マウス等の操作手段の操作状態に応じた出力信号に基づき刺繍枠を移送させて縫目を形成する。操作手段としてマウスが用いられる場合、刺繍枠の移送量はマウスの移送量に基づき定められ、刺繍枠の移送方向はマウスの移送方向に基づき定められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のミシンでは、フリーモーション縫製によって得られる縫目には、直線縫いが設定されていた。このため、縫目の形状を変えたい場合には、ユーザは操作手段を用いて縫目の形状を指示しなければならなかった。このため、例えば、フリーモーション縫製によって、ジグザグ縫いの縫目を形成させたい場合には、ユーザは操作手段をジグザグ縫いの形状に応じて操作しなければならなかった。したがって、操作手段の操作の困難性に起因して、実質的にフリーモーション縫製によって所望の縫目を形成できない場合があった。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、フリーモーション縫製によって所望の形状の縫目を簡単な操作によって形成させる機能を備えたミシンを提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するために、第1態様のミシンは、加工布を所定の2方向に移送する機能を有する移送手段と、下端に縫針が装着された針棒を上下動させる縫製手段とを備えるミシンにおいて、操作状態に応じて、1つ以上の縫目によって構成される単位縫目を指定する第1出力信号を出力する第1操作手段と、操作状態に応じて、前記加工布に前記単位縫目を形成する位置を指示する第2出力信号を出力する第2操作手段と、前記第1操作手段によって出力された前記第1出力信号と、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号とに基づき、前記単位縫目が縫製される位置を指示する座標データを含む縫製データを作成する縫製データ作成手段と、前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記移送手段を駆動させ、前記加工布を移送させる移送制御手段と、前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記縫製手段を駆動させ、前記加工布に前記単位縫目によって構成される縫目を形成させる縫製制御手段とを備えている。
【0007】
第1態様のミシンは、ユーザが指定した単位縫目によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。詳しくは後述するが、単位縫目としては、例えば、走り縫いと、ジグザグ縫いと、飾り模様縫いとが挙げられる。
【0008】
第1態様のミシンは、操作状態に応じて、前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目の幅方向及び当該幅方向と直交する方向である送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を指示する第3出力信号を出力する第3操作手段を備え、前記縫製データ作成手段はさらに、前記第3操作手段によって前記第3出力信号が出力された場合に、当該第3出力信号によって指示される前記拡大縮小率に基づき拡大又は縮小処理した前記座標データを作成する拡大縮小手段を備えてもよい。この場合ミシンは、第3出力信号に応じて幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの大きさを拡大又は縮小させた単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。
【0009】
第1態様のミシンにおいて、前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記送り方向の拡大縮小率を指示してもよい。この場合ミシンは、第3出力信号に応じて送り方向の大きさを拡大又は縮小させた単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。
【0010】
第1態様のミシンにおいて、前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記幅方向の拡大縮小率を指示してもよい。この場合ミシンは、第3出力信号に応じて幅方向の大きさを拡大又は縮小させた単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。
【0011】
第1態様のミシンにおいて、前記縫製データ作成手段はさらに、前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目を形成するためのデータである単位データを、前記第2出力信号に応じた数だけ生成するデータ生成手段と、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記データ生成手段によって生成された前記単位データを前記座標データに変換する変換手段とを備えてもよい。この場合ミシンは、座標データを、単位データに基づき容易に作成することができる。
【0012】
第1態様のミシンは、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記縫製手段の駆動速度を設定する速度設定手段を備えてもよい。この場合ミシンは、第2出力信号に追従させるように単位縫目を形成させることができる。したがって、ユーザは、既に縫製された単位縫目を確認しながらフリーモーション縫製を実行させることができる。
【0013】
第1態様のミシンにおいて、前記第1操作手段は、第1操作部材を備え、当該第1操作部材が傾倒された場合と、当該操作部材が傾倒されていない場合とで、異なる前記単位縫目を指定する前記第1出力信号を出力し、前記第2操作手段は、第2操作部材を備え、当該第2操作部材の傾倒操作に応じて、前記第2出力信号を出力し、前記第3操作手段は、前記第1操作部材の傾倒方向及び傾倒量に応じて、前記第3出力信号を出力してもよい。この場合、第2操作手段としてポインティングデバイスが用いられた場合には入力困難であった縫目の位置を指示する指示を、ユーザは第2操作部材を傾倒操作するという簡単な操作で入力することができる。例えば、第2操作手段から同じ出力信号を一定時間出力させたい場合には、ユーザは第2操作部材を一定の方向及び角度で一定時間傾倒させればよい。また、ユーザは第2操作手段を移送させずに第2操作部材を操作することができるので、ミシンは、第2操作手段としてポインティングデバイスが用いられる場合に比べ、第2操作部材の操作に必要なスペースを小さくすることができる。また、ユーザは第1操作部材を操作することによって、単位縫目を選択することができるとともに、選択された単位縫目の幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ミシン1の斜視図である。
【図2】ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】単位データの説明図である。
【図4】走り縫いの単位縫目の説明図である。
【図5】走り縫いの単位データの説明図である。
【図6】ジグザグ縫いの単位縫目の説明図である。
【図7】ジグザグ縫いの単位データの説明図である。
【図8】縫製データの説明図である。
【図9】止め縫いの縫製データの説明図である。
【図10】モード設定処理のフローチャートである。
【図11】メイン処理のフローチャートである。
【図12】メイン処理で実行される拡大/縮小処理のフローチャートである。
【図13】メイン処理において作成された縫製データを例示する説明図である。
【図14】走り縫いの単位縫目によって構成される縫目の説明図である。
【図15】ジグザグ縫いの単位縫目によって構成される縫目の説明図である。
【図16】メイン処理において作成された移送データを例示する説明図である。
【図17】飾り模様縫いの単位縫目が表示された画面400の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して順に説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0016】
まず、図1を参照して、ミシン1の物理的構成及び電気的構成について説明する。図1において、矢印Xの方向を左方向、その反対方向を右方向、矢印Yの方向を前方向、その反対方向を後方向と言う。図1に示すように、ミシン1のミシン本体85は、ミシンベッド2と、脚柱部3と、アーム部4とを備えている。ミシンベッド2は、左右方向に長く伸びている。脚柱部3は、ミシンベッド2の右端部から上方へ伸びている。アーム部4は、脚柱部3の上端から左方へ延びている。アーム部4の左先端部には、頭部5がある。脚柱部3の正面には、表面にタッチパネル16を備えた液晶ディスプレイ(以下、「LCD」と言う。)10が設けられている。LCD10には、縫製模様及び縫製条件の入力キー等が表示される。LCD10に表示された入力キー等の位置に対応したタッチパネル16の箇所を、指又は専用のタッチペンを用いて操作すること(以下、この操作を「パネル操作」と言う。)によって、ユーザは縫製模様及び縫製条件等を選択できる。
【0017】
ミシンベッド2の内部には、加工布を移送する送り歯(図示せず)と、送り歯を前後方向及び上下方向に駆動する送り機構(図示せず)と、パルスモータ78(図2参照)と、釜(図示せず)と、釜駆動機構(図示せず)と、下軸(図示せず)とが収納されている。パルスモータ78は、送り歯による加工布(図示せず)の送り量を調整する。釜は下糸(図示せず)が巻回されたボビン(図示せず)を収納する。下軸は釜駆動機構を駆動し、釜駆動機構は釜を回転させる。下軸は、タイミングベルト(図示せず)を介して伝達された主軸(図示せず)の回転力によって、後述する主軸と同期して回転する。ミシンベッド2の上面には、針板80がある。ミシンベッド2の左端には、刺繍装置30が装着されている。刺繍装置30が使用されない場合には、ミシンベッド2の左端には補助テーブル(図示せず)が装着される。刺繍装置30がミシンベッド2の左端に装着されると、刺繍装置30はミシン1に電気的に接続される。このとき、送り歯は、針板80から突出しない不作用位置に保持される。刺繍装置30の詳細については後述する。
【0018】
脚柱部3とアーム部4との内部には、ミシンモータ79(図2参照)と、主軸と、針棒6と、針棒上下動機構(図示せず)と、針振り機構(図示せず)とが収納されている。針棒6の下端部には、縫針7が装着されている。ミシンモータ79は、タイミングベルト(図示せず)を介して主軸を回転させる。針棒上下動機構は、主軸により駆動されて針棒6を上下動させる。針振り機構は、パルスモータ77(図2参照)を駆動源として針棒6を左右方向に揺動させる。針棒6の後ろ側には、上下方向に伸びる押え棒(図示せず)がある。押え棒の下端部には、押えホルダ(図示せず)が固定されている。押えホルダには、加工布(図示せず)を押える押え足47が装着されている。
【0019】
アーム部4には、開閉カバー21が取り付けられている。開閉カバー21は、アーム部4の長手方向に設けられ、アーム部4の上後端部に左右方向向きの軸回りに開閉可能に支持されている。開閉カバー21を開けた状態の、アーム部4の上部中央近傍には、糸収容部23が設けられている。糸収容部23は、ミシン1に糸を供給する糸駒20を収容するための凹部である。糸収容部23の脚柱部3側の内壁面には、頭部5に向かって突出する糸立棒22が設けられている。糸駒20が備える挿入孔(図示せず)は、糸立棒22に挿入される。図示しないが、糸駒20の糸は、頭部5に設けられた複数の糸掛部(図示せず)を経由して、縫針7に上糸として供給される。ミシン1は、糸掛部として、例えば、糸調子器(図示せず)と、糸取バネ(図示せず)と、天秤(図示せず)とを備える。糸調子器及び糸取バネは、上糸の糸張力を調整する。天秤は、上下に往復駆動することによって上糸を引き上げる。縫針7と、天秤と、釜との協働により、上糸及び下糸からなる縫目が加工布に形成される。
【0020】
脚柱部3の右側面には、プーリ(図示せず)が設けられている。プーリは、手動で主軸(図示せず)を回転させ、針棒6を上下動させる。また、脚柱部3の右側面には、ミシン本体85とは別体に設けられたジョイスティック90が接続されている。ジョイスティック90は、第1レバー91と、第2レバー92と、第1ボタン93と、第2ボタン94と、筐体95とを備える。第1レバー91と、第2レバー92とは、直方体状の筐体95に保持された棒状の操作部材であり、筐体95の上面に対して、360度の方向に傾倒可能である。第1ボタン93と、第2ボタン94とは、筐体95の上面に設けられ、平面視円状のボタンである。ジョイスティック90は、通常処理実行時は、タッチパネル16と同様な指示を入力する操作手段として機能する。一方、後述するように、フリーモーション縫製を実行するメイン処理実行時においては、ジョイスティック90は、第1レバー91の傾倒操作に応じて刺繍枠32の移送方向及び移送距離(移送量)を指示する。ジョイスティック90から出力される出力信号の詳細については後述する。
【0021】
頭部5及びアーム部4の正面には、正面カバー59が設けられている。正面カバー59には、縫製開始・停止スイッチ41,速度調整摘み43,及びその他の操作スイッチが設けられている。縫製開始・停止スイッチ41は、縫製の開始及び停止を指示するスイッチである。ミシン1の停止中に縫製開始・停止スイッチ41が押圧されるとミシン1の運転が開始され、ミシン1の運転中に縫製開始・停止スイッチ41が押圧されるとミシン1の運転が停止される。速度調整摘み43は、主軸(図示せず)の回転速度を調整する。
【0022】
