説明

メモリカード、モバイル情報端末機器及び充電器

【課題】耐摩耗性及び耐食性に優れた金属電気接点を備えるメモリカード、モバイル情報端末機器及び充電器を提供する。
【解決手段】バネ接点を有する機器に挿入して使用するメモリカードにおいて、電極基材1上に、膜厚1〜3μmのNiめっき層2、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層3、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層4が順次積層されてなる電気接点6と、フラッシュメモリ素子とを備え、前記機器への挿入の際に前記電気接点6がバネ接点と接触することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れた電気接点を備えたメモリカード、モバイル情報端末機器及び充電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メモリチップをカード型外殻に封止しカード形状に形成したメモリカード(メモリスティック、SDカード、マルチメディアカード、スマートメディアなど)、モバイル情報端末機器(携帯電話やポータブル電子機器など)の充電部、コネクタ等の電気接点部分には、銅(Cu)系素材の上にNiめっきおよびAuめっきを施した金属接点が一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような材料構成の電気接点には、以下に示す2つのメカニズムによる腐食課題があり、接点の接触不良の原因となっていた。
1)Auめっきに存在するピンホールを通して、下層めっきのNiあるいは下地素材のCuが腐食する。
2)挿抜や摺動が繰り返し行われると、Auめっきが削られてしまい、露出した下層めっきのNiや下地素材のCuが腐食する。
【0004】
前記課題に対する従来の解決法は、Auめっきを厚くすることであった。ピンホール数はめっき厚に反比例するため、ある程度の厚さのAuめっきを施せばピンホール数を問題ないレベルまで低減することができる。また、ある程度の挿抜や摺動にも耐えられる。例えば、市販のメモリカードの場合、Auめっき層の膜厚を1〜2.5μm程度としていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−218031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記メモリカードを機器に挿抜することやモバイル情報端末機器を充電器に着脱することは、ほぼ毎日のように行われその挿抜回数や着脱回数は飛躍的に多くなってきている。そのため、電気接点ではAuめっき層の摩耗や損傷が進み、単にAuめっき層の膜厚を厚くするだけでは相対的なピンホール数の増加や下地金属の露出に伴う腐食を防ぐことができなかった。
【0007】
また、最近のようにメモリカードやモバイル情報端末機器、それに伴う充電器が数多く広く普及している状況では、上記のようにAuめっき層を厚くすることは、全体でみると多大な経済的損失となってしまい、好ましくなかった。
そこで、上記メモリカード、モバイル情報端末機器や充電器においてはコストアップすることなく、耐摩耗性/耐食性に優れた金属電気接点が必要とされていた。
【0008】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性及び耐食性に優れた金属電気接点を備えるメモリカード、モバイル情報端末機器及び充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために提供する本発明は、バネ接点を有する機器に挿入して使用するメモリカードにおいて、電極基材上に、膜厚1〜3μmのNiめっき層、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層が順次積層されてなる電気接点と、フラッシュメモリ素子とを備え、前記機器への挿入の際に前記電気接点がバネ接点と接触することを特徴とするメモリカードである(請求項1)。
【0010】
前記課題を解決するために提供する本発明は、電源となる充電可能なバッテリと、該バッテリに接続される電極基材上に、膜厚1〜3μmのNiめっき層、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層が順次積層されてなる充電用電気接点とを備えることを特徴とするモバイル情報端末機器である(請求項2)。
【0011】
