説明

メンブレン配線板及びその製造方法

【課題】回路パターンを構成する高導電膜の比抵抗を十分に低抵抗化することができるメンブレン配線板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のメンブレン配線板1は、基材2の表面2aに高導電銀ペーストを塗布・乾燥してなる所望の回路パターンを有する高導電膜3が形成され、この高導電膜3上に黒色膜4が形成され、この黒色膜4は、導電性インクを塗布・乾燥してなる導電性黒色膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレン配線板及びその製造方法に関し、更に詳しくは、回路パターンを構成する高導電膜の比抵抗を低抵抗化することが可能なメンブレン配線板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのフィルム状の基材に、ポリマー型銀ペーストなどの導電性ペーストをスクリーン印刷などにより印刷して所望の回路パターンを有する導電塗膜を形成したメンブレン配線板が知られている。
近年、従来のメンブレン配線板より比抵抗が低いメンブレン配線板として、酸化銀を主成分とした高導電銀ペーストを用いて高導電塗膜を形成したメンブレン配線板が提案され、実用化されている。
【0003】
この低比抵抗のメンブレン配線板は、高導電銀ペーストを約150℃という高温で乾燥(焼成)することにより、それに含まれる酸化銀粒子を還元すると同時に酸化銀粒子間に融着を生じさせて1.0×10−6Ωcm程度の比抵抗を得ている。
このメンブレン配線板は、低比抵抗、低インピーダンスという特徴を有することにより、例えば、近年注目を浴びているRF−IDタグ用のアンテナ回路基板、あるいはコイルを実装したICカード用の回路基板等の用途に広がりを見せている。このため、生産量も徐々に増加しており、今後も成長が見込まれる分野である(例えば、特許文献1、2等参照)。
【特許文献1】特開2007−73837号公報
【特許文献2】特許第3961334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の低比抵抗のメンブレン配線板では、酸化銀粒子を還元すると同時に酸化銀粒子間の融着を進行させるために、高導電銀ペーストの乾燥時間を長く取る必要がある。しかしながら、通常のトンネル炉では乾燥時間を長く取るようには設計されていないので、高導電銀ペーストの乾燥時間を長く取るためには、トンネル炉を通過した後に、別途バッチ炉を用いて再度加熱する必要があり、製造工程が複雑になり、工程時間も長くなるという問題点があった。
また、例えば、RF−IDタグ用のアンテナ回路基板では、ロール状に巻いた基板材料を使用し、完成した回路基板もロール状のまま納入するために、バッチ炉を用いて加熱すること自体が不可能であり、高導電銀ペーストの特性を十分に引き出すことができないという問題点があった。
そこで、トンネル炉を通過した後に、再度トンネル炉を通過させるという方法も考えられるが、この場合、トンネル炉内の送り速度を極端に低速にするか、あるいはトンネル炉の通過回数を増やす等の処置が必要となり、実用的ではなく、現実性に乏しい。
【0005】
一方、赤外線(IR)ヒータを用いたトンネル炉は、従来の熱風循環型のトンネル炉と比べて、乾燥が効率よく進行するという特徴があり、この赤外線(IR)トンネル炉を用いて、高導電銀ペーストを乾燥することが考えられるが、この場合、次のような問題点があった。
すなわち、高導電銀ペーストは酸化銀に由来する黒色を呈しているために、赤外線(IR)を効率よく吸収し、酸化銀の還元反応を非常に効率的に進行させる。しかし、ひとたび還元反応が終了すると、この高導電銀ペーストを還元して得られた塗膜が金属光沢を呈することとなり、遠赤外線を反射してしまうこととなるために、その効果が殆ど無くなってしまい、この赤外線(IR)トンネル炉を用いても短時間で乾燥することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、回路パターンを構成する高導電膜の比抵抗を十分に低抵抗化することができるメンブレン配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るメンブレン配線板は、基材の一方の主面に高導電銀ペーストを塗布・乾燥してなる所望の回路パターンを有する高導電膜が形成されたメンブレン配線板において、前記高導電膜上に黒色膜を形成してなることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係るメンブレン配線板は、請求項1記載のメンブレン配線板において、前記黒色膜は、導電性インクを塗布・乾燥してなる導電性黒色膜であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