説明

ミスト生成器

【課題】電解電極を用いて電解水からミストを生成するミスト生成器であって、水溶液タンクに貯えられた水溶液を効率的に使用することが可能なミスト生成器を提供する。
【解決手段】本発明のミスト生成器は、貯水タンクと、霧化部と、搬送部と、電解部と、電解部の制御を行う電解制御部とを備える。また、液体に接触して電圧を検出する渇水検知部と、霧化部及び電解制御部の制御を行う主制御部とを備える。電解制御部は、電解部に含まれる複数の電極に所定電圧を印加して電解動作を行わせる第一動作モードと、電解部に含まれる一電極に電圧を印加し、他電極により、貯水タンクの液体を介してこの電圧を検出する第二動作モードとを備えている。主制御部は、渇水検知部が電圧を検出している場合に、第一動作モードで動作するよう電解制御部を制御する。また渇水検知部が電圧を検出していない場合に、第二動作モードで動作するよう電解制御部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されて噴霧を行うミスト生成器に関するものであり、特に電解電極を用いて電解水からミストを生成して噴霧を行うミスト生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミスト生成器において、様々な形態や特徴を備えたミスト生成器が開発されている。例えば、水や電解水等の液体からミスト(=霧)を生成し、噴霧することで車中の空気を清浄する移動体用のミスト生成器等が実用化されている。
【0003】
また、電解電極を用いて電解水を生成し、電解水からミストを生成するミスト生成器が実用化されている。このタイプのミスト生成器は、水溶液タンクの内部に、電解電極と、水溶液の水位を検知するための渇水電極とを備えている。
【0004】
渇水電極はその下端が、水溶液タンクの底から所定距離だけ高い位置、且つ電解電極の下端よりも高い位置となるように設けられている。つまり水溶液が減少した場合に、渇水電極の下端が、電解電極の下端よりも先に水溶液に接触しなくなるようになっている。
【0005】
これにより、水溶液が減少した場合に、電解電極が水溶液に浸かっている状態で渇水を検知する。従って、電解電極が水溶液に接触しなくなる前にその動作を停止させ、電極保護を図ることができる。
【0006】
また特許文献1には、持ち運び可能な噴霧装置(=ミスト生成器)が開示されている。この噴霧装置は、加湿用の液体を貯えるための液体貯留手段と、貯えられている液体を上方に供給する液体供給手段とを備えている。また、ハウジング内の上部に設けられ、液体供給手段から供給を受けて、液体からミストを作るミスト生成手段を備えている。
【0007】
またこの噴霧装置は、ミスト生成手段の上方に、ミスト生成手段によって生成されたミストを通す開口を備えている。また、ハウジングの上端にオン位置とオフ位置との間で回動可能に設けられる蓋と、蓋がオン位置に回動されたとき開口と連通する放出口とを備えている。これにより、ミストが開口及び放出口を通って放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−168328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら従来のミスト生成器は、電解電極が水溶液に浸かっている状態で渇水を検知して動作停止するため、水溶液タンクに貯えられている水溶液を全て使い切ることができなかった。特に、特許文献1に示されているような小型のミスト生成器では、装置全体のサイズの制約等から、水溶液タンクの容量に限度がある。従って頻繁に水の補給が必要となり、ユーザに煩わしさを感じさせるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、電解電極を用いて電解水からミストを生成するミスト生成器であって、水溶液タンクに貯えられた水溶液をより効率的に使用することにより、水溶液を補充する頻度を低減することが可能なミスト生成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、内部に液体を貯える貯水タンクと、液体を霧化する霧化部と、前記貯水タンクに貯えられている液体を前記霧化部へ搬送するための流動経路の一部を形成する搬送部と、液体を電解して電解水を生成する電解部と、前記電解部の制御を行う電解制御部と、前記貯水タンクに貯えられている液体に接触して該液体に印加される電圧を検出する渇水検知部と、前記霧化部及び前記電解制御部の制御を行う主制御部とを備えるミスト生成器において、前記電解制御部は、前記電解部に含まれる電極に予め定められた電圧を印加し、前記渇水検知部により該電圧を検出する第一動作モードと、前記電解部に含まれる一電極に電圧を印加し、該一電極を除く前記電解部の電極により該電圧を検出する第二動作モードとを備え、前記主制御部は、前記渇水検知部が電圧を検出している場合に、前記第一動作モードで動作するよう前記電解制御部を制御し、前記渇水検知部が電圧を検出していない場合に、前記第二動作モードで動作するよう前記電解制御部を制御することを特徴とする。
