説明

モータ制御装置及び画像形成装置

【課題】停止精度の向上、停止までの所要時間の短縮化及び所要時間のばらつきの低減を、バランス良く実現可能な新しいモータ制御技術を提供する。
【解決手段】モータ制御ユニットは、モータに入力可能な電流上限値を推定し、この上限値に対応する駆動電流でモータを駆動する第一制御処理を実行すると共に(S180)、標準プロファイルに基づく第二制御処理によって駆動対象を減速・停止させるのに必要な搬送量である停止必要量Pnを算出する(S150)。標準プロファイルは、駆動対象10の駆動開始時点から停止時点までの時間が一定で、減速時の加速度ピークが、モータで実現可能な限界値−Apに設定された目標プロファイルである。そして、目標停止位置までの残り搬送量Psが停止必要量Pn以下となった時点で(S170でYes)、第一制御処理に代えて第二制御処理を実行し(S200)、駆動対象を精度よく目標停止位置で停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動対象を目標とする位置に高速搬送可能な技術としては、バンバン制御が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。バンバン制御は、モータへの制御入力(操作量)を最大又は最小に切り替えて、モータの最大能力で駆動対象を駆動するものであり、駆動対象を目標とする位置に高速に搬送して停止させることができる。
【0003】
この他、逆起電力による電流低下等を原因として、想定されているモータ駆動電流と実際のモータ駆動電流との間にずれが生じ、これによって制御精度が劣化する問題を解消するために、速度に応じて変化する飽和電流に基づいた制御デューティの最大制限値を設定するモータ制御装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−086904号公報
【特許文献2】特開平7−302121号公報
【特許文献3】特開2007−221940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バンバン制御は、駆動対象を高速に駆動するのに優れているが、単純な制御手法であるため、この制御手法によって駆動対象を高精度に目標とする位置に停止させることは難しい。一方、高精度に駆動対象を目標とする位置に停止させるための技術としては、目標プロファイル(目標軌跡)に基づいたフィードバック制御が知られている。しかしながら、フィードバック制御に、飽和電流に基づく操作量の制限値を設定する手法を採用しても、高速に目標停止位置に駆動対象を停止させることと、高精度に目標停止位置に駆動対象を停止させることとを、両立させることは難しい。
【0006】
更に、このような手法では、駆動対象を目標停止位置に停止させるまでの時間にばらつきが生じる。そして、駆動対象を目標停止位置に停止させるまでの時間にばらつきが生じると、好ましくないケースがある。例えば、ばらつきがユーザの製品に対する期待を裏切る結果となって、ユーザに不満を及ぼす可能性がある。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、被駆動体(駆動対象)を目標停止位置に停止させるためのモータ制御技術として、停止精度の向上、並びに、駆動対象を目標停止位置に停止させるまでの時間の短縮化及びばらつきの低減を、調和を図りながら実現することのできる新しいモータ制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ制御装置は、モータ制御手段と、モータの回転に応じた信号を出力する信号出力手段と、を備え、モータ制御手段が、信号出力手段の出力信号に基づきモータを制御することによって、モータにより駆動される被駆動体を目標停止位置まで変位させる。このモータ制御手段は、第一及び第二制御手段と、切替手段と、第一及び第二算出手段と、を備える。
【0009】
第一制御手段は、信号出力手段の出力信号に基づき、モータに入力可能な電流の上限値であって逆起電力による電流低下を加味した電流上限値を推定し、当該推定した電流上限値に対応する操作量を、モータに作用させる操作量に決定して、当該操作量に基づくモータ制御を実行する。具体的に、第一制御手段は、信号出力手段の出力信号から特定されるモータの回転速度に基づき、電流上限値を推定する構成にすることができる。
【0010】
一方、第二制御手段は、信号出力手段の出力信号から特定されるモータ又は被駆動体の動作量としての変位量及び速度の少なくとも一方と、当該動作量の目標軌跡とに基づき、モータに作用させる操作量を決定し、当該操作量に基づくモータ制御を実行する。
【0011】
切替手段は、第二制御手段によるモータ制御の開始条件が満足される時点までは、第一制御手段にモータ制御を実行させ、第二制御手段によるモータ制御の開始条件が満足された時点以降では、第一制御手段に代えて、第二制御手段にモータ制御を実行させる。
【0012】
また、第一算出手段は、信号出力手段の出力信号から特定される上記速度と、被駆動体の駆動開始時点からの経過時間と、によって定まる目標軌跡(上記動作量の目標軌跡)であって、被駆動体の駆動開始時点から被駆動体の停止時点までの時間が一定である標準目標軌跡に基づくモータ制御を第二制御手段が開始した場合の第二制御手段によるモータ制御の開始時点から被駆動体の停止時点までの被駆動体の変位量を、停止必要量として算出し、第二算出手段は、信号出力手段の出力信号から特定される変位量に基づき、被駆動体が目標停止位置に到達するまでの被駆動体の残り変位量を算出する。
【0013】
そして、切替手段は、第二算出手段により算出された残り変位量が第一算出手段により算出された停止必要量に到達すると、第二制御手段によるモータ制御の開始条件が満足されたと判断して、第二制御手段によるモータ制御を開始し、第二制御手段は、モータ制御を開始すると、信号出力手段の出力信号から特定される上記動作量と、標準目標軌跡に対応する目標軌跡とに基づき、モータに作用させる操作量を決定し、当該操作量に基づくモータ制御を実行することにより、被駆動体を目標停止位置に停止させる。
【0014】
上記「標準目標軌跡に対応する目標軌跡」としては、標準目標軌跡と同一の目標軌跡や、標準目標軌跡を補正した目標軌跡を挙げることができる。標準目標軌跡の補正としては、被駆動体が目標停止位置に正確に停止するように、現在の被駆動体の位置や運動状態(速度等)に応じて、標準目標軌跡を微調整する補正が考えられる。
【0015】
このモータ制御装置によれば、上記停止必要量及び残り変位量に基づいて、モータ制御を、第一制御手段によるモータ制御から第二制御手段によるモータ制御に切り替えるので、停止精度に悪影響が生じない範囲で第一制御手段によるモータ制御を継続し、モータの最大能力相当で被駆動体を高速に変位させつつ、高精度に被駆動体を目標停止位置に停止させることができる。また、このモータ制御装置によれば、高速且つ高精度に、被駆動体を目標停止位置に停止させつつも、被駆動体の駆動開始時点から被駆動体が目標停止位置で停止する時点までの時間が一定となるように被駆動体を変位させることができる。
【0016】
従って、本発明によれば、被駆動体(駆動対象)を目標停止位置に停止させるためのモータ制御装置において、停止精度の向上、並びに、駆動対象を目標停止位置に停止させるまでの時間の短縮化及びばらつきの低減を、調和を図りつつ実現することができる。
【0017】