係るメンブレン配線板は、請求項1または2記載のメンブレン配線板において、前記高導電膜の比抵抗は、1.0×10−5Ωcm以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係るメンブレン配線板の製造方法は、基材の一方の主面に高導電銀ペーストを塗布し乾燥して、所望の回路パターンの高導電塗膜を形成し、次いで、前記高導電塗膜上に黒色インクを塗布し、これら高導電塗膜及び黒色インクを赤外線にて加熱して高導電膜及び黒色膜とすることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係るメンブレン配線板の製造方法は、請求項4記載のメンブレン配線板の製造方法において、前記赤外線は、遠赤外線であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係るメンブレン配線板の製造方法は、請求項4または5記載のメンブレン配線板の製造方法において、前記黒色インクは、導電性インクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高導電銀ペーストを塗布・乾燥してなる高導電膜上に黒色膜を形成したので、回路パターンを構成する高導電膜の比抵抗を十分に低抵抗化することができ、この比抵抗の面内均一性も優れたものとなる。したがって、面内均一性に優れかつ低比抵抗の高導電膜からなる回路パターンを有するメンブレン配線板を提供することができる。
【0014】
また、高導電銀ペーストを塗布し乾燥して得られた高導電塗膜上に黒色インクを塗布し、これら高導電塗膜及び黒色インクを赤外線にて加熱して高導電膜及び黒色膜とするので、面内均一性に優れかつ低比抵抗の高導電膜からなる回路パターンを有するメンブレン配線板を、短時間の赤外線加熱という工程を加えるだけで容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のメンブレン配線板及びその製造方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態のメンブレン配線板を示す断面図である。
図において、1はメンブレン配線板であり、基材2と、この基材2の表面(一方の主面)2aに形成された高導電膜3と、この高導電膜3上に形成された黒色膜4とにより構成されている。
【0017】
基材2は、柔軟性を有する絶縁性材料からなるもので、その形状はシート状、フィルム状、薄板状から用途に応じて選択使用することができる。特に、RF−IDタグ用のアンテナ回路基板、あるいはコイルを実装したICカード用の回路基板等に適用するためには、シート状あるいはフィルム状のものが好ましい。
【0018】
基材2の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの飽和ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどのプラスチックが好ましい。
また、基材2の厚みは、要求される仕様によりその厚みが決定されるが、例えば、RF−IDタグ用のアンテナ回路基板、ICカード用の回路基板等の場合、25μm〜200μmが好適である。
【0019】
高導電膜3は、高導電銀ペーストを塗布・乾燥してなる所望の回路パターンを有する低い比抵抗の膜であり、粒子状銀化合物を還元することで金属銀粒子とするとともに、これらの金属銀粒子が赤外線による加熱により融着が著しく進行したものである。
この粒子状銀化合物の平均粒径は、0.01μm以上かつ10μm以下の範囲とされており、例えば、加熱温度、還元剤の有無、還元剤の還元力等の還元反応条件に応じて適宜選択することができる。特に、平均粒径が0.5μm以下の粒子状銀化合物を用いると、還元反応の速度が速くなるので好ましい。
【0020】
この高導電膜3の比抵抗は、1.0×10−5Ωcm以下であることが好ましく、より好ましくは8.0×10−6Ωcm以下である。また、この高導電膜3により構成されている回路パターンは、例えば、厚みが1μm〜35μm、線幅が50μm〜50mm、線間間隔が50μm〜100mm程度のものである。
【0021】
黒色膜4は、導電性インクを塗布・乾燥してなる導電性黒色膜である。
この導電性黒色膜は、カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ等の導電性粒子を含んでおり、その比抵抗は1.0×10−2Ω・cm以上である。
【0022】
次に、本実施形態のメンブレン配線板の製造方法について説明する。
まず、基材2の表面(一方の主面)2aに高導電銀ペーストを塗布し乾燥して、所望の回路パターンの高導電塗膜を形成する。
【0023】