次に、図1を参照して、刺繍装置30について説明する。刺繍装置30は、刺繍枠32と、キャリッジ(図示せず)と、キャリッジカバー33と、前後移送機構(図示せず)と、左右移送機構(図示せず)とを備える。刺繍枠32は、加工布34を保持する。キャリッジは、刺繍枠32を着脱可能に支持する。キャリッジの右方には、刺繍枠32が装着される凹溝部(図示せず)が設けられている。凹溝部は、キャリッジの長手方向に沿って伸長している。キャリッジカバー33は、概略、前後方向に長い直方体状の形状を有し、キャリッジを収容する。キャリッジカバー33の内部には、前後移送機構(図示せず)が設けられている。前後移送機構は、Y軸モータ82(図2参照)を駆動源として、刺繍枠32が装着されたキャリッジを前後方向(Y軸方向)に移送する。左右移送機構は、刺繍装置30の本体内に設けられている。左右移送機構は、X軸モータ81(図2参照)を駆動源として、刺繍枠32が装着されたキャリッジと、前後移送機構と、キャリッジカバー33とを左右方向(X軸方向)に移送する。Y軸モータ82及びX軸モータ81に対する制御信号は、後述するCPU61(図2参照)によって出力される。なお、刺繍枠32は図1に示すサイズのものだけでなく、図示はしないが様々なサイズの刺繍枠が用意されている。
【0023】
次に、図2を参照して、ミシン1の主な電気的構成について説明する。図2に示すように、ミシン1の制御部60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64と、外部アクセスRAM65と、入出力インターフェイス(I/O)66とを備え、これらはバス67によって相互に接続されている。
【0024】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62等に記憶されたプログラムに従って、各種演算及び処理を実行する。ROM62は、プログラム記憶エリアと、単位データ記憶エリアとを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、CPU61によって実行されるモード設定プログラムと、メインプログラムとを含む複数のプログラムが記憶されている。モード設定プログラムは、後述するモード設定処理を実行するためのプログラムである。メインプログラムは、後述するメイン処理を実行するためのプログラムである。単位データ記憶エリアには、複数種類の単位データが記憶されている。単位データとは、1つ以上の縫目によって形成される縫目の最小単位である単位縫目を縫製するためのデータである。本実施形態では、単位データとして、走り縫いをするための一針データと、ジグザグ縫いをするための二針データとを含むデータが単位データ記憶エリアに記憶されている。単位データの詳細については後述する。
【0025】
RAM63は、任意に読み書き可能な記憶素子であり、例えば、プログラム記憶エリアに記憶されている各種プログラムが実行される際に得られる演算結果を記憶する。EEPROM64は、読み書き可能な記憶素子であり、プログラム記憶エリアに記憶されている各種プログラムが実行される際に使用される各種パラメータが記憶されている。外部アクセスRAM65には、カードスロット17が接続されている。カードスロット17は、メモリカード18と接続可能である。カードスロット17とメモリカード18とを接続すれば、メモリカード18の情報の読み取り、及び書き込みを行うことができる。
【0026】
I/O66には、縫製開始・停止スイッチ41と、速度調整摘み43と、駆動回路70から75と、ジョイスティック90と、タッチパネル16とが接続されている。駆動回路70は、パルスモータ77を駆動させる。パルスモータ77は、針振り機構(図示せず)の駆動源である。駆動回路71は、送り量調整用のパルスモータ78を駆動させる。駆動回路72は、ミシンモータ79を駆動させる。ミシンモータ79は、主軸(図示せず)の駆動源である。駆動回路73は、X軸モータ81を駆動させる。駆動回路74は、Y軸モータ82を駆動させる。駆動回路75はLCD10を駆動させる。ジョイスティック90は、操作部材に応じた出力信号を制御部60に出力する。前述のように、ジョイスティック90は、操作部材として、第1レバー91と、第2レバー92と、第1ボタン93と、第2ボタン94とを備える。I/O66には、図示しない他の構成要素が適宜接続される。
【0027】
次に、ROM62に記憶された単位データについて説明する。単位データは、ステッチ数mと、ステッチ数m個の初期座標データとを備える。ステッチ数mは、単位縫目を構成する縫目の数を表す。ステッチ数m個の初期座標データは、単位縫目を構成する縫目の相対位置を指定する座標データを作成する際に用いられるデータである。初期座標データは、刺繍座標系100(図1参照)の相対座標で表される初期X座標データと、初期Y座標データとを備える。刺繍座標系は、キャリッジ(図示せず)を移送するX軸モータ81及びY軸モータ82の駆動量を規定する座標系である。刺繍座標系100は、ミシン1の左右方向がX軸方向であり、ミシン1の前後方向がY軸方向である。刺繍座標系の原点は、刺繍枠32の内側に設定される矩形の刺繍領域の左奥の角とする。なお、縫目が形成される方向と、刺繍枠32の移送方向は逆となる。例えば、縫目の形成方向が、ミシン1の前から後ろに向かう方向である場合、刺繍枠32はミシン1の後ろから前に向かう方向に移送される。
【0028】
図3のように、単位データは、1番目のデータ101にステッチ数mが設定され、2番目以降のデータ102に、m組の初期X座標データと、初期Y座標データとが設定される。走り縫いとジグザグ縫いとを例に単位縫目と単位データの具体例について説明する。図4のように、走り縫いを形成するための単位縫目は、ベクトル302で表される一針の縫目である。図4において、点線で示す格子301は、0.1mmを1unitとする相対座標系を示す。図4の相対座標系では、紙面左右方向が刺繍座標系のX軸方向と対応し、紙面上下方向が刺繍座標系のY軸方向と対応している。格子301は、縫製されない。ベクトル302の長さは、縫目の長さを示す。ベクトル302が示す方向は、縫目の進行方向を示す。図5のように、走り縫いを縫製するための単位縫目の単位データは、ステッチ数1を表すデータ111と、1組の初期座標データ112(初期X座標データ及び初期Y座標データ)とを含む。初期座標データ112は、0.1mmを1unitとする数字で表される。同様に、図6のように、ジグザグ縫いを形成するための単位縫目は、ベクトル311とベクトル312とで表される二針の縫目である。図6において、矢印313はジグザグ縫いの送り方向を示し、矢印314はジグザグ縫いの幅方向を示す。矢印313で示す送り方向は、矢印314で示す幅方向に直交する。図7のように、ジグザグ縫いを縫製するための単位縫目の単位データは、ステッチ数2を表すデータ121と、2組の初期座標データ122と初期座標データ123とを含む。
【0029】
次に、図8を参照して、ジョイスティック90の操作状態に応じて作成される縫製データについて説明する。図8のように、縫製データは、データ201及びデータ202のように、識別コードと、座標データとの組合せを1単位としたデータである。識別コードは、縫製に関する種々の制御の種類を定義する。識別コードとしては、例えば、ステッチと、移送と、色替えと、糸切りと、一時停止とが挙げられる。座標データは、現在の針落ち位置に対する刺繍座標系100(図1参照)の相対座標で表され、刺繍枠32の移送方向及び移送量を指示する。針落ち位置は、刺繍枠32に装着された加工布34に縫針7が刺さる位置である。
【0030】
次に、止め縫いを形成するための縫製データ(以下、単に「止め縫いデータ」と言う。)を図9を参照して説明する。本実施形態では止め縫いとして、数針分の縫目を密集させた縫目を形成する。止め縫いデータは、例えば、ROM62に記憶された図9のデータが用いられる。図9に示すように、本実施形態の止め縫いデータは、データ211から213で表される3針の縫製データを含む。
【0031】
次に、ジョイスティック90が備える操作部材の操作状態に応じた出力信号について説明する。第1レバー91及び第2レバー92は、自身の傾倒方向及び傾倒量(角度)に応じた出力信号を制御部60に出力する。本実施形態の第1レバー91の出力信号は、図1の第1レバー91の座標系200のベクトルデータ(x,y)を含む。座標系200において、Zc軸は、非操作時の第1レバー91の延伸方向と重なる。Xc軸は、Zc軸が筐体95の上面と交わる点を通り、筐体95の長手方向と平行に設定され、Yc軸は、Zc軸が筐体95と交わる点を通り、筐体95の上面の短辺と平行に設定されている。座標系200の原点は、第1レバー91が傾倒操作される際の回転中心となる。
【0032】
傾倒方向θは、Xc−Yc平面上において、座標系200の原点からXc軸プラス側(筐体95の右方)に向かうXc軸上のベクトルと、第1レバー91の延伸方向をZc軸のプラス側(筐体95の上方)からXc−Yc平面上に投影した線とがなす角によって表される。傾倒方向θは、反時計回りの角度をプラスの角度で表される。傾倒方向θは、ベクトルデータを用いた式θ=tan−1(y/x)によって算出される。傾倒量Tは、座標系200の原点からZc軸プラス側に向かうZc軸上のベクトルと、第1レバー91の延伸方向とがなす角に応じて決定される段階値によって表される。本実施形態の傾倒量Tは、0から127の128段階のいずれかの値をとる。より具体的には、傾倒量Tは、ベクトルデータによって表されるベクトルの長さに対応し、式T=√(x2+y2)によって算出される。第2レバー92の出力信号は、第1レバー91と同様のベクトルデータを含む。第1ボタン93及び第2ボタン94は、操作されているか否かに応じた出力信号を制御部60(図2参照)に出力する。
【0033】
次に、フリーモーション縫製が実行される場合の処理の概要について説明する。フリーモーション縫製が実行される場合、ミシン1では、図10のモード設定処理と、図11のメイン処理とが実行される。モード設定処理では、第1ボタン93の操作に応じて、ミシン1の動作モードが、縫製モードと非縫製モードとのいずれかに設定される。メイン処理では、第1レバー91の傾倒操作に応じて、フリーモーション縫製又は刺繍枠32の移送が実行される。動作モードに縫製モードが設定されている場合、ミシン1は、第1レバー91の傾倒操作に応じて、フリーモーション縫製を実行する。動作モードに非縫製モードが設定されている場合、ミシン1は、第1レバー91の傾倒操作に応じて刺繍枠32を移送する。
【0034】
ミシン1では、第2レバー92が操作されているか否かに応じて、フリーモーション縫製によって形成される縫目の種類が、走り縫いと、ジグザグ縫いとのいずれかに設定される。具体的には、第2レバー92が操作されていない場合には、縫目の種類に走り縫いが設定され、第2レバー92が操作されている場合には、縫目の種類にジグザグ縫いが設定される。さらにミシン1は、後述する拡大/縮小処理において、所定の場合に、第2レバー92の出力信号に応じて、ジグザグ縫いの幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの大きさを拡大又は縮小する。所定の場合とは、以下の2つの場合の少なくともいずれかである。1つ目は、ジグザグ縫いの幅方向の大きさを変更するか否かを示す「幅方向の大きさ変更」に「有効」が設定されている場合である。2つ目は、ジグザグ縫いの送り方向の大きさを変更するか否かを示す「送り方向の大きさ変更」に「有効」が設定されている場合である。「幅方向の大きさ変更」及び「送り方向の大きさ変更」の設定は、例えば、パネル操作に基づき実行され、EEPROM64に記憶されている。
【0035】
拡大/縮小処理における幅方向及び送り方向の拡大縮小率は、第2レバー92から出力された出力信号に含まれるベクトルデータ(x,y)と、EEPROM64に記憶された倍率設定テーブルとに基づき決定される。倍率設定テーブルは、ベクトルデータ(x,y)と、拡大縮小率との対応関係を記憶する。本実施形態では、ベクトルデータに応じて、0から40倍の倍率が設定されている。より具体的には、ミシン1は、xがプラスである場合に、ジグザグ縫いの幅方向の大きさをxに対応する倍率で拡大し、xがマイナスである場合に、ジグザグ縫いの幅方向の大きさをxに対応する倍率で縮小する。同様に、ミシン1は、yがプラスである場合に、ジグザグ縫いの送り方向の大きさをyに対応する倍率で拡大し、yがマイナスである場合に、ジグザグ縫いの送り方向の大きさをyに対応する倍率で縮小する。図10のモード設定処理と、図11のメイン処理とのそれぞれは、フリーモーション縫製を行う指示が入力された場合に、ROM62に記憶されたプログラムに従い、CPU61が実行する。フリーモーション縫製を行う指示は、例えば、パネル操作によって入力される。
【0036】
次に、図10のモード設定処理を説明する。図10のように、モード設定処理ではまず、第1ボタン93が操作されたか否かが判断される(S5)。第1ボタン93が操作されたか否かは、第1ボタン93から制御部60に出力される出力信号に基づき判断される。本実施形態では、第1ボタン93が操作された場合の出力信号が、制御指示として取得される。制御指示は、ミシンモータ79の制御を開始又は終了させることを指示する。ミシン1の動作モードは、制御指示に応じて切り替えられる。
【0037】
第1ボタン93が操作されていない場合には(S5:No)、後述するS35の処理が実行される。第1ボタン93が操作された場合には(S5:Yes)、止め縫いデータが作成され、作成された止め縫いデータはRAM63に記憶される(S10)。S10が実行されることによって、ミシン1の動作モードが切り替えられる毎に、止め縫いデータが形成される。S10では、ROM62に記憶されている止め縫い製データ(図9参照)が生成される。次に、S10で作成された止め縫いデータに基づき、加工布34に止め縫いが形成される(S15)。S15では、S10で作成された止め縫いデータに従って、駆動回路73と、駆動回路74とに制御信号が出力され、刺繍枠32移送されるとともに、駆動回路72に制御信号が出力され、針棒6が上下に駆動される。
