説明

モータ、ポンプならびにポンプ駆動機器

【課題】ヨーク部の磁束通路の断面積を増大しつつ、材料の歩留まりを良くするようにしたモータを得る。
【解決手段】先端部に磁極部34を設けたティース部33を内側面32aに突設した環状のヨーク部32の一部に、このヨーク部32の出力軸に沿った方向の高さh1を高くする磁性材料で形成した増高部35を設ける。そして、この増高部35を、ヨーク部32の内側領域IA内に収まる形状として形成することにより、その内側領域IAで増高部35を型取りして打ち抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよびそのモータを駆動源とするポンプならびにそのポンプを搭載したポンプ駆動機器に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機や給湯ユニットまたは洗濯機などのポンプ駆動機器は、モータを駆動源としたポンプが搭載されており、それらポンプ駆動機器の小型化を達成するためにはモータの小型化が1つの手段となる。
【0003】
従来では、例えば特許文献1に示されるモータのように、ヨーク部から突設したティース部の先端部に磁極部を設けるとともに、各ティース部にコイル巻線部を設けてステータを構成したものが知られている。
【0004】
このとき、モータの駆動力は、磁極部とこの磁極部が対向する永久磁石との対向面積に依存するので、特許文献1では、コイル巻線部を設けたティース部の回転軸方向高さを磁極部の同方向の高さよりも低くしてある。そして、コイル巻線部をヨーク部や磁極部から突出しないように配置させている。これにより、モータの駆動力を維持しつつ、ヨーク部、磁極部およびコイル巻線部を合わせた回転軸方向の全体的な高さを低くして小型化を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−328971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のモータでは、ヨーク部を複数の鋼板の積層体として形成する方法が多く見られる。この場合、積層される鋼板はヨーク部、ティース部および磁極部を一体化した形状として、鋼板からプレス打抜きされる。
【0007】
また、このようにヨーク部を鋼板の積層体で形成するにあたって、ヨーク部を連続した環状に形成する場合がある。つまり、このようにヨーク部を環状に形成した場合、この環状のヨーク部の周方向に等間隔をもって複数のティース部および磁極部が径方向に突出された形状となる。
【0008】
しかしながら、このようにヨーク部を環状にして鋼板の積層体で形成する場合、そのヨーク部をティース部および磁極部とともに鋼板からプレス打抜きすると、その内側部分は廃棄部分となって材料の歩留まりが悪いものとなる。
【0009】
一方、ステータのヨーク部は断面積が大きいほど磁束の通過効率が高まり、モータの性能が向上される。
【0010】
そこで、本発明は、ヨーク部の磁束通路の断面積を増大しつつ、材料の歩留まりを良くするようにしたモータおよびそのモータを駆動源とするポンプならびにそのポンプを搭載したポンプ駆動機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、本発明のモータにあっては、周方向に多極着磁された永久磁石を有し、出力軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの外周側または内周側に配置される環状または多角形状のヨーク部、前記ヨーク部から前記永久磁石に向けて突設される複数のティース部、前記各ティース部の先端部に設けられ前記永久磁石の着磁面に対向配置される磁極部および前記各ティース部に巻回されるコイル巻線部を有するステータと、を備えたモータにおいて、前記ヨーク部の一部に、当該ヨーク部の内側領域内に収まる形状の磁性材料で形成するとともに、前記ヨーク部の前記出力軸に沿った方向の高さを高くする増高部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のモータによれば、ヨーク部の一部に出力軸に沿った方向の高さを高くする磁性材料で形成した増高部を設けたことにより、増高部を設けた部分でヨーク部の磁束通路の断面積を増大することができる。また、このようにヨーク部の高さを高くする増高部は、ヨーク部の内側領域内に収まる形状であるため、従来廃棄されていたヨーク部の内側部分を有効利用して増高部を形成できるため、材料の歩留まりを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかるモータを用いたポンプを模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示すモータのステータの平面図である。
【図3】図3は、図2に示すステータの正面図である。
【図4】図4は、図2に示すステータの斜視図である。
