説明

メタルマスク

【課題】クリーム半田の表面は、大気中の酸素等により劣化する。かかる表面が劣化したクリーム半田をプリント配線基板に印刷すると、半田ボールやぬれ性の低下が生じるという問題がある。
【解決手段】複数の貫通穴10が形成され、スキージ2によって貫通穴10へクリーム半田8を供給することによりプリント配線基板のパッドにクリーム半田8を印刷するメタルマスク1であって、メタルマスク1には、スキージ2によってクリーム半田8の印刷動作を開始するクリーム半田待機位置12とクリーム半田待機位置12に最も近い貫通穴14の間に、貫通穴14と連通しておらず、スキージ2の長手方向の幅A以上の長さWの帯状の開口部11が形成されたので、電子部品をプリント配線基板9に半田付けする際、表面部分Rが劣化したクリーム半田8を印刷することが無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板上にクリーム半田を印刷する時に使用するメタルマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板の表面または裏面に形成されたパッド等にクリーム半田(半田ペースト、ソルダペースト)を印刷するために、ステンレス製の金属板に貫通穴が形成されたメタルマスクが用いられている。当該貫通穴は、電子部品が実装されるプリント配線基板のパッドと対応する位置に複数形成されている。
【0003】
このメタルマスクを用いたクリーム半田の印刷は、以下のように行われる。すなわち、メタルマスクの貫通穴とプリント配線基板のパッドの位置が一致するよう両者を重ね合わせる。そして、スクリーン印刷装置のスキージによって、メタルマスク上に置かれたクリーム半田を水平方向に移動させながらクリーム半田を貫通穴に供給(充填)する。その後、メタルマスクを鉛直方向に移動させて取り外す。そうすると、プリント配線基板のパッド上にクリーム半田が印刷される。このように、プリント配線基板の表面または裏面にクリーム半田を印刷する際にメタルマスクを用いることは、一般に行われている(例えば、特許文献1〜14参照)。
【0004】
プリント配線基板へのクリーム半田の印刷後は、クリーム半田が印刷されたパッド上に電子部品を置き、リフロー炉に搬送してクリーム半田を溶融させることにより、電子部品がプリント配線基板に実装される。ここで、実装とは、プリント配線基板に電子部品が接着固定され、かつ、プリント配線基板のパッドと電子部品の電極パッドとが電気的に接続された状態をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−305272号公報
【特許文献2】特開平7−38231号公報
【特許文献3】特開平9−142053号公報
【特許文献4】特開平10−211689号公報
【特許文献5】特開平10−303248号公報
【特許文献6】特開平10−166547号公報
【特許文献7】特開2001−3412781号公報
【特許文献8】特開2002−210916号公報
【特許文献9】特開2007−230223号公報
【特許文献10】特開2008−10268号公報
【特許文献11】特開2008−44366号公報
【特許文献12】特開2008−117835号公報
【特許文献13】特開2009−224678号公報
【特許文献14】特開2009−233948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、メタルマスク上に置かれたクリーム半田は、大気に触れる時間が長くなると、クリーム半田表面のアルコール分等の溶剤が蒸発して粘度が高くなる、大気中の酸素により酸化する等して劣化する。特に、スクリーン印刷装置を使用する場合、N枚目のプリント配線基板のクリーム半田の印刷を終えた後、N+1枚目のプリント配線基板のクリーム半田の印刷を開始するまでの待機時間があるので、クリーム半田の大気と接触する部分の劣化が進行し易い。
【0007】
表面が劣化したクリーム半田を用いた場合、リフロー時に半田ボールの発生やぬれ性の低下等の問題が発生する。また、クリーム半田の粘度が高くなるため、プリント配線基板へのクリーム半田の印刷ミスや電子部品の位置ズレ等が発生する。
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、プリント配線基板上にクリーム半田を印刷する際、表面が劣化したクリーム半田の印刷を未然に防止できるメタルマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子部品が実装されるプリント配線基板のパッドと対応する位置に複数の貫通穴が形成され、スキージによって貫通穴へクリーム半田を供給することによりパッドにクリーム半田を印刷するためのメタルマスクに関するものである。
【0010】
