説明

メタルコア配線板

【課題】メタルコア層から発せられる磁界を抑えつつ回路の配線効率を向上させることができるメタルコア配線板を提供すること。
【解決手段】放熱対象となる電気部品Rに接続されることによって該電気部品Rの熱を放熱させるメタルコア層10を有してなるメタルコア配線板1であって、前記メタルコア層10は、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成されてなり、前記電気部品Rとの接続部分およびその周辺領域を形成し、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる幅太配線部11を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱対象となる電気部品に接続されることによって該電気部品の熱を放熱させるメタルコア層を有してなるメタルコア配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されているランプ、モーター等の制御基板にはリレー等の電気部品が取り付けられている。このような電気部品の発熱による温度上昇を防ぐため、熱伝導性の高い金属板からなるメタルコア層を設けて、電気部品が発する熱を放熱するとともに均熱化するようにした、いわゆるメタルコア配線板を有してなる半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載されたメタルコア配線板は、メタルコア層が絶縁層を間にして二層設けられ、各メタルコア層の電流の方向を反対方向にすることによって、メタルコア層によって発生する磁界を相殺し、寄生インダクタンスを低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−266213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車載用の電気接続箱(ジャンクションボックス)に搭載されるメタルコア配線板は、ランプ、モーター等の複数の負荷に接続されるため、バッテリーに接続される複数の回路が形成される。このため、回路の配線効率を向上させることが重要となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたメタルコア配線板は、磁界を相殺するためメタルコア層を二層に分けて設けているので、メタルコア層が多層となり、回路の配線効率が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、メタルコア層から発せられる磁界を抑えつつ回路の配線効率を向上させることができるメタルコア配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るメタルコア配線板は、放熱対象となる電気部品に接続されることによって該電気部品の熱を放熱させるメタルコア層を有してなるメタルコア配線板であって、前記メタルコア層は、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成されてなり、前記電気部品との接続部分およびその周辺領域を形成し、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる幅太配線部を有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るメタルコア配線板は、上記の発明において、当該メタルコア配線板は、電力の供給先となる複数の負荷に接続され、該複数の負荷に対応した複数の回路が形成されてなり、前記メタルコア層は、前記複数の回路のうち二以上の回路がパターン形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係るメタルコア配線板は、前記メタルコア層が、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成され、しかも、放熱対象となる電気部品が接続される部分とその周辺が、他の部分に比して太く形成されることによって、前記メタルコア層における放熱領域を効率的に限定させるようにしているので、メタルコア層から発せられる磁界を抑えつつ回路の配線効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の請求項2に係るメタルコア配線板は、前記メタルコア層に二以上の回路がパターン形成されるので、該メタルコア配線板が前記複数の負荷に接続される場合であっても、メタルコア層から発せられる磁界を抑えつつ回路の配線効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るメタルコア配線板、およびメタルコア配線板に接続されるバッテリーおよびモーターを示した模式図である。
【図2】図2は、図1に示したメタルコア配線板のメタルコア層が視えるように示した図である。
【図3】図3は、図1に示したメタルコア配線板のA−A線断面図に磁界の方向を矢印で示した図である。
【図4】図4は、図1に示したメタルコア配線板のB−B線断面図に熱が伝わる方向を矢印で示した図である。
【図5】図5は、本発明の実施例のメタルコア配線板の製造手順を示した図である。
【図6】図6は、本発明の実施例の変形例1のメタルコア配線板のメタルコア層が視えるように示した図である。
【図7】図7は、本発明の実施例の変形例2のメタルコア配線板の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るメタルコア配線板の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係るメタルコア配線板1およびメタルコア配線板1に接続されるバッテリーBおよびモーターMを示した模式図である。図2は、図1に示したメタルコア配線板1のメタルコア層10が視えるように示した図である。図3は、図1に示したメタルコア配線板1のA−A線断面図に磁界の方向を矢印で示した図である。図4は、図1に示したメタルコア配線板1のB−B線断面図に熱が伝わる方向を矢印で示した図である。