【0038】
次に、EEPRPOM64が参照され、ミシン1の現在の動作モードに縫製モードが設定されているか否かが判断される(S20)。動作モードに縫製モードが設定されている場合(S20:Yes)、動作モードに非縫製モードが設定され、設定された動作モードがEEPROM64に記憶される(S25)。動作モードに非縫製モードが設定されている場合(S20:No)、動作モードに縫製モードが設定され、設定された動作モードがEEPROM64に記憶される(S30)。
【0039】
S5において第1ボタン93が操作されていない場合(S5:No)と、S25と、S35とのいずれかの次に、フリーモーション縫製時の処理を終了する指示が入力されたか否かが判断される(S35)。フリーモーション縫製時の処理を終了する指示は、例えば、パネル操作によって入力される。終了する指示が入力されていない場合には(S35:No)、処理はS5に戻る。終了する指示が入力された場合には(S35:Yes)、モード設定処理は終了する。
【0040】
次に、図11のメイン処理について説明する。図11のように、メイン処理ではまず、第1レバー91が操作されたか否かが判断される(S50)。第1レバー91が操作されたか否かは、第1レバー91から制御部60に出力される出力信号に基づき判断される。第1レバー91が操作されていない場合には(S50:No)、後述するS165の処理が実行される。第1レバー91が操作された場合には(S50:Yes)、第1レバー91の傾倒方向θが取得され、取得された傾倒方向θはRAM63に記憶される(S55)。前述のように、傾倒方向θは、第1レバー91から制御部60に出力された出力信号に基づき取得される。
【0041】
次に、EEPROM64が参照され、ミシン1の動作モードが縫製モードであるか否かが判断される(S60)。ミシン1の動作モードは、前述のモード設定処理において設定される。ミシン1の動作モードが縫製モードである場合(S60:Yes)、第2レバー92が操作されているか否かが判断される(S65)。第2レバー92が操作されているか否かは、第2レバー92から制御部60に出力されている出力信号に基づき判断される。第2レバー92が操作されている場合には(S65:Yes)、図7のジグザグ縫いを形成するための単位データが生成され、生成された単位データはRAM63に記憶される(S70)。ミシン1の動作モードが非縫製モードである場合(S60:No)、又は第2レバー92が操作されていない場合には(S65:No)、図5の走り縫いを形成するための単位データが生成され、生成された単位データはRAM63に記憶される(S75)。S70及びS75では、ROM62に記憶されている単位データに基づき、縫目の種類に応じた単位データが生成される。
【0042】
S70又はS75の次に、パラメータnに1が設定され、パラメータnはRAM63に記憶される(S80)。次に、S70及びS75で生成された単位データに含まれるn番目の初期座標データが取得され、取得された初期座標データはRAM63に記憶される(S85)。例えば、S70で図7の単位データが取得された場合、n=1の初期座標データとして初期座標データ122が取得される。また例えば、S75で図5の単位データが取得された場合、n=1の初期座標データとして初期座標データ112が取得される。
【0043】
次に、第2レバー92から出力された出力信号に応じて、S85で取得されたデータ(Xn,Yn)が拡大又は縮小処理され、拡大又は縮小処理によって得られたデータ(X´n,Y´n)はRAM63に記憶される(S90)。図12を参照して、拡大/縮小処理の詳細を説明する。図12のように、拡大/縮小処理では、まず、第2レバー92から制御部60に出力される出力信号に基づき、送り方向の入力があるか否かが判断される(S200)。出力信号に含まれるベクトルデータの、yの値が0ではない場合に、送り方向の入力があると判断される(S200:Yes)。送り方向の入力がある場合(S200:Yes)、EEPROM64が参照され、「送り方向の大きさ変更」が有効となっているか否かが判断される(S205)。有効である場合(S205:Yes)、送り方向の大きさの倍率が設定され、設定された倍率はRAM63に記憶される(S215)。S215では、出力信号に含まれるベクトルデータのyの値と、EEPROM64に記憶された倍率設定テーブルとに基づき送り方向の倍率が設定される。S200で送り方向の入力がない場合(S200:No)、又はS205で有効ではない場合(S205:No)、送り方向の大きさの倍率に初期値が設定され、設定された倍率がRAM63に記憶される(S210)。本実施形態の初期値は1である。
【0044】
S210又はS215の次に、第2レバー92から制御部60に出力される出力信号に基づき、幅方向の入力があるか否かが判断される(S220)。出力信号に含まれるベクトルデータの、xの値が0ではない場合に、幅方向の入力があると判断される(S220:Yes)。幅方向の入力がある場合(S220:Yes)、EEPROM64が参照され、「幅方向の大きさ変更」が有効となっているか否かが判断される(S225)。有効である場合(S225:Yes)、幅方向の大きさの倍率が設定され、設定された倍率はRAM63に記憶される(S235)。S235では、出力信号に含まれるベクトルデータのxの値と、EEPROM64に記憶された倍率設定テーブルとに基づき送り方向の倍率が設定される。S220で幅方向の入力がない場合(S220:No)、又はS225で有効ではない場合(S225:No)、幅方向の大きさの倍率に初期値が設定され、設定された倍率がRAM63に記憶される(S230)。本実施形態の初期値は1である。
【0045】
次に、S85で取得されたデータ(Xn,Yn)に対して、拡大処理又は縮小処理が実行され、拡大処理又は縮小処理された後のデータ(Xn´,Yn´)がRAM63に記憶される(S240)。データ(Xn´,Yn´)は、式(Xn´,Yn´)=(Xn×(送り方向の倍率),Yn×(幅方向の倍率))によって算出される。S215で送り方向の倍率に0.5倍が設定され、S235で幅方向の倍率に1倍が設定された場合を想定する。S85で図7の初期座標データ122が取得された場合を具体例1とすると、具体例1では、(X1´,Y1´)=(2.5,10)が算出される。S85で図7の初期座標データ123が取得された場合を具体例2を想定する。具体例2では、(X2´,Y2´)=(2.5,−10)が算出される。S65で第2レバー92が操作されず(S65:No)、単位データが生成された場合を具体例3とすると、具体例3では、送り方向及び幅方向の入力はない(S200:NO,S210,S220:No,S230)。よって、具体例3では、(X1´,Y1´)=(10,0)が算出される。S240の次に、拡大/縮小処理は終了し、メイン処理に戻る。
【0046】
S90の次に、S55で取得された傾倒方向θに基づきS90で拡大又は縮小処理されたデータ(Xn´,Yn´)が座標データに変換され、変換処理によって作成された座標データ(Xn´´,Yn´´)はRAM63に記憶される(S95)。上述の具体例1において、S55で傾倒方向θが60度と取得された場合、式(X1´´,Y1´´)=(X1´cosθ−Y1´sinθ,X1´sinθ+Y1´cosθ)に基づき、(X1´´,Y1´´)=(−7.41,7.17)が算出される。上述の具体例2において、S55で傾倒方向θが60度と取得された場合、式(X2´´,Y2´´)=((X1´+X2´)cosθ−(Y1´+Y2´)sinθ,(X1´+X2´)sinθ+(Y1´+Y2´)cosθ)−(X1´´,Y1´´)に基づき、(X2´´,Y2´´)=(9.91,−2.83)が算出される。上述の具体例3において、S55で傾倒方向θが60度と取得された場合、具体例1と同様の式に基づき、(X1´´,Y1´´)=(5,8.66)が算出される。
【0047】
次に、ミシン1の動作モードが縫製モードであるか否かが判断される(S100)。ミシン1の動作モードが非縫製モードである場合(S100:No)の処理は後述する。ミシン1の動作モードが縫製モードである場合(S100:Yes)、縫製データが作成され、作成された縫製データがRAM63に記憶される(S105)。縫製データは、S95で拡大又は縮小処理された座標データに、識別コードが付加されることによって作成される。例えば、上述の具体例1の座標データ(X1´,Y1´)に識別コード「ステッチ」が付加されることによって、図13の縫製データ221が作成される。同様に、具体例2の座標データに識別コード「ステッチ」が付加されることによって、縫製データ222が作成され、具体例3の座標データに識別コード「ステッチ」が付加されることによって、縫製データ223が作成される。
【0048】
次に、S105で作成された縫製データに基づき、駆動回路72から74に制御信号が出力され、1つの縫目が形成される(S110)。S110において、主軸(図示せず)の回転速度は、EEPROM64に設定されている速度となるように制御される。メイン処理が繰り返し実行された場合、例えば、図14又は図15の矢印で示す縫目が形成される。図14では、走り縫いの単位縫目が5つ形成されている。図15では、送り方向及び幅方向の倍率が異なるジグザグ縫いの単位縫目が9つ形成されている。図14及び図15において、点線で示す格子は縫製されない。
【0049】
次に、第1レバー91の傾倒量Tが取得され、取得された傾倒量TがRAM63に記憶される(S115)。前述のように、傾倒量Tは、第1レバー91から制御部60に出力された出力信号に基づき取得される。次に、S115で取得された傾倒量Tに基づき、主軸の単位時間当たりの回転数(以下、単に「回転数」と言う。)が設定され、設定された回転数がEEPROM64に記憶される(S120)。本実施形態では、0から127の128段階で表される傾倒量Tが8つのグループに分類され、分類されたグループに予め対応付けられた回転数が設定される。傾倒量Tに応じて分類されたグループと、回転数との対応関係はEEPROM64に記憶されている。例えば、傾倒量Tが0から15のいずれかである場合には回転数に70rpmが設定され、傾倒量Tが112から127のいずれかである場合には回転数に400rpmが設定される。S120で設定された回転数は、次回実行されるS110において参照される。
【0050】
S100において、ミシン1の動作モードが非縫製モードである場合(S100:No)、移送データが作成され、作成された移送データがRAM63に記憶される(S130)。移送データは、S95で作成された座標データに、識別コードが付加されることによって作成される。例えば、上述の具体例3の座標データ(X1´,Y1´)に識別コード「移送」が付加されることによって、図16の縫製データ231が作成される。次に、S130で作成された移送データに基づき、駆動回路73及び74に制御信号が出力され、刺繍枠32が移送される(S135)。
【0051】
次に、S115と同様に、第1レバー91の傾倒量Tが取得され、取得された傾倒量TがRAM63に記憶される(S140)。次に、S140で取得された傾倒量Tに基づき、第1レバー91からの出力信号の取得頻度が設定される(S145)。取得頻度は、S50からS145の処理の実行頻度を規定する。S50からS145の処理を傾倒量Tに応じた頻度で実行させることによって、ミシン1は傾倒量Tに応じた距離だけ刺繍枠32を移送する。本実施形態では、S120と同様に、0から127の128段階で表される傾倒量Tが8つのグループに分類され、分類されたグループに予め対応付けられた取得頻度が設定される。傾倒量Tに応じて分類されたグループと、取得頻度との対応関係はEEPROM64に記憶されている。例えば、傾倒量Tが0から15のいずれかである場合には取得頻度に70(回/分)が設定され、傾倒量Tが112から127のいずれかである場合には取得頻度に400(回/分)が設定される。S145で設定された取得頻度は、後述するS165の処理を実行させる場合に参照される。
【0052】
S120又はS145の次に、S70又はS75で生成された単位データに含まれる順序が最後の初期座標データがS85において取得されたか否かが判断される(S160)。最後のデータがS85において取得されていない場合(S160:No)、nがインクリメントされ、処理はS85に戻る。最後のデータがS85において取得された場合(S160:Yes)、フリーモーション縫製時の処理を終了する指示が入力されたか否かが判断される(S165)。終了する指示が入力されていない場合には(S165:No)、処理はS50に戻る。S165において、S145で取得頻度が設定された場合には、S145で設定された取得頻度に応じた時間が経過した後、処理はS50に戻る。終了する指示が入力された場合には(S165:Yes)、メイン処理は終了する。
【0053】
以上のように、CPU61はモード設定処理と、メイン処理とを実行する。X軸モータ81及びY軸モータ82は、本発明の移送手段に相当する。針棒6を上下動させるミシンモータ79は本発明の縫製手段に相当する。操作状態に応じて、単位縫目を指定する第2レバー92は、本発明の第1操作手段に相当する。操作状態に応じて、単位縫目を形成する位置を指示する第1レバー91は、本発明の第2操作手段として機能する。第2レバー92の傾倒方向及び傾倒量に応じて、単位縫目の幅方向及び送り方向の拡大縮小率を指示する第2レバー92は、本発明の第3操作手段に相当する。第1レバー91から出力される出力信号は、本発明の第2出力信号に相当する。第2レバー92から出力される出力信号は、本発明の第1出力信号及び第3出力信号に相当する。図12のS240を実行するCPU61は、本発明の拡大縮小手段として機能する。図11のS70又はS75を実行するCPU61は、データ生成手段として機能する。単位データを記憶するROM62は記憶手段に相当する。S95を実行するCPU61は、本発明の変換手段として機能する。S85からS105を実行するCPU61は、本発明の縫製データ作成手段として機能する。S110を実行するCPU61は、本発明の移送制御手段及び縫製制御手段として機能する。S120の処理を実行するCPU61は本発明の速度設定手段として機能する。