【図5】図5は、図2に示すステータのヨーク部を板材からプレス打抜きする際の型取り図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態にかかるモータのステータの平面図である。
【図7】図7は、図6に示すステータの正面図である。
【図8】図8は、図6に示すステータの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第3実施形態にかかる食器洗浄機の内部構造を模式的に示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の第4実施形態にかかる給湯ユニットを模式的に示すシステム図である。
【図11】図11は、本発明の第5実施形態にかかる洗濯機の内部構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0015】
[第1実施形態]
図1〜図6は本発明の第1実施形態を示した図であり、図1はポンプPを示し、図2〜図6はそのポンプPを駆動するモータMを示している。
【0016】
ポンプPは、図1に示すように、モータMの出力軸11によって回転される羽根車110と、この羽根車110を収容するポンプ室120と、このポンプ室120の外郭を成すポンプケース121と、を備えて概ね構成されている。
【0017】
一方、モータMは、図1および図2に示すように、永久磁石21を有するロータ20と、コイル巻線部31を有するステータ30とを備えて概ね構成され、コイル巻線部31に通電することにより、ロータ20とともに出力軸11が回転するようになっている。
【0018】
ポンプケース121には、ポンプ室120の中心部に連通する吸込口122と、ポンプ室120の外周に連通する吐出口123とが形成されており、羽根車110の回転により、吸込口122から吸い込んだ水などの液体を吐出口123から吐出するようになっている。
【0019】
モータMは、羽根車110に対して吸込口122とは反対側に配置され、モータMとポンプ室120とが分離板130によって液密に仕切られている。そして、分離板130の外周部は、図示省略したシール材を介してポンプケース121に液密に結合される。
【0020】
また、分離板130の中央部には、永久磁石21を有したロータ20を回転自在に収容する収容室131が凹設されており、この収容室131によってロータ20とステータ30とが液密に仕切られている。
【0021】
ロータ20は、円筒形状のロータ本体22と、ロータ本体22の外壁に設けられて周方向に多極着磁された永久磁石21と、羽根車110を取り付ける支持板23とで構成される。本実施形態では、ポンプケース121に設けられた軸支え部121aと収容室131の端板131aとに回転自在に支持された出力軸11とともにロータ20が回転するようになっている。そして、本実施形態では、このロータ20の外周側にステータ30が同心状に配置されることにより、インナー型ロータ構造のモータMとして構成されている。
【0022】
ステータ30は、図2〜図4にも示すように、ロータ20と同心配置される環状のヨーク部32と、ヨーク部32から永久磁石21に向けて突設される複数のティース部33と、各ティース部33の先端部に設けられ永久磁石21の着磁面21aに近接して対向配置される磁極部34と、各ティース部33に巻回されるコイル巻線部31とを備えて構成される。ヨーク部32、ティース部33および磁極部34は、それぞれが一体となっており、複数枚(たとえば、20枚〜30枚)の鋼板などの軟磁性材料からなる板材Ps(図5参照)を積層して形成される。また、ティース部33および磁極部34は、永久磁石21の極数に応じた数が設けられる。
【0023】
ヨーク部32は、図3および図4に示すように、そのヨーク部32の一部、つまり、ヨーク部32に設けられたティース部33の形成部分32Tを避けて、互いに隣り合うその形成部分32Tの間に増高部35が設けられるようになっている。このとき、増高部35は、ヨーク部32の周方向に6箇所設けられる。
【0024】
増高部35は、ヨーク部32の軸方向両端面32b、32cから軸方向に突出して設けられ、ヨーク部32の軸方向の高さh1を高くするようになっている。
【0025】
ここで、増高部35は、環状に形成されたヨーク部32の内側領域IA(図2参照)内に収まる形状となり、ヨーク部32と同じ軟磁性材料の板材を積層して形成される。なお、ヨーク部32の内側領域IAは、図2で示した中心部分のみならず、ヨーク部32とティース部33と磁極部34で囲まれる周辺領域IAeも含むものとする。
【0026】
すなわち、ヨーク部32、ティース部33および磁極部34は、図5に示すように積層する板材Psの原材料となる鋼板Spからプレス打抜きされる。このとき、ヨーク部32の内側領域IAに、増高部35の板材Paを型取りし、その板材Paも同時にプレス打抜きされるようになっている。このとき、本実施形態では、板材Paが周辺領域IAeを含む内側領域IAの全体で型取りされてプレス打抜きされる。
【0027】
ところで、増高部35を含めたヨーク部32の高さh1は、図3に示すように、コイル巻線部31の高さh2と、この高さh2が高さh1を越えない範囲で略等しくされており、モータMの性能を維持しつつ軸方向の小型化を図ることができるようになる。