この高導電銀ペーストは、本発明者等が既に特願2001−398425号、特願2001−335675号、特願2002−108178号として特許出願したものであり、粒子状銀化合物を必須成分とし、これにさらに還元剤および/またはバインダ、分散媒を必要に応じて含むもの、あるいは粒子状酸化銀と三級脂肪酸銀塩を含有するものである。
【0024】
この高導電銀ペーストとしては、例えば、次に挙げるような4種類の組成のペーストが挙げられる。
(1)粒子状銀化合物を分散媒に分散した高導電銀ペースト
この高導電銀ペーストは、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
粒子状銀化合物は、平均粒径が1μ以下の粒径の小さいものが還元反応速度が速くなるので好ましい。
この高導電銀ペーストの粘度は、製膜条件によって異なるが、30〜300ポイズ程度が好ましい。
【0025】
(2)粒子状銀化合物と還元剤を分散媒に分散、溶解した高導電銀ペースト
この高導電銀ペーストは、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
この粒子状銀化合物は、還元剤の存在により1μm以上の粒子でも還元反応がスムーズに進行する。したがって、その平均粒径は、小さいものに限られることはなく、0.01μm〜10μmの範囲であれば特に支障はない。
この高導電銀ペーストの粘度は、製膜条件によって異なるが、30〜300ポイズ程度が好ましい。
【0026】
(3)上述の(1)または(2)の高導電銀ペーストに、さらにバインダを添加した高導電銀ペースト
このバインダは、得られる高導電膜を保護するとともに、柔軟性を付与するもので、従来の導電性ペーストに添加されるバインダとはその機能が異なるものである。
この高導電銀ペーストの粘度は、製膜条件によって異なるが、30〜300ポイズ程度が好ましい。
【0027】
(4)粒子状銀化合物と三級脂肪酸銀塩を分散媒に分散、溶解した高導電銀ペースト
この粒子状酸化銀の粒径は500nm以下が好ましく、これよりも大きい粒径の酸化銀を用いる場合には、高導電銀ペーストの製造過程(混練工程)でこれを粉砕してその粒径を500nm以下とすることが好ましい。
【0028】
この高導電銀ペーストに用いられる各々の成分について説明する。
上記の粒子状銀化合物は、単なる加熱あるいは還元剤の存在下における加熱によって還元されて金属銀となる性質を有する固体粒子状の銀化合物であり、より具体的には、酸化第1銀、酸化第2銀、炭酸銀、酢酸銀、アセチルアセトン銀錯体などが挙げられ、これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
この粒子状銀化合物の平均粒径は、0.01μm以上かつ10μm以下の範囲とされ、例えば、加熱温度、還元剤の有無、還元剤の還元力等の還元反応条件に応じて適宜選択することができる。特に、平均粒径が0.5μm以下の粒子状銀化合物を用いると、還元反応の速度が速くなるので好ましい。また、平均粒径が0.5μm以下のものは、銀化合物と他の化合物との反応により製造することができる。例えば、硝酸銀水溶液に、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を撹拌しながら滴下して反応させ、酸化銀を得る方法等である。この場合、溶液中に分散安定剤を添加して、析出した粒子状銀化合物の凝集を防止することが望ましい。
【0030】
また、還元剤は、上述の粒子状銀化合物を還元するもので、還元反応後の副生成物が気体や揮発性の高い液体となって飛散し、高導電膜3内に残らないものが好ましい。このような還元剤の具体的なものとしては、エチレングリコール、ホルマリン、ヒドラジン、アスコルビン酸、各種アルコールなどが挙げられる。
この還元剤の添加量は、粒子状銀化合物1モルに対して0.5モル以上かつ20モル以下とすることが望ましい。反応効率や加熱による揮発を考慮とすると、等モルより多めに添加することが望ましいが、最大20モルを越えて添加してもその分は無駄になるので、20モル以上の添加は好ましくない。
【0031】
また、分散媒は、上記の粒子状銀化合物、さらには還元剤および/またはバインダを分散させてペースト状とするものであり、水、あるいはエタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、イソホロン、テルピネオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテートなどの有機溶媒が好適に用いられる。
なお、上記の還元剤が液状で粒子状銀化合物を分散することができるものであれば、還元剤が分散媒を兼ねることができる。このような例としては、エチレングリコールなどがある。この分散媒の種類の選択とその使用量は、粒子状銀化合物や製膜条件などにより適宜調整される。
