説明

メタルコア基板の製造方法

【課題】熱処理による耐食性の低下や接触抵抗の増加を回避しつつ、錫メッキされた端子部におけるウィスカの発生を抑制すること。
【解決手段】一般的な配線基板10の作製工程として存在する、配線基板10の突起型端子12の先端部分に錫メッキを施す端子部メッキ工程と、錫メッキを施した突起型端子12の先端部分をウィスカの発生抑制のために熱処理するメッキ部熱処理工程とを省略する。そして、回路パターン14中のパッド部14aに半田ペーストを塗布する半田ペースト塗布工程において、突起型端子12の先端部分にも半田ペーストを塗布し、パッド部14aに部品19を半田付けするリフロー工程において、突起型端子12の先端部分を溶融した半田により実質的に錫メッキし、錫メッキされた突起型端子12の先端部分を、実質的に、ウィスカの発生抑制のために熱処理を施した状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錫メッキされた端子部を有するメタルコア基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の電気接続箱では、電子部品の発熱による局所的な温度上昇を回避するために、中間層にメタルプレート(コア部)を有するメタルコア基板を配線基板として用いる場合がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなメタルコア基板では、コア部と共に端子部が中間層に設けられる場合、主に銅合金を用いて成型される端子部の耐食性を高めるために、端子部に錫メッキが施される。このような錫メッキを施した端子部には、その後、ヒゲ状に伸びた錫の単結晶であるウィスカが発生することがある。それは、主に、金型を用いた打ち抜きプレス加工によって金属板から端子部を成型した際の残留応力によって、メッキ中の錫成分がらせん転位を起こすことに起因する。このような端子部のウィスカは、隣の端子部とのショートを引き起こす原因となる可能性がある。
【0004】
上述したウィスカは、ウィスカの発生しそうな部分を熱処理することによって、抑制することができる。そのため、上述したメタルコア基板の場合は、端子部に錫メッキを施した後に、ウィスカ抑制のための熱処理をメタルコア基板に施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−333583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、メタルコア基板を高温中にさらすことは、端子部の銅成分が錫メッキの表面に析出するのを促進させてしまい、それによって端子部の耐食性を低下させ、また、接触抵抗を増加させてしまうことにつながる。そのため、メタルコア基板の熱処理は極力避けたいという実情がある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、熱処理による耐食性の低下や接触抵抗の増加を回避しつつ、錫メッキされた端子部におけるウィスカの発生を抑制することができる、メタルコア基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明のメタルコア基板の製造方法は、錫メッキされた端子部を有するメタルコア基板の製造方法であって、前記メタルコア基板のパッドに対する半田ペーストの塗布工程において、前記端子部の表面に対する半田ペーストの塗布を同時に行い、前記半田ペーストを塗布した前記パッドに部品を実装して前記メタルコア基板をリフロー炉において加熱するリフロー工程において、前記端子部の表面に塗布された半田ペーストによる該端子部のメッキ処理を同時に行うことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載した本発明のメタルコア基板の製造方法によれば、メタルコア基板のパッドに対する部品の半田付けを行うリフロー工程において、端子部がその表面に塗布された半田ペーストの溶融により実質的に錫メッキされることになる。そして、リフロー工程におけるメタルコア基板の加熱によって、実質的に錫メッキされた端子部が熱処理されることになる。したがって、端子部がその成型時の残存応力等によって変形しても、錫メッキされた端子部におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0010】
しかも、ウィスカの発生抑制のための端子部の熱処理を、パッドに対する部品の半田付けのためのリフロー工程において同時に行うことができるので、端子部の熱処理のための工程を新たに増やしてメタルコア基板のトータルの加熱時間を増やさなくて済む。そのため、端子部の材料である銅成分が錫メッキの表面に析出するのがメタルコア基板の加熱時間の増加により促進されてしまうのを、防止することができる。これにより、錫メッキされた端子部の熱処理による耐食性低下や接触抵抗増加を避けることができる。