【0012】
この構成によると、本発明のミスト生成器は、貯水タンクと、液体を霧化する霧化部と、液体を霧化部へ搬送するための流動経路を形成する搬送部とを備える。また、液体を電解して電解水を生成する電解部と、電解部の制御を行う電解制御部とを備える。また、貯水タンクに貯えられている液体に接触することにより、液体に印加される電圧を検出する渇水検知部と、霧化部及び電解制御部の制御を行う主制御部とを備える。電解制御部は、電解部に含まれる電極に所定電圧を印加して電解動作を行わせるとともに、渇水検知部によりこの電圧を検出する第一動作モードを備える。また、電解部に含まれる一電極に電圧を印加し、他電極により、貯水タンクの液体を介してこの電圧を検出する第二動作モードを備えている。主制御部は、渇水検知部が電圧を検出している場合に、第一動作モードで動作するよう電解制御部を制御する。また渇水検知部が電圧を検出していない場合に、第二動作モードで動作するよう電解制御部を制御する。これにより、渇水検知部により渇水が検知された以降は、電解部を渇水検知用の電極として用いる。
【0013】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、該液体を、前記搬送部を介して前記霧化部へ到達するように付勢する加圧部を備え、前記主制御部は、前記第二動作モードにおいて、該一電極を除く前記電解部の電極により該電圧が検出されていない場合に、前記加圧部または前記霧化部の駆動を停止するよう制御することを特徴とする。
【0014】
この構成によると、本発明のミスト生成器は、貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、液体を霧化部へ搬送する加圧部を備えている。主制御部は、上述の第二動作モードにおいて、他電極により電圧が検出されていない場合、加圧部または霧化部の駆動を停止するよう制御する。
【0015】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記加圧部は、前記貯水タンクの外部から前記貯水タンクの内部へ空気を送り込んで前記貯水タンク内の空気圧を増加させることにより前記貯水タンク内の液体を加圧することを特徴とする。
【0016】
この構成によると、加圧部は、貯水タンクの外部から貯水タンクの内部へ空気を送り込む。そして貯水タンク内の空気圧を増加させることにより、貯水タンク内の液体を加圧して霧化部へ搬送する。
【0017】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器が備える前記搬送部は、前記貯水部に貯められた液体を一端から吸収し、該一端と反対の一端から該液体を排出する吸水棒を含むことを特徴とする。
【0018】
この構成によると、搬送部は吸水棒を含んでいる。吸水棒は、貯水部に貯められた液体を一端から吸収し、毛細管現象により内部で液体を搬送し、反対の一端から液体を排出する。
【0019】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記電解部に含まれる電極の下端が前記貯水タンクの底面から予め定められた距離だけ上方となり、且つ該下端が前記渇水検知部の下端より下方となる位置に、前記電解部は設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によると、電解部に含まれる電極の下端が、貯水タンクの底面から所定距離だけ上方となるように電解部が設けられている。また電極の下端が、渇水検知部の下端より下方となるように電解部が設けられている。
【0021】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器が備える前記霧化部は、超音波振動子を含むとともに前記貯水タンクの上方に設けられており、前記搬送部は、鉛直上向きに前記流動経路を形成していることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、霧化部は、超音波振動子を用いて液体の霧化を行うとともに、貯水タンクの上方に設けられている。また搬送部は、鉛直上向きに前記流動経路を形成している。このため、貯水タンクの液体を吸い上げて、超音波振動子の近傍へ搬送する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、貯水タンクに貯えられた液体が渇水検知部の下端を下回った場合に、電解部の電解動作を停止するとともに、電解部に含まれる複数の電極を用いて渇水の検知を行う。このため、渇水検知部のみを使用して渇水を検知する場合と比較して、貯水タンク内の液体をより多く使用することができる。これにより、貯水タンクに対する液体の補給の頻度を減らし、ユーザの利便性向上を図ることができる。また、新たな部材を追加する必要がないため、省コスト及び省サイズの点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施形態のミスト生成器の構成を示す上面図及び断面側面図である。
