説明

メタライズド配線基板の製造方法

【課題】配線パターン表面の変色、配線パターンの剥れによるフクレといった不具合の生じない金属配線パターンを形成できる、メタライズド配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物セラミックス焼結体基板10上に、配線パターンとして高融点金属層20、ニッケル層30、貴金属層40がこの順で積層されてなるメタライズド配線基板の製造方法において、窒化物セラミックス焼結体基板10上に、高融点金属層20を積層した第一の積層基板の高融点金属層20上に、ニッケル粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより高融点金属層20上にニッケル層30を形成して第二の積層基板を製造する工程、および、前記工程で得られた第二の積層基板のニッケル層30上に、貴金属層40を形成する工程、を含む、メタライズド配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタライズド配線基板の製造方法に関する。詳細には、窒化物セラミックス焼結体基板上に、配線パターンを備えてなるメタライズド配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高融点金属からなるメタライズ層が形成された窒化物セラミックス焼結体基板においては、実際の使用に際しては、目的に応じて高融点金属層上に他の金属層を形成するのが一般的である。例えば、高出力用配線基板として使用する場合には、配線部分の電気抵抗は低い方が好ましいため、銅、金、銀といったような貴金属の電気伝導率の高い金属層が形成される。また、LED素子を搭載する配線基板については、その配線部分にはLEDから放出された光を外部に効率良く反射させる機能を付与するために金属層の最上層として反射率の高い銀層が形成される(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、高融点金属層上に銀メッキを施して銀層が形成される。しかしながら、金属層の抵抗値を下げるために銀メッキを厚くしようとすると、メッキ時間を長くしなければならないという問題があった。また、良好なメッキ膜を与える無電解銀メッキ法は工業的に確立されていないため、通常電解銀メッキ法が採用されているが、電解メッキを行うためにはメッキ用に配線を引き回す必要があり、配線パターンの小型化が難しいという問題もあった。
【0004】
銀層の厚膜化を容易にすべく、銀ペーストを高融点金属層上に焼き付ける方法がある。銀ペーストを用いる場合には、厚膜化は容易で、メッキ用配線も特に必要とならないが、ガラス成分を有する銀ペーストを使用した場合には、ガラス成分が含まれることにより電気抵抗を十分に下げることができない。また、ガラス成分を含まない銀ペーストを高融点金属層上に直接塗布して焼き付けた場合には、高融点金属層に十分な接合強度で密着した銀層を形成することができないという問題があった。
【0005】
この問題を解決すべく、特許文献2には、窒化アルミニウム焼結体基板上の高融点金属層上に、特定の中間金属層をメッキ法により形成し、該中間金属層上に、ガラス成分の含有量が1質量%以下である銀ペーストを塗布して、非酸化性雰囲気中で焼成して銀を主成分とする表面金属層を形成する窒化アルミニウムメタライズド基板の製造方法が記載されている。この場合、各金属層が窒化アルミニウム焼結体基板上に強固に接合しており、また、銀を主成分とする表面金属層を、ガラス成分を全く含まないか含んでいてもその含有量が極めて少ないので、表面金属層の厚さを厚くすることにより金属層全体の電気抵抗を容易に低くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−207258号公報
【特許文献2】WO2008−081758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の方法においては、高融点金属層上にメッキ法により中間金属層を形成しているため、メッキ工程の前処理、メッキ時において高融点金属層中にメッキ液が浸透し、その状態で、メッキが施されるので、後に配線パターン表面の変色、配線パターンの剥れによるフクレといった問題が生じる虞があった。
【0008】
また、メッキ処理時において、メッキ液等の廃棄物が生じるが、このような廃棄物を低減することが求められている。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、配線パターン表面の変色、配線パターンの剥れによるフクレといった不具合の生じない金属配線パターンを形成できる、メタライズド配線基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を行った。その結果、高融点金属層上に所定のニッケル層を介在させてから貴金属層(表面金属層)を形成することにより、上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
