説明

メタルマスクユニット及びその製造方法

【課題】 窓枠形状のフレームにテンションを付加した状態のメタルマスクを固定した構造のメタルマスクユニットにおいて、フレームの厚さを増大させて剛性を高めることなくメタルマスクユニットに生じる反りを抑制して平面度を高める。
【解決手段】 窓枠形状のフレーム13の表面に、縦方向及び横方向にテンションを付加したメタルマスク11を取り付けたメタルマスクユニット10において、フレーム13の4辺の裏面に、テンションを付加した状態の金属テープ17、18を取り付けて、フレーム13の反りを抑制する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機EL素子製造における蒸着工程で蒸着マスクとして用いるのに好適なメタルマスクユニット並びにその製造方法に関し、また、そのメタルマスクユニットを用いた有機EL素子材料の蒸着方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子製造において真空蒸着が行われており、その蒸着マスクとして、蒸着を許容する多数の細長い微少な開口部を備えたマスク部を有するメタルマスクが使用されている。そして蒸着に当たってはそのメタルマスクを、前記マスク部よりも大きい開口を備えた剛性の大きい窓枠形状のフレームに磁石等によって取り付けていた。しかしながら、近年、パターニングの微細化が進み、マスク部に形成している開口部が微細になり且つメタルマスクの板厚自体も薄くなってくると、メタルマスクを単に窓枠形状のフレームに磁石等を用いて固定しただけでは、マスク部にゆがみやたるみが生じ、開口部の精度が維持できなくなるという問題が生じた。
【0003】
そこで、本出願人はこの問題を解決すべく検討の結果、図8に示すように、極く薄い金属板で製作し且つ複数のマスク部2を形成した構造の多面付けのメタルマスク1でも、メタルマスク1の4辺のそれぞれを、複数のクランプで把持し、各クランプによってメタルマスク1に矢印で示すようにテンションを付加し、且つそのテンションを各クランプごとに調整することで、メタルマスク1をゆがみやたるみの無い平坦な状態とし且つ各マスク部2の開口部を一定ピッチに保持でき、しかも、その状態で窓枠形状のフレーム3にスポット溶接等によって取り付け、周縁の不要部分を除去することで、図9に示すように、メタルマスク1をテンションが付加され平坦となった状態に保持した構造のメタルマスクユニット8を形成しうることを見出し、メタルマスクをゆがみやたるみの無い状態で窓枠形状のフレームに固定する方法及び装置を開発した(特開2004−311335号公報参照)。
【0004】
ところが、このように形成したメタルマスクユニット8においても更に改良すべき点のあることが判明した。すなわち、メタルマスクユニット8はフレーム3の片面にテンションを付加した状態のメタルマスク1を取り付けているため、図10に誇張して示すように、メタルマスク1側が凹面となるように反りが発生する。このような反りのあるメタルマスクユニット8を蒸着マスクとして使用する場合、ガラス基板などの被蒸着基材とメタルマスクとの密着性が悪くなり、蒸着のパターン位置精度が低下してしまう。このため、反りの大きさ(図10における寸法e)を、適当な許容値(例えば、縦500mm×横500mmのメタルマスクユニット8において0.1mm程度)以下に抑える必要がある。メタルマスクユニット8に生じる反りを抑制するには、フレームの厚さを大きくして剛性を増せばよいが、そうすると重量が大きくなって取り扱いにくくなり、また、コストも高くなる。
【特許文献1】特開2004−311335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、窓枠形状のフレームにテンションを付加した状態のメタルマスクを固定した構造のメタルマスクユニットにおいて、フレームの厚さを増大させて剛性を大きくしなくても、メタルマスクユニットに生じる反りを抑制して平面度を高めることの可能なメタルマスクユニット並びにその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係る発明は、窓枠形状のフレームと、該フレームの表面に、縦方向及び横方向の少なくとも一方のテンションを付加した状態で固定されたメタルマスクとを備えたメタルマスクユニットにおいて、メタルマスクのテンションによって生じる恐れのある反りを防止するため、前記フレームの裏面に、長手方向にテンションを付加した金属テープを、前記メタルマスクに付加したテンションの方向に平行となるように取り付けておくという構成としたものである。
【0007】
