説明

メタクリル系樹脂板の製造方法

【課題】多官能(メタ)アクリレートを含むシラップを鋳型に注入しても、光学歪みの無が無く、耐熱性等に優れたメタクリル系樹脂板の製造方法を提供する。
【解決手段】メタクリル酸メチル60〜100質量%と、他の共重合可能な単量体0〜40質量%とを含む単量体または単量体混合物(A)50〜95質量部と、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)5〜50質量部との重合性混合物100質量部に対して、多官能(メタ)アクリレート0.001〜30質量部と、(I)式で表される亜リン酸トリエステル0.001〜1.0質量部とが添加された原料を、ラジカル重合開始剤の存在下、鋳型内で重合し、該鋳型から取り出す、メタクリル系樹脂板の製造方法。


(式中、R、RおよびRは、炭素数4〜10のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐熱性に優れ、外観欠陥のないメタクリル系樹脂板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂板の製造方法には鋳型製板方法や押出製板方法等がある。溶融成形する押出製板方法と比較して鋳型製板方法で得られたメタクリル系樹脂板は、高い分子量の板を製造でき、また架橋構造も導入できるため、耐薬品性、加工性、機械的強度等を高めることができる点で有用である。
【0003】
メタクリル系樹脂板の鋳型製板方法においては、鋳型から重合前の原料が漏れないように粘度を高めた部分重合体を通常使用する。また部分重合体を使用することで、重合時間を短縮できる利点がある。
【0004】
鋳型製板方法で架橋構造を導入する例としては、部分重合体に2官能メタクリレートを加えて重合させ耐熱性を高めることが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、鋳型製板方法によるメタクリル系樹脂板の無色透明性を向上させるために、第1級メルカプタンとトリアルキルホスファイトの存在下で重合させる方法が知られている(特許文献2)。しかしながらこの方法では、第1級メルカプタンを添加しているため、第1級メルカプタンが連鎖移動剤として作用し、メタクリル系樹脂板の分子量が第1級メルカプタンの添加量に応じて低下する傾向にある。その結果、鋳型製板方法の利点のひとつである高分子量の板を製造することができない場合がある。
【0006】
また、メタクリル系樹脂板の無色透明性を向上させるために、側鎖の炭素数が1〜18の各種アルキルホスファイトを使用し、さらに鋳型に単量体を仕込んだ後、窒素を吹き込む方法が記載されている(特許文献3)。
【0007】
しかしながらこの方法において部分重合物を用いる場合は窒素吹入による溶存酸素追出が難しいという課題が記載されている。
【0008】
メタクリル系樹脂板の鋳型製板方法において、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体とメタクリル酸メチル単位との重合性混合物(以下シラップとも称す)を鋳型に注入する際に、シラップ注入時の流れ模様らしき痕跡がシラップの重合硬化後もメタクリル系樹脂板の光学歪みとして残り外観を悪くする場合がある。この現象は、注入原料中に多官能(メタ)アクリレート単量体が存在するときや、メタクリル系樹脂板の厚みが厚くなるほど顕著に表れる傾向となる。
【特許文献1】特開昭60−144312号公報
【特許文献2】特開平8−109211号公報
【特許文献3】特開平2−189355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、多官能(メタ)アクリレートを含むシラップを鋳型に注入しても、光学歪みが無く、耐熱性等に優れたメタクリル系樹脂板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意検討を進めた結果、特定の化合物を添加することによって、多官能(メタ)アクリレートを含むシラップを重合しても光学歪みが発生せず、メタクリル系樹脂板の特徴である優れた光学的性質や耐熱性、切削性、機械的性質を維持したまま、収率良くメタクリル系樹脂板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、メタクリル酸メチル60〜100質量%と、他の共重合可能な単量体0〜40質量%とを含む単量体または単量体混合物(A)50〜95質量部に対して、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)5〜50質量部を含む原料((A)+(B)=100質量部)100質量部に対して、多官能(メタ)アクリレート0.001〜30質量部と、(I)式で表される亜リン酸トリエステル0.001〜1.0質量部とが添加された原料混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、該鋳型内で重合し、鋳型から取り出す、メタクリル系樹脂板の製造方法である。