メモリカードソケット
【課題】メモリカードの取出操作の開始を確実に検出できる小型で部品点数の少ないメモリカードソケットを提供する。
【解決手段】ソケットAは、ソケット本体内に前後方向に移動自在に配置され、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダー6と、スライダー6を前方に付勢するコイルばね7と、スライダー6が最後部位置まで移動した状態で押力が解除されるとスライダー6を所定位置でロックし、該ロック後にスライダー6が後方へ押されるとロックを解除するロック機構36(ハートカム溝部30及びカムピン8など)と、ロック状態でメモリカードのI/O接触面に接触するI/OコンタクトC1〜C8と、ロック状態のスライダー6が後方へ押されるとロック解除位置付近でI/O接触面に接触するトリガーコンタクトC9と、各コンタクトC1〜C11を保持してソケット本体内の後部に配置される基台4を備える。
【解決手段】ソケットAは、ソケット本体内に前後方向に移動自在に配置され、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダー6と、スライダー6を前方に付勢するコイルばね7と、スライダー6が最後部位置まで移動した状態で押力が解除されるとスライダー6を所定位置でロックし、該ロック後にスライダー6が後方へ押されるとロックを解除するロック機構36(ハートカム溝部30及びカムピン8など)と、ロック状態でメモリカードのI/O接触面に接触するI/OコンタクトC1〜C8と、ロック状態のスライダー6が後方へ押されるとロック解除位置付近でI/O接触面に接触するトリガーコンタクトC9と、各コンタクトC1〜C11を保持してソケット本体内の後部に配置される基台4を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDメモリカード(登録商標)やマルチメディアカード(MMC)やマイクロSDカード(登録商標)のようなメモリカードやSDメモリカードと同様の大きさおよび端子配列を有するSDIOカード(登録商標)を挿抜自在に接続するためのメモリカードソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のメモリカードソケットとして、前面に開口したカード挿入口を通してメモリカードがスライドして挿抜されるソケット本体と、ソケット本体の内部に前後方向に移動自在に配置され、カード挿入口から挿入されたメモリカードの先端側と衝合し、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダーと、スライダーを前方方向へ常時付勢する付勢ばねと、スライダーが最後部位置まで移動した状態でメモリカードの押力が解除されるとスライダーを所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードへの押力が加わってスライダーが後方移動するときにロックを解除するロック機構と、ロック機構によりスライダーがロックされた状態でメモリカードの一面に設けた複数のI/O接触面にそれぞれ接触する複数のI/Oコンタクトとを備えたものが従来提供されていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されるメモリカードソケットでは、メモリカードが挿入されたことを検知するために、メモリカードの挿抜に伴ってカード挿入口側の非検出位置と奥側の検出位置との間で回動する可動アームと、可動アームの回動に応じてオン/オフする接点とを設けてある。そして、メモリカードの非装着時に可動アームが非検出位置に移動すると、接点がオンになり、カード装着時にメモリカードによって可動アームが押され検出位置まで移動すると、接点がオフになるので、接点のオン/オフ状態からメモリカードが装着されているか否かを検出することができる。
【0004】
ところで、メモリカードソケットに装着されたメモリカードにホスト機器からデータを書き込んでいる途中で、メモリカードソケットからメモリカードが取り出されると、データが破壊されたり消去される可能性があるため、メモリカードの取り出し操作を検出した場合は、メモリカードへのデータ書き込みを停止する必要がある。
【0005】
しかしながら、上述のメモリカードソケットが備えるカード検出機構(可動アームおよび接点からなる)は、メモリカードが装着されているか否かを検出するものであり、スライダーのロックが解除された後、スライダーが前方方向へ移動する途中で接点がオフからオンに切り替わっていた。したがって、接点がオフからオンに反転したことから、カードの取り出し操作を検出した時点より、コンタクトがI/O接触面から離れるまでの時間が数m秒〜数十m秒と短く、ホスト機器によるデータの書き込み停止処理が間に合わずに、データが破壊されたり消去される可能性があった。
【0006】
そこで、メモリカードソケットに、カードの取り出し操作を検出するためのスイッチを設け、取り出し操作を開始する時点でメモリカードの取り出し操作を検出することによって、コンタクトがI/O接触面から離れるまでの間に、メモリカードへのデータ書き込みを停止させるようにしたものも従来提供されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−94507号公報
【特許文献2】特開2000−285204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献2に示されるメモリカードソケットでは、メモリカードの取り出し操作を開始する時点でメモリカードの取り出しを検出しているので、コンタクトがI/O接触面から離れるよりも前にメモリカードへの書き込み処理を停止することが可能であるが、カードの取り出し操作を検出するためにマイクロスイッチを追加しているため、部品点数が増加し、それによってソケット全体の大きさが大型化するという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、メモリカードの取り出し操作が開始されたことを確実に検出できる小型で部品点数の少ないメモリカードソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、前面に開口したカード挿入口を通してメモリカードがスライドして挿抜されるソケット本体と、ソケット本体の内部に前後方向に移動自在に配置され、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダーと、スライダーを前方方向へ常時付勢する付勢ばねと、スライダーが最後部位置まで移動した状態でメモリカードの押力が解除されるとスライダーを所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードへの押力が加わってスライダーが後方移動するときにロックを解除するロック機構と、ロック機構によりスライダーがロックされた状態でメモリカードの一面に設けた複数のI/O接触面にそれぞれ接触する複数のI/Oコンタクトと、ロック状態ではI/O接触面に接触せず、ロック状態のスライダーを後方へ押した際にロック状態の解除位置付近で、I/O接触面に電気的に接触する取り出し操作検知用のトリガーコンタクトと、I/Oコンタクト及びトリガーコンタクトを保持してソケット本体内の後部に配置される基台とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、トリガーコンタクトが接触するI/O接触面は、Vss端子用のI/O接触面であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、トリガーコンタクトと同じI/O接触面に接触するI/Oコンタクトは、トリガーコンタクトと幅方向に並べて配置され、トリガーコンタクトよりも前方の部位でトリガーコンタクト側に曲げられたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの発明において、トリガーコンタクトが複数設けられ、複数のトリガーコンタクトは、カード挿抜方向において互いに異なる位置でI/O接触面に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、プッシュオン・プッシュオフ型のロック機構を備えるメモリカードソケットにおいて、メモリカードの取り出し時にメモリカードを後方へ押すことによって、スライダーがロック位置からロック解除位置まで移動すると、トリガーコンタクトがI/O接触面に電気的に接触するので、ロック解除位置で取り出し操作の開始を検出でき、ロック状態の解除後スライダーが前方方向へ移動する途中で取り出し操作を検出するメモリカードソケットに比べて早い段階で取り出し操作を検出できるから、I/OコンタクトがメモリカードのI/O接触面から離れるまでの間にデータ書き込み処理を停止させることができ、データが破壊されたり消去されるのを防止することができる。しかも、請求項1の発明によれば、ロック解除位置付近でI/O接触面と接触するトリガーコンタクトによって、メモリカードの取り出し操作を検知しており、このトリガーコンタクトはI/Oコンタクトと共に基台に保持されているので、別途マイクロスイッチを追加する場合に比べて部品点数を少なくでき、メモリカードソケットの小型化を図ることもできる。