なお、図2中の矢印は電流の流れる方向を示し、図2中の黒丸は実装面1a上の回路配線に繋がる導通孔を示す。
【0015】
本発明の実施例に係るメタルコア配線板1は、例えば、自動車などに搭載される各電子機器に電力を供給するために用いられる車載用の電気接続箱に搭載されるものであり、バッテリーBと、電力の供給先となる負荷としてラジエーターファンモータ等の二つのモーターM(以下、第一モーターM1、第二モーターM2という)に接続される。
メタルコア配線板1は、バッテリーBから各モーターMに供給される電力を制御する制御部として機能するものであり、実装された電気部品の熱を放熱のため、金属からなるメタルコア層10を有してなる。バッテリーBおよび各モーターMは、メタルコア配線板1に設けられた不図示の端子に接続される電線等によってメタルコア配線板1に接続されるようになっている。
また、メタルコア配線板1の実装面にはCPU(Central Processing Unit)100設置され、このCPU100によって電力の制御に関わる演算処理がなされるようになっている。
【0016】
このようなメタルコア配線板1は、二つのモーターM1,M2に対応した二つの回路が形成されてなる。すなわち、メタルコア配線板1は、第一のモーターM1を駆動させる回路となる第一の回路C1と、第二のモーターM2を駆動させる回路となる第二の回路C2とを有してなる。
【0017】
第一の回路C1は、バッテリーBの陽極側から電流の流れ方向下流に向けて、第一のリレーR1、第一のサージ保護回路T1、第一のモーターM1、バッテリーBの陰極側に順次接続される回路である。
【0018】
第二の回路C2は、バッテリーBの陽極側から電流の流れ方向下流に向けて、第二のリレーR1、第二のサージ保護回路T2、第二のモーターM2、バッテリーの陰極側に順次接続される回路である。
【0019】
第一のリレーR1および第二のリレーR2は、バッテリーBへの逆接続がされた際、逆電流が各モーターMに流れることを防止するものである。
【0020】
第一のサージ保護回路T1および第二のサージ保護回路T2は、ツェナーダイオード等によって実現され、サージが発生した際、各モーターに過大な電圧が負荷されることを防止するものである。
【0021】
ここで、メタルコア配線板1についてその断面構成を参照しながらより具体的に説明する。
メタルコア層10は、図3および図4に示すように、絶縁樹脂からなる絶縁層20,20a,20bの間に設けられ、実装面1a側に位置される絶縁層20aの表面には銅箔が積層され、この銅箔によって実装面1a上の表面配線パターン2が形成されるようになっている。
【0022】
メタルコア層10は、図2に示すように、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成されてなる。
また、メタルコア層10は、幅太配線部11を有してなる。
幅太配線部11は、放熱対象となる各リレーR(R1,R2)との接続部分およびその周辺領域を形成し、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる。
より具体的には、メタルコア層10は、第一の回路C1において、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成されてなり、第一のリレーR1との接続部分およびその周辺領域を形成し、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる第一の幅太配線部11aを有してなる。
また、メタルコア層10は、第二の回路C2において、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成され、第二のリレーR2との接続部分およびその周辺領域を形成し、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる第二の幅太配線部11bを有してなる。
【0023】
このように、第一の回路C1および第二の回路C2が、メタルコア層10にて電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成されるので、図3に示すように、メタルコア層10を流れる電流によって発生する磁界Bが相殺されるようになっている。これにより、寄生インダクタンスを低減するようになっている。
また、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる第一の幅太配線部11aおよび第二の幅太配線部11bによって、図4に示すように、第一のリレーR1および第二のリレーR2の熱がメタルコア配線板に分散、均熱化されるようになっている。
なお、第一の幅太配線部11aおよび第二の幅太配線部11bの配線幅、およびその配線長さは、レイアウト上の制約を考慮して適宜設定するようにする。
【0024】
次に、図5を用いてメタルコア配線板1の製造方法について説明する。図5は、本発明の実施例のメタルコア配線板1の製造手順を示した図である。
まず、絶縁層20bに板状の金属からなるメタルコア基板10aを貼り合わせる(図5(a)参照)。絶縁層20bは、例えば絶縁樹脂基板21と絶縁性樹脂からなる不図示の接着シート、いわゆるプリプレグからなり、プリプレグを間にして、絶縁樹脂基板21とメタルコア基板10aとが貼り合わされる。なお、この貼り合わせの際、熱真空プレス加工等が用いられる。
【0025】
その後、メタルコア基板10aに配線パターンを形成する(図5(b)参照)。このメタルコア基板10aのパターン形成には、公知のフォトリソグラフィ―法が用いられる。これにより、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるようにメタルコア層10に第一の回路C1および第二の回路C2の配線パターンが形成される。また、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる第一の幅太配線部11aおよび第二の幅太配線部11bがパターン形成される。
【0026】