【0011】
また、請求項2に記載した本発明のメタルコア基板の製造方法は、請求項1に記載した本発明のメタルコア基板の製造方法において、前記リフロー工程において、前記メタルコア基板を少なくとも200°C以上の温度に加熱することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した本発明の本発明のメタルコア基板の製造方法によれば、請求項1に記載した本発明のメタルコア基板の製造方法において、リフロー工程におけるメタルコア基板の加熱温度を、ウィスカの発生抑制のための端子部の熱処理に適した温度以上の温度で行うようにして、端子部の熱処理をリフロー工程において確実に行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメタルコア基板の製造方法によれば、熱処理による耐食性の低下や接触抵抗の増加を回避しつつ、錫メッキされた端子部におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の、表面層の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る配線基板の、中間層の構成を示す説明図である。
【図3】図1及び図2の配線基板を本発明の一実施形態に係る製造方法によって作製する場合の手順を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおける金属板加工工程を示す説明図である。
【図5】図3のフローチャートにおける金属板の租化処理工程を示す説明図である。
【図6】図3のフローチャートにおけるプリプレグ積層工程を示す説明図である。
【図7】図3のフローチャートにおけるスルーホール形成工程を示す説明図である。
【図8】図3のフローチャートにおけるパターン形成工程を示す説明図である。
【図9】図3のフローチャートにおけるプリプレグ剥離工程を示す説明図である。
【図10】図3のフローチャートにおけるレジスト処理工程を示す説明図である。
【図11】図3のフローチャートにおける端子部メッキ工程を示す説明図である。
【図12】図3のフローチャートにおける半田ペースト塗布工程を示す説明図である。
【図13】図3のフローチャートにおける部品実装工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるメタルコア基板の製造方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板10の表面層を示す説明図、図2は、中間層(即ち、表面層を取り除いた層)を示す説明図である。
【0017】
図2に示すように、配線基板10(請求項中のメタルコア基板に相当)の中間層のほぼ中央には、矩形状のメタルプレート11が設けられている。該メタルプレート11は、金属製の材料で構成され、導電性を備える。
【0018】
また、配線基板10の左側の側辺部及び右側の側辺部には、短冊形状の突起型端子12(請求項中の端子部に相当)がそれぞれ複数個(図では12個ずつ)設けられ、各突起型端子12の一部は、配線基板10の外側に突起している。そして、配線基板10にコネクタ(図示省略)を接続する場合には、この突起した部分を端子として用いることができる。なお、各突起型端子12は、個々を区別する必要がある場合には、サフィックス「-n」を付して表記する。
【0019】
複数の突起型端子12のうちのいくつかは、連結部16を介して互いに連結されている。具体的には、図2に示す突起型端子12-1、12-2、12-3が連結部16により互いに連結され、突起型端子12-4、12-5が連結部16により互いに連結され、更に、突起型端子12-6、12-7が連結部16により互いに連結されている。
【0020】
図1に示すように、配線基板10の表面には、絶縁性材料であるプリプレグ31が設けられて表面層とされている。この表面層には各種の電子部品15が搭載され、また回路パターン14が配索される。また、配線基板10の表面に設けられる回路パターン14と、中間層に設けられる突起型端子12とを接続するために、複数の突起型端子12うちの少なくとも一つに、スルーホール13が穿設されている(図2参照)。即ち、導電性のスルーホール13を経由して、突起型端子12と回路パターン14を電気的に接続することができる。
【0021】
