説明

モノリス基材を触媒成分でコーティングする方法

複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を触媒成分を含む液体でコーティングする方法は、(i)ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持する工程と、(ii)前記液体の予め決定された量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して前記基材内に注入させる工程と、(iii)前記基材内の注入された液体を密封しながら維持させる工程と、(iv)前記維持された液体を含む基材を反転させる工程と、(v)前記基材の反転した下端で前記基材のチャネルの開放端部に真空を加え、前記液体を前記基材のチャネルを介して吸収させる工程とを含む方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチャネルを備えるハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで定義された「ハニカムモノリス基材」は、基材構造の長さ方向に沿って延び、両端部が開放された複数のチャネルまたはセルを含む金属およびセラミックフロースルーモノリス;および基材構造の長さ方向に沿って延びた複数のチャネルまたはセルを備え、基材の第1端部で開放されたチャネルは反対側で閉鎖(閉塞)し、反対側端部で開放されたチャネルは第1端部で閉鎖し、全ての他の隣接セルがウォールフローフィルタの第1端部上に開放端部(または閉鎖端部)と、反対側端部上に閉鎖端部(または開放端部)とを備えてなり、ウォールフローフィルタが開放および閉鎖チャネルのチェスボードに似たセラミックウォールフローフィルタを含む。ウォールフローフィルタの前記第1端部での開放チャネルと反対側端部の開放チャネルとの間の流体流れは、ウォールフローフィルタの多孔性壁構造を介してなされる。
【0003】
定義された「ハニカムモノリス基材」は、WO01/80978に開示されたような金属性、いわゆる「部分フィルタ」、またはEP1057519に開示された基材を含むこともできる。
【0004】
一般的に、ハニカムモノリス基材を製造するためのセラミック物質は、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム(aluminium titanate)、焼結金属、アルミナ、コーディエライト、ムライト、ポルサイト、Al/Fe、Al/NiまたはBC/Feのようなサーメット(thermet)、またはそれら2以上のセグメント(segment)を含む組成物を含む。
【0005】
ハニカムモノリス基材をコーティングするための触媒成分を含む液体の製剤は、当業者にとっては次のように知られている。白金、パラジウムおよびロジウム化合物のような白金族金属化合物の水溶液、NO吸収用化合物を基材に堆積するためのアルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物の水溶液、および遷移金属化合物(例えば、鉄、銅、バナジウム、セリウムおよび遷移金属触媒前駆体化合物)のような他の成分;アンモニア、セリア(ceria)、チタニア、ジルコニア、シリカ−アルミニウムおよびゼオライトのような、選択的に1つ以上の前記白金族金属または遷移金属を支持する粒子触媒支持物質を含むウォッシュコートスラリー;および支持金属化合物と前記金属化合物の水溶液の組合せを含むウォッシュコートスラリーがそれである。このような液体は、触媒活性度、最終触媒の意図した目的に合わせて、製剤の化学反応、および/または液体の粘性と流動性を改善させるために、適切な酸、有機化合物増粘剤などを含むこともできる。
【0006】
ハニカムモノリス基材を自動コーティングするための装置は、例えば、WO99/47260およびUS5,422,138から分かる。後者の文献は、ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持するための手段と、液体を基材の内部に基材の下端でチャネルの開放端部を介して注入するための手段、すなわち、本発明の請求項4の(a)と(b)の特徴を含む装置を開示している。
【0007】
EP1325781は、「区域化された」基材を製造するために使用可能な、US5,422,138に記載されたコーティング技術の改善された技術を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の発明者らは、ハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングするための、特に、フィルタ基材へのコーティングに重点をおいた公知の技術を調べ、いくつかの問題が分かった。
【0009】
その一つは、液体ウォッシュコートの粘性が大き過ぎると、フィルタの背圧がディーゼル車両の排気システムでフィルタの実際の適用において過度に高くなることである。発明者らは、約50cpsのウォッシュコートの粘性がフィルタコーティングのために要求可能であり、このような低粘性のウォッシュコートは、公知のコーティング方法を用いる時、フィルタ基材にわたって不均一なコーティングをもたらすことがあることが分かった。
【0010】
実際に、発明者らは、所望の軸方向のコーティング深さの百分率を達成するために、基材の水分吸収因子をウォッシュコート内の浮遊液物質に合わせることが有用であることが分かった。仮に、これら2つが合わなければ、コーティングは乾燥過程で不安定になる。前記浮遊液(一般的に水)を基材上のウォッシュコートから除去することにより、ウォッシュコート成分は固定される。
【0011】
また、発明者らは、ウォッシュコートの製剤から増粘剤を除去することにより、低粘性のウォッシュコートを得ることができ、乾燥時間が短縮することが分かった。
【0012】
他の方法が研究されたが、これは、ウォールフローフィルタ基材を水溶液槽に入れ、水溶液が毛細管現象によってフィルタに染み込むようにした(含浸)後、そのウォールフローフィルタ基材を乾燥させ、か焼する。しかし、この方法は、含浸過程と後の乾燥過程が遅過ぎるため、それ自体で自動化が難しい。また、この方法は、活性度を改善し、高価な白金族金属を節約するための触媒「区域化」のような、消費者の要求を許容するほど十分に柔軟ではない。
【0013】
US5,422,138に開示された方法および装置は、高粘性のスラリー(例えば、100〜500cps)を用い、そのため、フィルタ基材モノリスを所望の低粘性のスラリーでコーティングする分野では実際にあまり使用されない。また、ハニカムモノリス基材をコーティングするために、高価な白金族金属を含む液体を過度に使用する同方法の使用は、液体の非効率的な損失につながる。当該分野において、コーティングされたハニカムモノリス基材がコーティングされたハニカム基材モノリスの製造者と消費者との間に同意された契約条件を満足させることも重要であるが、これは、高価な白金族金属の過度のコーティングが製造者の利益を減少させることがあり、他方で、ハニカムモノリス基材を過度に少量の白金族金属でコーティングすると、製造者と消費者との間に摩擦が生じ得るからである。
【0014】