第1の本発明は、窒化物セラミックス焼結体基板(10)上に、配線パターンとして高融点金属層(20)、ニッケル層(30)、および貴金属層(40)がこの順で積層されてなるメタライズド配線基板(100)の製造方法において、
窒化物セラミックス焼結体基板(10)上に高融点金属層(20)を積層した第一の積層基板の高融点金属層(20)上に、ニッケル粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより高融点金属層上にニッケル層(30)を形成して第二の積層基板を製造する工程、および、
前記工程で得られた第二の積層基板のニッケル層(30)上に、貴金属層(40)を形成する工程、
を含む、メタライズド配線基板(100)の製造方法である。
【0012】
第1の本発明の第二の積層基板を製造する工程において、平均粒径が0.05μm以上10.0μm以下のニッケル粉を含むペーストにより、ペースト層を積層することが好ましい。このような粒径のニッケルペーストを使用することにより、配線パターン表面の変色、および、配線パターンが剥れるフクレ等の不良をより効果的に抑制できる。
【0013】
第1の本発明の第二の積層基板を製造する工程において、平均粒径が0.05μm以上0.40μm未満のニッケル粉を含むペーストにより、ペースト層を積層し、貴金属層(40)を形成する工程において、メッキにより貴金属層(40)を形成することが好ましい。小粒径のニッケル粉を含むペーストを用いてニッケル層(30)を形成することにより、ニッケル層(30)の表面が平滑となり、これにより、その上に形成する貴金属層(40)の表面も平滑になる。さらに、小粒径のニッケル粉を含むペーストを用いると緻密なニッケル層(30)が形成することができる。そのため、貴金属層(40)をメッキにより形成した場合、貴金属層表面の変色やフクレ等の不良の抑制に効果的である。さらに貴金属層(40)をメッキにより形成することにより、貴金属層(40)を構成する金属の使用量が少なくなるため、コスト上好ましい。特に、貴金属層(40)を金により形成する場合は、メッキを採用することが好ましい。
【0014】
第1の本発明の第二の積層基板を製造する工程において、平均粒径が0.40μm以上10.0μm以下のニッケル粉を含むペーストにより、ペースト層を積層し、貴金属層(40)を形成する工程において、第二の積層基板のニッケル層(30)上に、貴金属粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより該ニッケル層(30)上に貴金属層(40)を形成することが好ましい。この場合、全くメッキを使用しないため、環境負荷低減、操作性の向上、コスト低減、歩留まり向上を図ることができる。また、多少粒径の大きなニッケル粉を含むペーストを使用することにより、ニッケル層(30)表面に粗さを付与し、これにより、ニッケル層(30)と、ペースト層から形成される貴金属層(40)との密着強度が向上する。
【0015】
第2の本発明は、窒化物セラミックス焼結体基板(10)、ならびに、高融点金属層(20)、ニッケル層(30)、および、貴金属層(40)をこの順で該窒化物セラミックス焼結体基板上に積層して形成した配線パターンを備え、
ニッケル層(30)が、高融点金属層(20)上に、ニッケル粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより形成したものである、メタライズド配線基板(100)である。
【発明の効果】
【0016】
第1の本発明によれば、高融点金属層(20)上に、ニッケルペーストによりニッケル層(30)を形成してから、貴金属層(40)を形成しているので、メッキ液が高融点金属層(20)に浸透することによる不具合(配線パターン表面の変色、配線パターンの剥れによるフクレ等の不良)を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の方法により製造されるメタライズド配線基板100の層構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
<メタライズド基板100の製造方法>
図1に本発明の方法により製造されるメタライズド基板100の層構成を示す模式図を示した。以下、図中の符号を用いて本発明の方法を説明する。本発明のメタライズド基板100の製造方法は、窒化物セラミックス焼結体基板10上に高融点金属層20を積層した第一の積層基板の高融点金属層20上に、ニッケル粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより高融点金属層20上にニッケル層30を形成して第二の積層基板を製造する工程(工程A)、および、工程Aで得られた第二の積層基板のニッケル層30上に、貴金属層40を形成する工程(工程B)、を含んでなる。以下、各工程について説明する。