【図2】本発明のミスト生成器の霧化部の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の電気回路構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第一の実施形態の空気圧発生時の内部構成を示す断面側面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態の液体減少時の内部構成を示す断面側面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態のミスト生成器の構成を示す上面図及び断面側面図である。
【図7】本発明の第二の実施形態の電気回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
[実施の形態1]
〈1−1.内部構成について〉
図1は、本発明の第一の実施形態に係るミスト生成器100の内部構成を示す模式図である。ミスト生成器100は、ミスト生成器100が搭載されている車両10の車内に対してミストを生成して噴霧するための装置である。なおミスト生成器100は、車両10に着脱可能な構造となっている。またミスト生成器100の各部は、特に材質に言及していない限り、例えばプラスチック成形品として形成される。
【0026】
図1(a)は、ミスト生成器100を上面から見た上面図である。図1(b)は、ミスト生成器100を側面から見た断面側面図である。ミスト生成器100は、充電可能なバッテリ(不図示)等を電源として作動するもので、直径10cm、高さ20cm程度の円筒形状をしている。なお図1(b)においては、図中の下方向が、ミスト生成器100の下部方向を示している。
【0027】
図1に示すようにミスト生成器100は、放出板101(=霧化部)、超音波振動子102(=霧化部)、水溶液タンク103(=貯水タンク)、導水管104(=搬送部)、空気圧送出装置105(=加圧部)、電解電極106(=電解部)、渇水電極107(=渇水検知部)、及び制御基板200を備えている。
【0028】
放出板101は、ミストを放出するために微細な穴が中央部に設けられた板状部材である。超音波振動子102は、導水管104により吸い上げられ、放出板101の下方に到達した水溶液を振動動作により霧状にする円盤形状の部材である。
【0029】
そして霧状となった水溶液、つまりミストを、放出板101を通してミスト生成器100の装置外部へ噴射する。これにより、ミストを生成して外部に放出するというミスト生成器100の主目的が達成される。
【0030】
水溶液タンク103は、上記の超音波振動子102がミスト生成に用いる水溶液を貯える。導水管104は、上下方向(鉛直方向)に伸びた略管状の部材として、ミスト生成器100のハウジングに固定されて形成されている。導水管104の上端と下端は開口されており、導水管104の下端から入った水溶液がその内部を流動し、その上端から出ることが可能となっている。
【0031】
導水管104の下端は、水溶液タンク103内へ突出するように設計されている。一方、導水管104の上端の近傍には、放出板101及び超音波振動子102が配置されている。これにより導水管104は、水溶液タンク103の内部から放出板101及び超音波振動子102へ向かうように、水溶液の流動経路を形成している。
【0032】
なお導水管104の下端は、水溶液タンク103の底から所定距離だけ離れるように設定されている。また導水管104の形状としては、上述した通り略管状が好適であるが、水溶液の流動経路を形成する限り、種々の形状が採用され得る。
【0033】
空気圧送出装置105は、空気の吸込口と吹出口を有しており、吸込口から吸い込んだ空気を、吹出口から吹き出す動作(以下、「送風動作」という)を行う。空気圧送出装置105は、吸込口がミスト生成器100の外部(大気中)に開放されるように設置されている。また、吹出口がミスト生成器100の下部に向くように設置されている。
【0034】
電解電極106は、電解水を生成するための電極群であり、陽極電極、及び陰極電極の一対の電極板を含むように構成されている。これら一対の電極板に電圧が印加されると、水溶液タンク103内の水溶液が電気分解される。これにより、殺菌作用や脱臭作用を有する次亜塩素酸や活性酸素等を含む電解水が生成される。
