説明

モータアクチュエータ

【課題】パターン基板を用いて出力軸の回転位置を検出する回転位置検出装置を備えるモータアクチュエータであって、該アクチュエータを対称的に使用してもパターン基板の変更を伴わずに対応することができるモータアクチュエータを提供する。
【解決手段】出力ギヤ(出力軸)の停止位置P1〜P5までの作動範囲の正転方向と逆転方向とにおいて、対をなす第2,第5ブラシ62,65と、対をなす第3,第4ブラシ63,64の検出信号の論理が対称となるように、パターン基板51上のパターン導体55が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン基板を用いて出力軸の回転位置を検出する回転位置検出装置を備えるモータアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のモータアクチュエータは車載エアコン等に装備されており、空調ダクト内の送風経路を切り換えるダンパを作動させる。この場合、ダンパの開閉位置を把握する必要があるため、モータアクチュエータの出力軸、例えば出力ギヤの回転位置を検出する回転位置検出装置が備えられている。回転位置検出装置は、出力ギヤに取り付けたパターン基板のパターン導体に複数の位置検出用ブラシを接触し各ブラシから得られる検出信号(電圧)の組み合わせにより出力ギヤ(出力軸)の回転位置を検出する構成となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−219957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車載エアコン等に用いるモータアクチュエータにおいては、例えば右ハンドル車用と左ハンドル車用とで取り付ける位置関係が車両の中心線に対して対称とする場合がある。このような場合、設計時間を短縮化する等の目的から、モータアクチュエータを出力軸と直交する面を基準として対称に構成(この場合、パターン導体も対称に構成)し、出力軸(出力ギヤ)を逆方向に回転させて使用することが考えられている。
【0004】
しかしながら、出力軸を逆方向に回転させると、検出信号の組み合わせ配列(論理配列)も逆になる。この場合、検出信号を出力する信号線を入れ替えても標準取り付け状態の論理配列とは異なってしまう。そこで、コントローラ側の構成を変更して対応することが一つの方法ではあるが、コントローラ側の構成を変更するのは実情困難である。そのため、コントローラ側の構成を変更しないで対応するには、対称位置取り付け用のパターン基板を新設する必要があり、これがコストアップの要因となっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、パターン基板を用いて出力軸の回転位置を検出する回転位置検出装置を備えるモータアクチュエータであって、該アクチュエータを対称的に使用してもパターン基板の変更を伴わずに対応することができるモータアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、モータの駆動により回転する出力軸の回転位置を検出するための回転位置検出装置を備え、該回転位置検出装置は、前記出力軸の回転位置に応じた所定形状をなすパターン導体と該パターン導体上を摺接する複数の位置検出用ブラシとを有し、各ブラシが前記パターン導体と接触又は非接触となることで各ブラシの出力電圧が変化し、これによる各ブラシの出力信号論理の組み合わせにより前記出力軸の回転位置を検出するモータアクチュエータであって、前記出力軸の作動範囲の正転方向と逆転方向とにおいて、対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が対称となるように前記パターン導体が設定されていることをその要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータアクチュエータにおいて、対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が前記出力軸を停止させる停止位置毎で対称となるように前記パターン導体が設定されていることをその要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータアクチュエータにおいて、対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が前記停止位置の前後区間においても対称となるように前記パターン導体が設定されていることをその要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のモータアクチュエータにおいて、前記停止位置は、略等角度間隔に設定されていることをその要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータアクチュエータにおいて、前記出力信号論理の組み合わせ数は、偶数であることをその要旨とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータアクチュエータにおいて、車載エアコンの空調ダクト内の送風経路を切り換えるダンパを作動させるものであることをその要旨とする。