ところで、第一制御手段では被駆動体を加速させることになるので、第二制御手段の初期から被駆動体を減速させる制御を行うと、目標軌跡に従って被駆動体を変位させる制御の精度が劣化する可能性がある。即ち、目標軌跡からの動作量の誤差が大きくなる可能性がある。従って、上記目標軌跡は、被駆動体が定速で変位する定速区間と定速区間に続く区間であり被駆動体が減速を伴って変位する減速区間とを含む目標軌跡とするのが好ましい。このように定速区間を設ければ、目標軌跡からの動作量の誤差を抑えた後、減速過程に移ることができて、被駆動体を目標軌跡に沿って停止させ、被駆動体を高精度に目標停止位置に停止させることができる。
【0018】
尚、この場合の標準目標軌跡は、信号出力手段の出力信号から特定される速度によって、定速区間の速度及び減速区間の目標軌跡が定まり、被駆動体の駆動開始時点からの経過時間によって定速区間の時間が定まる、被駆動体の駆動開始時点から被駆動体の停止時点までの時間が一定の目標軌跡とすることができる。即ち、目標軌跡としては、定速区間の時間の調整によって、被駆動体の駆動開始時点から被駆動体の停止時点までの時間を一定に調整可能な目標軌跡を採用することができる。
【0019】
また、減速区間の目標軌跡は、減速時の加速度ピークが信号出力手段の出力信号から特定される速度に依らない一定の加速度を採る目標軌跡とすることができる。具体的に、減速区間の目標軌跡は、減速時の加速度ピークがモータによって実現可能な加速度の限界値に対応した一定の加速度を採る目標軌跡とすることができる。このように目標軌跡を設定すれば、モータの限界能力で迅速に被駆動体を減速させて停止させることができる。
【0020】
この他、上記目標軌跡を用いる場合、第二制御手段は、モータ制御の開始時に、標準目標軌跡における定速区間の時間を「被駆動体が目標停止位置に到達するまでの被駆動体の残り変位量と標準目標軌跡から特定される減速区間での被駆動体の変位量との差を定速区間の速度で除算して求められる値」に補正してなる目標軌跡を、上記「標準目標軌跡に対応する目標軌跡」として設定する構成にすることができる。第二制御手段によるモータ制御の開始条件が満足されてから、実際に第二制御手段によるモータ制御が開始されるまでにタイムラグがあるケースにおいて、このように標準目標軌跡を補正してなる目標軌跡を用いてモータ制御を行えば、タイムラグの影響を抑えて、被駆動体を目標停止位置に高精度に停止させることができる。
【0021】
また、目標停止位置に被駆動体を高精度に停止させるためには、定速区間を一定以上設けるのが好ましい。従って、第一算出手段は、標準目標軌跡における定速区間の時間が下限値未満となる場合には、標準目標軌跡における定速区間の時間を下限値に補正してなる目標軌跡である準標準目標軌跡に基づくモータ制御を第二制御手段が開始した場合の第二制御手段によるモータ制御の開始時点から被駆動体の停止時点までの被駆動体の変位量を、停止必要量として算出する構成にされるとよい。そして、第二制御手段は、準標準目標軌跡に対応する目標軌跡に基づき、モータ制御を実行することにより、被駆動体を目標停止位置に停止させる構成にされるとよい。このモータ制御技術によれば、被駆動体の駆動開始時点から被駆動体の停止時点までの時間に多少のばらつきが生じる結果となるが、高精度に目標停止位置に停止させることができるといった利点がある。
【0022】
また、高速性を優先するならば、目標軌跡には、定速区間を設けずに、被駆動体が停止するまで被駆動体の速度が単調減少する目標軌跡を採用されてもよい。この他、本発明のモータ制御装置は、画像形成装置に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】制御システム1の構成を表すブロック図である。
【図2】インクジェットプリンタ100の構成を表す図である。
【図3】制御システム1の制御による駆動対象10の位置・速度・加速度の軌跡を表すグラフである。
【図4】電流上限値を算出する関数Um(ω)の導出方法を説明した図である。
【図5】モータ制御ユニット60による主制御処理を表すフローチャートである。
【図6】主制御処理内で実行される第二制御処理を表すフローチャートである。
【図7】駆動対象10の位置・速度・加速度の軌跡を表すグラフであって、負荷レベル毎の軌跡を示したグラフである。
【図8】変形例の主制御処理を表すフローチャートである。
【図9】変形例における駆動対象10の位置・速度・加速度の軌跡を表すグラフであって、負荷レベル毎の軌跡を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。本実施例の制御システム1は、図1に示すように、駆動対象10を駆動するモータ(直流モータ)20と、モータドライバ30と、モータ20の回転軸に接続されたロータリエンコーダ40と、ロータリエンコーダ40の出力信号に基づき、モータ20の回転位置Xを検出する位置検出器50及びモータ20の回転速度ωを検出する速度検出器55と、モータ20に対する操作量である電流指令値Uを算出するモータ制御ユニット60と、を備える。
【0025】
この制御システム1は、画像形成装置等の電気的装置に組み込まれ、電気的装置の主制御ユニット(メインマイコン等)から入力される指令に従うモータ制御を行う。具体的に、駆動対象10としては、画像形成装置が備える用紙搬送機構を挙げることができる。
【0026】
図2には、画像形成装置としてのインクジェットプリンタ100の構成を示す。インクジェットプリンタ100は、プラテン101の上流側に、搬送ローラ111及びピンチローラ112を備え、プラテン101の下流側に、排紙ローラ113及びピンチローラ114を備える。また、プラテン101上に、用紙160に対して画像形成可能な記録ヘッド(所謂インクジェットヘッド)131及び記録ヘッド131を搬送するためのキャリッジ135を備える。この他、インクジェットプリンタ100は、搬送ローラ111及び排紙ローラ113を駆動するためのモータ120、このモータ120を制御するモータ制御装置140、並びに、モータ制御装置140を含む装置内各部に対して指令入力して、インクジェットプリンタ100全体を統括制御する主制御ユニット150を備える。
【0027】
このインクジェットプリンタ100において、用紙搬送機構は、主にローラ111〜114によって構成される。搬送ローラ111及び排紙ローラ113は、モータ120からの動力を受けて、互いに連動するように回転する。この用紙搬送機構には、図示しない給紙トレイから用紙160が供給され、給紙された用紙160は、搬送ローラ111とピンチローラ112との間で挟持されて、搬送ローラ111の回転により下流側(図中太矢印方向)に搬送される。また、搬送ローラ111の回転により搬送されて排紙ローラ113に到達した用紙160は、排紙ローラ113とピンチローラ114との間で挟持されて、排紙ローラ113の回転により下流に搬送される。この搬送ローラ111及び排紙ローラ113の同期動作により、用紙160は、図示しない排紙トレイに排出される。また、このように搬送される用紙160に対しては、プラテン101上で、記録ヘッド131によるインク液滴の吐出動作が行われる。
【0028】
インクジェットプリンタ100では、外部から印刷指令を受信すると、主制御ユニット150が、この印刷指令にて指定された印刷対象の画像データに基づく画像を用紙160に形成するために、モータ制御装置140に対して、搬送ローラ111及び排紙ローラ113を所定量回転させるように駆動指令を入力する。これによって、モータ制御装置140は、搬送ローラ111及び排紙ローラ113が所定量回転するように、モータ120を制御する。
【0029】