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R、RおよびRは、炭素数4〜10のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空気雰囲気下において、多官能(メタ)アクリレートを含むシラップを鋳型に注入しても、耐熱性および透明性に優れた、光学歪みの無いメタクリル系樹脂板が収率良く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明におけるメタクリル酸メチル(以下、適宜「MMA」という)以外の他の共重合可能な単量体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のシクロアルキル基、ベンジル基を含むアルキル基の炭素数2〜12のメタクリル酸エステル類;メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸1−メンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチルなどの炭素数8〜20の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、イソプロペニルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル等の官能基を有する単量体が挙げられる。これらは併用することもできる。
【0016】
これらの構成量は、メタクリル酸メチルと他の共重合可能な単量体との合計100質量%の内、40質量%以下である。
本発明では、メタクリル酸メチル60〜100質量%と、他の共重合可能な単量体0〜40質量%とを含む単量体または単量体混合物(A)50〜95質量部と、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)5〜50質量部を含むもの((A)+(B)=100質量部)を、原料とする。
【0017】
共重合可能な他の単量体が40質量%以下であると、良好な耐候性、透明性を有する組成物が得られる。共重合可能な他の単量体の使用量は、重合して得られるメタクリル樹脂本来の物性を損なわない程度の使用量として10質量%以下にすることが好ましい。
【0018】
また本発明におけるメタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)とは、本重合体中にMMA単位を60質量%以上含む重合体であり、前記他の共重合可能な単量体単位を残余の構成成分として含み、MMAに溶解可能なものをいう。該重合体中、MMA単位は90質量%以上含むことが好ましい。本発明におけるMMA単位を主成分とする重合体(B)の構成量は、(A)と(B)の合計100質量部に対し、5質量部以上、50質量部以下である。MMA単位を主成分とする重合体(B)が5質量部以上、50質量部以下であると、鋳型用の型を構成するガスケット等の隙間から重合体を混合したものが漏れにくくなる傾向にある。
【0019】
メタクリル酸メチルと他の共重合可能な単量体とを含む単量体または単量体混合物(A)と、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)からなる構成物(原料)は、通常は各成分を加えて混合することにより得られ、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体の影響で粘度の高い液状物となることから「シラップ」と称する。
【0020】
MMA単位を主成分とする重合体(B)は、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で得ることができ、その重合体をメタクリル酸メチルと他の共重合可能な単量体とを含む単量体または単量体混合物(A)に溶解することによりシラップとなる。またシラップを得る好ましい別の方法として、前記単量体または単量体混合物(A)の一部を重合させる方法等が挙げられる。
【0021】
次に、本発明における多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジメチロールエタンジメタンジメタクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジメタクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2,2−ジメチル−1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ジシクロペンタジエニルジメタクリレート等が挙げられる。特に、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが、耐熱性、透明性、経済性の点から好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」あるいは「アクリレート」のことをいう。
【0022】
多官能(メタ)アクリレートの添加量は、メタクリル酸メチル60〜100質量%と、他の共重合可能な単量体0〜40質量%とを含む単量体または単量体混合物(A)50〜95質量部と、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)5〜50質量部との重合性混合物100質量部に対して0.001〜30質量部の範囲である。その添加量が0.001質量部以上であると、得られるメタクリル系樹脂板の耐熱性や切削性に優れる。その添加量が30質量部以下であると、板外観が優れる。その添加量が1質量部以下であると、板外観や加熱時の成形性に優れる。
