説明

モバイルの位置検出

無線通信ネットワークにおけるモバイル無線端末の位置を計算するための方法およびシステム。該方法は、前記モバイル無線端末の位置を計算するために、モバイル無線端末において無線信号パラメータの測定値を収集し、次いでこれを処理してネットワークプロセッサへと送信するために提供される。収集された測定値はフィルターされてよく、また特定のアプリケーションについてのそれらの適性に従って、これら測定値のサブセットが選択されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワーク内において、モバイル無線端末の位置を検出するための方法および装置に関する。
【0002】
〔優先権書類〕
本願は、下記に基づく優先権を主張する:
2005年4月8日に提出された「モバイルの位置検出」と題するオーストラリア国仮特許出願第2005901735号;2005年7月6日に提出された「向上された地上モバイルの位置検出」と題するオーストラリア国仮特許出願第2005903577号;および2005年11月4日に提出された「プロファイルに基づく通信サービス」と題するオーストラリア国仮特許出願第2005906105号。これら各出願の全体を、本明細書の一部として援用する。
【0003】
〔本願への援用〕
以下の記述において、下記の同時継続特許出願を参照する:
・「無線モバイルユニットの位置検出システム」と題する、PCT/AU2005/001358;
・「向上されたモバイル位置検出方法およびシステム」と題する、PCT/AU2006/000347;
・「向上されたモバイル位置検出」と題する、PCT/AU2006/000348;
・オーストラリア国仮特許出願第2005901735号、同第2005903577号、および同第2005906105号の優先権を主張した、「向上された地上モバイルの位置検出」と題する同時継続の国際特許出願。
これら出願の全体の内容を、本明細書の一部として援用する。
【背景技術】
【0004】
モバイル電話の位置を検出するための広範なシステムが存在している。これらは次の三つのカテゴリーに分類される:
ネットワークに基づくシステム。このようなシステムは、1以上のネットワークに基づくサーバにおいて、単一パラメータ測定ならびに位置計算を実行する。
携帯電話機に基づくシステム。これらのシステムでは、測定および位置計算の両者が携帯電話機において実行される。
ハイブリッド。これらのシステムにおいては、測定は一つの場所で実行される一方、位置計算はもう一つの場所で実行される。例えば、携帯電話機が測定を行い、それを位置計算が行われるネットワークに基づくエンティティーに報告する。幾つかの場合に、これらの測定は送信の前に予備処理される。
【0005】
<現在のシステムの限界>
特定の位置に基づくサービスを動作させるときに、該サービスの成功における重要な決定因子はユーザに対するコストである。位置に基づくサービスの場合、このコストのかなりの大きな部分は、実際に位置見積りを得ることに起因するものである。多くの場合、このコストは主に、位置計算のために単一のパラメータ測定値を得ることにおいて生じるものである。一例として、携帯電話機に支援されたハイブリッドシステムにおいて、該ネットワークに基づくエンティティーは、モバイルへの接続を開かなければならず、測定をリクエストしなければならない。次いで、この携帯電話機は、該測定値をリクエストしているエンティティーへと送信しなければならない。この交換はネットワーク資源を消費し、その結果として費用を生じさせる。更に、ネットワーク資源は有限であり、従って、同時に追跡できるユーザの数を制限すると共に、ネットワーク資源を必要とする他のサービスについての妥協を必要とする。以下の段落において、我々は、本発明のシステムと比較したときの現存システムの限界を概説する。主な限界は、過剰なコストまたは不十分な特性である。
【0006】
<ネットワークに基づくシステム>
ネットワークに基づくシステムでは、ネットワークに基づく装置が、モバイル端末から受取った信号のパラメータを測定する。この測定装置は、現存するモバイルネットワークのベースステーションまたは現存のネットワークに対するオーバーレイとしてインストールされた補助受信機であってよい。何れの場合にも、信号が測定のために利用可能であるためには、送信しているモバイル端末についての基本的要件が存在する。このことは、モバイル端末の位置を頻繁にモニタリングすることが必要とされるが、商業的利益のために位置を使用する頻度が遥かに低い場合に、位置に基づく如何なるサービスについても深刻な限界を提示する。説明のために、モバイル宣伝広告の応用を考える。特定の店またはチェーンは、登録された顧客が何時店にアプローチするかを知りたいと思う。この目的は、受取り人を店に勧誘するために、時間限定のディスカウントオファーに付随したターゲッティングされた宣伝広告を送信することである。ネットワークに基づく位置検出システムを用いてこのような応用を働かせるためには、例えば10分間隔で、周期的な位置測定を行わねばならないであろう。これら位置測定の各々によって、モバイル端末を活性化されることを必要とし、ネットワーク資源およびモバイルのバッテリー使用に関する費用が生じる。現時点において表示された費用として、モバイルオペレータは、ショートメッセージサービス(SMS)について課されるレートに類似したリクエスト当りのレートを課すように思える。手近な例においては、顧客が店の近くに位置することなく、位置リクエストが長期の日数または週に亘って継続するかもしれない。その結果は、店のオーナーが1回の宣伝広告を送る機会も持てないまま、非常に大きな累積コストが生じることである。店のオーナーおよびこのようなシステムの他の同様な潜在的ユーザは、このような条件の下ではサービスを使用しないであろう。
【0007】
<ハイブリッド位置検出システム>
最も普通のハイブリッドアーキテクチャーにおいて、測定は携帯電話機によって行われ、次いで、位置計算のためのネットワークに基づくエンティティーに提供される。各位置見積りには、携帯電話機から前記ネットワークに基づくエンティティーへの測定値の転送が必要とされる。この転送は、SMS、一般的なパケット無線サービス(GPRS)、または他の無線伝達媒体を介したものであることができるが、その全てが有限のコストを生じ、該コストは各サイクル毎に累積し、導かれる商業的利益に対する固定した比率は存在しない。
【0008】
<携帯電話機に基づく解決策>
先の段落で述べた限界は、おそらく、トランザクションのコストを伴わずにユーザの位置をモニターできるシステムを使用することによって克服することができる。上記の応用例において、コストは顧客が店の近くにいるときに生じるのみである。携帯電話機に基づくシステムは、このような解決策を提供することができる。
【0009】
現存の携帯電話に基づく解決策が存在する。おそらく、最もよく知られているのは人工衛星に基づく解決法であり、ここでは全地球測位システム(GPS)受信機が携帯電話機に組込まれる。この型のシステムは、正確で且つ費用のかからない位置モニタリング、および有用なときだけのトランザクションを提供することができる。この解決策の一つの欠点は、GPSを可能にした携帯電話機のマーケットへの浸透が比較的低いことである。これは、このような携帯電話機を使用した位置に基づくサービスが、モバイル電話加入者の小さいパーセンテージにしか提供できないことを意味する。更に、GPS受信者の信頼性のある操作は、一般には、大空が合理的な視界をもった屋外環境に限定される。
【0010】
現存する携帯電話機に基づくもう一つの解決策は、粗いセル識別性(CID)に基づく位置計算を提供する。これは、現時点で当該モバイル端末にサービスを提供しているベースステーションの位置を使用する。当該モバイルがベースステーション識別子および対応する位置の利用可能な表を有していれば、概略の位置を計算することができる。このアプローチは反復した位置トランザクションのコストを回避するが、位置の不正確さに起因した大きな欠点を蒙る。幾つかの場合に、そのエラーは数キロメートルになる可能性がある。より洗練されたアルゴリズムを使用して改善された精度を得るための技術が知られているが、非常に制限された処理およびメモリー資源に起因して、これらは携帯電話機、特に加入者識別モジュール(SIM)カード上での実行には適さない。
【発明の開示】
【0011】
本発明の一つの側面に従えば、位置計算において使用するための位置データを得る方法が提供され、該方法は、
最初に、複数の無線信号パラメータの少なくとも一つの測定値を得ることと;
次いで、複数の後続の無線信号パラメータの少なくとも一つの後続の測定値を得ることと;
前記少なくとも一つの測定値および前記少なくとも一つの後続の測定値をフィルターにかけて、位置データを得ること
を含んでなるものである。
【0012】
一つの形態において、前記少なくとも一つの測定値および前記少なくとも一つの後続の測定値は、モバイル無線通信端末によって得られる。
一つの側面において、前記位置データは、位置計算に使用するために、プロセッサへのその後の送信のために保存される。
もう一つの形態において、前記位置データは、間欠的に前記プロセッサに送信される。
更なる形態において、前記位置データは、規則的な時間間隔で前記プロセッサに送信される。
【0013】
もう一つの形態において、前記位置データは、リクエストされたときに前記プロセッサに送信される。
もう一つの形態において、前記位置データは、前記プロセッサにリクエストされたときに該プロセッサへと送信される。
一つの形態において、前記位置データは、前記プロセッサにリクエストされたときに該プロセッサへと送信される。
もう一つの形態において、前記位置データは、前記モバイル無線端末のユーザにリクエストされたときに前記プロセッサへと送信される。