主制御ユニット150は、このような駆動指令の入力を繰返し実行することにより、モータ制御装置140を通じて、用紙160を所定量ずつ記録ヘッド131による画像形成位置に送り出す。そして、用紙160を所定量ずつ送り出しては、用紙160の搬送方向とは直交する主走査方向(図2紙面法線方向)に、記録ヘッド131を搬送し、この搬送過程では記録ヘッド131に印刷対象の画像データに基づくインク液滴の吐出動作を実行させることにより、プラテン10上の用紙160に印刷対象の画像データに基づく画像を形成する。この記録ヘッド131によるインク液滴の吐出動作は、少なくとも用紙160が所定量送りだされて停止した状態で実行される。また、記録ヘッド131を1回搬送する中でのインク液滴の吐出動作の実行が終了すると、再度用紙160が所定量送りだされる。図2に示すインクジェットプリンタ100は、このように用紙160を所定量ずつ送り出しては、用紙160に画像を形成する動作を繰り返すことによって、印刷対象の画像データに基づく一連の画像を用紙160に形成する。
【0030】
本実施例の制御システム1は、このような構成のインクジェットプリンタ100に組み込むことができる。具体的に、インクジェットプリンタ100には、制御システム1の駆動対象10及びモータ20を除く構成要素(図1点線内の構成要素)を、モータ制御装置140として組み込むことができる。この場合、インクジェットプリンタ100が備えるモータ120は、制御システム1が備えるモータ20に対応する。そして、搬送ローラ111及び排紙ローラ113、又は、用紙160が駆動対象10に対応する。
【0031】
インクジェットプリンタ100では、用紙160を所定量ずつ送り出しては、用紙160に画像を形成するため、高精度に用紙160を所定量ずつ搬送しないと、用紙160に形成される画像の品質が劣化する。一方で、ユーザからは、高速な印字が求められている。また、個体(製品)毎にスループット(用紙搬送を含む印字速度)が大きく異なるようでは、スループットに劣る個体(製品)を所有するユーザから不満が生じる可能性があり、必ずしも個体毎に、最大限のスループットで高速印字を行うことが好ましいとは限らない。即ち、個体毎のスループットのばらつきについては低減されるのが好ましい。
【0032】
本実施例の制御システム1は、このような高速性と精度と、スループットのばらつきの少なさが求められるシステムに適用されると、その効果が発揮される。
続いて、制御システム1の詳細構成を説明する。制御システム1が備えるモータドライバ30(図1参照)は、モータ制御ユニット60から入力される電流指令値Uに従って、電流指令値Uに対応する駆動電流をモータ20に入力し、モータ20を駆動する。
【0033】
一方、ロータリエンコーダ40は、モータ20の回転軸に接続されて、モータ20が所定量回転する度にパルス信号を出力する周知のロータリエンコーダである。このロータリエンコーダ40は、パルス信号として、位相がπ/2異なるA相信号及びB相信号を出力する。位置検出器50は、このロータリエンコーダ40から出力されるA相信号及びB相信号に基づき、モータ20の回転位置Xを検出する。そして、検出した回転位置Xの情報をモータ制御ユニット60に入力する。また、速度検出器55は、ロータリエンコーダ40から出力されるA相信号及びB相信号に基づき、モータ20の回転速度ωを検出し、この情報をモータ制御ユニット60に入力する。
【0034】
そして、モータ制御ユニット60は、外部(主制御ユニット150等)から駆動指令が入力されると、その駆動指令と共に指定された目標搬送量Ptに従って、駆動対象10を目標搬送量Pt分搬送する。
【0035】
具体的に、モータ制御ユニット60は、駆動指令が入力されると、駆動対象10を目標搬送量Ptに対応した地点まで移動させるために、制御手法の異なる第一制御処理及び第二制御処理を所定条件で切り替えて実行する。即ち、図3に示すように、駆動対象10の駆動制御開始初期では、第一制御処理を実行し、所定条件が満足された時点で、第一制御処理に代えて第二制御処理を実行する。
【0036】
第一制御処理では、速度検出器55から入力されるモータ20の回転速度ωの情報に基づき、この回転速度ωでの逆起電力による電流低下を加味した電流量であってモータ20に入力可能な電流上限値Umaxを、所定の演算式Um(ω)により算出し、算出した電流上限値Umaxに対応する電流指令値U=Umaxを、モータドライバ30に入力する。このような制御によって、モータ20の最大能力相当で駆動対象10を搬送する。
【0037】
尚、電流上限値Umaxを算出可能な演算式Um(ω)は、予め設計段階で理論又は実験により求めることができる。具体的に、設計者は、理論により演算式Um(ω)を定める場合、演算式Um(ω)を、モータ20の定格電圧Vmax、モータ20の起電力係数Ke、電機子抵抗Raに基づき、次式により定めることができる。
【0038】
【数1】

【0039】
一方、実験結果に基づいて定める場合には、図4に示すように、逆起電力による影響がない状態においてモータ20に入力可能な最大電流量Imax、即ち、モータ20の回転速度がゼロであるときに入力可能な最大電流量Imaxで、モータ20を駆動して得られるモータ20の最大回転速度ωmaxと、その時点でモータ20に流れる駆動電流の上記最大電流量Imaxからの電流低下分Idと、に基づき、演算式Um(ω)を次式により定めることができる。
【0040】
【数2】

【0041】
演算式Um(ω)を理論及び実験のいずれに基づいて定めるかは、設計者の自由である。しかしながら、理論により演算式Um(ω)を求める場合には、カタログ値の誤差による影響を受けて、電流上限値Umaxを演算式Um(ω)に基づき正確に算出することができない可能性があるので、実験により演算式Um(ω)を定めるのが好ましい。
【0042】
また、モータ制御ユニット60は、第一制御処理に代えて第二制御処理を実行すると、位置検出器50により検出されたモータ20の回転位置Xから特定される駆動対象10の駆動開始地点(第一制御処理の実行開始時の地点)を原点とした位置(搬送量)Pと、速度検出器55により検出されたモータ20の回転速度ωから特定される駆動対象10の速度Vと、駆動対象10の位置P及び速度Vについての目標プロファイル(即ち目標軌跡)と、に基づき、駆動対象10の位置P及び速度Vが目標プロファイルに追従するような電流指令値Uを算出する。そして、この電流指令値Uを、モータドライバ30に入力する。この動作により、モータ制御ユニット60は、駆動対象10の位置P及び速度Vを目標値に制御する。
【0043】
具体的に、第二制御処理では、フィードバック制御系、又は、フィードバック制御系及びフォードフォワード制御系からなる二自由度制御系を用いて、電流指令値Uを算出する構成にすることができる。尚、電流指令値Uを算出するための関数については、設計者が駆動対象10の特性に基づいて周知の手法により定めることができる。
【0044】
本実施例では、このような内容の第一制御処理及び第二制御処理を切り替えて実行することで、高速且つ高精度に、駆動対象10を目標搬送量Ptに対応する位置まで搬送する。但し、本実施例では、図3に示すように、第二制御処理の開始後、直ちに駆動対象10を減速させずに、駆動対象10を定速移動させた後に減速・停止させることで、目標搬送量Ptに対応する地点(以下「目標停止位置」とも表現する。)で駆動対象10が高精度に停止するようにモータ20を制御する。即ち、本実施例の第二制御処理では、定速区間及び減速区間を含む目標プロファイルを用いて、駆動対象10を減速・停止させる。
【0045】
第一制御処理では、電流上限値Umaxに対応する電流指令値Uをモータドライバ30に入力して、モータ20の最大能力相当で駆動対象10を駆動するため、第二制御処理で直ちに駆動対象10を減速させようとしても精度よく駆動対象10を減速・停止させることが難しい。そこで、本実施例では、減速前に、定速区間を設けることで、高精度に、駆動対象10を目標プロファイルに従って減速できるようにし、駆動対象10を目標停止位置Ptに精度良く停止させるのである。