【0023】
次に、本発明における式(I)で表される亜リン酸トリエステルとしては、R、RおよびRが炭素数4〜10のアルキル基である亜リン酸トリアルキルエステルであり、例えば、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリペンチル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリス(イソデシル)、等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。R、RおよびRで表されるアルキル基が、炭素数が4以上であることにより、メタクリル系樹脂板の物性を維持しやすく、炭素数が10以下であることにより、前記原料への溶解性が良好である。また、R、R、Rがアルキル基であることから、得られるメタクリル系樹脂板への耐光性に影響を与えることがない。溶解性および光学歪みを抑制する効果から、炭素数が8以下のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0024】
亜リン酸トリエステルの添加量は、前記単量体または単量体混合物(A)とメタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)との構成物(原料)100質量部に対して、0.001質量部以上であり、1.0質量部以下である。その添加量が0.001質量部以上であると、得られるメタクリル系樹脂板の光学歪みを抑えることができる。またその添加量が1.0質量部以下であると、樹脂板の外観が良好となり、耐熱性が保持される。光学歪み抑制及び耐熱性保持の観点より、亜リン酸トリエステルの添加量は、0.001〜0.1質量部が好ましい。
【0025】
さらに本発明におけるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0026】
次に、本発明のメタクリル系樹脂板の製法を例示する。
【0027】
メタクリル酸メチルと、他の共重合可能な単量体とを含む単量体または単量体混合物(A)と、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)をそれぞれ所定量計量し、容器内で混合攪拌する。前記重合体(B)を溶解する際、加温してシラップとすることが好ましい。
【0028】
前記単量体または単量体混合物(A)の一部を重合させてシラップとする場合は、冷却管、温度計及び撹拌機を備えた反応機に、前記単量体または単量体混合物(A)を所定量計量し、撹拌しながら加熱し、少量の重合開始剤を加え、所定の温度保持した後冷却することによっても得られる。
【0029】
シラップの粘度は、20℃において200〜4000mPa・sであることが好ましい。この粘度が200mPa・s以上であると、鋳型用の型を構成するガスケット等の隙間から重合性混合物が漏れにくくなる傾向がある。また、4000mPa・s以下であると重合性混合物の注入時間が短くなる傾向がある。
【0030】
次いで上記のシラップに、多官能(メタ)アクリレート、亜リン酸トリエステル、ラジカル重合開始剤等を添加混合した後、脱泡し、そのシラップを鋳型内に注ぐ。
【0031】
鋳型に注ぐ前までの段階で、必要に応じ種々の添加剤を加えることができる。添加剤としては、着色に用いられる染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、難燃剤、耐衝撃性改質剤等が挙げられる。また、必要に応じてn−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン等を分子量調節剤として添加することもできる。
【0032】
本発明における鋳型としては、例えば強化ガラス、クロムメッキ板、ステンレス板等の板状体と軟質塩化ビニル等のガスケットで構成したものや、相対して同一方向へ同一速度で走行する2枚のエンドレスベルトと、エンドレスベルトの相対する面側の両端部においてエンドレスベルトと同一速度で走行するガスケットとで構成され、2枚のエンドレスベルトの間隙があらかじめ設定された鋳型を挙げることができる。
【0033】
鋳型内で重合する温度は、使用する重合開始剤の種類により異なるが、40〜170℃とすることが好ましい。第1段目を40〜90℃、第2段目を100〜140℃とする2段階の重合温度で重合することがより好ましい。
【0034】
重合硬化物を鋳型から取り出す際の温度(以下「離型温度」という)は、70〜110℃の範囲であることが好ましい。離型温度が70℃以上であると、重合硬化物表面に小さなキズを生じにくい傾向にある。離型温度は75℃以上であることがより好ましく、さらに好ましくは80℃以上である。また、離型温度が110℃以下であると、重合硬化物表面にスジ状の欠陥を生じにくく、メタクリル系樹脂板の優れた透明性、光学特性を保つことができる。
【0035】
メタクリル系樹脂板の厚みは特に限定されないが、通常0.5〜15mmの範囲である。厚みが厚いほど、すなわち5mm以上の場合、特に光学歪み抑制の効果が高い。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。ここで、実施例、比較例で使用した化合物の略号および製造元は以下の通りである。
【0037】