【0035】
なお、電解電極106が含む電極板は、例えばチタンまたはルテニウム系材料に白金をコーティングし、その外側にイリジウムをコーティングすることにより形成されている。また電極板は、例えばリード線等を用いて電圧が印加される。なお陽極電極、及び陰極電極は、所定時間毎に極性を変化させ、極性を入れ換えて電解水を生成する。
【0036】
渇水電極107は、電解電極106が印加する電圧を、水溶液タンク103内の水溶液を介して検知する電極である。渇水電極107は、その下端が水溶液タンク103の底から所定距離(図中の高さT)だけ上方となるように設けられている。
【0037】
このため、水位がこの高さTを下回った場合に、渇水電極107は電圧を検知することができなくなる。これにより、水溶液タンク103の渇水を検知する。なお、渇水電極107を構成する具体的な部材については、電解電極106と同様であるため説明を省略する。
【0038】
制御基板200は、ミスト生成器100の各部を制御する制御回路、またはマイコン等を含む基板である。制御基板200は、ミスト生成器100のハウジング(図1の例では給水タンク103の上方)に設けられたスペースに収納されている。
【0039】
制御基板200は、リード線等により超音波振動子102、電解電極106、及び渇水電極107等と接続されている。また制御基板200は少なくとも、図3に示すマイコン201(=主制御部)、振動子駆動回路202(=霧化部)、空気圧送出装置駆動回路203(=加圧部)、及び電極駆動回路204(=電解制御部)を含むように構成されている。なお、各部の詳細については後述する。
〈1−2.超音波振動子の構成について〉
図2は、本発明の第一の実施形態に係る超音波振動子102周辺の構成を示す模式図である。図2(a)は、超音波振動子102を斜め上方から見た状態を表している。図2(b)は、線分AA’を含む面を断面とした場合の断面図(ただし制御基板200等の部分は断面図となっていない)を表している。
【0040】
図2に示すように、超音波振動子102はドーナツ型形状(断面は略長方形)をしており、外縁が円形である放出板101の上面に接着されている。放出板101は、例えばステンレスによって形成された略板状の部材であり、その中央の所定領域(超音波振動子102に囲まれた領域の一部)に、メッシュ部101aが設けられている。
【0041】
メッシュ部101aは、ミストが通過できる程度の大きさの微小孔が多数設けられたメッシュ状に形成されている。超音波振動子102は、圧電セラミックにより形成されている。超音波振動子102の表面に形成された電極膜と放出板101との間に、ハウジング内に設置された制御基板200によって所定電圧が印加されると、高周波(超音波)振動が発生する。これにより、水溶液を霧状にしてミストを生成する。
〈1−3.制御基板の構成について〉
図3は、本発明の第一の実施形態に係る制御基板200の構成、及び制御基板200に接続される部材の構成を示すブロック図である。図3に示すように制御基板200は、マイコン201、振動子駆動回路202、空気圧送出装置駆動回路203、及び電極駆動回路204を備えている。また、制御基板200に接続される部材として、図1に図示した部材の他に、起動スイッチ301、及び電源部302が存在する。
【0042】
マイコン201は、ミスト生成器100の各部材の駆動を有機的に制御して、ミストの生成を統括制御するものである。またマイコン201は、振動子駆動回路202〜電極駆動回路204に対する駆動制御や、電源部302に対する電圧制御を行う機能を備える。またマイコン201は、渇水電極107が電圧を検知しているか否かを監視することにより、水溶液タンク103に渇水が発生しているか否かを判定する。そしてこの判定結果に基づき、後述する電極駆動回路204の制御を行う。
【0043】
振動子駆動回路202は、超音波振動子102に対する駆動電圧の印加の実施/未実施を選択的に行う回路である。また振動子駆動回路202は、印加する駆動電圧の大きさを変更することにより、生成されるミストの量を調整する機能を備える。
【0044】
空気圧送出装置駆動回路203は、空気圧送出装置105に対する駆動電圧の印加の実施/未実施を選択的に行う回路である。また空気圧送出装置駆動回路203は、印加する駆動電圧の大きさを変更することにより、空気圧送出装置105が発生させる空気圧の量を調整する機能を備える。
【0045】
電極駆動回路204は、電解電極106に対する駆動電圧の印加の実施/未実施を選択的に行う回路である。また電極駆動回路204は、電解電極106に含まれる電極板の極性を変更するためのスイッチング回路としての機能を備える。つまり一対の電極板が、正極電極及び陰極電極からなる電解電極となるよう、回路切り換えを行う。
