説明

メラノサイト活性化抑制剤、及び皮膚外用剤

【課題】優れたACTH阻害作用を介してメラノサイトの活性化を阻害する作用を有するメラノサイト活性化抑制剤、並びに該メラノサイト活性化抑制剤を含有し、ストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効な皮膚外用剤の提供。
【解決手段】アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有するメラノサイト活性化抑制剤である。副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有する態様が好ましい。前記メラノサイト活性化抑制剤を含有する皮膚外用剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によるメラノサイトの活性化を阻害することができるメラノサイト活性化抑制剤、及び該メラノサイト活性化抑制剤を含有し、ストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線により生じる皮膚の色素沈着の予防及び改善を目的として、メラニンの生合成、又はそれに係わるシグナル伝達、分解機序などに着目した作用及び物質が、以下に示すように種々検討され、皮膚外用剤として利用されている。
例えば、メラニン合成の主な酵素であるチロシナーゼ阻害作用を有するものとしては、例えば、グラブリジン(特許文献1参照)などが提案されている。
また、ケラチノサイトからのメラニン産生に係わる情報伝達物質産生を阻害するものとしては、メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)産生阻害作用を有するものとして、例えば、クジン抽出物(特許文献2参照)などが提案されている。
また、エンドセリン−1(ET−1)産生阻害作用を有するものとして、例えば、β−グリチルレチン酸ステアリル(特許文献3参照)などが提案されている。
また、ケラチノサイトの代謝を促進し、メラニンの排泄を促進する作用を有するものとして、例えば、ハス胚芽抽出物(特許文献4参照)、土貝母抽出物(特許文献5参照)、ツベイモシドI(特許文献6参照)などが提案されている。
【0003】
近年、紫外線だけでなく、ストレスによっても皮膚の色素沈着が引き起こされることが報告されている(非特許文献1参照)。このようなストレスによる色素沈着は、上述した紫外線によるものとは異なり、身体がストレスを感じた際に脳下垂体前葉で産生される副腎皮質刺激ホルモン(Adrenocorticotropic Hormone:ACTH)が関与すると考えられている。このACTHは、副腎皮質に作用しステロイドホルモンの産生を促進し、身体はストレスに対して防御態勢を取る。その結果の一つが、皮膚におけるメラノサイトの活性化であると考えられている。
【0004】
前記ACTHは、メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)の前駆体であるばかりでなく、それ自体もメラニン産生を促進する性質を有しており、メラノサイト表面に存在するメラノコルチンレセプター−1に結合することでメラノサイトを活性化させると考えられている。このようなストレスによるメラノサイトの活性化は、紫外線によるメラノサイトの活性化とは異なり、ACTHによるメラノサイトの活性化が主体であるため、従来の紫外線による色素沈着の予防及び改善を目的とした皮膚外用剤では十分な効果が期待できない。
したがってストレスによる色素沈着の予防及び改善には、ACTHによるメラノサイトの活性化を阻害することが重要であると考えられる。このようなメラノサイト活性化阻害作用を有するものとして、例えば、エルカンプリ抽出物が提案されている(特許文献7参照)が、更なる安全かつ優れた効果を有するメラノサイト活性化抑制剤の提供が望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特公平6−8249号公報
【特許文献2】特開2002−29920号公報
【特許文献3】特開2004−300048号公報
【特許文献4】特開2002−68993号公報
【特許文献5】特開2006−56854号公報
【特許文献6】特開2006−56855号公報
【特許文献7】特開2005−179221号公報
【非特許文献1】神永博子、四宮達郎、日皮会誌、107(5):615−622、1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)阻害作用を介してメラノサイトの活性化を阻害する作用を有するメラノサイト活性化抑制剤、並びに該メラノサイト活性化抑制剤を含有し、ストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効な皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物から選択される少なくとも1種が、優れた副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)阻害作用を有し、該ACTH阻害作用を介して優れたメラノサイト活性化抑制作用を発揮し得、ストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効であることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするメラノサイト活性化抑制剤である。
<2> 副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有する前記<1>に記載のメラノサイト活性化抑制剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のメラノサイト活性化抑制剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、前記問題を解決でき、アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有するメラノサイト活性化抑制剤は、副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を介してメラノサイト活性化抑制作用を有する。
本発明のメラノサイト活性化抑制剤は、天然植物由来であり、ストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効であり、使用感と安全性に優れているので皮膚外用剤に配合するのに好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(メラノサイト活性化抑制剤)
本発明のメラノサイト活性化抑制剤は、アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。なお、これら抽出物は、1種単独で使用することができるが、2種以上を併用することもできる。
【0011】
ここで、前記抽出物には、アルニカ、ガイヨウ、アスパラガス、及びウスバサイシンから選択される少なくとも1種の植物を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0012】
前記アルニカは、キク科(Compositae)の植物であり、学名はArnicamontana L.である。前記アルニカの構成部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば葉、茎、花、蕾、果実、果皮、果核、地上部、全草又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中でも、花が特に好ましい。