【0046】
また、本実施例では、モータ20の最大能力相当で駆動対象10を減速・停止させることができるように、減速区間での目標加速度Arのピークが、減速開始時の駆動対象10の速度Vに依らず、モータ20の最大能力に対応した一律の値−Apとなるように減速区間の目標プロファイルを設定する。本実施例では、このような駆動対象10の減速・停止手法を採用することにより、第一制御処理によって駆動対象10を加速させることのできる時間を長くし、駆動対象10を高速に目標停止位置Ptに停止させることができるようにする。
【0047】
また、本実施例の制御システム1では、標準の目標プロファイル(以下、「標準プロファイル」と言う。)が定義されている。標準プロファイルは、第二制御処理での駆動対象10の標準的な目標加速度、目標速度、目標位置の軌跡を示すものである。そして、第一制御処理から第二制御処理への切替は、標準プロファイルに基づく第二制御処理によって第二制御処理開始時点から停止するまでに駆動対象10が移動する距離を推定した結果に基づいて行われる。
【0048】
具体的に、本実施例では、標準プロファイルを用いて第二制御処理を実行し駆動対象10を減速・停止させる場合に、第二制御処理開始時点から停止するまでに駆動対象10が移動する距離である停止必要量Pnを算出する。一方で、駆動対象10が現在位置Pから目標停止位置Ptに到達するまでの距離である残り搬送量Psを算出する。そして、残り搬送量Psが停止必要量Pn以下となった時点で、駆動対象10の制御を、第一制御処理から第二制御処理に切り替える。このような切替により、駆動対象10を電流上限値Umaxで長く駆動し、高速に駆動対象10を搬送する一方、第一制御処理の終了後には、標準プロファイルに対応する加速度軌跡、速度軌跡、及び位置軌跡で、駆動対象10を目標停止位置Ptに高精度に停止させる。
【0049】
更に、本実施例では、上記標準プロファイルとして、駆動対象10の駆動開始時点(即ち第一制御処理の開始時点)から、駆動対象10が停止する時点までの時間である駆動時間が一定値TLとなる目標プロファイルを定義し、この標準プロファイルに基づき停止必要量Pnを算出することにより、駆動対象10の駆動開始時点から、駆動対象10が停止する時点までの時間である駆動時間が概ね一定の値TLとなるようにする。
【0050】
具体的に、標準プロファイルは、定速区間における各時刻tでの駆動対象10の目標加速度Ar、目標速度Vr及び目標位置Pr、並びに、減速区間における各時刻tでの駆動対象10の目標加速度Ar、目標速度Vr及び目標位置Prが次のように定められてなる。
【0051】
<定速区間>
・目標加速度Ar=0 …(3)
・目標速度Vr=Vm …(4)
・目標位置Pr=Vm・(t−Ta)+Pm …(5)
<減速区間>
・目標加速度
【0052】
【数3】

【0053】
・目標速度
【0054】
【数4】

【0055】
・目標位置
【0056】
【数5】

【0057】
但し、定速区間は、時刻Taから時刻Tbまでの時間領域に対応し、減速区間は、時刻Tbから時刻TLまでの時間領域に対応する。尚、記号tは、駆動対象10の駆動開始時点からの時刻(経過時間)を表し、記号Taは、時刻tの座標系での定速区間の開始時刻(即ち、標準プロファイルに基づく制御の開始時刻)を表し、記号Tbは、時刻tの座標系での減速区間の開始時刻(以下「減速開始時刻」とも表現する。)を表す。また、記号Pmは、標準プロファイルに基づく制御開始時の駆動対象10の位置Pを表し、記号Vmは、標準プロファイルに基づく制御開始時の駆動対象10の速度Vを表す。
【0058】
この他、記号Tdは、減速区間の時間(減速時間)を表し、記号Apは、減速区間での目標加速度Arのピークの絶対値を表す。この他、記号TLは、目標とする駆動対象10の駆動開始時点から停止時点までの時間、即ち、目標駆動時間を表す。
【0059】
このような標準プロファイルに従って第二制御処理を実行した場合、停止必要量Pnは、第一制御処理終了時の駆動対象10の速度Vを、速度Vmとして用い、第一制御処理終了時の時点での時刻tを、時刻Taとして用いて、次式により算出することができる。
【0060】
Pn=Pc+Pd …(11)
Pc=Vm・(TL−Td−Ta) …(12)
Pd=Vm2/Ap …(13)
ここで、Pcは、定速区間での駆動対象10の移動量(以下「定速距離」とも表現する。)を表し、Pdは、減速区間での駆動対象10の移動量(以下「減速距離」とも表現する。)を表す。TLは、上述したように、目標駆動時間として予め設計段階で制御システム1の設計者により一定値に定められるものであり、目標搬送量Pt分搬送する際の目標駆動時間である。尚、搬送条件等によって目標搬送量が複数定められる場合には、各目標搬送量に対して、目標駆動時間がそれぞれ定められる。また、Apは、モータ20の能力に従って予め設計段階で制御システム1の設計者により一定値に定められるものであり、Tdは、Vm及びApの値に基づく式(7)によって自動的に定まるものである。
【0061】
従って、モータ制御ユニット60は、駆動対象10の駆動制御を、第一制御処理から第二制御処理に切り替えるか否かの判断については、その時点で速度検出器55により検出される回転速度ωから特定される駆動対象10の速度Vと、その時点で位置検出器50により検出される回転位置Xから特定される駆動対象10の位置Pと、駆動開始時点からの経過時間tとを用いて、駆動対象10の制御を第一制御処理から第二制御処理に切り替えた場合の停止必要量Pnと、この時点での残り搬送量Ps=Pt−Pとを算出し、比較することにより行うことができる。尚、駆動開始時点からの経過時間(時刻t)については、モータ制御ユニットの内部時計61から特定することができる。
【0062】
続いて、駆動指令が入力されるとモータ制御ユニット60が周期的に実行する主制御処理の詳細を、図5を用いて説明する。主制御処理は、駆動対象10を上記駆動指令にて指定された目標停止位置Ptまで搬送するための処理である。図5に示す主制御処理を開始すると、モータ制御ユニット60は、まず、位置検出器50により検出されたモータ20の回転位置Xに基づき、現時点での駆動対象10の位置Pを特定し、速度検出器55により検出されたモータ20の回転速度ωに基づき、現時点での駆動対象10の速度Vを特定する(S110)。更に、モータ制御ユニット60は、駆動指令が入力されて駆動対象10の駆動制御を開始した時点からの経過時間(現在時刻)tを、内部時計61に基づき特定する(S110)。モータ20と駆動対象10とは連結されているので、当然の如く、モータ20の回転位置X及び回転速度ωから、駆動対象10の位置P及び速度Vは特定可能である。
【0063】
その後、モータ制御ユニット60は、フラグFが値1にセットされているか否かを判断する(S120)。尚、フラグFは、駆動指令が入力されると値0にリセットされ、S195の処理が実行されると、値1にセットされるものである。そして、フラグFが値0であると判断すると(S120でNo)、S110で特定された現在の駆動対象10の速度V、及び、現在時刻tに基づき、上述した標準プロファイルに従う制御を開始したときの定速区間の時間である定速時間Tcを算出する(S130)。
【0064】
Tc=TL−(t+Td)
上述したように減速時間Tdは、現在の駆動対象10の速度Vと、設計段階で予め定められた減速区間の加速度ピークの絶対値Apとから式Td=2・V/Apに従って算出される。またTLは、設計段階で定められた目標駆動時間である。
【0065】