この際、3つの突起型端子12-1、12-2、12-3のうち、一つの突起型端子12-3にのみスルーホール13が形成され、他の突起型端子12-1、12-2にはスルーホール13は形成されない。同様に、2つの突起型端子12-4、12-5のうち、一つの突起型端子12-4にのみスルーホール13が形成され、2つの突起型端子12-6、12-7のうち、一つの突起型端子12-6にのみスルーホール13が形成されている。
【0022】
上述した配線基板10は、本実施形態では、図3のフローチャートに示す工程を経て作製される。なお、図3の破線で囲む工程は、配線基板10の一般的な作製手順において存在する工程であって、本実施形態の作製手順においては省略される工程である。図3のフローチャートに示す各工程では、図4乃至図13の説明図に示す処理等がそれぞれ実行される。図4乃至図13に示す説明図では、説明を簡略化するために、突起型端子12の数を左右5個ずつとしている。
【0023】
まず、図3の金属板加工工程においては、金型(図示せず)を用いた打ち抜きプレス加工によって、銅合金等の材料からなる金属板を、図4に示す如くの形状に加工する。具体的には、矩形状のメタルプレート11と、左右にそれぞれ5個ずつ設けられる短冊形状の突起型端子12とを、四方のフレーム25a,25b,25c,25cにリブ21を介して支持する形状に成型する。ここで、突起型端子12-11 、12-12 、12-13 は連結部16によって連結されており、また、突起型端子12-14 と12-15 も連結部16によって連結されている。
【0024】
次いで、図3の金属板の租化処理工程においては、図5に示すように、突起型端子12の端子として使用する先端部分をマスキングして、突起型端子12のマスキングしていない部分やメタルプレート11の表面を、プリプレグ31と密着し易いように租化処理する。次に、図3のプリプレグ積層工程では、図6に示すように、金属箔を備えたプリプレグ(樹脂層)31を、メタルプレート11及び突起型端子12を覆うように金属板25の片面或いは両面(本実施形態の場合は両面)に積層し、このプリプレグ31を加熱プレスすることにより、配線基板10の外形を作製する。
【0025】
次いで、図3のスルーホール形成工程では、図7に示すように、のちのパターン形成工程において回路パターンが形成されるプリプレグ31の表面箇所に、プリプレグ31を貫通するスルーホール13を穿設し金属メッキする。そして、図3のパターン形成工程において、プリプレグ31の表面に回路パターンをマスキングしエッチングすることで、所望する回路パターン14を形成し、スルーホール13を介して回路パターン14と突起型端子12とを適宜な箇所で電気的に導通させる。
【0026】
次いで、図3のプリプレグ剥離工程では、図9に示すように、租化処理工程において租化処理していない突起型端子12の先端部分を覆うプリプレグ31の一部を剥離する。そして、図3のレジスト処理工程では、図10に示すように、回路パターン14を除くプリプレグ31の表面に、防錆及び回路ショート防止用の保護塗料を塗布するレジスト処理を行う。
【0027】
ここで、一般的な配線基板10の作製手順では、破線で囲んだ図3の端子部メッキ工程とメッキ部熱処理工程とを行う。端子部メッキ工程では、プリプレグ31を剥離して露出させた突起型端子12の先端部分に錫メッキを施し、リブ21を切断してフレーム25a,25b,25c,25cから作製中の配線基板10を、図11に示すように切り離す。そして、メッキ部熱処理工程では、作製中の配線基板10を高温炉に投入して、錫メッキを施した突起型端子12の先端部分を熱処理する。この熱処理は、200°C以上の温度で3〜500秒の期間行う。熱処理の期間の長短は、作製する配線基板10のスペック等に応じて定まる。
【0028】
しかし、本実施形態による配線基板10の作製手順では、上述した端子部メッキ工程とメッキ部熱処理工程とを省略している。そして、先に説明したレジスト処理工程に続いて、図3の半田ペースト塗布工程を実行する。この半田ペースト塗布工程では、図12に示すように、プリプレグ31を剥離して露出させた突起型端子12の先端部分と、回路パターン14中の部品を実装するパッド部14aとに、半田ペーストを塗布する。次に、図3の部品実装工程では、パッド部14aに部品19を実装する。
【0029】
最後に、図3のリフロー工程では、作製中の配線基板10をリフロー炉に投入し、半田ペーストによってパッド部14aに部品19を半田付けする。ここで、半田ペーストは錫を主成分とするものであるから、リフロー工程における半田付けによって、突起型端子12の先端部分は、溶融した半田によって実質的に錫メッキされたことになる。
【0030】
なお、本実施形態の場合、リフロー炉における作製中の配線基板10のリフロー処理は、200°C以上の温度で行う。また、リフロー処理の期間は、一般的な配線基板10の作製手順におけるメッキ部熱処理工程で突起型端子12の先端部分を熱処理するのに必要な期間かそれ以上の期間である。したがって、リフロー工程においては、溶融した半田により実質的に錫メッキされた突起型端子12の先端部分が、ウィスカの発生抑制に必要な温度及び期間で熱処理されることになる。