そして、メタルマスクには、スキージによってクリーム半田の印刷動作を開始するクリーム半田待機位置とクリーム半田待機位置に最も近い貫通穴の間に、貫通穴と連通しておらず、スキージの長手方向の幅以上の長さの帯状の開口部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
かかる構成により、クリーム半田待機位置に長時間大気にさらされ劣化したクリーム半田の表面は、クリーム半田の印刷動作を開始した直後に、スキージによって開口部に充填される。これにより、劣化したクリーム半田の表面は、開口部により除去されるので、メタルマスクに形成された貫通穴に供給されることがない。
【0012】
つまり、本発明は、劣化したクリーム半田がクリーム半田の印刷に使われることが無いので、品質の良いプリント配線基板装置を提供することができる。ここで、プリント配線基板装置とは、プリント配線基板に各種電子部品が実装されたものをいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、酸化等して劣化したクリーム半田の表面を除去できるメタルマスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】メタルマスクを備えたスクリーン印刷装置の概略斜視図(実施例1)
【図2】メタルマスクの主要な部分の概略断面図(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
本発明の一実施例を図1および図2を用いて説明する。
図1は本発明にかかるメタルマスク1を備えたスクリーン印刷装置2の斜視図であり、図2は本発明にかかるメタルマスクの開口部11の近傍の断面図である。
尚、本実施例1では、本発明にかかるメタルマスクを備え、被印刷物であるプリント配線基板の表面にクリーム半田を印刷するスクリーン印刷装置を例示して説明する。また、図1および図2は、説明を簡単にするため、本発明にかかるメタルマスクの主要な部分以外の図示を省略している。
【0017】
〔メタルマスク〕
図1および図2に示すように、メタルマスク1は、電子部品が実装されるプリント配線基板9のパッドと対応する位置に複数の貫通穴10が形成され、スキージ2によって貫通穴10へクリーム半田8を供給することによりパッドにクリーム半田8を印刷する際に使用されるものである。
【0018】
メタルマスク1には、スキージ2によってクリーム半田8の印刷動作を開始するクリーム半田待機位置12と、このクリーム半田待機位置12に最も近い貫通穴14の間に、貫通穴14と連通しておらず、スキージ2の長手方向の幅W以上の長さAの帯状の開口部11が形成されている。
【0019】
メタルマスク1は、ステンレス製の金属板に、PTFE(ポリテトラフルオロチレン「polytetrafluoroethylene」)の超高分子が表面にコーティングされたメタル板である。本実施例1では、縦:880mm×横:990mm×高さ:15mmの大きさの金属板に貫通穴10および14並びに開口部11をエッチング加工により形成したものを用いた。また、貫通穴10および14並びに開口部11は、レーザ加工等により形成しても良い。
【0020】
(開口部)
開口部11は、クリーム半田待機位置12に置かれた(準備された)所定量のクリーム半田8の大気と接触している表面部分Rがそのまま入る(供給できる)大きさであることが望ましい。大気と接触している表面部分Rは劣化しており、当該表面部分Rが開口部11に入れば、クリーム半田8から表面部分Rを取り除くことができるからである。
【0021】
このため、開口部11の長手方向の長さAは、前記したように、スキージ2の長手方向の幅の長さW以上にすることが望ましい。また、開口部11の長手方向の短手方向の長さBは、クリーム半田待機位置12に置かれた(準備された)所定量のクリーム半田8における大気と接触している表面部分Rが入る長さ以上にすることが望ましい。具体的には、クリーム半田8の大気に接触している表面部分Rは、略円弧形状をしているので、長さBは、当該円弧の長さ以上に設定することが望ましい。
【0022】
〔スクリーン印刷装置〕
メタルマスク1は、プリント配線基板9の表面にクリーム半田8を印刷するために一般的に用いられるスクリーン印刷装置で使用される。スクリーン印刷装置は、貫通穴10および14を設けたメタルマスク1を固定でき、スキージ2を水平方向に移動させることによって、クリーム半田8を貫通穴10および14を介してプリント配線基板9の表面のパッドに供給(充填)する一般的に市販されているものを採用することができる。
【0023】
(スキージ)
スキージ2は、ウレタンゴム3及びステンレスプレート4を重ね、その一端をホルダ5によってボルト6により共締めして保持したものである。ホルダ5は、水平移動手段(例えば、一軸ロボット、スライダ等)に連結されたアーム7に取り付けられており、かかる水平移動手段により、プリント配線基板9の上に備えられたメタルマスク1上を水平移動する。
【0024】