【0013】
前記ガイヨウは、キク科(Compositae)の植物であり、学名はArtemisia princeps Pampaniniである。前記ガイヨウの構成部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば葉、茎、花、地上部、全草又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中でも、葉が特に好ましい。
【0014】
前記アスパラガスは、ユリ科(Liliaceae)の植物であり、学名はAsparagus officinalis L.である。前記アスパラガスの構成部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、茎が好ましい。
【0015】
前記ウスバサイシンは、ウマノスズクサ科(Aristolochiaceae)の植物であり、学名はAsiasarum sieboldii F.Maekawaである。前記ウスバサイシンの構成部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば葉、茎、花、根、根皮、根茎、地上部、又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中でも、根、根茎が特に好ましい。
【0016】
前記アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物の少なくともいずれかに含有されるメラノサイト活性化抑制作用、副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有する物質の詳細については不明であるが、これらの抽出物がメラノサイト活性化抑制作用、副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有し、ストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効であることは全く知られておらず、これらのことは、本発明者による新知見である。
【0017】
前記アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物の少なくともいずれかは、植物の抽出に一般に用いられる抽出方法によって、上記各植物抽出原料から、メラノサイト活性化抑制作用、及び副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有する抽出物を得ることができる。
例えば、上記各植物抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出を供することにより、メラノサイト活性化抑制作用、副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0018】
前記抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用するのが好ましい。
前記水としては、例えば純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、又はこれらに各種処理を施した水などが挙げられる。前記水に施す処理としては、例えば加熱、殺菌、滅菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化などが挙げられる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
前記親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられる。
また、2種以上の溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合には、その混合質量比は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液の場合には、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90質量部を混合することが好ましい。また、水と低級脂肪族ケトンとの混合液の場合には、水10質量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40質量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液の場合には、水10質量部に対して多価アルコール1〜90質量部を混合することが好ましい。
【0019】
本発明において、前記各抽出原料からメラノサイト活性化抑制剤を抽出するにあたって特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の装置を用いて抽出することができる。
【0020】
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、各抽出原料を投入し、必要に応じて時々攪拌しながら、30分間〜2時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物が得られる。抽出溶媒量は、抽出原料の5〜15倍量(質量比)であることが好ましい。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いる場合には、通常50〜95℃で1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いる場合には、通常40〜80℃で30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま、本発明のメラノサイト活性化抑制剤として用いることができる。
【0021】
前記各植物抽出原料からの抽出物は特有の匂いと味を有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚外用剤に配合する場合には大量に使用するものでないから、未精製のままでも実用上支障はない。
前記精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。なお、得られた抽出液はそのままでもメラノサイト活性化抑制剤として使用することができるが、濃縮物又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0022】
前記抽出物を製剤化する場合には、前記植物抽出物をデキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアー、又はその他の任意の助剤を用い、常法に従って、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化して提供することができる。また、その他の組成物(例えば、後述する皮膚外用剤等)に配合して使用できる他、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0023】
前記アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有するメラノサイト活性化抑制剤は、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、以下の本発明の皮膚外用剤に配合するのに好適である。この場合、得られた抽出液をそのまま用いることもできるが、上記各植物原料からの抽出物から製剤化したメラノサイト活性化抑制剤を配合してもよい。前記メラノサイト活性化抑制剤を皮膚外用剤に配合することによって、該皮膚外用剤に優れたメラノサイト活性化抑制作用、及び副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を付与することができる。