【0011】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、モータアクチュエータにおける出力軸の作動範囲の正転方向と逆転方向とにおいて、対をなす位置検出用ブラシの出力信号論理が対称となるようにパターン導体が設定される。つまり、対をなす位置検出用ブラシの出力信号論理が出力軸の正転方向と逆転方向とで対称となる。ここで、モータアクチュエータを標準取り付け位置に対して対称な位置で使用する場合が生じたとき、該モータアクチュエータを対称に構成(パターン導体も対称に構成)し、出力軸を逆回転させて使用する要求がある。この場合、上記のように設定したパターン導体を用いることで、例えば位置検出用ブラシと対応するアクチュエータの接続端子とコントローラとの間で上記対同士が入れ替わるように配線すれば、コントローラ側において、対称型のモータアクチュエータから出力される出力信号の論理配列が標準型のモータアクチュエータと同様になる。因みに、位置検出用ブラシと接続端子との間で上記対同士が入れ替わるような配線に変更して対応することもできる。これにより、標準型のモータアクチュエータに対応するコントローラを用いても、対称型のモータアクチュエータを制御することが可能であり、しかもパターン導体(パターン基板)の変更も伴わない。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、対をなす位置検出用ブラシの出力信号論理が出力軸を停止させる停止位置毎で対称となる。これにより、標準型のモータアクチュエータと対称型のモータアクチュエータの出力軸の停止位置検出を同一のコントローラで行うことが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、対をなす位置検出用ブラシの出力信号論理が停止位置の前後区間においても対称となる。これにより、標準型のモータアクチュエータと対称型のモータアクチュエータの出力軸の停止位置検出及び各停止位置の前後区間の位置検出を同一のコントローラで行うことが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、出力軸の停止位置が略等角度間隔に設定されるので、標準型のモータアクチュエータと対称型のモータアクチュエータの両出力軸の作動が同様になる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、出力信号論理の組み合わせ数が偶数であるため、全て対とすることができ、出力信号論理が対称となるように設定し易い。
請求項6に記載の発明によれば、車載エアコンの空調ダクト内の送風経路を切り換えるダンパを作動させるモータアクチュエータである。即ち、車載エアコンの空調ダクトに取り付けられるモータアクチュエータは、例えば右ハンドル車用と左ハンドル車用というように対称に構成する要求が多いため、上記のように構成する意義は大きい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パターン基板を用いて出力軸の回転位置を検出する回転位置検出装置を備えるモータアクチュエータであって、該アクチュエータを対称的に使用してもパターン基板の変更を伴わずに対応することができるモータアクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施の形態のモータアクチュエータ10を示す分解斜視図である。モータアクチュエータ10は車載エアコンに装備されるものであり、図4に示すように空調ダクト15内の送風経路を切り換えるダンパ16を作動させるものである。
【0018】
モータアクチュエータ10は、ハウジング20に、モータ30と、ギヤ機構(歯車機構)40と、回転位置検出装置50とが収容されて構成されている。ハウジング20はケース部21と該ケース部21を覆うカバー部22とから構成されており、モータ30、ギヤ機構40及び回転位置検出装置50はケース部21に取り付けられている。
【0019】
ギヤ機構40は、ウォームギヤ41と、減速ギヤ部42と、出力ギヤ43とが連結されて構成されている。ウォームギヤ41はモータ30の回転軸31に取り付けられており、モータ30とともに回転する。減速ギヤ部42は第1ギヤ42aと第2ギヤ42bとから構成されており、第1ギヤ42aはウォームギヤ41及び第2ギヤ42bと噛合され、第2ギヤ42bは出力ギヤ43と噛合される。出力ギヤ43には、ハウジング20(ケース部21)の出力孔21aから外部に突出する出力軸43aが一体的に形成されており、この出力軸43aの端部に、図4に示すダンパ16が連結されるようになっている。このようなギヤ機構40において、モータ30のトルクは、ウォームギヤ41、減速ギヤ部42(第1ギヤ42a,第2ギヤ42b)を介して出力ギヤ43に伝達され、この出力ギヤ43の出力軸43aを介してダンパ16に伝達される。