前記課題を解決するために提供する本発明は、モバイル情報端末機器に充電をする充電器であって、外部電源と接続される電極基材の前記モバイル情報端末機器の充電用電気接点と接触する部分に、膜厚1〜3μmのNiめっき層、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層が順次積層されてなる電気接点を備えることを特徴とする充電器である(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメモリカードによれば、その接点部を耐摩耗性及び耐食性に優れた電気接点としていることにより、1日に何回もメモリカード装着装置などの機器への挿抜が繰り返して行われる場合であっても接点部は良好な状態が保たれ、長期使用が可能となる。
本発明のモバイル情報端末機器によれば、その充電用電気接点を耐摩耗性及び耐食性に優れた電気接点としていることにより、1日に何回も充電が繰り返して行われる場合であっても充電用電気接点は良好な状態が保たれ、長期使用が可能となる。
本発明の充電器によれば、充電端子を構成する電気接点を耐食性に優れた電気接点としていることにより、1日に何回も充電が繰り返して行われる場合であっても充電端子の電気接点は良好な状態が保たれ、長期使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の根幹となる電気接点について説明する。
図1は、本発明で使用する電気接点の構成を示す断面図である。
図1に示すように、電気接点6は、電極基材1上に膜厚1〜3μmのNiめっき層2、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層3、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層4を順次積層したものである。
【0014】
電極基材1は、電気接点用の導電性材料として一般的に使用されている材料であればいずれのものでもよい。例えば、黄銅(Cu−Zn系)、りん青銅(Cu−Sn−P系)などの銅系材料が挙げられる。また、電極基材1は薄板や箔など用途に応じた形状であればよい。なお、電極基材1の表面粗さは各めっき層が形成された後の表面に電極基材1の表面凹凸が反映されない程度に滑らかであることが好ましい。
【0015】
Niめっき層2は、電極基材1との密着性が確保され、膜厚1〜3μmにコントロールできれば、従来公知のNiめっき方法でよく、例えば電気めっき法によればよい。
【0016】
Pd−Ni合金めっき層3は、Niめっき層2との密着性が確保され、膜厚0.2〜1μmにコントロールできれば、従来公知のPd−Ni合金めっき方法でよく、例えば電気めっき法によればよい。また、Pd−Ni合金めっき層3のPd:Ni比(重量比)は70:30〜90:10であることが好ましく、80:20前後が最もよい。
【0017】
Co含有Auめっき層4は、Pd−Ni合金めっき層3との密着性が確保され、膜厚0.03〜0.05μmにコントロールできれば、従来公知のCo含有Auめっき方法でよく、例えば電気めっき法(フラッシュめっき)によればよい。膜厚が0.1μm以上になると摺動に対する潤滑効果が得られず耐摩耗性が低下するため好ましくない。また、めっき層中のCo含有率は0.3〜0.5wt%であることが好ましい。
なお、Co含有Auめっき層4に封孔処理を施してもよい。
【0018】
前記のような電気接点6の構成とすることにより、Co含有Auめっき層4の膜厚を従来よりも大幅に低減しつつ(膜厚比で95%以上低減)、従来の電気接点よりも耐摩耗性及び耐食性を改善することができる。これらの改善効果はつぎのようなメカニズムによる。
【0019】
(1)耐摩耗性
Pd−Ni合金めっき層3の硬い層の上に、相対的に軟らかい層(Co含有Auめっき層4)を薄く付けると、軟らかい方(Co含有Auめっき層4)の金属が固体潤滑剤のような働きをし、摺動に対して摩耗しにくくなる。
【0020】
(2)耐食性
Pd−Ni合金めっき層3、Co含有Auめっき層4ともに、めっき層中にピンホールが存在する(Pd−Ni合金めっき層3の有孔度はCo含有Auめっき層4より少ない)が、2層に重ねることで下層めっきのNiめっき層2まで貫通するピンホール数が激減するため、耐食性が向上する。また、Niめっき層2と接する金属が従来のAuからPd−Ni合金に変わることで、局部電池効果が低減され、耐食性が向上している(AuとNiの電位差:1.73V、PdとNiの電位差:1.15V)。
【0021】
さらに、めっき速度の遅いNiめっき層の一部をめっき速度の速いPd−Ni合金めっき層に置き換えることになるため、電気接点6のめっき層全体としては生産効率が向上する。
【0022】
次に、本発明に係るメモリカードについて説明する。
図2及び図3は本発明のメモリカードの構成例を示す概略図である。
図2及び図3において、10はメモリカードを示し、それぞれメモリカード10の一方の面13a及びその反対側の他方の面13bから見た外観構成を示すもので薄型の略カード状の形状をしている。