本実施例1においては、ウレタンゴム3は、厚みDが約20mm、長手方向の長さWが約500mm、ウレタンの硬度が60〜70の板形状のものを採用した。また、ステンレスプレート4は、厚みが約1mmの板形状のもので、プリント配線基板9側の先端にテーパ面を形成したものを採用した。また、スキージ2は、移動時にステンレスプレート4がスキージ2の移動する向きに位置するようにすることが望ましい。
【0025】
〔クリーム半田の印刷方法〕
次に、メタルマスク1をセットしたスクリーン印刷装置を用いてプリント配線基板9の表面にクリーム半田8を印刷する方法について説明する。
まず、前記したスクリーン印刷装置にプリント配線基板9を位置決め(セット)する。そして、メタルマスク1の貫通穴10および14と、プリント配線基板9の表面に形成されたパッドが一致するようにメタルマスク1をプリント配線基板9の上に重ねて保持する。
【0026】
その後、クリーム半田待機位置12に置かれた所定量のクリーム半田8を、スキージ2によって水平方向に移動させる。具体的には、クリーム半田待機位置12近傍にスキージ2を移動させ、ウレタンゴム3の先端をアーム7によってメタルマスク1の上に接触させて押し付ける。そして、この状態を維持しつつ、スキージ2を水平移動手段によって、クリーム半田8を印刷する向きCに移動させる。
【0027】
そうすると、表面が劣化したクリーム半田8の表面部分Rは、スキージ2のウレタンゴム3によってローリング(回転)しながら開口部11に入り込んで取り除かれる。そして、劣化した表面部分Rが開口部11により取り除かれたクリーム半田8は、引き続きスキージ2によって開口部10および14に供給される。このようにして全ての開口部10へのクリーム半田8の供給が終わった後、マスクキャリア1を鉛直方向に引き上げる、またはプリント配線基板9を鉛直方向に引き下げることにより、マスクキャリア1とプリント配線基板9を引き離せば、プリント配線基板9へのクリーム半田8の印刷が終わる。
【0028】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0029】
例えば、メタルマスク1に形成された開口部11は、スキージ2によってクリーム半田8を印刷する開始位置が複数箇所存在する場合(例えば、図2の紙面左右方向に交互にスキージによって印刷する場合)、複数になっても良い。図2を用いてより具体的に説明すると、クリーム半田待機位置12は紙面左右方向の左端(図2)と、右端(図2に図示せず)の2箇所になる。このため、クリーム半田待機位置12と最初に印刷する貫通穴14の間が2箇所になる。
【0030】
また、開口部11の形状は、最初にクリーム半田8を印刷する貫通穴14にクリーム半田8が到達する前に、劣化したクリーム半田の表面部分Rを取り除くことができれば、形状、位置、個数は問わない。
【0031】
また、スキージに備えるウレタンゴムは、フッ素系ゴムやプチルゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等の様々な材質が考えられるが、クリーム半田8に対する耐薬品性を有する材質であれば良い。ただし、選択する材質によって適度な弾力が得られように厚みや硬度を適宜選択する必要がある。また、クリーム半田のローリング性の良い一般的なものを用いることが好ましい。
【0032】
また、メタルマスク1は、ステンレス材に限らず、例えば、PTFE等の超高分子をコーティングしたチタン板等を用いても良いし、樹脂系の材料でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るメタルマスクは、プリント配線基板の表面または裏面へのクリーム半田の印刷に用いられる。
【符号の説明】
【0034】
1…メタルマスク、2…スキージ、3…ウレタンゴム、4…ステンレスプレート、5…ホルダ、6…ボルト、7…アーム、8…クリーム半田、13…保持台、9…プリント配線基板、10…貫通穴、11…開口部、12…クリーム半田待機位置、14…最も近い貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装されるプリント配線基板のパッドと対応する位置に複数の貫通穴が形成され、スキージによって該貫通穴へクリーム半田を供給することにより該パッドに該クリーム半田を印刷するためのメタルマスクにおいて、
前記メタルマスクには、該スキージによって該クリーム半田の印刷動作を開始するクリーム半田待機位置と該クリーム半田待機位置に最も近い該貫通穴の間に、該貫通穴と連通しておらず、該スキージの長手方向の幅以上の長さの帯状の開口部が形成されたことを特徴とするメタルマスク

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−158896(P2010−158896A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−20351(P2010−20351)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】