A:亜リン酸トリス(2−エチルヘキシル)(城北化学製、商品名「JP−308E」)
B:亜リン酸トリn−ブチル(東京化成工業製)
C:亜リン酸トリスイソデシル(ADEKA製、商品名「アデカスタブ3010」)
D:亜リン酸トリス(トリデシル)(城北化学製、商品名「JP−333E」)
E:サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)(ADEKA製、商品名「アデカスタブPEP−8」)
【0038】
なお、実施例におけるメタクリル系樹脂板の光学歪みは、投影用プロジェクター(日本アビオニクス製、MP−50)からの平行光線を樹脂板にあて、30cm離れたところに設置した白色スクリーンの明暗の状態を目視で評価し、明暗むらが見られた場合を×、見られなかった場合を○とした。また、溶解性は、重合性混合物に亜リン酸トリエステルを添加して攪拌する際、均一に溶解するまでに要した時間が10分以内である場合を○、30分以内である場合を△、30分攪拌しても溶け残りが見られた場合を×とした。耐熱性の指標となる荷重たわみ温度は、JIS K7191に記載の方法に準拠し、曲げ応力1.8MPa(A法)、試験片の方向エッジワイズ(e)にて測定した(Ae法)。なお、試験片は得られた樹脂板から切り出して作成した。
【0039】
[実施例1]
冷却管、温度計及び撹拌機を備えた反応機に、メタクリル酸メチル100質量部を供給し、撹拌しながら加熱し内温が80℃になった時点で2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.05質量部を添加し、更に内温90℃まで加熱し13分間保持した後、室温まで冷却して重合率約26質量%、20℃における粘度2Pa・sのシラップを得た。
【0040】
次いで、このシラップ90質量部に、メタクリル酸メチル10質量部及び亜リン酸トリス(2−エチルヘキシル)0.05質量部を混合した後、攪拌しながら多官能メタクリレートとしてエチレングリコールジメタクリレート;0.3質量部、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート;0.05質量部、酸化防止剤として2,4−ジメチル−6−ターシャリーブチルフェノール;0.005質量部を添加し原料混合物とした。反応機内を減圧脱気した後、ポリ塩化ビニル製ガスケットを介して10mmの間隔で相対する2枚の強化ガラス板で形成した鋳型に該原料混合物を注入した。70℃の温水中に1時間浸漬し重合硬化させた後、130℃の空気加熱炉中で30分間熱処理した。その後、100℃に冷却した後、型枠を脱枠して板厚約8mmのメタクリル系樹脂板を得た。このメタクリル系樹脂板の光学歪み及び亜リン酸エステル又はその他添加剤の重合性混合物への溶解性の結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2〜4、比較例1〜5]
実施例1の亜リン酸トリス(2−エチルヘキシル)を表1に記載の亜リン酸エステル又はその他の化合物とし、その添加量を表1記載のものとした以外は、実施例1と同じ方法によりメタクリル系樹脂板を得た。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例6]
実施例1のエチレングリコールジメタクリレートを使用しなかったこと以外は、実施例1と同じ方法によりメタクリル系樹脂板を得た。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例7]
実施例1の亜リン酸トリス(2−エチルヘキシル)及びエチレングリコールジメタクリレートを使用しなかったこと以外は、実施例1と同じ方法によりメタクリル系樹脂板を得た。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
光学歪みが無く、透明性に優れ、外観欠陥の無いメタクリル系樹脂板が容易に得られる。本製法で得られた樹脂板は、多官能(メタ)アクリレートを使用しているため、架橋構造を有しており、耐薬品性や、耐熱性、熱成形性を必要とする用途に好ましく適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル60〜100質量%と、他の共重合可能な単量体0〜40質量%とを含む単量体または単量体混合物(A)50〜95質量部と、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体(B)5〜50質量部を含む原料((A)+(B)=100質量部)100質量部に対して、多官能(メタ)アクリレート0.001〜30質量部と、(I)式で表される亜リン酸トリエステル0.001〜1.0質量部とが添加された原料混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、鋳型内で重合し、該鋳型から取り出す、メタクリル系樹脂板の製造方法。
【化1】

(式中、R、RおよびRは、炭素数4〜10のアルキル基を示す。)

【公開番号】特開2008−260880(P2008−260880A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105776(P2007−105776)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】