【0014】
請求項2の発明によれば、トリガーコンタクトがVss端子用のI/O接触面に接触すると、トリガーコンタクトの電圧レベルがグランドレベルとなるので、トリガーコンタクトの電圧レベルの変化から、メモリカードの取り出し操作が開始されたことを検出することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、当該トリガーコンタクトと同じI/O接触面に接触するI/Oコンタクトは、トリガーコンタクトよりも前方部位でトリガーコンタクト側に曲げられているので、トリガーコンタクトと反対側にある他のI/Oコンタクトとの間隔を広げることができ、その結果、他のI/Oコンタクトとの短絡を防止しつつ、I/O接触面と接触する部位の幅寸法を広げることができ、電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、複数のトリガーコンタクトを、カード挿抜方向において互いに異なる位置でI/O接触面と接触させているので、複数のトリガーコンタクトの検知状態をもとにメモリカードの取り出し操作が開始されたことを確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。尚、以下の説明では特に断りが無いかぎり、図1中の矢印a−bを上下方向、矢印c−dを左右方向、矢印e−fを前後方向として説明を行う。
【0018】
本実施形態のメモリカードソケット(以下、ソケットと略称す。)Aは、マイクロSDカードのようなメモリカードが挿抜自在に接続されるソケットであり、ベースシェル1及びカバーシェル2からなるソケット本体3と、複数のI/OコンタクトC1〜C8、取り出し操作検知用のトリガーコンタクトC9及びカード装着検知用の検知コンタクトC10,C11を樹脂製の基台4に保持させて構成されるコンタクトブロック5と、スライダー6と、コイルばね(付勢ばね)7と、カムピン8と、ロックばね9と、検知レバー10と、弾性を有する導電性金属により形成されたトーションばね11とを主要な構成として備える。
【0019】
ベースシェル1は、例えば厚さが極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、矩形板状の主片1aの左右両側部を上側に折り曲げて側片1b,1cを形成したものであり、上側及び前後両側が開放されている。
【0020】
ベースシェル1の主片1aの左側部および後部には上側に突出する複数個(例えば3個)の突出片12が折り曲げ形成されており、これらの突出片12を後述する基台4下面の圧入溝(図示せず)に圧入することで、ベースシェル1の上面に基台4が圧入固定されるようになっている。尚、主片1aの後端よりやや前方には、コンタクトブロック5に保持されるコンタクトC1〜C8及びトリガーコンタクトC9を逃がすための貫通孔13が複数形成されている。また主片1aの前側縁の右端には、メモリカードMCの通過位置よりも外側位置(右側)から上側方向へ突出する抜止片14が折り曲げ形成されている。また主片1aの右側部には、スライダー6の下面に設けた凹溝16に嵌ってスライダー6を前後方向に沿ってガイドする一対の突条15が前後方向に並んで切り起こし形成されている。
【0021】
カバーシェル2は、ベースシェル1と同様、厚さが極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、矩形板状の主片2aの後縁から下方に突出する曲げ片2bが折り曲げ形成されるとともに、主片2aの右側部の後部寄りにはカムピン8を下側に押圧する弾接ばね片17が切り起こし形成されている。このカバーシェル2は、上面にコンタクトブロック5の基台4が固定されたベースシェル1の上側に載置され、ベースシェル1とカバーシェル2との当接部位をレーザ溶接などの方法で溶接することによって、カバーシェル2がベースシェル1に固定され、前面にカード挿入口3aが開口する扁平な箱状のソケット本体3が形成される(図2参照)。
【0022】
コンタクトブロック5は平面視の形状が略L形に形成された樹脂成型品からなる基台4を備え、この基台4は、ベースシェル1及びカバーシェル2の後側辺に沿って配置されて、ソケット本体3の後面を閉塞する奥壁部4aと、奥壁部4aの左側部から前方に突出しベースシェル1の側片1bに沿って配置される横壁部4bとで構成されている。
【0023】
奥壁部4aには,導電性金属により棒状に形成された複数のI/OコンタクトC1〜C8、トリガーコンタクトC9及び検知コンタクトC10,C11が圧入或いは同時成形により両端部を前後方向に貫通させた状態で保持されている。ここにおいて、I/OコンタクトC1〜C8は、図5(a)(b)に示すようにメモリカードMCの後部(カード挿入方向における先端側)の裏面に並行形成された複数(マイクロSDカードの場合は8極)のI/OパッドP1〜P8(I/O接触面)にそれぞれ対応接触する位置に設けられ、トリガーコンタクトC9はVss端子(GND端子)用のI/OパッドP6に対応接触する位置に設けられている。また検知コンタクトC10,C11は奥壁部4aの右側寄りに保持されている。尚、各コンタクトC1〜C11の後端部は奥壁部4aの後面から後方に突出して、ホスト機器Bの回路基板(図示せず)の導体パターン又は電極に半田付けなどにより接合される端子片18となり、複数個の端子片18は略一定のピッチで幅方向に並べて配列されている。
【0024】
また奥壁部4aの右側端には、前後方向に延びる短冊状のスプリングガイド19が一体に保持されており、このスプリングガイド19にコイルばね7の一端側が挿入保持され、コイルばね7の座屈変形を防止している。
【0025】
また奥壁部4aの前面寄りの上側角には、メモリカードMCの装着時に検知レバー10が入り込む凹所20が設けられるとともに、この凹所20の上面に検知レバー10を枢支する円柱状の軸21が突設されている。検知レバー10は一端側に設けた軸孔10a内に軸21を差し込むことによって、奥壁部4aに回動自在に枢支されている。また軸21には検知レバー10と共にトーションばね11が挿入されており、図3に示すようにトーションばね11の一方の端部11aを検知コンタクトC10の係止溝22に係合させるとともに、他方の端部11bを検知レバー10の引掛片10bに引掛係止させることによって、検知レバー10が軸21を中心として図4中左回りに付勢され、メモリカードMCが装着されていない状態では、検知レバー10の先端部10cがカード挿入口3a側に突出している。
【0026】
また基台4の横壁部4bには、カード挿入方向に沿って延び、メモリカードMCの裏面と対向する段部24が設けられている。
【0027】
スライダー6は合成樹脂成型品であって、下面に設けた凹溝16をベースシェル1の突条15,15に係合させることによって、前後方向に移動自在となっている。またスライダー6の後部裏面には、コイルばね7の前端側が挿入される凹溝28が設けられ、コイルばね7によって常時前方(カード挿入方向と反対側)に付勢されている。
【0028】
またスライダー6の上面には、メモリカードMCの片側の先端寄りに設けた切欠部101(図5参照)に衝合する突出壁25が突設されている。スライダー6の上面において、突出壁25よりもカード挿入方向と反対側の部位には、略U字形に形成されたロックばね9を収める収納凹所26が形成されており、収納凹所26の周壁26aに設けた切欠部27を通して、ロックばね9の一側片に設けた係止爪9aがカード収納空間側に突出し、メモリカードMCの片側縁に設けたロック用凹所102と係合するようになっている。
【0029】
また更にスライダー6の上面には、一方の軸部8aが基台4の上面に設けた軸孔29に回動自在に軸支されたカムピン8の他方の軸部8bを所定経路で案内するハートカム溝部30が形成されている。ハートカム溝部30は、平面視の形状がハート形のハートカム31と、ハートカム31の周部に形成されたガイド溝32とで構成され、ガイド溝32の底面には軸部8bを所定経路で移動させるために適宜段差を設けてある。そして、カムピン8の軸部8bをコイルばね7の付勢力或いはメモリカードMCの押し込み力によってガイド溝32の周壁に押し当てるとともに、カバーシェル2に設けた弾接ばね片17によって軸部8bをガイド溝32の底面に押し当てることで、スライダー6の前後移動に伴って、ガイド溝32とこのガイド溝32の底面に形成した凹凸面とで、軸部8bのガイド溝32内での相対的な移動がガイドされ、軸部8bが所定経路でガイド溝32内を移動するようになっている。尚、ハートカム31の前部には、前側に開放された凹部33が形成されており、スライダー6が最後部位置へ移動した後、メモリカードMCの押力が解除された際に、カムピン8の軸部8bが凹部33に嵌り込むことで、スライダー6の前方方向への移動が規制され、スライダー6が所定位置でロックされるようになっている。ここにおいて、ハートカム溝部30及びカムピン8などから、スライダー6が最後部位置まで移動した状態でメモリカードMCの押力が解除されるとスライダー6を所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードMCへの押力が加わってスライダー6が後方移動するときにロックを解除するプッシュオン・プッシュオフ型のロック機構36が構成される。
【0030】