ここで、メタルマスクに付加するテンションの方向は、メタルマスクをゆがみやたわみのない平坦な状態に張ることができれば、メタルマスクの縦方向のみ或いは横方向のみとしてもよく、その場合には、フレーム裏面に取り付ける金属テープは、フレームの縦方向のみ或いは横方向のみに平行に配置すればよい。複数のマスク部を備えた多面付け用のメタルマスクでは、メタルマスクをゆがみやたわみのない平坦な状態に張るには、縦方向及び横方向の両方向にテンションを付加することが好ましい。そこで、請求項2に係る発明は、上記した請求項1に係る発明において、前記メタルマスクを複数のマスク部を備えた構造のものとすると共に縦方向及び横方向のテンションを付加しておき、前記金属テープを窓枠形状のフレームの4辺にそれぞれ取り付ける構成としたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記した請求項1又は2に係る発明において、前記金属テープの両端近傍をスポット溶接で前記フレームに固定することで、フレームに取り付ける構成としたものであり、この構成により金属テープをフレームに簡単な操作で強固に取り付けることができ、且つ取り付け後の構造を単純なものとすることができる。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記したメタルマスクユニットの製造方法を提供するもので、窓枠形状のフレームの表面に、該フレームよりも大きいサイズのメタルマスクを、該メタルマスクに縦方向及び横方向の少なくとも一方のテンションを付加した状態で取り付ける工程と、前記フレームに取り付けたメタルマスクの周縁の不要部分を除去する工程と、前記フレームの裏面に、該フレームよりも長い長さの金属テープを、長手方向にテンションを付加した状態で、前記メタルマスクに付加したテンションの方向に平行に取り付ける工程と、前記フレームに取り付けた金属テープ両端の不要部分を除去する工程を有する構成としたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記した請求項1から3のいずれか1項記載のメタルマスクユニットを用いて、有機EL素子の有機層又はカソード電極を蒸着することを特徴とする、有機EL素子材料の蒸着方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のメタルマスクユニットでは、フレームの表面側に取り付けているメタルマスクのテンションによって生じるフレームの反りを、フレーム裏面側に取り付けた金属テープのテンションで減少させることができ、フレームの剛性を増すことなく、反りを小さくして平面度を向上でき、このため、蒸着マスクとして使用した場合にガラス基板などの被蒸着基材に対する密着性が向上し、蒸着のパターン位置精度を向上できる。
【0012】
本発明のメタルマスクユニットは、蒸着のみならず、マスキングが必要な任意の用途に使用できるが、特に、高精細パターニングが要求される有機EL素子の有機層又はカソード電極の蒸着に用いることが好ましく、このメタルマスクユニットを用いて、有機EL素子の有機層又はカソード電極を蒸着することで、高精細パターンの有機層又はカソード電極を高品質で且つ生産性良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、有機EL素子製造における多面付けの蒸着マスクとして使用するメタルマスクユニットを例にとって本発明の好適な実施の形態を説明する。図1(a)は本発明の実施の形態に係るメタルマスクユニットを表面側から見た概略斜視図、図1(b)はそのメタルマスクユニットを裏面側から見た概略斜視図、図2はそのメタルマスクユニットを構成する部品を組立前の状態で示す概略斜視図である。図1、図2において、全体を参照符号10で示すメタルマスクユニットは、窓枠形状のフレーム13と、その表面にテンションを付加された状態で取り付けられたメタルマスク11と、フレーム13の裏面にテンションを付加された状態で取り付けられた金属テープ17、18を備えている。
【0014】
メタルマスク11は、金属薄板製のもので、複数のマスク部12を縦横に並べて形成している。各マスク部12は、エッチング等によって形成した多数の微少な開口部を備えたものである。各マスク部12における開口部は、蒸着時に蒸気の通過を許容するためのものであり、その開口部の形状、配列は任意であり、例えば、細長いスリット状の開口部を平行に並べたもの、スロット状の開口部を縦方向に並べると共に平行にも並べたもの等を挙げることができる。フレーム13に取り付ける前のメタルマスク11は、フレーム13よりも縦横両方向ともに大きいサイズに作られており、フレーム13の外周縁にほぼ対応する位置に、折り曲げることで容易に切断可能な易切断線15を形成している。なお、易切断線15は、メタルマスク11に加えるテンションには耐え得る強度を備えたものである。メタルマスク11の厚さ、マスク部12の寸法、それに形成した多数の微少な開口部の寸法等は特に限定するものではないが、代表的なものとして、メタルマスク11の厚さは30〜200μm、マスク部12の寸法は長さが50〜70mm、幅が30〜50mm、開口部の幅が40〜100μm、平行に配列された開口部間の無孔部分の幅が80〜200μm等を例示できる。
【0015】