【0019】
(第二の積層基板を製造する工程(工程A))
本発明の製造方法においては、はじめに、窒化物セラミックス焼結体基板10上に高融点金属層20を形成する。窒化物セラミックス焼結体基板10は、所定形状の窒化物セラミックスグリーンシートあるいは窒化物セラミックス顆粒を加圧成形した加圧成形体を焼成する公知の方法により作製することができる。その形状、厚み等は特に制限されない。焼結体原料には、通常用いられる希土類等の焼結助剤を含んでいてもよい。窒化物セラミックス焼結体基板10の表面は、必要に応じて研磨して表面を平滑にしてもよい。窒化物セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化ニオブ等が挙げられる。中でも、高熱伝導率等の特性を有する窒化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0020】
窒化物セラミックス焼結体基板10上に高融点金属層20を形成する方法としては、上記グリーンシートあるいは加圧成形体に高融点金属ペーストを塗布した後、高融点金属ペーストとグリーンシートあるいは加圧成形体とを同時に焼成する方法(コファイア法)と、あらかじめ焼成した窒化物セラミックス焼結体基板10上に高融点金属ペーストを塗布した後、高融点金属ペーストを焼成する方法(ポストファイア法)とがある。コファイア法は基板焼成時に高融点金属層も焼成され、その収縮によって変形が生じ、このため、その上に貴金属層を重ねて配置しようとしても高融点金属層の変形によってうまく重ね合わせることが難しい。この理由のため、本発明においては、高融点金属層20はポストファイア法で作製することが好ましい。
【0021】
ポストファイア法では、窒化物セラミックス焼結体基板10の表面の配線パターンを形成する所定の位置に、高融点金属ペーストを塗布する。高融点金属ペーストは、高融点金属粒子、バインダーおよび溶媒を備えて構成されるものであることが好ましく、特に、ガラス成分、酸化物を含んでいないことが好ましい。高融点金属ペーストがガラス成分等を含んでいると、後の工程におけるニッケルペースト等の焼成条件によって、該ガラス成分が溶解し表面に浮き上がってくる場合もあり、金属層同士の接合性が劣ってしまうおそれがある。高融点金属としては、タングステンまたはモリブデンを挙げることができる。
【0022】
高融点金属の平均粒径は0.1μm以上20.0μm以下のものが好ましく、より好適には0.3μm以上5.0μm以下のものが用いられる。アンカー効果によりニッケル層30との接合強度を高くするという観点から高融点金属の粒径は大きい方が好ましく、高融点金属の焼結性の観点からは高融点金属の粒径は小さい方が好ましい。両者のバランスから上記範囲が選定されたものである。なお、本発明において、高融点金属粉末の平均粒径は、Fisher社製 Sub Sieve Sizerを用いて空気透過法によって測定した。
【0023】
また、高融点金属ペーストには、窒化物セラミックス焼結体基板10との密着力を高めるために窒化物セラミックス粉末を添加することが好ましい。具体的には窒化物セラミックス粉末を添加することで、焼成時に高融点金属と窒化物セラミックスとが複雑な形態で絡み合うような構造を取り、高融点金属ペースト中の窒化物セラミックス粉末が窒化物セラミックス焼結体基板10の窒化物セラミックスと結合することでアンカー効果が発現し、高い密着力を得られるため好ましい。
【0024】
添加する窒化物セラミックス粉末の平均粒径は、0.1μm以上15.0μm以下のものが好ましく、0.5μm以上5.0μm以下のものがより好ましい。なお、本発明において、窒化物セラミックス粉末の平均粒径は、レーザー回折法によって測定した体積平均粒子径である。
【0025】
高融点金属ペーストの塗布は、精密配線を形成する観点から、印刷により行うことが好ましい。印刷としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を採用することができる。
【0026】
窒化物セラミックス焼結体基板10上に塗布した高融点金属ペーストは、通常1700℃〜1900℃の温度で非酸化性雰囲気下において焼成する(ポストファイア法)。このようにしてポストファイア法を採用して高融点金属層20を形成することにより、高融点金属ペーストの収縮が制限され、かつ、高融点金属として粒径が大きいものを用いることで、作製した高融点金属層20は、セラミックスのグリーンシートと高融点金属ペーストを同時に焼成したもの(コファイア法により作製したもの)に比べて、より多数の空孔を有する構造となっている。焼成条件の非酸化性雰囲気下とは、例えば、不活性ガス(例えば窒素)、水素等の非酸化性ガスの雰囲気をいう。なお、これら非酸化性ガスは、炭素蒸気や一酸化炭素を含んでいてもよい。本発明においては、後に説明するように、ニッケル層30をメッキではなくニッケルペーストを用いて形成しているので、高融点金属層20が多数の空孔を有するものであっても、高融点金属層20中にメッキ液がしみ込むことにより起こる不具合を防ぐことができる。