【0014】
もう一つの側面において、前記位置データは、前記モバイル無線端末の位置に変化が生じたときに送信される。
更なる側面においては、前記モバイル無線端末のバッファが一杯になるまで、更なる複数の無線信号パラメータについての複数の測定値が入手される。
もう一つの形態において、当該方法は更に、特定の応用に従うフィルタリングのために、前記入手された少なくとも一つの測定値および少なくとも一つの後続の測定値のサブセットを選択することを含んでいる。
【0015】
もう一つの形態において、当該方法は更に、複数の位置データを保存することを含んでなるものである。
もう一つの形態において、当該方法は、特定の応用に従って、前記位置データのサブセットを選択することを含んでなるものである。
更なる形態において、前記位置データは、可変長のデータメッセージで送信される。
もう一つの側面において、前記データメッセージの長さは、特定の応用に従って決定される。
【0016】
もう一つの形態において、当該方法は更に、前記少なくとも一つの測定値および/または前記少なくとも一つの後続の測定値の1以上を、周期的に除去することを含んでなるものである。
もう一つの形態において、前記少なくとも一つの測定値の1以上および前記少なくとも一つの後続の測定値の1以上を周期的に除去するステップは、それらの関連性に従って行われる。
【0017】
もう一つの側面において、当該方法は更に、得られた位置データのサブセットを、該サブセットの関連性に従って、送信のために選択することを含んでなるものである。
もう一つの側面において、当該方法は更に、送信データメッセージのサイズに従って、得られた位置データのサブセットを送信のために選択することを含んでなるものである。
更なる側面において、前記複数の無線信号パラメータは、少なくとも一つの曖昧でない無線信号パラメータおよび少なくとも一つの曖昧な無線信号パラメータを含んでいる。
【0018】
一つの形態において、前記曖昧な無線信号パラメータは、前記フィルターにかける前に解像される。
更なる形態において、前記曖昧な無線信号パラメータを解像するステップは、前記フィルターにかける前に、できるだけ長い間延期される。
【0019】
もう一つの側面において、当該方法は更に、補助情報を前記モバイル無線端末に送ることを含んでなるものである。
更なる形態では、前記補助情報を使用して、前記モバイル無線端末において位置見積りが計算される。
【0020】
本発明のもう一つの側面に従えば、無線通信ネットワークにおけるモバイル無線端末の位置を計算する方法であって:
前記モバイル無線端末の位置に関連して、既述した側面の何れか一つの方法に従う位置データプロセスを受信することと;
前記データを処理して、前記モバイル無線端末の位置を計算することと
を含んでなる方法が提供される。
【0021】
一つの形態において、前記処理するステップは、コスト関数を最小化することを含む。
更なる形態において、該コスト関数は次式によって与えられる。
C(x)=Cr(x)+Ct(x)+Cu(x)
ここで、
rは、信号強度観察に付随するコストであり;
tは、タイミングアドバンス観察に付随するコストであり;
uは、報告されないセル観察に付随するコストである。
【0022】
更なる形態において、Cr、CtおよびCuは次のように計算される:





【0023】
本発明のもう一つの側面に従えば、先に述べた本発明の側面の何れか一つのステップを実行するためのシステムが提供される。
本発明の更なる側面に従えば、本発明の第一の側面のステップを実行するためのモバイル無線端末が提供される。
【0024】
〔詳細な説明〕
次に、添付図面にその例を示した本発明の1以上の実施形態を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの例および実施形態は、説明としてのみ提供されるものであり、発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。更に、一実施形態の一部として図示または記述される特徴は、更に新しい組合せを提供するために1以上の他の実施形態と共に使用されてもよい。
【0025】
本発明は、これら変形例および実施形態、並びに当業者が理解するであろう変形例および改変をカバーすることが理解されるであろう。
本明細書を通して、「モバイル」または「モバイル電話」の用語は、「携帯電話」または「モバイル無線端末のような用語と同義語的に使用され、また携帯電話、携帯用情報端末(PDA)、ラップトップもしくは他の可動式コンピュータ、または携帯用小型無線呼出し機のような如何なる種類のモバイル無線端末をも包含することが理解されるであろう。
【0026】
以下の説明において、処理がモバイル端末において実行されると記述されるとき、当該処理は、携帯電話機において、携帯電話機に挿入される加入者識別モジュール(SIM)において、携帯電話機に挿入される追加の処理カードもしくはスマートカードにおいて、またはこれらの二以上の組み合せにおいて実施できることが理解されるであろう。
【0027】
また、本発明の種々の側面の実施において生じる処理の多くは、携帯電話機、無線通信ネットワーク内の1以上のネットワーク要素、および/または該無線通信ネットワーク外の1以上の要素の間に分配されることもできる。また、本発明は、モバイル端末の位置見積りが要求される如何なる用途にも適用され得ることが理解されるであろう。
【0028】
<アーキテクチャー>
図1は、送信機または基本トランシーバステーション1,2および3を有する例示的無線通信ネットワーク10の一部を示している。また、図1にはモバイル無線端末またはモバイル20およびサーバ30が示されている。該サーバは、ネットワークの中に組込まれてもよく、またはネットワークに付随してもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、モバイル端末の位置に関する無線パラメータ測定は、該端末において行われる。これらは、セル識別子、チャンネル周波数、他の識別コード、例えばベースステーション認識コードまたはスクランブルコード、並びにタイミング(往復タイミングまたは時間差を含む)を含んでいる。この実施形態の一つの形において、測定は設定可能な速度で反復して行われる。この測定値は、以下で述べるようにアキュムレータに加えられる。ネットワークに基づくサーバにおいて位置計算のために測定値が必要とされるときに、測定値アキュムレータにおける情報の幾つかまたは全部が、メッセージの中に暗号化されて前記サーバへと送信される。必要に応じ、情報は、ロスを伴ってまたはロスを伴わずに圧縮される。この送信は、サーバからのリクエストメッセージによって開始されてよい。或いは、この送信は周期的に開始されてよい。或いは、この送信は、充分な位置変化を検出したときにモバイルによってトリガーされてよい。利用可能な測定値のタイプは、用途、モバイル端末の測定能力、並びに無線ネットワークの種類、およびデータを担持するために使用される伝達媒体に依存して変化する。例えばGSMネットワークにおいて、当該システムのモバイル端末成分のホストとして働くためにSIMカードが使用される場合、測定値にはサービングセル識別子、ARFCN、BSICおよび受信される信号レベルが含まれる。もう一つの例において、ネットワークがUMTSネットワークの場合、測定値には、1以上のサービングセル識別子、1以上のパイロットチャンネル(CPICH)信号レベル(RSCP)測定値、1以上の往復遅延(RTT)測定値、および1以上の時間差測定値(SFN−SFNオフセット)が含まれる。ネットワークがCDMAネットワークである更にもう一つの例において、該測定値には、1以上のベースステーションID、1以上のパイロットチャンネル(PICH)受信レベル、1以上のPNオフセット、および1以上の往復遅延が含まれる。
【0030】
該端末がネットワークとの確立された接続を有する時点においては、タイミングアドバンス測定が利用可能であり、且つ使用されてもよい。実際に、GSMの中にSIMツールキットを含む幾つかの実施例においては、接続の確立を検出し、このような時点で好機を得て1以上のタイミング測定値を収集することが可能であろう。他の事例で、ソフトウエアが端末で直接実行されるときに、その測定には、上記で述べた全てのタイプの測定値に加えて、時間差が含まれてもよい。
【0031】
無線パラメータ測定値は、以下で述べるような位置見積りを得るためにサーバで処理される。位置測定が、モバイル端末またはネットワークで利用可能な最新の測定値組を処理することにより簡単に得られる現存のシステムと比較して、本発明のシステムは、当該計算のために使用される情報の多様性を最大化するアキュムレータの使用により、顕著に良好な精度を達成する。これは、測定における短期間の変動を減少させることを可能にし、また位置計算のための追加の情報を利用可能にする。
【0032】
幾つかの測定値は、モバイルがネットワークとの確立された接続を有するときにのみ利用可能である。このような測定値の一例は、GSMにおけるタイミングアドバンスである。このタイプの追加の測定値は、位置計算の改善された精度を提供することができる。幾つかのアプリケーションは、より高いサービス品質(または精度)要求を有し得るであろう。このようなアプリケーション要求を満たすために、モバイルはネットワークとの接続を開始し、1以上のタイミング測定値を集め、次いで接続を閉じてよい。なお、この追加のステップは、最新のタイミング測定値が利用可能でなく、且つQOS要求がこのような測定値を必要とする状況においてのみ、実行されるであろうことに留意されたい。該接続は、音声タイプ、データタイプ、GPRSタイプ、またはタイミングアドバンス測定値の入手を可能にする他のタイプの接続であってよい。次いで、この1以上のタイミング測定値は、位置計算のために使用される他の測定値と合体される。