【0023】
図3において、メモリカード10の一方の面13aの一方の端部14aの縁部に沿って2段構成の各段10列の端子配列からなる接点部16が設けられている。この2段構成からなる接点部16の1段目の接点部16a及び2段目の接点部16bは図1に示す電気接点の構成で形成されている。また、これらのうち、挿入方向の左端2列の接点は互いに切れ目なく繋がって短絡しており、他の8列の接点は間隔18をおいて1段目の接点部16a及び2段目の接点部16bの2つの接点部に区切られている。そしてこの2段構成の各段の10列の接点は隣あった接点がそれぞれ仕切り17で仕切られる如く構成されている。
【0024】
また、メモリカード1の一方の端部14aと一方の側面15aとの角にはメモリカード10をメモリカード装着装置20のスロット部21に挿入する際に、メモリカード10の挿入方向が正しいかどうかを検出する曲面部19aを備えると共に位置決め用の凹部19が設けられている。そして位置決め用の凹部19により決められた位置にメモリカード10を固定する固定用凹部1aが側面15aの縁に設けられている。
【0025】
また、図2において、メモリカード10の一方の面13aと反対の他方の面13bの端部14aと反対の端部14bの近傍にフラッシュメモリ素子(メモリ)を格納するための高さHの第1の凸部12を設けている。これにより、外形寸法の大きな変更をすることなく容易にメモリカードのメモリ容量を増量することを達成している。
【0026】
つぎに、メモリカード10をバネ接点を有する機器(メモリカード装着装置)に挿入して使用する場合を説明する。
図4A,B及び図5に、メモリカード装着装置20にメモリカード10を挿入及び装着した状態を側面15bから見た断面図を示す。
【0027】
ここで、メモリカード装着装置20は、前述したメモリカード10の第1の凸部12に対応する部分に切込みを入れ開口部22が設けられている。またメモリカード10の接点部16が設けられている一方の面13aと接するメモリカード装着装置20の略箱型のスロット部21を構成する静電気対策を兼ねた金属板25の面上にメモリカードの挿入方向と平行して長い凸部25aを2箇所設け、メモリカードを滑りやすくして挿入・取出しが容易になるようにしている。
【0028】
図4Bは、本例メモリカード装着装置20を側面25bからみた断面図である。メモリカード装着装置20において、2段構成のバネ接点端子36a及び36bの一部を屈曲させてバネ接点37、37を形成すると共にこのバネ接点端子36a及び36bは樹脂によりモールド成形されたモールド樹脂部26の一方の面26bの端部26c縁に取付けられた可動配線部を有するフレキシブル基板27に接続されている。
【0029】
図4Aは、本例メモリカード10を側面15bから見た断面図である。30は従来から内蔵されているメモリであり30aは新しく増設されたメモリである。このメモリカード10の接点部16が設けられている一方の面13aの反対側の面13bを上側にして端部14aからメモリカード装着装置20に挿入する。
【0030】
図5にメモリカード装着装置20にメモリカード10を装着した状態を示す。メモリカード装着装置20のスロット部21の挿入口から挿入されたメモリカード10を所定の位置まで挿入しメモリカード装着装置20に装着する。このときメモリカード10の2段構成の接点部16a及び16bの表面は、それぞれメモリカード装着装置20のバネ接点37、37がバネ接点端子36a及び36bのバネ作用により圧接された状態で摺動され、その後この圧接された状態が保持され電気的接続が得られる。そしてこのバネ接点37、37から接点端子36a及び36bを通じてモールド樹脂部26を介してフレキシブル基板27に接続され、このフレキシブル基板27の可動配線部の先に接続されている電子機器(図示せず)に内蔵された制御手段と信号の送受信を行うことができる。
【0031】
また、メモリカード10をスロット部21の挿入口から抜き出す際には、メモリカード10の2段構成の接点部16a及び16bの表面は、それぞれメモリカード装着装置20のバネ接点37、37がバネ接点端子36a及び36bのバネ作用により圧接された状態で摺動された後、バネ接点37、37との接触から開放される。
【0032】
このように、メモリカード10はその使用のたびに、メモリカード装着装置20への挿抜が行われ、メモリカード10の接点部16a及び16bの表面はバネ接点37、37により摺動される。本発明のメモリカード10は、その接点部16a及び16bを図1の構成からなる耐摩耗性及び耐食性に優れた電気接点としていることにより、1日に何回もメモリカード装着装置20への挿抜が繰り返して行われる場合であっても接点部16a及び16bは良好な状態が保たれ、長期使用が可能である。