【0054】
ミシン1は、ユーザが指定した単位縫目によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。ミシン1によれば、ユーザは第1レバー91を傾倒操作するという簡単な操作で単位縫目の形成位置の指示を入力することができる。例えば、第1レバー91から同じ出力信号を一定時間出力させたい場合には、ユーザは第1レバー91を一定の方向及び角度で一定時間傾倒させればよい。また、ユーザはジョイスティック90を移送させずに第1レバー91を操作することができる。したがって、ミシン1の第1レバー91は、ポインティングデバイスに比べ、縫目の形成位置を指示する操作手段の操作に必要なスペースを小さくすることができる。ミシン1は、第2レバー92の傾倒方向θ及び傾倒量Tに応じて幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの大きさを拡大又は縮小させる。また、ユーザは第2レバー92を操作することによって、単位縫目を選択することができるとともに、選択された単位縫目の幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を変更させることができる。このため、ユーザが第2レバー92を操作することによって指示した倍率で拡大又は縮小された単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。本実施形態のミシン1は、「送り方向の大きさ変更」及び「幅方向の大きさ変更」を適宜設定することによって、指定された方向の大きさのみを変更させることが可能である。
【0055】
ミシン1は、縫製データに含まれる座標データを、単位データに基づき容易に作成することができる。ミシン1は、図11のS120によって、S70又はS75で生成される単位縫目の数に応じた速さで単位縫目を縫製することができ、第1レバー91から出力される出力信号に追従させるように単位縫目を形成させることができる。したがって、ユーザは、既に縫製された単位縫目を目視して確認しながらフリーモーション縫製を実行させることができる。
【0056】
なお、本発明の刺繍データ作成装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、以下の(A)から(D)の変形を適宜加えてもよい。
【0057】
(A)ミシン1の形状及び構成は適宜変更可能である。例えば、ミシンは、針棒を複数備える多針ミシンであってもよい。また例えば、ミシンは、刺繍装置30に代えて、単位模様の送り方向と幅方向とに加工布を移送する機能を備える送り機構、即ち、前後方向及び左右方向に加工布を移送する送り機構を、移送手段としてもよい。
【0058】
(B)ジョイスティック90の形状及び構成は適宜変更可能である。例えば、ジョイスティック90は、第1レバー91のみを備えていてもよい。また例えば、第1レバー91は、所定の方向(例えば、8方向)に傾倒可能に構成されていてもよい。また例えば、第1レバー91の出力信号は、第1レバー91の傾倒量と、傾倒方向とが特定できる信号であればよい。第2レバー92の出力信号についても同様である。また、第1から第3操作手段は、ジョイスティック90の他、タッチパネルと、デジタイザと、タブレットと、ゲームコントローラ等の各種スイッチと、トラックボールとを含む、ユーザとインターフェイスをとる機器のいずれかであってもよい。第1から第3操作手段は、同一種類の機器であってもよいし、他の種類の機器であってもよい。
【0059】
(C)モード設定処理で実行される処理は適宜変更可能である。例えば、S5において第1ボタン93以外の操作手段が操作された場合の出力信号が、制御指示として取得されてもよい。第1ボタン93以外の操作手段としては、例えば、変形例(B)で例示したユーザとインターフェイスをとる機器のいずれかであればよい。例えば、ミシンモータ79の制御を開始させる制御指示は、フリーモーション縫製を開始させる指示が入力された後に第1レバー91が最初に操作された場合の出力信号としてもよい。また例えば、ミシンモータ79の制御を終了させる制御指示は、フリーモーション縫製時の処理を実行後にパネル操作等によって入力された、フリーモーション縫製以外の処理の開始させる指示としてもよい。また例えば、制御指示は、パネル操作等によって入力される止め縫いを形成させる指示としてもよい。また例えば、図10のS10で作成される止め縫いデータの構成は適宜変更可能である。さらに、モード設定処理は、必要に応じて省略してもよい。
【0060】
(D)メイン処理で実行される処理は適宜変更可能である。例えば、メイン処理に以下の(D−1)から(D−5)の変形を加えてもよい。
【0061】
(D−1)メイン処理において所定の周期で第1レバー91の出力信号を取得してもよく、その場合は、第1レバー91の傾倒量Tに応じた数の単位データが一度に生成されてもよい。このようにすれば、ミシンは、上記実施形態のメイン処理と同様に、第1レバー91の傾倒操作によって指示される長さの縫目を単位縫目によって形成させる縫製データを作成することができる。また例えば、S70又はS75で取得される単位データの種類は適宜変更可能である。具体的には、例えば、上記実施形態で例示した、走り縫いをするための一針のデータと、ジグザグ縫いをするための二針データとの他、図17に例示するように飾り模様縫いをするための複数針のデータが挙げられる。例えば、単位模様は、図17の画面400に表示された飾り模様縫いの中から、パネル操作に応じた出力信号に基づいて設定されてもよい。画面400には、15種類の飾り模様縫いの単位模様が表示されている。図17の左から右に向かう方向が単位模様の送り方向であり、図17の上下方向が単位模様の幅方向である。単位模様として飾り模様縫いをするための複数針のデータが設定された場合、複雑な形状を有する飾り模様縫いの縫目を、フリーモーション縫製によって形成させることができる。
【0062】
(D−2)図11のS95の座標データの作製方法は、第2操作手段(第1レバー91)から出力される出力信号と、移送手段(X軸モータ81及びY軸モータ82)の座標系とに応じて適宜変更してもよい。S105の縫製データの作製方法は、縫製データのデータ構成に応じて適宜変更してよい。また例えばS110における縫製を実行させるための制御は、ミシンの構成に応じて適宜変更されればよい。
【0063】
(D−3)S120の回転数の設定方法及びS145の取得頻度の設定方法は適宜変更可能である。例えば、第1レバー91の傾倒量Tと主軸の回転数との対応は適宜変更可能である。また、例えば、S120において、S115で取得した傾倒量Tを所定の計算式に代入することによって主軸の回転数が算出されてもよい。また例えば、移送データの作製方法は適宜変更可能である。例えば、ミシン1は、単位データを用いずに移送データを作成してもよい。この場合例えば、ミシン1は、第1レバー91からの出力信号(例えば、ベクトルデータ)を、所定の計算式に代入することによって移送データに含まれる座標データに変換してもよい。ミシン1は、非縫製モード時の処理として刺繍枠32を移動させる必要がない場合には、S130からS145の処理を省略してもよい。
【0064】
(D−4)ミシン1は、図12の拡大/縮小処理で、ジグザグ縫いの幅方向及び送り方向の大きさを変更可能であったが、幅方向及び送り方向の大きさのいずれかを変更可能としてもよい。また例えば、ミシン1は「送り方向の大きさ変更」が有効であるか否かに関わらず、送り方向の大きさの倍率を、第2レバーからの出力信号に応じて設定してもよい。同様に、ミシン1は「幅方向の大きさ変更」が有効であるか否かに関わらず、幅方向の大きさの倍率を、第2レバーからの出力信号に応じて設定してもよい。また例えば、拡大縮小率の設定方法は、適宜変更可能である。例えば、送り方向及び幅方向の拡大縮小率を同一に設定してもよい。例えば、ミシン1は、第2レバー92の傾倒方向に応じて、生成する単位データの種類を設定し、傾倒量Tに応じて送り方向及び幅方向の拡大縮小率を設定してもよい。この場合、傾倒方向を複数(例えば、8方向)設定し、各傾倒方向に単位データを割り当てることによって、S65で設定可能な単位データの数を増やすことができる。例えば、ベクトルデータを用いた所定の計算式に基づき拡大縮小率が設定されてもよい。さらに拡大/縮小処理は、必要に応じて省略されてもよい。
【0065】
(D−5)特開2008−246186号公報と同様に、ミシンはフリーモーション縫製の縫目が形成される位置を表す縫目位置指示線及びフリーモーション縫製によって形成された縫目の位置を示す縫目線をLCD10に表示してもよい。同様に、ミシンは、ユーザが縫目位置指示線を確認した後に、縫製の指示があった場合に、縫目位置指示線で表される位置にフリーモーション縫製の縫目を形成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 ミシン
30 刺繍装置
32 刺繍枠
34 加工布
61 CPU
79 ミシンモータ
81 X軸モータ
82 Y軸モータ
90 ジョイスティック
91 第1レバー
92 第2レバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工布を所定の2方向に移送させる移送手段を備えるミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キルティング分野では、加工布をユーザの手動操作で自由に移送させながらミシンで縫目を縫製するフリーモーション縫製が行われている。フリーモーション縫製が実行される場合には、ミシンの送り歯は、針板上面から突出せず、加工布を移送させない。しかしながら、フリーモーション縫製に不慣れなユーザにとっては、加工布を所望の位置に移送させる操作が難しく、所望の位置に縫目を形成できないという問題があった。そこで、加工布が装着された刺繍枠を、ユーザの指示に従って所定の2方向に移送させることによりフリーモーション縫製を実行する機能を有するミシンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のミシンでは、マウス等の操作手段の操作状態に応じた出力信号に基づき刺繍枠を移送させて縫目を形成する。操作手段としてマウスが用いられる場合、刺繍枠の移送量はマウスの移送量に基づき定められ、刺繍枠の移送方向はマウスの移送方向に基づき定められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のミシンでは、フリーモーション縫製によって得られる縫目には、直線縫いが設定されていた。このため、縫目の形状を変えたい場合には、ユーザは操作手段を用いて縫目の形状を指示しなければならなかった。このため、例えば、フリーモーション縫製によって、ジグザグ縫いの縫目を形成させたい場合には、ユーザは操作手段をジグザグ縫いの形状に応じて操作しなければならなかった。したがって、操作手段の操作の困難性に起因して、実質的にフリーモーション縫製によって所望の縫目を形成できない場合があった。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、フリーモーション縫製によって所望の形状の縫目を簡単な操作によって形成させる機能を備えたミシンを提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するために、第1態様のミシンは、加工布を所定の2方向に移送する機能を有する移送手段と、下端に縫針が装着された針棒を上下動させる縫製手段とを備えるミシンにおいて、操作状態に応じて、1つ以上の縫目によって構成される単位縫目を指定する第1出力信号を出力する第1操作手段と、操作状態に応じて、前記加工布に前記単位縫目を形成する位置を指示する第2出力信号を出力する第2操作手段と、前記第1操作手段によって出力された前記第1出力信号と、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号とに基づき、前記単位縫目が縫製される位置を指示する座標データを含む縫製データを作成する縫製データ作成手段と、前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記移送手段を駆動させ、前記加工布を移送させる移送制御手段と、前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記縫製手段を駆動させ、前記加工布に前記単位縫目によって構成される縫目を形成させる縫製制御手段とを備えている。
【0007】
第1態様のミシンは、ユーザが指定した単位縫目によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。詳しくは後述するが、単位縫目としては、例えば、走り縫いと、ジグザグ縫いと、飾り模様縫いとが挙げられる。
【0008】
第1態様のミシンは、操作状態に応じて、前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目の幅方向及び当該幅方向と直交する方向である送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を指示する第3出力信号を出力する第3操作手段を備え、前記縫製データ作成手段はさらに、前記第3操作手段によって前記第3出力信号が出力された場合に、当該第3出力信号によって指示される前記拡大縮小率に基づき拡大又は縮小処理した前記座標データを作成する拡大縮小手段を備えてもよい。この場合ミシンは、第3出力信号に応じて幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの大きさを拡大又は縮小させた単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。