【0033】
<測定値累積の利益についての一般的説明>
本発明は、位置計算に利用可能な情報を最大化すると共に、曖昧な測定値を扱う際に生じるリスクの幾つかを軽減するようにして無線パラメータ測定値を累積するための、モバイル端末における測定値アキュムレータを提供する。典型的には、この累積は、各組が限定された数の測定値を含む複数組の測定値に亘って実行される。曖昧な測定値は、幾つかの測定値についてのユニークな識別子の欠如を意味する。ユニークでない同じ識別子を有する複数の測定値は、必ずしも同じベースステーションに由来するものではない。
【0034】
一例として、GSM端末からのネットワーク測定値レポートは、最大で、一つのサービスセルおよび六つの近隣セルに属する情報を含んでいる。しかし、短期間に亘る反復測定は、フェーディングおよび非静止干渉のような無線電波における変動に起因して、幾つかの多様性を示す可能性がある。これは、何れか一組の測定値を使用して位置見積りを計算することに比較したとき、その代りに幾つかの連続する測定値の組の結果を累積し、位置計算を実行するための幾つかの様式でこれらを組み合わせることによって、屡々、更に正確な見積りを得ることが可能であることを意味する。なお、この改善は、当業者が理解するように、同じパラメータについてのノイズを含む複数の観察の平均を単に報告することによって達成されるゲインよりも、顕著である可能性が高いことに留意すべきである。当該ネットワーク測定値レポートはまた、曖昧な測定値の存在を示す。隣接するセルは通常、それらの周波数およびベースステーション識別コード、または周波数のみによって識別されるに過ぎない。セルの個性とは異なり、これらは当該ネットワーク全体を通してユニークであることが保証されない。正確な位置見積りを決定することは、曖昧な測定値が正しいベースステーションに関連していること、および異なるベースステーションからの測定値が例えば平均化によって偶発的に一緒に混合されないことを必要とする。
【0035】
以下の段落において、我々は、複数の測定サイクルを累積することにより得られる追加の情報を例示するために、GSMネットワークにおいて動作するモバイル端末から取った例を示す。
表1は、アイドリングモードにある標準のGSM携帯電話機について取られた、5秒間隔での二つの測定サイクルの結果を示している。
【0036】
表1
第一サイクル:
cid: 25867
arfcn: [99 14 95 87 2 89 73]
rxLev: [−37 −34 −42 −58 −72 −73 −78]
bsic: [20 33 34 44 1 54 15]
第二サイクル:
cid: 25867
arfcn: [99 14 95 87 89 2 91]
rxLev: [−39 −35 −42 −52 −68 −71 −73]
bsic: [20 33 34 44 54 1 57]
【0037】
最初の測定値組において、ARFCN・73およびBSIC・15を有するセルは、最も弱い近隣セルとして報告される。しかし、後続の測定値組において、これはARFCN・91およびBSIC・57を有するセルで置換えられている。第二の測定値を入手し、これら二つの組を以下に示すようにしてアキュムレータの中で組合せることによって、これらのセルについての平均化されたパワーレベルの利益だけでなく、追加のセルに属する測定も得られる。位置測定のために追加のセルを利用できることは、屡々、例えば現在のセルの単純な第二の測定よりも更に正確な位置決めを可能にする。これは、当業者に周知のように、データにおける参照点(セル部位)の増大した多様性、および幾何学的劣化における対応した改善のためである。この幾何学的劣化効果は、通常、水平精度劣化(HDOP)または幾何学的精度劣化(GDOP)等の用語によって言及される。測定値の多様性はまた、位置見積りに大きな誤りを生じるであろう明瞭な過誤測定値の拒絶を容易にする。このような拒絶を達成するための技術は、当該技術において周知である。
【0038】
更にもう一つの利益は、報告された測定値における一時的な変動から得ることができる。表2は、この場合も5秒だけ時間的に分離された、今回は専用モードのGSMモバイル端末で測定されたもう一対の逐次的測定値を示している。即ち、このモバイルはネットワークのと樹立された接続を有している。
【0039】
表2
サイクル1:
cid: 9702
arfcn: [26 18 12 12 38 14 20]
ta: 8
rxLev: [−74 −70 −75 −70 −74 −76 −76]
bsic: [35 4 17 17 −99 −99 −99]
サイクル2:
cid: 9702
arfcn: [26 18 6 12 6 20 8]
ta: 8
rxLev: [−71 −63 −77 −70 −74 −76 −74]
bsic: [35 4 33 17 33 −99 −99]
【0040】
この場合、第一の測定において、−99として報告された3つのBSIC値が存在することが認められる。これは、このセルについて、例えば干渉のためにモバイル端末が実際にはBSICをデコードできなかった時に使用されるリザーブされた値である。
【0041】
しかし、第二の測定値組において、6のARFCNを有するこれらセルの最初のものは首尾よくデコードされ、この場合にBSICは33と報告される。この場合の二つの測定サイクルからの情報を累積することによって、我々は、このセルについてのBSIC形態の増大した識別性を得る。この場合には、上記で述べた位置精度での利益も生じる。
【0042】
<測定値アキュムレータの詳細な説明>
本発明は、複数の測定サイクルからの無線パラメータ測定値を累積するための方法を提供する。典型的には、モバイル端末でのこのような実施は、制約された資源、例えば、該アキュムレータを動作させるために利用可能なメモリーおよびCPUサイクルの範囲内で操作されなければならない。ここで述べる方法は、表に保持された情報の値が、位置解の観点から、所定の組の資源制約について最適化され得るフレームワークと共に、累積の利益を提供する。
【0043】
該アキュムレータは、測定される複数のセルのアイデンティティーを保持する一つの表、およびこれらセルに属する測定値を保持する一つの表を維持する。新たな測定サイクルが完了する毎に、これらの表は更新される。新たなセルに属する測定値を受取ると、該セル表は、この新たなセル識別子を用いて更新される。当該表のサイズは制限されている(メモリーおよびCPUサイクルの制限に服す)ので、該新たなセルを追加する前に、現存のエントリーをこの表から追い出す必要がある。この表からの排斥は、位置計算に関する各々のセルに関連した現在の測定値の相対的値を考慮して、相対的値に基づいて実行される。セル表におけるセルの値は、該セルに関連する測定値表における個々のエントリー値の合計として計算される。個々の測定値の値は、相対的な寿命、測定の種類、対応するセル表エントリーに対する一致に関連した信頼度、およびより最近の類似した測定値の存在を考慮して計算される。
【0044】
何れか所定の時点で集積された情報の値を最適化するために、最も価値の低いセルが排斥される。この測定の詳細が、この場合も最も価値の低い現存の測定値を排斥した後に、当該測定値表に追加される。
【0045】
以下の段落は、標準のGSM形態電話機においてSIMツールキット設備を使用するときの、初期化後の二つの測定サイクルに亘るアキュムレータの動作を示している。初期化の時点において、これらの表は空である。表3は、モバイル端末から得られる第一の想定値組を示している。
【0046】
表3
サイクル1でのNMR測定
サービングセル
cid = 26272rxLev = −80
隣接セル
arfcn bsic rxLev
12 17 −88
26 35 −90
28 23 −90
40 19 −97
22 39 −99
30 5 −103
【0047】
表4は、測定値組を追加した後のアキュムレータ表の状態を示している。セル識別子がセル表に追加される。サービングセル測定の場合、ARFCNおよびBSICが端末によって報告されないので、CIDのみが追加される。逆に、隣接セルについてはCIDが報告されず、従って当該表において未特定のまま残る。なお、本発明の他の実施形態では、サービングセル測定が対応するセルに対する曖昧な参照を含む可能性がある。信号レベルの値は、セル表における関連エントリーに対する相互参照(セルインデックス欄に示される)と共に測定表に追加される。各測定値の寿命もまた、時間欄における測定表の中に記録される。
【0048】
表4
------------------------セル表-----------------------サイクル1----
インデックス セルID Arfcn bsic
0 26272 xxx xx
0 xxxxx 012 17
1 xxxxx 026 35
2 xxxxx 028 23
3 xxxxx 040 19
4 xxxxx 022 39
5 xxxxx 030 05
-----------------------------------------------------
------------------------測定表-----------------------サイクル1----
セルInd 時間 一致 rxLev ta
000 000 03 −80 −1
000 000 02 −88 −1
001 000 02 −90 −1
002 000 02 −90 −1
003 000 02 −97 −1
004 000 02 −99 −1
005 000 02 −103 −1
【0049】
表5は、モバイル端末から得られた第二の測定値組を示している。