本発明の発明者らは、高価な白金族金属成分のより徹底的で正確な含有量を可能にし、製造者の工場での損失を防ぐ、自動でハニカムモノリス基材(特に、フィルタ)を、触媒成分を含む低粘性の液体でコーティングするための方法および装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様によれば、本発明は、複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングする方法であって、(i)ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持する工程と、(ii)前記液体の予め決定された量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して前記基材内に注入させる工程と、(iii)前記基材内の注入された液体を密封しながら維持させる工程と、(iv)前記維持された液体を含む基材を反転させる工程と、(v)前記基材の反転した下端で前記基材のチャネルの開放端部に真空を加え、前記液体を前記基材のチャネルを介して吸収させる工程とを含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態において、工程(i)と工程(ii)との間に、前記基材の外部表面を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部と密封(すなわち、液体の移動を防ぐように密封)させる工程が追加される。
【0017】
他の実施形態において、前記工程(v)で前記液体を維持させる密封は、後の真空適用によってのみ除去される。
【0018】
他の実施形態において、前記基材は、ここで定義されたようなフィルタである。
【0019】
第2態様によれば、本発明は、複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングする装置において、(a)前記ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持させるための手段と、(b)前記基材内に前記液体の予め決定された(決められた)量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して注入させるための手段と、(c)前記基材内の前記注入された液体を密封可能に維持させるための手段と、(d)前記維持された液体を含む前記基材を反転させるための手段と、(e)前記基材の反転した下端で前記基材のチャネルの開放端部に真空を加え、前記液体を前記基材のチャネルを介して吸収させるための手段とを含む装置を提供する。
【0020】
前記基材は、前記保持手段内に手動で挿入されてもよいが、全体的に方法の自動化を高めるために、「ピックアンドプレース(pick−and−place)」ロボット装置を用いることが好ましい。
【0021】
一実施形態において、前記保持手段は、前記基材の少なくとも下端を収容するためのハウジングを含む。当業者であれば、全ての基材が通常の円形断面を有するのではなく、楕円形または「レーストラック(race−track)」、傾斜した楕円または他の非対称断面を有してもよいことが分かるはずである。基材の断面がいかなる形状であれ、当業者であれば、基材を収容するための適切な形状のハウジングを適切に選択することができる。
【0022】
前記保持手段は、前記基材を維持するための全ての適切な手段を含むことができるが、例えば、前記ハウジングの内部空間に拡張し、基材が前記ハウジングの開口内に挿入される時に変形するブラシの剛毛(stiff bristles)、または前記ハウジングの内壁に支持される弾性重合体材質の柔軟なフィン(fin)、または前記基材が前記ハウジング内に挿入された後、ハウジングの内壁表面からハウジングの内部空間に延び、前記基材の外部表面をつかむ実質的に共通の軸面に配置される3以上の等間隔の足(feet)がある。
【0023】
しかし、ある実施形態においては、前記保持手段は、前記基材の外部表面を結合するために、前記ハウジングの内部表面に配置される少なくとも1つの膨張可能なカラー(inflatable collar:インフレータブル カラー:膨張式環)を含む。前記膨張可能カラーは、US5,422,138、図8−図16および関連する説明に記載された形態(すなわち、カラーが前記基材の外部表面全体の軸方向長さと接触)であり得るが、本発明では、前記基材の下端で外部表面と接触する第1膨張可能カラーと、前記基材の下端の上(例えば、前記基材の下端と上端との間の中間程度または前記基材の半分上部内)で前記基材の外部表面と接触する第2膨張可能カラーとを含む構造が用いられることが好ましい。US5,422,138に開示されたシングルカラーは、側平面上でより大きい柔軟性を提供し、前記基材を要求される水準に強固に維持するためにより大きい圧力を必要とするのに対し、後の方法の工程(特に本発明の工程)の場合、基材がより強固に維持され、より高精度を提供できることを本発明の発明者らは見出し、これが、前記基材を固定するために少なくとも2つの膨張可能カラーがあることが望ましい理由である。
【0024】
全ての適切な液体注入手段が使用できるが、ある実施形態においては、シリンダ内で往復運動するピストンを含む。「シリンダ」という用語がピストンヘッドとシリンダボア(bore)の円形断面を含むものの、実施形態において、ピストンヘッドとシリンダボアの形状は、基材の断面に左右される(すなわち、基材の断面が楕円形であれば、ピストンヘッドとシリンダボアの断面も楕円形である)。これは、ピストンヘッドとシリンダボアの断面を基材に合わせることが、より均一な軸方向のウォッシュコート深さで基材のコーティングを促進できるからである。しかし、基材の断面をピストンヘッドとシリンダボアに合わせることは必須ではなく、これにより、異なる断面の基材をコーティングするために装置を変更する必要はない。
【0025】
一般的に、ピストンは、ピストンヘッドの表面がシリンダと共に隣接するか整列される第1位置と第2位置との間をシリンダ内で往復運動し、前記シリンダ、シリンダヘッドおよびピストンヘッドの内壁が変位容積(排気量容積)を定義(決定)する。
【0026】
一実施形態において、前記変位容積は、前記基材に注入される液体の容積と類似するか同一であり、前記ピストンは、前記液体が前記基材に注入された後、前記第1位置に復帰する。このような構造は、前記ピストンが第1位置で前記ピストンヘッドの表面が前記基材の下端を支持するかこれに隣接する実施形態において好ましい。前記基材が先に前記ハウジング内に挿入された時、前記基材は、前記膨張可能カラーのような前記保持手段が駆動される前に前記ピストンヘッドによって支持可能で、前記保持手段および/または基材内の注入された液体を密封可能に維持するための手段との、より確実な結合を提供することができる(後者の密封手段は後述する)。
【0027】
他の実施形態において、前記変位容積は、前記液体の多重ドース(dose:投用、添加量)を収容するのに十分である(すなわち、シングルドースを2以上の基材に注入するための十分な液体)。もちろん、このような構造において、前記シリンダが反転する場合に、実施形態で前記シリンダ内の液体を維持させることができる基材内の注入された液体を密封可能に維持するための手段を選択することが必要である。
【0028】
液体は、ピストンロッドとピストンヘッドの配管を介するか、またはシリンダハウジングの壁内のバルブ手段によってシリンダヘッド内の穴を介してシリンダ内に適切に供給可能であり、液体は、シリンダヘッド内の穴を介して前記基材内に注入される。全ての場合に、コーティング液体の無駄使いを防止するために、前記基材に注入される液体の予め決定された容積のみを前記変位容積で供給することが好ましい。一つの構造において、前記変位容積は、前記基材に注入される液体の容積と同一で、前記変位容積が前記液体で充填された時、デッドスペース(dead space)がほとんどないか全くなくなる。前記液体の全体容積が前記基材内に注入された時、前記シリンダボアは空けられ、前記ピストンヘッドは、後述する理由から基材の下端に隣接する。もちろん、上述したように、前記変位容積を2以上の液体注入工程のために十分な液体で充填することも可能であり、前記ピストンは、工程方式で前記シリンダ内で前進し、結果的に各工程に対する変位(および液体)容積を減少させることができる。