【0028】
このように増高部35を含めたヨーク部32の高さh1が決定された際、ヨーク部32の板材Psの積層枚数をたとえば14枚とし、片面側での増高部35の積層枚数を6枚とすると、両面側の増高部35を含めた全体の積層枚数は26枚となる。このとき、増高部35は片面側でヨーク部32の周方向に6箇所、両面側では12箇所設けられるため、1つのステータ3に対して必要な増高部35の板材Paの枚数は、12箇所×6枚=72枚となる。
【0029】
したがって、図5に示したように鋼板Spからヨーク部32の板材Psを打抜く際に、増高部30の板材Paの内側領域IAで6枚を打抜くようにする。つまり、ヨーク部32の1枚の板材Psを打抜くことにより、増高部35の板材Paは6枚打抜かれることになる。すると、鋼板Spからヨーク部32の板材Psを14枚打抜いた際には、増高部35の板材Paは14枚×6枚=84枚となり、少なくとも全ての増高部35の積層分(72枚)を確保することができる。なお、この場合のそれぞれの板材Ps、Paの枚数は一例であり、内側領域IAで打ち抜く板材Paの枚数はこの場合に限定されるものでなく、ヨーク部32の板材Psの枚数と増高部30の板材Paの枚数とによって決定すればよい。
【0030】
このように、ヨーク部32に増高部35を設けたことにより、磁束の通路断面積を増大することができるにもかかわらず、その増高部35の板材Paは、ヨーク部32をプレス打抜きした際に廃棄されていた内側領域IAを有効利用して形成できるようになる。
【0031】
また、上述したように増高部35を設けることにより、ヨーク部32はその増高部35を設けた部分で磁束の通路断面積を増大できるため、本実施形態では、図2に示すように、増高部35が位置する部分のヨーク部32の径方向幅w1が、増高部35が存在しない部分、つまりティース部33の形成部分32Tの径方向幅w2よりも狭く(w1<w2)形成されている。これにより、増高部35を設けた部分と設けない部分の磁束の通路断面積を略等しくして、ヨーク部32全体での磁束の通過効率を向上できる。
【0032】
また、このようにw1<w2とした場合に、増高部35を設けた部分でのヨーク部32の外径を、増高部35を設けないティース部33の形成部分32Tの外径よりも小さくできるため、その分、モータMの径方向寸法を縮小して小型化を図ることができる。
【0033】
モータMには、図1に示すように制御基板36が備わっており、この制御基板36は、ロータ20の回転位置を検出する図示省略した位置検出センサからの信号を受けてコイル巻線部31に流す電流を制御するようになっている。これにより、制御基板36は、ロータ4の回転位置に応じて磁極部34に発生される磁界を制御している。
【0034】
そして、分離板130を境としてポンプ室120とは反対側にステータ30および制御基板36が配置され、これらステータ30および制御基板36は全体的にモールド樹脂40によって被覆される。これにより、ステータ30および制御基板36は、モールド樹脂40を介して分離板130およびポンプケース121と一体化され、モータMを含めたポンプP全体の強度が確保されるようになっている。
【0035】
ところで、ステータ30のティース部33に設けられたコイル巻線部31には、そのコイル巻線部31と他のコイル巻線部31とを繋げる図示省略した渡り線が設けられるが、この渡り線はヨーク部32の周方向に沿って引き回されて配線される。
【0036】
以上の構成により、第1実施形態のモータMによれば、ヨーク部32の一部、つまり、互いに隣り合うティース部33の形成部分32Tの間に、軸方向の高さh1を高くする軟磁性材料の増高部35が設けられている。これにより、増高部35を設けた部分でヨーク部32の磁束通路の断面積を増大することができる。
【0037】
また、このようにヨーク部32の高さh1を高くする増高部35は、環状に形成されたヨーク部の内側領域IA内に収まる形状としたことにより、従来廃棄されていたヨーク部32の内側部分を有効利用して増高部35を形成できる。これにより、増高部35により磁束通路の断面積を増大しつつ、鋼板Spの歩留まりを良くすることができ、ひいてはモータMのコストを下げることができる。
【0038】
さらに、増高部35を含めたヨーク部32の高さh1を、コイル巻線部31の高さh2と略等しくしておくことにより、モータMの出力効率を維持しつつ軸方向の小型化を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、増高部35は、ヨーク部32に設けられるティース部33の形成部分32Tを避けて配置されている。これにより、コイル巻線部31をティース部33に巻回する際に、増高部35がコイル巻線部31の渡り線を引き回す際の障害となるのを避けることができる。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、増高部35によってヨーク部32の磁束の通路断面積が増大されることにより、増高部35が位置するヨーク部32の径方向幅w1が、増高部35が存在しない部分の径方向幅w2よりも小さくされている。これにより、径方向幅w1が小さくなった部分でヨーク部32の外径を小さくできるため、モータMを径方向に小型化できる。