【0050】
表5
サイクル2でのNMR測定
サービングセル
cid = 26272rxLev = −83
隣接セル
arfcn bsic rxLev
12 17 −88
26 35 −90
28 23 −90
18 4 −97
40 xx −97
【0051】
表6は、第二の測定値組を追加した後の、アキュムレータ表の状態を示している。この場合、該セル表は、第二のサイクルにおいて報告された異なる隣接セル(ARFCN18およびBSIC4)に起因して1だけ成長している。当該測定表は、第二のサイクルからの全ての測定値の追加と共に成長している。
【0052】
表6
------------------------セル表-----------------------サイクル2----
インデックス セルID Arfcn bsic
0 26272 xxx xx
0 xxxxx 012 17
1 xxxxx 026 35
2 xxxxx 028 23
3 xxxxx 040 19
4 xxxxx 022 39
5 xxxxx 030 05
6 xxxxx 018 04
-----------------------------------------------------
------------------------測定表-----------------------サイクル2----
セルInd 時間 一致 rxLev ta
000 005 03 −80 −1
000 005 02 −88 −1
001 005 02 −90 −1
002 005 02 −90 −1
003 005 02 −97 −1
004 005 02 −99 −1
005 005 02 −103 −1
000 000 03 −83 −1
000 000 02 −88 −1
001 000 02 −90 −1
002 000 02 −90 −1
006 000 02 −97 −1
003 000 01 −97 −1
【0053】
先の例は、GSMセルID、信号レベルおよび往復タイミングが、測定値アキュムレータの中に表現される本発明の特定の形態を示しているが、これは、本発明の限定として解釈されるべきではない。当業者には、CDMA(IS95)パイロットレベルおよびPNオフセットのような他のタイプの測定値が如何にして同様の方法で累積され得るかが明らかであろう。
【0054】
<選択および報告>
モバイル端末に維持された情報が位置計算のために必要とされるときには、表の内容を、送信のためのメッセージにコード化することができる。本発明の更なる側面は、コード化する最適な情報の組を選択するためのスキームである。典型的には、送信できるデータの長さには固定された制限が存在する。これは例えば、他のアプリケーションヘッダまたはアドレス情報がコード化された後のSMSの容量である。本発明の方法は、位置解を計算する際に、当該表を走査して、情報をそれらの相対的値が減少する順序で反復して追加する。従って、該セル表の中に表された各々のユニークなセルに関する第一の測定値が追加される。引続き、各セルに関連する第二の測定値が追加され、更に当該メッセージにはめ込むことができるデータが無くなるまで同様に追加される。新たなセルに属する一つの測定値は、概して、位置精度の面で現存の一つのセルについての反復測定よりも有用である可能性が高いので、これは値の順序付けを反映する。
【0055】
この側面の利点は、所定の送信機構について、当該モバイルが保持する情報の最適なサブセットが送られることである。加えて、情報をコード化する際のこの融通性は、送信されるデータの量が、アプリケーションの要求に基づいて調節され得ることを意味する。低レベルの精度で充分である場合には、単一のメッセージ内に収容できるこれら測定値のみを含む単一のメッセージをコード化して送ればよいであろう。より低い精度要件は、例えばモバイル契約者の近傍の興味ある点を参照するためのアプリケーションと共に使用される、より低率で課金されるサービスに関連するかも知れない。他のアプリケーション、例えば高価値資産追跡サービスにおいては、最良の可能な精度が要求される可能性がある。このような場合には、当該表の全内容まで、より多くの情報を送ることができる。当該情報を送信するために使用される伝達媒体に応じて、送信される情報の比率は、該媒体にサポートされる最大メッセージサイズによって大きく左右され得る。
【0056】
単一メッセージのサイズが最大値に制限される場合(例えばSMS)、低い精度が要求される時の情報の比率は、アプリケーションヘッダ等の後の単一メッセージに利用可能な空間によって決定される。SMSの例を用いて続けると、より高い精度が要求されるときは、利用可能な情報の全てを送信するために、複数の連結されたSMSを使用してもよいであろう。もう一つの例を取れば、GPRSを使用すれば、メッセージの数および/またはサイズを更に精密に変化させることができる。一つの場合、最新の測定値組が送られてよい。もう一つの場合、セル表における各ユニークなセルに属する最新の測定値が送られてよく、この方法では、当該解における最大数の異なる地理的基準点を提供するであろう。もう一つの代替法は、当該表の各セルに属する各測定値タイプの最新の測定値を送ることである。
【0057】
当該表の中に異なるタイプの測定値が存在するならば、値の順序付けは上記で述べたものと異なるかもしれない。先の場合には、全ての測定値が信号レベルを表した。しかし、当該表の中に幾つかのタイミングアドバンス測定値も存在するならば、タイミングアドバンス測定値が信号レベル測定に対して優先するであろう。他のタイプの測定値もまた、当該表の中に維持されてよい。対応する完全なセル識別子または部分的セル識別子がセル表の中に維持される一方、測定値は測定値表に記録される。
【0058】
測定値を報告するときに、モバイルはまた、それが全ての利用可能な測定値を送信したかどうかを示す。サービス品質ニーズがより多くの測定値を要求するならば、該ネットワークは当該モバイルから残りの測定値をリクエストすることができる。
【0059】
<平均化に比較した利点>
幾つかのパラメータ測定値における曖昧さの故に、以前のパラメータ測定と共に後のサイクルからのパラメータ測定値を平均化するよりも、連続する測定値組を累積することのもう一つの大きな利益が生じる。平均化を使用するのであれば、所定のセルについての信号レベルまたはタイミングの反復測定値は、別々のエンティティーとして表中に保存されるのではなく、現存の測定値と組合されるであろう。しかし、測定サイクルにおいてセルが部分的にのみ同定される場合、新たな測定値が実際には同じ部分的アイデンティティーをもった異なるセルに関連するリスクが存在する。従って、第二のサイクルにおける測定値は異なるパラメータのものであり、それを第一の測定値と共に平均化することは誤りである。説明したように、本発明は、セルおよび測定値の別の表を保持することによってこの問題に対処する。測定値表における各エントリーについて、対応するセル表のエントリーとの関連または一致における確実さの程度を表すタグも追加される。これは、表6から認めることができる。完全なCIDが報告されるサービングセル測定値は、一致タイプの欄に3でマークされている。潜在的に曖昧なARFCNおよびBSICが報告される隣接測定値は、関連性におけるより程度の低い確実さを表す2でマークされている。最後に、ARFCNのみが報告される隣接測定値(例えば表6における最後の測定値を参照のこと)は、一致タイプ1でマークされている。この方法では、曖昧な測定値を間違ったセルと誤って関連付けし、位置罫線計算においてエラーを生じるリスクが緩和され、位置見積りの全体の精度が改善される。
【0060】
<曖昧な測定値を取扱う位置エンジン>
先の段落では、曖昧な測定値とセルとの間の間違った関連付けのリスクを回避するための方法を説明したが、多くの場合、最終的に測定値を位置計算に組込むために、曖昧さは解像され、それによって各測定値が特定のセルと関連付けされる必要がある。本発明は、最も後の可能な時間まで関連付けのステップを遅らせることによって、間違った関連付け、および付随する位置エラーのリスクを低減する。実際に、測定値アキュムレータにおいて明確な関連は生じない。位置見積りを誘導するために測定値が処理されるとき、初期概略位置見積りを誘導するために、曖昧さが最も小さい測定値、例えばユニークなセル識別子を有するものが最初に処理される。次いで、この見積りが、曖昧さ解像ステップで使用され、該ステップでは残りの測定値がそれらの対応するセルに関連付けられる。この解像プロセスは、曖昧さが増大する順序で進められる。同じタイプの曖昧さを有する二つの測定値の場合、解像ステップは、候補セル一致が最低数の測定値が最初に解像されるという意味において、曖昧さの順序で進行する。各ステップ毎に見積り位置が更新されて、新たに解像された測定値が組込まれる。
【0061】
この側面の動作を例示するために、下記の表7に再掲した表6の測定値表の内容を考慮されたい。
【0062】
表7
セルInd 時間 一致 rxLev ta
000 005 03 −80 −1
000 005 02 −88 −1
001 005 02 −90 −1
002 005 02 −90 −1
003 005 02 −97 −1
004 005 02 −99 −1
005 005 02 −103 −1
000 000 03 −83 −1
000 000 02 −88 −1
001 000 02 −90 −1
002 000 02 −90 −1
006 000 02 −97 −1
003 000 01 −97 −1
【0063】