【0032】
また、分散剤を添加して平均粒径が1μm以下の粒子状銀化合物を良好に分散させて、粒子状銀化合物の二次凝集を防止することが好ましい。この分散剤には、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが用いられ、その使用量は粒子状銀化合物100重量部に対して0.1質量部以上かつ300質量部以下が好ましい。
【0033】
また、上記のバインダとしては、多価フェノール化合物、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の1種または2種以上の混合物が用いられる。
このバインダは、これら樹脂、化合物の中でもそれ自体還元作用を有するもの、換言すれば酸化重合性を有し、加熱時に粒子状銀化合物を還元するとともにそれ自体が重合するものが好ましい。このようなバインダを選択することにより、還元剤の添加量を削減、あるいは還元剤を不要とすることができる。このような還元作用を有するバインダとしては、多価フェノール化合物、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0034】
熱硬化性樹脂を用いる場合には、未硬化樹脂とこれを硬化させる硬化剤、触媒などを用いる。
バインダの配合量は、粒子状銀化合物100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは1〜5質量部とされる。その理由は、1質量部未満では、配合効果が得られず、20質量部を超えると、得られる高導電膜の体積抵抗率が大きくなり、熱衝撃特性、機械的特性が劣ることになる。
【0035】
さらに、上記の三級脂肪酸銀塩は、総炭素数が5〜30、好ましくは10〜30の三級脂肪酸の銀塩である。この三級脂肪酸銀塩は、滑剤的な役割を果たし、酸化銀と三級脂肪酸銀塩とを混練してペースト状にする際に、酸化銀を粉砕して微粒子化を促進するととともに、酸化銀粒子の周囲に存在して酸化銀粒子の再凝集を抑制し、分散性を向上させる。このため、バインダを添加しなくともペースト状にすることができる。
【0036】
また、この三級脂肪酸銀塩は、加熱時に銀を析出し、酸化銀から還元して生成する銀粒子同士を融着させる。このような三級脂肪酸銀塩の具体例としては、ピバリン酸銀、ネオヘプタン酸銀、ネオノナン酸銀、ネオデカン酸銀などが挙げられる。三級脂肪酸銀塩の製造は、例えば三級脂肪酸を水中でアルカリ化合物で中和し、これに硝酸銀を反応させることで行われる。
【0037】
この粒子状銀化合物と三級脂肪酸銀塩を含む高導電銀ペーストにおける粒子状酸化銀と三級脂肪酸銀塩との配合割合は、酸化銀の質量をAとし、三級脂肪酸銀塩の質量をBとしたときに、質量比率(A/B)が1/4〜3/1であることが好ましい。
また、この高導電銀ペーストでは、酸化銀と三級脂肪酸銀塩以外に溶媒が含まれる。この溶媒には、酸化銀および三級脂肪酸銀塩と反応を起こさず、これらを良好に分散するものであれば特に限定されるものではない。
【0038】
このような高導電銀ペーストとしては、例えば、平均粒径が500μm以下の酸化銀を含む高導電銀ペースト XA−9053(藤倉化成)等が入手可能である。
次いで、この高導電銀ペーストを、スクリーン印刷法等により基材2の表面(一方の主面)2aに塗布し、加熱・乾燥する。加熱・乾燥の温度は、高導電銀ペーストに還元剤が含まれている場合には140〜160℃、また、高導電銀ペーストに還元剤が含まれていない場合には180〜200℃であり、加熱時間は双方共10秒〜120分程度である。
これにより、高導電銀ペースト中の粒子状銀化合物が還元されて金属の銀微粒子を生成するとともに、この高導電銀ペーストに含まれる還元剤、バインダ、分散媒等が分解または溶融して飛散し、その結果、基材2の表面2aに高導電塗膜が形成される。
【0039】
次いで、この高導電塗膜上に、スクリーン印刷法等により黒色インクを塗布する。
黒色インクとしては、導電性インクが好適に用いられる。
導電性インクは、導電性の黒色粒子であるカーボンを含む黒色のインクであり、例えば、FC−415(藤倉化成)等が入手可能である。
【0040】
次いで、この黒色インク及び高導電塗膜を、赤外線(IR)、好ましくは遠赤外線により加熱する。
赤外線(IR)加熱手段としては、赤外(IR)焼成炉、赤外(IR)乾燥炉等が挙げられる。
この赤外線加熱により、高導電塗膜中の金属の銀微粒子同士の融着が著しく進行し、比抵抗が1.0×10−5Ωcm以下の高導電膜3となる。
また、黒色インクも、赤外線加熱により分散媒等が飛散し、比抵抗が1.0×10−2Ω・cm以下の導電性黒色膜となる。
【0041】
本実施形態によれば、高導電銀ペーストを塗布・乾燥してなる高導電膜3上に黒色膜4を形成したので、回路パターンを構成する高導電膜3の比抵抗を十分に低抵抗化することができ、この比抵抗の面内均一性も優れたものとなる。