【0027】
高融点金属層20の厚みは、1μm以上30μm以下であることが好ましい。この厚みが薄すぎると、窒化物セラミックス焼結体基板10上に高い接合強度で貴金属層40を形成するという目的が達成できなくなる。また、この厚みが厚すぎると、配線パターン全体の厚みに制限がある場合に、他の層の厚みが制限される虞がある。また、高融点金属ペースト層は焼結により厚みが収縮するため、この収縮を勘案して高融点金属ペースト層を形成すればよい。
【0028】
工程Aにおいては、さらに、第一の積層基板の高融点金属層20上に、ニッケル粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより高融点金属層20上にニッケル層30を形成して、第二の積層基板を製造する。ニッケル粉を含むペースト(以下、「ニッケルペースト」という場合がある。)の塗布は、精密配線を形成する観点から、印刷により行うことが好ましい。印刷としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を採用することができる。
【0029】
ニッケルペーストは、ニッケル粉、バインダー、溶媒、分散剤等を備えて構成されるものである。ニッケル粉の平均粒径は、0.05μm以上10.0μm以下であることが好ましい。このような粒径のニッケルペーストを使用することにより、配線パターン表面の変色、および、配線パターンが剥れるフクレ等の不良をより効果的に抑制できる。
また、ニッケル粉の平均粒径として上記範囲内にて小粒径のもの、例えば、0.05μm以上0.40μm未満のものを用いた場合は、得られるニッケル層20の表面を平滑にすることができる。この場合、後に説明するように、貴金属層40をメッキにより形成することが好ましく、得られる貴金属層40の表面を平滑にすることができる。また、特に上記平均粒径の範囲を満足するニッケル粉を使用した場合には、貴金属層40をメッキにより形成したとしても、緻密なニッケル層30が高融点金属層20の上に形成されているので、メッキ液が高融点金属層20にしみ込むことがなく、それに伴う不具合を防止できる。上記のような効果をより発揮し、取り扱い易いものとするためには、ニッケル粉の平均粒径は、好ましくは0.10μm以上0.40μm未満、さらに好ましくは0.10μm以上0.35μm以下である。
【0030】
また、ニッケル粉の平均粒径として上記範囲内にて大粒径のもの、例えば、0.40μm以上10.0μm以下のものを用いた場合は、得られるニッケル層30の表面にある程度の粗さを付与できる。この場合、後に説明するように、貴金属層40を金属ペーストにより形成することが好ましく、ニッケル層30と貴金属層40との密着強度をより高めることができる。上記大粒径のニッケル粉の平均粒径は、より好ましくは0.40μm以上7.0μm以下、さらに好ましくは0.80μm以上5.0μm以下、特に好ましくは、1.0μm以上3.5μm以下である。
なお、本発明において、ニッケル粉の平均粒径は、その粒子の大きさに応じて2000倍〜20000倍の倍率で撮影した電子顕微鏡写真からニッケル粉の一次粒子100個を選び、それらの一次粒子の円相当径の平均値を算出したものである。円相当径とは、一次粒子の面積と等しい真円の直径に換算した値である。
【0031】
ニッケルペースト層は、通常700℃〜1400℃の温度で非酸化性雰囲気下において焼成する。焼成条件の非酸化性雰囲気下とは、例えば、不活性ガス(例えば窒素)、水素等の非酸化性ガスの雰囲気をいう。なお、これら非酸化性ガスは、炭素蒸気や一酸化炭素を含んでいてもよい。特に、好ましい条件としては、800℃〜1000℃の温度で水素ガス雰囲気下である。
【0032】
ニッケル層30の厚みは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。ニッケル層30の厚みが上記範囲を満足することにより、貴金属層40をメッキにより形成する場合、高融点金属層20へのメッキ液の浸透を防ぐ効果をより高めることができる。さらに、ニッケル層30の厚みが上記範囲を満足することにより、貴金属層40をペースト層から形成する場合、貴金属層40の厚みを確保することができ、該貴金属層40の性能を十分発揮させると共に、該貴金属層40との密着性をより向上できる。そのため、ニッケル層30の厚みは、2μm以上80μm以下であるとより好ましく、3μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。また、ニッケルペースト層は、焼結により厚みが収縮するため、この収縮を勘案してニッケルペースト層を形成すればよい。