最初のステップにおいては、位置見積りを得るために、一致タイプが3の測定値(即ち、セル識別子と詳細に関連付けられているもの)が処理される。この後、一致タイプが2の測定値(部分的に曖昧なARFCNおよびBSICと共に報告されたもの)を処理して、曖昧さを改造し、各々を特定のセルに関連付ける。最後に、一致タイプが1の一つの測定値(関連のARFCNのみが知られているもの)が加えられる。この解像プロセスは図2に示されている。単一の測定値に関連した曖昧さを解像するための処理が、図3に示されている。理想化されたモバイルネットワークが示されている。二つの特定のセル1および2に標識が付されており、この例では、同じARFCNおよびBSICを有するセルを表している。モバイル端末20は、セル1についての信号レベル測定値を含んだ、位置計算を可能にする無線パラメータ測定値を報告する。ARFCNおよびBSICのみが報告され、また該ネットワークデータベースにはARFCNおよびBSICを有する二つのセルが存在するので、位置エンジンは、セル1に属する信号レベル測定値を曖昧なものとして識別する。この解像には、曖昧でない測定値から誘導されたモバイル30についての概略見積りが使用される。この概略見積りは、例えばサービングセル測定値において認識されたセルの位置に対応し得るであろう。サービングセルの重心のような他の見積りを使用してもよいであろう。複数の曖昧な測定値が利用可能であれば、これら測定値の種々の組合せを使用して、初期見積りを得てもよいであろう。この概略見積りを使用することにより、以下で述べる無線ネットワークモデルを使用して、曖昧なセル候補から見積もられた位置で受信される信号レベルを予測する。図示された例示において、セル1についての予測されたレベルは−74.1dBmであるのに対して、セル2についての予測されたレベルは−127.9dBmである。モバイル端末によって受信される可能性が最も高いものが実際に測定されたセルとして選択され、それによって曖昧さが除去される。この選択は典型的には、最大の予測受信パワーをもったセル、この場合はセル1である。
【0064】
<位置エンジンアルゴリズム>
位置を計算するために使用される無線パラメータ測定値には、1以上の信号レベル、タイミングアドバンス、時間差、または他のパラメータが含まれてよい。現在の内容において、我々は、これらの測定値を観察値と称する。その全内容を本明細書の一部として援用するPCT/AU2006/000347に開示されたように、特定のセルについて報告される何れかの測定値の欠失から、追加の観察値が推定されてもよい。これらのセルは、非報告セルと称される。これは、何時でも、当該ネットワークにおける全セルのサブセットだけに関する信号パラメータ測定値が得られることに基づいている。更に、GSMのような幾つかのネットワークにおいて、モバイルは、それが実際に測定できるセルのサブセットを報告するに過ぎない。解説を単純化するために、我々は、ここでは三つのタイプの観察値、即ち信号レベル、往復タイミング測定値、および非報告セルのみを取扱う。ここで述べるアルゴリズムは、当業者が容易に理解するように、時間差のような他のタイプの観察値にも容易に拡大される。
【0065】
我々は以下の定義を用いる:
i番目の信号強度観察値は、ベクトルοηによって示され、ここで、
οri=[kri,rriΤ
であり、
kri=i番目の信号強度観察値の識別子、
ri=i番目の信号強度観察値の信号レベル(dBm)
である。
【0066】
モバイル端末の所定の仮定された位置について、前記観察値および観察されたパラメータについての対応する予測値に基づいてコストが計算される。予測された値は、当該技術において周知のモバイル無線ネットワーク伝播モデルを使用して得られる。該モデルは、セル部位の位置、セルアンテナの高さおよび向き、アンテナの放射パターン、並びに各セルに割当てられたチャンネル周波数および何れか他のコードを含む、無線ネットワークの構成についての情報を使用する。該モデルはまた、無線信号が送信者から受信者へと移動するときの信号パワーにおけるロスをカバーする。このようなモデルは、無線通信分野において周知であり、該主題に関する殆どの先進レベルテキスト中に見出すことができる。予測された受信信号パワーは、当該ネットワークにおける何れかまたは全てのセルについて発生させることができる。これらのパワーレベルもまた、何れか特定のセルからの信号の受信された品質が予測され得るように、干渉レベル見積りを誘導するために使用することができる。受信される信号レベルおよび干渉レベルを予測するためのネットワークモデルの適用は、セル無線ネットワーク設計の当業者に周知である。W. C. Y. Lee, Mobile Communications Engineering. McGraw-Hill, 1982、および P. L. H. A. S. Fischer, Evaluation of positioning measurement systems, TlPl.5/97-110, December 1997, and IEEE VTS committee, Coverage prediction for mobile radio systems operating in the 800/900 MHz frequency range, IEEE Transactions on VTC, VoI 37, No 1, February 1998を含む詳細な参照文献が存在する。これら参照文献の内容を、本明細書の一部として援用する。
【0067】
コストは、測定値と対応する予測値との間の差の定量的表現である。幾つかの関係において、このようなコスト関数はまた、数的最適化の当業者に周知のように、ペナルティー関数として知られているかもしれない。
信号強度観察値に関連したコストは、Crであり、これは次式によって与えられる:

ここで、
Nr=信号強度観察値の数
x=モバイルの仮定された位置
r(j,x)=位置xにおけるj番目のセルの予測された受信信号レベル
σr=信号強度測定値の標準偏差
である。
【0068】
i番目のタイミングアドバンス観察値は、ベクトルotiによって示され、ここで、
οti=[kti,tiΤ
であり、
kti=i番目のタイミングアドバンス観察値の識別子であり、
i=i番目のタイミングアドバンス観察値
である。
【0069】
タイミングアドバンス観察値に関連したコストは、Ctであり、これは次式によって与えられる:

ここで、
Nt=タイミングアドバンス観察値の数
t(j,x)=位置xにおけるj番目のセルの予測タイミングアドバンス
σt=タイミングアドバンス測定値の標準偏差
である。
【0070】
i番目の非報告観察値は、スカラー量οζによって示され、ここで、
oui=kui
であり、
kui=i番目の未報告セルの識別子
である。
【0071】
非報告セル観察値に関連したコストは、Cuであり、これは次式によって与えられる:

ここで、
Nu=非報告セルの数
u(j,x)=位置xにおけるj番目のセルの予測信号レベル(dBm)
σr=信号強度測定値の標準偏差
ru=PCT…に記載された、固定された閾値(dBmで)
である。
【0072】
なお、引続く段落において、我々は関連の非報告セルを識別する手段を説明する。
合計コスト関数Cは次式によって与えられる:
C(x)=Cr(x)+Ct(x)+Cu(x)
位置アルゴリズムは、このコスト関数を最小にする位置xを見出そうとする。このようなコスト関数を最小化するための頑強な数的方法ガ当該技術において周知であり、該主題に関するテキスト、例えば、W. H. Press, S. A. Teukolsky, W. T. Vetterling & B. P. Flannery, "Numerical Recipes in C++; The Art of Scientific Computing", 2nd Ed, Feb. 2002, Cambridge University Pressの中に見出すことができる。
【0073】
<適切な非報告セルを同定する>
所定の位置計算のための非報告セルの組は、潜在的に、位置計算のために使用されるべき測定値の何れとも関連しない全てのセルを含んでいる。非報告セルの使用の背後にある原理は、セルについての報告がないことを、測定を行うモバイル端末の位置に関するもう一つの制約を得るために使用できるということである。従って、非報告セルとして使用するための興味あるセルは、それについて報告のないことが或る種の情報を伝達するものである。モバイルの概略位置から遠く離れた位置にあるセルは、何ら情報を伝達しないことは容易に理解できる。簡単に言うと、当該セルが報告されないことに何の驚きもない。報告がないことが有用な情報を伝達するのは、それが当該モバイルに近接しているセルに関するものである。
【0074】
図4は、裏付けのための図解を提供する。これは、理想化された六角形で表されるセルのクラスターを備えたモバイルネットワークを示している。モバイル端末20も示されている。モバイル端末は、1,2および3の番号を付した三つのセルから送信される信号を使用して、無線パラメータ測定値の組を作成する。これらは、図において濃い陰影で強調されている。これらの測定値に基づいて、モバイルの位置についての初期見積り50が計算される。これは星印で示されている。非報告セル候補を同定するために、我々は、残りの全ての非報告セルから、見積もられた位置のモバイル端末により測定および報告され得たであろうものを選択する。見積もられた位置のモバイルにより受信されるであろう信号レベルを予測するために、伝播モデルが使用される。次いで、選択基準が適用される。この基準は、予測された受信信号レベル、または予測されたC/Iに基づくものであってよい。例えばGSMにおいて、適切なC/I閾値は+9dBであろう。UMTSネットワークについては、適切な閾値は約−26dB〜約+15dB(例えば、−26dB〜−12dB、−22dB〜−6dB、−20dB〜−12dB、−15dB〜0dB、−12dB〜+3dB、−6dB〜+12dB、−3dB〜+15dB、および+3dB〜+15dB等)の範囲であってよい。