その後、モータ制御ユニット60は、S130で算出された定速時間Tcが予め設計段階で定められた下限値Tcm未満であるか否かを判断し(S140)、下限値Tcm以上であると判断すると(S140でNo)、S150の処理を実行後に、S160に移行し、定速時間Tcが下限値Tcm未満であると判断すると(S140でYes)、S155の処理を実行した後に、S160に移行する。尚、下限値Tcmは、後述するように、駆動対象10が安定して搬送されるように定めた最小の定速時間に対応する。
【0066】
S150では、S110で特定された速度V及びS130で算出された定速時間Tcに基づき、標準プロファイルに従う制御を現時点から開始した場合の定速距離Pc=V・Tc及び減速距離Pd=V2/Apを算出する。そして、これらの値に基づき、現時点から標準プロファイルに従う制御を開始した場合の停止必要量Pn=Pc+Pd=V・Tc+V2/Apを算出する。尚、現在時刻tに対応する標準プロファイルは、上述の式(3)〜(7)(9)(10)において、時刻TaをS110で特定された現在時刻tに設定し、時刻TbをTa+Tcに設定し、速度Vmを、S110で特定された速度Vに設定し、位置Pmを、S110で特定された位置Pに設定されてなるものである。
【0067】
一方、S155では、S110で特定された速度V及び上述の下限値Tcmに基づき、標準プロファイルの定速時間を下限値Tcmに補正してなる準標準プロファイルに従う制御を標準プロファイルに従う制御に代えて、現時点から行った場合の定速距離Pc=V・Tcm及び減速距離Pd=V2/Apを算出する。現在時刻tに対応する準標準プロファイルは、上述の式(3)〜(7)(9)(10)において、時刻Taを現在時刻tに設定し、時刻TbをTa+Tcmに設定し、速度Vmを、S110で特定された速度Vに設定し、位置Pmを、S110で特定された位置Pに設定されてなるものである。そして、これらの値に基づき、現時点から準標準プロファイルに従う制御を開始した場合の停止必要量Pn=Pc+Pd=V・Tcm+V2/Apを算出する。
【0068】
尚、S130で算出される定速時間Tcが下限値Tcmよりも小さくなる場合には、駆動対象10の負荷が通常よりも大きいことが想定される。即ち、駆動対象10の負荷が大きく、時間が経過しても速度が増加しない場合には、一向に後述するS170での処理で肯定判断がなされずに、現在時刻tが大きくなってしまい、S130で算出される定速時間Tcが小さくなってしまう。そして、定速時間Tcが小さくなってしまうと、駆動対象10を定速状態からすぐに減速制御することになってしまうため、安定して駆動対象10を搬送することができなくなってしまう。そのため、本実施例では、定速時間の下限値Tcmを設けることにより、目標駆動時間TLで駆動することを諦め、駆動対象の搬送精度が低下しないよう定速時間を確保し、ひいては、目標駆動時間TLを大きく見積もるようにしている。
【0069】
そして、S160では、S110で特定された位置Pと駆動指令にて指定された目標停止位置Ptとに基づき、目標停止位置Ptまでの残り搬送量Ps=Pt−Pを算出する。また、S160に続くS170では、残り搬送量Psが停止必要量Pn以下であるか否かを判断することにより、残り搬送量Psが停止必要量Pnに到達したか否かを判断する。
【0070】
そして、残り搬送量Psが停止必要量Pn以下でないと判断すると(S170でNo)、S180に移行し、上述した第一制御処理を実行して、電流上限値Umaxに対応する電流指令値U=Umaxを、モータドライバ30に入力する。このような制御によって、残り搬送量Psが停止必要量Pnよりも多い場合には、モータ20の最大能力相当で駆動対象10を搬送する。その後、図5に示す主制御処理を一旦終了し、周期的に到来する次の実行タイミングで、再度、図5に示す主制御処理を開始する。
【0071】
モータ制御ユニット60は、このような内容の処理を繰返し実行することにより、残り搬送量Psが停止必要量Pn以下となるまでは、電流上限値Umaxに対応する駆動電流で、モータ40を駆動する。そして、残り搬送量Psが停止必要量Pn以下となると、S170で肯定判断して(S170でYes)、S191に移行する。
【0072】
S191に移行すると、モータ制御ユニット60は、現在時刻tを、定速区間の開始時刻(換言すれば第二制御処理の開始時刻)Taに設定し、S110で特定されたこの時点での駆動対象10の位置Pを、第二制御処理開始時の駆動対象10の初期位置Pmとして設定し、同じ時点での駆動対象10の速度Vを、第二制御処理開始時の駆動対象10の初期速度Vmとして設定する。
【0073】
更に、モータ制御ユニット60は、第二制御処理によって実現する定速時間Tcrを、位置Pm、速度Vm、目標停止位置Pt、減速距離Pd=Vm2/Apに基づき、次式に従って算出する(S193)。
【0074】
Tcr=(Pt−Pm−Pd)/Vm …(14)
そして、減速開始時刻Tbを、この定速時間Tcrを用いて、Tb=Ta+Tcrに設定する(S193)、第二制御処理で用いる目標プロファイルを決定する。即ち、式(3)〜(7)(9)(10)に、S191,S193で設定した位置Pm、速度Vm、時刻Ta,Tbを代入して得られる目標プロファイルを、標準プロファイルに対応する今回の第二制御処理で用いる目標プロファイルに決定する。これにより、残り搬送量Psと停止必要量Pnとが一致するタイミングが、主制御処理の実行タイミングとずれている場合でも、正確に目標停止位置に駆動対象10を停止させることが可能となる。この場合、実際の駆動時間が、目標駆動時間TLに対して、最大で主制御処理の1周期分の時間ずれる可能性があるが、目標駆動時間TLに対して極微小なものであり、影響はない。
【0075】
このように、本実施例では、標準プロファイルにおける減速開始時刻Tbを、式(8)に従う時刻ではなく、現在の位置Pmと目標停止位置Ptと減速距離Pdと定速区間の速度Vmとの関係に基づき、駆動対象10を正確に目標停止位置Ptに停止させることができるような時刻に補正することで、第二制御処理で用いる目標プロファイルを決定する。
【0076】
尚、S155で準標準プロファイルに従う停止必要量Pnを算出し、残り搬送量Psが、この停止必要量Pn以下となることで、S170で肯定判断して、S191,S193の処理を実行した場合には、同様の減速開始時刻Tbの補正により、第二制御処理で用いられる目標プロファイルは、準標準プロファイルにおける定速時間を、値Tcrに微調整してなる目標プロファイルに決定される。
【0077】
その後、モータ制御ユニット60は、フラグFを値1に更新して(S195)、図6に示す第二制御処理を実行する(S200)。そして、第二制御処理の実行後には、図5に示す主制御処理を一旦終了し、周期的に到来する次の実行タイミングで、再度、主制御処理を実行する。但し、この場合には、フラグFが値1であるので、S120で肯定判断して、すぐさまS200に移行し、第二制御処理を実行する。モータ制御ユニット60は、このような内容の主制御処理を繰返し実行することにより、残り搬送量Psが停止必要量Pn以下となった後には、第二制御処理による駆動対象10の駆動制御を継続的に行う。
【0078】