【0033】
ニッケル層30の表面粗さとしては、平均粒径が0.05μm以上10.0μm以下のニッケル粉を用いた場合は、通常、表面粗さが、0.1μm以上10.0μm以下のニッケル層30が得られる。また、例えば、0.05μm以上0.40μm未満の小粒径のニッケル粉を用いた場合は、表面粗さは、好ましくは0.1μm以上1.2μm以下、より好ましくは0.5μm以上1.0μm以下とすることができる。また、例えば、0.40μm以上10.0μm以下の大粒径のニッケル粉を用いた場合は、表面粗さは、好ましくは1.2μmを超え10.0μm以下、より好ましくは1.3μm以上5.0μm以下、さらに好ましくは1.4μm以上3.0μm以下とすることができる。なお、発明において、ニッケル層30の表面粗さとは、JIS B0601により規定されている中心線平均粗さ(Ra)であり、触針式表面粗さ計により測定することができる。
【0034】
(貴金属層40を形成する工程(工程B))
工程Bにおいては、工程Aで作製した第二の積層基板のニッケル層30上に、貴金属層40を形成する。貴金属層40は、周期表第IB族の銅、銀および金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、並びに白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の貴金属からなる層であり、メッキ法により形成してもよいし、金属ペーストを塗布焼成することにより形成してもよい。この貴金属層40は、電気伝導率を向上させたり、光を外部に効率良く反射させる機能を付与するものである。前記貴金属層40の中でも、入手のし易さ、取り扱い易さを考慮すると、金、銀、および銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる層であることが好ましい。
【0035】
メッキ法における金メッキとしては、特に限定されず、一般的なものが採用可能である。純金メッキの他、金を主成分とする金合金からなるメッキも含まれる。無電解金メッキは、置換型、還元型、または、これらを組み合わせた置換還元型のいずれも採用できる。置換型メッキまたは置換還元型メッキの場合は、ニッケル層30との密着性が良好となるという利点がある。また、還元型メッキの場合は、層厚を厚くできるという利点がある。よって、まず、置換型メッキまたは置換還元型メッキにより薄層の金メッキ層を形成し、その上に還元型メッキをするという二段工程を採用することにより、層厚が厚くかつ密着性が良好な金からなる貴金属層40を形成できる。本発明においては、コストの観点から、貴金属層40を金により形成する場合は、メッキ法により貴金属層40を形成することが好ましい。
【0036】
メッキ法における銀メッキとしては、特に限定されず、一般的なものが採用可能である。無光沢銀メッキ、光沢銀メッキ、銀合金メッキのいずれを採用してもよく、表面変色を防止するため、クロム酸処理を施してもよい。メッキ法における銅メッキとしては、特に限定されず、一般的なものが採用可能である。
【0037】
メッキ層は、前記貴金属から選ばれる二種以上のメッキ層を積層して形成してもよいし、これらの合金からなる合金メッキを形成してもよい。
【0038】
メッキ法により形成した貴金属層40の厚みは、特に限定されないが、ワイヤボンディング性、経済性の点から、0.1μm以上1.0μm以下とすることが好ましい。貴金属層40は、配線パターンの最表層であり、この上に半導体チップが接合されたり、ワイヤボンディングされたりする。
【0039】
金属ペーストを塗布焼成することにより貴金属層40を形成する場合は、ニッケル層30上に、貴金属ペーストを塗布し、焼成して貴金属層40を形成する。貴金属ペーストの塗布は、精密配線を形成する観点から、印刷により行うことが好ましい。印刷としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を採用することができる。
【0040】
貴金属ペーストは、前記貴金属粒子、バインダー、溶媒を備えて構成されるものである。貴金属粒子は、前記貴金属のうち単一貴金属からなる金属粒子であってもよいし、二種以上の貴金属からなる合金粒子、あるいは、単一貴金属粒子の混合物であってもよい。
【0041】
貴金属粒子の平均粒径は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。なお、本発明において、貴金属粒子の平均粒径は、レーザー回折法によって測定した体積平均粒子径である。
【0042】
貴金属ペースト層は、通常500℃〜1100℃の温度で焼成する。また、貴金属ペースト層の焼成雰囲気は、特に制限されない。使用する貴金属ペーストの特性に応じて最適な焼成雰囲気で行うことができる。