【0046】
電極駆動回路204は、第一動作モードと第二動作モードとの二つの動作モードを備える。そしてこの二つの動作モードを、マイコン201からの指示により切り換える。第一動作モードは、渇水電極107を用いて水溶液の水位を判定することを目的とした動作モードである。第二動作モードは、電解電極106を用いて水溶液の水位を判定することを目的とした動作モードである。
【0047】
第一動作モードにおいて電極駆動回路204は、電解電極106に対して電解動作を行うように指示する。これにより、電解水の生成が行われる。第一動作モードが実施されている状態では、マイコン201は、渇水電極107を用いて渇水を検知する。そして渇水電極107により渇水が検知された場合、つまり電解電極106が印加する電圧を渇水電極107が検知しなくなった場合、マイコン201は電極駆動回路204に対して、第二動作モードへ移行するよう制御する。
【0048】
第二動作モードにおいて電極駆動回路204は、電極保護のため、電解電極106に対して電解動作を停止するよう指示する。あわせて、電解電極106に含まれる電極板の一方(=一電極)に微弱電流が流れるよう、間欠的に電圧を印加する。
【0049】
そしてもう一方の電極板(=他電極)を用いてこの微弱電流を監視することにより、水溶液に印加された電圧の検出を行う。水溶液が電解電極106に接触していない場合、もう一方の電極板は電圧を検出することができないので、水溶液の水位が電解電極106の下端を下回っているとみなすことができる。このように第二動作モードにおいては、電解電極106に含まれる二つの電極板間の導通をチェックすることで、電解電極106を第二の渇水検知部として使用する。
【0050】
起動スイッチ301は、ミスト生成器100の稼働状態のON/OFFを切り換えるためのリミットスイッチである。ただし起動スイッチがOFFされている状態でも、起動スイッチ301はマイコン201対して微小電流を流す。これによりマイコン201はスタンバイ状態を維持することが可能である。
【0051】
電源部302は、外部電源(不図示)より電力の供給を受け、DC/ACの変換等を行い、ミスト生成器100の各部に対して電源電圧を与える。電源部302は例えば、外部電源より電力供給を受けるための電源コードを接続する接続端子(不図示)を備えている。
【0052】
或いは電源部302は、電源として乾電池或いは二次電池を使用することにより、外部電源から切り離された状態でミスト生成器100の駆動を可能とする形態であってもよい。二次電池としては例えば、充電式アルカリ電池やリチウムイオンバッテリ等を用いることが可能である。
〈1−4.渇水検知処理について〉
次に、本発明の第一の実施形態に係るマイコン201が実施する渇水検知処理について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、ミスト生成器100を側面から見た断面側面図であり、送風動作が開始された直後の状態を示している。また図5は、送風動作により超音波振動子102の近傍まで水溶液が搬送され、水溶液タンク103に貯えられている水溶液が減少した状態を示している。
【0053】
マイコン201は、起動スイッチ301により電源の起動が行われると、水溶液タンク103に対して圧力を加える送風動作を行うよう、空気圧送出装置105を制御する。これにより、空気圧送出装置105が発生させる空気圧を利用して、導水管104により水溶液タンク103から水溶液を吸い上げる(図4における導水管104の灰色部分)。
【0054】
なお、空気圧送出装置105が送風動作を行っていない状態では、水溶液タンク103の内部に存在している空気、及び導水管104の内部に存在している空気の圧力は、ほぼ大気圧に等しい。そのためこの状態では、水面より高い位置に設置されている超音波振動子102には、水溶液タンク103内の水溶液は供給されない。
【0055】
図4に示すように、空気圧送出装置105が送風動作を行うことにより、外部から水溶液タンク103の空気層へ空気を送り込む(図中の矢印α1)。これにより、水溶液タンク103内の空気圧は、大気圧に圧力P(送風動作によって新たに加わる圧力)の分だけ増加したものとなる。水溶液タンク103内の空気圧は、送風動作が継続されている間、この状態に維持される。
【0056】
図4においては、空気圧発生直後であるため、吸い上げられた水溶液が導水管104の上端部、つまり超音波振動子102の近傍まで到達していない。この状態において空気圧送出装置105を制御し、気圧を増加させると、水溶液タンク103内の水溶液が加圧される。
【0057】
そして水溶液の水圧が増加することにより、導水管104の内部において、水溶液タンク103内の水溶液が押し上げられる(図中の矢印α2)。この結果、図5に示す状態となり、ミストβが生成される。