また、高導電銀ペーストを塗布し乾燥して得られた高導電塗膜上に黒色インクを塗布し、これら高導電塗膜及び黒色インクを赤外線にて加熱して高導電膜3及び黒色膜4とするので、面内均一性に優れかつ低比抵抗の高導電膜3からなる回路パターンを有するメンブレン配線板を容易に製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
(実施例1〜3)
基材2としてポリエステル系のルミラーS10(厚み75μm:東レ社製)を用い、この基材2の表面に高導電銀ペースト用プライマを下塗りし、この高導電銀ペースト用プライマの上に高導電銀ペースト XA−9053(藤倉化成)を塗布し、IR炉を用いて表1に挙げる条件(150℃にて3分間、所定のパス回数)にて乾燥し、所望の回路パターンの高導電塗膜を形成した。
【0043】
次いで、この高導電塗膜上に表1に挙げる黒色インクを塗布し、これら高導電塗膜及び黒色インクを、IR炉を用いて表1に挙げる条件(150℃にて3分間、所定のパス回数)にて乾燥、あるいはBOX炉を用いて表1に挙げる条件(150℃にて60分間)にて乾燥し、基材2上に高導電膜3及び黒色膜4が積層された実施例1〜3のメンブレン配線板を作製した。
次いで、実施例1〜3のメンブレン配線板各々の高導電膜の比抵抗を測定した。
これらの各条件及び比抵抗の測定結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
(比較例1〜3)
基材2としてポリエステル系のルミラーS10(厚み75μm:東レ社製)を用い、この基材2の表面に高導電銀ペースト用プライマを下塗りし、この高導電銀ペースト用プライマの上に高導電銀ペースト XA−9053(藤倉化成)を塗布し、IR炉を用いて表1に挙げる条件(150℃にて3分間、所定のパス回数)にて乾燥、あるいはBOX炉を用いて表1に挙げる条件(150℃にて60分間)にて乾燥し、基材2上に高導電膜が形成された比較例1〜3のメンブレン配線板を作製した。
次いで、比較例1〜3のメンブレン配線板各々の高導電膜の比抵抗を測定した。
これらの各条件及び比抵抗の測定結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
これらの結果によれば、実施例1〜3のメンブレン配線板では、少ないIR加熱(熱履歴)により、低い比抵抗の高導電膜が得られることが分かった。
これに対し、比較例1〜3のメンブレン配線板では、IR炉によるIR加熱(熱履歴)を多くするか、BOX炉を用いないと、実施例1〜3と同様の低い比抵抗の高導電膜が得られないことが分かった。
これにより、実施例1〜3のメンブレン配線板は、比較例1〜3と比べて生産効率が向上していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態のメンブレン配線板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…メンブレン配線板、2…基材、3…高導電膜、4…黒色膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の主面に高導電銀ペーストを塗布・乾燥してなる所望の回路パターンを有する高導電膜が形成されたメンブレン配線板において、
前記高導電膜上に黒色膜を形成してなることを特徴とするメンブレン配線板。
【請求項2】
前記黒色膜は、導電性インクを塗布・乾燥してなる導電性黒色膜であることを特徴とする請求項1記載のメンブレン配線板。
【請求項3】
前記高導電膜の比抵抗は、1.0×10−5Ωcm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のメンブレン配線板。
【請求項4】
基材の一方の主面に高導電銀ペーストを塗布し乾燥して、所望の回路パターンの高導電塗膜を形成し、
次いで、前記高導電塗膜上に黒色インクを塗布し、これら高導電塗膜及び黒色インクを赤外線にて加熱して高導電膜及び黒色膜とすることを特徴とするメンブレン配線板の製造方法。
【請求項5】
前記赤外線は、遠赤外線であることを特徴とする請求項4記載のメンブレン配線板の製造方法。
【請求項6】
前記黒色インクは、導電性インクであることを特徴とする請求項4または5記載のメンブレン配線板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−50205(P2010−50205A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211758(P2008−211758)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】