【0024】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、本発明の前記ACTHによるメラノサイト活性化抑制剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0025】
本発明のストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効な皮膚外用剤は、植物からの抽出物が有するメラノサイト活性化抑制作用、副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を通じて、ストレスによる色素沈着を予防、改善することができる。ただし、本発明のストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効な皮膚外用剤は、これらの用途以外にもメラノサイト活性化抑制作用、副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を発揮することに意義あるすべての用途に制限なく用いることができる。
【0026】
前記皮膚外用剤とは、皮膚に適用する各種薬剤を意味し、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品、等が含まれる。該皮膚外用剤の具体例としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプーなどが挙げられる。
【0027】
前記メラノサイト活性化抑制剤の前記皮膚外用剤に対する配合量は、特に制限はなく、皮膚外用剤の種類などに応じて適宜調整することができるが、標準的な各抽出物に換算して0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の皮膚外用剤は、上記植物からの抽出物が有するメラノサイト活性化抑制作用、副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を妨げない限り、通常の皮膚外用剤の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、抗老化剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0029】
なお、本発明のメラノサイト活性化抑制剤、及び皮膚外用剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
下記実施例及び配合実施例において使用する抽出物としては、アルニカ抽出液(丸善製薬株式会社製)、ガイヨウ抽出液(丸善製薬株式会社製)、アスパラガス抽出液(丸善製薬株式会社製)、及びウスバサイシン抽出液(W−LA、丸善製薬株式会社製)の各凍結乾燥品を用いた。
【0032】
(実施例1)
−ACTHによるメラノサイト活性化抑制作用試験−
上記の各抽出物(以下、「試料」と称することもある)について、以下のようにして、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によるメラノサイト活性化抑制作用を試験した。メラノサイトとしてB16マウスメラノーマ細胞を用い、ACTHを添加して促進されるメラノサイトの活性化を、B16マウスメラノーマ細胞のチロシナーゼ活性を指標として測定した。
まず、B16マウスメラノーマ細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり1.6×10個播種し、37℃、5%CO条件下、1日間培養した。培養終了後、下記表1〜表4に示す濃度の各試料とACTHを含む1質量%のFBS含有ダルベッコ変法イーグルMEM培地に交換し、更に2日間培養した。培地を除いた後、PBSで洗浄し、1質量%のtriton X−100/PBS溶液を50μL加え、30分間撹拌して細胞を溶解し、溶解液のチロシナーゼ活性を測定した。チロシナーゼ活性は、25μLの1質量%triton X−100/PBS細胞溶解液に0.25質量%のL−DOPA溶液を加え、37℃で6時間インキュベートし、450nmの吸光度を測定することで求めた。同様に、ACTH添加、試料無添加時のチロシナーゼ活性と、ACTH無添加、試料無添加時のチロシナーゼ活性を求めた。また、ACTH無添加、試料添加時の試験を行い、ACTHを介さずに直接上記各試料がチロシナーゼ活性に与える影響を求めた。これらの結果から、各試料について、下記数式1により、ACTHによるチロシナーゼ活性化阻害率(%)を算出した。結果を表1〜表4に示す。
【0033】
<数式1>
ACTHによるチロシナーゼ活性化阻害率(%)=
〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
ただし、前記数式1中、Aは、試料添加、ACTH添加時の波長450nmにおける吸光度を表す。Bは、試料添加、ACTH無添加時の波長450nmにおける吸光度を表す。Cは、試料無添加、ACTH添加時の波長450nmにおける吸光度を表す。Dは、試料無添加、ACTH無添加時の波長450nmにおける吸光度を表す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
表1〜表4の結果から、アルニカ抽出物、ガイヨウ抽出物、アスパラガス抽出物、及びウスバサイシン抽出物は、いずれもACTHによるチロシナーゼの活性化を特異的に阻害することが確認できた。また、アルニカ抽出物、ガイヨウ抽出物、アスパラガス抽出物、及びウスバサイシン抽出物は、いずれも高い濃度依存的なACTHによるチロシナーゼ活性化阻害率を示すことが認められた。
これらのことから、アルニカ抽出物、ガイヨウ抽出物、アスパラガス抽出物、及びウスバサイシン抽出物は、いずれもACTHによるチロシナーゼ活性化特異的阻害作用、即ち、ACTH阻害作用に基づくメラノサイト活性化抑制作用を有することが確認できた。
【0039】
(配合実施例1)
−乳液−
下記組成からなる乳液を常法により製造した。
・アルニカ抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.01g
・ホホバオイル・・・4.0g
・ラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・グリチルレチン酸ステアリル・・・0.1g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0040】
(配合例2)
−クリーム−
下記組成からなるクリームを常法により製造した。
・ガイヨウ抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.05g
・アロエエキス・・・0.1g
・流動パラフィン・・・5.0g
・サラシミツロウ・・・4.0g
・スクワラン・・・10.0g
・セタノール・・・3.0g
・ラノリン・・・2.0g
・ステアリン酸・・・1.0g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・1.5g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.0g
・油溶性甘草エキス・・・0.1g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.0g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・1.5g