【0009】
第1態様のミシンにおいて、前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記送り方向の拡大縮小率を指示してもよい。この場合ミシンは、第3出力信号に応じて送り方向の大きさを拡大又は縮小させた単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。
【0010】
第1態様のミシンにおいて、前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記幅方向の拡大縮小率を指示してもよい。この場合ミシンは、第3出力信号に応じて幅方向の大きさを拡大又は縮小させた単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。
【0011】
第1態様のミシンにおいて、前記縫製データ作成手段はさらに、前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目を形成するためのデータである単位データを、前記第2出力信号に応じた数だけ生成するデータ生成手段と、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記データ生成手段によって生成された前記単位データを前記座標データに変換する変換手段とを備えてもよい。この場合ミシンは、座標データを、単位データに基づき容易に作成することができる。
【0012】
第1態様のミシンは、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記縫製手段の駆動速度を設定する速度設定手段を備えてもよい。この場合ミシンは、第2出力信号に追従させるように単位縫目を形成させることができる。したがって、ユーザは、既に縫製された単位縫目を確認しながらフリーモーション縫製を実行させることができる。
【0013】
第1態様のミシンにおいて、前記第1操作手段は、第1操作部材を備え、当該第1操作部材が傾倒された場合と、当該操作部材が傾倒されていない場合とで、異なる前記単位縫目を指定する前記第1出力信号を出力し、前記第2操作手段は、第2操作部材を備え、当該第2操作部材の傾倒操作に応じて、前記第2出力信号を出力し、前記第3操作手段は、前記第1操作部材の傾倒方向及び傾倒量に応じて、前記第3出力信号を出力してもよい。この場合、第2操作手段としてポインティングデバイスが用いられた場合には入力困難であった縫目の位置を指示する指示を、ユーザは第2操作部材を傾倒操作するという簡単な操作で入力することができる。例えば、第2操作手段から同じ出力信号を一定時間出力させたい場合には、ユーザは第2操作部材を一定の方向及び角度で一定時間傾倒させればよい。また、ユーザは第2操作手段を移送させずに第2操作部材を操作することができるので、ミシンは、第2操作手段としてポインティングデバイスが用いられる場合に比べ、第2操作部材の操作に必要なスペースを小さくすることができる。また、ユーザは第1操作部材を操作することによって、単位縫目を選択することができるとともに、選択された単位縫目の幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ミシン1の斜視図である。
【図2】ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】単位データの説明図である。
【図4】走り縫いの単位縫目の説明図である。
【図5】走り縫いの単位データの説明図である。
【図6】ジグザグ縫いの単位縫目の説明図である。
【図7】ジグザグ縫いの単位データの説明図である。
【図8】縫製データの説明図である。
【図9】止め縫いの縫製データの説明図である。
【図10】モード設定処理のフローチャートである。
【図11】メイン処理のフローチャートである。
【図12】メイン処理で実行される拡大/縮小処理のフローチャートである。
【図13】メイン処理において作成された縫製データを例示する説明図である。
【図14】走り縫いの単位縫目によって構成される縫目の説明図である。
【図15】ジグザグ縫いの単位縫目によって構成される縫目の説明図である。
【図16】メイン処理において作成された移送データを例示する説明図である。
【図17】飾り模様縫いの単位縫目が表示された画面400の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して順に説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0016】
まず、図1を参照して、ミシン1の物理的構成及び電気的構成について説明する。図1において、矢印Xの方向を左方向、その反対方向を右方向、矢印Yの方向を前方向、その反対方向を後方向と言う。図1に示すように、ミシン1のミシン本体85は、ミシンベッド2と、脚柱部3と、アーム部4とを備えている。ミシンベッド2は、左右方向に長く伸びている。脚柱部3は、ミシンベッド2の右端部から上方へ伸びている。アーム部4は、脚柱部3の上端から左方へ延びている。アーム部4の左先端部には、頭部5がある。脚柱部3の正面には、表面にタッチパネル16を備えた液晶ディスプレイ(以下、「LCD」と言う。)10が設けられている。LCD10には、縫製模様及び縫製条件の入力キー等が表示される。LCD10に表示された入力キー等の位置に対応したタッチパネル16の箇所を、指又は専用のタッチペンを用いて操作すること(以下、この操作を「パネル操作」と言う。)によって、ユーザは縫製模様及び縫製条件等を選択できる。
【0017】
ミシンベッド2の内部には、加工布を移送する送り歯(図示せず)と、送り歯を前後方向及び上下方向に駆動する送り機構(図示せず)と、パルスモータ78(図2参照)と、釜(図示せず)と、釜駆動機構(図示せず)と、下軸(図示せず)とが収納されている。パルスモータ78は、送り歯による加工布(図示せず)の送り量を調整する。釜は下糸(図示せず)が巻回されたボビン(図示せず)を収納する。下軸は釜駆動機構を駆動し、釜駆動機構は釜を回転させる。下軸は、タイミングベルト(図示せず)を介して伝達された主軸(図示せず)の回転力によって、後述する主軸と同期して回転する。ミシンベッド2の上面には、針板80がある。ミシンベッド2の左端には、刺繍装置30が装着されている。刺繍装置30が使用されない場合には、ミシンベッド2の左端には補助テーブル(図示せず)が装着される。刺繍装置30がミシンベッド2の左端に装着されると、刺繍装置30はミシン1に電気的に接続される。このとき、送り歯は、針板80から突出しない不作用位置に保持される。刺繍装置30の詳細については後述する。
【0018】
脚柱部3とアーム部4との内部には、ミシンモータ79(図2参照)と、主軸と、針棒6と、針棒上下動機構(図示せず)と、針振り機構(図示せず)とが収納されている。針棒6の下端部には、縫針7が装着されている。ミシンモータ79は、タイミングベルト(図示せず)を介して主軸を回転させる。針棒上下動機構は、主軸により駆動されて針棒6を上下動させる。針振り機構は、パルスモータ77(図2参照)を駆動源として針棒6を左右方向に揺動させる。針棒6の後ろ側には、上下方向に伸びる押え棒(図示せず)がある。押え棒の下端部には、押えホルダ(図示せず)が固定されている。押えホルダには、加工布(図示せず)を押える押え足47が装着されている。
【0019】
アーム部4には、開閉カバー21が取り付けられている。開閉カバー21は、アーム部4の長手方向に設けられ、アーム部4の上後端部に左右方向向きの軸回りに開閉可能に支持されている。開閉カバー21を開けた状態の、アーム部4の上部中央近傍には、糸収容部23が設けられている。糸収容部23は、ミシン1に糸を供給する糸駒20を収容するための凹部である。糸収容部23の脚柱部3側の内壁面には、頭部5に向かって突出する糸立棒22が設けられている。糸駒20が備える挿入孔(図示せず)は、糸立棒22に挿入される。図示しないが、糸駒20の糸は、頭部5に設けられた複数の糸掛部(図示せず)を経由して、縫針7に上糸として供給される。ミシン1は、糸掛部として、例えば、糸調子器(図示せず)と、糸取バネ(図示せず)と、天秤(図示せず)とを備える。糸調子器及び糸取バネは、上糸の糸張力を調整する。天秤は、上下に往復駆動することによって上糸を引き上げる。縫針7と、天秤と、釜との協働により、上糸及び下糸からなる縫目が加工布に形成される。
【0020】
脚柱部3の右側面には、プーリ(図示せず)が設けられている。プーリは、手動で主軸(図示せず)を回転させ、針棒6を上下動させる。また、脚柱部3の右側面には、ミシン本体85とは別体に設けられたジョイスティック90が接続されている。ジョイスティック90は、第1レバー91と、第2レバー92と、第1ボタン93と、第2ボタン94と、筐体95とを備える。第1レバー91と、第2レバー92とは、直方体状の筐体95に保持された棒状の操作部材であり、筐体95の上面に対して、360度の方向に傾倒可能である。第1ボタン93と、第2ボタン94とは、筐体95の上面に設けられ、平面視円状のボタンである。ジョイスティック90は、通常処理実行時は、タッチパネル16と同様な指示を入力する操作手段として機能する。一方、後述するように、フリーモーション縫製を実行するメイン処理実行時においては、ジョイスティック90は、第1レバー91の傾倒操作に応じて刺繍枠32の移送方向及び移送距離(移送量)を指示する。ジョイスティック90から出力される出力信号の詳細については後述する。
【0021】
頭部5及びアーム部4の正面には、正面カバー59が設けられている。正面カバー59には、縫製開始・停止スイッチ41,速度調整摘み43,及びその他の操作スイッチが設けられている。縫製開始・停止スイッチ41は、縫製の開始及び停止を指示するスイッチである。ミシン1の停止中に縫製開始・停止スイッチ41が押圧されるとミシン1の運転が開始され、ミシン1の運転中に縫製開始・停止スイッチ41が押圧されるとミシン1の運転が停止される。速度調整摘み43は、主軸(図示せず)の回転速度を調整する。
【0022】
次に、図1を参照して、刺繍装置30について説明する。刺繍装置30は、刺繍枠32と、キャリッジ(図示せず)と、キャリッジカバー33と、前後移送機構(図示せず)と、左右移送機構(図示せず)とを備える。刺繍枠32は、加工布34を保持する。キャリッジは、刺繍枠32を着脱可能に支持する。キャリッジの右方には、刺繍枠32が装着される凹溝部(図示せず)が設けられている。凹溝部は、キャリッジの長手方向に沿って伸長している。キャリッジカバー33は、概略、前後方向に長い直方体状の形状を有し、キャリッジを収容する。キャリッジカバー33の内部には、前後移送機構(図示せず)が設けられている。前後移送機構は、Y軸モータ82(図2参照)を駆動源として、刺繍枠32が装着されたキャリッジを前後方向(Y軸方向)に移送する。左右移送機構は、刺繍装置30の本体内に設けられている。左右移送機構は、X軸モータ81(図2参照)を駆動源として、刺繍枠32が装着されたキャリッジと、前後移送機構と、キャリッジカバー33とを左右方向(X軸方向)に移送する。Y軸モータ82及びX軸モータ81に対する制御信号は、後述するCPU61(図2参照)によって出力される。なお、刺繍枠32は図1に示すサイズのものだけでなく、図示はしないが様々なサイズの刺繍枠が用意されている。
【0023】
次に、図2を参照して、ミシン1の主な電気的構成について説明する。図2に示すように、ミシン1の制御部60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64と、外部アクセスRAM65と、入出力インターフェイス(I/O)66とを備え、これらはバス67によって相互に接続されている。
【0024】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62等に記憶されたプログラムに従って、各種演算及び処理を実行する。ROM62は、プログラム記憶エリアと、単位データ記憶エリアとを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、CPU61によって実行されるモード設定プログラムと、メインプログラムとを含む複数のプログラムが記憶されている。モード設定プログラムは、後述するモード設定処理を実行するためのプログラムである。メインプログラムは、後述するメイン処理を実行するためのプログラムである。単位データ記憶エリアには、複数種類の単位データが記憶されている。単位データとは、1つ以上の縫目によって形成される縫目の最小単位である単位縫目を縫製するためのデータである。本実施形態では、単位データとして、走り縫いをするための一針データと、ジグザグ縫いをするための二針データとを含むデータが単位データ記憶エリアに記憶されている。単位データの詳細については後述する。
【0025】
RAM63は、任意に読み書き可能な記憶素子であり、例えば、プログラム記憶エリアに記憶されている各種プログラムが実行される際に得られる演算結果を記憶する。EEPROM64は、読み書き可能な記憶素子であり、プログラム記憶エリアに記憶されている各種プログラムが実行される際に使用される各種パラメータが記憶されている。外部アクセスRAM65には、カードスロット17が接続されている。カードスロット17は、メモリカード18と接続可能である。カードスロット17とメモリカード18とを接続すれば、メモリカード18の情報の読み取り、及び書き込みを行うことができる。
【0026】