【0058】
図5においては、増加した空気圧により水溶液が導水管104の上端部を経由して、超音波振動子102の近傍まで到達している。なお、導水管104に存在していた空気は通気フィルタ(不図示)によりミスト生成器100の外部へ放出される。通気フィルタは、空気は通すが水溶液は通さない止水膜を含む構造をしている。
【0059】
これにより、送風動作により水溶液タンク103内の水溶液が押し上げられた場合に、導水管104等に存在する空気が水溶液の押し上げを阻害するのを回避する。また止水膜により、水溶液がミスト生成器100の外部へ漏れ出すのを防止する。
【0060】
このように水溶液タンク103内の水溶液は、加圧されることにより超音波振動子102の近傍へ到達するように付勢され、超音波振動子102へ継続的に供給される。この結果、水溶液タンク103に貯えられている水溶液の水位が減少する。加圧が開始されるとマイコン201は、渇水電極107が検出する電圧の有無に基づいて、水溶液の水位を監視する。
【0061】
送風動作により水溶液タンク103が減少し、水溶液の水位が渇水電極107の下端より低くなった場合(図5)、渇水電極107が電圧を検出しなくなる。この結果マイコン201は、電極駆動回路204に対して、第一動作モードから第二動作モードへ移行するように指示する。そして以降は、電解電極106を用いて、水溶液の水位を監視する。
【0062】
水溶液の水位がさらに低下し、電解電極106の下端よりも下回ると、電解電極106に含まれる電極板の一方が電圧を検出しなくなる。これを検知したマイコン201は、超音波振動子102、空気圧送出装置105、及び電解電極106の駆動を停止するよう、振動子駆動回路202〜電極駆動回路204に指示する。これにより、送風動作及びミスト生成が停止される。
【0063】
さらにマイコン201は、水溶液タンク103に渇水が発生したことを示す渇水検知通知を実施する。具体的には例えば、ミスト生成器100のハウジングに設けられた渇水通知ランプ(不図示)を点灯させることにより、渇水検知通知を実施する。或いは、ハウジングに液晶パネル等の表示装置を備え、この表示装置に所定の画像を表示することにより渇水検知通知を行う形態でもよい。
【0064】
なお、渇水通知が実施された後も、ユーザにより水溶液タンク103に対する水溶液の補充が行われることを想定して、所定時間内は電解電極106による渇水検知を継続する形態でもよい。この場合、水溶液が補充され、渇水電極107が電圧を検出することにより第一動作モードへ移行する。或いは水溶液が補充され、電解電極106が電圧を検出するが、渇水電極107が電圧を検出しないことにより第二動作モードへ移行する。
【0065】
以上に説明した本実施形態によれば、水溶液タンク103の水溶液が減少した場合に、渇水電極107に代わって電解電極106を用いて渇水を検知する。このため、渇水電極107のみを用いて渇水を検知する場合と比較して、水溶液タンク103の水溶液をより多く使用することができる。これにより、水溶液の補給の頻度を減らし、ユーザの利便性向上を図ることができる。また、新たな部材を追加する必要がないため、省コスト及び省サイズの点で有利である。
【0066】
また本実施形態によれば、水溶液タンク103の水溶液が減少し、電解電極106が水溶液に接触していない状態となった場合に、超音波振動子102及び空気圧送出装置105の駆動を停止する。これにより、渇水が発生している状態において、不要な電力が消費されることを防止できる。
【0067】
なお、電解電極106が電解動作を停止した後も、電解電極106が水溶液を検知している限りはミスト生成が実施されるが、この時点での水溶液タンクの103の水溶液は少量であり、電解電極106が電解動作を停止する直前までにある程度の電解が行われている。このため、電解電極106の電解動作停止後に生成されるミストの殺菌効果が、極端に低下することもない。
【0068】
次に、本発明の第二の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態2]
〈2−1.内部構成について〉
図6は、本発明の第二の実施形態に係るミスト生成器100の内部構成を示す模式図である。本実施形態のミスト生成器100は、実施の形態1の導水管104に代わり、吸水棒108(=搬送部)を備えている。また、実施の形態1の空気圧送出装置105を備えていない。
【0069】
図6(a)は、ミスト生成器100を上面から見た上面図である。図6(b)は、ミスト生成器100を側面から見た断面側面図である。なお図6(b)においては、図中の下方向が、ミスト生成器100の下部方向を示している。
【0070】
本実施形態のミスト生成器100は、吸水棒108により水溶液タンク103から水溶液を吸い上げる。吸水棒108の上面には、放出板101及び超音波振動子102が当接している。給水前の状態では、吸水棒108は乾燥している。