・香料・・・0.1g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0041】
(配合実施例3)
−クリーム−
下記組成からなるクリームを常法により製造した。
・アスパラガス抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.05g
・エイジツエキス・・・0.1g
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール・・・2.0g
・自己乳化型モノステアリン酸グリセリン・・・5.0g
・ステアリン酸・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・スクワラン・・・12.0g
・マカダミアナッツ油・・・3.0g
・メチルポリシロキサン・・・0.2g
・香料・・・0.01g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・0.15g
・油溶性甘草エキス・・・0.1g
・1,3−ブチレングリコール・・・7.0g
・キサンタンガム・・・0.2g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0042】
(配合実施例4)
−美容液−
下記組成からなる美容液を常法により製造した。
・ウスバサイシン抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.01g
・カミツレエキス・・・0.1g
・キサンタンガム・・・0.3g
・ヒドロキシエチルセルロース・・・0.1g
・カルボキシビニルポリマー・・・0.1g
・1,3−ブチレングリコール・・・4.0g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.1g
・グリセリン・・・2.0g
・水酸化カリウム・・・0.25g
・香料・・・0.01g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・0.15g
・エタノール・・・2.0g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0043】
(配合実施例5)
−美容液−
下記組成からなる美容液を常法により製造した。
・アルニカ抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.05g
・クワエキス・・・0.1g
・カルボキシビニルポリマー・・・0.2g
・キサンタンガム・・・0.2g
・ヒアルロン酸ナトリウム・・・0.1g
・ポリエチレングリコール・・・3.0g
・グリセリン・・・6.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.1g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・0.15g
・L−アルギニン・・・0.15g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0044】
(配合実施例6)
−パック剤−
下記組成からなるパックを常法により製造した。
・ガイヨウ抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.05g
・ヨクイニンエキス・・・0.1g
・ポリビニルアルコール・・・15g
・ポリエチレングリコール・・・3g
・プロピレングリコール・・・7g
・エタノール・・・10g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・0.05g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.1g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0045】
(配合実施例7)
−洗浄用化粧水−
下記組成からなる洗浄用化粧水を常法により製造した。
・アスパラガス抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.05g
・ラベンダーエキス・・・0.1g
・1,3−ブチレングリコール・・・4.0g
・グリセリン・・・4.0g
・ジプロピレングリコール・・・2.0g
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル・・・0.7g
・エタノール・・・3.0g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.1g
・香料・・・0.001g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・0.15g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0046】
(配合実施例8)
−乳液−
下記組成からなる乳液を常法により製造した。
・ウスバサイシン抽出物(丸善製薬株式会社製)・・・0.05g
・ローズマリーエキス・・・0.1g
・モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン・・・1.0g
・テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット・・・1.5g
・親油型モノステアリン酸グリセリン・・・1.0g
・ステアリン酸・・・0.5g
・ベヘニルアルコール・・・1.5g
・パルミチン酸セチル・・・0.5g
・スクワラン・・・10.0g
・メチルポリシロキサン・・・0.5g
・香料・・・適量
・1,3−ブチレングリコール・・・7.0g
・グリチルレチン酸ステアリル・・・0.1g
・キサンタンガム・・・0.1g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のアルニカ抽出物、ガイヨウ抽出物、アスパラガス抽出物、及びウスバサイシン抽出物から選択される少なくとも1種を含有するメラノサイト活性化抑制剤は、優れたメラノサイト活性化抑制作用、及び副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有しており、ストレスによる色素沈着の予防及び改善に有効であり、例えば軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等の各種皮膚外用剤に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルニカの抽出物、ガイヨウの抽出物、アスパラガスの抽出物、及びウスバサイシンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするメラノサイト活性化抑制剤。
【請求項2】
副腎皮質刺激ホルモン阻害作用を有する請求項1に記載のメラノサイト活性化抑制剤。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載のメラノサイト活性化抑制剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【公開番号】特開2008−74777(P2008−74777A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256767(P2006−256767)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】