【0033】
次に、本発明に係るモバイル情報端末機器及び充電器について説明する。
図6は、本発明のモバイル情報端末機器の一態様である携帯電話機の構成を示す概略図である。なお、以降に各図において矢印で示す、U方向、D方向、L方向、R方向、F方向、B方向は、それぞれ、上方、下方、左方、右方、前方、後方を意味するものとする。また、本明細書において示す上記方向性は、携帯電話機40及び充電器60を本明細書において説明するための便宜上のものである。
【0034】
図6に示すように、携帯電話機40は、ほぼ同等の大きさのほぼ薄箱状を呈する操作部本体41及び表示部本体42と、これら操作部本体41と表示部本体42とを相対する一側部において回転自在に組み合わせるヒンジ部43とからなる。この基本的な構成は従来の携帯電話機と同様である。
【0035】
また、携帯電話機40は、未使用時において、操作部本体41と表示部本体42とがヒンジ部43を介して互いに重ね合わされるようにして折り畳まれた状態で携帯される。携帯電話機40は、通話時や電子メール操作等の使用時において、図6に示すようにこれら操作部本体41と表示部本体42とがヒンジ部43を介して展開された状態で用いられる。
【0036】
操作部本体41は、折畳み状態において表示部本体42と対向する一方の主面を操作面41aとし、この操作面41aに図6に示すように、テンキー44、ジョグダイヤル45、各種機能ボタン46が設けられている。操作部本体41には、操作面41aのヒンジ部43と反対側の自由端側に位置して図示しないマイクロホンが内蔵された送話部47が設けられている。
【0037】
携帯電話機40には、操作部本体41内に充電可能な二次電池パックなどのバッテリが収納されており、各部に対して電源の供給が行われる。
【0038】
また、操作部本体41には、その操作面41aのヒンジ部43と反対側の自由端側の側面に、前記二次電池パックに対する充電を行うための充電用端子部48が設けられている。
【0039】
充電端子部48は、操作部本体41の自由端側面に形成された扁平な凹部49の底面にそれぞれ充電用電気接点48a、48aが露出するように構成されている。この電気接点48a、48aは図1に示す電気接点の構成で形成されている。
【0040】
操作部本体41には、ヒンジ部43側の側面であって、その左端に伸縮自在なロッドアンテナを収納したアンテナ部50が設けられ、また、そのほぼ中央に充電器60の係止爪67が係止する係止穴(図示せず)が形成されている。
【0041】
図7は、本発明のモバイル情報端末機器の充電器の一態様である携帯電話機用充電器の構成を示す概略図である。
充電器60は、前後方向に長くやや肉厚な平板状をした本体部62と該本体部62の後端側の左右角部に上方へ向かって突設された2つの支持柱63、63と本体部62の前端側の左右中央部に上方へ向かって突設された係止凸部64とから成り、本体部62の内部に充電回路(図示せず)を備えて成る。
【0042】
上記2つの支持柱63、63と係止凸部64との前後方向の間の間隔は、当該充電器60により充電するもの(携帯電話機40)の前後方向の長さとほぼ同じに形成されており、これら2つの支持柱63、63及と係止凸部64とで、当該充電器60における携帯電話機40の装着部65を構成する。
【0043】
充電器60の上記2つの支持柱63、63の前方を向いた面には、外部電源と接続される充電端子66、66が突設されている。この充電端子66、66は図1に示す電気接点の構成で形成されている。
【0044】
係止凸部64のほぼ中央部には後方に向かって係止爪67が設けられており、該係止爪67は当該充電器60により充電するもの(携帯電話機40)に設けられた係止穴に係止して携帯電話機40の位置決めをするようになっている。
【0045】
前記携帯電話機40は次のようにして充電器60に装着され充電が為される。
先ず、携帯電話機40を折り畳んだ状態で、これを傾斜させて充電端子部48の電気接点48a、48aを充電器60の充電端子66、66に接触させる(図8)。次に、上記充電端子部48側を支点として携帯電話機40をそのヒンジ部43側が下方へ行くように回動させる。これに伴い、電気接点48a、48aと充電端子66、66とは一定の圧力がかかった状態でお互いの表面を摺動するようになる。
【0046】
そして、携帯電話機20のヒンジ部23側に形成された係止穴31を充電器1の係止爪7に係止させる。
【0047】
これにより、携帯電話機20は折り畳まれた状態でかつ水平な状態となって充電器1に装着され、電気接点48a、48aと充電端子66、66とは電気的接続のある状態で保持される(図9)。
【0048】