【0020】
回転位置検出装置50は、円盤状のパターン基板51と、導電ユニット52とから構成されている。パターン基板51は、出力ギヤ43の一方の面(図1中、ケース部21側の面)に固定されており、出力ギヤ43とともに回転する。パターン基板51の一方の面(同じくケース部21側の面)には、図2に示すようなパターン導体55が形成されている(同図2において、パターン導体55とその他の絶縁部分とを明確にするために該パターン導体55には斜線が引いてある)。尚、パターン導体55の具体的形状は後述する。
【0021】
導電ユニット52は、パターン基板51のパターン導体55の形成面に摺接可能に配置される6本のブラシ(第1〜第6ブラシ61〜66)と、アクチュエータ10を制御するコントローラ100と接続される7本の接続端子(第1〜第7接続端子T1〜T7)と、モータ30の電源端子32,33と接続される給電端子70,71とを備えてなる。第1〜第7接続端子T1〜T7のうち第6及び第7接続端子T6,T7は給電端子70,71と一体に構成されており、コントローラ100から駆動電源が供給される。また、第1〜第5接続端子T1〜T5は、第1〜第5ブラシ61〜65と一体に構成されている。尚、第6ブラシ66は、第5ブラシ65とインサート部分で一体に構成されている。第1〜第5接続端子T1〜T5はコントローラ100に接続され、このうち第2〜第5接続端子T2〜T5から位置検出信号がコントローラに出力される。
【0022】
第1〜第6ブラシ61〜66は、パターン基板51の内側から外側に向かって第1ブラシ61から第6ブラシ66の順に等間隔に配置されており、各ブラシ61〜66の先端の接点部61a〜66aが、パターン基板51の径方向に延びる同一の直線上に位置するようになっている。
【0023】
ここで、本実施の形態では、第6ブラシ66を第5ブラシ65と同一の扱いをしているので、説明の便宜上、以下には第6ブラシ66の記載を第5ブラシ65に含めることとする。
【0024】
第1ブラシ61は第1接続端子T1を通じてコントローラ100からプラス側電圧が印加され、第2〜第5ブラシ62〜65は第2〜第5接続端子T2〜T5を通じてコントローラ100に検出信号(出力電圧)を出力する。つまり、第2〜第5ブラシ62〜65がパターン導体55を介して第1ブラシ61と導通状態となると、これら第2〜第5ブラシ62〜65のからの検出電圧がハイレベル(論理「1」)となる。これに対し、第2〜第5ブラシ62〜65が第1ブラシ61と非導通状態となると、これら第2〜第5ブラシ62〜65のからの検出電圧がロウレベル(論理「0」)となる。そして、パターン基板51(出力ギヤ43)の回転位置に応じた第2〜第5ブラシ62〜65からの検出電圧の組み合わせ、即ち第2〜第5接続端子T2〜T5の4ビットの論理の組み合わせにより、出力ギヤ43(出力軸43a)の回転位置が検出される。
【0025】
ここで、前記パターン基板51のパターン導体55の具体的構成を図2及び図3を参照して説明する。本実施の形態のパターン基板51(パターン導体55)は、出力ギヤ43(出力軸43a)を約120°の範囲において略等角度間隔の5カ所の停止位置、即ち第1停止位置P1〜第5停止位置P5を検出可能に構成されている。
【0026】
図2に示すパターン導体55において、先ず、コモン端子である第1ブラシ61が摺接する環状の導体部55aが設けられている。
パターン基板51が第1停止位置P1以前の位置に配置された場合に、第1ブラシ61と、第3〜第5ブラシ63〜65とを導通させるべく前記導体部55aと接続される所定形状の導体部55bが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第1停止位置P1以前の位置に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の4ビットの論理配列(パターン配列)は、「0111」となる。
【0027】
パターン基板51が第1停止位置P1に配置された場合に、第1ブラシ61と、第3ブラシ63及び第5ブラシ65とを導通させるべく前記導体部55aと接続される導体部55cが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第1停止位置P1に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「0101」となる。
【0028】