【0071】
給水口(不図示)から給水が行われると吸水棒108の底部が浸水する。吸水棒108はこの底部から水溶液を吸収し、毛細血管現象により水溶液を吸い上げる。吸水棒108は、その上面及び底面(=一端)でのみ水溶液の出し入れを行えるよう、側面をプラスチック素材等で加工されている。
【0072】
従って水溶液タンク103に貯蔵された水溶液は、吸水棒108の底面に当接することにより、毛細管機能によって吸水棒108の上部、つまり超音波振動子102の近傍へ供給される。吸水棒108の上面に達した水溶液は超音波振動子102によってミストにされ、放出板101を通って放出、噴霧される。
〈2−2.超音波振動子の構成について〉
実施の形態1と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
〈2−3.制御基板の構成について〉
図7は、本発明の第二の実施形態に係る制御基板200の構成、及び制御基板200に接続される部材の構成を示すブロック図である。図7に示すように本実施形態の制御基板200は、実施の形態1の空気圧送出装置105、及び空気圧送出装置駆動回路203を備えていない。その他の構成については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
〈2−4.渇水検知処理について〉
次に、本発明の第二の実施形態に係るマイコン201が実施する渇水検知処理について、図6を用いて説明する。
【0073】
マイコン201は、起動スイッチ301により電源の起動が行われると、超音波振動子102の駆動を開始するよう、振動子駆動回路202に指示する。あわせてマイコン201は、渇水電極107が検出する電圧の有無に基づいて、水溶液の水位を監視する。
【0074】
吸水棒108により水溶液が超音波振動子102の近傍まで到達すると、水溶液タンク103に貯えられている水溶液の水位が減少する。この結果、水溶液の水位が渇水電極107の下端より低くなり、渇水電極107が電圧を検出しなくなる。これを検知したマイコン201は、電極駆動回路204に対して、第一動作モードから第二動作モードへ移行するように指示する。
【0075】
水溶液の水位がさらに低下し、電解電極106の下端よりも下回った場合、電解電極106に含まれる電極板の一方が電圧を検出しなくなる。これを検知したマイコン201は、電解電極106による渇水検知動作を停止するよう、電極駆動回路204に指示する。ただし超音波振動子102の駆動は、所定時間だけ継続して行うようにする。
【0076】
所定時間経過後、マイコン201は、超音波振動子102の駆動を停止するよう、振動子駆動回路202に指示する。あわせて、水溶液タンク103に渇水が発生したことを示す渇水検知通知を実施する。
【0077】
以上に説明した本実施形態によれば、水溶液タンク103の水溶液が減少し、電解電極106が水溶液に接触していない状態となった場合に、所定時間が経過してから超音波振動子102の駆動を停止し、渇水を通知する。これにより、水溶液タンク103の水溶液が所定量を下回った後も、吸水棒108に残存している水溶液を用いてミスト生成を行うことが可能である。これにより、水溶液の補給の頻度を減らし、ユーザの利便性向上を図ることができる。
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0078】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0079】
(A)上記実施形態では、本発明の構成を実施する装置として、車載用のミスト生成器100を例に説明しているが、これ以外のミスト生成器において実施する形態でもよい。例えば、旅客機や船舶等に搭載されて使用されるミスト生成器において、本発明を実施する形態でもよい。また、持ち運んで使用する携帯用のミスト生成器において、本発明を実施する形態でもよい。
【0080】
(B)上記第一の実施形態では、水溶液タンク103に貯えられている水溶液を加圧する加圧装置として空気圧送出装置105を用いているが、これ以外の方法により水溶液を加圧する形態でもよい。例えば、水溶液タンク103を徐々に変形させ、水溶液タンク103内のスペースを減縮させることで、水溶液タンク103内の水溶液を加圧する形態でもよい。
【0081】
(C)上記第一の実施形態では、空気圧送出装置105が停止した状態において、超音波振動子102の近傍まで搬送された水溶液が水溶液タンク103へ逆流するのを防止する機構については特に明記していないが、例えば開閉弁やフィルタ等の部材を流動経路の一部に設けることにより、水溶液の逆流を防止する形態でもよい。
【0082】