【0029】
前記基材内に注入された液体を密封可能に維持するための手段は、全ての適切な構造(例えば、キロチン(quillotine)、アイリス(iris)またはシャッターまたは一方向透過性を有する物質)であり得る。しかし、好ましい構造において、前記液体を密封可能に維持するための手段は、ピストンヘッドの表面自体であるが、その間で密封を向上させる物質(例えば、ソフトシリコーンフォームまたは合成ゴムのような弾性重合体物質)を含むことができる。したがって、液体の全体容積がシリンダから基材に加圧される(すなわち、ピストンが第1位置に復帰する)前記実施形態において、前記ピストンヘッドの表面は、前記基材の下端と接触し、前記基材に注入された液体を維持するために密封を形成する。
【0030】
一実施形態において、前記液体維持手段は、前記真空を適用する前に除去される。
【0031】
しかし、他の実施形態において、前記液体維持手段は、前記基材の下端との密封を前記真空手段が前記基材の反転した下端に真空を加えるまで維持される(すなわち、真空のスイッチオフに続いて静的真空が基材内に残る)。密封手段の特性により、液体は基材のセルの間で流れず、反転後、前記基材にわたって不均一な軸方向のコーティング深さにつながるか、基材の外部壁の下から液体が注入された基材の端部で漏洩し、真空が加えられ、基材のチャネルに沿って液体が移動する前に、液体損失と基材の外部「スキン(skin)」コーティングのコスメチック(cosmetic:表面的な)な外形が不十分に現れる。ピストンヘッドが密封を提供する実施形態において、真空が加えられるまで基材との密封固定を維持することは、次の基材のためのピストン表面洗浄の利点も提供する。
【0032】
他の実施形態において、ハウジング、ピストンおよびシリンダは、反転手段によって1つのユニットとして全て反転する。望ましくは、このような反転手段は、ロボット装置を含む。
【0033】
一実施形態において、前記装置は、前記基材の外部表面を前記基材の少なくとも下端で前記チャネルの開放端部と密封(すなわち、液体の流れを防ぐように密封)するための手段を含む。これは、前記ピストンボアの断面が基材の断面と異なる形状である実施形態(例えば、基材は楕円形で、ピストンボアは円形)で必要となり得る。これは、シリンダ周辺のデッドスペース領域内の全ての残留液体が反転過程で前記基材内に染み込むことを防ぐ。
【0034】
基材の外部表面を基材の下端で前記チャネルの開放端部と密封させるために、全ての適切な密封手段(例えば、前述した柔軟なフィン)が使用できるが、特定の実施形態において、前記密封手段は、膨張可能カラー(1つ以上の膨張可能カラーが用いられる)を含み、膨張可能カラーは、前記基材の下端と結合される。
【0035】
前記真空手段は、全ての適切な形態であり得るが、一実施形態では、広い端部が前記基材の反転した端を収容する漏斗を含む。
【0036】
前記真空手段と前記基材の反転した端部との間の密封は、前記漏斗の広い端部の内部表面で定義された空間内に延びる柔軟な材質のフィンによって達成可能であり、前記フィンは、前記基材が前記漏斗の広い幅の端部内に挿入された時に変形し、前記フィンは、前記基材の外部表面と結合する。しかし、ある実施形態では、前記漏斗の広い幅の端部の内部表面は、前記基材の外部表面を密封可能に固定するための膨張可能なカラーを含む。前記真空手段に形成された密封は、前記基材をつかむことができるため、第2保持手段として見なされる。
【0037】
前記(第1)保持手段は、真空の適用および後の真空工程の再適用時にコーティングされた基材から分離され得る。これは、少なくとも4つの理由がある。
(i)前記ピストンヘッドが注入された液体を密封可能に維持するための手段を含み、密封が真空適用およびスイッチオフに続いて維持(すなわち、静的真空が基材に残る)される実施形態において、基材は、前記ピストンヘッドと空圧的密封を形成することができる。前記真空手段上の前記(第2)保持手段は、前記基材が前記ピストンヘッドから引っ張られるようにする。
(ii)前記基材チャネルにおけるいかなる真空損失も防ぐ。
(iii)基材のエッジ(edge)損傷を防ぐか減少させることで、基材を保護する。
(iv)空気が前記ハウジングに接近できるようにし、液体が注入される前記基材の端部を介して前記基材に入るが、これは、ハウジングの壁に穴を形成することによってなされることも可能である。
【0038】
真空過程に続き、前記装置とコーティングされた基材は、上方位置に復帰することができ、次に、コーティングされた基材は、乾燥およびコーティングの選択的か焼のために除去され得る。
【0039】
本発明の方法および装置は、最新の「区域化された」基材の製造を可能にする。一番目の通過後にコーティングされた基材の乾燥および選択的か焼後、同一の基材が二番目の通過で一番目のコーティングが注入された箇所と反対の端部から異なる液体でコーティングできる。例えば、ドース重量と液体の固体含有量と加えられた真空の量が、必要なコーティングの軸方向深さを達成するために全て計算され最適化できる。二番目の通過で、基材モノリスを一番目の通過コーティングの反対側端部から異なる組成物でコーティングし、2つのコーティングの間で互いに出会って重なる所望量(例えば、5%)に到達することもできる。一番目または二番目のコーティングを超える多重コーティング(例えば、三番目の通過コーティング)は、望ましくは、乾燥と選択的か焼後に完了することもできる。
【0040】
この方式で、本発明は、WO2004/079167に開示されたようなフィルタ基材(すなわち、区域化されたフィルタ基材、第1触媒区域は、一酸化炭素、炭化水素および一酸化窒素を酸化させるための少なくとも1つの白金族金属(PGM)を含むディーゼル酸化触媒を含み、少なくとも1つの下流側の触媒区域が少なくとも1つのPGMを含み、第1触媒区域でのPGMの全体含有量が少なくとも1つの下流側の触媒区域でのPGMの全体含有量より大きい)の製造を可能にする。
【0041】
ある実施形態において、前記装置は、適切にプログラムされたコンピュータによって制御され、使用中に本発明にかかる一連の方法過程を行う。
【0042】
本発明の発明者らは、本発明にかかるハニカムモノリス基材のコーティング方法が、触媒(1つ以上の白金族金属を含む酸化触媒(最終コーティングされたフィルタは、一般的に煤(soot)触媒化フィルタ(CSF)として知られる)と、窒素酸化物をアンモニアのような窒素性還元剤と尿素のようなアンモニア前駆体で選択的に還元させる触媒)を含むウォールフローフィルタの製造に適用される時に特別な効果を提供することが分かった。本発明にかかる方法は、希薄NOトラップ、単にNOトラップとしても知られた、いわゆるNO吸収剤触媒(NAC)を含むフィルタを製造するために使用できると考えられる。
【0043】
本発明の方法は、ドース量(投与量、添加量)、ウォッシュコート固体含有量と真空強度および期間の適切な操作でフィルタチャネルの一部または全部がコーティング可能で、異なるチャネルのコーティング長さが入口と出口のチャネルに対して選択可能であり、本発明の方法は、区域でコーティングされたウォールフローフィルタ構造(例えば、入口チャネルの一番目の軸方向の20%は、入口チャネルの下流側に残るものよりも高濃度の白金族金属でコーティングされる)を製造するのに使用できる点で柔軟である。