このソケットAを組み立てるに当たっては、コンタクトC1〜C11を圧入或いは同時成形により一体に保持させたコンタクトブロック5の基台4をベースシェル1の上面に載置し、ベースシェル1の突出片12を基台4の下面に設けた圧入溝に圧入することによって、基台4をベースシェル1上に固定する。そして、基台4に一体に保持されたスプリングガイド19にコイルばね7の後端部を挿入した状態で、コイルばね7の他端側をスライダー6の下面の凹溝28内に挿入させるとともに、ベースシェル1の突条15をスライダー6下面の凹溝16内に挿入させるようにして、スライダー6をベースシェル1上に載置した後、カムピン8の一方の軸部8aを基台4の軸孔29に係入させるとともに、他方の軸部8bをハートカム溝部30のガイド溝32に係入させる。また基台4の軸21にトーションばね11を挿入して、トーションばね11の一方の端部11aを検知コンタクトC10の係止溝22に係止させるとともに、他方の端部11bを検知コンタクトC11に設けたばね受け片23と当接させた後、軸21に検知レバー10を枢支させて、検知レバー10の引掛片10bをトーションばね11の他方の端部11bに引掛係止させる。その後、ベースシェル1の両側片1b,1cの先端部間にカバーシェル2を橋架する形で載置し、ベースシェル1とカバーシェル2との当接部位をレーザ溶接等の方法で接合することで、前部にカード挿入口3aが開口した箱状のソケット本体3が形成され、ソケットAの組立が完了する。尚、この状態ではスライダー6が前端位置まで移動しており、スライダー6の移動に伴って、カムピン8の軸部8bがガイド溝32の後端の位置A(図4参照)に移動している。
【0031】
次に、ソケットAにメモリカードMCを挿抜する際の動作について説明する。メモリカードMCが装着されていない状態では、コイルばね7の弾発力を受けて、前端部が抜止片14と衝合する位置までスライダー6が前方方句に移動している。また検知レバー10は、トーションばね11の弾発力を受けて図4中左回りに回転し、後端部が凹所20の前端面に当接する位置で停止しており、この状態ではトーションばね11の端部11bが検知コンタクトC11のばね受け片23に接触しているので、検知コンタクトC10,C11間がトーションばね11を介して導通(ON)している(カード非検知状態)。
【0032】
この状態からメモリカードMCを前後方向及び表裏方向を正規の方向に向けてカード挿入口3aからソケット内部に挿入すると、メモリカードMCがスライダー6と基台4の横壁部4bとの間に挿入されて、メモリカードMCの裏面が、横壁部4bおよびスライダー6にそれぞれ設けた段部24,34の上側に乗ることになる。そして、メモリカードMCをソケット本体3内に更に挿入すると、メモリカードMCの先端側に設けた切欠部101がスライダー6の突出壁25に衝合してスライダー6を後方へ押すとともに、スライダー6に保持されたロックばね9の係止爪9aがメモリカードMCのロック用凹所102内に係入することで、スライダー6にメモリカードMCが保持されることになる。
【0033】
その後、スライダー6に加わるコイルばね7の弾発力に抗してメモリカードMCを更に内側へ押し入れると、メモリカードMCの移動に共動してスライダー6が後退することになる。このスライダー6の後退によりカムピン8の軸部8bはガイド溝32の底面に設けた凹凸形状によってガイドされながら、ガイド溝32内を図4中の下側へ移動し、図4中の位置Bに移動することになる。そして、メモリカードMCの先端位置が基台4の奥壁部4a前面に当たる位置に近い位置までメモリカードMCを押し込むと、カムピン8の軸部8bがガイド溝32の前端部に当たる位置Cに至ることになり、それ以上の押し込みができなくなる。
【0034】
そして、この位置でメモリカードMCに加えていた押力を解除すると、コイルばね7の弾発力を受けてスライダー6がメモリカードMCと共に前方へ戻りかけるが、カムピン8の軸部8bがガイド溝32に案内されながらハートカム31の凹部33に嵌り込む位置Dまで移動することになる。従ってカムピン8の軸部8bがハートカム31の凹部33に当接することで、これ以上のスライダー6の前方移動が規制され、ロックばね9によってロックされたメモリカードMCもその位置でソケット本体3内に留まることになる。このロック位置では、図5(a)、図6及び図7(a)に示すように、コンタクトブロック5の奥壁部4aから前方に突出するI/OコンタクトC1〜C8がメモリカードMCのI/OパッドP1〜P8にそれぞれ接触することになり、ソケットAを介してホスト機器BとメモリカードMCとの間でデータの授受が行われる。尚、図7(a)〜(h)ではトリガーコンタクトC9及びその近傍にあるI/OコンタクトC5〜C7と、これらコンタクトC5〜C7,C9に対応接触するI/OパッドP5〜P7のみを図示してあり、図中の矢印は各々の位置でのメモリカードMCの移動方向を示している。また図8はロック状態のメモリカードMCを取り出す際のタイミングチャートであり、同図(a)はトリガーコンタクトC9の電圧レベルを、同図(b)は検知コンタクトC10,C11による検知/非検知状態を、同図(c)はI/OコンタクトC6のオン/オフ状態をそれぞれ示し、図8中のa〜hはそれぞれ図7の(a)〜(h)に示す位置に対応する。
【0035】
スライダー6のロック位置では図7(a)に示すようにトリガーコンタクトC9が対応するVss端子用のI/OパッドP6に接触していないので、トリガーコンタクトC9の電圧レベルはHレベルとなり(非検知状態)、ホスト機器Bのマイコン40にはトリガーコンタクトC9からHレベルの信号が入力される。またメモリカードMCがロック位置で保持された状態では、メモリカードMCの先端部で検知レバー10の先端部10cが押されて、検知レバー10が軸21を中心に図4中右回りに回転し、検知レバー10の引掛片10bによってトーションばね11の端部11bが図4中右回りに押され、検知コンタクトC11のばね受け片23から離れるので、検知コンタクトC10,C11間が非導通(OFF)になる(カード検知状態)。すなわち図8に示すように位置aではトリガーコンタクトC9の電圧レベルはHレベル(非検知状態)、検知コンタクトC10−C11間はオフ状態、I/OコンタクトC6はI/OパッドP6に接触した状態(ON状態)となっている。
【0036】
以上のようにして装着されたメモリカードMCをソケットAから取り出す際は、まずソケット本体3のカード挿入口3aより外部に露出するメモリカードMCの後部を挿入方向に押し、メモリカードMCと共にスライダー6を挿入方向へ移動させると、この移動によってカムピン8の軸部8bがハートカム31の凹部33から離脱するとともに、ガイド溝32にガイドされて凹部33より左側前方に出て、ガイド溝32内をカード挿入口3a側に移動する(実際にはスライダー6がカード挿入方向へ移動している)。そして、メモリカードMCが図7(b)に示す位置まで移動すると、メモリカードMCの移動に伴い、トリガーコンタクトC9がVss端子用のI/OパッドP6に接触するので、ホスト機器Bのマイコン40にLレベルの信号(取り出し検知信号)が入力される。なお本実施形態ではトリガーコンタクトC9が、Vss端子用のI/OパッドP6に対応接触するようになっており、常時はトリガーコンタクトC9の電圧レベルがHレベルであり、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6に接触すると、トリガーコンタクトC9の電圧レベルがグランドレベルとなるので、ホスト機器Bのマイコン40では、トリガーコンタクトC9の電圧レベルがHレベルからLレベルに変化したことを受けて、メモリカードMCの取り出し操作が開始されたことを検出することができ、この検知時にI/OコンタクトC1〜C8を介したデータの授受を停止させる処理を行っている
また、メモリカードMCを図7(b)に示す位置から更に押し込むと、カムピン8の軸部8bがガイド溝32内の前端部に当たる位置(カード押し切り位置)Eまで移動し、それ以上の挿入方向への押し込みが禁止される(図7(c)及び図8(c)参照)。
【0037】
その後、メモリカードMCに与えた押力を無くすと、スライダー6はコイルばね7の弾発力を受けて前方へ移動し、スライダー6と共にメモリカードMCが図7(d)に示す位置まで移動すると、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6から離れるので、トリガーコンタクトC9の信号レベルがLレベル(検知状態)からHレベル(非検知状態)に変化する(図8参照)。尚、この位置ではI/OコンタクトC1〜C8はそれぞれ対応するI/OパッドP1〜P8に電気的に接続され、検知コンタクトC10−C11間は非導通状態(カード検知状態)となっている。
【0038】