【0041】
さらにまた、本実施形態によれば、ティース部33および磁極部34を含むヨーク部32が複数枚の板材Psを積層して形成されており、これと同様に増高部35も複数枚の板材Paの積層により形成されている。これにより、安価な鉄心を構築できるとともに、ヨーク部32をプレス打抜きした鋼板Spの余剰部分で増高部35を打抜くことができるようになる。したがって、製造過程での鋼板Spの消費量の増加を防ぐことができ、ひいては、材料費が嵩むのを抑制して安価なモータMを提供することができる。
【0042】
ところで、このようにモータMが小型化されることにより、それを駆動源として一体に組み込んだ本実施形態のポンプPは、小型化されたモータMの占有スペースが小さくなることにより小型化を達成することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。図6〜図8は、本実施形態にかかるモータのステータを示した図である。
【0044】
本実施形態が上記第1実施形態と主に異なる点は、増高部35とヨーク部32との間にパンチングによるカシメ37が施され、かつ、ヨーク部32および増高部35のカシメ37位置に対応した部位の内周に凸部38が形成されたことにある。
【0045】
すなわち、ヨーク部32と増高部35は、第1実施形態と同様に板材Ps、Paの積層により形成される。このとき、ヨーク部32の両端面32b、32cに増高部35を配置して、増高部35の軸方向の外側端面35a、35bからヨーク部32の両端面32b、32cに向けてパンチングすることによりカシメ37が形成される。したがって、カシメ37はパンチングされた方向に凹設された断面形状となる。
【0046】
また、凸部38は、図6および図8に示すように、増高部35の周方向の略中央部、つまり隣り合うティース部33の略中間部に位置している。もちろん、凸部38は、ヨーク部32および増高部35の各板材P、Paと一体となってプレス打抜きされ、打ち抜かれた各板材Ps、Paを積層することにより凸部38が軸方向に連続して重ねられる。
【0047】
この場合にあっても、第1実施形態と同様に、増高部35は、環状に形成されたヨーク部32の内側領域IA(図2参照)内に収まる形状となり、ヨーク部32の板材Psの内側領域IAに、増高部35の板材Paが型取りされるようになっている(図5参照)。
【0048】
また、本実施形態では、凸部38は突出側先端が頂点となって先細りに突出される三角形状に形成されている。このように凸部38が先細りとなる三角形状として形成されることにより、コイル巻線部31を巻回する図示省略した巻線機のノズルの可動範囲が妨げられることなく、凸部38の面積をより大きく設定することができる。
【0049】
そして、それぞれ積層体として形成されたヨーク部32と増高部35とは、それら両者間に接着剤が塗布されて相互に結合される。このとき、三角形状の凸部38とこの凸部38が位置する部分のヨーク部32とで形成される範囲の中央部近傍にカシメ37が位置されるようになっている。これにより、カシメ37の周縁部にある程度の面積が確保され、カシメ37の加工時の強度低下を抑制できる。
【0050】
したがって、増高部35とヨーク部32とは、凹設されたカシメ37を介して嵌合されることで、両者を簡単かつ精度良く位置決めできるとともに、カシメ37の凹設形状によって接着剤の塗布面積が増大されるため、増高部35とヨーク部32との接続強度が増強される。なお、この場合には凸部38の形状は、三角形状に限ることなく四角形などの多角形状でもよく、また、円形状とすることもできる。
【0051】
以上の構成により、第2実施形態のモータMによれば、増高部35とヨーク部32とに亘ってパンチングによるカシメ37が施されたので、増高部35とヨーク部32との位置決めを簡単かつ精度良く行うことができるとともに、両者間の接着剤の塗布面積を増大して接続強度を増強できる。
【0052】
また、ヨーク部32および増高部35のカシメ37位置に対応した部位の内周に凸部38が形成されているので、この凸部38によってカシメ37を施す部分の面積を増大して強度を大きくすることができる。また、増高部35をヨーク部32に接着する際にも、その接着面積が凸部38によって増大されるため、増高部35とヨーク部32との接着強度をさらに大きくすることができる。
【0053】
なお、凸部37はヨーク部32の内周に形成されたことにより、モータMが径方向に大型化されるのを防止できるが、ヨーク部32の外周側にスペース的な余裕がある場合は、凸部37が外周に形成されている場合にも同様の機能を奏することができる。
【0054】