【0044】
一般的に、所与の含有量に対して選択されたウォッシュコート固体含有量は、コーティングされる部分の空隙率と塗布されるコーティングの軸方向長さに左右され、必要な正確なウォッシュコート固体含有量は、一般的な試行錯誤によって決定可能である。しかし、一般的に、ウォッシュコート固体含有量は、約8〜40%の範囲である。一般的に、同一の軸方向長さの一部(より高い空隙率の部分)をコーティングするために、より低いウォッシュコート固体含有量が使用される。また、同一のウォッシュコート含有量で同一部分から異なる軸方向長さをコーティングするために、軸方向長さが短いほど、ウォッシュコート固体含有量も高くなる。一般的なコーディエライトまたはSiCウォールフローフィルタを標準ウォッシュコート含有量でウォッシュコートをコーティングするために、チャネルの全体長さをコーティングする場合、25%のウォッシュコート固体含有量を選択することができる。ウォールフローフィルタの相対的に短い区域をコーティング(例えば、触媒煤フィルタの短い入口区域を相対的に高い白金族金属のウォッシュコート含有量でコーティング)するために、より高いウォッシュコート固体含有量(例えば、30〜40%)が選択できる。同一のウォッシュコート含有量でより短い軸方向長さの一部をコーティングするためのウォッシュコート量は、より長い軸方向長さの一部に対するものよりも少ないはずである。
【0045】
加えられる真空は、一般的に−5kpa〜−50kpaの次数であり、約0.3秒〜約2秒の時間の間、ウォッシュコート固体含有量(真空時間が長いほど、ウォッシュコート固体含有量は低くなる)および部分の大きさ(部分が大きいほど、時間は長くなり、真空は高くなる)に左右される。しかし、一般的に、真空適用は、約1秒の次数であり得る。より大きい基材(例えば、重量(heavy−duty)ディーゼル車両に対して使用される)は、40〜50kpaのような高い真空適用が要求され、他方で、軽量(light−duty)ディーゼル車両の部分は低い真空適用を要求することになる。
【0046】
本発明の発明者らは、部分の反転後、少なくとも2つの工程で工程(v)で真空を加えることにより、優れたコーティングプロファイル(profile:外形、側面、統計)が達成できることが分かった。前記真空手段内の膨張可能カラーのようないかなる保持手段の適用なしに、相対的に低い真空圧力での一番目の短い、相対的に弱い真空適用(−5〜−10kpaの次数);保持手段の駆動で二番目のより長くてより強い真空が後に続く。前記短い真空適用は、ピストンの表面を洗浄し、二番目の、高い真空が液体ウォッシュコート成分を抜き取ってウォッシュコート固体を部分の表面上に固定させる前に、前記ウォッシュコートを前記チャネルの長さ方向に沿って移動するように許容する機能を果たす。一番目および二番目の真空適用の間の時間は、5−10秒(例えば、6−8秒)であり得る。重量ディーゼル車両部分では、三番目または後続の真空適用が必要となり得る。
【0047】
本発明の発明者らは、本発明の方法が、車両で窒素酸化物をアンモニアのような窒素性還元剤と尿素のようなアンモニア前駆体で選択的に還元するための触媒を含むウォールフローフィルタの製造に特に適用できることが分かった。このような選択的触媒還元(SCR)触媒は、V/WO/TiOとFe/BeatゼオライトまたはCu/CHAのような遷移金属置換ゼオライトを含む。このような製品を製造する時、許容可能な背圧で触媒活性度を維持する競争要件を合わせることが難しい。高い背圧は、パワー出力と燃料の節約において否定的に作用する。車両(例えば、ユーロ5とユーロ6)から排出が許容される排気ガス基準(すなわち、汚染物質の量)が強化され続けることにより、触媒の効果を持続させる使用中のOBD(on−board diagnostic)確認のための法的要件を含ませたりもする。OBD要件は、触媒フィルタと特に関連するが、車両製造者は、一般的に効率的なエンジン性能を維持するために、車両の設計においてフィルタに付着した粒子性物質を定期的に除去するようにし、ここで、排気ガス温度は、燃料噴射エンジン制御部および/またはエンジンの下流側で排気ガスで噴射され、適切な触媒上で燃焼される燃料を用いて増加する。車両製造者は、全体(車両)の寿命耐久性に合った触媒製品を要求しているため、触媒フィルタの製造者は、初期にできるだけ多くの触媒を備えるフィルタを装着することにより、長い時間、触媒不活性化に対抗しようと努力している。しかし、前述したように、触媒含有量を増加させることは、フィルタの背圧の所望しない増加をもたらす。より高い空隙率のフィルタ基材を用いることにより、これに伴う問題の一部に対抗することが可能であるが、このような基板は、割れやすく、取り扱いがさらに難しい。許容されない背圧を避ける他の手段は、触媒コーティングの量を制限することである。しかし、SCR触媒の量を減少させることは、NO転換率と低温度のNO転換に非常に重要なNH貯蔵能力を低下させる。
【0048】
SCR触媒のウォッシュコートをウォールフローフィルタ基材に含有させる方法の開発において、本発明の発明者らは、WO2005/016497に開示されたような従来のコーティング技術(ウォールフローフィルタ基材が垂直に触媒スラリーの一部に含浸され、基材の上端がスラリーの表面上に位置する)を研究した。ウォッシュコートスラリーは、各チャネル壁の入口面と接触するが、各壁の出口面との接触は防止される。サンプルが約30秒間スラリーに残される。基材がスラリーから除去され、過剰なスラリーは、まず、チャネルから排出可能にした後、(スラリーの浸透方向とは反対に)圧縮空気を吹き込み、スラリーの浸透方向から真空を加えることにより、ウォールフロー基材から除去される。WO2005/016497は、このような技術により、触媒スラリーが基材の壁に染み込むが、過度の背圧が最終基材に形成される程度で空隙が詰まることはないと主張している。次に、コーティングされた基材は、一般的に約100℃で乾燥し、より高い温度(例えば、300〜450℃)でか焼される。このような工程は、ウォールフローフィルタの出口面をコーティングするために繰り返し可能である。
【0049】
最近、ウォールフローフィルタの製造者は、他の特徴のうち、粒子濾過を改善するために、その入口面が微細に分けられた耐火性粒子を含む表面メンブランでプリコーティングされた製品を提供し始めた。例えば、NGK Insulator Ltd.のEP2158956と、SAE(Society of Automotive Engineers)技術論文2008−01−0621(EP2158956の発明者による2008年4月14日〜17日、ミシガン、デトロイトで開催された2008年の世界学会)を参照すればよい。本発明の発明者らは、WO2005/016497の従来のコーティング技術を利用し、このような、いわゆる「メンブランフィルタ」をコーティングする時の特別な困難さを確認した。WO00/01463とWO2010062794も参照すればよい。
【0050】
特に、触媒スラリー内におけるフィルタの従来の(ディップ)コーティングは、メンブラン層のコーティング形成からなるが、本発明者らは、高い毛細管力によってコーティングスラリーがメンブラン層に引導されると認識する。メンブラン層はコーティングによって詰まり、最終フィルタは非常に高い背圧を有する。メンブランチャネルの入口と出口チャネルともを、例えば、遷移金属置換ゼオライト基盤のSCRコーティング剤でコーティングする従来のコーティング技術を利用することは、メンブラン構造をブロックさせるSCR触媒をもたらし、最終SCRコーティングされたフィルタは高い背圧を有する。