その後もメモリカードMCはスライダー6と共に前方方向へ移動しており、図7(e)に示すカードセット位置を通過し、図7(f)に示す位置までくると、メモリカードMCの先端部が検知レバー10の先端部10cから離れるので、検知レバー10の引掛片10bがトーションばね11の端部11bを押す力が無くなり、端部11bが検知コンタクトC11のばね受け片23に接触するので、検知コンタクトC10−C11間が導通状態(ON)となる(カード非検知状態)。またメモリカードMCが図7(g)に示す位置まで移動すると、I/OコンタクトC1〜C8の内、信号用の6本のI/OコンタクトC1〜C3,C5,C7,C8がそれぞれ対応するメモリカードMCのI/OパッドP1〜P3,P5,P7,P8から離れ、その後図7(h)に示す位置まで移動すると、電源電圧の正極側のI/OコンタクトC4(Vdd端子用)及び負極側のI/OコンタクトC6(Vss端子用)が、それぞれ、メモリカードMCのI/OパッドP4,P6から離れるので(OFF状態)、メモリカードMCへの電源供給が停止される。そして、メモリカードMCと共にスライダー6が更に前方へ移動し、カムピン8の軸部8bがハートカム31の左側のガイド溝32内の位置Fを通って、ガイド溝32の後端部の位置Aまで移動すると、メモリカードMCの後部がソケット本体3のカード挿入口3aから外部へ大きく露出するので、メモリカードMCをソケット本体3から取り出すことが可能になる。
【0039】
以上説明したように、プッシュオン・プッシュオフ型のロック機構36を備えるソケットAにおいて、ロック状態にあるメモリカードMCの取り出し時にメモリカードMCを後方へ押すことによって、スライダー6がロック位置からロック解除位置まで移動すると、トリガーコンタクトC9が対応するI/OパッドP6に電気的に接触するので、ロック解除位置付近で取り出し操作の開始を検出でき、ロック状態の解除後スライダー6が前方方向へ移動する途中で取り出し操作を検出する従来のメモリカードソケットに比べて早い段階で取り出し操作を検出できるから、I/OコンタクトC1〜C8が対応するI/OパッドP1〜P8から離れるまでの間にホスト機器Bによりデータ書き込み処理を停止させることができ、データが破壊されたり消去されるのを防止することができる。しかも本ソケットでは、ロック解除位置においてI/OパッドP6と接触するトリガーコンタクトC9によって、メモリカードMCの取り出し操作を検知しており、このトリガーコンタクトC9はI/OコンタクトC1〜C8及び検知コンタクトC10,C11と共にコンタクトブロック5の基台4に保持されているので、別途マイクロスイッチを追加する場合に比べて部品点数を少なくでき、またソケットAの小型化を図ることもできる。
【0040】
尚、上述の実施形態ではトリガーコンタクトの本数が1本であるが、カード挿抜方向において互いに異なる位置で、メモリカードMCのI/O接触面に接触する複数のトリガーコンタクトを設けても良い。図9に示す形態では、カード挿抜方向において互いに異なる位置で、Vss端子用のI/OパッドP6に接触する2本のトリガーコンタクトC9,C12を設けている。図10はロック状態のメモリカードMCを取り出す際のタイミングチャートであり、同図(a)はトリガーコンタクトC9の電圧レベルを、同図(b)はトリガーコンタクトC12の電圧レベルを、同図(c)は検知コンタクトC10,C11による検知/非検知状態を、同図(d)はI/OコンタクトC6のオン/オフ状態をそれぞれ示している。なお図10中のa〜hは、それぞれ図7の(a)〜(h)に示す位置に対応しており、位置aではトリガーコンタクトC9,C12の電圧レベルはHレベル(非検知状態)、検知コンタクトC10−C11間はオフ状態(カード検知状態)、I/OコンタクトC6はI/OパッドP6に接触した状態(ON状態)となっている。
【0041】
トリガーコンタクトC12は、トリガーコンタクトC9よりも前側の位置(カード挿入口3aに近い位置)でI/OパッドP6に接触する。したがって、図10のタイミングチャートに示されるように、ロック状態のメモリカードMCを取り外す際には、メモリカードMCが位置a(ロック状態の位置)から位置bまで押し込まれて、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6に接触するよりも前に、トリガーコンタクトC12がI/OパッドP6に接触して、その信号レベルがLレベル(検知状態)に切り替わる。また、押し込み力を解除してメモリカードMCが取出方向へ移動する際には、メモリカードMCが位置dを過ぎて、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6から離れた後も、トリガーコンタクトC12はI/OパッドP6と接触し続け、メモリカードMCが位置dから位置e(カードセット位置)に移動するまでの間にトリガーコンタクトC12がI/OパッドP6から離れて、トリガーコンタクトC12の信号レベルがHレベル(非検知状態)に切り替わる。この場合、ホスト機器Bのマイコン40は、2本のトリガーコンタクトC9,C12の信号レベルをもとに、メモリカードMCの取出操作が開始されたか否かを判断しており、トリガーコンタクトC9,C12の信号レベルが両方共にLレベルになると、取出操作が開始されたと判断することによって、ノイズ等の影響による誤検出を防止することができる。
【0042】
また、上述のソケットAでは、図12(a)に示すようにトリガーコンタクトC9と同じI/OパッドP6に接触するI/OコンタクトC6は、トリガーコンタクトC9と幅方向に並べて基台4に保持されており、このI/OコンタクトC6はトリガーコンタクトC9よりも前方(カード挿入口3a側)の部位が直線状に形成されているので、隣接するI/OコンタクトC7と短絡しないように、I/OコンタクトC6の幅寸法が他のI/Oコンタクトに比べて幅狭に形成されている。そこで、図11及び図12(b)に示すように、トリガーコンタクトC9と同じI/OパッドP6に接触するI/OコンタクトC6が、トリガーコンタクトC9よりも前方(カード挿入口3a側)の部位35でトリガーコンタクトC9側に折り曲げられるようにしても良く、折曲部位35よりも前方の部位と隣接するI/OコンタクトC7との間隔を広げることによって、I/OコンタクトC6におけるI/OパッドP6との接触部位の幅寸法が他のI/Oコンタクトと同程度の幅寸法に広げることができるから、電気的接触の信頼性を向上させることができる。
【0043】
なお上述の実施形態では、マイクロSDカードのようなメモリカードMCが接続されるソケットAについて説明したが、SDメモリカードやマルチメディアカードのようなメモリカードやSDメモリカードと同様の大きさおよび端子配列を有するSDIOカードが挿抜自在に接続されるメモリカードソケットに本発明を適用しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態のメモリカードソケットの分解斜視図である。
【図2】同上のメモリカードソケットの外観斜視図である。
【図3】同上のカバーシェルを外した状態の斜視図である。
【図4】同上のカバーシェルを外した状態の平面図である。
【図5】(a)は同上へのメモリカードの装着状態を模式的に示した説明図、(b)は押し切り位置までメモリカードを押し込んだ状態を模式的に示した説明図である。
【図6】同上のカード装着状態におけるコンタクトとI/Oパッドの位置関係を示す説明図である。
【図7】(a)〜(h)は、同上のカード装着状態からカード抜き取るまでの間のコンタクトとI/Oパッドの位置関係を示す説明図である。
【図8】(a)〜(c)は同上のカード装着状態からカードを抜き取るまでの間の各部の信号レベルを示すタイミングチャートである。
【図9】(a)(b)は同上の他の形態のコンタクト配置を模式的に示した説明図である。
【図10】(a)〜(d)は同上のカード装着状態からカードを抜き取るまでの間の各部の信号レベルを示すタイミングチャートである。
【図11】同上のまた別の形態を示し、カバーシェルを外した状態の平面図である。
【図12】(a)(b)は同上の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
A メモリカードソケット
1 ベースシェル
2 カバーシェル
3 ソケット本体
3a カード挿入口
4 基台
5 コンタクトブロック
6 スライダー
7 コイルばね(付勢ばね)
8 カムピン
30 ハートカム溝部
36 ロック機構
C1〜C8 I/Oコンタクト
C9 トリガーコンタクト
C10,C11 検知コンタクト
MC メモリカード
P1〜P8 I/Oパッド(I/O接触面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDメモリカード(登録商標)やマルチメディアカード(MMC)やマイクロSDカード(登録商標)のようなメモリカードやSDメモリカードと同様の大きさおよび端子配列を有するSDIOカード(登録商標)を挿抜自在に接続するためのメモリカードソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のメモリカードソケットとして、前面に開口したカード挿入口を通してメモリカードがスライドして挿抜されるソケット本体と、ソケット本体の内部に前後方向に移動自在に配置され、カード挿入口から挿入されたメモリカードの先端側と衝合し、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダーと、スライダーを前方方向へ常時付勢する付勢ばねと、スライダーが最後部位置まで移動した状態でメモリカードの押力が解除されるとスライダーを所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードへの押力が加わってスライダーが後方移動するときにロックを解除するロック機構と、ロック機構によりスライダーがロックされた状態でメモリカードの一面に設けた複数のI/O接触面にそれぞれ接触する複数のI/Oコンタクトとを備えたものが従来提供されていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されるメモリカードソケットでは、メモリカードが挿入されたことを検知するために、メモリカードの挿抜に伴ってカード挿入口側の非検出位置と奥側の検出位置との間で回動する可動アームと、可動アームの回動に応じてオン/オフする接点とを設けてある。そして、メモリカードの非装着時に可動アームが非検出位置に移動すると、接点がオンになり、カード装着時にメモリカードによって可動アームが押され検出位置まで移動すると、接点がオフになるので、接点のオン/オフ状態からメモリカードが装着されているか否かを検出することができる。