【0075】
予測されたC/Iがこの閾値を越える何れのセルも、この報告されない組に含まれるであろう。この制限内において、当該ネットワークにおける全ての残りのセルが、非報告セットに加えられることができるであろう。この場合の唯一のペナルティーは、これらセルについての報告されないコストを評価することにおけるコンピュータ処理資源の浪費であり、その殆どは当該解に対して極く僅かしか寄与しないであろう。
【0076】
<典型的な特性>
以下の段落では、標準のGSMモバイル端末を使用して、GSMネットワークでの種々の環境で達成される典型的な結果を概説する。表8は、密集した都市環境での135点で取られた測定値について、コンピュータ処理された精度統計データを示している。報告された統計データは、全ての点を増大する半径方向エラーに従って並べたときの、第67百分位および第95百分位における半径方向位置エラーである。これは、モバイル端末のフィールドにおける位置精度を報告するための普通のやり方である。結果は、三つの異なる位置見積り法について示されている。この表の最後の行は、本発明の一実施形態についての結果を示している。最初の二つの行は、当該技術において周知の別の位置見積もり方法についての結果を示しており、本発明により提供される改善の程度を示す基準尺度として働くものである。
【0077】
表8

【0078】
表9は、郊外環境における150点での測定値の結果を示している。当業者が理解するように、郊外環境におけるより大きさセル部位間の距離が、都市環境での測定値に比較して精度が低下する大きな原因である。
【0079】
表9

【0080】
表10は、田園環境における115点での測定値の結果を示している。
【0081】
表10

【0082】
<測定値組の時間ダイバーシティー>
モバイル端末の位置計算のために、同時にではなく、ある時間に亘って行われた測定を使用するときに一つの問題が生じる。この問題は、当該端末が移動中であるかもしれず、連続する測定セットが同じ位置でなされたものではない可能性があることである。測定セットの間の移動が十分に大きければ、例えば約25メートルよりも大きければ(例えば、>20m、>35m、>50m、>100m等)、該測定値を一つの計算に組込むことは、個々の測定値組を個別に処理するよりも、一般論としてより大きなエラーを生じるであろう。
【0083】
本発明は、当該計算に使用するために2例以上で記録された測定値が報告されるときに使用するための、適用できる位置計算方法を提供する。最初のステップは、第一の測定値組を使用して、測定がなされた位置を表すプロファイルを誘導することである。個別の測定値の属する組は、測定値表の経過時間欄によって表される。次いで、それらが最初の測定値組と同じ近傍でなされた可能性をチェックするために、同時係属出願に開示されたようにして、その後の測定値組がこのプロファイルに対して比較される[ホームゾーン]。この比較のための閾値は、約数十メートルの比較的小さなゾーンを有するように設定される。
【0084】
この比較によって、当該測定が同じ位置でなされたものであることが示されれば、これらの測定値は、本明細書に記載した方法を使用して一つの計算に組込まれる。或いは、それぞれの測定が移動している端末によってなされたと思われるときは、それぞれの測定値組を使用して別々の位置計算が行われる。次いで、一つの位置見積もりが必要とされるときは、これらの結果が平均化される。或いは、当業者が理解するように、これらの測定値は運動の方向を表すベクトルを見積もるために使用されてよい。
【0085】
<より多くのデータを適用可能に取得する>
測定値の数、並びにモバイルと送信機との間の地理的関係が、位置見積りの精度に影響することは当該技術において周知である。本発明において先に言及した精密さの希釈は、この効果を定量化するため使用される一つの計量法である。位置見積りの精度の評価を与えるために、測定値の数および相対的地理環系を組み合わせるための機構もまた、当該技術において周知である。先に述べたように、モバイルは、より正確な位置見積りを行う上で有用であり得る測定値の全てを作成しなくてもよく、または報告しなくてもよい。精密さの希釈または同様の計量法を使用することにより、位置のコンピュータ処理は、更なる測定値が位置見積りに対する最良の改善を提供するモバイルを同定し、また該モバイルからリクエストすることができる。これらは、当該モバイルによって報告されていないベースステーションの測定値、および/または既に報告されたベースステーションの更なる測定値であってよい。
【0086】
位置見積りをコンピュータ処理する前または後で、例えばC. R. Drane, Positioning Systems - A Unified Approach, Lecture Notes in Control and Information Sciences, Springer Verlag, Oct 1992に開示されたような当該技術で知られた方法を使用して、位置精度を見積もることができる。見積もられた精度が予め定義された精度に一致せず、または越えるときは、当該モバイルから更なる測定値をリクエストすることができる。予め定義された精度は、各位置リクエストに関連した地球的要件またはサービスパラメータの品質であることができる。モバイルが充分な量または質の測定を行うことができない状況において、追加の情報を要求する無限サイクルを回避するために、許容される追加のリクエストの数を制限するように第二のパラメータを特定することができる。
【0087】
位置見積りの精度を改善するであろうベースステーションの同定には、報告されなかったけれども位置情報を含む可能性のあるセルを同定するのと同じアプローチが使用される。現在の位置見積りに基づいて知ることができるセルを同定したら、各々が解の精度に対して有し得る効果が評価される。これは、測定機会、測定値を保存するメモリー、および測定値をネットワークに逆に報告するためのスペースに関して、モバイルが制限された資源を有すると仮定した場合に、精度における最大の可能な改善を提供するセルを、該モバイルが測定するように試みることを可能にするためのランキングを提供する。必要に応じて、該ランキングは、潜在的改善および初期の同定プロセスの際に見積もられた通りに測定され得る可能性の尺度を含む、組合された計量法を使用してもよい。
【0088】
<測定の信頼度の調節>
モバイル電話によって行われる測定の品質は、無線環境のタイプおよび行われる測定のタイプと共に変化する。都市環境においては、比較的高レベルの迅速なおよび遅いフェーディングならびに干渉が、タイミング測定の品質を顕著に劣化させる。この同じ現象が、都市環境で行われる信号強度測定における大きな変動の原因でもある。タイミング測定および信号強度に対して無線環境が有する効果を明らかにすることによって、位置見積もりの精度を改善することができる。
【0089】
最初のステップは、位置見積りを得るために使用されるであろう各測定値に対して、無線環境が有している効果を定量化することである。このような効果を定量化するための共通の機構は、屡々スケーリングパラメータを使用して、測定エラーの性質を記述するために使用されている統計的モデルのパラメータを修飾することである。例えば、ガウスモデルにおいては、標準偏差が増大して都市環境に由来する測定に伴う大きな不確実性を反映するであろう。一つの組における各測定値は個別に考慮され、それ自身のパラメータを割当てられる。所定の位置について、全ての測定値は同じ環境によって影響される可能性が最も高く、従って同じパラメータを割り当てられるであろう。
【0090】
パラメータを割当てるための機構は、異なる無線環境を分類し、各環境タイプについてのエラー分布および関連のパラメータを特定することである。表11は、このような分類機構を示している。表11において使用される値は、当該技術で周知の無線伝播モデル、実験データ、無線伝播モデリングツール、またはこれらの1以上の組合せから得ることができる。
表11

【0091】
測定値に環境タイプを割当てるために、種々の機構を定義することができる。測定値に与えられる環境タイプは、起点となるベースステーションに付与されるものであることができる。サービングセルの環境タイプを、所定の測定組における全ての測定値に付与することができる。環境タイプは空間的に定義されることができ、また測定値には、粗い位置測定見積りに従って環境タイプが割当てられるであろう。
【0092】
ベースステーションまたはネットワークカバー面積の領域に関連した環境タイプを定義するために、種々の機構が存在する。組立てられた環境の知識は、環境タイプを割当てるために使用することができる。セルの密度は都市領域で最も高く、田園領域で最も低い。従って、近隣セルへの平均距離に基づく計量法は、環境タイプをベースステーションに、または或る領域について割当てるために使用できる。例えば、セル半径は、最も近いn個のセルまたはセル部位への平均距離の半分と見積もることができる。環境分類では、1km未満の半径は都市、≧1kmおよび<4kmは郊外、≧4kmは田園と定義される。
【0093】