また、携帯電話機40を充電器60から外す場合には装着の場合と逆の操作が行われる。このときにも、電気接点48a、48aと充電端子66、66とは一定の圧力がかかった状態でお互いの表面を摺動した後、その接触が開放される。
【0049】
このように、携帯電話機40はその充電のたびに、充電器60への着脱が行われ、携帯電話機40の電気接点48a、48aと、充電器60の充電端子66、66とはお互いの表面を摺動する。本発明の携帯電話機40の電気接点48a、48a及び充電器60の充電端子66、66は、図1の構成からなる耐摩耗性及び耐食性に優れた電気接点とされていることにより、1日に何回も充電が繰り返して行われる場合であっても電気接点48a、48a及び充電端子66、66は良好な状態が保たれ、長期使用が可能である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施した例を示す。
(実施例1)
図2,図3に示す構成のメモリカードサンプルを作製した。なお、接点部16a,16bの電気接点の構成は以下の通りとした。
・電極基材1:銅板
・Niめっき層2:膜厚3μmを電気めっき法で形成した。
・Pd−Ni合金めっき層3:膜厚1μm、Pd:Ni重量比80:20を電気めっき法で形成した。
・Co含有Auめっき層4:膜厚0.03μm、Co含有率0.3%を電気めっき法で形成した。
【0051】
(比較例1)
実施例1において、Pd−Ni合金めっき層3を省略し、Co含有Auめっき層4に代えて膜厚0.5μmのAuめっき層とし、それ以外は実施例1と同じ条件でメモリカードサンプルを作製した。
【0052】
(比較例2)
実施例1において、Niめっき層2の膜厚を4μm、Co含有Auめっき層4に代えて膜厚0.03μmのAuめっき層とし、それ以外は実施例1と同じ条件でメモリカードサンプルを作製した。
【0053】
(比較例3)
実施例1において、Niめっき層2の膜厚を1.5μm、Pd−Ni合金めっき層3のPd:Ni重量比を50:50、Co含有Auめっき層4の膜厚を0.5μmとし、それ以外は実施例1と同じ条件でメモリカードサンプルを作製した。
【0054】
得られたサンプルを用いて、以下に示す挿抜試験及び混合ガス腐食試験による劣化試験を行った。
(1)挿抜試験
図4,図5に示したメモリカード装着装置20への挿抜を12000回繰り返す試験を行った。このときの接点圧力は0.5Nであった。
(2)混合ガス腐食試験
ついで、挿抜試験後のサンプルについて、二酸化硫黄ガス:10ppm、二酸化窒素ガス:10ppm、温度:40℃、湿度:75%RHの環境下に48時間暴露する混合ガス腐食試験を行った。
【0055】
前記劣化試験を行った後の実施例1、比較例1〜3の接点部16a,16bの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。それぞれの結果を図10〜図13に示す。
【0056】
実施例1では、挿抜試験にてバネ接点と擦れた部分(摺動部)における明確な摺動痕が見られず、ほとんど摩耗を受けていなかった(図10)。また、腐食も発生していなかった。
これに対して、比較例1では摺動部におけるめっき層の削れが大きく、激しく腐食されている状態(図中黒色部分)が確認された(図11)。また、比較例2では摺動部におけるめっき層の削れがあり、かなり腐食されている状態が確認された(図12)。Auめっき層中にCoを含有していないために耐摩耗性が低下したことによると考えられる。さらに、比較例3ではCo含有Auめっき層4の膜厚が0.5μmあるにも関わらず、摺動部における腐食が認められた(図13)。
【0057】
つぎに、前記劣化試験前後における、実施例1、比較例1の接点部16a,16bについて印加電流と電圧との関係を調査した。それぞれの結果を図14,図15に示す。
実施例1では劣化試験前後で電流と電圧との関係にほとんど差がなく、良好な金属接点であることが分かる(図14)。これに対して、比較例1では劣化試験後に電圧上昇、すなわち接触抵抗値の増加が認められた(図15)。
【0058】
(比較例4〜8)
市販されている各種メモリカード(5種)を比較例4〜8のサンプルとして、前記劣化試験を行い、印加電流と電圧との関係を調査した。なお、挿抜試験ではそれぞれのサンプルについて、接点圧力が0.5Nとなるようにした。
【0059】
また、比較例4〜8のサンプルの接点部についてめっき層構成を分析したところ、すべてAu/Niの2層構造であり、それぞれの膜厚は次の通りであった。
・比較例4:Niめっき層=6.92μm、Auめっき層=0.58μm
・比較例5:Niめっき層=9.50μm、Auめっき層=1.08μm
・比較例6:Niめっき層=3.33μm、Auめっき層=1.67μm
・比較例7:Niめっき層=13.00μm、Auめっき層=2.50μm
・比較例8:Niめっき層=11.70μm、Auめっき層=1.83μm