【0004】
ところで、メモリカードソケットに装着されたメモリカードにホスト機器からデータを書き込んでいる途中で、メモリカードソケットからメモリカードが取り出されると、データが破壊されたり消去される可能性があるため、メモリカードの取り出し操作を検出した場合は、メモリカードへのデータ書き込みを停止する必要がある。
【0005】
しかしながら、上述のメモリカードソケットが備えるカード検出機構(可動アームおよび接点からなる)は、メモリカードが装着されているか否かを検出するものであり、スライダーのロックが解除された後、スライダーが前方方向へ移動する途中で接点がオフからオンに切り替わっていた。したがって、接点がオフからオンに反転したことから、カードの取り出し操作を検出した時点より、コンタクトがI/O接触面から離れるまでの時間が数m秒〜数十m秒と短く、ホスト機器によるデータの書き込み停止処理が間に合わずに、データが破壊されたり消去される可能性があった。
【0006】
そこで、メモリカードソケットに、カードの取り出し操作を検出するためのスイッチを設け、取り出し操作を開始する時点でメモリカードの取り出し操作を検出することによって、コンタクトがI/O接触面から離れるまでの間に、メモリカードへのデータ書き込みを停止させるようにしたものも従来提供されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−94507号公報
【特許文献2】特開2000−285204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献2に示されるメモリカードソケットでは、メモリカードの取り出し操作を開始する時点でメモリカードの取り出しを検出しているので、コンタクトがI/O接触面から離れるよりも前にメモリカードへの書き込み処理を停止することが可能であるが、カードの取り出し操作を検出するためにマイクロスイッチを追加しているため、部品点数が増加し、それによってソケット全体の大きさが大型化するという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、メモリカードの取り出し操作が開始されたことを確実に検出できる小型で部品点数の少ないメモリカードソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、前面に開口したカード挿入口を通してメモリカードがスライドして挿抜されるソケット本体と、ソケット本体の内部に前後方向に移動自在に配置され、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダーと、スライダーを前方方向へ常時付勢する付勢ばねと、スライダーが最後部位置まで移動した状態でメモリカードの押力が解除されるとスライダーを所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードへの押力が加わってスライダーが後方移動するときにロックを解除するロック機構と、ロック機構によりスライダーがロックされた状態でメモリカードの一面に設けた複数のI/O接触面にそれぞれ接触する複数のI/Oコンタクトと、ロック状態ではI/O接触面に接触せず、ロック状態のスライダーを後方へ押した際にロック状態の解除位置付近で、I/O接触面に電気的に接触する取り出し操作検知用のトリガーコンタクトと、I/Oコンタクト及びトリガーコンタクトを保持してソケット本体内の後部に配置される基台とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、トリガーコンタクトが接触するI/O接触面は、Vss端子用のI/O接触面であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、トリガーコンタクトと同じI/O接触面に接触するI/Oコンタクトは、トリガーコンタクトと幅方向に並べて配置され、トリガーコンタクトよりも前方の部位でトリガーコンタクト側に曲げられたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの発明において、トリガーコンタクトが複数設けられ、複数のトリガーコンタクトは、カード挿抜方向において互いに異なる位置でI/O接触面に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、プッシュオン・プッシュオフ型のロック機構を備えるメモリカードソケットにおいて、メモリカードの取り出し時にメモリカードを後方へ押すことによって、スライダーがロック位置からロック解除位置まで移動すると、トリガーコンタクトがI/O接触面に電気的に接触するので、ロック解除位置で取り出し操作の開始を検出でき、ロック状態の解除後スライダーが前方方向へ移動する途中で取り出し操作を検出するメモリカードソケットに比べて早い段階で取り出し操作を検出できるから、I/OコンタクトがメモリカードのI/O接触面から離れるまでの間にデータ書き込み処理を停止させることができ、データが破壊されたり消去されるのを防止することができる。しかも、請求項1の発明によれば、ロック解除位置付近でI/O接触面と接触するトリガーコンタクトによって、メモリカードの取り出し操作を検知しており、このトリガーコンタクトはI/Oコンタクトと共に基台に保持されているので、別途マイクロスイッチを追加する場合に比べて部品点数を少なくでき、メモリカードソケットの小型化を図ることもできる。
【0014】
請求項2の発明によれば、トリガーコンタクトがVss端子用のI/O接触面に接触すると、トリガーコンタクトの電圧レベルがグランドレベルとなるので、トリガーコンタクトの電圧レベルの変化から、メモリカードの取り出し操作が開始されたことを検出することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、当該トリガーコンタクトと同じI/O接触面に接触するI/Oコンタクトは、トリガーコンタクトよりも前方部位でトリガーコンタクト側に曲げられているので、トリガーコンタクトと反対側にある他のI/Oコンタクトとの間隔を広げることができ、その結果、他のI/Oコンタクトとの短絡を防止しつつ、I/O接触面と接触する部位の幅寸法を広げることができ、電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、複数のトリガーコンタクトを、カード挿抜方向において互いに異なる位置でI/O接触面と接触させているので、複数のトリガーコンタクトの検知状態をもとにメモリカードの取り出し操作が開始されたことを確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。尚、以下の説明では特に断りが無いかぎり、図1中の矢印a−bを上下方向、矢印c−dを左右方向、矢印e−fを前後方向として説明を行う。
【0018】
本実施形態のメモリカードソケット(以下、ソケットと略称す。)Aは、マイクロSDカードのようなメモリカードが挿抜自在に接続されるソケットであり、ベースシェル1及びカバーシェル2からなるソケット本体3と、複数のI/OコンタクトC1〜C8、取り出し操作検知用のトリガーコンタクトC9及びカード装着検知用の検知コンタクトC10,C11を樹脂製の基台4に保持させて構成されるコンタクトブロック5と、スライダー6と、コイルばね(付勢ばね)7と、カムピン8と、ロックばね9と、検知レバー10と、弾性を有する導電性金属により形成されたトーションばね11とを主要な構成として備える。
【0019】
ベースシェル1は、例えば厚さが極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、矩形板状の主片1aの左右両側部を上側に折り曲げて側片1b,1cを形成したものであり、上側及び前後両側が開放されている。
【0020】
ベースシェル1の主片1aの左側部および後部には上側に突出する複数個(例えば3個)の突出片12が折り曲げ形成されており、これらの突出片12を後述する基台4下面の圧入溝(図示せず)に圧入することで、ベースシェル1の上面に基台4が圧入固定されるようになっている。尚、主片1aの後端よりやや前方には、コンタクトブロック5に保持されるコンタクトC1〜C8及びトリガーコンタクトC9を逃がすための貫通孔13が複数形成されている。また主片1aの前側縁の右端には、メモリカードMCの通過位置よりも外側位置(右側)から上側方向へ突出する抜止片14が折り曲げ形成されている。また主片1aの右側部には、スライダー6の下面に設けた凹溝16に嵌ってスライダー6を前後方向に沿ってガイドする一対の突条15が前後方向に並んで切り起こし形成されている。