パターン基板51が第1停止位置P1から第2停止位置P2の間に配置された場合に、第1ブラシ61と、第5ブラシ65とを導通させるべく前記導体部55aと接続される所定形状の導体部55dが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第1停止位置P1から第2停止位置P2の間に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「0001」となる。
【0029】
パターン基板51が第2停止位置P2に配置された場合に、第1ブラシ61と、第4ブラシ64及び第5ブラシ65とを導通させるべく前記導体部55aと接続される導体部55eが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第2停止位置P2に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「0011」となる。
【0030】
パターン基板51が第2停止位置P2から第3停止位置P3の間に配置された場合に、第1ブラシ61と、第4ブラシ64とを導通させるべく前記導体部55aと接続される所定形状の導体部55fが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第2停止位置P2から第3停止位置P3の間に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「0010」となる。
【0031】
パターン基板51が第3停止位置P3に配置された場合に、第1ブラシ61と、第3ブラシ63及び第4ブラシ64とを導通させるべく前記導体部55aと接続される導体部55gが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第3停止位置P3に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「0110」となる。
【0032】
パターン基板51が第3停止位置P3から第4停止位置P4の間に配置された場合に、第1ブラシ61と、第3ブラシ63とを導通させるべく前記導体部55aと接続される所定形状の導体部55hが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第3停止位置P3から第4停止位置P4の間に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「0100」となる。
【0033】
パターン基板51が第4停止位置P4に配置された場合に、第1ブラシ61と、第2ブラシ62及び第3ブラシ63とを導通させるべく前記導体部55aと接続される導体部55iが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第4停止位置P4に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「1100」となる。
【0034】
パターン基板51が第4停止位置P4から第5停止位置P5の間に配置された場合に、第1ブラシ61と、第2ブラシ62とを導通させるべく前記導体部55aと接続される所定形状の導体部55jが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第4停止位置P4から第5停止位置P5の間に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「1000」となる。
【0035】
パターン基板51が第5停止位置P5に配置された場合に、第1ブラシ61と、第2ブラシ62及び第4ブラシ64とを導通させるべく前記導体部55aと接続される導体部55kが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第5停止位置P5に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「1010」となる。
【0036】
パターン基板51が第5停止位置P5以降の位置に配置された場合に、第1ブラシ61と、第2〜第4ブラシ62〜64とを導通させるべく前記導体部55aと接続される所定形状の導体部55lが設けられている。従って、出力ギヤ43(パターン基板51)が第5停止位置P5以降の位置に配置されると、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列は、「1110」となる。
【0037】
このように各導体部55a〜55lが所定部分で適宜結合されて図2のような形状のパターン導体55が形成され、該パターン導体55により、第2〜第5接続端子T2〜T5の4ビットの論理配列(パターン配列)が図3のような配列となる。つまり、出力ギヤ43(パターン基板51)を停止位置P1から停止位置P5に向かって正回転させた場合と、出力ギヤ43(パターン基板51)を停止位置P5から停止位置P1に向かって逆回転させた場合とで、第2〜第5接続端子T2〜T5における論理配列が対称となるようにしている。より詳しくは、停止位置P3を中心とし該停止位置P3を挟んだ両側の対応する停止位置P1,P2,P4,P5及び各停止位置P1〜P5の前後区間が、対をなす第2接続端子T2と第5接続端子T5とで対称となっており、同じく対をなす第3接続端子T3と第4接続端子T4とで対称となっている。