続いて、図6を用いて第二制御処理の詳細について説明する。図6に示す第二制御処理を開始すると、モータ制御ユニット60は、現在時刻tに基づき、減速開始時刻Tbが到来したか否かを判断し(S210)、減速開始時刻Tbが到来していない(t<Tbである)と判断すると(S210でNo)、S191,S193の処理によって決定された目標プロファイルに従って、現在時刻tでの駆動対象10の加速度Aの目標値である目標加速度ArをAr=0に設定し、駆動対象10の速度Vの目標値である目標速度VrをVr=Vmに設定し、駆動対象10の位置Pの目標値である目標位置PrをPr=Vm・(t−Ta)+Pmに設定する(S220)。その後、S260に移行し、上記設定した目標値(目標加速度Ar、目標速度Vr及び目標位置Pr)と、S110の処理で特定された現時点での駆動対象10の位置P及び速度Vとに基づき、駆動対象10の位置P及び速度Vと目標値との誤差を縮めるようなモータ20に対する電流指令値Uを算出し、算出した電流指令値Uを、モータドライバ30に入力する。その後、第二制御処理を終了する。このような制御によって、モータ制御ユニット60は、時刻t=Taから時刻t=Tbまでの時間領域では、駆動対象10が速度Vmで定速移動するように、駆動対象10の駆動制御を行う。
【0079】
一方、モータ制御ユニット60は、減速開始時刻Tbが到来した(t≧Tbである)と判断すると(S210でYes)、現在時刻tに基づき減速区間の終了時刻Tb+Tdが到来したか否かを判断する(S230)。そして、減速区間の終了時刻Tb+Tdが到来していない(t<Tb+Tdである)と判断すると(S230でNo)、現在時刻tでの目標加速度Arを式(6)に従って設定し、目標速度Vrを式(9)に従って設定し、目標位置Prを式(10)に従って設定する(S240)。その後、S260に移行し、上記設定した目標値(目標加速度Ar、目標速度Vr及び目標位置Pr)と、S110の処理で特定された駆動対象10の位置P及び速度Vとに基づき、駆動対象10の位置P及び速度Vと目標値との誤差を縮めるようなモータ20に対する電流指令値Uを算出し、算出した電流指令値Uを、モータドライバ30に入力する。その後、第二制御処理を終了する。このような制御によって、モータ制御ユニット60は、時刻t=Tbから時刻t=Tb+Tdまでの時間領域では、減速時の加速度ピークが値−Apとなり(図3及び図7参照)、時刻t=Tb+Tdでの加速度A及び速度Vがゼロとなり、時刻t=Tb+Tdでの位置Pが目標停止位置Ptと一致するように、モータ20を通じて駆動対象10を減速・停止させる。
【0080】
尚、図7には、モータ制御ユニット60により実行される第一制御処理及び第二制御処理で実現される駆動対象の位置・速度・加速度の軌跡であって、負荷レベル毎の軌跡を表す。第二制御処理開始時の駆動対象10の速度Vmは、駆動対象10に作用する負荷レベルに応じて変化するが、本実施例によれば、負荷レベルに依らず、一律に、減速区間での加速度のピークがモータ20にて実現可能な加速度の限界値−Apとなるように、減速区間の目標プロファイルが設定される。
【0081】
また、モータ制御ユニット60は、減速区間の終了時刻t=Tb+Tdが到来したと判断すると(S230でYes)、現在時刻tでの目標加速度ArをAr=0に設定し、目標速度VrをVr=0に設定し、目標位置PrをPr=Ptに設定し(S250)、その後、S260に移行して、駆動対象10の位置P及び速度Vがこの目標値(目標加速度Ar、目標速度Vr及び目標位置Pr)に一致するような電流指令値Uを算出して、この電流指令値Uを、モータドライバ30に入力する。その後、第二制御処理を終了する。
【0082】
モータ制御ユニット60は、このような内容の第二制御処理を含む図5に示す主制御処理を周期的に繰返し実行し、制御終了条件が満足されると、この周期処理を終了する。この動作によって、負荷レベルに依らず、駆動対象10の駆動開始時刻(t=0)から駆動対象10の停止時刻までの時間が略一定となるようにして、駆動対象10を目標停止位置Ptで精度よく停止させる。尚、モータ制御ユニット60は、位置検出器50から得られる駆動対象10の位置Pが一定時間変化しなくなると、駆動対象10が停止したとみなして周期処理を終了する構成にすることができる。
【0083】
以上、本実施例の制御システム1の構成について説明したが、本実施例によれば、駆動対象10を搬送して目標停止位置Ptに停止させる駆動制御の開始初期において、モータ20に入力可能な電流上限値Umaxを推定して、モータ20を電流上限値Umaxに対応する駆動電流で駆動するので、高速に駆動対象10を搬送することができる。更に、停止必要量Pnと残り搬送量Pmとの比較によって、第二制御処理への切替タイミングを調整するので、電流上限値Umaxでのモータ駆動を、停止精度が劣化しないことが予想される範囲で長く実行することができる。また、本実施例では、減速時の加速度ピークを、モータ20により実現可能な加速度の限界値−Apに一律に調整するので、モータ20の能力を限界まで利用して駆動対象10を減速・停止させることができ、駆動対象10を高速且つ高精度に目標停止位置に停止させることができる。
【0084】
また、本実施例によれば、駆動対象10に対する駆動制御を開始した時点から駆動対象が停止するまでの時間である駆動時間を、負荷レベルに依らず、略一定の時間とする。従って、駆動対象10を目標停止位置に停止させるまでの時間にばらつきが生じることによる問題を解消することができる。例えば、仮に駆動対象を目標停止位置に停止させるまでの時間にばらつきがある制御システムを、画像形成装置(インクジェットプリンタ100等)の用紙搬送に用いた場合には、用紙搬送機構の負荷に応じて、用紙搬送時間に、個体毎(製品毎)のばらつきが生じ、製品群の中に、比較的用紙搬送時間の短い製品及び用紙搬送時間の長い製品が混在することになり、購入製品として比較的用紙搬送時間の長い製品が当たったユーザには、不満が生じる可能性があるが、本実施例の制御システム1によれば、駆動対象10を目標停止位置に停止させるまでの時間のばらつきを抑えることができるので、このような不満が生じるのを抑えることができる。
【0085】
即ち、本実施例の制御システム1によれば、駆動対象10の目標停止位置への停止精度を向上させることと、駆動対象を目標停止位置に停止させるまでの時間を短縮化することと、この時間のばらつきを抑えることとを、調和を図りながらバランス良く実現することができる。そして、このような制御システム1を、インクジェットプリンタ100等の画像形成装置に適用すれば、用紙160の搬送時間が一定となるようにして個体毎のばらつきを抑えつつも、高速且つ高精度に、用紙160を目標停止位置まで変位させることができて、総合的に良好な画像形成装置を構成することができる。
【0086】
ところで、以上には、定速区間及び減速区間を含む目標プロファイルを用いた制御システム1について説明したが、駆動対象10を目標停止位置Ptに停止させることについての高速性を重視するならば、目標プロファイルには、定速区間を設けなくてもよい。
[変形例]
続いては、定速区間のない目標プロファイル、即ち、目標速度が単調減少する目標プロファイルを用いた第二制御処理を実行する変形例の制御システム1において、モータ制御ユニット60が図5に示す処理に代えて実行する主制御処理を、図8を用いて説明する。
【0087】
図8に示す主制御処理を開始すると、モータ制御ユニット60は、S110での処理と同様に、駆動対象10の位置P及び速度V、並びに、駆動対象10の駆動制御を開始した時点からの経過時間(現在時刻)tを特定する(S310)。その後、フラグFが値1にセットされているか否かを判断し(S320)、フラグFが値0であると判断すると(S320でNo)、S310で特定された現在の駆動対象10の速度V、及び、現在時刻tに基づき、標準プロファイルに従う第二制御処理を現時点から開始したときの停止必要量Pnを算出する(S330)。但し、ここで用いる標準プロファイルは、目標加速度Ar、目標速度Vr、及び、目標位置Prが、次式で表されるものである。記号Vm,Ta,TL,Ap等の意味は、基本的に上記実施例に従うが、本変形例では、定速区間を設けないため、Taは、標準プロファイルに基づく制御の開始時刻であり、時刻tの座標系での減速区間の開始時刻に対応する。
【0088】