【0021】
カバーシェル2は、ベースシェル1と同様、厚さが極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、矩形板状の主片2aの後縁から下方に突出する曲げ片2bが折り曲げ形成されるとともに、主片2aの右側部の後部寄りにはカムピン8を下側に押圧する弾接ばね片17が切り起こし形成されている。このカバーシェル2は、上面にコンタクトブロック5の基台4が固定されたベースシェル1の上側に載置され、ベースシェル1とカバーシェル2との当接部位をレーザ溶接などの方法で溶接することによって、カバーシェル2がベースシェル1に固定され、前面にカード挿入口3aが開口する扁平な箱状のソケット本体3が形成される(図2参照)。
【0022】
コンタクトブロック5は平面視の形状が略L形に形成された樹脂成型品からなる基台4を備え、この基台4は、ベースシェル1及びカバーシェル2の後側辺に沿って配置されて、ソケット本体3の後面を閉塞する奥壁部4aと、奥壁部4aの左側部から前方に突出しベースシェル1の側片1bに沿って配置される横壁部4bとで構成されている。
【0023】
奥壁部4aには,導電性金属により棒状に形成された複数のI/OコンタクトC1〜C8、トリガーコンタクトC9及び検知コンタクトC10,C11が圧入或いは同時成形により両端部を前後方向に貫通させた状態で保持されている。ここにおいて、I/OコンタクトC1〜C8は、図5(a)(b)に示すようにメモリカードMCの後部(カード挿入方向における先端側)の裏面に並行形成された複数(マイクロSDカードの場合は8極)のI/OパッドP1〜P8(I/O接触面)にそれぞれ対応接触する位置に設けられ、トリガーコンタクトC9はVss端子(GND端子)用のI/OパッドP6に対応接触する位置に設けられている。また検知コンタクトC10,C11は奥壁部4aの右側寄りに保持されている。尚、各コンタクトC1〜C11の後端部は奥壁部4aの後面から後方に突出して、ホスト機器Bの回路基板(図示せず)の導体パターン又は電極に半田付けなどにより接合される端子片18となり、複数個の端子片18は略一定のピッチで幅方向に並べて配列されている。
【0024】
また奥壁部4aの右側端には、前後方向に延びる短冊状のスプリングガイド19が一体に保持されており、このスプリングガイド19にコイルばね7の一端側が挿入保持され、コイルばね7の座屈変形を防止している。
【0025】
また奥壁部4aの前面寄りの上側角には、メモリカードMCの装着時に検知レバー10が入り込む凹所20が設けられるとともに、この凹所20の上面に検知レバー10を枢支する円柱状の軸21が突設されている。検知レバー10は一端側に設けた軸孔10a内に軸21を差し込むことによって、奥壁部4aに回動自在に枢支されている。また軸21には検知レバー10と共にトーションばね11が挿入されており、図3に示すようにトーションばね11の一方の端部11aを検知コンタクトC10の係止溝22に係合させるとともに、他方の端部11bを検知レバー10の引掛片10bに引掛係止させることによって、検知レバー10が軸21を中心として図4中左回りに付勢され、メモリカードMCが装着されていない状態では、検知レバー10の先端部10cがカード挿入口3a側に突出している。
【0026】
また基台4の横壁部4bには、カード挿入方向に沿って延び、メモリカードMCの裏面と対向する段部24が設けられている。
【0027】
スライダー6は合成樹脂成型品であって、下面に設けた凹溝16をベースシェル1の突条15,15に係合させることによって、前後方向に移動自在となっている。またスライダー6の後部裏面には、コイルばね7の前端側が挿入される凹溝28が設けられ、コイルばね7によって常時前方(カード挿入方向と反対側)に付勢されている。
【0028】
またスライダー6の上面には、メモリカードMCの片側の先端寄りに設けた切欠部101(図5参照)に衝合する突出壁25が突設されている。スライダー6の上面において、突出壁25よりもカード挿入方向と反対側の部位には、略U字形に形成されたロックばね9を収める収納凹所26が形成されており、収納凹所26の周壁26aに設けた切欠部27を通して、ロックばね9の一側片に設けた係止爪9aがカード収納空間側に突出し、メモリカードMCの片側縁に設けたロック用凹所102と係合するようになっている。
【0029】
また更にスライダー6の上面には、一方の軸部8aが基台4の上面に設けた軸孔29に回動自在に軸支されたカムピン8の他方の軸部8bを所定経路で案内するハートカム溝部30が形成されている。ハートカム溝部30は、平面視の形状がハート形のハートカム31と、ハートカム31の周部に形成されたガイド溝32とで構成され、ガイド溝32の底面には軸部8bを所定経路で移動させるために適宜段差を設けてある。そして、カムピン8の軸部8bをコイルばね7の付勢力或いはメモリカードMCの押し込み力によってガイド溝32の周壁に押し当てるとともに、カバーシェル2に設けた弾接ばね片17によって軸部8bをガイド溝32の底面に押し当てることで、スライダー6の前後移動に伴って、ガイド溝32とこのガイド溝32の底面に形成した凹凸面とで、軸部8bのガイド溝32内での相対的な移動がガイドされ、軸部8bが所定経路でガイド溝32内を移動するようになっている。尚、ハートカム31の前部には、前側に開放された凹部33が形成されており、スライダー6が最後部位置へ移動した後、メモリカードMCの押力が解除された際に、カムピン8の軸部8bが凹部33に嵌り込むことで、スライダー6の前方方向への移動が規制され、スライダー6が所定位置でロックされるようになっている。ここにおいて、ハートカム溝部30及びカムピン8などから、スライダー6が最後部位置まで移動した状態でメモリカードMCの押力が解除されるとスライダー6を所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードMCへの押力が加わってスライダー6が後方移動するときにロックを解除するプッシュオン・プッシュオフ型のロック機構36が構成される。
【0030】
このソケットAを組み立てるに当たっては、コンタクトC1〜C11を圧入或いは同時成形により一体に保持させたコンタクトブロック5の基台4をベースシェル1の上面に載置し、ベースシェル1の突出片12を基台4の下面に設けた圧入溝に圧入することによって、基台4をベースシェル1上に固定する。そして、基台4に一体に保持されたスプリングガイド19にコイルばね7の後端部を挿入した状態で、コイルばね7の他端側をスライダー6の下面の凹溝28内に挿入させるとともに、ベースシェル1の突条15をスライダー6下面の凹溝16内に挿入させるようにして、スライダー6をベースシェル1上に載置した後、カムピン8の一方の軸部8aを基台4の軸孔29に係入させるとともに、他方の軸部8bをハートカム溝部30のガイド溝32に係入させる。また基台4の軸21にトーションばね11を挿入して、トーションばね11の一方の端部11aを検知コンタクトC10の係止溝22に係止させるとともに、他方の端部11bを検知コンタクトC11に設けたばね受け片23と当接させた後、軸21に検知レバー10を枢支させて、検知レバー10の引掛片10bをトーションばね11の他方の端部11bに引掛係止させる。その後、ベースシェル1の両側片1b,1cの先端部間にカバーシェル2を橋架する形で載置し、ベースシェル1とカバーシェル2との当接部位をレーザ溶接等の方法で接合することで、前部にカード挿入口3aが開口した箱状のソケット本体3が形成され、ソケットAの組立が完了する。尚、この状態ではスライダー6が前端位置まで移動しており、スライダー6の移動に伴って、カムピン8の軸部8bがガイド溝32の後端の位置A(図4参照)に移動している。
【0031】
次に、ソケットAにメモリカードMCを挿抜する際の動作について説明する。メモリカードMCが装着されていない状態では、コイルばね7の弾発力を受けて、前端部が抜止片14と衝合する位置までスライダー6が前方方句に移動している。また検知レバー10は、トーションばね11の弾発力を受けて図4中左回りに回転し、後端部が凹所20の前端面に当接する位置で停止しており、この状態ではトーションばね11の端部11bが検知コンタクトC11のばね受け片23に接触しているので、検知コンタクトC10,C11間がトーションばね11を介して導通(ON)している(カード非検知状態)。
【0032】
この状態からメモリカードMCを前後方向及び表裏方向を正規の方向に向けてカード挿入口3aからソケット内部に挿入すると、メモリカードMCがスライダー6と基台4の横壁部4bとの間に挿入されて、メモリカードMCの裏面が、横壁部4bおよびスライダー6にそれぞれ設けた段部24,34の上側に乗ることになる。そして、メモリカードMCをソケット本体3内に更に挿入すると、メモリカードMCの先端側に設けた切欠部101がスライダー6の突出壁25に衝合してスライダー6を後方へ押すとともに、スライダー6に保持されたロックばね9の係止爪9aがメモリカードMCのロック用凹所102内に係入することで、スライダー6にメモリカードMCが保持されることになる。
【0033】