【0043】
貴金属ペーストを塗布焼成することにより形成した貴金属層40の厚みは、目的とする用途に応じて適宜決定してやればよいが、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは3μm以上100μm以下である。貴金属層40の厚みがこの範囲を満足することにより、低抵抗な配線パターンを形成することができ、さらに、様々な用途に使用することが可能となる。また、貴金属ペースト層は焼成により厚みが収縮するため、この収縮を勘案して貴金属ペースト層を形成すればよい。
【0044】
貴金属ペーストにより貴金属層40を形成する場合は、特に、貴金属層を銀により形成する場合に有効である。銀からなる貴金属層40を厚膜で形成することにより、高反射率の基板とすることができ、LED等の発光素子搭載基板として好適である。
【0045】
(金属層の接合強度)
以上のように作製した金属層20、30、40の接合強度は、50MPa以上であることが好ましく、80MPa以上であることがより好ましい。接合強度の測定方法としては、例えば、表面にニッケルメッキを施したφ1.1mmの42アロイネイルヘッドピン用いて、該ネイルヘッドピンを貴金属層40の表面にPb−Sn半田等の半田材料にて半田付けし、該ネイルヘッドピンを10mm/分の速度で垂直方向に引っ張り、各金属層20、30、40、またはネイルヘッドピン接合用のはんだ層のいずれかの層の層内破壊、または下地層とこれら層のいずれかとの間の界面破壊によって、該ネイルヘッドピンが剥がれた時の強度を接合強度(MPa)とした。
【実施例】
【0046】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(ニッケルペースト製造例1)
市販の平均粒径3.0μmのニッケル粒子100質量部、エチルセルロース3.3質量部、テルピネオール11.3質量部、分散剤2質量部を混練し、ニッケルペーストAを得た。
【0047】
(ニッケルペースト製造例2)
市販の平均粒径0.2μmのニッケル粒子100質量部、エチルセルロース3.3質量部、テルピネオール11.3質量部、分散剤2質量部を混練し、ニッケルペーストBを得た。
【0048】
(銀ペースト製造例)
市販の平均粒径0.54μmの銀粉100質量部、エチルセルロース3.3質量部、テルピネオール11.3質量部、分散剤2質量部を混練し、銀ペーストを得た。
【0049】
<実施例1>
(高融点金属層20の形成)
平均粒径1.5μmの窒化アルミニウム粉末および焼結助剤として酸化イットリウムを添加し焼結して得た□5cm(1辺が5cmの正方形の意である)、厚み0.6mmの窒化アルミニウム焼結体基板からなる原料基板を用意した。次いで、平均粒径0.8μmのタングステン100質量部、平均粒径1.5μmの窒化アルミニウム粉末4質量部、酸化イットリウム0.2質量部、エチルセルロース2質量部、テルピネオール13質量部、分散剤1質量部を混練し、導電ペーストを作製した。その後、この導電ペーストをスクリーン印刷法にて原料基板表面に印刷し、100℃で10分乾燥を行った。乾燥後の膜厚は12μmであった。上記のようにして得られた基板を、窒素ガス中、1800℃にて4時間焼成を行い、高融点金属メタライズド基板を得た。焼成後の高融点メタライズ層の厚みは、8μmであった。
【0050】
(ニッケル層30の形成)
次に、得られた基板の導電パターン上に、ニッケルペーストAをスクリーン印刷法にて印刷し、100℃で10分乾燥した。その後、水素ガス中、900℃で5分焼成し、ニッケルメタライズド基板Aを得た。この基板のニッケルメタライズ上の表面粗さは、1.64μmであった。また、ニッケルメタライズ層の厚みは、12μmであった。
【0051】
(貴金属層40の形成(メッキ))
次いで、このニッケルメタライズド基板に金メッキ処理を行った。まず、基板表面を塩酸で洗浄した後、置換金メッキ、還元金メッキ処理を行った。金メッキの厚みは、0.35μmであった。
この基板の外観検査を行ったところ、25mmの面積のパターン50個中にメッキ変色が3箇所あった。また、メッキの剥れ・フクレは無かった。
【0052】
<実施例2>
(ニッケル層30の形成)
ニッケルペーストAの代わりに、ニッケルペーストBを使用すること以外は、実施例1と同様にニッケルメタライズド基板Bを得た。この基板のニッケルメタライズ上の表面粗さは、0.90μmであった。また、ニッケルメタライズ層の厚みは、7μmであった。
【0053】
(貴金属層40の形成(メッキ))
次いで、実施例1と同様の金メッキ処理を行った。金メッキの厚みは、0.37μmであった。
この基板の外観検査を行ったところ、25mmの面積のパターン50個中にメッキ変色が1箇所あった。また、メッキの剥れ・フクレは無かった。
【0054】
<実施例3>
実施例1と同様な操作でニッケルメタライズド基板を得た。