・目標加速度
【0089】
【数6】

【0090】
・目標速度
【0091】
【数7】

【0092】
・目標位置
【0093】
【数8】

【0094】
この標準プロファイルに従う駆動対象10の駆動制御を開始したときの停止必要量Pnは、次式で算出される。
Pn=Vm2/Ap …(20)
上式から理解できるように、本変形例の標準プロファイルは、上述した実施例の減速区間の標準プロファイルと基本形状は同じであるが、減速時間Td及び加速度ピークの絶対値Apが固定値ではなく、現在時刻t及び現在の駆動対象10の速度Vに依存した値を採る点で上述した実施例とは異なる。本変形例では、定速区間を設けないことから、駆動対象10の駆動制御の開始時点から駆動対象10が停止するまでの時間は、減速時間Tdの調整により一定値TLに調整される。また、これに併せて、加速度ピークの絶対値Apは、固定値ではなく、式(16)に示されるように、速度Vm及び減速時間Tdに依存した値に調整される。
【0095】
即ち、S330では、現在時刻tと目標駆動時間TLとの差分から、減速時間Tdを算出し、減速時間Tdと駆動対象10の速度V(=Vm)とから停止に必要な加速度ピークの絶対値Apを算出し、加速度ピークの絶対値Apと速度V(=Vm)とから、停止必要量Pnを算出する。
【0096】
また、このように停止必要量Pnを算出すると、モータ制御ユニット60は、S160と同様の手法で、残り変位量Psを算出し(S360)、その後、残り変位量Psが停止必要量Pn以下となったか否かを判断する(S370)。
【0097】
そして、残り変位量Psが停止必要量Pnより多い場合には(S370でNo)、S180での処理と同様に、第一制御処理を実行して(S380)、当該図8に示す主制御処理を終了する。一方、残り変位量Psが停止必要量Pn以下となったと判断すると(S370でYes)、S390に移行して、現在時刻tを、第二制御処理の開始時刻Taに設定し、この時点での駆動対象10の位置Pを、第二制御処理開始時の駆動対象10の初期位置Pmとして設定し、この時点での駆動対象10の速度Vを、第二制御処理開始時の駆動対象10の初期速度Vmとして設定することで、第二制御処理で用いる目標プロファイルとして、上記標準プロファイルと同一の目標プロファイルを設定する。その後、フラグFの値を1に設定する(S395)。
【0098】
また、この処理後には、S400に移行し、第二制御処理を実行する。即ち、第二制御処理では、S390の処理によって設定された目標プロファイルに従って、現在時刻tでの駆動対象10の目標加速度Arを、S390で設定した値Ta,Pm,Vmを代入した式(15)(17)に従う現在時刻tでの値に設定し、目標速度Vrを、式(18)に従う現在時刻tでの値に設定し、目標位置Prを、式(19)に従う現在時刻tでの値に設定し、上記設定した目標値(目標加速度Ar、目標速度Vr及び目標位置Pr)と、S310の処理で特定された現時点での駆動対象10の位置P及び速度Vとに基づき、駆動対象10の位置P及び速度Vと目標値との誤差を縮めるようなモータ20に対する電流指令値Uを算出し、算出した電流指令値Uを、モータドライバ30に入力する。その後、第二制御処理を終了する。
【0099】
モータ制御ユニット60は、このような内容の第二制御処理を含む図5に示す主制御処理を周期的に繰返し実行し、制御終了条件が満足されると、この周期処理を終了する。この動作によって、モータ制御ユニット60は、時刻t=Taから時刻t=TLの時間領域では、駆動対象10が減速し、時刻t=TLで駆動対象10が停止するように、駆動対象10の駆動制御を行う。図8には、本変形例においてモータ制御ユニット60により実現される駆動対象10の位置・速度・加速度の軌跡であって、負荷レベル毎の軌跡を表す。
【0100】
以上、変形例の制御システム1の構成について説明したが、変形例によっても、駆動対象10の目標停止位置への停止精度を向上させることと、駆動対象を目標停止位置に停止させるまでの時間を短縮化することと、この時間のばらつきを抑えることとを、調和を図りながら実現することができる。
【0101】
尚、用語間の対応関係は、次の通りである。即ち、モータ制御ユニット60は、モータ制御手段の一例に対応し、エンコーダ40は、信号出力手段の一例に対応する。また、モータ制御ユニット60が実行する第一制御処理は、第一制御手段によって実現される処理の一例に対応し、モータ制御ユニット60が実行するS120,S170,S195,S320,S370,S395の処理は、切替手段によって実現される処理の一例に対応し、モータ制御ユニット60が実行する第二制御処理(S200,S400)及びS191,S193,S390の処理は、第二制御手段によって実現される処理の一例に対応する。この他、モータ制御ユニット60が実行するS130〜S155,S330の処理は、第一算出手段によって実現される処理の一例に対応し、S160,S360の処理は、第二算出手段によって実現される処理の一例に対応する。また、主制御ユニット150は、搬送制御手段の一例に対応する。
【0102】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、位置検出器50により検出されるモータ20の回転位置X及び速度検出器55により検出されるモータ20の回転速度ωから、駆動対象10の位置P及び速度Vを特定して、この位置P及び速度Vを目標値に合わせるように駆動対象10の駆動制御を行うようにしたが、モータ20の回転位置X及び回転速度ωと、駆動対象10の位置P及び速度Vとは、その尺度が異なる程度のものであるので、当然のことながら、位置検出器50により検出されるモータ20の回転位置X及び速度検出器55により検出されるモータ20の回転速度ωを直接用いて、これを目標値に合わせるようにモータ制御を行うことにより、間接的に、駆動対象10の駆動制御を行うようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施例では、ロータリエンコーダ40はモータ20の回転軸に接続されており、駆動対象10の位置Pと速度Vとは、モータ20の回転位置Xと回転速度ωとから特定されていた。しかしながら、ロータリエンコーダ40は、駆動対象10に接続され、駆動対象10の位置Pと速度Vは、直接ロータリエンコーダ40から検出されても良い。例えば、ロータリエンコーダ40は、搬送ローラ111の回転軸に接続され得る。その場合、モータ20の回転位置Xと回転速度ωとは、駆動対象10の位置Pと速度Vとから特定され得る。
【0104】
この他、本実施例の制御システム1が、インクジェットプリンタ100への適用に限定されるものではないことは言うまでもない。また、上記実施例では、駆動対象10の位置P及び速度Vの両方を用いて、目標プロファイルに基づく制御を行うようにしたが、駆動対象10の位置P及び速度Vの一方のみを用いて、目標プロファイルに基づく制御を行うようにしてもよい。
【0105】
また、上記実施例では、S155で定速時間Tcを下限値Tcmに補正するが、この補正は、必ず行わなければならない類のものでない。定速時間が短すぎると、装置によっては、精度よく駆動制御を行うことができない場合があるが、そういった精度の劣化が生じない又は生じにくい場合には、定速時間に対して下限値を設けなくても良い。また、S193では、定速時間Tcrを、目標停止位置Pt、減速距離Pd、初期位置Pmから算出するようにしたが、この処理を実施せず、減速開始時刻TbをTa+Tcに設定しても良い。
【符号の説明】
【0106】