フレーム13は、メタルマスク11の多数のマスク部12を形成した領域を包含する大きさの開口14を備えた窓枠形状のものである。このフレーム13は、テンションを付加した状態のメタルマスク11を取り付けた後においても、そのメタルマスク11のテンションによってたわんでメタルマスクにゆがみやたるみが生じることがないよう、また、保管時、蒸着機への取付時、蒸着操作時などの取り扱い時においても、メタルマスク11を平坦な状態に保持しうる剛性を備えたものである。なお、テンションを付加したメタルマスク11を取り付けた時点(金属テープを取り付ける前の時点)において多少の反り(例えば、縦500mm×横500mmのフレーム13において0.2〜0.5mm程度の反り)が生じても、後で金属テープ17、18を取り付けて矯正しうるので、そのような小さい反りまで生じさせないような大きい剛性を持たせる必要はない。フレーム13の厚さとしては、2mm〜30mm程度を例示でき、幅(開口14の内周面とフレーム外周面との距離)としては、5mm〜50mm程度を例示できる。フレーム13の裏面には、金属テープ17、18を取り付けるエリアに溝状の掘り込み20を入れている。
【0016】
金属テープ17、18は、それに長手方向のテンションを付加した状態でフレーム13に取り付けることでメタルマスクユニット10の反りを許容範囲内に抑えるためのものである。金属テープ17、18の幅及び厚さは、弾性領域内で必要な大きさのテンションを加えることができるように選定されるものであり、例えば、幅は5〜50mm、厚さは50〜200μm程度に選定される。フレーム13に取り付ける前の金属テープ17、18の長さは、フレーム13よりも長くしておく。
【0017】
次に、メタルマスクユニット10の製造方法を説明する。あらかじめ、図2に示すメタルマスク11、フレーム13、金属テープ17、18を用意しておく。まず、フレーム13の上にメタルマスク11を乗せ、図3、図4に示すように、そのメタルマスク11の4辺のそれぞれを、複数のクランプ23で把持させ、各クランプ23に連結しているエアシリンダ等の駆動手段24を作動させて、各クランプ23を矢印で示すように縦横方向に引っ張り、メタルマスク11にテンションを付加する。ここで、メタルマスク11の4辺にそれぞれ設けている複数のクランプ23は、マスク部12の列と、マスク部の無い領域とに合わせて配置しており、従って、メタルマスク11のマスク部12を形成した領域と、マスク部の無い領域とをそれぞれ別個のクランプ23で引っ張ってテンションを付加することが可能であり、これによって、メタルマスク11の剛性の異なる領域をそれぞれ別個のクランプ23でテンション付加することができる。そして、メタルマスク11の各辺を複数のクランプ23で把持して引っ張った状態で、メタルマスク11の表面状態を目視検査し、ゆがみやたるみがあれば、その領域を引っ張っているクランプ23に加える引張力を調整し、メタルマスク11をゆがみやたるみのない平坦な状態で且つマスク部12の開口部が平行に引き揃えられた状態に調整する。また、メタルマスク11に形成している各マスク部12の位置を検査し、各マスク部が所定の寸法精度内の位置に入るように、各クランプ23の引張力を調整する。以上により、メタルマスク11をゆがみやたるみの無い状態で且つ各マスク部15が所定の寸法精度範囲内に位置する状態とすることができる。その後、この状態で、メタルマスク11の周縁部分をフレーム13に、レーザ光を用いてスポット溶接し(スポット溶接部30参照)、固定する。その後、クランプ23を外し、メタルマスク11の周縁の不要部分を易切断線15を利用して除去する。
【0018】
次に、図5に示すように、金属テープ17を、長手方向にテンションを付加した状態で、フレーム13の平行な2辺の裏面の掘り込み20(図2参照)に押し当て、その両端近傍をレーザ光を用いてスポット溶接し(符号32参照)、固定する。その後、金属テープ17の両端の不要部分を切断、除去する。次いで、図6に示すように、金属テープ18を、長手方向にテンションを付加した状態で、先に金属テンション17を取り付けた2辺に直角な2辺の裏面の掘り込み20(図5参照)に押し当て、その両端近傍をレーザ光を用いてスポット溶接し(符号34参照)、固定する。その後、金属テープ18の両端の不要部分を切断、除去する。以上により、図1に示すメタルマスクユニット10が製造される。
【0019】
以上の製造工程において、テンションを付加した状態のメタルマスク11をフレーム13に取り付けた時点では、図7(a)に誇張して示すように、メタルマスク11のテンションによってフレーム13に反りが生じている。しかし、その後に金属テープ17にテンションを加えた状態でフレーム13の裏面に取り付けることで、その金属テープ17のテンションがフレーム13の反りを元に戻す方向に作用し、図7(b)に示すように、フレーム13の反りが減少し、平面度が向上する。メタルマスク11には縦方向及び横方向の両方向にテンションを付加しており、フレーム13には縦方向及び横方向の両方に反りが生じるが、金属テープ17、18はフレーム13の縦方向及び横方向の両方向にテンションを加えるように取り付けられるので、金属テープ17、18の取り付け後では、フレーム13は縦方向及び横方向ともに反りが抑制され、平面度が向上する。
【0020】