ところで、以上説明した第1および第2実施形態では、増高部35がティース部33の形成部分32T間に配置された場合を開示したが、もちろん、ティース部33の形成部分32Tにあっても増高部35を設けることができる。この場合には、増高部35にティース部33が接続されることになるため、このティース部33が補強部材となって、増高部35にカシメ37を設けることによるヨーク部32の強度低下を抑制することができる。
【0055】
また、第1および第2実施形態には、増高部35が板材Paの積層体で形成された場合を開示したが、増高部35を圧縮成形された圧粉鉄心で形成することもできる。この場合、低鉄損で高効率なモータMを実現することができる。もちろん、この場合にはティース部33および磁極部34を含めたヨーク部32も同様に圧粉鉄心で形成することができる。
【0056】
[第3実施形態]
第3実施形態では、本発明のポンプを搭載したポンプ駆動機器としての食器洗浄機について説明する。図9は、本実施形態にかかる食器洗浄機を示した図である。
【0057】
食器洗浄機200は、水または温水が給水口201から貯水槽202に供給され、そして、貯水槽202に供給された水または温水が洗浄ポンプP1によってノズル203に送られ、そのノズル203から水または温水を噴出させることで、食器洗浄機200内にセットした食器204が洗浄されるようになっている。
【0058】
なお、本実施形態では、洗浄後の水または温水は下方に落下して貯水槽202に溜められ、洗浄ポンプP1によってノズル203に再度送られる。そして、所定時間循環洗浄した後に、洗浄ポンプP1を停止して排水ポンプP2を作動させることで、貯水槽202内の水または温水が排水される。
【0059】
次に、給水口201から水または温水を貯水槽202に再度供給した後、洗浄ポンプP1を所定時間作動させて濯ぎを行い、その後、洗浄ポンプP1を停止して排水ポンプP2を作動させることにより、貯水槽202の水または温水が排水される。そして、以上の動作を数回繰り返して濯ぎを行うことで、食器洗浄機200内にセットした食器204が洗浄される。
【0060】
ここで、本実施形態では、上述した洗浄ポンプP1および排水ポンプP2に、第1実施形態の小型化されたポンプPが用いられる。このように、本実施形態の食器洗浄機200に、小型化されたポンプPを用いて洗浄ポンプP1および排水ポンプP2が構成されることにより、食器洗浄機200の小型化を図ることができる。また、モータMを用いて薄肉化したポンプPの形状を有効利用することで、食器収納スペースの拡大を図ることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、ポンプP1、P2に使用するモータとして、第2実施形態に示したモータMを用いることもでき、この場合にあっても同様の効果を奏することができる。
【0062】
[第4実施形態]
第4実施形態では、本発明のポンプを搭載したポンプ駆動機器としての給湯ユニットについて説明する。図10は、本実施形態にかかる給湯ユニットを示した図である。この給湯ユニット300は、低電力化が可能で環境にもやさしいCO2を冷媒とするヒートポンプを利用した給湯システムを例にとって説明する。
【0063】
すなわち、給湯ユニット300は、ヒートポンプ301、貯湯ユニット302、風呂303、床暖房304および追い炊き熱交換器305や暖房熱交換器306などが備わっている。また、給湯ユニット300には、台所や洗面用の温水蛇口307や湯を溜める補助タンク308が設けられており、かつ、給水口309の下流には減圧弁310が設けられるとともに、床暖房304には熱動弁311が設けられている。さらに、それぞれの配管には複数の混合弁312や安全弁313が設けられる。
【0064】
そして、複数のポンプP4、P5、P6、P7、P8を駆動させるとともに、上述した各弁310、311、312、313を制御することで、風呂303や台所および洗面用の温水蛇口307などに水やお湯を、所望の温度および流量で供給することができる。
【0065】
ここで、本実施形態では、上述したポンプP4〜P8に、第1実施形態の小型化したポンプPが用いられる。このように、本実施形態の給湯ユニット300に、小型化したポンプPを用いてそれぞれのポンプP4〜P8が構成されることにより、給湯ユニット300の小型化を図ることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、上述したヒートポンプを利用した電気給湯システムである給湯ユニット300に限ることなく、ガス給湯システムやコージェネレーションシステムにあっても適用でき、上記ポンプPを用いることにより同様の効果を奏することができる。
【0067】
また、本実施形態にあっても、ポンプP4、P5、P6、P7、P8に使用するモータとして、第2実施形態に示したモータMを用いることもでき、この場合にあっても同様の効果を奏することができる。
【0068】
[第5実施形態]
第5実施形態では、本発明のポンプを搭載したポンプ駆動機器としての洗濯機について説明する。図11は、本実施形態にかかる洗濯機を示した図である。
【0069】
洗濯機400は、洗濯槽401が図示省略したモータによって回転制御されており、その洗濯槽401を回転させるとともに、洗濯機400内の水を循環ポンプP3で循環させることで衣類などの洗濯が行われる。