I/O66には、縫製開始・停止スイッチ41と、速度調整摘み43と、駆動回路70から75と、ジョイスティック90と、タッチパネル16とが接続されている。駆動回路70は、パルスモータ77を駆動させる。パルスモータ77は、針振り機構(図示せず)の駆動源である。駆動回路71は、送り量調整用のパルスモータ78を駆動させる。駆動回路72は、ミシンモータ79を駆動させる。ミシンモータ79は、主軸(図示せず)の駆動源である。駆動回路73は、X軸モータ81を駆動させる。駆動回路74は、Y軸モータ82を駆動させる。駆動回路75はLCD10を駆動させる。ジョイスティック90は、操作部材に応じた出力信号を制御部60に出力する。前述のように、ジョイスティック90は、操作部材として、第1レバー91と、第2レバー92と、第1ボタン93と、第2ボタン94とを備える。I/O66には、図示しない他の構成要素が適宜接続される。
【0027】
次に、ROM62に記憶された単位データについて説明する。単位データは、ステッチ数mと、ステッチ数m個の初期座標データとを備える。ステッチ数mは、単位縫目を構成する縫目の数を表す。ステッチ数m個の初期座標データは、単位縫目を構成する縫目の相対位置を指定する座標データを作成する際に用いられるデータである。初期座標データは、刺繍座標系100(図1参照)の相対座標で表される初期X座標データと、初期Y座標データとを備える。刺繍座標系は、キャリッジ(図示せず)を移送するX軸モータ81及びY軸モータ82の駆動量を規定する座標系である。刺繍座標系100は、ミシン1の左右方向がX軸方向であり、ミシン1の前後方向がY軸方向である。刺繍座標系の原点は、刺繍枠32の内側に設定される矩形の刺繍領域の左奥の角とする。なお、縫目が形成される方向と、刺繍枠32の移送方向は逆となる。例えば、縫目の形成方向が、ミシン1の前から後ろに向かう方向である場合、刺繍枠32はミシン1の後ろから前に向かう方向に移送される。
【0028】
図3のように、単位データは、1番目のデータ101にステッチ数mが設定され、2番目以降のデータ102に、m組の初期X座標データと、初期Y座標データとが設定される。走り縫いとジグザグ縫いとを例に単位縫目と単位データの具体例について説明する。図4のように、走り縫いを形成するための単位縫目は、ベクトル302で表される一針の縫目である。図4において、点線で示す格子301は、0.1mmを1unitとする相対座標系を示す。図4の相対座標系では、紙面左右方向が刺繍座標系のX軸方向と対応し、紙面上下方向が刺繍座標系のY軸方向と対応している。格子301は、縫製されない。ベクトル302の長さは、縫目の長さを示す。ベクトル302が示す方向は、縫目の進行方向を示す。図5のように、走り縫いを縫製するための単位縫目の単位データは、ステッチ数1を表すデータ111と、1組の初期座標データ112(初期X座標データ及び初期Y座標データ)とを含む。初期座標データ112は、0.1mmを1unitとする数字で表される。同様に、図6のように、ジグザグ縫いを形成するための単位縫目は、ベクトル311とベクトル312とで表される二針の縫目である。図6において、矢印313はジグザグ縫いの送り方向を示し、矢印314はジグザグ縫いの幅方向を示す。矢印313で示す送り方向は、矢印314で示す幅方向に直交する。図7のように、ジグザグ縫いを縫製するための単位縫目の単位データは、ステッチ数2を表すデータ121と、2組の初期座標データ122と初期座標データ123とを含む。
【0029】
次に、図8を参照して、ジョイスティック90の操作状態に応じて作成される縫製データについて説明する。図8のように、縫製データは、データ201及びデータ202のように、識別コードと、座標データとの組合せを1単位としたデータである。識別コードは、縫製に関する種々の制御の種類を定義する。識別コードとしては、例えば、ステッチと、移送と、色替えと、糸切りと、一時停止とが挙げられる。座標データは、現在の針落ち位置に対する刺繍座標系100(図1参照)の相対座標で表され、刺繍枠32の移送方向及び移送量を指示する。針落ち位置は、刺繍枠32に装着された加工布34に縫針7が刺さる位置である。
【0030】
次に、止め縫いを形成するための縫製データ(以下、単に「止め縫いデータ」と言う。)を図9を参照して説明する。本実施形態では止め縫いとして、数針分の縫目を密集させた縫目を形成する。止め縫いデータは、例えば、ROM62に記憶された図9のデータが用いられる。図9に示すように、本実施形態の止め縫いデータは、データ211から213で表される3針の縫製データを含む。
【0031】
次に、ジョイスティック90が備える操作部材の操作状態に応じた出力信号について説明する。第1レバー91及び第2レバー92は、自身の傾倒方向及び傾倒量(角度)に応じた出力信号を制御部60に出力する。本実施形態の第1レバー91の出力信号は、図1の第1レバー91の座標系200のベクトルデータ(x,y)を含む。座標系200において、Zc軸は、非操作時の第1レバー91の延伸方向と重なる。Xc軸は、Zc軸が筐体95の上面と交わる点を通り、筐体95の長手方向と平行に設定され、Yc軸は、Zc軸が筐体95と交わる点を通り、筐体95の上面の短辺と平行に設定されている。座標系200の原点は、第1レバー91が傾倒操作される際の回転中心となる。
【0032】
傾倒方向θは、Xc−Yc平面上において、座標系200の原点からXc軸プラス側(筐体95の右方)に向かうXc軸上のベクトルと、第1レバー91の延伸方向をZc軸のプラス側(筐体95の上方)からXc−Yc平面上に投影した線とがなす角によって表される。傾倒方向θは、反時計回りの角度をプラスの角度で表される。傾倒方向θは、ベクトルデータを用いた式θ=tan−1(y/x)によって算出される。傾倒量Tは、座標系200の原点からZc軸プラス側に向かうZc軸上のベクトルと、第1レバー91の延伸方向とがなす角に応じて決定される段階値によって表される。本実施形態の傾倒量Tは、0から127の128段階のいずれかの値をとる。より具体的には、傾倒量Tは、ベクトルデータによって表されるベクトルの長さに対応し、式T=√(x2+y2)によって算出される。第2レバー92の出力信号は、第1レバー91と同様のベクトルデータを含む。第1ボタン93及び第2ボタン94は、操作されているか否かに応じた出力信号を制御部60(図2参照)に出力する。
【0033】
次に、フリーモーション縫製が実行される場合の処理の概要について説明する。フリーモーション縫製が実行される場合、ミシン1では、図10のモード設定処理と、図11のメイン処理とが実行される。モード設定処理では、第1ボタン93の操作に応じて、ミシン1の動作モードが、縫製モードと非縫製モードとのいずれかに設定される。メイン処理では、第1レバー91の傾倒操作に応じて、フリーモーション縫製又は刺繍枠32の移送が実行される。動作モードに縫製モードが設定されている場合、ミシン1は、第1レバー91の傾倒操作に応じて、フリーモーション縫製を実行する。動作モードに非縫製モードが設定されている場合、ミシン1は、第1レバー91の傾倒操作に応じて刺繍枠32を移送する。
【0034】
ミシン1では、第2レバー92が操作されているか否かに応じて、フリーモーション縫製によって形成される縫目の種類が、走り縫いと、ジグザグ縫いとのいずれかに設定される。具体的には、第2レバー92が操作されていない場合には、縫目の種類に走り縫いが設定され、第2レバー92が操作されている場合には、縫目の種類にジグザグ縫いが設定される。さらにミシン1は、後述する拡大/縮小処理において、所定の場合に、第2レバー92の出力信号に応じて、ジグザグ縫いの幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの大きさを拡大又は縮小する。所定の場合とは、以下の2つの場合の少なくともいずれかである。1つ目は、ジグザグ縫いの幅方向の大きさを変更するか否かを示す「幅方向の大きさ変更」に「有効」が設定されている場合である。2つ目は、ジグザグ縫いの送り方向の大きさを変更するか否かを示す「送り方向の大きさ変更」に「有効」が設定されている場合である。「幅方向の大きさ変更」及び「送り方向の大きさ変更」の設定は、例えば、パネル操作に基づき実行され、EEPROM64に記憶されている。
【0035】
拡大/縮小処理における幅方向及び送り方向の拡大縮小率は、第2レバー92から出力された出力信号に含まれるベクトルデータ(x,y)と、EEPROM64に記憶された倍率設定テーブルとに基づき決定される。倍率設定テーブルは、ベクトルデータ(x,y)と、拡大縮小率との対応関係を記憶する。本実施形態では、ベクトルデータに応じて、0から40倍の倍率が設定されている。より具体的には、ミシン1は、xがプラスである場合に、ジグザグ縫いの幅方向の大きさをxに対応する倍率で拡大し、xがマイナスである場合に、ジグザグ縫いの幅方向の大きさをxに対応する倍率で縮小する。同様に、ミシン1は、yがプラスである場合に、ジグザグ縫いの送り方向の大きさをyに対応する倍率で拡大し、yがマイナスである場合に、ジグザグ縫いの送り方向の大きさをyに対応する倍率で縮小する。図10のモード設定処理と、図11のメイン処理とのそれぞれは、フリーモーション縫製を行う指示が入力された場合に、ROM62に記憶されたプログラムに従い、CPU61が実行する。フリーモーション縫製を行う指示は、例えば、パネル操作によって入力される。
【0036】
次に、図10のモード設定処理を説明する。図10のように、モード設定処理ではまず、第1ボタン93が操作されたか否かが判断される(S5)。第1ボタン93が操作されたか否かは、第1ボタン93から制御部60に出力される出力信号に基づき判断される。本実施形態では、第1ボタン93が操作された場合の出力信号が、制御指示として取得される。制御指示は、ミシンモータ79の制御を開始又は終了させることを指示する。ミシン1の動作モードは、制御指示に応じて切り替えられる。
【0037】
第1ボタン93が操作されていない場合には(S5:No)、後述するS35の処理が実行される。第1ボタン93が操作された場合には(S5:Yes)、止め縫いデータが作成され、作成された止め縫いデータはRAM63に記憶される(S10)。S10が実行されることによって、ミシン1の動作モードが切り替えられる毎に、止め縫いデータが形成される。S10では、ROM62に記憶されている止め縫い製データ(図9参照)が生成される。次に、S10で作成された止め縫いデータに基づき、加工布34に止め縫いが形成される(S15)。S15では、S10で作成された止め縫いデータに従って、駆動回路73と、駆動回路74とに制御信号が出力され、刺繍枠32移送されるとともに、駆動回路72に制御信号が出力され、針棒6が上下に駆動される。
【0038】
次に、EEPRPOM64が参照され、ミシン1の現在の動作モードに縫製モードが設定されているか否かが判断される(S20)。動作モードに縫製モードが設定されている場合(S20:Yes)、動作モードに非縫製モードが設定され、設定された動作モードがEEPROM64に記憶される(S25)。動作モードに非縫製モードが設定されている場合(S20:No)、動作モードに縫製モードが設定され、設定された動作モードがEEPROM64に記憶される(S30)。
【0039】
S5において第1ボタン93が操作されていない場合(S5:No)と、S25と、S35とのいずれかの次に、フリーモーション縫製時の処理を終了する指示が入力されたか否かが判断される(S35)。フリーモーション縫製時の処理を終了する指示は、例えば、パネル操作によって入力される。終了する指示が入力されていない場合には(S35:No)、処理はS5に戻る。終了する指示が入力された場合には(S35:Yes)、モード設定処理は終了する。
【0040】
次に、図11のメイン処理について説明する。図11のように、メイン処理ではまず、第1レバー91が操作されたか否かが判断される(S50)。第1レバー91が操作されたか否かは、第1レバー91から制御部60に出力される出力信号に基づき判断される。第1レバー91が操作されていない場合には(S50:No)、後述するS165の処理が実行される。第1レバー91が操作された場合には(S50:Yes)、第1レバー91の傾倒方向θが取得され、取得された傾倒方向θはRAM63に記憶される(S55)。前述のように、傾倒方向θは、第1レバー91から制御部60に出力された出力信号に基づき取得される。
【0041】
次に、EEPROM64が参照され、ミシン1の動作モードが縫製モードであるか否かが判断される(S60)。ミシン1の動作モードは、前述のモード設定処理において設定される。ミシン1の動作モードが縫製モードである場合(S60:Yes)、第2レバー92が操作されているか否かが判断される(S65)。第2レバー92が操作されているか否かは、第2レバー92から制御部60に出力されている出力信号に基づき判断される。第2レバー92が操作されている場合には(S65:Yes)、図7のジグザグ縫いを形成するための単位データが生成され、生成された単位データはRAM63に記憶される(S70)。ミシン1の動作モードが非縫製モードである場合(S60:No)、又は第2レバー92が操作されていない場合には(S65:No)、図5の走り縫いを形成するための単位データが生成され、生成された単位データはRAM63に記憶される(S75)。S70及びS75では、ROM62に記憶されている単位データに基づき、縫目の種類に応じた単位データが生成される。
【0042】
S70又はS75の次に、パラメータnに1が設定され、パラメータnはRAM63に記憶される(S80)。次に、S70及びS75で生成された単位データに含まれるn番目の初期座標データが取得され、取得された初期座標データはRAM63に記憶される(S85)。例えば、S70で図7の単位データが取得された場合、n=1の初期座標データとして初期座標データ122が取得される。また例えば、S75で図5の単位データが取得された場合、n=1の初期座標データとして初期座標データ112が取得される。