【0038】
そして、第2〜第5接続端子T2〜T5における図3に示す論理配列がモータアクチュエータ10を標準取り付け位置に取り付ける場合の配列であり、コントローラ100には、第2〜第5接続端子T2〜T5が対応する入力ポートにそのまま接続される。従って、コントローラ100は、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列に従って出力ギヤ43(出力軸43a)の回転位置を検出する。
【0039】
これに対し、図7に示すように、モータアクチュエータ10を標準取り付け位置とは出力軸43aと直交する面を基準面として対称な位置に取り付ける場合が生じると、対称型のモータアクチュエータ10aは上記した標準型のモータアクチュエータ10に対してその基準面を対称に構成される。即ち、パターン基板51上のパターン導体55も、図5に示すように対称に構成される。この場合、対をなす第2,第5接続端子T2,T5と、対をなす第3,第4接続端子T3,T4とが入れ替わるようにコントローラ100の入力ポートと配線することにより、図6に示すように、コントローラ100の入力ポートにおいては、対応する停止位置P1’〜P5’とその前後区間の論理配列が前記標準取り付け状態と同様の配列となる。因みに、モータ30を逆回転させる必要があるので、第6,第7接続端子T6,T7が入れ替わるようにコントローラ100の出力ポートと配線される。このように対称型のモータアクチュエータ10aを対称位置に取り付けて出力軸43aを逆回転して使用する場合であっても、コントローラ100は、上記標準型のモータアクチュエータ10aと同様の制御を行うことができるようになっている。
【0040】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)出力ギヤ43(出力軸43a)の停止位置P1〜P5(停止位置P1’〜P5’)までの作動範囲の正転方向と逆転方向とにおいて、対をなす第2,第5ブラシ62,65と、対をなす第3,第4ブラシ63,64の検出信号の論理が対称となるように、パターン基板51上のパターン導体55が設定されている。つまり、対をなす第2,第5ブラシ62,65と、対をなす第3,第4ブラシ63,64の検出信号の論理が出力ギヤ43の正転方向と逆転方向とで対称となる。ところで、標準型のモータアクチュエータ10に対して対称に構成される対称型のモータアクチュエータ10aでは、第2〜第5ブラシ62〜65と対応する接続端子T2〜T5とコントローラ100との間で上記対同士が入れ替わるように配線する。すると、コントローラ100側において、対称型のモータアクチュエータ10aから出力される検出信号の論理配列が、標準型のモータアクチュエータ10と同様になる。これにより、標準型のモータアクチュエータ10に対応するコントローラ100を用いても、対称型のモータアクチュエータ10aを制御することが可能であり、しかもパターン導体55(パターン基板51)の変更も伴わない。
【0041】
(2)第2,第5ブラシ62,65と、対をなす第3,第4ブラシ63,64の検出信号の論理が停止位置P1〜P5とその前後区間においても対称となるようにパターン導体55が設定されている。これにより、標準型のモータアクチュエータ10と対称型のモータアクチュエータ10aの出力軸43aの停止位置検出及び各停止位置P1〜P5の前後区間の位置検出を同一のコントローラ100で行うことができる。
【0042】
(3)出力軸43aの停止位置P1〜P5が略等角度間隔に設定されているので、標準型のモータアクチュエータ10と対称型のモータアクチュエータ10aの両出力軸43aの作動を同様とすることができる。
【0043】
(4)検出信号の論理の組み合わせ数が偶数(4ビット)であるため、全て対とすることができ、論理配列が対称となるように設定し易い。
(5)モータアクチュエータ10(10a)は車載エアコンの空調ダクト15内の送風経路を切り換えるダンパ16を作動させるものである。即ち、車載エアコンの空調ダクト15に取り付けられるモータアクチュエータ10(10a)は、例えば右ハンドル車用と左ハンドル車用というように対称に構成する要求が多いため、本実施の形態のように構成する意義は大きい。
【0044】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施の形態では、第2〜第5接続端子T2〜T5の論理配列が図3に示すような論理配列となるようにパターン導体55の形状を設定したが、これに限定されるものではない。例えば、図8(a)〜図8(e)に示すような論理配列としても上記実施の形態のように正逆転方向で対称であるため、このような論理配列となるパターン導体(パターン基板)に変更可能である。