【0051】
本発明の発明者らは、メンブランの入口と出口チャネルともをコーティングする従来のディップコーティングを用いることによって発生した高い背圧は、出口チャネルのみをディップコーティングすることにより(すなわち、基材製造者がメンブラン表面をプリコーティングした入口フィルタチャネルは、SCR触媒でコーティングされない)、大きく減少できると判断した。しかし、このような接近を試みた時、発明者らは、(出口チャネルを介した)ディップコーティングは、メンブラン構造に配置されると決定した一部であるフィルタの後方でより高い触媒コーティングの割合を有するコーティング勾配(gradient)をもたらすことを見出したが、他方で、触媒は、プリコーティングされた表面メンブラン層からチャネル壁の反対面に塗布される。
【0052】
次に、発明者らは、適切なウォッシュコート固体含有量と相対的に速い真空適用を用いるメンブラン層でコーティングされた入口チャネルを備えるウォールフローフィルタ基材の出口チャネルのみをコーティングする、本発明にかかる方法を用いることにより、出口チャネルはより均一にコーティングできる(すなわち、入口メンブラン層で見つかるSCR触媒が出口チャネルに不十分にまたは実質的に全く塗布されない)ことを見出した。
【0053】
他の態様によれば、本発明は、ウォールフローフィルタ基材モノリスの出口チャネルをコーティングする方法を提供するが、前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの製造者は、その入口チャネルに軸方向に沿って実質的に均一な触媒ウォッシュコートを有する、微細に分離された無機固体を含む表面メンブラン層にプリコーティングする。
【0054】
本発明の前記態様の利点は、(出口チャネルを介した)触媒ウォッシュコーティングがコーティング勾配を減少させ、同一の触媒基材モノリスに比べてより低い煤含有背圧、より高いNH貯蔵とより高いNO転換率(フレッシュ(fresh)および熱水的エージング)を提供する(還元剤としてアンモニアまたはアンモニア前駆体が使用される)ことを含み、前記触媒ウォッシュコートは、従来のディップコーティング技術(WO2005/016497に開示される)による出口チャネルに塗布される。本発明の発明者らは、前記改善されたコーティングの均一性がフィルタに全体に亘って優れた流れ分布(窒素性還元剤のような還元剤の注入と後のNHスリップの制御とNO転換率に関連する)に寄与できると考える。
【0055】
実施例1と図8から明らかなように、フィルタの後方で触媒の量を減少させることは、「実在(real−world)」のエージング条件に対しても利点があり、このような領域は一般的により深刻な条件(高い温度および大きい粉塵への露出)に露出し、フィルタの前方部分より相対的により低い触媒性能をもたらすことがある。本発明にかかるコーティング方法(出口チャネルを介したディップコーティングの代わりに出口チャネルを介して)を用いることにより、フィルタの後方にコーティングされた触媒の割合が減少し、実性能に利益を与えることができる。
【0056】
従来のディップコーティング方法に対する本発明の方法の他の利点は、ハニカム基材モノリスによるウォッシュコートの1つ以上の成分の所要において多重成分の触媒ウォッシュコートからの成分の選択的吸着が従来のディップコーティング方法に比べて実質的に減少するか除去できることである。
【0057】
他の態様によれば、本発明は、触媒ウォールフローフィルタ基材モノリスを提供するが、前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの製造者は、その入口チャネルに微細に分離された耐火性固体を含む表面メンブラン層にプリコーティングし、前記出口チャネルは、軸方向に沿って実質的に均一な触媒ウォッシュコートのコーティングプロファイルを有し、触媒ウォールフローフィルタ基材は、本発明にかかる方法によって製造される。
【0058】
他の態様によれば、本発明は、触媒ウォールフローフィルタ基材モノリスを提供するが、前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの製造者は、その入口チャネルに微細に分離された耐火性固体を含む表面メンブラン層にプリコーティングし、前記出口チャネルは、軸方向に沿って実質的に均一な触媒ウォッシュコートのコーティングプロファイルを有し、前記触媒ウォールフローフィルタ基材モノリスの前記ウォッシュコートの軸方向の上流側半分の含有量は、前記軸方向の下流側半分のウォッシュコート含有量の10%(10%以内)である。
【0059】
実施形態において、コーティングに先立ち、本発明の後者の2つの態様にかかる前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの空隙率は、40〜80%である。好ましい実施形態において、本発明で用いるためのフィルタの空隙率は、一般的に>40%または>50%および45〜75%(例えば、50〜65%または55〜60%)である。
【0060】
他の実施形態において、前記ウォールフローフィルタ基材モノリスのコーティングに先立ち、平均空隙の容積は、8〜45μm(例えば、8〜25μm、10〜20μmまたは10〜15μm)である。ある実施形態において、前記第1平均空隙の大きさは、>18μm(例えば、15〜45μm、20〜45μm、20〜30μmまたは25〜45μm)である。
【0061】
実施形態において、本発明の前記ウォールフローフィルタ基材モノリスの前記出口チャネルに塗布された前記触媒ウォッシュコートは、NOトラップ、担持された白金族金属を含む触媒煤フィルタウォッシュコートまたはNH−SCR触媒(好ましくはNH−SCR触媒)である。
【0062】
好ましくは、前記NH−SCR触媒は、ゼオライト置換した遷移金属を含み、最も好ましくは、前記遷移金属は、銅、鉄、セリウムおよびそれら2以上の混合物からなる群より選択され、前記ゼオライトは、フェリエライト、CHA、BEAおよびMFI(ZSM−5)からなる群より選択される。特に好ましい組合せは、Cu/CHA、Fe/フェリエライト、Fe/またはFe−Ce/ZSM−5およびFeまたはFe−Ce/BEAである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本発明をよりよく理解するために、添付した図面に示された本発明の装置および方法の実施形態の概略的な構成を参考にする。
【図1】図1は、基材が備えられていない状態で本発明にかかる装置に対する開始位置を示す。
【図2】図2は、基材が挿入された状態の図1の装置を示す。
【図3】図3は、基材が膨張性カラーによって維持される装置と基材の配置を示す。
【図4】図4は、充填ピストンが下降して測定されたウォッシュコートのドースが変位容積内にドース制御バルブを介して流入する状態を示す。
【図5】図5は、ドース制御バルブが閉じられ、ピストンが駆動してウォッシュコートが基材内に充填される状態の図4の装置を示す。
【図6】図6は、装置が反転し、反転した基材の下端が真空形成のために膨張可能なカラー密封の特性を有する漏斗の開放端部に挿入される状態を示す。
【図7】図7は、(第1)保持手段の膨張可能カラーが基材と分離され、基材が真空漏斗カラーによって維持され、真空が適用されてウォッシュコートが基材モノリス内に浸透する工程を示す。