【0031】
以上の工程による本実施形態の配線基板10の製造方法では、一般的な配線基板10の作製手順におけるメッキ部熱処理工程を省略するので、作製中の配線基板10を高温に加熱する工程がリフロー工程のみとなる。したがって、錫メッキを施した突起型端子12の先端部分に対するウィスカ発生抑制のための熱処理を、リフロー工程以外に、作製中の配線基板10を高温に加熱する工程を別途追加することなく実行することができる。
【0032】
したがって、作製中の配線基板10の加熱時間の増大による錫メッキ表面への銅成分析出によって、突起型端子12の先端部分の耐食性が低下してしまうのを防ぐことができる。これにより、錫メッキされた突起型端子12の先端部分の熱処理による耐食性低下や接触抵抗増加を避けることができる。しかも、ウィスカの発生を抑制することができるので、ウィスカによって突起型端子12が他の突起型端子12等とショートするのを防ぐことができる。
【0033】
なお、上述した実施形態は、本発明によるメタルコア基板の製造方法の一つの実施形態に過ぎない。したがって、図3の半田ペースト塗布工程以前の工程が、図3の金属板加工工程からレジスト処理工程までの内容とは異なる工程によって構成される場合にも、本発明は適用可能である。また、図3の金属板加工工程からレジスト処理工程までの工程部分において、各工程の順番や各工程の内容が上述した実施形態と異なる場合にも、本発明を適用することができる。
【0034】
また、上述した実施形態では、部品19が表面実装部品であり、それに合わせて、回路パターン14に形成される部品19の実装部分がパッド部14aである場合を例に取って説明した。しかし、配線基板10に実装される部品が挿入実装部品であり、それに合わせて、回路パターン14のスルーホール13やリード挿入孔(図示せず)の周りに、挿入実装部品の実装部分としてランド部(図示せず)が形成される場合にも、本発明は適用可能である。
【0035】
その場合、半田ペースト塗布工程において、突起型端子12の先端部分と回路パターン14のランド部とに半田ペーストを塗布する。そして、部品実装工程においてランド部に実装した挿入実装部品をランド部に半田付けするリフロー工程において、突起型端子12の先端部分を溶融した半田によって錫メッキする。
【0036】
このような、ランド部を回路パターン14中に有する配線基板10の製造方法によっても、上述した実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、錫メッキされた端子部を有するメタルコア基板を製造する場合に用いて好適である。
【符号の説明】
【0038】
10…配線基板
11…メタルプレート
12…突起型端子
12-1 突起型端子
12-2 突起型端子
12-3 突起型端子
12-4 突起型端子
12-5 突起型端子
12-6 突起型端子
12-7 突起型端子
12-11 突起型端子
12-12 突起型端子
12-13 突起型端子
12-14 突起型端子
12-15 突起型端子
13…スルーホール
14…回路パターン
14a…パッド部
15…電子部品
16…連結部
19…部品
21…リブ
25…金属板
25a,25b,25c,25c…フレーム
31…プリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫メッキされた端子部を有するメタルコア基板の製造方法であって、
前記メタルコア基板のパッド又はリードに対する半田ペーストの塗布工程において、前記端子部の表面に対する半田ペーストの塗布を同時に行い、
前記半田ペーストを塗布した前記パッド又はリードに部品を実装して前記メタルコア基板をリフロー炉において加熱するリフロー工程において、前記端子部の表面に塗布された半田ペーストによる該端子部のメッキ処理を同時に行う、
ことを特徴とするメタルコア基板の製造方法。
【請求項2】
前記リフロー工程において、前記メタルコア基板を少なくとも200°C以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1記載のメタルコア基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−14620(P2011−14620A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155534(P2009−155534)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】