【0045】
因みに、図8(a)に示す各接続端子T2〜T5の論理配列では、第1停止位置P1以前の位置で「0111」、第1停止位置P1で「0101」、第1及び第2停止位置P1,P2間で「0100」、第2停止位置P2で「1100」、第2及び第3停止位置P2,P3間で「1000」となっている。また、第3停止位置P3で「1001」、第3及び第4停止位置P3,P4間で「0001」、第4停止位置P4で「0011」、第4及び第5停止位置P4,P5間で「0010」、第5停止位置P5で「1010」、第5停止位置P5以後の位置で「1110」となっている。
【0046】
また、図8(b)に示す各接続端子T2〜T5の論理配列では、第1停止位置P1以前の位置で「0111」、第1停止位置P1で「0101」、第1及び第2停止位置P1,P2間で「1101」、第2停止位置P2で「1100」、第2及び第3停止位置P2,P3間で「0100」となっている。また、第3停止位置P3で「0110」、第3及び第4停止位置P3,P4間で「0010」、第4停止位置P4で「0011」、第4及び第5停止位置P4,P5間で「1011」、第5停止位置P5で「1010」、第5停止位置P5以後の位置で「1110」となっている。
【0047】
また、図8(c)に示す各接続端子T2〜T5の論理配列では、第1停止位置P1以前の位置で「1011」、第1停止位置P1で「1010」、第1及び第2停止位置P1,P2間で「1110」、第2停止位置P2で「1100」、第2及び第3停止位置P2,P3間で「0100」となっている。また、第3停止位置P3で「0110」、第3及び第4停止位置P3,P4間で「0010」、第4停止位置P4で「0011」、第4及び第5停止位置P4,P5間で「0111」、第5停止位置P5で「0101」、第5停止位置P5以後の位置で「1101」となっている。
【0048】
また、図8(d)に示す各接続端子T2〜T5の論理配列では、第1停止位置P1以前の位置で「0001」、第1停止位置P1で「0101」、第1及び第2停止位置P1,P2間で「0111」、第2停止位置P2で「0011」、第2及び第3停止位置P2,P3間で「1011」となっている。また、第3停止位置P3で「1111」、第3及び第4停止位置P3,P4間で「1101」、第4停止位置P4で「1100」、第4及び第5停止位置P4,P5間で「1110」、第5停止位置P5で「1010」、第5停止位置P5以後の位置で「1000」となっている。
【0049】
また、図8(e)に示す各接続端子T2〜T5の論理配列では、第1停止位置P1以前の位置で「1000」、第1停止位置P1で「1010」、第1及び第2停止位置P1,P2間で「1110」、第2停止位置P2で「1100」、第2及び第3停止位置P2,P3間で「0100」となっている。また、第3停止位置P3で「0110」、第3及び第4停止位置P3,P4間で「0010」、第4停止位置P4で「0011」、第4及び第5停止位置P4,P5間で「0111」、第5停止位置P5で「0101」、第5停止位置P5以後の位置で「0001」となっている。
【0050】
○上記実施の形態では、第2〜第5ブラシ62〜65と対応するアクチュエータ10の接続端子T2〜T5とコントローラ100との間で上記対同士が入れ替わるように配線して対応した。これに限らず、例えば第2〜第5ブラシ62〜65と接続端子T2〜T5との間に電線を用いる場合など、対同士が入れ替わるように各電線をクロスして接続して対応することもできる。
【0051】
○上記実施の形態では、パターン基板51を出力ギヤ43に取り付ける構成であったが、例えば出力ギヤ43が樹脂製など絶縁体である場合、該出力ギヤ43にパターン導体55を直接形成してもよい。
【0052】
○上記実施の形態では、回転位置検出装置50を一体に備えたモータアクチュエータ10(10a)に実施したが、モータアクチュエータ以外の他の装置や単体の回転位置検出装置に実施してもよい。
【0053】
次に、上記実施の形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 検出対象である回転軸の回転位置に応じた所定形状をなすパターン導体と該パターン導体上を摺接する複数の位置検出用ブラシとを有し、各ブラシが前記パターン導体と接触又は非接触となることで各ブラシの出力電圧が変化し、これによる各ブラシの出力信号論理の組み合わせにより前記回転軸の回転位置を検出する回転位置検出装置であって、
前記回転軸の作動範囲の正転方向と逆転方向とにおいて、対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が対称となるように前記パターン導体が設定されていることを特徴とする回転位置検出装置。
【0054】
(ロ) 上記(イ)に記載の回転位置検出装置において、