1…制御システム、10…駆動対象、20,120…モータ、30…モータドライバ、40…ロータリエンコーダ、50…位置検出器、55…速度検出器、60…モータ制御ユニット、61…内部時計、100…インクジェットプリンタ、111…搬送ローラ、113…排紙ローラ、131…記録ヘッド、135…キャリッジ、140…モータ制御装置、150…主制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを制御するモータ制御手段と、
前記モータの回転に応じた信号を出力する信号出力手段と、
を備え、前記モータ制御手段が、前記信号出力手段の出力信号に基づき前記モータを制御することによって、前記モータにより駆動される被駆動体を目標停止位置まで変位させるモータ制御装置であって、
前記モータ制御手段は、
前記信号出力手段の出力信号に基づき、前記モータに入力可能な電流の上限値であって逆起電力による電流低下を加味した電流上限値を推定し、前記推定した電流上限値に対応する操作量を、前記モータに作用させる操作量に決定して、当該操作量に基づくモータ制御を実行する第一制御手段と、
前記信号出力手段の出力信号から特定される前記モータ又は前記被駆動体の動作量としての変位量及び速度の少なくとも一方と、前記動作量の目標軌跡とに基づき、前記モータに作用させる操作量を決定し、当該操作量に基づくモータ制御を実行する第二制御手段と、
前記第二制御手段によるモータ制御の開始条件が満足される時点までは、前記第一制御手段に前記モータ制御を実行させ、前記第二制御手段によるモータ制御の開始条件が満足された時点以降では、前記第一制御手段に代えて、前記第二制御手段に前記モータ制御を実行させる切替手段と、
前記信号出力手段の出力信号から特定される前記速度と、前記被駆動体の駆動開始時点からの経過時間と、によって定まり、前記被駆動体の駆動開始時点から前記被駆動体の停止時点までの時間が一定である標準目標軌跡に基づくモータ制御を前記第二制御手段が開始した場合の、前記第二制御手段によるモータ制御の開始時点から前記被駆動体の停止時点までの前記被駆動体の変位量を、停止必要量として算出する第一算出手段と、
前記信号出力手段の出力信号から特定される前記変位量に基づき、前記被駆動体が前記目標停止位置に到達するまでの前記被駆動体の残り変位量を算出する第二算出手段と、
を備え、
前記切替手段は、前記第二算出手段により算出された前記残り変位量が前記第一算出手段により算出された前記停止必要量に到達すると、前記第二制御手段によるモータ制御の開始条件が満足されたと判断して、前記第二制御手段によるモータ制御を開始し、
前記第二制御手段は、前記モータ制御を開始すると、前記信号出力手段の出力信号から特定される前記動作量と、前記標準目標軌跡に対応する目標軌跡とに基づき、前記モータに作用させる操作量を決定し、当該操作量に基づくモータ制御を実行することにより、前記被駆動体を前記目標停止位置に停止させること
を特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記目標軌跡は、前記被駆動体が定速で変位する定速区間と前記定速区間に続く区間であり前記被駆動体が減速を伴って変位する減速区間とを含む目標軌跡であり、
前記標準目標軌跡は、前記信号出力手段の出力信号から特定される前記速度によって、前記定速区間の速度及び前記減速区間の目標軌跡が定まり、前記被駆動体の駆動開始時点からの経過時間によって前記定速区間の時間が定まる、前記被駆動体の駆動開始時点から前記被駆動体の停止時点までの時間が一定の目標軌跡であること
を特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記減速区間の目標軌跡は、減速時の加速度ピークが前記信号出力手段の出力信号から特定される前記速度に依らない一定の加速度を採る目標軌跡であること
を特徴とする請求項2記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記減速区間の目標軌跡は、減速時の加速度ピークが前記モータによって実現可能な加速度の限界値に対応した一定の加速度を採る目標軌跡であること
を特徴とする請求項2又は請求項3記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記第二制御手段は、前記モータ制御の開始時に、前記標準目標軌跡における前記定速区間の時間を、前記被駆動体が前記目標停止位置に到達するまでの前記被駆動体の残り変位量と前記標準目標軌跡から特定される前記減速区間での前記被駆動体の変位量との差を前記定速区間の速度で除算して求められる値に、補正してなる目標軌跡を、前記標準目標軌跡に対応する目標軌跡として設定し、当該目標軌跡に基づき、前記モータ制御を実行すること
を特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記第一算出手段は、前記標準目標軌跡における前記定速区間の時間が下限値未満となる場合には、この標準目標軌跡における前記定速区間の時間を下限値に補正してなる目標軌跡である準標準目標軌跡に基づくモータ制御を前記第二制御手段が開始した場合の前記第二制御手段によるモータ制御の開始時点から前記被駆動体の停止時点までの前記被駆動体の変位量を、停止必要量として算出し、
前記第二制御手段は、前記準標準目標軌跡に基づく前記停止必要量に前記残り変位量が到達したことを契機に、前記モータ制御を開始すると、前記準標準目標軌跡に対応する目標軌跡に基づき、前記モータ制御を実行することにより、前記被駆動体を前記目標停止位置に停止させること
を特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記目標軌跡は、前記被駆動体が停止するまで前記被駆動体の速度が単調減少する目標軌跡であり、
前記標準目標軌跡は、前記被駆動体の駆動開始時点からの経過時間によって、当該標準目標軌跡に基づくモータ制御の開始時点から前記被駆動体が停止するまでの所要時間である減速時間が定まり、この減速時間及び前記信号出力手段の出力信号から特定される前記速度によって、当該標準目標軌跡に基づくモータ制御の開始時点から前記被駆動体が停止する時点までの前記被駆動体の変位量である減速距離が定まる、前記被駆動体の駆動開始時点から前記被駆動体の停止時点までの時間が一定の目標軌跡であること
を特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記第二制御手段は、前記標準目標軌跡に対応する目標軌跡として、前記標準目標軌跡と同一の目標軌跡に基づき、前記モータ制御を実行すること
を特徴とする請求項7記載のモータ制御装置。
【請求項9】
モータと、
前記モータにより駆動されるローラを備え、前記ローラの回転により被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により目標停止位置まで搬送されて停止した前記被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記モータを制御することにより、前記搬送手段に被記録媒体を前記目標停止位置まで搬送させる請求項1〜請求項8のいずれか一項記載のモータ制御装置と、
前記目標停止位置を指定して前記モータ制御装置を繰返し動作させることにより、前記モータ制御装置を通じて、前記搬送手段に前記被記録媒体を段階的に搬送させる搬送制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−66300(P2013−66300A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203501(P2011−203501)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】