【0043】
次に、第2レバー92から出力された出力信号に応じて、S85で取得されたデータ(Xn,Yn)が拡大又は縮小処理され、拡大又は縮小処理によって得られたデータ(X´n,Y´n)はRAM63に記憶される(S90)。図12を参照して、拡大/縮小処理の詳細を説明する。図12のように、拡大/縮小処理では、まず、第2レバー92から制御部60に出力される出力信号に基づき、送り方向の入力があるか否かが判断される(S200)。出力信号に含まれるベクトルデータの、yの値が0ではない場合に、送り方向の入力があると判断される(S200:Yes)。送り方向の入力がある場合(S200:Yes)、EEPROM64が参照され、「送り方向の大きさ変更」が有効となっているか否かが判断される(S205)。有効である場合(S205:Yes)、送り方向の大きさの倍率が設定され、設定された倍率はRAM63に記憶される(S215)。S215では、出力信号に含まれるベクトルデータのyの値と、EEPROM64に記憶された倍率設定テーブルとに基づき送り方向の倍率が設定される。S200で送り方向の入力がない場合(S200:No)、又はS205で有効ではない場合(S205:No)、送り方向の大きさの倍率に初期値が設定され、設定された倍率がRAM63に記憶される(S210)。本実施形態の初期値は1である。
【0044】
S210又はS215の次に、第2レバー92から制御部60に出力される出力信号に基づき、幅方向の入力があるか否かが判断される(S220)。出力信号に含まれるベクトルデータの、xの値が0ではない場合に、幅方向の入力があると判断される(S220:Yes)。幅方向の入力がある場合(S220:Yes)、EEPROM64が参照され、「幅方向の大きさ変更」が有効となっているか否かが判断される(S225)。有効である場合(S225:Yes)、幅方向の大きさの倍率が設定され、設定された倍率はRAM63に記憶される(S235)。S235では、出力信号に含まれるベクトルデータのxの値と、EEPROM64に記憶された倍率設定テーブルとに基づき送り方向の倍率が設定される。S220で幅方向の入力がない場合(S220:No)、又はS225で有効ではない場合(S225:No)、幅方向の大きさの倍率に初期値が設定され、設定された倍率がRAM63に記憶される(S230)。本実施形態の初期値は1である。
【0045】
次に、S85で取得されたデータ(Xn,Yn)に対して、拡大処理又は縮小処理が実行され、拡大処理又は縮小処理された後のデータ(Xn´,Yn´)がRAM63に記憶される(S240)。データ(Xn´,Yn´)は、式(Xn´,Yn´)=(Xn×(送り方向の倍率),Yn×(幅方向の倍率))によって算出される。S215で送り方向の倍率に0.5倍が設定され、S235で幅方向の倍率に1倍が設定された場合を想定する。S85で図7の初期座標データ122が取得された場合を具体例1とすると、具体例1では、(X1´,Y1´)=(2.5,10)が算出される。S85で図7の初期座標データ123が取得された場合を具体例2を想定する。具体例2では、(X2´,Y2´)=(2.5,−10)が算出される。S65で第2レバー92が操作されず(S65:No)、単位データが生成された場合を具体例3とすると、具体例3では、送り方向及び幅方向の入力はない(S200:NO,S210,S220:No,S230)。よって、具体例3では、(X1´,Y1´)=(10,0)が算出される。S240の次に、拡大/縮小処理は終了し、メイン処理に戻る。
【0046】
S90の次に、S55で取得された傾倒方向θに基づきS90で拡大又は縮小処理されたデータ(Xn´,Yn´)が座標データに変換され、変換処理によって作成された座標データ(Xn´´,Yn´´)はRAM63に記憶される(S95)。上述の具体例1において、S55で傾倒方向θが60度と取得された場合、式(X1´´,Y1´´)=(X1´cosθ−Y1´sinθ,X1´sinθ+Y1´cosθ)に基づき、(X1´´,Y1´´)=(−7.41,7.17)が算出される。上述の具体例2において、S55で傾倒方向θが60度と取得された場合、式(X2´´,Y2´´)=((X1´+X2´)cosθ−(Y1´+Y2´)sinθ,(X1´+X2´)sinθ+(Y1´+Y2´)cosθ)−(X1´´,Y1´´)に基づき、(X2´´,Y2´´)=(9.91,−2.83)が算出される。上述の具体例3において、S55で傾倒方向θが60度と取得された場合、具体例1と同様の式に基づき、(X1´´,Y1´´)=(5,8.66)が算出される。
【0047】
次に、ミシン1の動作モードが縫製モードであるか否かが判断される(S100)。ミシン1の動作モードが非縫製モードである場合(S100:No)の処理は後述する。ミシン1の動作モードが縫製モードである場合(S100:Yes)、縫製データが作成され、作成された縫製データがRAM63に記憶される(S105)。縫製データは、S95で拡大又は縮小処理された座標データに、識別コードが付加されることによって作成される。例えば、上述の具体例1の座標データ(X1´,Y1´)に識別コード「ステッチ」が付加されることによって、図13の縫製データ221が作成される。同様に、具体例2の座標データに識別コード「ステッチ」が付加されることによって、縫製データ222が作成され、具体例3の座標データに識別コード「ステッチ」が付加されることによって、縫製データ223が作成される。
【0048】
次に、S105で作成された縫製データに基づき、駆動回路72から74に制御信号が出力され、1つの縫目が形成される(S110)。S110において、主軸(図示せず)の回転速度は、EEPROM64に設定されている速度となるように制御される。メイン処理が繰り返し実行された場合、例えば、図14又は図15の矢印で示す縫目が形成される。図14では、走り縫いの単位縫目が5つ形成されている。図15では、送り方向及び幅方向の倍率が異なるジグザグ縫いの単位縫目が9つ形成されている。図14及び図15において、点線で示す格子は縫製されない。
【0049】
次に、第1レバー91の傾倒量Tが取得され、取得された傾倒量TがRAM63に記憶される(S115)。前述のように、傾倒量Tは、第1レバー91から制御部60に出力された出力信号に基づき取得される。次に、S115で取得された傾倒量Tに基づき、主軸の単位時間当たりの回転数(以下、単に「回転数」と言う。)が設定され、設定された回転数がEEPROM64に記憶される(S120)。本実施形態では、0から127の128段階で表される傾倒量Tが8つのグループに分類され、分類されたグループに予め対応付けられた回転数が設定される。傾倒量Tに応じて分類されたグループと、回転数との対応関係はEEPROM64に記憶されている。例えば、傾倒量Tが0から15のいずれかである場合には回転数に70rpmが設定され、傾倒量Tが112から127のいずれかである場合には回転数に400rpmが設定される。S120で設定された回転数は、次回実行されるS110において参照される。
【0050】
S100において、ミシン1の動作モードが非縫製モードである場合(S100:No)、移送データが作成され、作成された移送データがRAM63に記憶される(S130)。移送データは、S95で作成された座標データに、識別コードが付加されることによって作成される。例えば、上述の具体例3の座標データ(X1´,Y1´)に識別コード「移送」が付加されることによって、図16の縫製データ231が作成される。次に、S130で作成された移送データに基づき、駆動回路73及び74に制御信号が出力され、刺繍枠32が移送される(S135)。
【0051】
次に、S115と同様に、第1レバー91の傾倒量Tが取得され、取得された傾倒量TがRAM63に記憶される(S140)。次に、S140で取得された傾倒量Tに基づき、第1レバー91からの出力信号の取得頻度が設定される(S145)。取得頻度は、S50からS145の処理の実行頻度を規定する。S50からS145の処理を傾倒量Tに応じた頻度で実行させることによって、ミシン1は傾倒量Tに応じた距離だけ刺繍枠32を移送する。本実施形態では、S120と同様に、0から127の128段階で表される傾倒量Tが8つのグループに分類され、分類されたグループに予め対応付けられた取得頻度が設定される。傾倒量Tに応じて分類されたグループと、取得頻度との対応関係はEEPROM64に記憶されている。例えば、傾倒量Tが0から15のいずれかである場合には取得頻度に70(回/分)が設定され、傾倒量Tが112から127のいずれかである場合には取得頻度に400(回/分)が設定される。S145で設定された取得頻度は、後述するS165の処理を実行させる場合に参照される。
【0052】
S120又はS145の次に、S70又はS75で生成された単位データに含まれる順序が最後の初期座標データがS85において取得されたか否かが判断される(S160)。最後のデータがS85において取得されていない場合(S160:No)、nがインクリメントされ、処理はS85に戻る。最後のデータがS85において取得された場合(S160:Yes)、フリーモーション縫製時の処理を終了する指示が入力されたか否かが判断される(S165)。終了する指示が入力されていない場合には(S165:No)、処理はS50に戻る。S165において、S145で取得頻度が設定された場合には、S145で設定された取得頻度に応じた時間が経過した後、処理はS50に戻る。終了する指示が入力された場合には(S165:Yes)、メイン処理は終了する。
【0053】
以上のように、CPU61はモード設定処理と、メイン処理とを実行する。X軸モータ81及びY軸モータ82は、本発明の移送手段に相当する。針棒6を上下動させるミシンモータ79は本発明の縫製手段に相当する。操作状態に応じて、単位縫目を指定する第2レバー92は、本発明の第1操作手段に相当する。操作状態に応じて、単位縫目を形成する位置を指示する第1レバー91は、本発明の第2操作手段として機能する。第2レバー92の傾倒方向及び傾倒量に応じて、単位縫目の幅方向及び送り方向の拡大縮小率を指示する第2レバー92は、本発明の第3操作手段に相当する。第1レバー91から出力される出力信号は、本発明の第2出力信号に相当する。第2レバー92から出力される出力信号は、本発明の第1出力信号及び第3出力信号に相当する。図12のS240を実行するCPU61は、本発明の拡大縮小手段として機能する。図11のS70又はS75を実行するCPU61は、データ生成手段として機能する。単位データを記憶するROM62は記憶手段に相当する。S95を実行するCPU61は、本発明の変換手段として機能する。S85からS105を実行するCPU61は、本発明の縫製データ作成手段として機能する。S110を実行するCPU61は、本発明の移送制御手段及び縫製制御手段として機能する。S120の処理を実行するCPU61は本発明の速度設定手段として機能する。
【0054】
ミシン1は、ユーザが指定した単位縫目によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。ミシン1によれば、ユーザは第1レバー91を傾倒操作するという簡単な操作で単位縫目の形成位置の指示を入力することができる。例えば、第1レバー91から同じ出力信号を一定時間出力させたい場合には、ユーザは第1レバー91を一定の方向及び角度で一定時間傾倒させればよい。また、ユーザはジョイスティック90を移送させずに第1レバー91を操作することができる。したがって、ミシン1の第1レバー91は、ポインティングデバイスに比べ、縫目の形成位置を指示する操作手段の操作に必要なスペースを小さくすることができる。ミシン1は、第2レバー92の傾倒方向θ及び傾倒量Tに応じて幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの大きさを拡大又は縮小させる。また、ユーザは第2レバー92を操作することによって、単位縫目を選択することができるとともに、選択された単位縫目の幅方向及び送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を変更させることができる。このため、ユーザが第2レバー92を操作することによって指示した倍率で拡大又は縮小された単位模様によって構成される縫目を、フリーモーション縫製によって縫製させることができる。本実施形態のミシン1は、「送り方向の大きさ変更」及び「幅方向の大きさ変更」を適宜設定することによって、指定された方向の大きさのみを変更させることが可能である。
【0055】
ミシン1は、縫製データに含まれる座標データを、単位データに基づき容易に作成することができる。ミシン1は、図11のS120によって、S70又はS75で生成される単位縫目の数に応じた速さで単位縫目を縫製することができ、第1レバー91から出力される出力信号に追従させるように単位縫目を形成させることができる。したがって、ユーザは、既に縫製された単位縫目を目視して確認しながらフリーモーション縫製を実行させることができる。
【0056】
なお、本発明の刺繍データ作成装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、以下の(A)から(D)の変形を適宜加えてもよい。
【0057】
(A)ミシン1の形状及び構成は適宜変更可能である。例えば、ミシンは、針棒を複数備える多針ミシンであってもよい。また例えば、ミシンは、刺繍装置30に代えて、単位模様の送り方向と幅方向とに加工布を移送する機能を備える送り機構、即ち、前後方向及び左右方向に加工布を移送する送り機構を、移送手段としてもよい。
【0058】