対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が前記回転軸を停止させる停止位置毎で対称となるように前記パターン導体が設定されていることを特徴とする回転位置検出装置。
【0055】
(ハ) 上記(ロ)に記載の回転位置検出装置において、
対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が前記停止位置の前後区間においても対称となるように前記パターン導体が設定されていることを特徴とする回転位置検出装置。
【0056】
(ニ) 上記(ロ)又は(ハ)に記載の回転位置検出装置において、
前記停止位置は、略等角度間隔に設定されていることを特徴とする回転位置検出装置。
(ホ) 上記(イ)〜(ニ)のいずれか1項に記載の回転位置検出装置において、
前記出力信号論理の組み合わせ数は、偶数であることを特徴とする回転位置検出装置。
【0057】
上記(イ)〜(ホ)においても、上記した請求項1〜5と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態におけるモータアクチュエータの分解斜視図である。
【図2】標準型のモータアクチュエータにおけるパターン導体とその位置制御を説明するための説明図である。
【図3】標準型のモータアクチュエータにおける接続端子の論理配列を説明するための説明図である。
【図4】標準型のモータアクチュエータの取り付け状態を説明するための説明図である。
【図5】対称型のモータアクチュエータにおけるパターン導体とその位置制御を説明するための説明図である。
【図6】対称型のモータアクチュエータにおける接続端子の論理配列を説明するための説明図である。
【図7】対称型のモータアクチュエータの取り付け状態を説明するための説明図である。
【図8】(a)〜(e)は、別例におけるモータアクチュエータの接続端子の論理配列を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0059】
10…モータアクチュエータ(標準型)、10a…モータアクチュエータ(対称型)、15…空調ダクト、16…ダンパ、30…モータ、43a…出力軸、50…回転位置検出装置、55…パターン導体、62〜66…位置検出用ブラシとしての第2〜第6ブラシ、P1〜P5,P1’〜P5’…停止位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動により回転する出力軸の回転位置を検出するための回転位置検出装置を備え、該回転位置検出装置は、前記出力軸の回転位置に応じた所定形状をなすパターン導体と該パターン導体上を摺接する複数の位置検出用ブラシとを有し、各ブラシが前記パターン導体と接触又は非接触となることで各ブラシの出力電圧が変化し、これによる各ブラシの出力信号論理の組み合わせにより前記出力軸の回転位置を検出するモータアクチュエータであって、
前記出力軸の作動範囲の正転方向と逆転方向とにおいて、対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が対称となるように前記パターン導体が設定されていることを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータアクチュエータにおいて、
対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が前記出力軸を停止させる停止位置毎で対称となるように前記パターン導体が設定されていることを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータアクチュエータにおいて、
対をなす前記位置検出用ブラシの出力信号論理が前記停止位置の前後区間においても対称となるように前記パターン導体が設定されていることを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモータアクチュエータにおいて、
前記停止位置は、略等角度間隔に設定されていることを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータアクチュエータにおいて、
前記出力信号論理の組み合わせ数は、偶数であることを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータアクチュエータにおいて、
車載エアコンの空調ダクト内の送風経路を切り換えるダンパを作動させるものであることを特徴とするモータアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−250902(P2006−250902A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71784(P2005−71784)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】