ここで、金属テープ17、18に付加するテンションは、メタルマスク11に付加したテンションに等しくしておくと、フレーム13の両面でのテンションバランスが取れて、フレーム13の反りを確実に無くすことができるが、実用上は、メタルマスクに付加したテンションよりもかなり小さく選定してもよい。すなわち、フレーム13自体がかなりの剛性を持っていてメタルマスク11のテンションを支えており、また、微少な反り(例えば、縦500mm×横500mmのフレーム13において0.1mm以下の反り)は許容できるので、金属テープ17、18に付加するテンションは、メタルマスク11に付加したテンションの5分の1から2分の1程度でよく、具体的にはフレーム13に生じる反りが許容範囲内となるように選定すればよい。
【0021】
以上のようにして製造されたメタルマスクユニット10では、メタルマスク11がゆがみやたるみの無い状態で且つマスク部12の開口部が正確に平行に揃った状態に保たれており、且つ各マスク部12の位置も所定の寸法精度内に保たれている。また、メタルマスクユニット10の反りも微少な許容範囲内に保たれている。その後、このメタルマスクユニット10を用いて、所定の蒸着操作を行う。すなわち、このメタルマスクユニットにガラス基板等の被蒸着基材を取り付け、蒸着機にセットし、有機EL素子の有機層又はカソード電極の蒸着を行う。これにより、微細なパターンの蒸着を位置精度良く行うことができ、高品質の有機層又はカソード電極を形成できる。
【0022】
上記構成のメタルマスクユニット10において、メタルマスク11、フレーム13、金属テープ17、18の材質は、特に限定されず、必要な強度、剛性、エッチング適性等を備えたものを適宜選定すればよい。例えば、メタルマスク11には、42アロイ、ステンレス鋼、インバー材等を挙げることができ、フレーム13にはステンレス鋼、インバー材等を挙げることができ、金属テープ17、18には、メタルマスク11と同様に42アロイ、ステンレス鋼、インバー材等を挙げることができる。このうち、メタルマスク11と金属テープ17、18とは、同じ材料或いは熱膨張係数が同一若しくは近いもの(例えば、熱膨張係数の差が20%以下のもの)を用いることが好ました。このように材質選定をしておくと、メタルマスクユニット10を製造時とは異なった温度環境下に置いた場合に、メタルマスク11と金属テープ17、18の熱変形量に大きい差が生じることがなく、このため、メタルマスクユニット10の反りが拡大することがない。
【0023】
また、メタルマスク11、フレーム13、金属テープ17、18をすべてインバー材で形成することが一層好ましい。ここで用いるインバー材としては、Fe−36%Niの標準組成のものでもよいし、この標準組成のNiの一部をCoに置換したもの、或いは微量のMnを添加したものでもよい。これらのインバー材はきわめて低い熱膨張率を示しており、例えば、Fe−36%Niの標準組成のものでは、熱膨張率が1.2×10-6/K程度であり、また、標準組成のNiの一部をCoに置換したもの、或いは微量のMnを添加したものでは、熱膨張率が0.1×10-6/K程度である。このようなインバー材を用いると、メタルマスクユニット10を製造時とは異なった温度環境下に置いた場合、メタルマスク11、フレーム13、金属テープ17、18の熱変形量に差がほとんどなく、しかもその熱変形量はきわめて小さい。このため、メタルマスクユニット10に反りが生じてメタルマスク11にたわみやゆがみが生じることがなく、且つ各マスク部12の位置の変動もきわめて微小である。かくして、どのような温度環境下に置かれても、微細なパターンの蒸着を位置精度良く行うことができ、温度管理が容易となる。
【0024】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれに限らず、特許請求の範囲の記載内で適宜変更可能である。例えば、メタルマスク11の周縁部分のフレーム13に対する固定方法としては、レーザ光によるスポット溶接に限らず、接着剤による固定、ねじ止め等に変更してもよい。また、金属テープ17、18の固定方法も、レーザ光によるスポット溶接に限らず、接着剤による固定、ねじ止め等に変更してもよい。ただし、実施の形態のようにレーザ光によるスポット溶接を用いると、ねじ止め等に比べて作業が簡単で且つ固定が確実であり、固定後の構造が単純であるといった利点が得られる。更に、金属テープ17、18の固定位置も、両端のみに限らず、中間の適当な位置の固定を併用してもよい。
【0025】
更に、上記した実施の形態では、メタルマスク11をフレーム13に固定する際に、メタルマスク11の4辺をそれぞれ、マスク部12に対応する領域とマスク部のない領域に対応して設けた複数のクランプ23で把持してテンションを付加しているが、メタルマスク11にテンションを付加する手段はこの構成に限らず、メタルマスク11をゆがみやたわみの無い平坦な状態に引っ張り、且つマスク部の開口部を平行に引き揃えることができれば、適宜変更可能である。例えば、メタルマスク11の各辺に設ける複数のクランプの個数やクランプの幅を変更する等の変更を加えても良い。
【0026】