その後、絶縁層20aを間にして不図示の銅箔を積層した後、実装面1aに表面配線パターン2を形成することによってメタルコア配線板1が完成される(図5(c)参照)。ここで、絶縁層20aは、例えば上述したプリプレグからなり、銅箔を積層する際に、熱真空プレス加工によって回路の間にプリプレグの樹脂が埋め込まれる。
なお、上述したメタルコア配線板1の製造方法には、その他、各リレーRの端子等が挿入される不図示の端子挿通孔およびの層間の導通をとるための孔の孔明け工程、および孔内めっき処理工程等、回路基板の製造に必要な公知の処理が施される。
【0027】
本発明の実施例に係るメタルコア配線板1は、メタルコア層10が、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成され、しかも、放熱対象となるリレーRが接続される部分とその周辺が、他の部分に比して太く形成されることによって、メタルコア層10における放熱領域を効率的に限定させるようにしているので、メタルコア層10から発せられる磁界を抑えつつ回路の配線効率を向上させることができる。
【0028】
また、本発明の実施例に係るメタルコア配線板1は、メタルコア層10に二つの回路C1,C2がパターン形成されるので、メタルコア配線板1が二つのモーターM1,M2に接続される場合であっても、メタルコア層10から発せられる磁界を抑えつつ回路の配線効率を向上させることができる。
【0029】
(変形例1)
次に、図6を用いて本発明の実施例に係るメタルコア配線板1の変形例1について説明する。図6は、本発明の実施例の変形例1のメタルコア配線板2のメタルコア層12が視えるように示した図である。
この変形例1のメタルコア配線板2は、一つのモーターMに接続され、モーターMを駆動させる回路となる一つの回路を有してなる点で実施例のメタルコア配線板1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0030】
この変形例1のメタルコア配線板2は、メタルコア層10が、電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成され、しかも、放熱対象となるリレーRが接続される部分とその周辺が、他の部分に比して太く形成されることによって、メタルコア層10における放熱領域を効率的に限定させるようにしているので、実施例1のメタルコア配線板1と同様に、メタルコア層10から発せられる磁界を抑えつつ回路の配線効率を向上させることができる。
【0031】
(変形例2)
次に、図7を用いて本発明の実施例に係るメタルコア配線板1の変形例2について説明する。図7は、本発明の実施例の変形例2のメタルコア配線板3の要部断面図である。
この変形例2のメタルコア配線板3は、二層のメタルコア層10,13が設けられている点で実施例のメタルコア配線板1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0032】
メタルコア配線板3は、絶縁樹脂層を間にして二層のメタルコア層10,13が絶縁層20cを間にして形成されている。このメタルコア配線板3は、例えば3つのモーターM(不図示)に接続されている。各メタルコア層10,13には電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成される。また、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる幅太配線部11がパターン形成される。
【0033】
この変形例2のメタルコア配線板3は、実施例のメタルコア配線板1と同様な効果を奏することができる。
【0034】
なお、本発明の実施例に係るメタルコア配線板1,2,3は、モーターMに接続されるものを例示したが、これに限らない。すなわち、バッテリーBからの電力の供給先となる負荷であればその他の負荷に接続されるようにしても構わない。例えば、メタルコア配線板1,2,3がモーターMに代わってランプに接続されるようにしてもよい。
【0035】
また、本発明の実施例に係るメタルコア配線板1,2,3は、放熱対象となる電気部品がリレーRであるものを例示したが、これに限らず、その他の電気部品が放熱対象とされ、幅太配線部11に接続されるようにしてもよい。
【0036】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1、2、3 メタルコア配線板
1a 実装面
2 表面配線パターン
10、12、13 メタルコア層
10a メタルコア基板
11 幅太配線部
11a 第一の幅太配線部
11b 第二の幅太配線部
20,20a,20b 絶縁層
21 絶縁樹脂基板
C1 第一の回路
C2 第二の回路
R リレー
R1 第一のリレー
T サージ保護回路
T1 第一のサージ保護回路
R2 第二のリレー
T2 第二のサージ保護回路
B バッテリー
M モーター
M1 第一のモーター
M2 第二のモーター
100 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱対象となる電気部品に接続されることによって該電気部品の熱を放熱させるメタルコア層を有してなるメタルコア配線板であって、
前記メタルコア層は、
電流が逆方向に流れる配線が近傍に配置されるように配線パターンが形成されてなり、
前記電気部品との接続部分およびその周辺領域を形成し、他の部分の配線幅に比して太く形成されてなる幅太配線部を有してなる
ことを特徴とするメタルコア配線板。
【請求項2】
当該メタルコア配線板は、
電力の供給先となる複数の負荷に接続され、該複数の負荷に対応した複数の回路が形成されてなり、
前記メタルコア層は、
前記複数の回路のうち二以上の回路がパターン形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のメタルコア配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115220(P2013−115220A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259723(P2011−259723)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】