【0070】
ここで、本実施形態では、上述した循環ポンプP3に、第1実施形態の小型化されたポンプPが用いられる。このように、本実施形態の洗濯機400に、小型化されたポンプPを用いて循環ポンプP3が構成されることにより、洗濯機400の小型化を図ることができる。また、小型化したポンプの形状を有効利用することで、洗濯槽401の拡大をも図ることができる。
【0071】
なお、本実施形態にあっても、ポンプP3に使用するモータとして、第2実施形態に示したモータMを用いることもでき、この場合にあっても同様の効果を奏することができる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、インナ型ロータ構造のモータを駆動源としたポンプを例に挙げて説明したが、このインナー型ロータ構造に限ることなく、アウタ型ロータ構造のモータ構成にあっても本発明を適用することができる。この場合にあっても、残高部をヨーク部の内側領域内(ティース部と反対側)に収まる形状で設けることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、ヨーク部は環状に形成されていたが、これに限定されず、多角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
11 出力軸
20 ロータ
21 永久磁石
30 ステータ
31 コイル巻線部
32 ヨーク部
32a ヨーク部の内側面(永久磁石に対向する側面)
32T ティース部の形成部分
33 ティース部
34 磁極部
35 増高部
37 カシメ
38 凸部
200 食器洗浄機(ポンプ駆動機器)
300 給湯ユニット(ポンプ駆動機器)
400 洗濯機(ポンプ駆動機器)
M モータ
P ポンプ
h1 ヨーク部の出力軸に沿った方向の高さ
IA ヨーク部の内方領域
w1 増高部が位置する部分のヨーク部の径方向幅
w2 増高部が存在しない部分のヨーク部の径方向幅
P ヨーク部の板材
Pa 増高部の板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に多極着磁された永久磁石を有し、出力軸を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの外周側または内周側に配置される環状または多角形状のヨーク部、前記ヨーク部から前記永久磁石に向けて突設される複数のティース部、前記各ティース部の先端部に設けられ前記永久磁石の着磁面に対向配置される磁極部および前記各ティース部に巻回されるコイル巻線部を有するステータと、を備えたモータにおいて、
前記ヨーク部の一部に、当該ヨーク部の内側領域内に収まる形状の磁性材料で形成するとともに、前記ヨーク部の前記出力軸に沿った方向の高さを高くする増高部を設けたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記増高部が、前記ヨーク部に設けられる前記ティース部の形成部分を避けて配置されることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記増高部が位置する部分のヨーク部の径方向幅が、前記増高部が存在しない部分のヨーク部の径方向幅よりも小さくされることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記増高部と前記ヨーク部との間にパンチングによるカシメが施されることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ヨーク部および増高部の前記カシメ位置に対応した部位の内周および/または外周に凸部が形成されたことを特徴とする請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記増高部が、前記ティース部の形成部分に配置されることを特徴とする請求項4に記載のモータ。
【請求項7】
前記増高部は、複数枚の軟磁性材料からなる板材を積層して形成されることを特徴とする請求項1〜6のうち何れか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記増高部は、圧縮成形された圧粉鉄心で形成されることを特徴とする請求項1〜6のうち何れか1項に記載のモータ。
【請求項9】
請求項1〜8のうち何れか1項に記載の前記モータを駆動源としたことを特徴とするポンプ。
【請求項10】
請求項9に記載の前記ポンプを搭載したことを特徴とするポンプ駆動機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−50196(P2012−50196A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188236(P2010−188236)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】