その後、スライダー6に加わるコイルばね7の弾発力に抗してメモリカードMCを更に内側へ押し入れると、メモリカードMCの移動に共動してスライダー6が後退することになる。このスライダー6の後退によりカムピン8の軸部8bはガイド溝32の底面に設けた凹凸形状によってガイドされながら、ガイド溝32内を図4中の下側へ移動し、図4中の位置Bに移動することになる。そして、メモリカードMCの先端位置が基台4の奥壁部4a前面に当たる位置に近い位置までメモリカードMCを押し込むと、カムピン8の軸部8bがガイド溝32の前端部に当たる位置Cに至ることになり、それ以上の押し込みができなくなる。
【0034】
そして、この位置でメモリカードMCに加えていた押力を解除すると、コイルばね7の弾発力を受けてスライダー6がメモリカードMCと共に前方へ戻りかけるが、カムピン8の軸部8bがガイド溝32に案内されながらハートカム31の凹部33に嵌り込む位置Dまで移動することになる。従ってカムピン8の軸部8bがハートカム31の凹部33に当接することで、これ以上のスライダー6の前方移動が規制され、ロックばね9によってロックされたメモリカードMCもその位置でソケット本体3内に留まることになる。このロック位置では、図5(a)、図6及び図7(a)に示すように、コンタクトブロック5の奥壁部4aから前方に突出するI/OコンタクトC1〜C8がメモリカードMCのI/OパッドP1〜P8にそれぞれ接触することになり、ソケットAを介してホスト機器BとメモリカードMCとの間でデータの授受が行われる。尚、図7(a)〜(h)ではトリガーコンタクトC9及びその近傍にあるI/OコンタクトC5〜C7と、これらコンタクトC5〜C7,C9に対応接触するI/OパッドP5〜P7のみを図示してあり、図中の矢印は各々の位置でのメモリカードMCの移動方向を示している。また図8はロック状態のメモリカードMCを取り出す際のタイミングチャートであり、同図(a)はトリガーコンタクトC9の電圧レベルを、同図(b)は検知コンタクトC10,C11による検知/非検知状態を、同図(c)はI/OコンタクトC6のオン/オフ状態をそれぞれ示し、図8中のa〜hはそれぞれ図7の(a)〜(h)に示す位置に対応する。
【0035】
スライダー6のロック位置では図7(a)に示すようにトリガーコンタクトC9が対応するVss端子用のI/OパッドP6に接触していないので、トリガーコンタクトC9の電圧レベルはHレベルとなり(非検知状態)、ホスト機器Bのマイコン40にはトリガーコンタクトC9からHレベルの信号が入力される。またメモリカードMCがロック位置で保持された状態では、メモリカードMCの先端部で検知レバー10の先端部10cが押されて、検知レバー10が軸21を中心に図4中右回りに回転し、検知レバー10の引掛片10bによってトーションばね11の端部11bが図4中右回りに押され、検知コンタクトC11のばね受け片23から離れるので、検知コンタクトC10,C11間が非導通(OFF)になる(カード検知状態)。すなわち図8に示すように位置aではトリガーコンタクトC9の電圧レベルはHレベル(非検知状態)、検知コンタクトC10−C11間はオフ状態、I/OコンタクトC6はI/OパッドP6に接触した状態(ON状態)となっている。
【0036】
以上のようにして装着されたメモリカードMCをソケットAから取り出す際は、まずソケット本体3のカード挿入口3aより外部に露出するメモリカードMCの後部を挿入方向に押し、メモリカードMCと共にスライダー6を挿入方向へ移動させると、この移動によってカムピン8の軸部8bがハートカム31の凹部33から離脱するとともに、ガイド溝32にガイドされて凹部33より左側前方に出て、ガイド溝32内をカード挿入口3a側に移動する(実際にはスライダー6がカード挿入方向へ移動している)。そして、メモリカードMCが図7(b)に示す位置まで移動すると、メモリカードMCの移動に伴い、トリガーコンタクトC9がVss端子用のI/OパッドP6に接触するので、ホスト機器Bのマイコン40にLレベルの信号(取り出し検知信号)が入力される。なお本実施形態ではトリガーコンタクトC9が、Vss端子用のI/OパッドP6に対応接触するようになっており、常時はトリガーコンタクトC9の電圧レベルがHレベルであり、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6に接触すると、トリガーコンタクトC9の電圧レベルがグランドレベルとなるので、ホスト機器Bのマイコン40では、トリガーコンタクトC9の電圧レベルがHレベルからLレベルに変化したことを受けて、メモリカードMCの取り出し操作が開始されたことを検出することができ、この検知時にI/OコンタクトC1〜C8を介したデータの授受を停止させる処理を行っている
また、メモリカードMCを図7(b)に示す位置から更に押し込むと、カムピン8の軸部8bがガイド溝32内の前端部に当たる位置(カード押し切り位置)Eまで移動し、それ以上の挿入方向への押し込みが禁止される(図7(c)及び図8(c)参照)。
【0037】
その後、メモリカードMCに与えた押力を無くすと、スライダー6はコイルばね7の弾発力を受けて前方へ移動し、スライダー6と共にメモリカードMCが図7(d)に示す位置まで移動すると、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6から離れるので、トリガーコンタクトC9の信号レベルがLレベル(検知状態)からHレベル(非検知状態)に変化する(図8参照)。尚、この位置ではI/OコンタクトC1〜C8はそれぞれ対応するI/OパッドP1〜P8に電気的に接続され、検知コンタクトC10−C11間は非導通状態(カード検知状態)となっている。
【0038】
その後もメモリカードMCはスライダー6と共に前方方向へ移動しており、図7(e)に示すカードセット位置を通過し、図7(f)に示す位置までくると、メモリカードMCの先端部が検知レバー10の先端部10cから離れるので、検知レバー10の引掛片10bがトーションばね11の端部11bを押す力が無くなり、端部11bが検知コンタクトC11のばね受け片23に接触するので、検知コンタクトC10−C11間が導通状態(ON)となる(カード非検知状態)。またメモリカードMCが図7(g)に示す位置まで移動すると、I/OコンタクトC1〜C8の内、信号用の6本のI/OコンタクトC1〜C3,C5,C7,C8がそれぞれ対応するメモリカードMCのI/OパッドP1〜P3,P5,P7,P8から離れ、その後図7(h)に示す位置まで移動すると、電源電圧の正極側のI/OコンタクトC4(Vdd端子用)及び負極側のI/OコンタクトC6(Vss端子用)が、それぞれ、メモリカードMCのI/OパッドP4,P6から離れるので(OFF状態)、メモリカードMCへの電源供給が停止される。そして、メモリカードMCと共にスライダー6が更に前方へ移動し、カムピン8の軸部8bがハートカム31の左側のガイド溝32内の位置Fを通って、ガイド溝32の後端部の位置Aまで移動すると、メモリカードMCの後部がソケット本体3のカード挿入口3aから外部へ大きく露出するので、メモリカードMCをソケット本体3から取り出すことが可能になる。
【0039】
以上説明したように、プッシュオン・プッシュオフ型のロック機構36を備えるソケットAにおいて、ロック状態にあるメモリカードMCの取り出し時にメモリカードMCを後方へ押すことによって、スライダー6がロック位置からロック解除位置まで移動すると、トリガーコンタクトC9が対応するI/OパッドP6に電気的に接触するので、ロック解除位置付近で取り出し操作の開始を検出でき、ロック状態の解除後スライダー6が前方方向へ移動する途中で取り出し操作を検出する従来のメモリカードソケットに比べて早い段階で取り出し操作を検出できるから、I/OコンタクトC1〜C8が対応するI/OパッドP1〜P8から離れるまでの間にホスト機器Bによりデータ書き込み処理を停止させることができ、データが破壊されたり消去されるのを防止することができる。しかも本ソケットでは、ロック解除位置においてI/OパッドP6と接触するトリガーコンタクトC9によって、メモリカードMCの取り出し操作を検知しており、このトリガーコンタクトC9はI/OコンタクトC1〜C8及び検知コンタクトC10,C11と共にコンタクトブロック5の基台4に保持されているので、別途マイクロスイッチを追加する場合に比べて部品点数を少なくでき、またソケットAの小型化を図ることもできる。
【0040】
尚、上述の実施形態ではトリガーコンタクトの本数が1本であるが、カード挿抜方向において互いに異なる位置で、メモリカードMCのI/O接触面に接触する複数のトリガーコンタクトを設けても良い。図9に示す形態では、カード挿抜方向において互いに異なる位置で、Vss端子用のI/OパッドP6に接触する2本のトリガーコンタクトC9,C12を設けている。図10はロック状態のメモリカードMCを取り出す際のタイミングチャートであり、同図(a)はトリガーコンタクトC9の電圧レベルを、同図(b)はトリガーコンタクトC12の電圧レベルを、同図(c)は検知コンタクトC10,C11による検知/非検知状態を、同図(d)はI/OコンタクトC6のオン/オフ状態をそれぞれ示している。なお図10中のa〜hは、それぞれ図7の(a)〜(h)に示す位置に対応しており、位置aではトリガーコンタクトC9,C12の電圧レベルはHレベル(非検知状態)、検知コンタクトC10−C11間はオフ状態(カード検知状態)、I/OコンタクトC6はI/OパッドP6に接触した状態(ON状態)となっている。