環境パラメータが位置解に対して有する効果を示すために、図5および図6に示した無線ネットワークを考慮するが、ここでは「o」で標識した位置におけるモバイルが、1〜6で標識された6個のベースステーションを聞くものとする。「o」で受信された信号レベルは、ベースステーション1〜6について、それぞれ−85.9、−66.6、−85.3、−98.8、−99.2および−70.6である。GSMタイミングアドバンス測定値は、送信機番号2に関して2200mの距離見積りを提供する。位置見積りは、表8からの都市セルおよび田園セル標準偏差を使用して行われる(都市については、受信された信号レベルについて12dBおよび距離測定について1500m、田園については、受信された信号レベルについて9dB、および距離測定について500m)。図5(田園)および図6(都市)は、真の位置(「o」でマーク)および最低コストの見積もられた位置(「*」でマーク)と共に、それぞれのコスト関数の等高線プロットを示している。都市パラメータを使用したエラーは670.8mであり、田園パラメータについてのエラーは538.1mであり、精度における100mの差はエラーモデルにおける相違によるものであった。
【0094】
<モバイル端末での位置の変化を検出する>
オーストラリア仮特許出願第第2005901735号、同第2005903577号、および同第2005906105号(その全体の内容を本明細書の一部として援用)の優先権を主張する、「向上した地上モバイル位置検出」と題する同時係属の国際特許出願は、ゾーンにおける無線パラメータ測定に基づいて、該ゾーンを定義するプロファイルを得るための方法を開示している。その全体の内容を本明細書の一部として援用する。本発明の一つの側面は、この方法を利用して、モバイル端末が出発位置から移動したときにのみ、測定値をネットワーク要素に報告するための手段を提供する。この設備の一つの応用は、モバイルが移動していないときに測定値を不必要に報告することを回避するためのトラッキングにある。これは、ネットワーク資源およびモバイル端末バッテリー電力の消耗を低減する利点を有する。
【0095】
この解法は、予測される測定値の暫定的ローカルプロファイルを誘導するために、最新の測定を使用する開始時におけるものである。次いで、該端末は、後続の測定値をこの暫定的プロファイルと比較して、位置における顕著な変化をチェックする。このチェックにより位置の有意な変化が生じたことが示されるまでは、更なる報告は送られない。測定値をプロファイルと比較するための技術は、参照した出願に述べられている。また、これも参照した出願に開示されたように、新たなメッセージが送られる前に、必要とされる位置変化についての更に小さい閾値または更に大きな閾値を達成するように、暫定ゾーンの範囲を制御してよい。
【0096】
<コスト効率のよい電話機に基づくトラッキング>
本発明はまた、電話機に基づく位置トラッキング能力を提供する。初期化に際し、モバイル端末はネットワークから、該ネットワークにおけるベースステーションに関するデータの初期収集をリクエストすればよい。このリクエストには、サーバーがモバイルの現在位置を決定し、また該モバイルの付近をカバーする適切なデータ集積の収集を可能にするための、現在のフィルターされた測定値が付随する。次いで、該サーバーは、集積における各ベースステーションについての識別子およびアンテナの詳細(特性、無機および位置を含む)を含めて、当該領域をカバーするベースステーションネットワークデータの集積をモバイルに送信する。固定されたペイロードサイズでカバーできる領域を最大化するために、前記データに圧縮を適用してもよい。加えて、多くの場合に、一緒に配置された異なるセクターが典型的には最小の有意な桁だけ異なり、かつ全てのセクターに同じ位置値が適用され得るので、セル部位当り一つだけの完全なエントリーが送られる。与えられたデータを使用して、当該モバイル端末は位置見積りを計算してよい。この計算は、周期的に、またはメニュー選択のようなユーザ動作に応答して反復されてよい。幾つかのアプリケーションにおいては、エラーを低減するために、位置見積もりは反復して計算され且つフィルターされる。幾つかのアプリケーションでは、粗い速度見積もりもまた入手され得る。モバイル端末はまた、現在の収集されたネットワークデータに関して見積もられた位置をモニターする。見積もられた位置が現在のデータでカバーされる領域の地理的限界に近づけば、追加のデータについてのリクエストがサーバに送られる。以前のように、このリクエストには現在の位置および入手可能であれば速度が伴われ、サーバが、提供されるネットワークデータのサービスエリアを最適化するのを可能にする。現在の収集されたネットワークデータはモバイル端末に保持され、メモリー上の制約によって必要とされるときにのみ廃棄される。該データは、現在の見積もられた位置への最も遠い距離に基づいて廃棄される。モバイル端末はまた、ネットワーク構成における変化に起因して以前に供給されたネットワークデータが古くなる場合を検出するために、一貫性チェックを行ってよい。これは、例えばベースステーション周波数またはIDが変化したときに生じる可能性がある。モバイルの位置が固定された端末において規則的に更新されることが要求されるアプリケーションについて、該モバイル端末は、現在の位置のレポートを送信するように構成されてよい。モバイルが移動する経路または全距離も問題であるアプリケーションをサポートするために、該モバイル端末はまた、フィルターされた位置見積りの履歴を維持してもよい。この情報は、ネットワークに基づくサーバによって、必要とされるときに検索することができる。ネットワークに基づく方法を使用するトラッキングシステムを動作させることに比較して、本発明は、ネットワークおよびバッテリーの影響の低い効率的なトラッキング能力を提供する。それは、ネットワークまたはハイブリッドロケーションシステムにおける位置測定に付随する高いトランザクション費用を伴うことなく、有用な精度を提供する。
【0097】
本発明のもう一つの実施形態において、モバイルは、ネットワークにおける全てのベースステーションについての必要な詳細を受信する。無線に基づく資源を使用するこのようなアプローチは非効率的であるが、ドッキングステーションを介して定期的にインターネットに接続されるPDAのような装置については、受信されるデータのサイズが更に容易に適合される。PDAがドッキングされるときは常に、それは位置計算のために必要なそのネットワークデータのコピーをシンクロナイズさせてよい。
【0098】
電話機が現在聞いているベースステーションの座標を有していれば、セルIDに基づく位置見積りは該電話機上で行うことができる。電話機は、一般にベースステーションの識別情報を必要とし、該情報は、モバイルが聞いている信号を該信号の起源の座標と関連付けることを可能にする。一つの実施形態において、当該モバイルは、その位置を最近測定されたセルの座標の加重平均として見積もることができる。この測定値は等しく重要であるとみなされることができ、この場合には、各セルに適用される重み付けは1であろう。典型的には、サービングセルは、隣接測定が行われるセルよりもモバイルに近い。従って、幾つかの場合に、サービングセルには他のセルよりも高い重み付けが与えられる。特定の例について、GSMネットワークにおけるモバイルを考慮する。セルIDに基づく位置検出を実行するために、モバイルは、それが聴くことができる各信号について、セルID、ベースステーション識別コード、ARFCNおよび座標を知ることを必要とするであろう。
【0099】
モバイル無線伝播において予想がつかないことは、モバイルが、与えられたネットワーク構成について一般に予想されるよりも、遥かに遠くからの信号を偶発的に検出できるといったことである。このようなセルは、セルIDに基づく位置精度に対して有意に悪影響を有する可能性がある。見積りのプロセスをこのような影響に対してより頑丈にするために、見積りプロセスに使用されるセルの組を編集して、削減された見積りを作成することができる。この編集は、位置見積りを得る前または後で行われてよい。2サイクル以上の編集が用いられてもよい。以下で述べるように、何れかのセルを選択するために種々の基準を使用することができる。
【0100】
n個のセルが存在するセルID見積りにおいて、一つの加重平均を考察する。各セルは、実質的に結果のn分の1に貢献する。位置見積りから遠く離れたセルを考えてみよう。このセルを測定値組から除去して、新たな位置見積りを計算する。最初の見積りとこの新たな位置見積りの間の距離eを計算する。正規化された計量値e/nr(ここでのrは当該組の中にあるセルの平均有効半径)を計算する。この計量値は、最も遠いセルが、当該見積りをどれだけ変化させることができたかについての正規化された尺度である。この計量値が過剰に高ければ、当該セルは、位置見積りに対して不釣合いな効果を有していたとみなされ、解を計算するために使用する組から削除されるべきである。このプロセスは、最も遠いセルが当該見積りに対して過大な支配を有しないようになるまで繰返すことができる。他の基準には、当該位置見積りから測定されたもののうち、最も遠いm個のセル、または最も遠いxパーセントのセルを削除することが含まれる。
【0101】
ベースステーション座標の代りにセル重心座標を使用して、より正確な位置見積りを達成することができる。セル重心座標の計算は、アンテナの指向性、ポインティング角度および当該セルの有効半径に関する情報を必要とする。このような重心を計算するために必要な式を下記に示す。
【0102】
有効セル半径はまた、近隣セルまでの距離に基づいて、モバイルによって提供または見積もられてよい。モバイルにおける計算を最小化する点において、モバイルにはベースステーション座標の代りに、またはこれに加えて、ネットワークによって単純にセル重心座標が与えられる。説明のために、セクターに区切られたセルを使用するネットワーク中の一例を考察する。有効半径Rを有する特定のセルについて、範囲

を計算する。
セル部位が(xb,yb)に位置するときは、重心座標は次式によって与えられるであろう:
c=xb+rcosθ
c=yc+rsinθ
ここで、
θ=東から反時計回りに測定されたセルのポインティング角度
である。
φが北から時計回りに測定された角度であれば、θ=−φ+π/2である。