(D)上記実施形態では、導水管104または吸水棒108として、ミスト生成器100のハウジング内において上下方向に伸びた略管状または棒状の部材を例に説明を行っているが、これ以外の形状または組成をした構成でもよい。例えば、導水管104または吸水棒108が流線形状をしており、ハウジングの外部を経由して水溶液の流動経路を形成する形態でもよい。また例えば、導水管104または吸水棒108とミスト生成器のハウジングとが一体形成されている形態でもよい。
【0083】
(E)上記実施形態では、電極駆動回路204が複数の動作モードで動作する回路構成とし、その切り換え制御のみをマイコン201が行っているが、上記複数の動作モードの動作内容をマイコン201が実行するプログラム等に記録させておき、マイコン201から電極駆動回路204に対する制御指示の内容を、渇水検知状況に応じて随時変更する形態でもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 車両
100 ミスト生成器
101 放出板(霧化部)
102 超音波振動子(霧化部)
103 水溶液タンク(貯水タンク)
104 導水管(搬送部)
105 空気圧送出装置(加圧部)
106 電解電極(電解部)
107 渇水電極(渇水検知部)
108 吸水棒(搬送部)
200 制御基板
201 マイコン(主制御部)
202 振動子駆動回路(霧化部)
203 空気圧送出装置駆動回路(加圧部)
204 電極駆動回路(電解制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯える貯水タンクと、
液体を霧化する霧化部と、
前記貯水タンクに貯えられている液体を前記霧化部へ搬送するための流動経路の一部を形成する搬送部と、
液体を電解して電解水を生成する電解部と、
前記電解部の制御を行う電解制御部と、
前記貯水タンクに貯えられている液体に接触して該液体に印加される電圧を検出する渇水検知部と、
前記霧化部及び前記電解制御部の制御を行う主制御部とを備えるミスト生成器において、
前記電解制御部は、前記電解部に含まれる電極に予め定められた電圧を印加し、前記渇水検知部により該電圧を検出する第一動作モードと、前記電解部に含まれる一電極に電圧を印加し、該一電極を除く前記電解部の電極により該電圧を検出する第二動作モードとを備え、
前記主制御部は、前記渇水検知部が電圧を検出している場合に、前記第一動作モードで動作するよう前記電解制御部を制御し、前記渇水検知部が電圧を検出していない場合に、前記第二動作モードで動作するよう前記電解制御部を制御すること
を特徴とするミスト生成器。
【請求項2】
前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、該液体を、前記搬送部を介して前記霧化部へ到達するように付勢する加圧部を前記ミスト生成器が備え、
前記主制御部は、前記第二動作モードにおいて、該一電極を除く前記電解部の電極により該電圧が検出されていない場合に、前記加圧部または前記霧化部の駆動を停止するよう制御すること
を特徴とする請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項3】
前記加圧部は、前記貯水タンクの外部から前記貯水タンクの内部へ空気を送り込んで前記貯水タンク内の空気圧を増加させることにより前記貯水タンク内の液体を加圧すること
を特徴とする請求項2に記載のミスト生成器。
【請求項4】
前記搬送部は、前記貯水部に貯められた液体を一端から吸収し、該一端と反対の一端から該液体を排出する吸水棒を含むこと
を特徴とする請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項5】
前記電解部に含まれる電極の下端が前記貯水タンクの底面から予め定められた距離だけ上方となり、且つ該下端が前記渇水検知部の下端より下方となる位置に、前記電解部は設けられていること
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のミスト生成器。
【請求項6】
前記霧化部は、超音波振動子を含むとともに前記貯水タンクの上方に設けられており、
前記搬送部は、鉛直上向きに前記流動経路を形成していること
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のミスト生成器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−208843(P2011−208843A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75176(P2010−75176)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】