更に、上記の実施の形態では、メタルマスク11に縦横両方向にテンションを加えて平坦な状態としているが、メタルマスクによっては縦方向のみ或いは横方向のみにテンションを加えることで、メタルマスクをゆかみやたるみの無い状態に引き揃えることができる場合がある。本発明はその場合をも包含するものであり、その場合には、金属テープはフレームの4辺に設ける必要はなく、メタルマスクに付加したテンションの方向に平行な辺のみに、金属テープを取り付ければ良い。また、上記の実施の形態では、金属テープ17、18の全面がフレーム13の開口14を取り囲む枠の部分に重なるように取り付けているが、金属テープの取り付け位置はこれに限らず、フレーム13に固定したメタルマスク11のマスク部12に干渉しない範囲で開口14を横切るように金属テープを取り付ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のメタルマスクユニットは、高精細パターニングが要求される有機EL素子の有機層又はカソード電極の蒸着に用いることが好ましいが、これに限らず、他の用途における蒸着に用いても良く、更には、蒸着以外のマスキングが必要な用途に用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係るメタルマスクユニットを表面側から見た概略斜視図、(b)はそのメタルマスクユニットを裏面側から見た概略斜視図
【図2】図1に示すメタルマスクユニットを構成する部品を組立前の状態で示す概略斜視図
【図3】メタルマスクにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略平面図
【図4】メタルマスクにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略斜視図
【図5】金属テープにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略斜視図
【図6】金属テープにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略斜視図
【図7】(a)、(b)はメタルマスクを取り付けたフレームの反りが金属テープで矯正されることを説明する概略側面図
【図8】従来技術においてメタルマスクにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略平面図
【図9】従来のメタルマスクユニットの概略斜視図
【図10】従来のメタルマスクユニットを、それに生じている反りを誇張して示す概略側面図
【符号の説明】
【0029】
10 メタルマスクユニット
11 メタルマスク
12 マスク部
13 フレーム
14 開口
15 易切断線
17、18 金属テープ
20 掘り込み
23 クランプ
24 駆動手段(エアシリンダ)
30、32、34 スポット溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠形状のフレームと、該フレームの表面に、縦方向及び横方向の少なくとも一方のテンションを付加した状態で取り付けられたメタルマスクと、前記フレームの裏面に、長手方向にテンションを付加した状態で且つ前記メタルマスクに付加したテンションの方向に平行に取り付けられた金属テープを有することを特徴とするメタルマスクユニット。
【請求項2】
前記メタルマスクが複数のマスク部を備えると共に縦方向及び横方向のテンションを付加されており、前記金属テープが窓枠形状のフレームの4辺にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のメタルマスクユニット。
【請求項3】
前記金属テープが、その両端近傍をスポット溶接で前記フレームに固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のメタルマスクユニット。
【請求項4】
窓枠形状のフレームの表面に、該フレームよりも大きいサイズのメタルマスクを、該メタルマスクに縦方向及び横方向の少なくとも一方のテンションを付加した状態で取り付ける工程と、前記フレームに取り付けたメタルマスクの周縁の不要部分を除去する工程と、前記フレームの裏面に、該フレームよりも長い長さの金属テープを、長手方向にテンションを付加した状態で、前記メタルマスクに付加したテンションの方向に平行に取り付ける工程と、前記フレームに取り付けた金属テープ両端の不要部分を除去する工程を有するメタルマスクユニットの製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項記載のメタルマスクユニットを用いて、有機EL素子の有機層又はカソード電極を蒸着することを特徴とする、有機EL素子材料の蒸着方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−164815(P2006−164815A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356257(P2004−356257)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】