図7は,これらの計算を図示している。
【0103】
2以上のセルが測定される場合、位置見積りは、当該モバイルが現在聞いているセルについてのセル重心の重量平均である。i番目のセルの重心座標が(xi,yi)であると仮定すれば、この位置見積もりは下記の通り計算される:

ここで、
N=該計算に使用されたセル部位の数、
i=各セルに適用される重み付け
である。
i≧0であることに留意されたい。
一例として、wi=1,∀iであり、各セルに等しい重み付けを与える。
【0104】
電話機において往復タイミング情報が利用可能であるとき、該電話機は、タイミング測定値をベースステーション情報と合体させる位置見積りを計算することができる。例えば、GMSにおいて、モバイルはタイミングアドバンスおよびベースステーションポインティング角度を使用して、位置見積りを計算することができる。
【0105】
この明細書において用いる「含んでなる」の用語およびその派生語(活用形)は、それが言及する特徴を含み、且つ他に陳述または示唆されない限り、何等かの追加の特徴の存在を排除することを意味しないように解釈されることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、提案システムのアーキテクチャーを示している。
【図2】図2は、二つの測定値における曖昧さを解像する処理のプロセスフロー図である。
【図3】図3は、本発明の一つの側面に従ったネットワークにおける構成を示している。
【図4】図4は、本発明のもう一つの側面に従ったネットワークにおける構成を示している。
【図5】図5は、都市環境のためのパラメータを使用して計算された位置見積りを示している。
【図6】図6は、田舎環境のためのパラメータを使用して計算された位置見積りを示している。
【図7】図7は、セル重心座標のコンピュータ処理を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置計算において使用するための位置データを得る方法であって:
最初に、複数の無線信号パラメータの少なくとも一つの測定値を得ることと;
次いで、複数の後続の無線信号パラメータの少なくとも一つの後続の測定値を得ることと;
前記少なくとも一つの測定値および前記少なくとも一つの後続の測定値をフィルターにかけて、位置データを得ること
を含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも一つの測定および少なくとも一つの後続の測定が、前記モバイル無線通信端末によって得られる方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記位置データは、位置計算機で使用するために、その後のプロセッサへの送信のために保存される方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記位置データは、間欠的に前記プロセッサに送信される方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記位置データは、規則的な時間間隔で前記プロセッサに送信される方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、前記位置データは、リクエストされたときに前記プロセッサに送信される方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記位置データは、前記プロセッサにリクエストされたときに前記プロセッサに送信される方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、前記位置データは、前記プロセッサにリクエストされたときに前記プロセッサに送信される方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、前記位置データは、前記モバイル無線端末のユーザにリクエストされたときに前記プロセッサに送信される方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記位置データは、前記モバイル無線端末の位置が変化したときに送信される方法。
【請求項11】
請求項2〜10の何れか1項に記載の方法であって、前記モバイル無線端末のバッファが満杯になるまで、更なる複数の無線信号パラメータの更なる測定値が入手される方法。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか1項に記載の方法であって、更に、前記得られた少なくとも一つの測定値および少なくとも一つの後続の測定値のサブセットを、特定のアプリケーションに従ってフィルターするために選択することを含んでなる方法。
【請求項13】
請求項1〜10の何れか1項に記載の方法であって、更に、複数の位置データを保存することを含んでなる方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、更に、特定のアプリケーションに従って、前記位置データのサブセットを選択することを含んでなる方法。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1項に記載の方法であって、前記位置データが、可変長のデータメッセージで送信される方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記データメッセージの長さが特定のアプリケーションに従って決定される方法。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか1項に記載の方法であって、更に、前記少なくとも一つの測定値および/または前記少なくとも一つの後続の測定値のうち1以上を周期的に除去することを含んでなる方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記少なくとも一つの測定値および/または前記少なくとも一つの後続の測定値のうち1以上を周期的に除去するステップが、それらの関係に従って行われる方法。
【請求項19】
請求項1〜18の何れか1項に記載の方法であって、更に、入手した送信のための位置データのサブセットを、該サブセットの関係に従って選択することを含んでなる方法。
【請求項20】
請求項1〜18の何れか1項に記載の方法であって、更に、入手した送信のための位置データのサブセットを、該送信データメッセージのサイズに従って選択することを含んでなる方法。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか1項に記載の方法であって、前記複数の無線信号パラメータが、少なくとも一つの曖昧でない無線信号パラメータおよび少なくとも一つの曖昧な無線信号パラメータを含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記フィルターにかけられる前に、前記曖昧な無線信号パラメータが解像される方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記曖昧な無線信号パラメータを解像するステップが、前記フィルターにかけられる前に可能な限り長く延期される方法。
【請求項24】
請求項2〜23の何れか1項に記載の方法であって、更に、前記モバイル無線端末に補助情報を送ることを含んでなる方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、更に、前記モバイル無線端末に補助情報を送ることを含んでなる方法。
【請求項26】
無線通信ネットワークにおけるモバイル無線端末の位置を計算するための方法であって:
請求項1〜25の何れか1項に記載の方法に従って、前記モバイル無線端末の位置に関する位置データプロセスを受信することと;
前記モバイル無線端末の位置を計算するために前記データを処理すること
を含んでなる方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記処理するステップはコスト関数を最小化することを含んでなる方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記コスト関数が次式により与えられる方法:
C(x)=Cr(x)+Ct(x)+Cu(x)
ここで、
rは、信号強度観察に付随するコストであり;
tは、タイミングアドバンス観察に付随するコストであり;
uは、報告されないセル観察に付随するコストである。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、Cr、CtおよびCuが次のようにして計算される方法:





【請求項30】
請求項1〜29の何れか1項に記載のステップを実行するためのシステム。
【請求項31】
請求項1〜25の何れか1項に記載のステップを実行するためのモバイル無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−537667(P2008−537667A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504585(P2008−504585)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000479
【国際公開番号】WO2006/105619
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507332941)シーカー ワイアレス プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】