【0041】
トリガーコンタクトC12は、トリガーコンタクトC9よりも前側の位置(カード挿入口3aに近い位置)でI/OパッドP6に接触する。したがって、図10のタイミングチャートに示されるように、ロック状態のメモリカードMCを取り外す際には、メモリカードMCが位置a(ロック状態の位置)から位置bまで押し込まれて、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6に接触するよりも前に、トリガーコンタクトC12がI/OパッドP6に接触して、その信号レベルがLレベル(検知状態)に切り替わる。また、押し込み力を解除してメモリカードMCが取出方向へ移動する際には、メモリカードMCが位置dを過ぎて、トリガーコンタクトC9がI/OパッドP6から離れた後も、トリガーコンタクトC12はI/OパッドP6と接触し続け、メモリカードMCが位置dから位置e(カードセット位置)に移動するまでの間にトリガーコンタクトC12がI/OパッドP6から離れて、トリガーコンタクトC12の信号レベルがHレベル(非検知状態)に切り替わる。この場合、ホスト機器Bのマイコン40は、2本のトリガーコンタクトC9,C12の信号レベルをもとに、メモリカードMCの取出操作が開始されたか否かを判断しており、トリガーコンタクトC9,C12の信号レベルが両方共にLレベルになると、取出操作が開始されたと判断することによって、ノイズ等の影響による誤検出を防止することができる。
【0042】
また、上述のソケットAでは、図12(a)に示すようにトリガーコンタクトC9と同じI/OパッドP6に接触するI/OコンタクトC6は、トリガーコンタクトC9と幅方向に並べて基台4に保持されており、このI/OコンタクトC6はトリガーコンタクトC9よりも前方(カード挿入口3a側)の部位が直線状に形成されているので、隣接するI/OコンタクトC7と短絡しないように、I/OコンタクトC6の幅寸法が他のI/Oコンタクトに比べて幅狭に形成されている。そこで、図11及び図12(b)に示すように、トリガーコンタクトC9と同じI/OパッドP6に接触するI/OコンタクトC6が、トリガーコンタクトC9よりも前方(カード挿入口3a側)の部位35でトリガーコンタクトC9側に折り曲げられるようにしても良く、折曲部位35よりも前方の部位と隣接するI/OコンタクトC7との間隔を広げることによって、I/OコンタクトC6におけるI/OパッドP6との接触部位の幅寸法が他のI/Oコンタクトと同程度の幅寸法に広げることができるから、電気的接触の信頼性を向上させることができる。
【0043】
なお上述の実施形態では、マイクロSDカードのようなメモリカードMCが接続されるソケットAについて説明したが、SDメモリカードやマルチメディアカードのようなメモリカードやSDメモリカードと同様の大きさおよび端子配列を有するSDIOカードが挿抜自在に接続されるメモリカードソケットに本発明を適用しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態のメモリカードソケットの分解斜視図である。
【図2】同上のメモリカードソケットの外観斜視図である。
【図3】同上のカバーシェルを外した状態の斜視図である。
【図4】同上のカバーシェルを外した状態の平面図である。
【図5】(a)は同上へのメモリカードの装着状態を模式的に示した説明図、(b)は押し切り位置までメモリカードを押し込んだ状態を模式的に示した説明図である。
【図6】同上のカード装着状態におけるコンタクトとI/Oパッドの位置関係を示す説明図である。
【図7】(a)〜(h)は、同上のカード装着状態からカード抜き取るまでの間のコンタクトとI/Oパッドの位置関係を示す説明図である。
【図8】(a)〜(c)は同上のカード装着状態からカードを抜き取るまでの間の各部の信号レベルを示すタイミングチャートである。
【図9】(a)(b)は同上の他の形態のコンタクト配置を模式的に示した説明図である。
【図10】(a)〜(d)は同上のカード装着状態からカードを抜き取るまでの間の各部の信号レベルを示すタイミングチャートである。
【図11】同上のまた別の形態を示し、カバーシェルを外した状態の平面図である。
【図12】(a)(b)は同上の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
A メモリカードソケット
1 ベースシェル
2 カバーシェル
3 ソケット本体
3a カード挿入口
4 基台
5 コンタクトブロック
6 スライダー
7 コイルばね(付勢ばね)
8 カムピン
30 ハートカム溝部
36 ロック機構
C1〜C8 I/Oコンタクト
C9 トリガーコンタクト
C10,C11 検知コンタクト
MC メモリカード
P1〜P8 I/Oパッド(I/O接触面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口したカード挿入口を通してメモリカードがスライドして挿抜されるソケット本体と、ソケット本体の内部に前後方向に移動自在に配置され、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダーと、スライダーを前方方向へ常時付勢する付勢ばねと、スライダーが最後部位置まで移動した状態でメモリカードの押力が解除されるとスライダーを所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードへの押力が加わってスライダーが後方移動するときにロックを解除するロック機構と、ロック機構によりスライダーがロックされた状態でメモリカードの一面に設けた複数のI/O接触面にそれぞれ接触する複数のI/Oコンタクトと、ロック状態ではI/O接触面に接触せず、ロック状態のスライダーを後方へ押した際にロック状態の解除位置付近でI/O接触面に電気的に接触する取り出し操作検知用のトリガーコンタクトと、I/Oコンタクト及びトリガーコンタクトを保持してソケット本体内の後部に配置される基台とを備えたことを特徴とするメモリカードソケット。
【請求項2】
トリガーコンタクトが接触するI/O接触面は、Vss端子用のI/O接触面であることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。
【請求項3】
トリガーコンタクトと同じI/O接触面に接触するI/Oコンタクトは、トリガーコンタクトと幅方向に並べて配置され、トリガーコンタクトよりも前方の部位でトリガーコンタクト側に曲げられたことを特徴とする請求項1又は2の何れか記載のメモリカードソケット。
【請求項4】
トリガーコンタクトが複数設けられ、複数のトリガーコンタクトは、カード挿抜方向において互いに異なる位置でI/O接触面に接触することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のメモリカードソケット。
【請求項1】
前面に開口したカード挿入口を通してメモリカードがスライドして挿抜されるソケット本体と、ソケット本体の内部に前後方向に移動自在に配置され、メモリカードからの押力を受けてメモリカードとともに後方へ移動するスライダーと、スライダーを前方方向へ常時付勢する付勢ばねと、スライダーが最後部位置まで移動した状態でメモリカードの押力が解除されるとスライダーを所定位置でロックし、該ロック後にメモリカードへの押力が加わってスライダーが後方移動するときにロックを解除するロック機構と、ロック機構によりスライダーがロックされた状態でメモリカードの一面に設けた複数のI/O接触面にそれぞれ接触する複数のI/Oコンタクトと、ロック状態ではI/O接触面に接触せず、ロック状態のスライダーを後方へ押した際にロック状態の解除位置付近でI/O接触面に電気的に接触する取り出し操作検知用のトリガーコンタクトと、I/Oコンタクト及びトリガーコンタクトを保持してソケット本体内の後部に配置される基台とを備えたことを特徴とするメモリカードソケット。
【請求項2】
トリガーコンタクトが接触するI/O接触面は、Vss端子用のI/O接触面であることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。
【請求項3】
トリガーコンタクトと同じI/O接触面に接触するI/Oコンタクトは、トリガーコンタクトと幅方向に並べて配置され、トリガーコンタクトよりも前方の部位でトリガーコンタクト側に曲げられたことを特徴とする請求項1又は2の何れか記載のメモリカードソケット。
【請求項4】
トリガーコンタクトが複数設けられ、複数のトリガーコンタクトは、カード挿抜方向において互いに異なる位置でI/O接触面に接触することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のメモリカードソケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−9865(P2010−9865A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166230(P2008−166230)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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