【図8】図8は、3つのウォールフローフィルタに対するx線密度プロファイルを比較するが、入口チャネルが微細に分離された無機耐火物を含むメンブラン層でプリコーティングされた水供給者からの第1(制御)「as−received」、ディップコーティング方法を用いて、SCR触媒で出口チャネルに追加的にコーティングされた第2「as−received」(比較)、および二番目と類似のウォッシュコート含有量であるが、本発明にかかる工程を用いて、SCR触媒で出口チャネルに追加的にコーティングされた第3「as−received」がある。
【図9】図9は、ディップコーティング法(比較)および本発明にかかる方法によって製造されたウォールフローフィルタのフレッシュサンプルに対する煤含有量対背圧を比較するグラフである。
【図10】図10は、実験室ベンチエンジン(laboratory bench−engine)の排気システムに装着され、実施例5で説明された実験プロトコルに従ってテストされた実施例1と比較実施例2によって製造されたフィルタに対するフレッシュNO転換活性度を比較したグラフである。この図面と後の図面において、実施例1の製品は「AID」で表示され、比較実施例2の製品は「Dip」で表示された。
【図11】図11は、図10に示されたNO転換テスト中にフレッシュフィルタに対するNHスリップ(slip)を比較したグラフである。
【図12】図12は、実験室ベンチエンジンの排気システムに装着され、実施例5で説明された実験プロトコルに従ってテストされた実施例1と比較実施例2によって製造されたフィルタに対する、エージングされたNO転換活性度を比較したグラフである。
【図13】図13は、図12に示されたNO転換テスト中にエージングされたフィルタに対するNHスリップを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、本発明にかかる装置10に対する開始位置を示すが、12は保持手段であって、基材モノリスの下端を収容するためのハウジング14と、収縮された状態である一対の膨張可能カラー16a、16bとを備え、シリンダ20内の充填ピストン18が延びた、第1位置に位置する。
【0065】
図2は、基材22が、例えば、「ピックアンドプレース」ロボットアアムによって保持手段12内に挿入され、弾性重合体物質を含むピストンヘッド24の表面によって支持される状態を示す。
【0066】
図3は、図2の装置を示すが、膨張可能カラー16a、16bが基材モノリス22の外部表面と結合するように駆動される。
【0067】
図4を参照すれば、充填ピストン18がサーボ(図示せず)によって予めプログラムされた深さまで低くなり、ウォッシュコート26の測定されたドースが、容積デポジター(volumetric depositor)によってウォッシュコート供給ライン30を経て、ドース制御バルブ28を介してシリンダの内壁、シリンダパッドとピストンヘッド18で定義された変位容積32内にポンピングされる。
【0068】
図5を参照すれば、ドース制御ベルブ28が閉じられた状態で、ウォッシュコート26が基材22のベース内に押し込まれる。ピストン18は、第1位置に復帰し、弾性重合体物質の表面は、反転させるための準備として基材22の下端表面を密封する。
【0069】
図6を参照すれば、基材22が、例えば、180゜まで回転して反転し、真空コーン(cone)36上に位置する。真空コーン36は、空圧シリンダ(図示せず)によって位置上昇する。真空コーンの膨張可能カラー38が駆動され、第1真空駆動が始まる。
【0070】
保持手段12の膨張可能カラー16a、16bは分離され、真空コーン36は基材22を下に引っ張ってピストンヘッド24の表面から遠くなる(真空コーンカラー38は結合状態を維持し、空圧ピストンは基材を下に引っ張る)。以降、真空駆動が追加的に基材22に加えられる。真空駆動の数は多様であり得るが、図示の実施例においては、基材がピストンヘッドから分離される時、2回の真空駆動が行われる。この工程において、最終的な軸方向のコーティング深さは、液体がウォッシュコートスラリーから除去されることによって達成される。
【0071】
空圧シリンダを用いて、真空コーン36は、基材22を上へ押し、膨張可能カラー16a、16bが再結合される。真空コーンカラー38は分離され、真空コーン36は下に移動する。基材22と装置10は、一番目の、上方位置に戻り、コーティングされた基材は、後の乾燥工程のために、例えば、「ピックアンドプレース」装置を用いて垂直に除去される。フレッシュ基材が装置10の保持手段14に挿入され、過程が繰り返し可能である。
【実施例】
【0072】
実施例1と比較実施例2−供給者プリコーティングされた入口チャネルメンブラン層を備える商業的に利用可能なウォールフローフィルタの出口チャネルへのSCR触媒の適用
実施例1において、商業的に利用可能な炭化ケイ素ウォールフローフィルタ(NGK Insulator Ltd.、製品コード:MSC−111)(円形断面(直径5.66インチ(14.4cm))と軸方向長さ6インチ(15.24cm)、セル密度300cpsi、チャネル壁厚さ0.305mm、空隙率52%、水銀空隙測定によって評価された平均空隙大きさ23μmおよび供給者(すなわち、NGK)によって微細に分離された耐火粒子を含むメンブランでプリコーティングされた入口チャネルを備える)が、本発明にかかる方法および従来のディップコーティング方法によってSCR触媒でコーティングされた出口チャネルを含むフィルタの物理化学的性質を比較するために使用された。
【0073】
銅置換された(2.5wt%の銅)CHA分子篩NH−SCR触媒の分散剤を含むウォッシュコートが、本発明にかかる装置と方法を用いてMSC−111製品の出口チャネルにのみ100%軸方向に塗布された。Cu/ゼオライト触媒のウォッシュコート固体成分は25%であり、シリカゾル(silica sol)バインダーは10%のウォッシュコート固体で含まれた。0.95gin−3のウォッシュコート含有量を得た。コーティング部分は、100℃で空気で乾燥し、500℃で1時間か焼された。
【0074】
比較実施例2のために、同一のウォッシュコート含有量で類似の製品が同一のウォッシュコート組成物を用いて、WO2005/016497に記載されたディップコーティング方法によって得られた。すなわち、ウォールフローフィルタが、(1)基材のチャネルをコーティングするのに十分な深さまで基材の全体軸方向長さに沿ってスラリー内に入り、(2)約20秒間コーティングされた側から真空が加えられ、実施例1のように乾燥し、か焼された。
【0075】
エージングされた触媒フィルタは、800℃で16時間、10%の酸素(O)、10%の水蒸気、窒素(N)均衡状態で、実施例1および比較実施例2の製品を熱水的に稀薄エージングさせて製作された。
【0076】
実施例3−コーティングされたフィルタのX線密度分析
実施例1および比較実施例2によって製造された、コーティングされたウォールフローフィルタがx線密度分析を利用して分析され、供給者から提供されたMSC−111フィルタ(すなわち、メンブラン層でプリコーティングされた入口チャネルを備えるが、出口チャネルに塗布されたSCRコーティングは備えられていない)と比較された。結果が図8に示されているが、x線密度線がコーティングされたか、または「バージン(virgin:未処理)」部分のx線上に重なる。フィルタの長さに沿って所与の軸方向位置に対して左側に最も遠いX線密度データポイントは、例えば、ウォールフローフィルタのエンドプラグ(end−plug)に比べて相対的に高い密度を示す。反面、フィルタの長さ方向に沿って所与の軸方向位置に対する右側に最も遠いデータポイントは、相対的に低い密度を示す。