【0060】
その結果を図16に示す。ここでは、接点に電流Mを流した時に得られる電圧yの平均値と、実データとのばらつきの関係をSN比として求め、その値に65dbを加算したものを示している。
実施例1は、比較例4〜8と比べて少なくとも5db以上(信頼性で4倍以上)耐食性及び耐摩耗性に優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明で使用する電気接点の構成を示す断面図である。
【図2】本発明のメモリカードの構成例を示す概略図(1)である。
【図3】本発明のメモリカードの構成例を示す概略図(2)である。
【図4】メモリカード装着装置にメモリカードを挿入する状態を示す断面図である。
【図5】メモリカード装着装置にメモリカードを装着した状態を示す断面図である。
【図6】本発明のモバイル情報端末機器(携帯電話機)の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の充電器の構成を示す概略図である。
【図8】充電器にモバイル情報端末機器(携帯電話機)を装着する途中段階の状態を示す断面図である。
【図9】充電器にモバイル情報端末機器(携帯電話機)を装着した状態を示す断面図である。
【図10】実施例1の劣化試験後の表面状態を示す図である。
【図11】比較例1の劣化試験後の表面状態を示す図である。
【図12】比較例2の劣化試験後の表面状態を示す図である。
【図13】比較例3の劣化試験後の表面状態を示す図である。
【図14】実施例1の劣化試験前後の電流−電圧の関係を示す図である。
【図15】比較例1の劣化試験前後の電流−電圧の関係を示す図である。
【図16】実施例1及び比較例4〜8の評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・電極基材、2・・・Niめっき層、3・・・Pd−Ni合金めっき層、4・・・Co含有Auめっき層、6・・・電気接点、10・・・メモリカード、12・・・メモリ格納用凸部、12a・・・ラベル貼り付け面、12b・・・引っ掛かり用凸部、12c・・・ラベル、13a,13b・・・面、14a,14b・・・端部、15a,15b・・・側面、16,16a,16b・・・接点部、17・・・仕切り、18・・・間隔、19・・・凹部、19a・・・曲面部、1a・・・固定用凹部、20・・・メモリカード装着装置、21・・・スロット部、22・・・開口部、25・・・金属板、26・・・モールド樹脂部、30,30a・・・メモリ、36a,36b・・・バネ接点端子、37・・・バネ接点、40・・・モバイル情報端末機器(携帯電話機)、41・・・操作部本体、42・・・表示部本体、43・・・ヒンジ部、44・・・テンキー、45・・・ジョグダイヤル、46・・・各種機能ボタン、47・・・送話部、48・・・充電端子部、48a,48b・・・充電用電気接点、49…凹部、50・・・アンテナ部、60・・・充電器、62・・・本体部、63・・・支持柱、64・・・係止凸部、65・・・装着部、66・・・充電端子、67・・・係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ接点を有する機器に挿入して使用するメモリカードにおいて、電極基材上に、膜厚1〜3μmのNiめっき層、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層が順次積層されてなる電気接点と、フラッシュメモリ素子とを備え、前記機器への挿入の際に前記電気接点がバネ接点と接触することを特徴とするメモリカード。
【請求項2】
電源となる充電可能なバッテリと、該バッテリに接続される電極基材上に、膜厚1〜3μmのNiめっき層、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層が順次積層されてなる充電用電気接点とを備えることを特徴とするモバイル情報端末機器。
【請求項3】
モバイル情報端末機器に充電をする充電器であって、
外部電源と接続される電極基材の前記モバイル情報端末機器の充電用電気接点と接触する部分に、膜厚1〜3μmのNiめっき層、膜厚0.2〜1μmのPd−Ni合金めっき層、膜厚0.03〜0.05μmのCo含有Auめっき層が順次積層されてなる電気接点を備えることを特徴とする充電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−252862(P2006−252862A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65436(P2005−65436)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】