(B)ジョイスティック90の形状及び構成は適宜変更可能である。例えば、ジョイスティック90は、第1レバー91のみを備えていてもよい。また例えば、第1レバー91は、所定の方向(例えば、8方向)に傾倒可能に構成されていてもよい。また例えば、第1レバー91の出力信号は、第1レバー91の傾倒量と、傾倒方向とが特定できる信号であればよい。第2レバー92の出力信号についても同様である。また、第1から第3操作手段は、ジョイスティック90の他、タッチパネルと、デジタイザと、タブレットと、ゲームコントローラ等の各種スイッチと、トラックボールとを含む、ユーザとインターフェイスをとる機器のいずれかであってもよい。第1から第3操作手段は、同一種類の機器であってもよいし、他の種類の機器であってもよい。
【0059】
(C)モード設定処理で実行される処理は適宜変更可能である。例えば、S5において第1ボタン93以外の操作手段が操作された場合の出力信号が、制御指示として取得されてもよい。第1ボタン93以外の操作手段としては、例えば、変形例(B)で例示したユーザとインターフェイスをとる機器のいずれかであればよい。例えば、ミシンモータ79の制御を開始させる制御指示は、フリーモーション縫製を開始させる指示が入力された後に第1レバー91が最初に操作された場合の出力信号としてもよい。また例えば、ミシンモータ79の制御を終了させる制御指示は、フリーモーション縫製時の処理を実行後にパネル操作等によって入力された、フリーモーション縫製以外の処理の開始させる指示としてもよい。また例えば、制御指示は、パネル操作等によって入力される止め縫いを形成させる指示としてもよい。また例えば、図10のS10で作成される止め縫いデータの構成は適宜変更可能である。さらに、モード設定処理は、必要に応じて省略してもよい。
【0060】
(D)メイン処理で実行される処理は適宜変更可能である。例えば、メイン処理に以下の(D−1)から(D−5)の変形を加えてもよい。
【0061】
(D−1)メイン処理において所定の周期で第1レバー91の出力信号を取得してもよく、その場合は、第1レバー91の傾倒量Tに応じた数の単位データが一度に生成されてもよい。このようにすれば、ミシンは、上記実施形態のメイン処理と同様に、第1レバー91の傾倒操作によって指示される長さの縫目を単位縫目によって形成させる縫製データを作成することができる。また例えば、S70又はS75で取得される単位データの種類は適宜変更可能である。具体的には、例えば、上記実施形態で例示した、走り縫いをするための一針のデータと、ジグザグ縫いをするための二針データとの他、図17に例示するように飾り模様縫いをするための複数針のデータが挙げられる。例えば、単位模様は、図17の画面400に表示された飾り模様縫いの中から、パネル操作に応じた出力信号に基づいて設定されてもよい。画面400には、15種類の飾り模様縫いの単位模様が表示されている。図17の左から右に向かう方向が単位模様の送り方向であり、図17の上下方向が単位模様の幅方向である。単位模様として飾り模様縫いをするための複数針のデータが設定された場合、複雑な形状を有する飾り模様縫いの縫目を、フリーモーション縫製によって形成させることができる。
【0062】
(D−2)図11のS95の座標データの作製方法は、第2操作手段(第1レバー91)から出力される出力信号と、移送手段(X軸モータ81及びY軸モータ82)の座標系とに応じて適宜変更してもよい。S105の縫製データの作製方法は、縫製データのデータ構成に応じて適宜変更してよい。また例えばS110における縫製を実行させるための制御は、ミシンの構成に応じて適宜変更されればよい。
【0063】
(D−3)S120の回転数の設定方法及びS145の取得頻度の設定方法は適宜変更可能である。例えば、第1レバー91の傾倒量Tと主軸の回転数との対応は適宜変更可能である。また、例えば、S120において、S115で取得した傾倒量Tを所定の計算式に代入することによって主軸の回転数が算出されてもよい。また例えば、移送データの作製方法は適宜変更可能である。例えば、ミシン1は、単位データを用いずに移送データを作成してもよい。この場合例えば、ミシン1は、第1レバー91からの出力信号(例えば、ベクトルデータ)を、所定の計算式に代入することによって移送データに含まれる座標データに変換してもよい。ミシン1は、非縫製モード時の処理として刺繍枠32を移動させる必要がない場合には、S130からS145の処理を省略してもよい。
【0064】
(D−4)ミシン1は、図12の拡大/縮小処理で、ジグザグ縫いの幅方向及び送り方向の大きさを変更可能であったが、幅方向及び送り方向の大きさのいずれかを変更可能としてもよい。また例えば、ミシン1は「送り方向の大きさ変更」が有効であるか否かに関わらず、送り方向の大きさの倍率を、第2レバーからの出力信号に応じて設定してもよい。同様に、ミシン1は「幅方向の大きさ変更」が有効であるか否かに関わらず、幅方向の大きさの倍率を、第2レバーからの出力信号に応じて設定してもよい。また例えば、拡大縮小率の設定方法は、適宜変更可能である。例えば、送り方向及び幅方向の拡大縮小率を同一に設定してもよい。例えば、ミシン1は、第2レバー92の傾倒方向に応じて、生成する単位データの種類を設定し、傾倒量Tに応じて送り方向及び幅方向の拡大縮小率を設定してもよい。この場合、傾倒方向を複数(例えば、8方向)設定し、各傾倒方向に単位データを割り当てることによって、S65で設定可能な単位データの数を増やすことができる。例えば、ベクトルデータを用いた所定の計算式に基づき拡大縮小率が設定されてもよい。さらに拡大/縮小処理は、必要に応じて省略されてもよい。
【0065】
(D−5)特開2008−246186号公報と同様に、ミシンはフリーモーション縫製の縫目が形成される位置を表す縫目位置指示線及びフリーモーション縫製によって形成された縫目の位置を示す縫目線をLCD10に表示してもよい。同様に、ミシンは、ユーザが縫目位置指示線を確認した後に、縫製の指示があった場合に、縫目位置指示線で表される位置にフリーモーション縫製の縫目を形成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 ミシン
30 刺繍装置
32 刺繍枠
34 加工布
61 CPU
79 ミシンモータ
81 X軸モータ
82 Y軸モータ
90 ジョイスティック
91 第1レバー
92 第2レバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工布を所定の2方向に移送する機能を有する移送手段と、下端に縫針が装着された針棒を上下動させる縫製手段とを備えるミシンにおいて、
操作状態に応じて、1つ以上の縫目によって構成される単位縫目を指定する第1出力信号を出力する第1操作手段と、
操作状態に応じて、前記加工布に前記単位縫目を形成する位置を指示する第2出力信号を出力する第2操作手段と、
前記第1操作手段によって出力された前記第1出力信号と、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号とに基づき、前記単位縫目が縫製される位置を指示する座標データを含む縫製データを作成する縫製データ作成手段と、
前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記移送手段を駆動させ、前記加工布を移送させる移送制御手段と、
前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記縫製手段を駆動させ、前記加工布に前記単位縫目によって構成される縫目を形成させる縫製制御手段と
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
操作状態に応じて、前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目の幅方向及び当該幅方向と直交する方向である送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を指示する第3出力信号を出力する第3操作手段を備え、
前記縫製データ作成手段はさらに、
前記第3操作手段によって前記第3出力信号が出力された場合に、当該第3出力信号によって指示される前記拡大縮小率に基づき拡大又は縮小処理した前記座標データを作成する拡大縮小手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記送り方向の拡大縮小率を指示することを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記幅方向の拡大縮小率を指示することを特徴とする請求項2又は3に記載のミシン。
【請求項5】
前記縫製データ作成手段はさらに、
前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目を形成するためのデータである単位データを、前記第2出力信号に応じた数だけ生成するデータ生成手段と、
前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記データ生成手段によって生成された前記単位データを前記座標データに変換する変換手段と
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のミシン。
【請求項6】
前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記縫製手段の駆動速度を設定する速度設定手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項7】
前記第1操作手段は、第1操作部材を備え、当該第1操作部材が傾倒された場合と、当該操作部材が傾倒されていない場合とで、異なる前記単位縫目を指定する前記第1出力信号を出力し、
前記第2操作手段は、第2操作部材を備え、当該第2操作部材の傾倒操作に応じて、前記第2出力信号を出力し、
前記第3操作手段は、前記第1操作部材の傾倒方向及び傾倒量に応じて、前記第3出力信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項1】
加工布を所定の2方向に移送する機能を有する移送手段と、下端に縫針が装着された針棒を上下動させる縫製手段とを備えるミシンにおいて、
操作状態に応じて、1つ以上の縫目によって構成される単位縫目を指定する第1出力信号を出力する第1操作手段と、
操作状態に応じて、前記加工布に前記単位縫目を形成する位置を指示する第2出力信号を出力する第2操作手段と、
前記第1操作手段によって出力された前記第1出力信号と、前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号とに基づき、前記単位縫目が縫製される位置を指示する座標データを含む縫製データを作成する縫製データ作成手段と、
前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記移送手段を駆動させ、前記加工布を移送させる移送制御手段と、
前記縫製データ作成手段によって作成された前記縫製データに従って、前記縫製手段を駆動させ、前記加工布に前記単位縫目によって構成される縫目を形成させる縫製制御手段と
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
操作状態に応じて、前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目の幅方向及び当該幅方向と直交する方向である送り方向の少なくともいずれかの拡大縮小率を指示する第3出力信号を出力する第3操作手段を備え、
前記縫製データ作成手段はさらに、
前記第3操作手段によって前記第3出力信号が出力された場合に、当該第3出力信号によって指示される前記拡大縮小率に基づき拡大又は縮小処理した前記座標データを作成する拡大縮小手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記送り方向の拡大縮小率を指示することを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記第3出力信号は、少なくとも前記単位縫目の前記幅方向の拡大縮小率を指示することを特徴とする請求項2又は3に記載のミシン。
【請求項5】
前記縫製データ作成手段はさらに、
前記第1出力信号によって指定される前記単位縫目を形成するためのデータである単位データを、前記第2出力信号に応じた数だけ生成するデータ生成手段と、
前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記データ生成手段によって生成された前記単位データを前記座標データに変換する変換手段と
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のミシン。
【請求項6】
前記第2操作手段によって出力された前記第2出力信号に基づき、前記縫製手段の駆動速度を設定する速度設定手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項7】
前記第1操作手段は、第1操作部材を備え、当該第1操作部材が傾倒された場合と、当該操作部材が傾倒されていない場合とで、異なる前記単位縫目を指定する前記第1出力信号を出力し、
前記第2操作手段は、第2操作部材を備え、当該第2操作部材の傾倒操作に応じて、前記第2出力信号を出力し、
前記第3操作手段は、前記第1操作部材の傾倒方向及び傾倒量に応じて、前記第3出力信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−83353(P2011−83353A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236917(P2009−236917)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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