(貴金属層40の形成(ペースト))
次いで、このニッケルメタライズド基板のニッケルパターン上に、銀ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、100℃10分乾燥した。その後、水素ガス中、900℃で5分焼成し、銀メタライズド基板を得た。銀メタライズ層の厚みは、7μmであった。
この基板の金属層の接合強度は、平均92MPaであった(n=10)。そのうち、破壊箇所がニッケル/銀層界面でのものは1つであった。
【0055】
<実施例4>
実施例2と同様な操作でニッケルメタライズド基板を得た。
(貴金属層40の形成(ペースト))
次いで、ニッケル層上への銀実施例3と同様な操作を行い、銀メタライズ基板を作成した。銀メタライズ層の厚みは、7μmであった。
この基板の金属層の接合強度は、平均89MPaであった(n=10)。そのうち、破壊箇所がニッケル/銀層界面でのものは4つであった。
【0056】
<比較例1>
実施例1と同様な操作で高融点金属メタライズド基板を得た。
この基板の導電パターン上にNi−Bメッキを施した後、水素ガス中、900℃5分の熱処理を行った。次に、得られた基板にNi−Pメッキ、置換Auメッキ、還元Auメッキ処理を行った。
この基板の外観検査を行ったところ、パターン50個中にメッキ変色は8箇所あった。また、メッキの剥れ・フクレは無かった。
【0057】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うメタライズド配線基板の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法により、半導体素子を搭載するためのメタライズド配線基板を製造することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 窒化物セラミックス焼結体基板
20 高融点金属層
30 ニッケル層
40 貴金属層
100 メタライズド配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物セラミックス焼結体基板上に、配線パターンとして高融点金属層、ニッケル層、および貴金属層がこの順で積層されてなるメタライズド配線基板の製造方法において、
前記窒化物セラミックス焼結体基板上に前記高融点金属層を積層した第一の積層基板の前記高融点金属層上に、ニッケル粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより高融点金属層上に前記ニッケル層を形成して第二の積層基板を製造する工程、および、
前記工程で得られた第二の積層基板の前記ニッケル層上に、貴金属層を形成する工程、
を含む、メタライズド配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第二の積層基板を製造する工程において、平均粒径が0.05μm以上10.0μm以下のニッケル粉を含むペーストにより、前記ペースト層を積層する、請求項1に記載のメタライズド配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第二の積層基板を製造する工程において、平均粒径が0.05μm以上0.4μm未満のニッケル粉を含むペーストにより、前記ペースト層を積層し、
前記貴金属層を形成する工程において、メッキにより前記貴金属層を形成する、請求項1に記載のメタライズド配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記第二の積層基板を製造する工程において、平均粒径が0.4μm以上10.0μm以下のニッケル粉を含むペーストにより、前記ペースト層を積層し、
前記貴金属層を形成する工程において、第二の積層基板の前記ニッケル層上に、貴金属粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより該ニッケル層上に貴金属層を形成する、請求項1に記載のメタライズド配線基板の製造方法。
【請求項5】
窒化物セラミックス焼結体基板、ならびに、高融点金属層、ニッケル層、および、貴金属層をこの順で該窒化物セラミックス焼結体基板上に積層して形成した配線パターンを備え、
前記ニッケル層が、前記高融点金属層上に、ニッケル粉を含むペースト層を積層した後、焼成することにより形成したものである、メタライズド配線基板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−238809(P2010−238809A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83439(P2009−83439)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】