【0077】
x線密度線から、入口側端部と出口側端部との間に密度勾配が既に存在する「as−received:受容された」MSC−111部分に対して、本発明の発明者らは、供給者によって塗布されたメンブラン層(入口側端部より高いウォッシュコート密度を有する出口側端部)からの結果を推測することができる。「as received」製品に対するx線密度線を比較実施例2の製品に比べて、コーティングプロファイルが密度において出口側端部に向かいつつ増加することが確認された。また、密度は、「as received」部分に比べて、比較実施例2の入口側から中間部分に向かいつつ実質的に減少することが確認された。
【0078】
本発明の発明者らは、このようなコーティングプロファイルは、出口端部での高密度の固体によるものであり得るが、これは、比較実施例2の製造で真空を加える間に均一でない空気流れをもたらし、比較実施例2の部分の軸方向に沿って中心部分からの高水準のウォッシュコート洗浄を引き起こす。これは、「as received」部分でバッチ間(batch−to−batch)の変化から生じることもある。
【0079】
反面、実施例1のフィルタは、「as−received」部分と実質的に類似の密度プロファイルを有し、入口端部から出口端部までの類似のウォッシュコート密度の傾向を含む。
【0080】
実施例4−煤含有背圧分析
粒子性物質を含むディーゼル排気ガスを用いた実施例1と比較実施例2の各フィルタの煤含有量に対する背圧増加率が、ディーゼル粒子発生器(DPG)と欧州特許1850068A1に開示され、Cambustion Ltd.によって製造されたテストセルを用いてテストされた。すなわち、液体炭素含有燃料の燃焼で誘導された粒子性物質を発生させて捕集するための装置は、ノズルを備える燃料燃焼器を含み、前記ノズルは、コンテナ内に収容され、前記コンテナは、ガス入口とガス出口を含み、前記ガス出口は、ガスを大気に伝達するための配管に連結され、前記ガス入口を介して流れるガス速度を検出するための手段と、酸化ガスをガス入口からコンテナ、ガス出口および配管を経て大気に流れるようにする手段と、前記配管を介して流れるガスから粒子性物質を捕集するためのステーション(station)およびガス入口で検出されたガス流れ速度に対応してガス流れ手段を制御するための手段とを含み、前記ガス入口におけるガス流れ速度は、コンテナ内でサブ化学量論的(sub−stoichiometric)燃料の燃焼を提供する所望の速度で維持され、それによって粒子性物質の形成を促進させる。
【0081】
フィルタは、粒子を含む排気ガスを初めて収容するように位置するメンブラン層を備える、供給者によってプリコーティングされた入口チャネルを有するステーションに順に装着された。前記装置は、最大50ppmの硫黄を含む標準フォアコート(forecourt)ポンプディーゼル燃料で作動した。DPGユニットは、250kg/hourのガス質量流量、10g/hrの粒子発生速度で約240℃で維持されるインライン(inline)粒子性炭化ケイ素フィルタを備え、作動した。各フィルタに粒子性物質が加えられる間に、背圧が差圧センサによって決定され、10秒ごとにコンピュータに記録された。
【0082】
結果が図9に示されており、これより次のような内容が確認できる。
【0083】
実施例5−コーティングされたフィルタのフレッシュおよびエージングされたベンチエンジン活性度の比較
実施例1と比較実施例2のフィルタは、それぞれベンチ実験台(bench−mounted)ユーロ4規格(2リットルの直接噴射、コモンレール(common rail)エンジン(例えば、乗用車用として適切)の下流側の1リットルの酸化触媒(350cpsiのコーディエライトモノリスフロースルー基材にコーティングされた、2:1の重量比を有する白金およびパラジウム95g/ft)、フィルタは、プリコーティングされたメンブラン層を備えるチャネルがフィルタのガス入口側にあるように配置)の排気ガスシステムにそれぞれ順次に装着された。標準ディーゼルエンジン燃料は50ppmの硫黄分を含有する。尿素水溶液(AdBlue)を排気ガス内に噴射するための尿素インジェクタが酸化触媒とフィルタとの間に配置される。10ppm未満の硫黄のディーゼル燃料が使用された。初期ウォーミングアップ状態に続き、エンジンは、所望のフィルタ入口温度を得るために、一連のエンジン荷重で作動した。テスト条件は、表1に記載されたとおりである。「アルファ」は、NH/NO比として定義される。「0.7のアルファ」の場合、理論的な最大NO転換率は、反応式4NO+4NH+3O→4N+6HOおよびNO+NO+2NH→2N+3HOによって70%である。エンジン制御技術内でプログラムされた排気ガス循環バルブの位置は、EGRをオフにするために移り、工程3−5は、包括的に合理的な期間(時間の代わり)内に完了した。工程1〜工程5の全過程は、後に続いて直ちに1つで行われた。
【0084】
【表1】

【0085】
「フレッシュ」触媒フィルタに対する結果が図10と図11に示されているが、ここで、実施例1の触媒フィルタの最大NO転換活性度が示された3つの温度データポイントでそれぞれ極めて優れていることが確認された。NHスリップテストに対し、NHは、比較実施例2の触媒フィルタより実施例1の触媒フィルタの場合により遅くスリップされることが確認された。これは、本発明の触媒フィルタが比較例のフィルタよりも大きいNH貯蔵能力を有することを示し、これは、低温でのNO転換率を促進させるために重要である。
【0086】
エージングされたサンプルに対する対応結果が図12と図13にそれぞれ示されているが、ここで、NO転換活性度が、比較実施例2のサンプルより実施例1のサンプルの場合に極めて優れている。アンモニアスリップでの同一の遅延がポストエージング、同じ利点がフレッシュサンプルに比べて維持されることが確認された。
【0087】
実施例の結果から全体的に、本発明によってSCR触媒でコーティングされたMSC−111ウォールフローフィルタサンプルの出口チャネルは、従来のディップコーティング技術を利用してコーティングされた同一のウォールフローフィルタに比べてより均一なコーティングプロファイルを示し、より低い煤含有量背圧、より大きいNH−SCRNO転換率(フレッシュおよびエージングとも)およびより大きいNH貯蔵容量を有する。
【0088】
疑う余地をなくすために、ここで引用された全ての先行技術文献の全体内容はここに組み込まれて参照される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含有する液体でコーティングする方法であって、
(i)ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持し、
(ii)前記液体の予め決定された量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して前記基材内に注入し、
(iii)前記基材内の注入した液体を密封維持し、
(iv)前記維持した液体を含む基材を反転させ、及び
(v)前記基材の反転した下端で前記基材のチャネルの開放端部に真空を付与し、前記液体を前記基材のチャネルを介して吸収する、各工程を含んでなる、方法。
【請求項2】
工程(i)と工程(ii)との間に、前記基材の外部表面を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部と密封させる工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(v)で前記液体を維持させる密封が、後の真空付与によってのみ解除される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が、フィルタである、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含有する液体でコーティングする装置であって、
(a)前記ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に維持するための手段と、
(b)前記基材内に前記液体の予め決定された量を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部を介して注入するための手段と、
(c)前記基材内の前記注入された液体を密封維持するための手段と、
(d)前記維持された液体を含む前記基材を反転させるための手段と、及び
(e)前記基材の反転した下端で前記基材のチャネルの開放端部に真空を付与し、前記液体を前記基材のチャネルを介して吸収するための手段とを備えなる、装置。
【請求項6】
前記保持手段が、前記基材の少なくとも下端を収容するためのハウジングを備えてなる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記保持手段が、前記基材の外部表面と結合するために、前記ハウジングの内部表面に設けられてなる膨張可能なカラーを備えてなる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記液体注入手段が、シリンダ内で往復運動するピストンを備えてなる、請求項5〜7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ピストンが、第1位置と第2位置との間で往復運動してなり、
前記ピストンヘッドがシリンダヘッドに隣接してなるものであり、
前記シリンダの内壁、シリンダヘッドおよびピストンヘッドが少なくとも部分的に変位容積を定義する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ピストンヘッドの表面が、前記ピストンが前記第1位置に位置する時、前記基材の下端を支持するものである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記シリンダのケーシングが、前記シリンダボアに前記液体を供給するためのバルブを含んでなる、請求項8〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記基材内の前記注入された液体を密封維持するための手段が、前記ピストンヘッドの表面を備えてなる、請求項8〜11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ハウジング、ピストン、およびシリンダが、前記反転手段によって反転する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記基材の外部表面を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部から密封させるための手段を含む請求項5〜13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
請求項7において、
前記基材の外部表面を前記基材の下端で前記チャネルの開放端部から密封させるための手段が、前記膨張可能カラーを備えてなる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記真空手段が、前記基材の反転した端部を収容する、端部が広い漏斗を備えてなる、請求項5〜15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
請求項1〜4の何れか一項に記載の方法工程を行う装置を制御するためのコンピュータ動作手段を備えてなる、請求項5〜16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリスであって、
ウォールフローフィルタ基材の入口チャネルに予備コーティングし、微細に分離された耐火性固体物を含む表面メンブラン層を備えてなり、
出口チャネルが、軸方向に沿って実質的に均一な触媒ウォッシュコートのコーティングプロファイルを備えてなり、
請求項1〜4の何れか一項に記載の方法によって得られてなる、触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリス。
【請求項19】
触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリスであって、
ウォールフローフィルタ基材の入口チャネルに予備コーティングし、微細に分離された耐火性固体物を含む表面メンブラン層を備えてなり、
出口チャネルが、軸方向に沿って実質的に均一な触媒ウォッシュコートのコーティングプロファイルを備えてなり、
前記触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリスの軸方向の上流側半分の前記ウォッシュコーティング含有量が、軸方向の下流側半分の含有量の10%以内である、触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリス。
【請求項20】
前記ウォールフローフィルタ基材モノリスのコーティング前の空隙率が、40〜80%である、請求項18又は19に記載の触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリス。
【請求項21】
前記ウォールフローフィルタ基材モノリスのコーティング前の平均空隙容積が、8〜45μmである、請求項18〜20の何れか一項に記載の触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリス。
【請求項22】
前記触媒ウォッシュコートが、NOトラップ、担持された白金族金属を含んでなる触媒化された煤フィルタウォッシュコート、又はNH−SCR触媒である、請求項18〜21の何れか一項に記載の触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリス。
【請求項23】
前記NH−SCR触媒が、ゼオライトで置換された遷移金属を含んでなる、請求項22に記載の触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリス。
【請求項24】
前記遷移金属が、銅、鉄、セリウムおよびこらの二種以上の混合物からなる群より選択されてなり、
前記ゼオライトが、フェリエライト、CHA、BEAおよびMFI(ZSM−5)からなる群より選択されてなる、請求項23に記載の触媒化されたウォールフローフィルタ基材モノリス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−516307(P2013−516307A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546507(P2012−546507)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050005
【国際公開番号】WO2011/080525
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】